説明

ディスク再生装置

【課題】ディスク再生装置の小型化、薄型化が可能であり、さらに再生デッキの上下左右前後方向の移動規制を確実に行うことが可能なディスク再生装置を得る。
【解決手段】筐体内部にフローティング状態に支持される再生デッキと、前記筐体内部に挿入されたディスクにより押し動かされる回動部材と、前記回動部材の回動に基づいて駆動されるスライド部材と、前記スライド部材の駆動に基づき押し動かされるように前記筐体に設けられた平板で形成されたロック部材と、前記ロック部材の移動方向に直交して前記再生デッキに設けられた被ロック部とを有し、前記ロック部材は前記被ロック部に対向する板厚端面に、基部は左右平行し途中から先細り斜面に形成した係合凸部を備え、
前記被ロック部は、左右両端部が前記ロック部材の板厚と略等しい幅に中央部は該幅を広げるように円弧状に形成した係合穴を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディスク再生装置、特に車載用のディスク再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主として車載用のディスク再生装置は、筐体内に上下左右前後方向に移動可能な状態(フローティング状態)に支持した再生デッキ上にターンテーブル、ピックアップ及びクランパー等を装備し、ディスク再生時には、外部からの振動の影響を受けないように構成されている。
そして非再生時には、筐体に再生デッキをロック(係合)することにより、ディスクの挿入及び排出が行いやすいように構成されている。
従来のディスク再生装置における再生デッキのロックは、コの字型のロック部材を互いに直交させて係合させるものや円錐型にしたもの、また三角形状にしたもの(例えば、特許文献1参照)がある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−59154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のディスク再生装置のロック部材の形状は、以上のように構成されているので、例えばコの字型の形状では、ロックするために必要な移動量が大きくなりディスク再生装置の小型化が図れないという問題がある。また互いに直交した状態で配置されるために高さ方向の寸法も小さくすることができず、薄型化が図れないという問題がある。
また、ロック部材の形状を円錐型にしたものでは、ロックするために必要な移動量を小さくできるが、高さ方向の寸法を小さくすることができないとともに、回転方向の移動規制ができないという問題がある。
さらにロック部材の形状を三角形状にしたものでは、ななめにロックされる場合があり再生デッキの移動規制を確実に行うことができないという問題がある。
【0005】
この発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ディスク再生装置の小型化、薄型化が可能であり、さらに再生デッキの上下左右前後方向の移動規制を確実に行うことが可能なディスク再生装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るディスク再生装置は、筐体内部にフローティング状態に支持される再生デッキと、前記筐体内部に挿入されたディスクにより押し動かされる回動部材と、前記回動部材の回動に基づいて駆動されるスライド部材と、前記スライド部材の駆動に基づき押し動かされるように前記筐体に設けられた平板で形成されたロック部材と、前記ロック部材の移動方向に直交して前記再生デッキに設けられた被ロック部とを有し、前記ロック部材と前記被ロック部との対向面に、一方は基部が左右平行し途中から先細り斜面に形成した係合凸部を、他方は左右両端部が前記係合凸部の板厚と略等しい幅に中央部は該幅を広げるように円弧状に形成した係合穴を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、係合凸部が板厚と同一に形成されているため高さ方向の寸法を小さくすることができ、ディスク再生装置の薄型化に効果がある。
また、ロック部材と被ロック部との対向面に、一方は基部が左右平行し途中から先細り斜面に形成した係合凸部を、他方は左右両端部が前記係合凸部の板厚と略等しい幅に中央部は該幅を広げるように円弧状に形成した係合穴を備えるようにしたので、ロック解除時における位置から、ロック時の位置までの距離を短くすることができ、ディスク再生装置の小型化に効果がある。
