説明

ディスク積層型スクリーン

【課題】高強度のウェッジワイヤ式スクリーンをスクリュープレス圧搾機の圧搾部に適用して圧搾脱水(脱油)を可能とする。
【解決手段】原料aが接触する内周部にくさび型断面の部位47を有する環状又は非環状のスクリーン形成部材48a〜48dと環状の介在物49a〜49dとを交互に積層して隣接するスクリーン形成部材48a〜48dの間に隙間50を形成し、かつ、前記スクリーン形成部材48a〜48dの外周部に前記隙間50に連通する切欠き状の排出部51を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドレートの圧搾脱水、高含水率原料の脱水、菜種油に代表される植物油の圧搾等に使用されるスクリュープレス圧搾機に適用するためのディスク積層型スクリーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリュープレス圧搾機は、主として油圧搾に使用されるため、非常に堅牢な構造になっている。図9に示すように、入口ノズル24から投入された原料は、ウォームスクリュー12,13によりスクリューの回転とともに出口シュート32側に搬送される。その搬送過程において、ウォームスクリュー13と横桟27,28とが成すすきま間隔が徐々に狭まっているため、移送されるにつれて原料は脱水(脱油)されて行く。
【0003】
プレート構造である横桟26,27,28は、ウォームスクリュー12,13に対して円筒配置となるよう組み上げられる。横桟26,27,28の側端部には、スリット(幅0.1〜0.4mm、長さ12.5mm)が4カ所設けられており、このスリットから水若しくは油が圧搾排出される。
【0004】
更に、従動側プレート2、調節プレート4、ウォームスクリュー13、出口側スリーブ17で構成される最狭窄部(圧搾部)において原料は最も圧搾され、調節プレート4の位置により、所望の脱水(脱油)率となるケーキが出口シュート32より排出される仕組みとなっている。
【0005】
しかし、最狭窄部に脱水(脱油)経路を確保することは、スクリーン強度の観点から不可能であった。ハイドレートのようなガス、固体、水混合の物質から水だけを除去する場合、ウェッジワイヤ式スクリーンが有効であることは良く知られている。ところが、ウェッジワイヤ式スクリーンは、くさび型断面を持つ細いワイヤと細いロッドの溶接組み合わせで製作されるために強度が低い。
【0006】
このため、脱水に有効であると認識されているものの圧力がかかる部分にウェッジワイヤ式スクリーンを適用することができなかった。ウェッジワイヤ式スクリーンの適用事例としては、高々、0.5MPaG程度である。
【0007】
一方、これまでの試験により、スクリュープレス圧搾部では、最大3MPaG程度の圧力印加が計測されている。
【0008】
なお、スクリュープレス機としては、果汁や豆乳等を絞る食品加工処理、或いは、畜糞、野菜屑、果物屑等の廃棄物処理に用いるものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−132295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高強度のウェッジワイヤ式スクリーンをスクリュープレス圧搾機の圧搾部に適用して圧搾脱水(脱油)を可能とすることにより、高品質のケークを生成可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に係るディスク積層型スクリーンは、原料が接触する内周部にくさび型断面の部位を有する環状又は非環状のスクリーン形成部材と環状の介在物とを交互に積層して隣接するスクリーン形成部材の間に隙間を形成し、かつ、前記スクリーン形成部材の外周部に前記隙間に連通する切欠き状の排出部を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
本願の請求項2に係るディスク積層型スクリーンは、原料が接触する内周部にくさび型断面の部位を有する環状のスクリーン形成部材と環状又は非環状の介在物とを交互に積層して隣接するスクリーン形成部材の間に隙間を形成し、かつ、介在物の内径を、スクリーン形成部材の内径よりも大径にすることを特徴とするものである。
【0013】
本願の請求項3に係るディスク積層型スクリーンは、原料が接触する内周部にくさび型断面の部位を有する環状のスクリーン形成部材と環状又は非環状の介在物とを交互に積層して隣接するスクリーン形成部材の間に隙間を形成し、かつ、隣接するスクリーン形成部材の間に形成された隙間を、介在物の板厚を変更することにより任意に調整することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
上記のように、本発明は、原料が接触する内周部に断面くさび型の部位を有する環状又は非環状のスクリーン形成部材と環状の介在物とを交互に積層して隣接するスクリーン形成部材の間に隙間を形成し、かつ、前記スクリーン形成部材の外周部に前記隙間に連通する切欠き状の排出部を設けたので、圧搾圧が高い部分でも排水や排油等の排出が可能となり、安定した高品質の製品の生成が可能になる。
