説明

ディップ成形用の共重合体ラテックス

耐有機溶剤性および風合いに優れ、十分な引張強度を有し、かつ密着状態の持続性に優れるディップ成形物、該ディップ成形物を与えるディップ成形用組成物、および該ディップ成形用組成物に好適に使用できるディップ成形用の共重合体ラテックスを提供する。 特定組成の、1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、メタクリル酸からなる単量体混合物を共重合するに際し、アクリルニトリルの一部とメタクリル酸の一部とを、重合開始後、特定の時期に重合反応系に添加して共重合し、得られる共重合体のメチルエチルケトン不溶解分が特定範囲であるカルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス。該ラテックス、加硫剤および加硫促進剤からなるディップ成形用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ディップ成形用の共重合体ラテックス、ディップ成形用組成物およびディップ成形物に関し、さらに詳しくは、耐有機溶剤性および風合いに優れ、十分な引張強度を有し、かつ密着状態の持続性に優れるディップ成形物、該ディップ成形物を与えるディップ成形用組成物、および該ディップ成形用組成物に使用するディップ成形用の共重合体ラテックスに関する。
【背景技術】
ゴム手袋は、家事用、食品工業や電子部品製造業などの種々の工業用および医療用(特に手術用)など、幅広く使用されている。ゴム手袋には、長時間にわたり着用しても手が疲れないように、指の動きに合わせてより小さな力で手袋の伸縮が追随しやすいこと(風合いがよいこと)、着用中に破れたりしにくいこと(引張強度が十分に高いこと)、指の動きに合わせて手袋が変形してもたるみやしわの発生が少なく、密着状態を維持できること(密着状態の持続性がよいこと)などが要求されている。
従来、ゴム手袋として、天然ゴムラテックスをディップ成形して得られるものが多用されている。しかし、天然ゴムラテックス製の手袋には、ゴム成分中に微量存在するたんぱく質により、使用者によってはアレルギーを引き起こす恐れがあるため、そのような懸念のない合成ゴムラテックス、たとえば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス製の手袋が提案されている。
例えば、米国特許5,014,362号公報には、カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、少量の酸化亜鉛、硫黄および加硫促進剤からなる組成物をディップ成形して得られる、100%伸張した際の、伸張直後の応力に対する伸張直後から6分後の応力の割合(応力保持率)がほとんどゼロになる特性を有する手袋が開示されている。しかしながら、このような手袋は、風合いに優れるものの、密着状態の持続性に劣る。
また、国際公開WO97/48765号公報には、酸化亜鉛を含有しないで、カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、アンモニウムカゼイン、硫黄および加硫促進剤からなる組成物をディップ成形して得られる手袋が開示されている。このような手袋は、風合いや密着状態の持続性が不十分である。
さらに、国際公開WO00/21451号公報には、特定量のカルボキシル基を含有するアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、少量の酸化亜鉛、硫黄および加硫促進剤からなる組成物をディップ成形して得られる、応力保持率が50〜70%の範囲にある手袋が開示されている。このような手袋は、密着状態の持続性に優れるものの、風合いと引張強度のバランスに劣る場合がある。
さらに、上記のようなカルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスを用いて得られる手袋は、有機溶剤に対する耐性が不十分である場合があった。
【発明の開示】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、耐有機溶剤性および風合いに優れ、十分な引張強度を有し、かつ密着状態の持続性に優れるディップ成形物、該ディップ成形物を与えるディップ成形用組成物、および該ディップ成形用組成物に使用するディップ成形用の共重合体ラテックスを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、メタクリル酸を含む単量体混合物を共重合するに際し、アクリルニトリルの一部とメタクリル酸の一部とを、重合開始後に重合反応系に途中添加して共重合し、メチルエチルケトン不溶解分の含量が高い共重合体からなるカルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスを用いることにより、前記の目的が達成できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、以下の(1)〜(3)を満たすディップ成形用の共重合体ラテックスが提供される。
(1)共役ジエン単量体45〜85重量部、エチレン性不飽和ニトリル単量体10〜40重量部、エチレン性不飽和酸単量体5〜15重量部およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体0〜20重量部からなる単量体混合物(A)100重量部を共重合して得られるものであること
(2)共重合体のメチルエチルケトン不溶解分が60〜95重量%であること
(3)以下の各工程により得られるものであること
