説明

ディスプレイ装置およびその製造方法

【課題】ハーフミラー層に凹凸を形成して模様を見せるようにする際、簡単な構造でその模様をきれいに見せるようにしたディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】合成樹脂もしくはガラスによって形成されたベース層2と、当該ベース層2における裏面側に形成されたハーフミラー層3とを備え、当該ハーフミラー層3の裏面側に凹凸を形成することによってベース層2の表面側から当該凹凸による模様4を視認させるようにする。このハーフミラー層3としては、ニッケル、錫、亜鉛などのように比較的柔らかな金属を用い、このハーフミラー層3の裏面側に豚の毛のブラシや木片などを用いて模様4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコやスロットマシンなどの遊戯台やその他の装飾台などに取り付けられるディスプレイ装置に関し、より詳しくは、ベース層に真空蒸着されたハーフミラー層によって模様をきれいに見せるようにしたディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、真空蒸着によって模様を施したディスプレイ装置が種々提案されている。例えば、下記の特許文献1や特許文献2には、模様を段違いに見せるようにしたものとして、図4に示すように、プラスチックやガラスなどのベース層81の裏面側に模様となる切り抜きを84形成したフルミラー層82と、表面側に形成されたハーフミラー層83とを有してなるディスプレイ装置が提案されている。このようなディスプレイ装置によれば、裏面側から照明を当てると、その光が切り抜き84を介して進入し、ハーフミラー層83とフルミラー層82で何回も反射して、段違いに模様を見せることができるようになる。
【0003】
また、下記の特許文献3には、見る角度によって模様を浮き出させるようにした構造として、プラスチックやガラスなどのベース層に、アンダーコート層、ハーフミラー層、着色された光透過層、トップコート層を有してなるものが提案されている。このトップコート層の表面にレーザーによって微細な凹凸が形成されており、この凹凸とハーフミラー層、着色層などを介して模様を浮き出させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59−147186号公報
【特許文献2】実開昭59−066281号公報
【特許文献3】特開2010−105386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の構造で模様を浮き出させるようにした場合、次のような問題を生じる。
【0006】
すなわち、図4のようなフルミラー層82とハーフミラー層83を形成した構造では、裏側に照明装置を配置しなければならず、裏面側にそのような照明装置を配置することができない条件下では、使用することができないといった問題を生ずる。
【0007】
これに対して、特許文献3に記載させる方法では、表面側から光を照射させて模様を見せることができるため、裏面側に照明を配置する空間がない場合であっても使用することができるというメリットがある。
【0008】
しかしならが、このような特許文献3の構造では、ハーフミラーであるトップコート層の表面側に凹凸を形成しているため、そのトップコート層に凹凸に小さな傷が存在していたり、あるいは、不規則な凹凸が存在すると、そこで光が乱反射してしまい、表面が汚く見えてしまうといった問題を生じる。また、この特許文献3では、トップコート層にCO2レーザー加工によって模様を形成するため、人間の手作業による簡単な模様を形成することができないといった問題もある。
【0009】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたものであって、ハーフミラー層に凹凸を形成して模様を見せるようにする際、簡単な構造でその模様をきれいに見せるようにしたディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明のディスプレイ装置は、上記課題を解決するために、合成樹脂もしくはガラスによって形成されたベース層と、当該ベース層における裏面側に形成されたハーフミラー層とを備え、当該ハーフミラー層の裏面側に凹凸を形成することによってベース層の表面側から当該凹凸による模様を視認させるようにしたものである。
【0011】
