ディスクローディングロール
【課題】粉塵の量が著しく多量の場合や、極めて長期間使用した場合にも著しく搬送力が低下することなく、ローディング、イジェクトを確実に行うことができるディスクローディングロールを提供する。
【解決手段】外径が軸方向に亘って変化した外周面を有すると共に金型により形成されたゴム弾性体からなり、ディスクの周縁部に当接して当該ディスクをローディングするディスクローディングロールにおいて、前記ロールの外周面は凹凸面からなり、この凹凸面を測定倍率400倍で測定したとき、700μmあたりのピークカウントRPcの平均値が2〜30であり、最大谷深さRvの平均値が35〜80μmであり、算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmであることを特徴とするディスクローディングロール。
【解決手段】外径が軸方向に亘って変化した外周面を有すると共に金型により形成されたゴム弾性体からなり、ディスクの周縁部に当接して当該ディスクをローディングするディスクローディングロールにおいて、前記ロールの外周面は凹凸面からなり、この凹凸面を測定倍率400倍で測定したとき、700μmあたりのピークカウントRPcの平均値が2〜30であり、最大谷深さRvの平均値が35〜80μmであり、算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmであることを特徴とするディスクローディングロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器、情報機器、映像機器等で使用されるCD、LD、DVD等の光ディスクまたは光磁気ディスク等のディスクを各機器内に搬送するためのディスクローディングロールに関し、ディスクに付着した埃、特に砂埃等でスリップしてローディング、イジェクトができないことがないように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、CD、LD、DVD等の光ディスクまたは光磁気ディスク等を装置内のターンテーブルにセットするために、相対向する一対のローディングロールが使用されている。例えば、図25に示すように、ローディングロール1の中心には軸2が貫通状態で設けられており、相対向して同様のローディングロールが設けられ、何れか一方が回転駆動されるようになっている。また、ローディングロール1は、軸方向両端部から中央に向かって径が漸小する形状を有し、ローディングされるディスク3はその周縁部のみでローディングロール1に支持されセンタリングされるようになっている。
【0003】
このような一対のローディングロール1の間にディスク3が挿入されると、何れか一方のローディングロール1が回転駆動され、ディスク3は、一対のローディングロール1に挟まれて装置内部に搬送される。そして、ディスク3の先端が奥の壁に突き当たると、ディスク3の移動およびローディングロール1の回転が停止し、軸2のみが空回りし、ディスク3は、ターンテーブルにセットされる。
【0004】
また、一対のローディングロール1を用いる代わりに、図26に示すように、樹脂製板材4と、同様なローディングロール1との間にディスク3が挿入されるものもある。
【0005】
しかしながら、このようなローディングロールは、ディスク3に付着した埃、特に砂埃等がロール表面に転写し、長期的に使用していくとロール表面に堆積し、ディスクを搬送するときの搬送トルクが不十分になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明者らは、ローディングロールの外周面が金型により形成された凹凸面からなり、凹凸面の十点平均粗さRz平均値が0.5〜10μm、Smの平均値が15μm以下であるローディングロールを提案した(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、粉塵の量が比較的少ない場合には長期的に効果を発揮するが、粉塵の量が著しく多量、又は極めて長期間使用した場合には効果が不十分であるという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特許第3627866号(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、粉塵の量が著しく多量の場合や、極めて長期間使用した場合にも著しく搬送力が低下することなく、ローディング、イジェクトを確実に行うことができるディスクローディングロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための第1の態様は、外径が軸方向に亘って変化した外周面を有すると共に金型により形成されたゴム弾性体からなり、ディスクの周縁部に当接して当該ディスクをローディングするディスクローディングロールにおいて、前記ロールの外周面は凹凸面からなり、この凹凸面を測定倍率400倍で測定したとき、700μmあたりのピークカウントRPcの平均値が2〜30であり、最大谷深さRvの平均値が35〜80μmであり、算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmであることを特徴とするディスクローディングロールにある。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のディスクローディングロールにおいて、前記凹凸面を測定倍率400倍で測定したときの二乗平均平方根高さRqの平均値が3.5〜10.0μmであることを特徴とするディスクローディングロールにある。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載のディスクローディングロールにおいて、前記ゴム弾性体のゴム硬度が、JIS Aで20〜90°であることを特徴とするディスクローディングロールにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粉塵の量が著しく多量の場合や、極めて長期間使用した場合にも著しく搬送力が低下することなく、ローディング、イジェクトを確実に行うことができるディスクローディングロールが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のディスクローディングロールは、外周面の凹凸が比較的大きな所定の凹凸面となっている。外周面を比較的大きな凹凸面とすることで、粉塵の量が著しく多量の環境で使用したり、極めて長期間使用したりすることで多量の粉塵が付着しても、比較的大きな凹部に落ち込むようになるので、凹凸面での搬送力の低下が防止される。すなわち、本発明のディスクローディングロールは、従来の凹凸面に比べて粉塵を抱え込む凹部が大きいために、粉塵が付着しても長期間、搬送力の低下がないものである。
【0015】
本発明のディスクローディングロールの凹凸面は、測定倍率400倍の測定において、700μmあたりのピークカウントRPcの平均値が2〜30であり、最大谷深さRvの平均値が35〜80μmであり、算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmである。なお、いずれも例えば、表面形状測定顕微鏡で測定できる。