工程1:前記単量体混合物(A)の各成分中、共役ジエン単量体の80重量%以上、エチレン性不飽和ニトリル単量体の50〜90重量%、エチレン性不飽和酸単量体の40〜90重量%およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体の80重量%以上からなる単量体混合物(a)を用いて共重合反応を開始する工程
工程2:単量体混合物(A)中の、単量体混合物(a)に含まれなかった残余のエチレン性不飽和ニトリル単量体及び残余のエチレン性不飽和酸単量体を、単量体混合物(a)の重合転化率が5〜95重量%の範囲にあるときに添加する工程、
工程3:同じく残余の共役ジエン単量体およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体を、共重合反応の停止までに添加完了する工程
また、本発明によれば、上記のディップ成形用の共重合体ラテックス、加硫剤および加硫促進剤からなるディップ成形用組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、上記ディップ成形用組成物をディップ成形してなるディップ成形物が提供される。
また、共役ジエン単量体45〜85重量部、エチレン性不飽和ニトリル単量体10〜40重量部、エチレン性不飽和酸単量体5〜15重量部およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体0〜20重量部からなる単量体混合物100重量部を共重合して得られるディップ成形用ラテックスであって、重合に使用する全単量体のうち、共役ジエン単量体の80重量%以上、エチレン性不飽和ニトリル単量体の50〜90重量%、エチレン性不飽和酸単量体の40〜90重量%およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体の80重量%以上を含む単量体混合物を用いて重合を開始し、その後、重合反応系内の全単量体についての重合転化率が5〜95重量%の範囲にある時に残余のエチレン性不飽和ニトリル単量体と残余のエチレン性不飽和酸単量体とを添加すると共に、残余の共役ジエン単量体およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体は、重合反応を停止するまでに添加を完了して共重合し、かつ、得られる共重合体のメチルエチルケトン不溶解分が60〜95重量%であることを特徴とするディップ成形用ラテックスが提供される。
本発明によれば、耐有機溶剤性および風合いに優れ、十分な引張強度を有し、かつ密着状態の持続性に優れるディップ成形物、該ディップ成形物を与えるディップ成形用組成物、および該ディップ成形組成物に好適に使用できるディップ成形用の共重合体ラテックスが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明のディップ成形用の共重合体ラテックスは、共役ジエン単量体45〜85重量部、エチレン性不飽和ニトリル単量体10〜40重量部、エチレン性不飽和酸単量体5〜15重量部およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体0〜20重量部からなる単量体混合物100重量部を共重合して得られるディップ成形用の共重合体ラテックスであって、重合に使用する全単量体のうち、共役ジエン単量体の80重量%以上、エチレン性不飽和ニトリル単量体の50〜90重量%、エチレン性不飽和酸単量体の40〜90重量%およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体の80重量%以上を含む単量体混合物を用いて重合を開始し、その後、重合反応系内の全単量体についての重合転化率が5〜95重量%の範囲にある時に残余のエチレン性不飽和ニトリル単量体と残余のエチレン性不飽和酸単量体とを添加すると共に、残余の共役ジエン単量体およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体は、重合反応を停止するまでに添加を完了して共重合し、かつ、得られる共重合体のメチルエチルケトン不溶解分が60〜95重量%であることを特徴とする。
共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよびクロロプレンなどが挙げられる。なかでも、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエン単量体は単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
共役ジエン単量体の使用量は、全単量体100重量部に対して、45〜85重量部、好ましくは58〜75重量部である。この量が少なすぎると風合いに劣り、逆に多すぎると引張強度および耐有機溶剤性に劣る。
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリルなどが挙げられる。なかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
エチレン性不飽和ニトリル単量体の使用量は、全単量体100重量部に対して、10〜40重量部、好ましくは18〜30重量部である。この量が少なすぎると引張強度および耐有機溶剤性に劣り、逆に多すぎると風合いに劣る。