このように構成すれば、ハーフミラー層の裏面側に凹凸を形成しているため、表面側から照射された光がその凹凸や傷によって乱反射したとしても、屈折率の大きなハーフミラー層とベース層との境界で反射させて表面側へ出力することがなくなり、仮に、ハーフミラー層からベース層に乱反射光が透過しても、ベース層には屈折角が大きくなるように屈折するため、ベース層の表面側で臨界角に近い光を表面側から出力させることがなくなる。これにより、ぼやけたような光を表面側から出力させることがなくなる。
【0012】
また、このような発明において、ハーフミラー層を、ニッケルや亜鉛、錫による金属蒸着によって形成する。ここで、ニッケルや亜鉛、錫などとしては、それらの金属単体であってもよく、あるいは、いずれかを含むように他の金属と混合させたものであってもよい。
【0013】
このように構成すれば、金属蒸着によるハーフミラー層を柔らかくすることができるため、ハーフミラー層を形成した後であっても、ブラシや木片の先端などによって簡単に凹凸を形成することができる。
【0014】
さらに、このようなディスプレイ装置を製造する場合、ベース層の裏面側に金属蒸着によってハーフミラー層を形成し、その後、ハーフミラー層の裏面側に模様形成部材を押圧したり摺動させたりすることによって凹凸の模様を形成する。
【0015】
このようにすれば、レーザーなどのような高価な装置を用いることなく、簡単に模様を形成することができるとともに、模様形成部材を押圧したり摺動させたりするだけで微細かつ自由な模様を形成することができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、合成樹脂もしくはガラスによって形成されたベース層と、当該ベース層における裏面側に形成されたハーフミラー層とを備え、当該ハーフミラー層の裏面側に凹凸を形成することによってベース層の表面側から当該凹凸による模様を視認させるようにしたので、凹凸や傷などによる弱い乱反射光を表面側から出力させるようなことがなくなり、凹凸による模様をきれいに見せることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態であるディスプレイ装置の断面を示す図
【図2】同形態における光の反射、屈折状態を示す図
【図3】ハーフミラーの表面側に凹凸模様を付した場合の反射、屈折状態を示す図
【図4】従来における段違いに模様を見せるディスプレイ装置の断面を示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。この実施の形態におけるディスプレイ装置1は、パチンコやスロットマシンなどの遊戯台、あるいは、店舗に設置される宣伝広告板などに使用されるものであって、表面側もしくは側面側から光を照射して裏面側に設けられた模様4を浮き出させるようにしたものである。より具体的には、このディスプレイ装置1は、ベース層2の裏面側に設けられたハーフミラー層3と、そのハーフミラー層3における裏面側に設けられた凹凸の模様4とを有するように構成され、その他、表面側や裏面側に保護層5などを設けるように構成されている。以下、本実施の形態におけるディスプレイ装置1について詳細に説明する。
【0019】
まず、ディスプレイ装置1を構成するベース層2は、無色透明もしくは有色透明な平板で構成されるものであって、例えば、ポリカーボネートなどの合成樹脂、ガラスなどによって構成される。なお、この実施の形態では、説明の関係上、人間から直接視認できる側を表面側とし、人間から直接視認することができない側を裏面側として説明する。このベース層2の裏面側については、滑らかな平面をなすように構成されており、これによって表面側から光を照射してベース層2の裏面側で反射させる際に、光を乱反射させないようにして模様4をぼやけさせないようにしている。
【0020】
このベース層2の裏面側に設けられるハーフミラー層3は、金属蒸着によって形成されるものであって、表面側から光を照射させた際に、その裏面側に設けられた凹凸による模様4を視認させるようにしている。具体的には、光の透過率を5%〜15%(好ましくは、7%〜12%)、反射率を75%〜95%(好ましくは、88%〜93%)程度に設定している。このハーフミラー層3を形成する場合、金属の種類にも依存するが、例えば、比較的柔らかいニッケルを用いる場合は、厚みが500Å〜800Åとなるようにしておく。なお、ここでハーフミラー層3を形成する場合、アルミニウムを使用することもできるが、アルミニウムで蒸着膜を形成した場合、表面の硬度が強いため、レーザー加工などによる特殊な装置を用いなければ凹凸の模様4を形成することができなくなる。そこで、この実施の形態では、比較的柔らかく、しかも、安価なニッケルを用いるようにしている。このニッケルの代わりとしては、亜鉛や錫などを用いることもできる。
【0021】
