説明

ディスプレイ内蔵ミラー

ディスプレイ目的に同時に使用できるミラーディスプレイ装置(1)は、ディスプレイ(5)上に基礎を置き、使用中のディスプレイ装置は、その前面に置いた切替可能な偏光ミラー(2)を用いて第1種の(円)偏光を提供する。そのようなミラーディスプレイ装置の反射率は、ディスプレイ装置と偏光ミラーとの間に、第2の切替可能な(円)偏光子(11)を設けることにより高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1種の偏光の光を、見る側に反射する第1の面を有する、見る目的用偏光ミラーに関するものであって、前記偏光ミラーは、第2種の偏光の光を通過させ、見る側ではない側にディスプレイ装置を具え、使用中のディスプレイ装置は、第2種の偏光の光を提供し、前記偏光ミラーは、第2種の偏光の光を通過させ、かつ第1種の偏光の光を反射する状態と、両種の偏光の光を通過させる状態との間で切替可能である偏光ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
この出願における「見る目的用ミラー」もしくは「ディスプレイミラー」は、ミラーに言及し、前記ミラーを通して人の眼(もしくは(赤外線)カメラレンズのような人工眼)が外界の映し出された部分が見えるようなミラーである。例として、浴室ミラー、試着室の等身大ミラーもしくは平坦なミラー張りの壁のような大きなミラーを考えることができる。他の例は、トラック用の外部ミラーや化粧台ミラーのような中間サイズのミラーである。
【0003】
「第1種の偏光の光を反射する第1の面を有する」とは、ミラー面が偏光面として機能することを意味する。使用時には、偏光面上に入射する光の波長のある特定の範囲内での光は2つの成分に分けられ、一方の成分は偏光面によって反射され、他方の成分は偏光面を通過する。一般に知られているのは、直線的に偏光された直交方向の偏光をもつ2つの成分における光の分割である。この特別な用途では、光は、一般的に右回りと左回りの円偏光に分割されるべきであることが想定されるが、本発明は、直線的に偏光された2つの直交方向の偏光に分割される光同様に適用できる。
【0004】
円偏光に基づく例におけるディスプレイは、第2種の円偏光の光を提供することが想定され、直線的、もしくは非偏光(例えばバックライトを有するLCD)の光を放つもしくは提供するディスプレイを排除していない。LCDによって一般に提供されるような直線偏光は、4分の1ラムダ板により円偏光に変換でき、一方、例えば(O)LEDディスプレイまたはプラズマディスプレイによって一般に提供されるような非偏光は、2分の1ラムダ板(リターダー)により円偏光に変換できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した種類のディスプレイミラーは、2002年3月18日に出願された欧州特許出願第02076069.2号および2002年10月17日に出願された欧州特許出願第02079306.3号に記載されている。ミラー機能は、ディスプレイ装置の前面に、一部に反射層を用いる代わりに偏光ミラーもしくは反射型偏光子を導入することによって得られる。
【0006】
理論的には、ミラーモードでは、入射光の全反射は可能であると同時に、ディスプレイモードでは、反射光のを完全な抑制は、現在の概念で達成することができるけれども、これは、実際には達成されない。より広範囲の可能な実施形態が、最適な組合せを選択するため、前記欧州特許出願に示されている。特定の問題は、示されている実施形態が、産業上市販されている偏光ミラー(積相されたリターダー箔)に基づいており、ミラー表面の平滑性が保証されていないことである。さらに、前記実施形態での反射は最適ではない。
【0007】
本発明の目的の1つは、これらの問題を少なくとも部分的に解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明に従う偏光ミラーは、見る側ではない側であって、ディスプレイ装置との間に、切替可能な第1偏光子を有する。
【0009】
この切替可能な第1偏光子は、第1種の偏光の光を通過させかつ第2種の偏光の光を反射する状態と、両種の偏光の光を通過させる状態との間で切替可能である。他方では、前記第1偏光子は、第2種の偏光の光を通過させかつ第1種の偏光の光を反射する状態と、両種の偏光の光を通過させる状態との間で切替可能である。後者の場合には、リターダー(光移相器)層が、前記偏光ミラーと、第1種の偏光からの種類の偏光を第2種の偏光に変化させ、あるいはその反対に変化させる切替可能な前記第2偏光子との間に設けられる。切替可能な変更ミラーと切替可能な偏光子の組合わせにより、ミラー状態において高反射が保証される。