【0015】
スクリーンの構造が単純なディスク構造であるため強度が高い。FEM解析(有限要素法解析)の結果、5MPaGの内圧に対しても破壊するに至らなかった。
【0016】
また、隣接するスクリーン形成部材の間に形成された隙間の間隔は、シムやスペーサ等の介在物の板厚を変更することにより任意に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るディスク積層型スクリーンを適用したスクリュープレス圧搾機の断面図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】図1のB−B矢視図である。
【図4】図1のC−C矢視図である。
【図5】本発明に係るディスク積層型スクリーンの正面図である。
【図6】本発明に係るディスク積層型スクリーンの一部断面を含む要部拡大正面図である。
【図7】図6のD−D断面図である。
【図8】本発明に係るディスク積層型スクリーンの作用説明図である。
【図9】従来のスクリュープレス圧搾機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。尚、この実施の形態では、原料のガスハイドレートスラリーを脱水する場合を例に採る。
【0019】
図1において、符号100はスクリュープレス圧搾機であり、入口ノズル24から投入された原料(ガスハイドレートスラリー)aは、ウォームスクリュー12〜16によりスクリューの回転とともに出口シュート32側に搬送される。その搬送過程において、ウォームスクリュー13〜16と横桟27,28とが成すすきま間隔が徐々に狭まっているため、移送されるにつれて原料(ガスハイドレートスラリー)aは脱水されて行く。
【0020】
プレート構造である横桟27,28は、ウォームスクリュー12の後半部分及び13〜16に対して円筒配置となるように組み上げられ、その外側がケージ(構造体)30で保持されている(図4参照)。横桟27,28の側端部には、スリット29(幅0.1〜0.4mm、長さ12.5mm)が4カ所設けられており、このスリット29から水が圧搾排出される。換言すれば、横桟27,28の部分は、固液分離部36となっている。
【0021】
他方、ウォームスクリュー12の前半部分に対応する個所は、円筒状のウェッジワイヤスクリーン25となっている。ウェッジワイヤスクリーン25は、図3に示すように、多数のV字型断面ワイヤー37を平行に並べたもので、入口が狭く内部が広くなる連続したスロット38を持っている。ワイヤー37の外側には、スロット38の間隔を一定に保持するための多数の円弧状のロッド39があり、ワイヤー37とロッド39の交差部は溶接されている。
【0022】
ウォームスクリュー12は、スクリュー翼が連続しているが、ウォームスクリュー13,14,15,16は、スクリュー翼が単巻き翼となっている。これらのウォームスクリュー12〜16を装着した駆動軸9は、その一端がケージ1の上流端に装着した軸受蓋7に保持され、他端が出口ハウジング5に保持されている。出口ハウジング5は、筒状のスケールプレート31を介してケージ1の下流端に装着した従動側プレート2に取り付けられている。
【0023】
符号33はウェッジワイヤスクリーン25で分離された液状物を受けて排出するトレイであり、その最下部に排出孔を有している。符号34は固液分離部36で分離された液状物を受けて排出するトレイであり、その最下部に排出孔を有している。
【0024】
図1に示すように、駆動軸9の下流端に嵌合された円筒状の出口側スリーブ17は、駆動軸9に螺合させた六角ナット40によってウォームスクリュー16の下流端に押圧されている。
【0025】
従動側プレート2の後流側に設けられた環状の調節プレート4は、漏斗状の先端部41が従動側プレート2の軸芯部に設けられている貫通孔内に挿入されている。このため、調節プレート4を駆動軸9の長手方向に移動させると、調節プレート4の漏斗状の先端部41と出口側スリーブ17の上流端に設けた円錐台状の頭部18との間の隙間を調整することができる。
【0026】
スケールプレート31の下部に出口シュート32が設けられ、ケージ1の上流端から数えて2番目の枠体にシール板6が設けられている。また、ウォームスクリュー12の上流端にシールスリーブ11が設けられ、従動側プレート2の上流端に本発明のディスク積層型スクリーン45が装着されている。
【0027】
ディスク積層型スクリーン45は、図5〜図7に示すように、原料が接触する内周部46にくさび型断面の部位47を持った複数の円環状のスクリーン形成部材48a〜48dと複数の円環状の介在物(例えば、円環状のシム又はスペーサ等)49a〜49dとを交互に積層したものであり、スクリーン形成部材48a〜48dの間に介在物49b〜49dによって形成された隙間50を備えている。各スクリーン形成部材48a〜48dは、その外周部に隙間50に連通する切欠き状の排出部51を設けている。
【0028】
排出部51は、スクリーン形成部材48a〜48dの円周方向に一定の間隔で複数設けられている。排出部51の形状は、限定されないが、製作上、円弧形又はU字形等が望ましい。符号52は締付けねじであり、隣接する排出部51,51の間に形成された突出部53に配置され、スクリーン形成部材48a〜48dと介在物49a〜49dとを一体化させている。
