ディスク駆動装置
【課題】可及的小型のディスク駆動装置にして、筐体内へのディスクの搬入と筐体外へのディスクの搬出を好適に行えるようにする。
【解決手段】ディスクDを支持するディスクトレイ3と、ディスクトレイ3を旋回可能に支持する支点軸Sをもつトレイベース4とを備える。トレイベース4は、筐体1内に納まる第1位置と筐体1外に張り出す第2位置との間を直進移動する。一方、ディスクトレイ3は、支点軸Sを中心にトレイベース4に平行する面内を旋回して、トレイベース4よりも筺体1の外方に張り出すディスク取出位置とトレイベース4に対面して前記ディスク取出位置よりも筐体1側に位置する初期位置との間を移動する。
【解決手段】ディスクDを支持するディスクトレイ3と、ディスクトレイ3を旋回可能に支持する支点軸Sをもつトレイベース4とを備える。トレイベース4は、筐体1内に納まる第1位置と筐体1外に張り出す第2位置との間を直進移動する。一方、ディスクトレイ3は、支点軸Sを中心にトレイベース4に平行する面内を旋回して、トレイベース4よりも筺体1の外方に張り出すディスク取出位置とトレイベース4に対面して前記ディスク取出位置よりも筐体1側に位置する初期位置との間を移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状の情報記録媒体(ディスク)に楽曲情報などを記録したり、その記録情報を再生したりするのに用いられる装置に係わり、特にディスクを装置筺体の内部と外部との間で搬送するディスク搬送機構を備えたディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクに楽曲情報などを記録したり、その記録情報を再生したりするのに用いられるディスク駆動装置として、ディスクの自動搬送を行うディスク搬送機構を備えたものが一般に広く知られている。尚、係るディスク搬送機構は、ローラ搬送方式とトレイ搬送方式とに大別される。
【0003】
図9は、本願発明の属するトレイ搬送方式の典型的な従来例を示す。図9において、Cは装置の筐体、dt1はディスク搬送機構を構成するディスクトレイであり、ディスクトレイdt1はその上面部にディスクDを載せて図9の実線で示されるドライブ位置と一点鎖線で示されるイジェクト位置との間を直進移動し、上記ドライブ位置では図示せぬドライブユニットによるディスクDの回転駆動などが行われ、上記イジェクト位置ではディスクDの取り出しや交換が可能とされる。
【0004】
しかし、図9に示されるようなディスク搬送機構では、ディスクDの直径より大きいストローク長でディスクトレイdt1を移動させねばならないし、イジェクト位置に達したディスクトレイdt1が片持ち支持されるようその全長を大きく設定しなければならないから、ディスクトレイdt1の移動範囲を考慮して筐体Cの奥行きを大きくする必要があり、結果として装置全体が大型化するという問題があった。
【0005】
一方、図10及び図11に示すように、扇形のディスクトレイdt2にして、これが回転軸Rを中心に旋回移動するようにしたディスク搬送機構も知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−287911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ディスクトレイdt2がディスクDを載せて旋回移動する構成のディスク搬送機構では、ディスクトレイdt2をディスクDの直径と同程度の半径を有する扇形にして筐体Cの奥行きを小さくすることができるものの、ディスクトレイdt2の旋回半径を小さくすると図10のようにディスクトレイdt2を90度以上旋回させてもディスクDが筐体Cの外部まで搬出されず、これを防止するべくディスクトレイdt2の旋回半径を大きくすると、図11のように筐体Cの横幅を大きくしながら当該筐体Cにディスクトレイdt2の旋回を許容する幅の大きな開口部Aを穿設する必要が生じ、装置の小型化を図れない結果を招くばかりでなく、開口部Aから筐体C内に対して塵埃が侵入し易くなるという問題を発生する。
【0008】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は可及的小型のディスク駆動装置にして筐体内へのディスクの搬入と筐体外へのディスクの搬出を好適に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため、
ディスクDを搬送するディスク搬送機構2を備えたディスク駆動装置において、
ディスク搬送機構2は、
ディスクDを支持するディスクトレイ3と、
ディスクトレイ3を旋回可能に支持する支点軸Sを有して筺体1の内部に納まる第1位置と筺体1の外部に張り出す第2位置との間を移動可能とされるトレイベース4と、
