説明

ディスク回転用モータおよびこれを備えたディスク駆動装置

【課題】簡易な方法で製造することのできるディスク回転用モータおよびこれを備えたディスク駆動装置を提供する。
【解決手段】ブラシレスモータは、ディスクを回転させるディスク回転用モータであって、ロータフレームと、ロータフレームに固定されたクッションゴム13とを備え、クッションゴム13は、ロータフレームに固定された基部101と、基部101と同一材料よりなり、基部101から突出した複数の突出部103とを含む。複数の突出部103の各々はディスクと接触し、かつ複数の突出部103の各々におけるディスクとの接触面は平面状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク回転用モータおよびこれを備えたディスク駆動装置に関し、より特定的には、簡易な方法で製造することのできるディスク回転用モータおよびこれを備えたディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクや光磁気ディスクなどの情報を記録した記録媒体であるディスクについて、情報の書き込みまたは読み出しを行う際には、ディスク駆動装置を用いてディスクが回転される。ディスク駆動装置は、ディスクを回転するためのディスク回転用モータを含んでいる。ディスク回転用モータは、ディスクを載置するための円盤形のターンテーブルを備えている。
【0003】
近年、メディアの記憶容量拡大により、ディスクを回転させるターンテーブル側(スピンドルモータ側)の加速および減速に対する要求度が厳しくなっている。これに伴い、ターンテーブルとディスクとの摩擦のマージンが少なくなっており、ターンテーブル上でディスクが滑りやすくなっている。
【0004】
そこで、ディスク回転用モータにおけるターンテーブル上でのディスクの滑りを防止するために様々な構成が提案されている。従来のディスク回転用モータに関連する技術は、たとえば下記特許文献1〜3などに開示されている。
【0005】
下記特許文献1には、記録ディスクが載置されるターンテーブルの載置面の上に貼り付けられるスリップ防止シートが開示されている。このスリップ防止シートは、ポリエステル系樹脂フィルムよりなる支持体と、支持体の一方の平面に形成されたスリップ防止機構部と、支持体の他方の平面に形成された粘着層とを備えている。スリップ防止機構部は、島状に点在するように形成されたドット層を有している。ドット層は非晶質性のポリエステル樹脂よりなっている。
【0006】
下記特許文献2には、テーブル部分の表面の周囲に滑り止めシートが貼り付けられたターンテーブル装置が開示されている。この滑り止めシートは、ポリエチレンテレフタレート製の基材と、基材表面に印刷された、ウレタン系のUV硬化インクよりなるドットとを含んでいる。
【0007】
下記特許文献3には、ポリカーボネート樹脂よりなる成形基体の載置面上に、シリコーンゴムよりなる接触層が被着されたターンテーブルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−310881号公報
【特許文献2】特開2004−39119号公報
【特許文献3】特開2000−339921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技術においては、ターンテーブル上に滑りを防止する材料を塗布した後、その材料を硬化させる必要があった。このため、ターンテーブル上でのディスクの滑りを防止するための構成の製造が複雑であるという問題があった。
【0010】
具体的には、特許文献1のスリップ防止シートは、支持体上に硬化前のポリエステル樹脂よりなる塗膜を形成し、この塗膜を熱硬化させることにより製造されていた。特許文献2のターンテーブル装置は、UV硬化型のウレタンよりなるドットを基材上に形成し、ドットをUV硬化させることにより製造されていた。特許文献3のターンテーブルは、成形基体の載置面上に、未硬化樹脂を塗布した後、硬化処理を行なうことにより製造されていた。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、簡易な方法で製造することのできるディスク回転用モータおよびこれを備えたディスク駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一の局面に従うディスク回転用モータは、ディスクを回転させるディスク回転用モータであって、ロータフレームと、ロータフレームに固定されたゴム部材とを備え、ゴム部材は、前記ロータフレームに固定された基部と、前記基部と同一材料よりなり、前記基部から突出した複数の突出部とを含み、複数の突出部の各々は前記ディスクと接触し、かつ前記複数の突出部の各々における前記ディスクとの接触面は平面状である。
【0013】
上記ディスク回転用モータにおいて好ましくは、複数の突出部の各々における前記ディスクとの接触面の平面度Aは、前記基部における前記突出部が形成されていない表面の平面度Bの0.9倍以上1.1倍以下である。