エチレン性不飽和酸単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無水物基等の酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸無水物;スチレンスルホン酸等のエチレン性不飽和スルホン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ−2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステル単量体;などが挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、エチレン性不飽和モノカルボン酸がより好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。これらのエチレン性不飽和酸単量体はアルカリ金属塩またはアンモニウム塩として用いることもできる。これらのエチレン性不飽和酸単量体は単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
エチレン性不飽和酸単量体の使用量は、全単量体100重量部に対して、5〜15重量部、好ましくは7〜12重量部である。この量が少なすぎると引張強度に劣り、逆に多すぎると風合いおよび密着状態の持続性に劣る。
これらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、アルキルスチレン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族単量体;フルオロエチルビニルエーテル等のフルオロアルキルビニルエーテル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸−2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸−1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸−2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸−3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の架橋性単量体;などを挙げることができる。これらのエチレン性不飽和単量体は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
その他のエチレン性不飽和単量体の使用量は、全単量体100重量部に対して、20重量部以下、好ましくは10重量部以下である。この量が多すぎると、風合いと引張強度のバランスに劣る。
本発明のディップ成形用の共重合体ラテックスは、上記単量体混合物を共重合、好ましくは乳化共重合して得られる。これらは、以下の各工程により得られる。
単量体混合物100重量部を共重合するに際し、重合に使用する単量体のうち、共役ジエン単量体の80重量%以上、エチレン性不飽和ニトリル単量体の50〜90重量%、エチレン性不飽和酸単量体の40〜90重量%およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体の80重量%以上を含む単量体混合物を用いてまず重合を開始する(工程1)。その後、重合反応系内の全単量体についての重合転化率が5〜95重量%の範囲にある時に残余のエチレン性不飽和ニトリル単量体と残余のエチレン性不飽和酸単量体とを添加する(工程2)と共に、残余の共役ジエン単量体およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体は、重合反応を停止するまでに添加を完了する(工程3)ことが必須である。
上記の共重合方法において、エチレン性不飽和ニトリル単量体は、重合に使用するエチレン性不飽和ニトリル単量体の50〜90重量%、好ましくは55〜85重量%、より好ましくは60〜85重量%を重合反応器に仕込み、重合を開始し、その後に残余のエチレン性不飽和ニトリル単量体を重合反応系に添加する。
重合反応器に仕込むエチレン性不飽和ニトリル単量体の割合が少ないと引張強度に劣り、逆に多いと風合いおよび引張強度に劣る。
また、重合反応系内の全単量体についての重合転化率が5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、特に好ましくは20〜90重量%の範囲内にある時に、残余のエチレン性不飽和ニトリル単量体を重合反応系に添加する。重合転化率が低いと風合いおよび引張強度に劣り、逆に高いと引張強度に劣る。
さらに、残余のエチレン性不飽和ニトリル単量体は、重合反応系内のエチレン性不飽和ニトリル単量体の重合転化率が40〜95重量%、より好ましくは45〜92重量%、特に好ましくは45〜85重量%の範囲にある時に、重合反応系に添加することが好ましい。この範囲で添加すると、より引張強度が向上する。
残余のエチレン性不飽和ニトリル単量体の添加方法としては、一括でも、分割して重合反応系に添加してもよい。残余のエチレン性不飽和ニトリル単量体を分割して重合反応系に添加する場合、残余のエチレン性不飽和ニトリル単量体は、分割回数に応じて、等分して重合反応系に添加しても、変量して重合反応系に添加してもよい。さらに、分割回数を無限回とする、即ち、連続的に添加する方法を採用してもよい。
上記の共重合方法において、エチレン性不飽和酸単量体は、重合に使用するエチレン性不飽和酸単量体の40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、より好ましくは60〜80重量%を重合反応器に仕込み、重合を開始し、その後に残余のエチレン性不飽和酸単量体を重合反応系に添加する。
重合反応器に仕込むエチレン性不飽和酸単量体の割合が少ないと引張強度および密着状態の持続性に劣り、逆に多いと風合いおよび引張強度に劣る。