トレイベース4を前記第1位置と第2位置との間で直進移動させるベース駆動部6と、
ディスクトレイ3をトレイベース4に平行する面内で支点軸Sを中心に旋回させるトレイ駆動部5と、を具備して成り、
ディスクトレイ3は、トレイ駆動部5の駆動により支点軸S回りに旋回されて、トレイベース4よりも筺体1の外方に張り出すディスク取出位置とトレイベース4に対面して前記ディスク取出位置よりも筐体1側に位置する初期位置との間を移動することを特徴とするディスク駆動装置を提供する。
【0010】
加えて、ディスクトレイ3に支持されたディスクDがトレイベース4と同方向に直進移動するように、ディスクトレイ3の旋回移動に同調してその旋回中心となる支点軸Sを移動させる支点軸移動手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ディスクを支持するディスクトレイと、このトレイを支持する支点軸を備えたトレイベースとを有し、そのトレイベースが筐体内に納まる第1位置と筐体外に張り出す第2位置との間を前後に直進移動することに加え、ディスクトレイが支点軸を中心にしてトレイベースに平行する面内で旋回移動する構成としたことから、ディスクトレイの旋回半径とトレイベースの移動量を小さくしながら、ディスクトレイで支持したディスクの全体を筐体内に搬入したり筐体外に搬出したりすることができ、筐体の奥行きや幅も小さくできるから装置の小型化を図ることが容易になる。
【0012】
又、支点軸移動手段を備えるものでは、装置の小型化が一層容易となり、しかもディスク搬送動作上の観点から装置の品格、高級感が高まるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るディスク駆動装置の内部を示す平面概略図
【図2】ディスクが筐体外部のイジェクト位置に搬出された状態を示す斜視図
【図3】トレイベースを表面側からみた状態を示す平面透視図
【図4】ディスク搬送機構を示す部分断面図
【図5】ディスク搬送中の状態を示す動作説明図
【図6】ディスクがドライブ位置とイジェクト位置にある状態を示す動作説明図
【図7】本発明の変更例として筐体内を底面側からみた状態を示す図
【図8】図7のX−X断面図
【図9】従来例を示す概略図
【図10】他の従来例を示す概略図
【図11】他の従来例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面に基づいて詳しく説明する。先ず、図1において、1は装置の外装を成す筐体であり、その一端面(前端面)には横長スリット状の開口部1aが形成されている。2はディスクを筐体1内のドライブ位置と筐体1外のイジェクト位置との間で搬送するディスク搬送機構であり、このディスク搬送機構2は、平行する上下2段の板材を具備して構成される。上段の板材はディスクを支持するディスクトレイ3とされ、下段の板材はディスクトレイ3を旋回自在に支持する支点軸Sをもつトレイベース4とされる。
【0015】
ディスクトレイ3は、開口部1a側の一角に連結する支点軸Sを中心にディスクを載せて旋回移動するもので、トレイベース4に対向する側の面(裏面)には支点軸Sを中心とする円弧状のセクタギヤ部31が形成され、その反対側の面(表面)にはディスクを配置する円形凹部32が形成されている。セクタギヤ部31は内歯車でも外歯車でもよいが、本例ではセクタギヤ部31が内歯車とされ、その内側に配される後述のトレイ駆動部5から当該セクタギヤ部31に動力伝達が行われるようになっている。そして、係るディスクトレイ3は、トレイ駆動部5の駆動により、トレイベース4に平行する面内で支点軸S回りに旋回され、トレイベース4よりも筺体1の外方に張り出すディスク取出位置(図2の状態)と、トレイベース4に対面して前記ディスク取出位置よりも筐体1側に位置する初期位置(図1、図3、図5の状態)との間を移動する。
【0016】
尚、図1において、ディスクトレイ3は、トレイベース4に対面する初期位置にあって、ディスクのドライブ位置に合致している状態であり、この位置では円形凹部32に配置されたディスクの回転駆動が行われる。Tはディスクを回転させるためのターンテーブル、Pはディスクの盤面に沿ってその半径方向に移動する光ピックアップであり、それらは図示せぬ昇降台に搭載されてディスク搬送機構2とは別のドライブユニットを構成し、ドライブ位置に達したディスクをターンテーブルTによりディスクトレイ3から若干隔てて回転させながら、その記録情報を光ピックアップPで読み取る。ここに、ターンテーブルTや光ピックアップPを含むドライブユニットをディスクトレイ3に一体的に組み付けるようにしてもよい。
【0017】