【0014】
本発明の他の局面に従うディスク駆動装置は、上述のディスク回転用モータと、ディスク回転用モータの駆動状態を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な方法で製造することのできるディスク回転用モータおよびこれを備えたディスク駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態におけるディスク駆動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるブラシレスモータ1の構成を模式的に示す斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態におけるクッションゴム13の拡大断面斜視図である。
【図5】図4の領域A1の拡大図である。
【図6】本発明の変形例におけるクッションゴム13の拡大断面斜視図である。
【図7】図6の領域A2の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態におけるディスク駆動装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1を参照して、本実施の形態におけるディスク駆動装置は、ディスク回転用モータとしてのブラシレスモータ1と、オンオフや回転速度などのブラシレスモータ1の駆動状態を制御する制御部2とを備えている。ブラシレスモータ1は、たとえばCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)やBlu−rayなどの光ディスク(ディスク80)を回転させるためのものである。
【0020】
図2および図3は、本発明の一実施の形態におけるブラシレスモータ1の構成を模式的に示す図である。図2は斜視図であり、図3は図2のIII−III線に沿う断面斜視図である。なお図3では、ディスク回転用モータにセットされたディスクを、ディスク回転用モータとともに示している。
【0021】
図2および図3を参照して、ブラシレスモータ1は、シャフト(回転軸)30を支持する概略筒形状を有する軸受40と、ステータ20と、ステータ20に対して相対的に回転するロータ10と、ロータ10の一部を構成するシャフト30を軸方向に支持するスラスト板31とを備える。軸方向とは、図3における矢印ARに平行な方向である。
【0022】
ステータ20は、中央から径方向外側へ放射状に延びるように形成される複数のティース部21aを有するステータコア21と、ティース部21aの周囲に巻回されたステータコイル22と、ステータコア21を保持するコアホルダ54とを備える。ロータ10は、ステータ20の外周に配置される円筒状のロータマグネット12と、軸受40により回転可能に支持されるシャフト30と、ロータマグネット12とシャフト30とを接続するロータフレーム11とを備える。
【0023】
ブラシレスモータ1においては、ステータ20とロータマグネット12とが協働して回転磁界を発生することにより、ロータ10がステータ20に対して相対的に回転する。ブラシレスモータ1は、ブラケット(モータ取り付け板)50に取付けられる。
【0024】
軸受40は、多孔性金属材料などから構成され、オイルが含浸されている。この構成により、軸受40は、シャフト30を回転自在に支持する。軸受40は、軸受40の外周側面を覆うハウジング52に圧入および接着により保持される。
【0025】
ブラケット50の軸受40が取り付けられる部分には、矢印AR方向に向かって窪む凹部が形成されている(ブラケット50の他の部分より一段低くなっており、段差が形成されている)。これは、以下の理由によるものである。すなわち、軸受40およびシャフト30の寿命を延ばし、強度を確保するために、軸受40およびシャフト30はできるだけ長くする必要がある。これにより、ブラシレスモータ1の中央の軸受部は下へ張り出す傾向がある。ブラケット50に凹部を形成することで、軸受40やシャフト30をその凹部内に収納することができる。また、この凹部の中に凸部を設け、その凸部に軸受40の内周を圧入することで、軸受40の位置決めを容易・高精度にすることができる。
【0026】
コアホルダ54とハウジング52とによって、軸受ハウジング部57が構成される。
【0027】
ステータコア21は、ステータコイル22が巻かれる部分(下面21bおよび上面21c)、および内周部21dを備えている。コアホルダ54は、ステータコア21の内周部21dと接する外周部54aを有している。外周部54aには、ステータコア21のコイルが巻かれる部分(下面21bおよび上面21c)と接する凸部が形成されていない。
【0028】
ハウジング52は、ロータフレーム11と一体に形成される抜け止め部(突出部)55の先端が入り込むことができる凸部(係合部)52aを備える。これにより、例えば調芯部材56にチャッキングされた光ディスクが取り外されるときなど、ロータ10にステータ20から外れる方向に向かう力(図3の矢印ARとは逆方向に向かう力)が働いても、ロータ10とステータ20とが容易に外れない。凸部52aは、ハウジング52の全周360°に渡って設けられており、鍔部を構成する。