残余のエチレン性不飽和酸単量体を重合反応系に添加する時期は、重合反応系内の全単量体についての重合転化率が5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%、特に好ましくは40〜70重量%の範囲内にある時である。この範囲で添加することにより、引張強度、風合いおよび密着状態のバランスがさらに向上する。
残余のエチレン性不飽和酸単量体を重合反応系に添加する方法は、例えば、一括で、分割して、あるいは連続的に添加する方法が採用できる。なかでも、一括で添加する方法が好ましい。
共役ジエン単量体は、重合に使用する共役ジエン単量体の、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上を重合反応器に仕込み、重合を開始し、その後に残余の共役ジエン単量体は、重合反応を停止するまでに添加を完了する。重合に使用する共役ジエン単量体の全量を重合反応器に仕込み、重合を開始することが特に好ましい。
共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体は、重合に使用するその他のエチレン性不飽和単量体の、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上を重合反応器に仕込み、重合を開始し、その後に、残余のその他のエチレン性不飽和単量体は、重合反応を停止するまでに添加を完了する。重合に使用するその他のエチレン性不飽和単量体の全量を重合反応器に仕込み、重合を開始することが特に好ましい。
共重合は、単量体の添加方法を除き、通常の方法を用いればよい。例えば、乳化共重合の場合、水と乳化剤の存在下に、重合開始剤により、単量体混合物を重合し、所定の重合転化率で重合停止剤を添加して重合反応を停止する。
乳化剤は、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸の如き脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤などを挙げることができる。なかでも、アニオン性乳化剤が好適に用いられる。これらの乳化剤は単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.1〜10重量部である。
水の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、80〜500重量部、好ましくは100〜300重量部である。
重合開始剤は、特に限定されないが、具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。過酸化物開始剤は、ラテックスを安定して製造することができ、しかも、引張強度が高く、風合いが柔らかなディップ成形物が得られるので好ましく用いられる。重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.01〜1.0重量部であることが好ましい。
また、過酸化物開始剤は還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物1重量部に対して0.03〜10重量部であることが好ましい。
本発明のディップ成形用の共重合体ラテックスは、上記のように単量体混合物を共重合して得られる共重合体のメチルエチルケトン不溶解分(「MEK不溶解分」と略することがある。)が60〜95重量%であることを必須の条件とする。該MEK不溶解分は、70〜90重量%であることが好ましい。MEK不溶解分が低いと耐有機溶剤および密着状態の持続性に劣るディップ成形物となり、逆に高いと風合いと引張強度に劣るディップ成形物となる。
本発明においては、ディップ成形用の共重合体ラテックスのMEK不溶解分を調整するために、分子量調整剤を適量使用することが好ましい。
分子量調整剤としては、例えば、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、テトラエチルチウラムスルフィド、ジベンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等のスルフィド類、α−メチルスチレン2量体、四塩化炭素等が挙げられる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。これらは一種もしくは二種以上組み合わせて使用することが可能である。
分子量調整剤の使用量は、共重合体のMEK不溶解分が所望の範囲となるよう適宜決定すればよいが、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.05〜0.5重量部、より好ましくは0.1〜0.4重量部である。
重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩;などが挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常、全単量体100重量部に対して、0.1〜2重量部である。
乳化共重合に際して、必要に応じて、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
重合温度は、特に限定されないが、通常、0〜95℃、好ましくは35〜70℃である。
重合反応を停止する際の重合転化率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは93重量%以上である。
重合反応を停止した後、所望により、未反応の単量体を除去し、固形分濃度やpHを調整してラテックスを得る。
ラテックスには、必要に応じて、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、分散剤などを適宜添加できる。