【0016】
まず、測定倍率を400倍とした理由について図1を用いて説明する。図1は、本発明のディスクローディングロール及び従来技術で挙げた特許文献1のディスクローディングロール(以下、従来のディスクローディングロールという)の断面形状の例を示す模式図である。図1(a)は本発明のディスクローディングロール、図1(b)は従来のディスクローディングロールである。従来のディスクローディングロールは図1(b)に示すように凹凸が比較的小さく、倍率3000倍で凹凸全体を捉えることができていたのに対し、本発明のディスクローディングロールは、図1(a)に示すように比較的大きな凹凸を有しているので、倍率3000倍で測定すると凹凸の極一部しか捉えることができない。したがって、本発明のディスクローディングロールは、倍率3000倍の測定で特定された数値では規定できないものであり、従来の様々な表面粗さで規定がなされたディスクローディングロールとは全く異なるものである。なお、本発明のローディングロールは、測定倍率400倍で最も好適に凹凸面が判断できるものである。このため、他の倍率で観察すると測定値のばらつきが大きくなる。
【0017】
ここで、図2を用いてピークカウントRPcについて説明する。本発明のディスクローディングロールを従来のものと差別化するために採用したピークカウントRPcは、表面形状測定顕微鏡(例えば、キーエンス社製の超深度形状測定装置)で測定できるものであり、以下の通り定義される。
【0018】
図2に示すように、粗さ曲線の平均線の両側に同じ幅の不感帯51a、及び不感帯51bを設ける。不感帯51aと不感帯51bとをあわせたものが不感帯幅51である。この不感帯幅51より下に出たところから、一旦不感帯幅51の上に出たあと、再び不感帯幅51より下に出るところまでがひとつのピークとなる。粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(L)だけ抜き取り、この抜き取り部分におけるピークの数が、ピークカウントRPcである。なお、本発明にかかるピークカウントRPcは、基準長さ(L)を700μm、不感帯幅を5%としたときの値である。
【0019】
本発明のディスクローディングロールの凹凸面は、測定倍率400倍で測定した場合の700μmあたりのピークカウントRPcの平均値が2〜30、好ましくは8〜19である。これにより、ピークカウントRPcの平均値が30より大きくなる特許文献1のディスクローディングロールとは区別される。本発明のディスクローディングロールは、従来のディスクローディングロールと比べてピークカウントRPcが少ない。すなわち、凹部又は凸部の平均線方向の幅が大きいものである。なお、ここでいう平均値とは、凹凸面の数箇所、例えば5箇所以上を測定したときの平均を指す(以下、平均値について同様)。
【0020】
また、本発明のディスクローディングロールは、凹凸面の最大谷深さRvの平均値が35〜80μmで、凹凸面の算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmである。なお、最大谷深さRv及び算術平均粗さRaは、JIS B0601−2001に準拠して求められるものである。
【0021】
最大谷深さRvは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(L)だけ抜き取り、この抜き取り部分の粗さ曲線の中で、もっとも深い谷の深さを表す。なお、谷とは平均線より下にある部分のことである。本発明のディスクローディングロールは、最大谷深さRvの平均値が35〜80μm、好ましくは、39〜62μmである。最大谷深さRvの平均値が35μm以上となることで粉塵を落とし込むのに十分な深さを保持した凹部となる。また、最大谷深さRvの平均値が200μm以下であれば、凹凸の高さ又は深さが大きくなりすぎてローディング特性に問題がでるという虞がなく、製造も容易であるが、80μm以下であれば好適なディスクローディングロールとなることが確認されたため、80μm以下と規定した。
【0022】
また、算術平均粗さRaの平均値は、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(L)だけ抜き取り、この抜き取り部分の粗さ曲線の絶対値の平均を表したものである。本発明のディスクローディングロールは、算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μm、好ましくは、2.6〜5.3μmである。算術平均粗さRaの平均値が2.5μm以上となることで、平均的に粗さがあり、粉塵を落とし込むのに十分な大きさの凹凸面となる。一方、算術平均粗さRaの平均値が5.5μmより大きくなるとローディング特性の面で問題となり、また、製造が著しく困難となる。
【0023】
上述した値をすべて満たすことで、従来の凹凸面に比べて幅が広く深さのある凹凸面、つまり多量の粉塵を落とし込むのに十分な体積を有する凹凸面となる。本発明のディスクローディングロールは、上述した値をすべて満たすものであり、表面に多量の粉塵が付着しても大きな凹部に落ち込むため、搬送力の低下が防止される。
【0024】
また、本発明のディスクローディングロールは、凹凸面を測定倍率400倍で測定したとき、凹凸面の二乗平均平方根高さRqの平均値が3.5〜10.0μmであるのが好ましく、さらに好ましくは4.1〜7.7μmである。二乗平均平方根高さRqとは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(L)だけ抜き取り、この抜き取り部分における二乗平均平方根を表したものである。二乗平均平方根高さRqの平均値がこの範囲となることで粉塵を落とし込むのに十分な大きさの凹凸面となる。なお、二乗平均平方根高さRqは、JIS B0601−2001に準拠して求められるものである。
【0025】
さらに、かかる凹凸面の最大高さRzの平均値が85〜220μmであることが好ましく、さらに好ましくは100〜150μmである。最大高さRzは、JISB0601−2001で測定倍率400倍のときのものである。また、最大高さRzは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(L)だけ抜き取り、この抜き取り部分における最も高い山の高さと最も深い谷の和を求めて表したものである。最大高さRzがこの範囲内となることで高さのある凹凸面となる。
【0026】
ここで、図3を用いて本発明のディスクローディングロール及び従来技術にかかるディ