【0010】
前記偏光ミラーと切替可能な第1および第2偏光子は、いずれもコレステリック偏光子であることが好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のこれらの面および他の面を、以下に説明する実施形態から明らかであり、かつそれらの実施形態を参照しながら明らかにするであろう。
【0012】
図1は、見る目的用ミラー装置1であり、このミラー装置1は、ある人3が自分の像3´(およびその他の図示しない背景)を見ることができるように、光を反射するミラー2、この図の実施例では、コレステリックミラーを、ガラス板又はその他の基板4の上に具えている。本発明によれば、一の状態における前記ミラー(面)は、第1種の偏光(よじれ(twist)、例えば右回り)を反射するのみで、第2種の偏光(逆よじれ、左回り)を透過させる。さらに、前記ミラーには、その非表示側にディスプレイ装置5を具えている(図2参照)。
【0013】
この実施例におけるディスプレイ装置5は、2枚の基板(ガラス、プラスチックもしくはその他好適な材料)の間に液晶材料7を具える液晶ディスプレイ装置である。ほとんどの液晶ディスプレイ装置は偏光効果に基づくので、使用中のディスプレイ5は、偏光を実質的に発する。一般には、液晶ディスプレイ効果によって、バックライト10からの光を変調する。液晶ディスプレイ装置は偏光効果に基づくので、ディスプレイ装置5は、第1の偏光子8と、ある特定の偏光(よじれ)の光を通過させる第2の偏光子(もしくは検光子)9を具える。
【0014】
この特定の偏光よじれの光が、第2種の偏光子と同じ偏光よじれを有していれば、この光は、いずれの光損失なしに(100%の透過率で)、ミラー(面)2を通過する。
【0015】
ほとんどの液晶ディスプレイ装置は、直線偏光の変調に基づくので、通常は直線偏光子8、9が用いられる。ミラー2は円偏光効果に基づくので、(図示しない)4分の1ラムダ(波長)板を用いてディスプレイからの光を円偏光にする。
【0016】
一方、ある用途では、ミラー用途における鏡像に対して、表示される情報の高いコントラスト効果を得るために、例えば(O)LEDもしくは他のディスプレイからの光を偏光することがむしろ魅力的であるかもしれない。
【0017】
図3a、図3bは、本発明に従うミラーディスプレイ装置の一部を示したものであり、このミラーディスプレイ装置では、ミラー2は、第2種の偏光の光を通過させかつ第1種の偏光の光を反射する状態(図3b)と、両種の偏光の光を通過させる状態(図3a)との間で切替可能である。この実施例では、ミラー2は第1の切替可能なコレステリック偏光子である。
【0018】
本発明によれば、第2の切替可能な(コレステリック)偏光子11は、ディスプレイ装置5と偏光ミラー2の間に設けられ、この切替可能な偏光子11は、第1種の偏光の光を通過させ、かつ第2種の偏光の光を反射する状態と、両種の偏光の光を通過させる状態との間で切替可能である。ディスプレイ装置5として液晶ディスプレイ装置15を用いるときは、4分の1ラムダ板6をさらに具える。ほとんどの液晶ディスプレイ装置は直線偏光の変調に基づくので、(図示しない)4分の1λ板を用いてディスプレイからの光を円偏光にする。この場合(ディスプレイモードを示す図3a)では、ディスプレイ装置5は、第2種の偏光((左)円偏光、矢印20)の光を発する。切替可能な(コレステリック)偏光子11および偏光ミラー2の双方が、両種の偏光の光を通過させる状態(オフ状態)にあるので、この(左)円偏光は、偏光子11および偏光ミラー2の双方を通過(矢印20′、20″)し、(理論的には)100%の透過率となる。同じ理由で、入射光30は、偏光ミラー2および偏光子11の双方を通過(矢印30′、30″)し、その後、ディスプレイ装置5により吸収されるが、このディスプレイモードでは、いくつかの(非)偏光31(もしくは他のいかなるスプリアスな光)が反射されうる。
【0019】
ミラーモード(図3b)では、ディスプレイ装置5は第2種の偏光((左)円偏光、矢印20)を発し、一方、切替可能な(コレステリック)偏光子11は、第2種の偏光の光(矢印25)を反射し、この第2種の偏光の光は再度ディスプレイ装置5に吸収される。
【0020】
偏光ミラー2は、入射光(矢印30)の矢印35によって示されるこの実施例では、一の偏光よじれ(右回り)を部分的(50%)反射し、(左)円偏光(矢印30′、残りの50%)を通過させる。切替可能な(コレステリック)偏光子11は、前記(左)円偏光を再度反射し、一方、偏光ミラー2は、前記光(矢印35′、35″)を通過させ、(理論的に)100%の反射となる。