又、図1から明らかなように、ディスクトレイ3には、光ピックアップPの移動経路に沿って円形凹部32の中心からその外域まで達する切欠孔部33が形成され、これによってターンテーブルTによるディスクの回転、及び光ピックアップPによる記録情報の読み取りが可能とされている。更に、ディスクトレイ3の一端縁には筐体1の開口部1aに整合する蓋板部34が形成され、当該ディスクトレイ3が初期位置にあってディスクがドライブ位置に案内されたとき、上記の蓋板部34により開口部1aが閉鎖されるようになっている。
【0018】
一方、トレイベース4は、筐体1の内部に納まる第1位置(図1の位置)と筐体1の外部に張り出す第2位置との間を移動可能とされている。Gはトレイベース4を移動案内するガイドレールであり、このガイドレールGは開口部1aの長手方向両側にあって筐体1内に固設されている。そして、トレイベース4はその両側縁をガイドレールGにより支持されながら、開口部1aを通じて上記第1位置と第2位置との間を直進移動するのであり、このトレイベース4がディスクトレイ3を初期位置に支持しながら上記第2位置から図1に示される第1位置まで達すると、ディスクトレイ3で支持されたディスクが上記ドライブ位置に位置決めされることとなる。
【0019】
図2はディスクDがイジェクト位置に搬出された状態であり、このときトレイベース4は第2位置にあってその前端部が開口部1aから筐体1の外部に張り出し、ディスクトレイ3はディスク取出位置(ディスクに関してイジェクト位置と同じ)にあってトレイベース4より筐体1の外部に張り出す。そして、この状態では図2のようにディスクトレイ3上のディスクDが筐体1の外部に完全に露出し、以ってその取出ならびに交換が可能とされる。
【0020】
次に、図3において、6はトレイベース4を第1位置と第2位置との間で直進移動させるベース駆動部を示す。このベース駆動部6は、筐体1内の定位置に固設される回転駆動源61(可逆モータ)とそのロータ軸に固着したピニオン62から構成され、トレイベース4にはピニオン62に噛み合うラック部41が一体として形成されている。尚、図3では、回転駆動源61、ピニオン62、ならびにラック部41を実線で示しているが、それらは図3に示すトレイベース4の表面(ディスクトレイ3に対向する面)とは反対の裏面側に設けられている(図4参照)。
【0021】
又、図3及び図4から明らかなように、トレイベース4は上記のトレイ駆動部5を搭載している。係るトレイ駆動部5は、トレイベース4の裏面後方部(図3において上側)に固設した回転駆動源51(可逆モータ)と、その回転駆動力をディスクトレイ3のセクタギヤ部31に伝達する歯車伝動部52とで構成される。本例において、歯車伝動部52は4つのギヤ52a,52b,52c,52dから成り、その一つ52aはトレイベース4を貫通する回転駆動源51のロータ軸に固着され、他のギヤ52b〜52dはトレイベース4に回転自在に取り付けられており、このうち最終のギヤ52dがセクタギヤ部31に噛み合わされている。
【0022】
尚、歯車伝動部52に代えて巻き掛け伝動方式を採用したり、ギヤ52a〜52cを省略してギヤ52dを回転駆動源51で直接駆動したりするようにしてもよいが、ギヤ52dを回転駆動源51で直接駆動する方式では、トレイベース4の移動に伴って回転駆動源51が筐体1の外部に露出する位置となるため、回転駆動部51として開口部1aを通過することのできる偏平モータを使用している。又、本例において、トレイベース4に設けられる支点軸Sは、固定軸でも回転軸でもよいが、これを図示せぬモータのロータ軸(回転駆動軸)にして、その支点軸Sを回転駆動源51や歯車伝動部52に代わるトレイ駆動部とすることができる。
【0023】
ここで、上記のように構成されるディスク搬送機構2の動作について説明すると、ドライブ位置にあるディスクDをイジェクト位置に搬出する場合には、先ずベース駆動部6の駆動が開始され、これにより図5に示される如くディスクトレイ3がトレイベース4に対面する初期位置に維持されたまま、トレイベース4がディスクトレイ3を支持しながら第1位置から第2位置まで移動し、支点軸Sを含むトレイベース4の前端部およびディスクトレイ3の前端部が開口部から筐体1の外部に張り出すようになる。
【0024】
次いで、ベース駆動部6の停止を以ってトレイベース4を図6の一点鎖線で示される第2位置に維持したまま、トレイ駆動部5の駆動が行われる。しかして、ディスクトレイ3がディスクDを支持しながら、図6の一点鎖線で示されるディスク取出位置に向けて支点軸Sを中心とする旋回移動(図6において右旋回)を開始する。このとき、支点軸Sが筐体1の外部に位置しているから、その支点軸Sを中心とするディスクトレイ3の旋回半径を小さくしながら、ディスクトレイ3に載せられたディスクDをイジェクト位置(筐体1から完全露出する位置)まで搬出することができる。そして、ディスクトレイ3が図6の一点鎖線で示されるディスク取出位置に達すると、トレイ駆動部5が停止し、ディスクトレイ3に載せられたディスクDが筐体1から完全に露出したイジェクト位置となり、その取り出し、交換が可能とされる。