スクローディングロールのディスク搬送状態を説明する。本発明にかかる図3(a)は、ディスクローディングロール10のディスク搬送状態を示す模式図、また、図3(b)は、従来のディスクローディングロール01のディスク搬送状態を示す模式図である。図3(a)に示すように、ディスクローディングロール10の表面に付着した粉塵21は、ディスク30に擦られて凹凸面11の凹部11Aに入り込み、ディスクローディングロール10の表面とディスク30とが直接接触することになり、常に十分な搬送力が得られる。この点は図3(b)の場合も同様であり、ローディングロール01の表面に付着した粉塵21は、ディスク30に擦られて凹凸面12の凹部12Aに入り込み、ディスクローディングロール01の表面とディスク30とが直接接触することになり、十分な搬送力が得られる。しかしながら、粉塵21が多量に存在すると、図3(b)のように凹凸の小さいディスクローディングロール01では凹部12Aに粉塵21が収まりきらなくなることによりディスクローディングロール01とディスク30との接触が阻害され、この結果、十分な搬送力が得られなくなり、ローディング不良となる。これに対し、図3(a)の本発明のディスクローディングロール10では、凹凸面11が大きいので、多量の粉塵21は凹部11A内に入り込み、この結果、ディスクローディングロール10とディスク30との接触が阻害されず、搬送力が確保されるという効果を奏する。
【0027】
本発明のディスクローディングロールは、EPDM、シリコーン、クロロプレン、NBR等を用いて成形することができる。
【0028】
また、本発明のディスクローディングロールのゴム硬度は、一般には、JIS Aで20〜90°であるが、特に、30〜60°が好ましい。十分な搬送力が得られるためである。
【0029】
本発明のディスクローディングロールは表面がすべて凹凸面となっている。凹凸面の形成方法は基本的には限定されず、後加工で形成されたものでも、成形時に形成されたものでもよい。
【0030】
金型により凹凸を形成する場合は、凹凸面を形成する模様を金型内面に形成する方法は特に限定されないが、腐食処理等の化学的処理の他、サンドブラスト又はショットブラスト処理などの機械加工により簡便且つ低コストで所定の凹凸面を形成することができる。
【0031】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
腐食処理で形成した所定形状の金型を用い、シリコーンゴムを170℃で8分間電熱プレスで加硫して、ゴム硬度がJIS Aで30°、測定倍率400倍のときのピークカウントRPcの平均値が2〜30で、凹凸面の最大谷深さRvの平均値が35〜80μmで、凹凸面の算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmとなるように凹凸を形成した筒状体を成形した。これを突切りしてディスクローディングロールを得た。
【0033】
(実施例2)
実施例1と同様の条件で別の金型を作製し、ディスクローディングロールを得た。
【0034】
(実施例3)
実施例1と同様の条件で別の金型を作製し、ディスクローディングロールを得た。
【0035】
(実施例4)
実施例1とは異なる金型を用い、シリコーンゴムを170℃で8分間電熱プレスで加硫して、ゴム硬度がJIS Aで30°、測定倍率400倍のときのピークカウントRPcの平均値が2〜30で、凹凸面の最大谷深さRvの平均値が35〜80μmで、前記凹凸面の算術平均粗さRaの平均値が3.0〜4.0μmとなるように凹凸を形成した筒状体を成形した。これを突切りしてディスクローディングロールを得た。
【0036】
(実施例5)
実施例4と同様の条件で別の金型を作製し、ディスクローディングロールを得た。
【0037】
(実施例6)
実施例4と同様の条件で別の金型を作製し、ディスクローディングロールを得た。
【0038】
(比較例1)
実施例1とは異なる金型を用い、筒状体の凹凸が凹凸面の十点平均粗さRzの平均値が0.5〜10μmであり、凹凸の平均間隔Smの平均値が15μm以下となるようにした以外は実施例1と同様にしてディスクローディングロールを得た。なお、特許文献1のディスクローディングロールである。
【0039】
(比較例2)
鏡面に近い金型を用い、実施例1と同様のシリコーンゴムを用いてディスクローディングロールを得た。なお、特許文献1の比較例のディスクローディングロールである。
【0040】
(試験例1)
各実施例及び各比較例のディスクローディングロールの外表面の表面状態を以下に示す測定条件1でピークカウントRPc、測定条件2で最大谷深さRv、算術平均粗さRa、二乗平均平方根高さRq及び最大高さRz、測定条件3で面最大高さRy、十点平均粗さRz及び平均間隔Smを測定し、それぞれの平均値を求めた。なお、各実施例及び各比較例のディスクローディングロールの大外径側先端から30mmまでの間を無作為に5箇所測定して平均値を求めた。
【0041】
なお、測定条件3は、特許文献1で規定されるディスクローディングロールの表面粗さの範囲において、本発明のディスクローディングロールがどのような値を示すかを確認するためのものであるが、測定倍率3000倍では上述したとおり、凹凸の極一部を測定することになるため正確な値といえるものではない。
【0042】
測定器としては、キーエンス社製の超深度形状測定装置(コントローラ部「VK−9500」、測定部「VK−9510」、表面粗さ計測アプリケーションVK−H1R9(JIS B 0601−2001)・VK−H1A9(JIS B 0601−1994))を用いた。結果を表1〜2及び図4〜11に示す。
【0043】
また、実施例1及び4並びに比較例1及び2の表面状態の400倍及び3000倍の写真を図12〜19に示す。
【0044】
<測定条件1>:倍率:400倍
ピッチ:0.5μm
カットオフ値:λS2.5μm
λc0.08mm
光学ズーム:1.0倍
測定距離:700μm
不感帯:5%
スムージング±2
<測定条件2>:面粗さ:JIS B0601−2001
倍率:400倍
ピッチ:0.5μm
カットオフ値:λS2.5μm
λc0.08mm
光学ズーム:1.0倍
面粗さ測定面積:700μm×500μm
スムージングなし
<測定条件3>:面・線粗さ:JIS B0601−1994
倍率:3000倍
ピッチ:0.5μm
カットオフ値:λS2.5μm
λc0.08mm
光学ズーム:1.0倍
面粗さ測定面積:700μm×500μm
線粗さ測定距離:50μm
スムージング±2
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
(結果のまとめ)
測定倍率400倍においては、各実施例のディスクローディングロールは、いずれも700μmあたりのピークカウントRPcの平均値が2〜30、最大谷深さRvの平均値が35〜80、算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmの範囲内であったのに対し、比較例1及び比較例2のディスクローディングロールは前述した範囲外であった。このことから、従来のディスクローディングロールとは全く異なるものであることがわかった。
【0048】
また、各実施例のディスクローディングロールは、二乗平均平方根高さRqの平均値が3.5〜10.0μm、最大高さRzの平均値が85〜220μmの範囲内であった。
【0049】
従来と同様の測定条件である測定条件3(測定倍率3000倍)においては、比較例1及び比較例2はいずれも十点平均粗さRzの平均値が0.5〜10μmであり、凹凸の平均間隔Smの平均値が15μm以下であった。各実施例のディスクローディングロールは、上述した通り3000倍において測定して判断するには好ましくないものであるが、比較のために測定した。この結果、各実施例は、いずれも凹凸の平均間隔Smの平均値は15μm以下であったが、十点平均粗さRzがいずれも10μmより大きかった。