【0029】
ステータコア21の内周部21dは、ステータコア21の厚さ方向に見て(図3に示されている方向から見て)、その一部分がコアホルダ54の外周部54aと接し、他の部分はコアホルダ54の外周部54aと接しない。このようなステータコア21とコアホルダ54との位置関係とすることで、コアホルダ54の上部に空間(ステータコア21の内周部21dと、コアホルダ54の上面と、ハウジング52の外周部とで囲まれる空間)を形成することができる。この空間内には、抜け止め部55を位置させることができるので、モータの薄型化を図ることができるようになっている。
【0030】
ブラシレスモータ1は、ディスク80をチャッキングする調芯部材56と、ディスク80がチャッキングされた際にディスク80の下面が当接するクッションゴム13(ターンテーブルクッションゴム、ゴム部材の一例)とをさらに含んでいる。調芯部材56およびクッションゴム13はターンテーブル部を構成している。
【0031】
調芯部材56は外径方向(図3中左右方向)に付勢されている。クッションゴム13は、ロータフレーム11の上面に固定されている。クッションゴム13はディスク80がロータフレーム11に対して滑ることを防止する。ブラシレスモータ1にディスク80をセットする際には、ディスク80は、その中心部の孔80aが調芯部材56にはめ込まれるように、クッションゴム13上に配置される。調芯部材56はバネの作用によりディスク80の孔80aの内周面を押圧することで、ディスク80を固定する。クッションゴム13は、ディスク80の図3中上下方向の振動を抑止する。これにより、ディスク80はロータフレーム11上に固定され、ロータフレーム11とともにシャフト30を中心として回転する。
【0032】
図4は、本発明の一実施の形態におけるクッションゴム13の拡大断面斜視図である。
【0033】
図4を参照して、クッションゴム13は、基部101と、複数の突出部103とを含んでいる。基部101および複数の突出部103は同一材料よりなっており、たとえばシリコーンゴムやクロロプレンゴムなどのゴムよりなっている。クッションゴム13は、たとえば直圧成形、直圧注入成形、または射出成形(たとえばインサートモールド)などの方法により一体的に成形される。このため、基部101と複数の突出部103との間には境界面が存在しない。
【0034】
基部101は、接着層105によりロータフレーム11に接着(接合)されている。接着層105は、たとえば両面テープなどよりなっている。接着層105として両面テープが用いられる場合、ブラシレスモータ1の組立時には、両面テープの一方の面にクッションゴム13が貼り付けられ、両面テープの他方の面に貼り付けられている離型紙を剥がして、その面にロータフレーム11が貼り付けられる。
【0035】
複数の突出部103の各々は、基部101から図4中上方向(接着層105およびロータフレーム11とは反対方向)に突出しており、ディスク80と接触する。複数の突出部103の各々は、たとえば3つの同心円状のパターンを構成している。なお、複数の突出部103の個数および位置は任意である。複数の突出部103の配列は規則性を有していてもよいし、ランダムでもよい。
【0036】
図5は、図4の領域A1の拡大図である。
【0037】
図5を参照して、複数の突出部103の各々は、たとえば円錐台形を有している。すなわち、突出部103を断面で(側面から)見た場合、突出部103は台形状を有しており、台形の上底がディスク80との接触面となっている。突出部103を図5中上部から見た場合、突出部103は円形状を有している。ディスク80との接触面に突出部103を設けることで、塵埃などが突出部103同士の間の基部101に落ちやすく(付着しやすく)なり、クッションゴム13におけるディスク80との接触面にゴミが付着しにくくなる。また、突出部103はゴムよりなっているので、ディスク80をセットした場合にディスク80の自重によって突出部103が潰れる。その結果、クッションゴム13とディスク80との接触面積および摩擦力が増加し、高速回転時の滑りを防止することができる。
【0038】
複数の突出部103の各々における表面SF3は、ディスク80との接触面であり、平面状(平坦部)となっている。ここで「平面状」とは、成形の際に用いられる金型の表面粗さなどに起因して生じる成形品の表面の凹凸を無視した程度の平面状を意味している。通常、表面SF3を成形する金型の表面粗さと、基部101における突出部103が形成されていない平面状の表面SF1を成形する金型の表面粗さとはほぼ同じである。したがって、表面SF3の平面度と表面SF1の平面度とはほぼ同じである。具体的には、表面SF3の平面度Aは、表面SF1の平面度Bの0.9倍以上1.1倍以下である。
【0039】