さらに、ロック時に係合凸部と被ロック部とが面で当接するため、面で上下左右前後の移動規制を行うために確実に再生デッキの移動規制を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための最良の形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係るディスク再生装置の斜視図を示し、フレーム構成による筐体12の前面12aには、ディスク13を挿入・排出するための挿入口(図示せず)が設けられている。
また、再生デッキ6は、ディスク再生装置の内部において上下左右前後方向に移動可能な状態(フローティング状態)に取り付けられている。
ここで、上下方向とは挿入口に挿入されるディスク13の円盤面に対する上下方向、左右方向とは後述する搬送ローラー1の長手方向、前後方向とはディスク13が搬送される方向であり、筐体12の前面12aを前方とする。
【0009】
搬送ローラー1はディスク13をターンテーブル7上まで搬送、若しくはターンテーブル7上からディスク13を排出するために回動可能に筐体12内に取り付けられている。
また、搬送ローラー1は、ばね等の弾性体により上側に向かって付勢力をつけられている。これにより搬送ローラー1はディスク13の裏面に当接し、確実にディスク13の搬送を行うことができる。
【0010】
回動部材2は、回動可能にクランプ部材4に取り付けられており、図2に示すように、ディスク13がターンテーブル7上に搬送されると、回動部材2の一端がディスク13に押されディスク再生装置上側から見た場合に反時計方向に回動運動する。
この回動運動時、回動部材2の他端は、スライド部材3と当接してスライド部材3を前方へ押し出す(駆動する)。
【0011】
スライド部材3には、ギア列11のギアと係合するラック3a及び搬送ローラー1を押し下げるための突出部3cが設けられている。
クランプ部材4は、スライド部材3が前方へ移動するとともに下降するように構成され、このクランプ部材4の前端部には、ターンテーブル7上に搬送されたディスク13の上面に当接しディスク13を上方から押さえつける役割を持つクランパー5が揺動自在に取り付けられている。
【0012】
再生デッキ6には、上記のクランプ部材4及びターンテーブル7等が取り付けられており、再生デッキ6全体がゴム等の弾性体からなる防振機構により筐体12の内部に支持されており、上下左右前後方向に移動可能な状態(フローティング状態)では外部からの振動による影響を受けないように構成されている。
【0013】
図3は、図1から再生デッキ6及び搬送ローラー1等を取り除いた斜視図である。
本発明の実施の形態1に係るディスク再生装置のロック機構は、スライド部材3、回動レバー8、ロック部材9で構成されている。
スライド部材3には、回動レバー8の一端の長穴8aと係合するためのピン3bが設けられている。
回動レバー8は、くの字型をした長板状体でできており、回動可能にピン8bで筐体12の内部に固定されている。このため回動レバー8は、ピン8bを中心として回動する。
また回動レバー8の他端には、ロック部材9の長穴9bと係合するためのピン8cが設けられている。
【0014】
ロック部材9は平板よりなり、中央部には左右方向に延びた長穴9bがあり、この長穴9bを挟むように左右には前後方向に延びた長穴9cが平行に形成されている。
ロック部材9の長穴9bには、回動レバー8の一端に設けたピン8cが係合し、長穴9cには筐体12のベースに設けたピン12bが係合し、ロック部材9が前後方向にのみ動くように動作を規制している。
【0015】
図4は、ロック部材に設けた係合凸部9a及び再生デッキに設けた被ロック部6aの形状を示した図である。
また、図5は、ロック時の係合凸部9aと被ロック部6aとを示した図である。
ロック部材9の左右両端には、同一側に幅の狭いL字形状の折り曲げ部9dが形成されており、この折り曲げ部9dの同一側に、基部は左右平行し途中から先細り斜面となる形状の係合凸部9aが形成されている。
この係合凸部9aが係脱する被ロック部6aは再生デッキ6内のベースに設けた垂直壁6−1に形成されている。
この被ロック部6aは、両端部がロック部材9の板厚と略等しい幅に、中央部はその幅を広げるように円弧状に係合穴が形成されている。
【0016】
ロック部材9が前方へと移動すると、係合凸部9aが被ロック部6aの係合穴に係合されることになるが、再生デッキ6が上下左右前後に移動規制されていない状態では係合凸部9aの先端と被ロック部6aの係合穴の中心がずれた位置関係となっている場合がある。