【0050】
また、実施例1の表面状態の写真である図12及び図16並びに実施例4の表面状態の写真である図13及び図17と、比較例1の表面状態の写真である図14及び図18並びに比較例2の表面状態の写真である図15及び図19とを比較すると、実施例1及び実施例4と、比較例1及び比較例2とは明らかに異なる表面状態を有しており、各実施例の表面は、各比較例の表面と比較して凹凸が著しく大きいことが容易にわかった。
【0051】
(試験例2)
実施例4のディスクローディングロールの外表面の表面状態を、倍率を200倍、1000倍とした以外は試験例1の測定条件2と同様にして、最大谷深さRv、算術平均粗さRa、二乗平均平方根高さRqを測定した。結果を表3及び図20〜22に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
(結果のまとめ)
実施例4のディスクローディングロールは、測定倍率400倍の場合は、最大谷深さRv、算術平均粗さRa、二乗平均平方根高さRqのいずれもばらつきが最も小さかった。図20〜22からも明らかである。これより、測定倍率400倍が本発明のディスクローディングロールの凹凸面の測定に最も適していることがわかった。
【0054】
これに対し、測定倍率200倍及び1000倍の場合にはいずれもばらつきが大きく、本発明のディスクローディングロールの凹凸の大きさに適した測定倍率ではないことがわかった。
【0055】
(試験例3)
ディスクローディングロールがディスクの片側のみに設けられた装置を用い、各実施例及び各比較例のディスクローディングロールのローディング力(搬送力)を測定した。まず、ディスクに紐を結び、ディスクの中央にディスクローディングロールが位置したところで、ダイヤルテンションゲージで搬送力を測定した。これを0回目とする。
【0056】
次に、ディスクを外してディスクローディングロールを下記の粉塵噴霧試験環境の試験槽に入れ、密閉状態でファンを動かして1分間ダスト8種を噴霧し、ファンを止めて1分経過したところで試験槽から取り出した。ディスクローディングロールへの粉塵付着が均一になるようにディスクローディングロールの向きを90°回転させ、再び試験槽に入れて同様に1分間ダストを噴霧した後、1分間放置するという操作を繰り返し、ディスクローディングロールの向きが1周したところで1サイクルとした。1サイクル後のディスクローディングロールの搬送力を再び上記の方法によって測定した。なお、粉塵は1回転毎に1g追加、つまり1サイクルで4g追加して試験を行った。この操作を数回繰り返した。この結果を表4及び図23に示す。
【0057】
<粉塵噴霧試験環境>
ダスト種類 :JIS Z 8901 8種
粉塵噴霧量 :4.0g/CyC
試験温度 :20±15℃
相対湿度 :45〜85%
試験槽体積 :27,000cm3
攪拌時間 :1分×4
休止時間 :1分×4
なお、JIS Z 8901 8種は、関東ロームで中位径の範囲が6.6〜8.6μmである。
【0058】
【表4】
【0059】
さらに、試験例3で求めた各実施例及び各比較例のディスクローディングロールの搬送力の低下率を求めた。粉塵付着前の搬送力(N)をt0、nサイクル後の搬送力(N)をtnとし、搬送力低下率を以下の式で求めた。
搬送力低下率(%)=(tn−t0)/t0×100
結果を表5及び図24に示す。
【0060】
【表5】
【0061】
(結果のまとめ)
比較例1は関東ローム8種の噴霧の4回目以降でローディング不良となり、比較例2は3回目以降でローディング不良となったが、各実施例はいずれも4回目以降もローディングが可能であった。なお、表4には記載していないが実施例4〜6のディスクローディングロールは7回目以降においても十分な搬送力を維持していた。
【0062】
また、搬送力の低下率を比較したところ、各実施例のディスクローディングロールは、いずれも粉塵を噴霧された後の2回目以降の搬送力の低下率が小さいということがわかった。これに対し、比較例1及び比較例2のディスクローディングロールは、2回目以降の搬送力の低下率が著しく大きかった。
【0063】
これより、本発明のディスクローディングロールは多量の粉塵が付着するような環境で使用しても著しく搬送力が低下することがないということがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のディスクローディングロール及び従来のディスクローディングロールの断面形状の例を示す模式図である。
【図2】ピークカウントRPcを説明する図である。
【図3】本発明のディスクローディングロール及び従来技術にかかるディスクローディングロールのディスク搬送状態を示す模式図である。
【図4】試験例1の結果を示す図である。
【図5】試験例1の結果を示す図である。
【図6】試験例1の結果を示す図である。
【図7】試験例1の結果を示す図である。
【図8】試験例1の結果を示す図である。
【図9】試験例1の結果を示す図である。
【図10】試験例1の結果を示す図である。
【図11】試験例1の結果を示す図である。
【図12】実施例1の表面状態を倍率400倍で観察したときの写真である。
【図13】実施例4の表面状態を倍率400倍で観察したときの写真である。
【図14】比較例1の表面状態を倍率400倍で観察したときの写真である。
【図15】比較例2の表面状態を倍率400倍で観察したときの写真である。
【図16】実施例1の表面状態を倍率3000倍で観察したときの写真である。
【図17】実施例4の表面状態を倍率3000倍で観察したときの写真である。
【図18】比較例1の表面状態を倍率3000倍で観察したときの写真である。
【図19】比較例2の表面状態を倍率3000倍で観察したときの写真である。
【図20】実施例4の各倍率における最大谷深さRvの測定結果を示す図である。
【図21】実施例4の各倍率における算術平均粗さRaの測定結果を示す図である。
【図22】実施例4の各倍率における二乗平均平方根高さRqの測定結果を示す図である。
【図23】試験例3の結果を示す図である。
【図24】試験例3の結果を示す図である。
【図25】ディスクローディングロールの使用状態を示す図である。
【図26】ディスクローディングロールの使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
10 ディスクローディングロール
11 凹凸面
21 粉塵
30 ディスク
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器、情報機器、映像機器等で使用されるCD、LD、DVD等の光ディスクまたは光磁気ディスク等のディスクを各機器内に搬送するためのディスクローディングロールに関し、ディスクに付着した埃、特に砂埃等でスリップしてローディング、イジェクトができないことがないように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、CD、LD、DVD等の光ディスクまたは光磁気ディスク等を装置内のターンテーブルにセットするために、相対向する一対のローディングロールが使用されている。例えば、図25に示すように、ローディングロール1の中心には軸2が貫通状態で設けられており、相対向して同様のローディングロールが設けられ、何れか一方が回転駆動されるようになっている。また、ローディングロール1は、軸方向両端部から中央に向かって径が漸小する形状を有し、ローディングされるディスク3はその周縁部のみでローディングロール1に支持されセンタリングされるようになっている。