このハーフミラー層3に設けられる凹凸の模様4は、ハーフミラー層3の厚みの範囲内の一部を押圧もしくは摺動させることによって形成される。この凹凸の模様4を形成する場合は、豚の毛や木片などの模様形成部材を用い、これをハーフミラー層3の裏面側に押し付けて摺り動すことによって凹凸の模様4を形成する。なお、模様を形成する場合、豚の毛や木片などを回転させることなどによって、同一円状の凹凸を有する模様4を形成する他、木片などを用いて人間の手で自由な模様4を描いたり、あるいは、天然に存在する花や葉、布などのように凹凸を有するものを押圧して模様4を形成してもよい。
【0022】
この凹凸を形成したハーフミラー層3の裏面側に形成される保護層5は、ハーフミラー層3に傷が付くことを防止するためのものであって、スプレーで塗布されたアクリル系樹脂や、あるいは、スパッタリングによって形成された酸化珪素によって形成される。また、これ以外にも、透明伝導膜(ITO)による保護層5を形成し、これによって色の変化を与えて凹凸による模様4の見え方に変化を付けるようにすることもできる。
【0023】
次に、このディスプレイ装置1の製造方法について説明する。
【0024】
まず、ディスプレイ装置1を製造する場合、透明なベース層2を用意し、これを真空蒸着装置の雰囲気中に設置する。このとき、表面6側には蒸着膜が付着しないようにマスキング処理を行い、裏面側にのみ蒸着膜を形成させるようにしておく。
【0025】
このようにベース層2を設置した状態で、雰囲気内を減圧し、ニッケルを裏面側に蒸着させる。このとき、蒸着の厚みが500Å〜800Åの範囲内になるようにする。そして、蒸着が完了した後、雰囲気中の圧力を大気圧に戻し、ハーフミラー層3を形成したベース層2を取り出す。
【0026】
このようにハーフミラー層3を形成した後、次の工程では、その裏面側に豚の毛や木片などの加工具を用いて模様4を描き、ハーフミラー層3に凹凸の模様4を形成する。模様を形成する場合、模様形成部材を円形に回転させて、同心円状の凹凸を有するような模様4を形成する他、花や葉などを押圧させて凹凸を有するように模様4を形成する。
【0027】
次に、そのハーフミラー層3の裏面側に保護層5を形成する。この保護層5を形成する場合は、アクリル系樹脂をスプレーにより塗布するか、あるいは、スパッタリングによって酸化珪素の膜を形成する。もしくは、透明伝導膜を形成して見る方向によって色が変化するような透明膜を形成する。
【0028】
このように製造されたディスプレイ装置1の作用について説明する。なお、ここでは、ディスプレイ装置1の表面側の周囲から光を照射するものとする。
【0029】
表面側の周囲から光を照射すると、図2に示すように、その光はベース層2の表面6で屈折角が小さくなるように屈折し、さらに、ベース層2とハーフミラー層3の境界7でも、さらに屈折角が小さくなるように屈折する。そして、凹凸の模様4に対して垂直に近い角度から入射すると、そこで、光が反射する。この反射した光のうち、反射角の大きな乱反射光は、ハーフミラー層3とベース層2の境界7で、屈折角が大きくなるように屈折するか、あるいは、その入射角が臨界角に近い場合は、再びハーフミラー層3側へと反射する。一方、ベース層2側に透過した光は、ベース層2を通過し、再びベース層2の表面6で屈折角が大きくなるように屈折するか、あるいは、その入射角が臨界角に近い場合は、再びベース層2側へと反射する。
【0030】
これに対して、ベース層2とハーフミラー層3の境界7に模様4を形成している場合について、図3を用いて説明する。例えば、ベース層2の裏面に傷を付けるなどして模様4を付し、その後、ハーフミラー層3を形成した場合、ベース層2とハーフミラー層3の間に模様4が形成される。このような状態で、ベース層2の表面側から光を照射すると、図2の場合と同様に、ベース層2の表面6で屈折角が小さくなるように屈折する。そして、ベース層2とハーフミラー層3の境界7に形成された凹凸の模様4で乱反射する。この反射した光のうち、反射角の大きな乱反射光は、ベース層2の表面6側で、屈折角が大きくなるように屈折するか、あるいは、その入射角が臨界角に近い場合は、再びハーフミラー層3側へと反射する。しかし、このとき、図2と比較してベース層2とハーフミラー層3との境界7で屈折をさせていないため、より多くの乱反射光が視認されることになり、結果として、その模様4がぼやけたように見えてしまう。しかも、光を照射していない状態であっても、表面6側からその模様4を視認することが可能となり、光を照射して模様4を浮き出させる意味が薄れてしまう。
【0031】
これに対して、図2のような構成では、乱反射光のうち、反射角の大きな光(図2におけるθ1の範囲内の光)は少なくとも二度の屈折によって表面側から出力されることが少なくなり、模様4のぼやけを少なくすることができる。また、光を照射していない状態においても、表面側からその模様4を見せることがなくなり、光を照射させて初めて模様4を浮き出させることができるようになる。