このような場合でも、係合凸部9aを先細り斜面に形成し、被ロック部6aの係合穴の中央部を円弧状に形成しているので、位置を強制的に規制されながら被ロック部6aの係合穴の中を進み、係合凸部9aは、被ロック部6aの係合穴とロックされる。
【0017】
次に動作について説明する。
ディスク13が外部より挿入されると、この挿入を検知センサー(図示せず)が検知し、この検知信号を受けた制御回路(図示せず)によりモータ10が起動され、その動力を受けて搬送ローラー1が回動をはじめ、ディスク13がターンテーブル7に向かって搬送される。
このときディスク13が一定の位置まで搬送されると、ディスク13が回動部材2に当接し、引き続くディスク13の搬送に伴い回動部材2が反時計方向に回転を始め、回動部材2がスライド部材3の当接部と当接し、スライド部材3を前方へ押しだす(駆動する)。
【0018】
スライド部材3が、回動部材2の回動運動により前方へ移動すると、スライド部材3に設けられたラック3aが、ギア列11に備えられたギアと係合し、以後、ギア列11の駆動により、スライド部材3はさらに前方に移動する。
スライド部材3が、前方に移動すると、スライド部材3に設けられた突出部3cが搬送ローラー1の回動軸に当接し、さらにスライド部材3が、前方へ移動すると前記突出部3cが搬送ローラー1を押し下げ、これにより搬送ローラー1はディスク13の下面から離れる。
【0019】
次に、クランプ部材4及びクランパー5は、スライド部材3が前方に移動するとともに下降し始め、クランパー5がターンテーブル7上に搬送されたディスク13の上面に当接する。
このとき、ターンテーブル7上に搬送されたディスク13は上面からはクランパー5による下向きの付勢力をうけ、下面からは搬送ローラー1による上向きの付勢力をうけ、クランパー5と搬送ローラー1とにより挟持され、搬送ローラー1の下降とともにディスク13も下降し、再生デッキ6上のターンテーブル7にクランプされる。
【0020】
また、スライド部材3が前方に移動すると、回動レバー8がピン3bと長穴8aとにより反時計方向に回動をはじめ、回動レバー8の他端に設けたピン8cとロック部材9の長穴9bにより、ロック部材9が回動レバー8の回動運動により後方に移動し、係合凸部9aと被ロック部6aとのロックが解除され、再生デッキ6は防振機構で支持された上下左右前後方向に移動可能な状態(フローティング状態)となる。
【0021】
以下、ロック部材9の係合凸部9aと再生デッキ6の被ロック部6aがロック及びロック解除される動作を図6及び図7を使用して詳細に説明する。
図6はロック解除時の状態を示した図であり、図7は、ロック時の状態を示した図である。
ここで、スライド部材3が前方へ移動すると、回動レバー8は、長穴8aに係合したピン3bに押されてピン8bを中心に回動運動を行うため、回転レバー8の他端に設けられたピン8cは、後方へ移動する。
ロック部材9は、長穴9bに係合したピン8cが後方へ移動するに伴い後方へ移動する。
【0022】
この場合、ロック部材9は、ピン12cと長穴9cにガイドされてまっすぐ後方へ移動し、図6に示すように、ロック部材9はロックが解除された状態となる。
この状態では、再生デッキ6は上下左右前後方向に移動規制されていない状態(フローティング状態)となり、外部からの振動により再生デッキ6とロック部材9とが衝突する可能性がある。
このためロック部材9の係合凸部9aは、再生デッキ6と衝突するのを避けるために再生デッキ6に設けられた被ロック部6aと一定の距離を保った位置まで退避した状態となっている。
【0023】
ここで一定の距離とは、係合凸部9aおよび被ロック部6aの係合穴の形状にもよるが、係合凸部9aと再生デッキ6とが振動により衝突することを防止できる程度の距離、例えば2mm程度の距離である。
また、係合凸部9aを先細り斜面に形成し、被ロック部6aの係合穴の中央部を円弧状に形成しているので、係合凸部9aの先端がどの方向にずれたとしても、ロック部材9が再生デッキ6と衝突しない距離を保つことができ、前記衝突が起こりにくくなる。
【0024】
以上のように、スライド部材3が前方に移動することによって、ロック部材9が後方へ移動し、ロックが解除され、再生デッキ6が上下左右前後に移動可能な状態(フローティング状態)となる。
また、係合凸部9aと被ロック部6aとをロックし、再生デッキ6を上下左右前後方向に移動規制する場合は、モータ10に制御回路(図示せず)から逆転信号を送り、ギア列11のギアを逆転させてスライド部材3を後方へ移動させれば、ロック部材9が前方へ移動し、係合凸部9aと垂直壁6−1の被ロック部6aとが、図7に示すようにロックされた状態となる。