表面SF1およびSF3の平面度は、たとえばJIS(Japanese Industrial Standard) B 7513に規定される測定方法を用いて測定される。オプチカルフラットによる測定方法、レーザ干渉計による測定方法、または3点ゲージによる測定方法のいずれが採用されてもよい。
【0040】
なお、クッションゴム13の径方向の幅(図4中横方向の長さ)は、たとえば3.5mmであり、突出部103におけるディスク80との接触面の径方向の幅は、たとえば0.5mm〜1.0mmである。ディスク80のスリップを予防するという観点では、突出部103におけるディスク80との接触面は広い方が好ましい。一方、突出部103同士の間の基部101に塵埃などを落ちやすくするという観点では、突出部103同士の間隔を広げるために、突出部103におけるディスク80との接触面は狭い方が好ましい。したがって、突出部103のサイズおよび個数は、上述の2つの観点から決定されることが好ましい。
【0041】
[変形例]
複数の突出部103の各々は、ディスクとの接触面が平面状であればよく、たとえば多角錐台形のような円錐台形以外の錐台形状を有していてもよいし、円柱形状や多角柱状を有していてもよい。
【0042】
図6は、本発明の変形例におけるクッションゴム13の拡大断面斜視図である。図7は、図6の領域A2の拡大図である。
【0043】
図6および図7を参照して、複数の突出部103の各々は、たとえば四角錐台形を有している。すなわち、突出部103を断面で(側面から)見た場合、突出部103は台形状を有しており、台形の上底がディスク80との接触面となっている。突出部103を図6中上部から見た場合、突出部103は四角形状を有している。
【0044】
なお、本変形例における上述以外のブラシレスモータの構成は、上述の実施の形態の場合と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0045】
[実施の形態の効果]
上述の実施の形態によれば、クッションゴム13(ゴムシート)を形成すると同時に複数の突出部103(突形状)が形成される。このため、複数の突出部103を形成するためにUV硬化処理や熱効果処理を行う必要が無く、簡易な方法で(少ない工程で)ディスク回転用モータを製造することができる。
【0046】
また、複数の突出部103の各々におけるディスク80との接触面が平面状であるので、突出部の表面が曲面状である場合に比べてディスクとの接触面積を大きくすることができ、摩擦力を増加することができる。
【0047】
[その他]
本発明のディスク回転用モータは、上述の実施の形態のような軸回転型のモータの他、軸固定型のモータや、平面対向型のモータなどであってもよい。
【0048】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 ブラシレスモータ
2 制御部
10 ロータ
11 ロータフレーム
12 ロータマグネット
13 クッションゴム
20 ステータ
21 ステータコア
21a ティース部
21b ステータコアの下面
21c ステータコアの上面
21d ステータコアの内周部
22 ステータコイル
30 シャフト
31 スラスト板
40 軸受
50 ブラケット
52 ハウジング
52a ハウジングの凸部
54 コアホルダ
54a コアホルダの外周部
55 抜け止め部
56 調芯部材
57 軸受ハウジング部
80 ディスク
80a ディスクの孔
101 基部
103 突出部
105 接着層
SF1,SF3 表面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを回転させるディスク回転用モータであって、
ロータフレームと、
前記ロータフレームに固定されたゴム部材とを備え、
前記ゴム部材は、前記ロータフレームに固定された基部と、前記基部と同一材料よりなり、前記基部から突出した複数の突出部とを含み、
前記複数の突出部の各々は前記ディスクと接触し、かつ前記複数の突出部の各々における前記ディスクとの接触面は平面状である、ディスク回転用モータ。
【請求項2】
前記複数の突出部の各々における前記ディスクとの接触面の平面度Aは、前記基部における前記突出部が形成されていない表面の平面度Bの0.9倍以上1.1倍以下である、請求項1に記載のディスク回転用モータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のディスク回転用モータと、前記ディスク回転用モータの駆動状態を制御する制御部とを備えた、ディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−114699(P2013−114699A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256915(P2011−256915)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(504257302)ミネベアモータ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】