【0021】
図3の実施例では、偏光ミラー2および偏光子11の双方は、スイッチオフされる。この場合、ミラーはなく、ディスプレイを、その上に重ね合わされる反射光がない状態で見ることができる。コレステリックミラー2が作動し透明になりさえすれば、周囲の光の半分が反射されると同時に、LCD源から発する光が全て透過されるようになる。
【0022】
図3の実施例では、切替可能なコレステリックミラー2が、(それぞれ左回り、右回りの偏光を反射する)反対方向の切替可能なコレステリック偏光子との組合せで示されている。同様な方法で、図4a、4bは、同様な切替可能なコレステリックミラー2を具える装置を示すが、この場合、同じ方向(両者とも、左回り(もしくは右回り)の偏光を反射する)の切替可能なコレステリック偏光子の組合せである。図3に関して述べたものと同様の効果を、この場合は2分の1ラムダ(波長)リターダー12をコレステリックミラー2と、切替可能なコレステリック偏光子11との間に導入することで得ることができる。この2分の1ラムダリターダー12は、広帯域なリターダーであってもよいが、約570nmの波長の周りに集中することが好適である。結果として、原理上、実質的にすべての入射光が、このディスプレイモードで反射される。また、スプリアスな光の効果は減少する。前述したコレステリック偏光子を通過する光は、より大きな入射角で楕円偏光になることができる。この楕円形に補償するために、このシステム内で負の複屈折を有する別のリターダーを用いることができる。同じ方向のコレステリック偏光子を用いる場合には、そのような遅延板を、例えば図4a、4bの2分の1ラムダ板の下に置くことができる。コレステリック偏光子が同じ方向を持つ場合には、負の複屈折を有するリターダーのみを、2分の1ラムダリターダーなしに用いることができる。
【0023】
切替可能なコレステリック偏光子(ミラー)2、11は、カイラルネマチック相(chiral nematic phase)内で無反応LC分子の存在のもと、モノとジアクリレート(mono and diacrylates)を重合することで製造することができる。重合中に、いくつかの混合物は、相分離する傾向を示す。この傾向は種々のパラメータに影響されうる。例えば、開始剤濃度やUV強度のような動的鎖長(kinetic chain length)を決定する因子は、反射帯域の幅に大きく影響する。ポリマーの分子量とともに知られているように、モノマーとの混和性は減少する。重合中のゲルにおいて、濃度変動に至るそのような相分離が生じる。これらの変動は、架橋の存在により固定され、その系は、動的に安定のままである。このネットワーク構造内の非均質化および変化は、時間と温度の関数として観察される。そのような相分離はまた、ジアクリレート分子のみを含有するゲルでも観察される。また、励起状態抑制剤(excited state quenchers)とされる化合物をモノマー混合物に加えると、コレステリックミラーの帯域幅の更なる増加が得られることが見出された。励起状態抑制剤を含有する系に関し、時間の関数としてのコレステリックミラーの帯域幅における変化を、図5に示す。ある特定の時間の経過後、帯域幅は、ある特定値に達する前は増加し始め、その後は同じ値のままであることが分かる。
【0024】
このコレステリックミラーの帯域幅の温度依存性を図6に示す。温度の上昇に伴い、反射帯域の位置はほとんど一定のままであり、僅かな減少のみが反射帯域で観察されうる。これらの広帯域なコレステリックゲルは、銀色の反射状態と非反射の透明状態との間で可逆的に切替えることができる。電場の適用下では、、コレステリック構造が消失し、セルが透明になる。電圧の解除下では、セルは急速に元の銀色の反射状態に戻る。
【0025】
本発明の保護範囲は、上記の実施形態に限定されない。例えば、ミラー2は偏光効果を有するため、必要ならば、図2の第2の偏光子(または検光子)9を取り除くことができる。
【0026】
バックライト付き透過型液晶ディスプレイ装置について説明したけれども、反射型液晶ディスプレイ装置の使用を排除するものではない。
【0027】
一方、例えば、(O)LEDからの光を示したように、プラズマディスプレイまたは電気泳動型ディスプレイが偏光してもよく、あるいは、ミラー用途における鏡像に対する表示情報の高いコントラスト効果を得るために、他のディスプレイ効果を用いることがむしろ魅力的であるかもしれない。
【0028】