【0025】
尚、ディスクDをイジェクト位置からドライブ位置に搬入する場合は、上記とは逆に先ずディスクトレイ3がディスク取出位置から初期位置に復帰され、次いでトレイベース4が第2位置から第1位置に移動されることになる。
【0026】
次に、図7および図8に基づいて本発明に係る変更例を説明する。尚、上記例と変更なき部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。ここに、図7および図8は、ディスクトレイ3の旋回中心となる支点軸Sを移動支点とし、ディスクトレイ3の円形凹部32に配置されたディスクDの中心位置がドライブ位置とイジェクト位置との間でトレイベース4と同方向に直進移動するようにした構成例を示す。本例において、トレイベース4には開口部1aの長手方向に沿って支点軸Sの移動案内をする長孔42が穿設され、その長孔42に支点軸Sが通される。支点軸Sは図8に示される回転駆動源53(可逆モータ)のロータ軸であり、その回転駆動源53は、図8に示されるようにディスクトレイ3とトレイベース4との間でスライド板7を介してトレイベース4に取り付けられ、長孔42の長手方向にのみ移動を許容されている。支点軸Sはその両端が回転駆動源53から突出し、その一端にディスクトレイ3が固着され、他の一端にはカム8が固着されている。カム8は、支点軸Sの回転駆動によるディスクトレイ3の旋回移動に同調して、その旋回中心となる支点軸Sを長孔42に沿って往復移動させる支点軸移動手段を構成するもので、カム8には図7に示されるような馬蹄形のカム溝8aが形成され、トレイベース4にはカム溝8aに対応する固定ピン43が突設されている。
【0027】
そして、上記のような支点軸移動手段を有するディスク搬送機構によれば、ディスクトレイ3が初期位置とディスク取出位置との間を旋回移動するとき、その旋回中心となる支点軸Sがカム溝8aに倣って長孔42内を往復移動することにより、ディスクトレイ3に載せられたディスクDを図7に示す直線Lに沿ってトレイベース4と同方向に直進移動させることができる。このため、装置の高級感が高まるほか、開口部1aの長さをディスクDの直径近くまで短縮しながら、ディスクトレイ3やディスクDを開口部1aの端縁に干渉させることなくディスクDの搬入、搬出を行うことが可能となる。
【0028】
以上、本発明に係るディスク駆動装置の具体例を説明したが、本発明は図示例に限定されるものでなく、ディスクトレイ3やトレイベース4の形状や大きさは適宜変更することができる。又、支点軸移動手段は、図7のようなカム8に限らず、この手段にリニアモータなどを用いることもできる。更に、図2には係るディスク駆動装置を横置き型として示したが、開口部1aが上下に向くような縦置き型とすることもできる。加えて、トレイベース4を前後させるモータとディスクトレイ3を旋回させるモータをそれぞれ個別に設けることに限らず、これに単一のモータを用い、その動力をトレイベース4とディスクトレイ3に分配する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 筐体
1a 開口部
2 ディスク搬送機構
3 ディスクトレイ
4 トレイベース
5 トレイ駆動部
6 ベース駆動部
7 スライド板
8 カム(支点軸移動手段)
8a カム溝
S 支点軸
D ディスク
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状の情報記録媒体(ディスク)に楽曲情報などを記録したり、その記録情報を再生したりするのに用いられる装置に係わり、特にディスクを装置筺体の内部と外部との間で搬送するディスク搬送機構を備えたディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクに楽曲情報などを記録したり、その記録情報を再生したりするのに用いられるディスク駆動装置として、ディスクの自動搬送を行うディスク搬送機構を備えたものが一般に広く知られている。尚、係るディスク搬送機構は、ローラ搬送方式とトレイ搬送方式とに大別される。
【0003】