【0032】
このように本実施の形態によれば、合成樹脂もしくはガラスによって形成されたベース層2と、当該ベース層2における裏面側に形成されたハーフミラー層3とを備え、当該ハーフミラー層3の裏面側に凹凸を形成することによってベース層2の表面側から当該凹凸による模様4を視認させるようにしたので、凹凸や傷によって乱反射したとしても、屈折率の大きなハーフミラー層3とベース層2との境界7で反射させて表面6側へ出力することがなくなる。また、仮に、ハーフミラー層3からベース層2へ乱反射光が透過しても、ベース層2には入射角が大きくなるように屈折するため、ベース層2の表面6側で臨界角に近い光を表面6側から出力することがなくなり、ぼやけたような光を表面6側から出力させることがなくなる。
【0033】
また、ハーフミラー層3を、ニッケルや錫、亜鉛による金属蒸着によって形成するようにしたので、ハーフミラー層3を柔らかくすることができ、ブラシや木片などによって凹凸による模様4を簡単に形成することができる。あるいは、花や葉などを強く押圧することなどによって天然の模様4も簡単に形成することができる。
【0034】
さらに、このようなディスプレイ装置1を製造する場合、ベース層2の裏面側に金属蒸着によってハーフミラー層3を形成し、その後、ハーフミラー層3の裏面側に模様4形成部材を押し当てて摺り動かすことによって凹凸を形成するようにしたので、レーザーなどのような高価な装置を用いることなく、簡単に模様4を形成することができるとともに、模様4形成部材を押し当てて摺り動かすだけで微細かつ自由な模様4を形成することができるようになる。
【0035】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0036】
例えば、上記実施の形態では、ニッケルによってハーフミラー層3を形成したが、裏面側に凹凸による模様4を形成できるものであれば、より硬度を有する金属で蒸着させるようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施の形態では、表面側から光を照射させるようにしているが、裏面側から光を照射させるようにしてもよい。このとき、光を異なった方向から順次照射させるようにすれば、屈折によって模様4に動きを生じさせることができるようになる。
【0038】
さらには、上記実施の形態では、保護層5として種々のものを用いるようにしているが、この保護層5としては、凹凸の模様4による反射を行わせるため、透過率が40%〜60%程度の材料を用いるようにするとよい。
【符号の説明】
【0039】
1・・・ディスプレイ装置
2・・・ベース層
3・・・ハーフミラー層
4・・・凹凸による模様
5・・・保護層
6・・・表面
7・・・ベース層とハーフミラー層の境界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂もしくはガラスによって形成されたベース層と、
当該ベース層における裏面側に形成されたハーフミラー層とを備え、
当該ハーフミラー層の裏面側に凹凸を形成することによってベース層の表面側から当該凹凸による模様を視認させるようにしたことを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】
当該ハーフミラー層が、ニッケル、錫、亜鉛による金属蒸着によって形成されるものである請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
合成樹脂もしくはガラスによって形成されたベース層の裏面側に金属蒸着によってハーフミラー層を形成する工程と、
当該形成されたハーフミラー層の裏面側に模様形成部材を押圧し、もしくは、摺動させることによって凹凸を形成する工程と、
を備えるようにしたことを特徴とするディスプレイ装置の製造方法。
【請求項4】
当該ハーフミラー層が、ニッケル、錫、亜鉛による金属蒸着によって形成されるものである請求項3に記載のディスプレイ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−68356(P2012−68356A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211945(P2010−211945)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(597094743)株式会社メイハン (2)
【Fターム(参考)】