ラテックスの数平均粒子径は、好ましくは60〜300nm、より好ましくは80〜150nmである。なお、この粒子径は、乳化剤および重合開始剤の使用量を調節するなどの方法により、所望の値に調整できる。
本発明のディップ成形用組成物は、上記のディップ成形用の共重合体ラテックス、加硫剤および加硫促進剤からなる。
加硫剤としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用でき、例えば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄;ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン類;などが挙げられる。なかでも、硫黄が好ましい。加硫剤の使用量は、ラテックス固形分100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.2〜2重量部、特に好ましくは0.5〜1.5重量部である。加硫剤が少なすぎると引張強度および密着状態の持続性に劣る傾向があり、逆に多すぎると風合いに劣る傾向がある。
加硫促進剤としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用でき、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニリル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられる。なかでも、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。これらの加硫促進剤は、単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
加硫促進剤の使用量は、ラテックス固形分100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.1〜1重量部、特に好ましくは0.2〜0.9重量部である。加硫促進剤が少なすぎると引張強度および密着状態の持続性に劣る傾向があり、逆に多すぎると風合いに劣る傾向がある。
本発明のディップ成形用組成物には、さらに酸化亜鉛を配合することができる。
酸化亜鉛の使用量は、ラテックス固形分100重量部に対して、好ましくは10重量部以下、好ましくは0.2〜2重量部、より好ましくは0.3〜1.5重量部である。酸化亜鉛を上記範囲で配合すると、引張強度、風合いおよび密着状態の持続性のバランスに優れるディップ成形物が得られる。
本発明のディップ成形用組成物には、さらに所望により、通常配合される、pH調整剤、増粘剤、老化防止剤、分散剤、顔料、充填剤、軟化剤などを配合してもよい。また、本発明の目的を損なわない限り、天然ゴムラテックス、イソプレンゴムラテックス等のその他のラテックスを併用することもできる。
本発明のディップ成形用組成物の固形分濃度は、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは25〜35重量%である。
本発明のディップ成形用組成物のpHは、好ましくは8〜10、より好ましくは8.5〜9の範囲である。ディップ成形用組成物のpHを上記範囲にすると、引張強度と密着状態の持続性とのバランスにより優れるディップ成形物が得られる。
ディップ成形用組成物は、ディップ成形に先立ち、熟成することが好ましい。熟成条件は、適宜選択できるが、通常、25〜40℃で、12時間〜3日間である。
本発明のディップ成形物は、上記ディップ成形用組成物をディップ成形してなる。
ディップ成形法は、通常の方法を採用すればよい。ディップ成形法としては、例えば、直接浸漬法、アノード凝着浸漬法、ティーグ凝着浸漬法などが挙げられる。なかでも、均一な厚みを有するディップ成形物が得られやすい点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
アノード凝着浸漬法の場合、例えば、ディップ成形用型を凝固剤溶液に浸漬して、該型表面に凝固剤を付着させた後、それをディップ成形用組成物に浸漬して、該型表面にディップ成形層を形成する。
凝固剤としては、例えば、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛など酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩などが挙げられる。なかでも、塩化カルシウム、硝酸カルシウムが好ましい。
凝固剤は、通常、水、アルコール、またはそれらの混合物の溶液として使用する。凝固剤濃度は、通常、5〜70重量%、好ましくは20〜50重量%である。
得られたディップ成形層は、通常、加熱処理を施し加硫する。
加熱処理を施す前に、水、好ましくは30〜70℃の温水、に1〜60分程度浸漬し、水溶性不純物(例えば、余剰の乳化剤や凝固剤など)を除去してもよい。この操作は、ディップ成形層を加熱処理した後に行ってもよいが、より効率的に水溶性不純物を除去できる点から、熱処理前に行うのが好ましい。
このようにして得られたディップ成形層は、100〜150℃の温度で、10〜120分の加熱処理を施し、加硫する。加熱の方法としては、赤外線や熱空気による外部加熱または高周波による内部加熱による方法が採用できる。なかでも、熱空気による加熱が好ましい。
加硫したディップ成形層をディップ成形用型から脱着することによって、ディップ成形物が得られる。脱着方法は、手で成形用型から剥がしたり、水圧や圧縮空気の圧力により剥がしたりする方法が採用できる。