【0003】
このような一対のローディングロール1の間にディスク3が挿入されると、何れか一方のローディングロール1が回転駆動され、ディスク3は、一対のローディングロール1に挟まれて装置内部に搬送される。そして、ディスク3の先端が奥の壁に突き当たると、ディスク3の移動およびローディングロール1の回転が停止し、軸2のみが空回りし、ディスク3は、ターンテーブルにセットされる。
【0004】
また、一対のローディングロール1を用いる代わりに、図26に示すように、樹脂製板材4と、同様なローディングロール1との間にディスク3が挿入されるものもある。
【0005】
しかしながら、このようなローディングロールは、ディスク3に付着した埃、特に砂埃等がロール表面に転写し、長期的に使用していくとロール表面に堆積し、ディスクを搬送するときの搬送トルクが不十分になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明者らは、ローディングロールの外周面が金型により形成された凹凸面からなり、凹凸面の十点平均粗さRz平均値が0.5〜10μm、Smの平均値が15μm以下であるローディングロールを提案した(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、粉塵の量が比較的少ない場合には長期的に効果を発揮するが、粉塵の量が著しく多量、又は極めて長期間使用した場合には効果が不十分であるという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特許第3627866号(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、粉塵の量が著しく多量の場合や、極めて長期間使用した場合にも著しく搬送力が低下することなく、ローディング、イジェクトを確実に行うことができるディスクローディングロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための第1の態様は、外径が軸方向に亘って変化した外周面を有すると共に金型により形成されたゴム弾性体からなり、ディスクの周縁部に当接して当該ディスクをローディングするディスクローディングロールにおいて、前記ロールの外周面は凹凸面からなり、この凹凸面を測定倍率400倍で測定したとき、700μmあたりのピークカウントRPcの平均値が2〜30であり、最大谷深さRvの平均値が35〜80μmであり、算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmであることを特徴とするディスクローディングロールにある。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のディスクローディングロールにおいて、前記凹凸面を測定倍率400倍で測定したときの二乗平均平方根高さRqの平均値が3.5〜10.0μmであることを特徴とするディスクローディングロールにある。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載のディスクローディングロールにおいて、前記ゴム弾性体のゴム硬度が、JIS Aで20〜90°であることを特徴とするディスクローディングロールにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粉塵の量が著しく多量の場合や、極めて長期間使用した場合にも著しく搬送力が低下することなく、ローディング、イジェクトを確実に行うことができるディスクローディングロールが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のディスクローディングロールは、外周面の凹凸が比較的大きな所定の凹凸面となっている。外周面を比較的大きな凹凸面とすることで、粉塵の量が著しく多量の環境で使用したり、極めて長期間使用したりすることで多量の粉塵が付着しても、比較的大きな凹部に落ち込むようになるので、凹凸面での搬送力の低下が防止される。すなわち、本発明のディスクローディングロールは、従来の凹凸面に比べて粉塵を抱え込む凹部が大きいために、粉塵が付着しても長期間、搬送力の低下がないものである。
【0015】
本発明のディスクローディングロールの凹凸面は、測定倍率400倍の測定において、700μmあたりのピークカウントRPcの平均値が2〜30であり、最大谷深さRvの平均値が35〜80μmであり、算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmである。なお、いずれも例えば、表面形状測定顕微鏡で測定できる。
【0016】
まず、測定倍率を400倍とした理由について図1を用いて説明する。図1は、本発明のディスクローディングロール及び従来技術で挙げた特許文献1のディスクローディングロール(以下、従来のディスクローディングロールという)の断面形状の例を示す模式図である。図1(a)は本発明のディスクローディングロール、図1(b)は従来のディスクローディングロールである。従来のディスクローディングロールは図1(b)に示すように凹凸が比較的小さく、倍率3000倍で凹凸全体を捉えることができていたのに対し、本発明のディスクローディングロールは、図1(a)に示すように比較的大きな凹凸を有しているので、倍率3000倍で測定すると凹凸の極一部しか捉えることができない。したがって、本発明のディスクローディングロールは、倍率3000倍の測定で特定された数値では規定できないものであり、従来の様々な表面粗さで規定がなされたディスクローディングロールとは全く異なるものである。なお、本発明のローディングロールは、測定倍率400倍で最も好適に凹凸面が判断できるものである。このため、他の倍率で観察すると測定値のばらつきが大きくなる。
【0017】
ここで、図2を用いてピークカウントRPcについて説明する。本発明のディスクローディングロールを従来のものと差別化するために採用したピークカウントRPcは、表面形状測定顕微鏡(例えば、キーエンス社製の超深度形状測定装置)で測定できるものであり、以下の通り定義される。
【0018】
図2に示すように、粗さ曲線の平均線の両側に同じ幅の不感帯51a、及び不感帯51bを設ける。不感帯51aと不感帯51bとをあわせたものが不感帯幅51である。この不感帯幅51より下に出たところから、一旦不感帯幅51の上に出たあと、再び不感帯幅51より下に出るところまでがひとつのピークとなる。粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(L)だけ抜き取り、この抜き取り部分におけるピークの数が、ピークカウントRPcである。なお、本発明にかかるピークカウントRPcは、基準長さ(L)を700μm、不感帯幅を5%としたときの値である。