また、2個以上のディスプレイ5をミラーに一体化することができ、他の多くの応用分野が考えられる(バックミラー、試着室等)。適切な駆動回路をもつ幾つかの用途では、行列形式(matrix form)を用いるならば、ミラー状態とディスプレイ状態との間の切替を局所的に行うことができる。
【0029】
本発明は、ありとあらゆる新規な特性、およびありとあらゆる特性の組合せにある。請求項中の参照数字は、それらの保護範囲を制限するものではない。動詞「有する」およびその活用形の使用は、請求項中に記載されている要素以外の要素の存在を排除しない。要素に付与した冠詞「a」または「an」は、そのような要素が複数存在することを排除しない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に従うミラー装置の実現可能な実施形態である。
【図2】本発明に従うミラー装置の一部分の概略断面図である。
【図3a】本発明に従うミラー装置の一部分の概略断面図である。
【図3b】本発明に従うミラー装置の一部分の概略断面図である。
【図4a】本発明に従う他のミラー装置の一部分の概略断面図である。
【図4b】本発明に従う他のミラー装置の一部分の概略断面図である。
【図5】コレステリックミラーの帯域幅を、製造中の時間の関数として示すグラフである。
【図6】コレステリックミラーの帯域幅の温度依存性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1種の偏光の光を、見る側に反射する第1の面を有する、見る目的用偏光ミラーであって、
前記偏光ミラーは、第2種の偏光の光を通過させ、見る側ではない側にディスプレイ装置を具え、
使用中のディスプレイ装置は、第2種の偏光の光を提供し、
前記偏光ミラーは、第2種の偏光の光を通過させかつ第1種の偏光の光を反射する状態と、両種の偏光の光を通過させる状態との間で切替可能であり、
前記偏光ミラーは、見る側ではない側であって、ディスプレイ装置との間に、切替可能な第1偏光子を有する、見る目的用偏光ミラー。
【請求項2】
請求項1に記載の偏光ミラーにおいて、
見る側ではない側であって、ディスプレイ装置と前記偏光ミラーとの間に、切替可能な第2偏光子を有し、
前記第2偏光子は第1種の偏光の光を通過させかつ第2種の偏光の光を反射する状態と、両種の偏光を通過させる状態との間で切替可能である偏光ミラー。
【請求項3】
請求項1に記載の偏光ミラーにおいて、
見る側ではない側であって、ディスプレイ装置と前記偏光ミラーとの間に、切替可能な第2偏光子を有し、
前記第2偏光子は第2種の偏光の光を通過させかつ第1種の偏光の光を反射する状態と、両種の偏光の光を通過させる状態との間で切替可能であり、
前記偏光ミラーと、第1種の偏光からの種類の偏光を第2種の偏光に変化させ、あるいはその反対に変化させる切替可能な前記第2偏光子との間に、リターダー層を設ける偏光ミラー。
【請求項4】
請求項3に記載の偏光ミラーにおいて、
前記リターダー層は、λ/2箔を有し、λの値は500〜600nmである偏光ミラー。
【請求項5】
請求項2または3に記載の偏光ミラーにおいて、
前記偏光ミラーと切替可能な前記第1および第2偏光子はコレステリック偏光子である偏光ミラー。
【請求項6】
請求項5に記載の偏光ミラーにおいて、
前記ディスプレイ装置は、発光側にλ/4箔を有する偏光を発する部分的なディスプレイを有し、
λの値は500〜600nmである
ような前記偏光ミラー。
【請求項7】
請求項5に記載の偏光ミラーにおいて、
前記ディスプレイ装置は、発光側にλ/2箔を有する非偏光を発する部分的なディスプレイを有し、
λの値は500〜600nmである偏光ミラー。
【請求項8】
請求項4に記載の偏光ミラーにおいて、
二重層をもつリターダー層が、負の複屈折をもつリターダーを有する偏光ミラー。
【請求項9】
請求項1に記載の偏光ミラーにおいて、
少なくとも50nmの帯域幅を有する偏光ミラー。
【請求項10】
請求項1に記載の偏光ミラーにおいて、
スペクトルの可視域内で反射する偏光ミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−517240(P2007−517240A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540726(P2006−540726)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052451
【国際公開番号】WO2005/050267
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】