脱着後、さらに60〜120℃の温度で、10〜120分の加熱処理を行ってもよい。
ディップ成形物は、さらに、その内側および/または外側の表面に、表面処理層を形成することもできる。
本発明のディップ成形物として、300%伸張時の応力が3MPa以下、引張強度が20MPa以上、かつ100%伸張してから6分間後の応力保持率が50%を超えるものが容易に得られる。
本発明のディップ成形物は、厚みが約0.1〜約3ミリのものが製造でき、特に厚みが0.1〜0.3ミリの薄手のものに好適に使用できる。具体的には、哺乳瓶用乳首、スポイト、導管、水枕などの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具や運動具;加圧成形用バッグ、ガス貯蔵用バッグなどの工業用品;手術用、家庭用、農業用、漁業用および工業用の手袋;指サックなどが挙げられる。手袋の場合、サポート型であっても、アンサポート型であってもよい。上記のなかでも、薄手の手術用手袋に好適である。
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、実施例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、重量基準である。
[評価方法]
(重合系内のアクリロニトリルの重合転化率)
重合反応液の一部を採取し、ガスクロマトグラフィー分析により、未反応アクリロニトリル量を測定した。この量と仕込みのアクリロニトリル量とから、仕込みのアクリロニトリル量に対する、共重合体に転化したアクリロニトリル量の割合を計算した。
(共重合体ラテックスのメチルエチルケトン不溶解分)
5%アンモニア水溶液でpH8.5に、固形分濃度を30%に調整した共重合体ラテックスを枠つきガラス板に流延し、温度23℃、相対湿度50%で48時間放置し、厚み1mmの乾燥フィルムを得た。この乾燥フィルム0.3gを80メッシュの金網に入れて、それを20℃のメチルエチルケトン100mlに48時間浸漬した。次いで、金網のかごに残るフィルムを100℃で減圧乾燥し、残存率を計算して、メチルエチルケトン不溶解分(%)を求めた。
(ディップ成形品の物性評価用試験片の作製)
ASTM D412に準じて、ゴム手袋状のディップ成形品をダンベル(Die−C)で打ち抜いて、試験片とした。
(300%伸張時の応力)
試験片を、テンシロン万能試験機(RTC−1225A:株式会社オリエンテック製)で、引張速度500mm/分で引っ張り、伸び率が300%の時の引張応力を測定した。この値が小さいほど、風合いに優れ、概ね3MPaであれば良好である。
(引張強度)
試験片を、テンシロン万能試験機で、引張速度500mm/分で引っ張り、破断直前の引張強度を測定した。
(破断時伸び)
試験片を、テンシロン万能試験機で、引張速度500mm/分で引っ張り、破断直前の伸びを測定した。
(応力保持率:%)
試験片を、テンシロン万能試験機で、伸び率100%にした直後の引張応力(Md0)と伸び率100%のまま6分間保持した後の引張応力(Md6)を測定し、Md6をMd0で除して応力保持率を求めた。応力保持率が高いほど、密着状態の持続性に優れる。
(ディップ成形物の耐有機溶剤性)
得られたディップ成形物を直径2cm(R1)の円板状に切り抜いた。この試験片を、有機溶剤100mlに48時間浸漬した後、膨潤したフィルムの直径(R2)を測定した。R2をR1で除した値を二乗して計算される値を有機溶剤膨潤度とした。この数値が小さいほど、耐有機溶剤性に優れることを示す。
[実施例1]
耐圧重合反応器に、アクリロニトリル18部、メタクリル酸5.25部、1,3−ブタジエン71部、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン(「TDM」と略する場合がある。)0.3部、脱イオン水150部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、過硫酸カリウム0.2部およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1部を仕込んだ後、系内温度を37℃にして重合反応を開始した。
重合反応系内の全単量体についての重合転化率が60%になった時点(この時の重合系内のアクリロニトリルの重合転化率は65%であった。)で、アクリロニトリル4部およびメタクリル酸1.75部を重合反応系に添加した。さらに重合反応を継続し、重合転化率が80%に達した時点で40℃に昇温した。さらに40℃を保持したまま、重合転化率が95%になるまで重合反応を継続し、その後、ジエチルヒドロキシルアミン0.1部を添加して重合反応を停止した。
得られた共重合体ラテックスから、未反応単量体を留去した後、5%アンモニア水溶液を添加し、固形分濃度とpHを調整し、固形分濃度45%、pH8.5の共重合体ラテックスAを得た。共重合体ラテックスAのMEK不溶解分を測定し、表1に示す。
硫黄1部、酸化亜鉛0.5部、ジエチルカルバミン酸亜鉛0.5部、酸化チタン1.5部、水酸化カリウム0.02部および水3.52部を混合して調製した加硫剤分散液7.04部を、共重合体ラテックスA222.22部(固形分100部)に混合した後、適量の脱イオン水および5%アンモニア水溶液を加えて、固形分濃度30%、pH8.5のディップ成形用組成物を得た。
一方、硝酸カルシウム25部、ノニオン性乳化剤のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル0.05部及び水75部を混合して調製した凝固剤水溶液に手袋型を1分間浸漬し、引き上げた後、3分間50℃で乾燥して、凝固剤を手袋型に付着させた。