【0019】
本発明のディスクローディングロールの凹凸面は、測定倍率400倍で測定した場合の700μmあたりのピークカウントRPcの平均値が2〜30、好ましくは8〜19である。これにより、ピークカウントRPcの平均値が30より大きくなる特許文献1のディスクローディングロールとは区別される。本発明のディスクローディングロールは、従来のディスクローディングロールと比べてピークカウントRPcが少ない。すなわち、凹部又は凸部の平均線方向の幅が大きいものである。なお、ここでいう平均値とは、凹凸面の数箇所、例えば5箇所以上を測定したときの平均を指す(以下、平均値について同様)。
【0020】
また、本発明のディスクローディングロールは、凹凸面の最大谷深さRvの平均値が35〜80μmで、凹凸面の算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmである。なお、最大谷深さRv及び算術平均粗さRaは、JIS B0601−2001に準拠して求められるものである。
【0021】
最大谷深さRvは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(L)だけ抜き取り、この抜き取り部分の粗さ曲線の中で、もっとも深い谷の深さを表す。なお、谷とは平均線より下にある部分のことである。本発明のディスクローディングロールは、最大谷深さRvの平均値が35〜80μm、好ましくは、39〜62μmである。最大谷深さRvの平均値が35μm以上となることで粉塵を落とし込むのに十分な深さを保持した凹部となる。また、最大谷深さRvの平均値が200μm以下であれば、凹凸の高さ又は深さが大きくなりすぎてローディング特性に問題がでるという虞がなく、製造も容易であるが、80μm以下であれば好適なディスクローディングロールとなることが確認されたため、80μm以下と規定した。
【0022】
また、算術平均粗さRaの平均値は、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(L)だけ抜き取り、この抜き取り部分の粗さ曲線の絶対値の平均を表したものである。本発明のディスクローディングロールは、算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μm、好ましくは、2.6〜5.3μmである。算術平均粗さRaの平均値が2.5μm以上となることで、平均的に粗さがあり、粉塵を落とし込むのに十分な大きさの凹凸面となる。一方、算術平均粗さRaの平均値が5.5μmより大きくなるとローディング特性の面で問題となり、また、製造が著しく困難となる。
【0023】
上述した値をすべて満たすことで、従来の凹凸面に比べて幅が広く深さのある凹凸面、つまり多量の粉塵を落とし込むのに十分な体積を有する凹凸面となる。本発明のディスクローディングロールは、上述した値をすべて満たすものであり、表面に多量の粉塵が付着しても大きな凹部に落ち込むため、搬送力の低下が防止される。
【0024】
また、本発明のディスクローディングロールは、凹凸面を測定倍率400倍で測定したとき、凹凸面の二乗平均平方根高さRqの平均値が3.5〜10.0μmであるのが好ましく、さらに好ましくは4.1〜7.7μmである。二乗平均平方根高さRqとは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(L)だけ抜き取り、この抜き取り部分における二乗平均平方根を表したものである。二乗平均平方根高さRqの平均値がこの範囲となることで粉塵を落とし込むのに十分な大きさの凹凸面となる。なお、二乗平均平方根高さRqは、JIS B0601−2001に準拠して求められるものである。
【0025】
さらに、かかる凹凸面の最大高さRzの平均値が85〜220μmであることが好ましく、さらに好ましくは100〜150μmである。最大高さRzは、JISB0601−2001で測定倍率400倍のときのものである。また、最大高さRzは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(L)だけ抜き取り、この抜き取り部分における最も高い山の高さと最も深い谷の和を求めて表したものである。最大高さRzがこの範囲内となることで高さのある凹凸面となる。
【0026】
ここで、図3を用いて本発明のディスクローディングロール及び従来技術にかかるディ
スクローディングロールのディスク搬送状態を説明する。本発明にかかる図3(a)は、ディスクローディングロール10のディスク搬送状態を示す模式図、また、図3(b)は、従来のディスクローディングロール01のディスク搬送状態を示す模式図である。図3(a)に示すように、ディスクローディングロール10の表面に付着した粉塵21は、ディスク30に擦られて凹凸面11の凹部11Aに入り込み、ディスクローディングロール10の表面とディスク30とが直接接触することになり、常に十分な搬送力が得られる。この点は図3(b)の場合も同様であり、ローディングロール01の表面に付着した粉塵21は、ディスク30に擦られて凹凸面12の凹部12Aに入り込み、ディスクローディングロール01の表面とディスク30とが直接接触することになり、十分な搬送力が得られる。しかしながら、粉塵21が多量に存在すると、図3(b)のように凹凸の小さいディスクローディングロール01では凹部12Aに粉塵21が収まりきらなくなることによりディスクローディングロール01とディスク30との接触が阻害され、この結果、十分な搬送力が得られなくなり、ローディング不良となる。これに対し、図3(a)の本発明のディスクローディングロール10では、凹凸面11が大きいので、多量の粉塵21は凹部11A内に入り込み、この結果、ディスクローディングロール10とディスク30との接触が阻害されず、搬送力が確保されるという効果を奏する。
【0027】
本発明のディスクローディングロールは、EPDM、シリコーン、クロロプレン、NBR等を用いて成形することができる。
【0028】
また、本発明のディスクローディングロールのゴム硬度は、一般には、JIS Aで20〜90°であるが、特に、30〜60°が好ましい。十分な搬送力が得られるためである。
【0029】
本発明のディスクローディングロールは表面がすべて凹凸面となっている。凹凸面の形成方法は基本的には限定されず、後加工で形成されたものでも、成形時に形成されたものでもよい。
【0030】
金型により凹凸を形成する場合は、凹凸面を形成する模様を金型内面に形成する方法は特に限定されないが、腐食処理等の化学的処理の他、サンドブラスト又はショットブラスト処理などの機械加工により簡便且つ低コストで所定の凹凸面を形成することができる。
【0031】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
腐食処理で形成した所定形状の金型を用い、シリコーンゴムを170℃で8分間電熱プレスで加硫して、ゴム硬度がJIS Aで30°、測定倍率400倍のときのピークカウントRPcの平均値が2〜30で、凹凸面の最大谷深さRvの平均値が35〜80μmで、凹凸面の算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmとなるように凹凸を形成した筒状体を成形した。これを突切りしてディスクローディングロールを得た。