【0025】
係合凸部9aと被ロック部6aとがロックされると、図4に示した係合凸部9aの上面A1及び下面A2(図示せず)が、それぞれ被ロック部6aの係合穴の面B1及び面B2と当接し、再生デッキ6の上下方向の移動を規制する。
係合凸部9aの左右の面A3は、被ロック部6aの係合穴の面B3と当接し再生デッキ6の左右方向の動きを規制する。
また、ロック部材9の係合凸部が設けられた端面A4は、被ロック部6が形成された垂直壁6−1の表面B4と当接し再生デッキ6の前後方向の動きを規制する。
【0026】
以上のように、本発明の実施の形態1によれば係合凸部がロック部材の板厚と同一に形成されているため高さ方向の寸法を小さくすることができ、ディスク再生装置の薄型化に効果がある。
ロック部を左右平行し途中から先細り斜面に形成し、被ロック部を左右両端部が前記ロック部材の板厚と略等しい幅に中央部は該幅を広げるように円弧状に形成した係合穴を備えるようにしたので、非ロック時における位置から、ロック時の位置までの距離を短くすることができ、ディスク再生装置の小型化に効果がある。
また、ずれた位置関係にあっても確実にロックされ、ロック時に係合凸部と被ロック部が面で当接するため、面で上下左右前後の移動規制を行うために確実に再生デッキの移動規制を行うことができる。
また、三角形状のみで構成したときのように斜めにロックしてしまうことがない。
【0027】
なお、実施の形態1では、ロック部材に係合凸部を備え、被ロック部に係合穴を備えたディスク再生装置について説明したが、被ロック部に前記と同様の係合凸部を、ロック部材に前記と同様の係合穴を備えるように構成しても、実施の形態1と同様の効果がある。
また、ロック部の取り付け方向は、実施の形態1で示したように前方向のみでなく、左方向、右方向又は後方向に設けるように構成してもいい。
また、ロック部材にL字型の折りまげ部を形成せず、板厚端面に係合凸部を備え、この係合凸部に対向する被ロック部の係合穴を再生デッキの垂直壁に形成すれば、さらに高さ方向の寸法を小さくすることができ、ディスク再生装置をより薄型化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1に係るディスク再生装置の斜視図である。
【図2】ディスクと回動部材との関係を示した図である。
【図3】ロック機構部分の斜視図である。
【図4】ロック部及び被ロック部の形状を示した図である。
【図5】ロック時のロック部及び被ロック部を示した図である。
【図6】ロック解除時の状態を表した図である。
【図7】ロック時の状態を示した図である。
【符号の説明】
【0029】
1 搬送ローラー、2 回動部材、3 スライド部材、4 クランプ部材、5 クランパー、6 再生デッキ、7 ターンテーブル、8 回動レバー、9 ロック部材、10 モータ、11 ギア列、12 筐体、13 ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内部にフローティング状態に支持される再生デッキと、
前記筐体内部に挿入されたディスクにより押し動かされる回動部材と、
前記回動部材の回動に基づいて駆動されるスライド部材と、
前記スライド部材の駆動に基づき押し動かされるように前記筐体に設けられた平板で形成されたロック部材と、
前記ロック部材の移動方向に直交して前記再生デッキに設けられた被ロック部とを有し、
前記ロック部材と前記被ロック部との対向面に、一方は基部が左右平行し途中から先細り斜面に形成した係合凸部を、他方は左右両端部が前記係合凸部の板厚と略等しい幅に中央部は該幅を広げるように円弧状に形成した係合穴を備えたディスク再生装置。
【請求項2】
前記ロック部材は、基部が左右平行し途中から先細り斜面に形成した係合凸部を備え、前記被ロック部は、左右両端部が前記係合凸部の板厚と略等しい幅に中央部は該幅を広げるように円弧状に形成した係合穴を備えたことを特徴とする請求項1記載のディスク再生装置。
【請求項3】
前記被ロック部材は、基部が左右平行し途中から先細り斜面に形成した係合凸部を備え、前記ロック部は、左右両端部が前記係合凸部の板厚と略等しい幅に中央部は該幅を広げるように円弧状に形成した係合穴を備えたことを特徴とする請求項1記載のディスク再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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