図9は、本願発明の属するトレイ搬送方式の典型的な従来例を示す。図9において、Cは装置の筐体、dt1はディスク搬送機構を構成するディスクトレイであり、ディスクトレイdt1はその上面部にディスクDを載せて図9の実線で示されるドライブ位置と一点鎖線で示されるイジェクト位置との間を直進移動し、上記ドライブ位置では図示せぬドライブユニットによるディスクDの回転駆動などが行われ、上記イジェクト位置ではディスクDの取り出しや交換が可能とされる。
【0004】
しかし、図9に示されるようなディスク搬送機構では、ディスクDの直径より大きいストローク長でディスクトレイdt1を移動させねばならないし、イジェクト位置に達したディスクトレイdt1が片持ち支持されるようその全長を大きく設定しなければならないから、ディスクトレイdt1の移動範囲を考慮して筐体Cの奥行きを大きくする必要があり、結果として装置全体が大型化するという問題があった。
【0005】
一方、図10及び図11に示すように、扇形のディスクトレイdt2にして、これが回転軸Rを中心に旋回移動するようにしたディスク搬送機構も知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−287911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ディスクトレイdt2がディスクDを載せて旋回移動する構成のディスク搬送機構では、ディスクトレイdt2をディスクDの直径と同程度の半径を有する扇形にして筐体Cの奥行きを小さくすることができるものの、ディスクトレイdt2の旋回半径を小さくすると図10のようにディスクトレイdt2を90度以上旋回させてもディスクDが筐体Cの外部まで搬出されず、これを防止するべくディスクトレイdt2の旋回半径を大きくすると、図11のように筐体Cの横幅を大きくしながら当該筐体Cにディスクトレイdt2の旋回を許容する幅の大きな開口部Aを穿設する必要が生じ、装置の小型化を図れない結果を招くばかりでなく、開口部Aから筐体C内に対して塵埃が侵入し易くなるという問題を発生する。
【0008】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は可及的小型のディスク駆動装置にして筐体内へのディスクの搬入と筐体外へのディスクの搬出を好適に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため、
ディスクDを搬送するディスク搬送機構2を備えたディスク駆動装置において、
ディスク搬送機構2は、
ディスクDを支持するディスクトレイ3と、
ディスクトレイ3を旋回可能に支持する支点軸Sを有して筺体1の内部に納まる第1位置と筺体1の外部に張り出す第2位置との間を移動可能とされるトレイベース4と、
トレイベース4を前記第1位置と第2位置との間で直進移動させるベース駆動部6と、
ディスクトレイ3をトレイベース4に平行する面内で支点軸Sを中心に旋回させるトレイ駆動部5と、を具備して成り、
ディスクトレイ3は、トレイ駆動部5の駆動により支点軸S回りに旋回されて、トレイベース4よりも筺体1の外方に張り出すディスク取出位置とトレイベース4に対面して前記ディスク取出位置よりも筐体1側に位置する初期位置との間を移動することを特徴とするディスク駆動装置を提供する。
【0010】
加えて、ディスクトレイ3に支持されたディスクDがトレイベース4と同方向に直進移動するように、ディスクトレイ3の旋回移動に同調してその旋回中心となる支点軸Sを移動させる支点軸移動手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ディスクを支持するディスクトレイと、このトレイを支持する支点軸を備えたトレイベースとを有し、そのトレイベースが筐体内に納まる第1位置と筐体外に張り出す第2位置との間を前後に直進移動することに加え、ディスクトレイが支点軸を中心にしてトレイベースに平行する面内で旋回移動する構成としたことから、ディスクトレイの旋回半径とトレイベースの移動量を小さくしながら、ディスクトレイで支持したディスクの全体を筐体内に搬入したり筐体外に搬出したりすることができ、筐体の奥行きや幅も小さくできるから装置の小型化を図ることが容易になる。
【0012】
又、支点軸移動手段を備えるものでは、装置の小型化が一層容易となり、しかもディスク搬送動作上の観点から装置の品格、高級感が高まるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るディスク駆動装置の内部を示す平面概略図
【図2】ディスクが筐体外部のイジェクト位置に搬出された状態を示す斜視図
【図3】トレイベースを表面側からみた状態を示す平面透視図
【図4】ディスク搬送機構を示す部分断面図
【図5】ディスク搬送中の状態を示す動作説明図
【図6】ディスクがドライブ位置とイジェクト位置にある状態を示す動作説明図