【0033】
(実施例2)
実施例1と同様の条件で別の金型を作製し、ディスクローディングロールを得た。
【0034】
(実施例3)
実施例1と同様の条件で別の金型を作製し、ディスクローディングロールを得た。
【0035】
(実施例4)
実施例1とは異なる金型を用い、シリコーンゴムを170℃で8分間電熱プレスで加硫して、ゴム硬度がJIS Aで30°、測定倍率400倍のときのピークカウントRPcの平均値が2〜30で、凹凸面の最大谷深さRvの平均値が35〜80μmで、前記凹凸面の算術平均粗さRaの平均値が3.0〜4.0μmとなるように凹凸を形成した筒状体を成形した。これを突切りしてディスクローディングロールを得た。
【0036】
(実施例5)
実施例4と同様の条件で別の金型を作製し、ディスクローディングロールを得た。
【0037】
(実施例6)
実施例4と同様の条件で別の金型を作製し、ディスクローディングロールを得た。
【0038】
(比較例1)
実施例1とは異なる金型を用い、筒状体の凹凸が凹凸面の十点平均粗さRzの平均値が0.5〜10μmであり、凹凸の平均間隔Smの平均値が15μm以下となるようにした以外は実施例1と同様にしてディスクローディングロールを得た。なお、特許文献1のディスクローディングロールである。
【0039】
(比較例2)
鏡面に近い金型を用い、実施例1と同様のシリコーンゴムを用いてディスクローディングロールを得た。なお、特許文献1の比較例のディスクローディングロールである。
【0040】
(試験例1)
各実施例及び各比較例のディスクローディングロールの外表面の表面状態を以下に示す測定条件1でピークカウントRPc、測定条件2で最大谷深さRv、算術平均粗さRa、二乗平均平方根高さRq及び最大高さRz、測定条件3で面最大高さRy、十点平均粗さRz及び平均間隔Smを測定し、それぞれの平均値を求めた。なお、各実施例及び各比較例のディスクローディングロールの大外径側先端から30mmまでの間を無作為に5箇所測定して平均値を求めた。
【0041】
なお、測定条件3は、特許文献1で規定されるディスクローディングロールの表面粗さの範囲において、本発明のディスクローディングロールがどのような値を示すかを確認するためのものであるが、測定倍率3000倍では上述したとおり、凹凸の極一部を測定することになるため正確な値といえるものではない。
【0042】
測定器としては、キーエンス社製の超深度形状測定装置(コントローラ部「VK−9500」、測定部「VK−9510」、表面粗さ計測アプリケーションVK−H1R9(JIS B 0601−2001)・VK−H1A9(JIS B 0601−1994))を用いた。結果を表1〜2及び図4〜11に示す。
【0043】
また、実施例1及び4並びに比較例1及び2の表面状態の400倍及び3000倍の写真を図12〜19に示す。
【0044】
<測定条件1>:倍率:400倍
ピッチ:0.5μm
カットオフ値:λS2.5μm
λc0.08mm
光学ズーム:1.0倍
測定距離:700μm
不感帯:5%
スムージング±2
<測定条件2>:面粗さ:JIS B0601−2001
倍率:400倍
ピッチ:0.5μm
カットオフ値:λS2.5μm
λc0.08mm
光学ズーム:1.0倍
面粗さ測定面積:700μm×500μm
スムージングなし
<測定条件3>:面・線粗さ:JIS B0601−1994
倍率:3000倍
ピッチ:0.5μm
カットオフ値:λS2.5μm
λc0.08mm
光学ズーム:1.0倍
面粗さ測定面積:700μm×500μm
線粗さ測定距離:50μm
スムージング±2
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
(結果のまとめ)
測定倍率400倍においては、各実施例のディスクローディングロールは、いずれも700μmあたりのピークカウントRPcの平均値が2〜30、最大谷深さRvの平均値が35〜80、算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmの範囲内であったのに対し、比較例1及び比較例2のディスクローディングロールは前述した範囲外であった。このことから、従来のディスクローディングロールとは全く異なるものであることがわかった。
【0048】
また、各実施例のディスクローディングロールは、二乗平均平方根高さRqの平均値が3.5〜10.0μm、最大高さRzの平均値が85〜220μmの範囲内であった。
【0049】
従来と同様の測定条件である測定条件3(測定倍率3000倍)においては、比較例1及び比較例2はいずれも十点平均粗さRzの平均値が0.5〜10μmであり、凹凸の平均間隔Smの平均値が15μm以下であった。各実施例のディスクローディングロールは、上述した通り3000倍において測定して判断するには好ましくないものであるが、比較のために測定した。この結果、各実施例は、いずれも凹凸の平均間隔Smの平均値は15μm以下であったが、十点平均粗さRzがいずれも10μmより大きかった。
【0050】
また、実施例1の表面状態の写真である図12及び図16並びに実施例4の表面状態の写真である図13及び図17と、比較例1の表面状態の写真である図14及び図18並びに比較例2の表面状態の写真である図15及び図19とを比較すると、実施例1及び実施例4と、比較例1及び比較例2とは明らかに異なる表面状態を有しており、各実施例の表面は、各比較例の表面と比較して凹凸が著しく大きいことが容易にわかった。
【0051】
(試験例2)
実施例4のディスクローディングロールの外表面の表面状態を、倍率を200倍、1000倍とした以外は試験例1の測定条件2と同様にして、最大谷深さRv、算術平均粗さRa、二乗平均平方根高さRqを測定した。結果を表3及び図20〜22に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
(結果のまとめ)
実施例4のディスクローディングロールは、測定倍率400倍の場合は、最大谷深さRv、算術平均粗さRa、二乗平均平方根高さRqのいずれもばらつきが最も小さかった。図20〜22からも明らかである。これより、測定倍率400倍が本発明のディスクローディングロールの凹凸面の測定に最も適していることがわかった。
【0054】
これに対し、測定倍率200倍及び1000倍の場合にはいずれもばらつきが大きく、本発明のディスクローディングロールの凹凸の大きさに適した測定倍率ではないことがわかった。
【0055】
(試験例3)
ディスクローディングロールがディスクの片側のみに設けられた装置を用い、各実施例及び各比較例のディスクローディングロールのローディング力(搬送力)を測定した。まず、ディスクに紐を結び、ディスクの中央にディスクローディングロールが位置したところで、ダイヤルテンションゲージで搬送力を測定した。これを0回目とする。
【0056】