【0029】
その際、スクリーン形成部材48a〜48dの外周部に設けた切欠き状の排出部51をスクリーン形成部材48a〜48dの間に形成された隙間50と連通させるため、円環状の介在物49a〜49dの内径を円環状のスクリーン形成部材48a〜48dの内径より大径とすることが必要である。
【0030】
ディスク積層型スクリーン45は、図7に示すように、くさび型断面の部位47の内周部46が滑らかである。また、隣接する二つのくさび型断面の部位47,47の間の隙間は、入口が狭く、内部が広くなっている。
【0031】
また、スクリーン形成部材48a〜48d及び介在物49a〜49dの数量は、適宜、増減することができる。
【0032】
次いで、スクリュープレス圧搾機100の動作を説明する。
【0033】
先ず、調節プレート4を駆動軸9の長手方向に移動させて調節プレート4の漏斗状の先端部41と出口側スリーブ17の円錐台状の頭部18との間の隙間を調整し、原料(ガスハイドレートスラリー)aに付加する加圧力を調整する。
【0034】
次いで、駆動軸9に装着されたウォームスクリュー12及び13〜16を回転させた後、入口ノズル24から原料であるハイドレートスラリーaを投入すると、ウォームスクリュー12によって下流側に移送される間にハイドレートスラリーaに含まれている水wの一部がウェッジワイヤースクリーン25のスロット38からトレイ33内に流下し、排出孔から機外に排出される。
【0035】
一部脱水されたハイドレートスラリーaは、ウォームスクリュー12及び13〜16によって下流側に移送されるが、ウォームスクリュー13,14,15,16は下流側に行くにつれて軸径が、順次、大きく形成された圧搾軸部になっているため、次第に圧搾され、ハイドレートスラリーaより絞り出された水wは、横桟27,28のスロット29からトレイ34内に流下し、排出孔から機外に排出される。
【0036】
ウォームスクリュー16によってディスク積層型スクリーン45内に押し込まれたハイドレートケーキa’は、調節スリーブ4の漏斗状の先端部41と出口側スリーブ17の円錐台状の頭部18との間が通過し難くなっていることから更に圧搾される。
【0037】
このため、図8に示すように、ハイドレートケーキa’より絞られた水wは、スクリーン形成部材48a〜48dの間の隙間50を通過した後、スクリーン形成部材48a〜48dに設けた排出部51よりディスク積層型スクリーン45の外周部側に流出する。この流出水wは、既に説明したトレイ34内に排出される。
【0038】
調節プレート4の先端部41と出口側スリーブ17の円錐台状の頭部18との間を通過したハイドレートケーキa’は、出口シュート32から機外に排出される。
【0039】
以上の説明では、スクリーン形成部材48a〜48dの間に円環状の介在物49a〜49dを介在させた場合について説明したが、介在物49a〜49dとしては、非円環状の介在物を使用することもできる。この場合、スクリーン形成部材48a〜48dの間に形成された隙間50が排出部を兼ねることになる。
【0040】
また、ディスク積層型スクリーンは、ハイドレートの圧搾脱水のほか、高含水率原料の脱水、菜種油に代表される植物油の圧搾等に使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
a 原料
46 内周部
47 くさび型断面の部位
48a〜48d スクリーン形成部材
49a〜49d 介在物
50 隙間
51 排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料が接触する内周部にくさび型断面の部位を有する環状のスクリーン形成部材と環状又は非環状の介在物とを交互に積層して隣接するスクリーン形成部材の間に隙間を形成し、かつ、前記スクリーン形成部材の外周部に前記隙間に連通する切欠き状の排出部を設けたことを特徴とするディスク積層型スクリーン。
【請求項2】
原料が接触する内周部にくさび型断面の部位を有する環状のスクリーン形成部材と環状又は非環状の介在物とを交互に積層して隣接するスクリーン形成部材の間に隙間を形成し、かつ、介在物の内径を、スクリーン形成部材の内径よりも大径にすることを特徴とする請求項1に記載のディスク積層型スクリーン。
【請求項3】
原料が接触する内周部にくさび型断面の部位を有する環状のスクリーン形成部材と環状又は非環状の介在物とを交互に積層して隣接するスクリーン形成部材の間に隙間を形成し、かつ、隣接するスクリーン形成部材の間に形成された隙間を、介在物の板厚を変更することにより任意に調整することを特徴とする請求項1又は2に記載のディスク積層型スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−59781(P2013−59781A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198793(P2011−198793)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)