【図7】本発明の変更例として筐体内を底面側からみた状態を示す図
【図8】図7のX−X断面図
【図9】従来例を示す概略図
【図10】他の従来例を示す概略図
【図11】他の従来例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面に基づいて詳しく説明する。先ず、図1において、1は装置の外装を成す筐体であり、その一端面(前端面)には横長スリット状の開口部1aが形成されている。2はディスクを筐体1内のドライブ位置と筐体1外のイジェクト位置との間で搬送するディスク搬送機構であり、このディスク搬送機構2は、平行する上下2段の板材を具備して構成される。上段の板材はディスクを支持するディスクトレイ3とされ、下段の板材はディスクトレイ3を旋回自在に支持する支点軸Sをもつトレイベース4とされる。
【0015】
ディスクトレイ3は、開口部1a側の一角に連結する支点軸Sを中心にディスクを載せて旋回移動するもので、トレイベース4に対向する側の面(裏面)には支点軸Sを中心とする円弧状のセクタギヤ部31が形成され、その反対側の面(表面)にはディスクを配置する円形凹部32が形成されている。セクタギヤ部31は内歯車でも外歯車でもよいが、本例ではセクタギヤ部31が内歯車とされ、その内側に配される後述のトレイ駆動部5から当該セクタギヤ部31に動力伝達が行われるようになっている。そして、係るディスクトレイ3は、トレイ駆動部5の駆動により、トレイベース4に平行する面内で支点軸S回りに旋回され、トレイベース4よりも筺体1の外方に張り出すディスク取出位置(図2の状態)と、トレイベース4に対面して前記ディスク取出位置よりも筐体1側に位置する初期位置(図1、図3、図5の状態)との間を移動する。
【0016】
尚、図1において、ディスクトレイ3は、トレイベース4に対面する初期位置にあって、ディスクのドライブ位置に合致している状態であり、この位置では円形凹部32に配置されたディスクの回転駆動が行われる。Tはディスクを回転させるためのターンテーブル、Pはディスクの盤面に沿ってその半径方向に移動する光ピックアップであり、それらは図示せぬ昇降台に搭載されてディスク搬送機構2とは別のドライブユニットを構成し、ドライブ位置に達したディスクをターンテーブルTによりディスクトレイ3から若干隔てて回転させながら、その記録情報を光ピックアップPで読み取る。ここに、ターンテーブルTや光ピックアップPを含むドライブユニットをディスクトレイ3に一体的に組み付けるようにしてもよい。
【0017】
又、図1から明らかなように、ディスクトレイ3には、光ピックアップPの移動経路に沿って円形凹部32の中心からその外域まで達する切欠孔部33が形成され、これによってターンテーブルTによるディスクの回転、及び光ピックアップPによる記録情報の読み取りが可能とされている。更に、ディスクトレイ3の一端縁には筐体1の開口部1aに整合する蓋板部34が形成され、当該ディスクトレイ3が初期位置にあってディスクがドライブ位置に案内されたとき、上記の蓋板部34により開口部1aが閉鎖されるようになっている。
【0018】
一方、トレイベース4は、筐体1の内部に納まる第1位置(図1の位置)と筐体1の外部に張り出す第2位置との間を移動可能とされている。Gはトレイベース4を移動案内するガイドレールであり、このガイドレールGは開口部1aの長手方向両側にあって筐体1内に固設されている。そして、トレイベース4はその両側縁をガイドレールGにより支持されながら、開口部1aを通じて上記第1位置と第2位置との間を直進移動するのであり、このトレイベース4がディスクトレイ3を初期位置に支持しながら上記第2位置から図1に示される第1位置まで達すると、ディスクトレイ3で支持されたディスクが上記ドライブ位置に位置決めされることとなる。
【0019】
図2はディスクDがイジェクト位置に搬出された状態であり、このときトレイベース4は第2位置にあってその前端部が開口部1aから筐体1の外部に張り出し、ディスクトレイ3はディスク取出位置(ディスクに関してイジェクト位置と同じ)にあってトレイベース4より筐体1の外部に張り出す。そして、この状態では図2のようにディスクトレイ3上のディスクDが筐体1の外部に完全に露出し、以ってその取出ならびに交換が可能とされる。
【0020】
次に、図3において、6はトレイベース4を第1位置と第2位置との間で直進移動させるベース駆動部を示す。このベース駆動部6は、筐体1内の定位置に固設される回転駆動源61(可逆モータ)とそのロータ軸に固着したピニオン62から構成され、トレイベース4にはピニオン62に噛み合うラック部41が一体として形成されている。尚、図3では、回転駆動源61、ピニオン62、ならびにラック部41を実線で示しているが、それらは図3に示すトレイベース4の表面(ディスクトレイ3に対向する面)とは反対の裏面側に設けられている(図4参照)。