次に、ディスクを外してディスクローディングロールを下記の粉塵噴霧試験環境の試験槽に入れ、密閉状態でファンを動かして1分間ダスト8種を噴霧し、ファンを止めて1分経過したところで試験槽から取り出した。ディスクローディングロールへの粉塵付着が均一になるようにディスクローディングロールの向きを90°回転させ、再び試験槽に入れて同様に1分間ダストを噴霧した後、1分間放置するという操作を繰り返し、ディスクローディングロールの向きが1周したところで1サイクルとした。1サイクル後のディスクローディングロールの搬送力を再び上記の方法によって測定した。なお、粉塵は1回転毎に1g追加、つまり1サイクルで4g追加して試験を行った。この操作を数回繰り返した。この結果を表4及び図23に示す。
【0057】
<粉塵噴霧試験環境>
ダスト種類 :JIS Z 8901 8種
粉塵噴霧量 :4.0g/CyC
試験温度 :20±15℃
相対湿度 :45〜85%
試験槽体積 :27,000cm3
攪拌時間 :1分×4
休止時間 :1分×4
なお、JIS Z 8901 8種は、関東ロームで中位径の範囲が6.6〜8.6μmである。
【0058】
【表4】
【0059】
さらに、試験例3で求めた各実施例及び各比較例のディスクローディングロールの搬送力の低下率を求めた。粉塵付着前の搬送力(N)をt0、nサイクル後の搬送力(N)をtnとし、搬送力低下率を以下の式で求めた。
搬送力低下率(%)=(tn−t0)/t0×100
結果を表5及び図24に示す。
【0060】
【表5】
【0061】
(結果のまとめ)
比較例1は関東ローム8種の噴霧の4回目以降でローディング不良となり、比較例2は3回目以降でローディング不良となったが、各実施例はいずれも4回目以降もローディングが可能であった。なお、表4には記載していないが実施例4〜6のディスクローディングロールは7回目以降においても十分な搬送力を維持していた。
【0062】
また、搬送力の低下率を比較したところ、各実施例のディスクローディングロールは、いずれも粉塵を噴霧された後の2回目以降の搬送力の低下率が小さいということがわかった。これに対し、比較例1及び比較例2のディスクローディングロールは、2回目以降の搬送力の低下率が著しく大きかった。
【0063】
これより、本発明のディスクローディングロールは多量の粉塵が付着するような環境で使用しても著しく搬送力が低下することがないということがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のディスクローディングロール及び従来のディスクローディングロールの断面形状の例を示す模式図である。
【図2】ピークカウントRPcを説明する図である。
【図3】本発明のディスクローディングロール及び従来技術にかかるディスクローディングロールのディスク搬送状態を示す模式図である。
【図4】試験例1の結果を示す図である。
【図5】試験例1の結果を示す図である。
【図6】試験例1の結果を示す図である。
【図7】試験例1の結果を示す図である。
【図8】試験例1の結果を示す図である。
【図9】試験例1の結果を示す図である。
【図10】試験例1の結果を示す図である。
【図11】試験例1の結果を示す図である。
【図12】実施例1の表面状態を倍率400倍で観察したときの写真である。
【図13】実施例4の表面状態を倍率400倍で観察したときの写真である。
【図14】比較例1の表面状態を倍率400倍で観察したときの写真である。
【図15】比較例2の表面状態を倍率400倍で観察したときの写真である。
【図16】実施例1の表面状態を倍率3000倍で観察したときの写真である。
【図17】実施例4の表面状態を倍率3000倍で観察したときの写真である。
【図18】比較例1の表面状態を倍率3000倍で観察したときの写真である。
【図19】比較例2の表面状態を倍率3000倍で観察したときの写真である。
【図20】実施例4の各倍率における最大谷深さRvの測定結果を示す図である。
【図21】実施例4の各倍率における算術平均粗さRaの測定結果を示す図である。
【図22】実施例4の各倍率における二乗平均平方根高さRqの測定結果を示す図である。
【図23】試験例3の結果を示す図である。
【図24】試験例3の結果を示す図である。
【図25】ディスクローディングロールの使用状態を示す図である。
【図26】ディスクローディングロールの使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
10 ディスクローディングロール
11 凹凸面
21 粉塵
30 ディスク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径が軸方向に亘って変化した外周面を有すると共に金型により形成されたゴム弾性体からなり、ディスクの周縁部に当接して当該ディスクをローディングするディスクローディングロールにおいて、前記ロールの外周面は凹凸面からなり、この凹凸面を測定倍率400倍で測定したとき、700μmあたりのピークカウントRPcの平均値が2〜30であり、最大谷深さRvの平均値が35〜80μmであり、算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmであることを特徴とするディスクローディングロール。
【請求項2】
請求項1に記載のディスクローディングロールにおいて、前記凹凸面を測定倍率400倍で測定したときの二乗平均平方根高さRqの平均値が3.5〜10.0μmであることを特徴とするディスクローディングロール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のディスクローディングロールにおいて、前記ゴム弾性体のゴム硬度が、JIS Aで20〜90°であることを特徴とするディスクローディングロール。
【請求項1】
外径が軸方向に亘って変化した外周面を有すると共に金型により形成されたゴム弾性体からなり、ディスクの周縁部に当接して当該ディスクをローディングするディスクローディングロールにおいて、前記ロールの外周面は凹凸面からなり、この凹凸面を測定倍率400倍で測定したとき、700μmあたりのピークカウントRPcの平均値が2〜30であり、最大谷深さRvの平均値が35〜80μmであり、算術平均粗さRaの平均値が2.5〜5.5μmであることを特徴とするディスクローディングロール。
【請求項2】
請求項1に記載のディスクローディングロールにおいて、前記凹凸面を測定倍率400倍で測定したときの二乗平均平方根高さRqの平均値が3.5〜10.0μmであることを特徴とするディスクローディングロール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のディスクローディングロールにおいて、前記ゴム弾性体のゴム硬度が、JIS Aで20〜90°であることを特徴とするディスクローディングロール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2007−250165(P2007−250165A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31796(P2007−31796)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
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