次に、凝固剤の付着した手袋型を上記のディップ成形用組成物に1分間浸漬し、引き上げた後、そのディップ成形層が形成された手袋型を25℃で3分間乾燥し、次いで40℃の温水に3分間浸漬して、水溶性不純物を溶出させた。次いで、その手袋型を80℃で20分間乾燥し、引続き、120℃で20分間熱処理してディップ成形層を加硫させた。最後に加硫したディップ成形層を手袋型から剥し、厚みが約0.1mmである手袋形状のディップ成形物を得た。このディップ成形物の評価結果を表1に示す。
[実施例2および3]
重合反応開始時の単量体混合物およびTDMの初期仕込み量、並びに、重合反応開始後に添加するアクリロニトリル量およびメタクリル酸量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行ない、共重合体ラテックスBおよびCを得た。共重合体ラテックスBおよびCのMEK不溶解分を測定し、それぞれ表1に示す。
共重合体ラテックスAに代えて、それぞれ、共重合体ラテックスBおよびCを用いた以外は、実施例1と同様にディップ成形物を得た。ディップ成形物の評価結果を表1に示す。
(比較例1)
TDMの初期仕込み量を0.7部に変更する以外は、実施例1と同様に重合して、共重合体ラテックスDを得た。共重合体ラテックスDのMEK不溶解分を測定し、表1に示す。
共重合体ラテックスAに代えて、共重合体ラテックスDを用いた以外は、実施例1と同様にディップ成形物を得た。ディップ成形物の評価結果を表1に示す。
(比較例2)
表1に示す仕込み組成とし、アクリロニトリルおよびメタクリル酸の途中添加を行なわない以外は、実施例1と同様に重合して共重合体ラテックスEを得た。共重合体ラテックスEのMEK不溶解分を測定し、表1に示す。
共重合体ラテックスAに代えて、共重合体ラテックスEを用いた以外は、実施例1と同様にディップ成形物を得た。ディップ成形物の評価結果を表1に示す。

表1から次のようなことがわかる。
MEK不溶解分が本発明で規定する範囲より低い共重合体ラテックスDを用いて得られたディップ成形物は、風合いに優れるものの、引張強度、応力保持率お
表1から次のようなことがわかる。
MEK不溶解分が本発明で規定する範囲より低い共重合体ラテックスDを用いて得られたディップ成形物は、風合いに優れるものの、引張強度、応力保持率および耐有機溶剤性に劣る(比較例1)。
メタクリル酸の使用量が少なく、MEK不溶解分が本発明で規定する範囲より低い共重合体ラテックスEを用いて得られたディップ成形物は、風合いに優れるものの、引張強度、応力保持率および耐有機溶剤性に劣る(比較例2)。
これらの比較例に対して、本発明の共重合体ラテックスA〜Cを用いて得られたディップ成形物は、耐有機溶剤性および風合いに優れ、十分な引張強度を有し、かつ密着状態の持続性に優れている(実施例1〜3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(3)を満たすディップ成形用の共重合体ラテックス。
(1)共役ジエン単量体45〜85重量部、エチレン性不飽和ニトリル単量体10〜40重量部、エチレン性不飽和酸単量体5〜15重量部およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体0〜20重量部からなる単量体混合物(A)100重量部を共重合して得られるものであること
(2)共重合体のメチルエチルケトン不溶解分が60〜95重量%であること
(3)以下の各工程により得られるものであること
工程1:前記単量体混合物(A)の各成分中、共役ジエン単量体の80重量%以上、エチレン性不飽和ニトリル単量体の50〜90重量%、エチレン性不飽和酸単量体の40〜90重量%およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体の80重量%以上からなる単量体混合物(a)を用いて共重合反応を開始する工程
工程2:単量体混合物(A)中の、単量体混合物(a)に含まれなかった残余のエチレン性不飽和ニトリル単量体及び残余のエチレン性不飽和酸単量体を、単量体混合物(a)の重合転化率が5〜95重量%の範囲にあるときに添加する工程、
工程3:同じく残余の共役ジエン単量体およびこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体を、共重合反応の停止までに添加完了する工程
【請求項2】
重合反応系内のエチレン性不飽和ニトリル単量体の重合転化率が40〜95重量%の範囲にある時に、残余のエチレン性不飽和ニトリル単量体を重合反応系に添加する請求の範囲第1項に記載のディップ成形用の共重合体ラテックス。
【請求項3】
重合反応系内の全単量体についての重合転化率が20〜80重量%の範囲にある時に、残余のエチレン性不飽和酸単量体を重合反応系に添加する請求の範囲第1項または第2項に記載のディップ成形用の共重合体ラテックス。
【請求項4】
請求の範囲第1項に記載のディップ成形用の共重合体ラテックス、加硫剤および加硫促進剤からなるディップ成形用組成物。
【請求項5】
請求の範囲第4項に記載のディップ成形用組成物をディップ成形してなるディップ成形物。

【国際公開番号】WO2005/012375
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【発行日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512568(P2005−512568)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011194
【国際出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】