【0021】
又、図3及び図4から明らかなように、トレイベース4は上記のトレイ駆動部5を搭載している。係るトレイ駆動部5は、トレイベース4の裏面後方部(図3において上側)に固設した回転駆動源51(可逆モータ)と、その回転駆動力をディスクトレイ3のセクタギヤ部31に伝達する歯車伝動部52とで構成される。本例において、歯車伝動部52は4つのギヤ52a,52b,52c,52dから成り、その一つ52aはトレイベース4を貫通する回転駆動源51のロータ軸に固着され、他のギヤ52b〜52dはトレイベース4に回転自在に取り付けられており、このうち最終のギヤ52dがセクタギヤ部31に噛み合わされている。
【0022】
尚、歯車伝動部52に代えて巻き掛け伝動方式を採用したり、ギヤ52a〜52cを省略してギヤ52dを回転駆動源51で直接駆動したりするようにしてもよいが、ギヤ52dを回転駆動源51で直接駆動する方式では、トレイベース4の移動に伴って回転駆動源51が筐体1の外部に露出する位置となるため、回転駆動部51として開口部1aを通過することのできる偏平モータを使用している。又、本例において、トレイベース4に設けられる支点軸Sは、固定軸でも回転軸でもよいが、これを図示せぬモータのロータ軸(回転駆動軸)にして、その支点軸Sを回転駆動源51や歯車伝動部52に代わるトレイ駆動部とすることができる。
【0023】
ここで、上記のように構成されるディスク搬送機構2の動作について説明すると、ドライブ位置にあるディスクDをイジェクト位置に搬出する場合には、先ずベース駆動部6の駆動が開始され、これにより図5に示される如くディスクトレイ3がトレイベース4に対面する初期位置に維持されたまま、トレイベース4がディスクトレイ3を支持しながら第1位置から第2位置まで移動し、支点軸Sを含むトレイベース4の前端部およびディスクトレイ3の前端部が開口部から筐体1の外部に張り出すようになる。
【0024】
次いで、ベース駆動部6の停止を以ってトレイベース4を図6の一点鎖線で示される第2位置に維持したまま、トレイ駆動部5の駆動が行われる。しかして、ディスクトレイ3がディスクDを支持しながら、図6の一点鎖線で示されるディスク取出位置に向けて支点軸Sを中心とする旋回移動(図6において右旋回)を開始する。このとき、支点軸Sが筐体1の外部に位置しているから、その支点軸Sを中心とするディスクトレイ3の旋回半径を小さくしながら、ディスクトレイ3に載せられたディスクDをイジェクト位置(筐体1から完全露出する位置)まで搬出することができる。そして、ディスクトレイ3が図6の一点鎖線で示されるディスク取出位置に達すると、トレイ駆動部5が停止し、ディスクトレイ3に載せられたディスクDが筐体1から完全に露出したイジェクト位置となり、その取り出し、交換が可能とされる。
【0025】
尚、ディスクDをイジェクト位置からドライブ位置に搬入する場合は、上記とは逆に先ずディスクトレイ3がディスク取出位置から初期位置に復帰され、次いでトレイベース4が第2位置から第1位置に移動されることになる。
【0026】
次に、図7および図8に基づいて本発明に係る変更例を説明する。尚、上記例と変更なき部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。ここに、図7および図8は、ディスクトレイ3の旋回中心となる支点軸Sを移動支点とし、ディスクトレイ3の円形凹部32に配置されたディスクDの中心位置がドライブ位置とイジェクト位置との間でトレイベース4と同方向に直進移動するようにした構成例を示す。本例において、トレイベース4には開口部1aの長手方向に沿って支点軸Sの移動案内をする長孔42が穿設され、その長孔42に支点軸Sが通される。支点軸Sは図8に示される回転駆動源53(可逆モータ)のロータ軸であり、その回転駆動源53は、図8に示されるようにディスクトレイ3とトレイベース4との間でスライド板7を介してトレイベース4に取り付けられ、長孔42の長手方向にのみ移動を許容されている。支点軸Sはその両端が回転駆動源53から突出し、その一端にディスクトレイ3が固着され、他の一端にはカム8が固着されている。カム8は、支点軸Sの回転駆動によるディスクトレイ3の旋回移動に同調して、その旋回中心となる支点軸Sを長孔42に沿って往復移動させる支点軸移動手段を構成するもので、カム8には図7に示されるような馬蹄形のカム溝8aが形成され、トレイベース4にはカム溝8aに対応する固定ピン43が突設されている。
【0027】
そして、上記のような支点軸移動手段を有するディスク搬送機構によれば、ディスクトレイ3が初期位置とディスク取出位置との間を旋回移動するとき、その旋回中心となる支点軸Sがカム溝8aに倣って長孔42内を往復移動することにより、ディスクトレイ3に載せられたディスクDを図7に示す直線Lに沿ってトレイベース4と同方向に直進移動させることができる。このため、装置の高級感が高まるほか、開口部1aの長さをディスクDの直径近くまで短縮しながら、ディスクトレイ3やディスクDを開口部1aの端縁に干渉させることなくディスクDの搬入、搬出を行うことが可能となる。
【0028】
以上、本発明に係るディスク駆動装置の具体例を説明したが、本発明は図示例に限定されるものでなく、ディスクトレイ3やトレイベース4の形状や大きさは適宜変更することができる。又、支点軸移動手段は、図7のようなカム8に限らず、この手段にリニアモータなどを用いることもできる。更に、図2には係るディスク駆動装置を横置き型として示したが、開口部1aが上下に向くような縦置き型とすることもできる。加えて、トレイベース4を前後させるモータとディスクトレイ3を旋回させるモータをそれぞれ個別に設けることに限らず、これに単一のモータを用い、その動力をトレイベース4とディスクトレイ3に分配する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 筐体
1a 開口部
2 ディスク搬送機構
3 ディスクトレイ
4 トレイベース
5 トレイ駆動部
6 ベース駆動部
7 スライド板
8 カム(支点軸移動手段)
8a カム溝
S 支点軸
D ディスク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを搬送するディスク搬送機構を備えたディスク駆動装置において、
前記ディスク搬送機構は、
前記ディスクを支持するディスクトレイと、
前記ディスクトレイを旋回可能に支持する支点軸を有して筺体の内部に納まる第1位置と前記筺体の外部に張り出す第2位置との間を移動可能とされるトレイベースと、
前記トレイベースを前記第1位置と第2位置との間で直進移動させるベース駆動部と、
前記ディスクトレイを前記トレイベースに平行する面内で前記支点軸を中心に旋回させるトレイ駆動部と、を具備して成り、
前記ディスクトレイは、前記トレイ駆動部の駆動により前記支点軸回りに旋回されて、前記トレイベースよりも前記筺体の外方に張り出すディスク取出位置と前記トレイベースに対面して前記ディスク取出位置よりも前記筐体側に位置する初期位置との間を移動することを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
前記ディスクトレイに支持されたディスクが前記トレイベースと同方向に直進移動するように、前記ディスクトレイの旋回移動に同調してその旋回中心となる前記支点軸を移動させる支点軸移動手段を備えることを特徴とする請求項1記載のディスク駆動装置。
【請求項1】
ディスクを搬送するディスク搬送機構を備えたディスク駆動装置において、
前記ディスク搬送機構は、
前記ディスクを支持するディスクトレイと、
前記ディスクトレイを旋回可能に支持する支点軸を有して筺体の内部に納まる第1位置と前記筺体の外部に張り出す第2位置との間を移動可能とされるトレイベースと、
前記トレイベースを前記第1位置と第2位置との間で直進移動させるベース駆動部と、
前記ディスクトレイを前記トレイベースに平行する面内で前記支点軸を中心に旋回させるトレイ駆動部と、を具備して成り、
前記ディスクトレイは、前記トレイ駆動部の駆動により前記支点軸回りに旋回されて、前記トレイベースよりも前記筺体の外方に張り出すディスク取出位置と前記トレイベースに対面して前記ディスク取出位置よりも前記筐体側に位置する初期位置との間を移動することを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
前記ディスクトレイに支持されたディスクが前記トレイベースと同方向に直進移動するように、前記ディスクトレイの旋回移動に同調してその旋回中心となる前記支点軸を移動させる支点軸移動手段を備えることを特徴とする請求項1記載のディスク駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−176724(P2010−176724A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15368(P2009−15368)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
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