説明

ディーゼルエンジン車両の燃料冷却装置

【課題】ディーゼルエンジン車両の燃料冷却装置において、燃料の冷却効果を高めてエンジンの燃焼の安定性を向上させるとともに、燃料冷却装置を外力から保護することにある。
【解決手段】フィード燃料配管(26)及びリターン燃料配管(27)とバッテリ(13)との間にはその断面が車両前後方向(X)に延びるリザーバタンク(29)を配置し、フィード燃料配管(26)及びリターン燃料配管(27)とリザーバタンク(29)との間には冷却風(A)がフィード燃料配管(26)とリターン燃料配管(27)とに沿って流れる空間部(30)を形成し、フィード燃料配管(26)とリターン燃料配管(27)とには金属製のパイプからなる放熱部(31)を形成し、この放熱部(31)を空間部(30)の車両後方で金属製のブラケット(34)を介して吸気配管(20)のうち金属製のパイプ部(35)に取り付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディーゼルエンジン車両の燃料冷却装置に係り、特にディーゼルエンジンを搭載した車両の燃料系を冷却するディーゼルエンジン車両の燃料冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン車では、ガソリンエンジン車に比べて燃料を吐出するポンプとしての高圧ポンプの吐出圧が大きいため、この高圧ポンプの高温化に伴って、高圧ポンプから燃料タンクに戻る燃料が高温になるおそれがあった。
また、ディーゼルエンジン車では、燃料の高温化や上昇化を抑制して、低温の燃料を燃料タンクに戻すことで、燃料タンクに貯留される燃料の昇温を抑制し、燃料密度の高い低温の燃料をエンジンに流入させて、エンジンの燃料を安定させる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−274109号公報
【0004】
特許文献1に係る燃料冷却装置は、燃料噴射弁から燃料タンクに至るフィード燃料配管の途中で、燃料タンク側に近接した状態で冷却手段を設置し、燃料を冷却するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、上記の特許文献1では、燃料タンク近傍では空気が淀んで冷却手段による燃料の冷却性能が低下するおそれがあり、また、エンジンルーム内の燃料配管及び燃料を冷却するという効果がなく、改善が望まれていた。
【0006】
そこで、この発明の目的は、燃料の冷却効果を高めてエンジンの燃焼の安定性を向上させるとともに、燃料冷却装置を外力から保護するディーゼルエンジン車両の燃料冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、吸気マニホルドを後部に取り付けたエンジンとバッテリとを車両前部のエンジンルーム内に車両幅方向に並べて配置し、吸入空気を冷却するインタクーラと前記吸気マニホルドとの間を連絡する吸気配管と、燃料噴射装置に供給する燃料を高圧に加圧する高圧ポンプとを、互いに近接する状態で前記エンジンの上部に取り付け、燃料タンクから前記高圧ポンプを経由して前記燃料噴射装置に燃料を供給するフィード燃料配管と、前記高圧ポンプ及び前記燃料噴射装置から前記燃料タンクに余剰燃料を戻すリターン燃料配管とを、前記エンジンの側面部のうち前記バッテリと対向する位置に配置したディーゼルエンジン車両の燃料冷却装置において、前記フィード燃料配管及び前記リターン燃料配管と前記バッテリとの間にその断面が車両前後方向に延びるリザーバタンクを配置し、前記フィード燃料配管及び前記リターン燃料配管と前記リザーバタンクとの間には冷却風が前記フィード燃料配管と前記リターン燃料配管とに沿って流れる空間部を形成し、前記フィード燃料配管と前記リターン燃料配管とに金属製のパイプからなる放熱部を形成し、この放熱部を、前記空間部の車両後方に配置するとともに金属製のブラケットを介して前記吸気配管のうち金属製のパイプ部に取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明のディーゼルエンジン車両の燃料冷却装置は、燃料の冷却効果を高めてエンジンの燃焼の安定性を向上させるとともに、燃料冷却装置を外力から保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車両前部の平面図である。(実施例)
【図2】図2は車両前部の側面図である。(実施例)
【図3】図3は車両前部の斜視図である。(実施例)
【図4】図4は車両前部の拡大平面図である。(実施例)
【図5】図5は車両前部の拡大斜視図である。(実施例)
【図6】図6は車両前部の拡大側面図である。(変形例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、燃料の冷却効果を高めてエンジンの燃焼の安定性を向上させるとともに、燃料冷却装置を外力から保護する目的を、フィード燃料配管とリターン燃料配管とに金属製のパイプからなる放熱部を形成し、この放熱部を空間部の車両後方に配置するとともに、金属製のブラケットを介して吸気配管のうち金属製のパイプ部に取り付けて実現するものである。
【実施例】
【0011】
図1〜図5は、この発明の実施例を示すものである。
図1〜図3において、1はディーゼルエンジン車両(以下単に「車両」という)、2Rは右前フェンダ、2Lは左前フェンダ、3Rは右サイドフレーム、3Lは左サイドフレーム、4Rは右前懸架部、4Lは左前懸架部、5はこの右前懸架部4Rと左前懸架部4Lとが連結するクロスメンバ、6はダッシュパネル、7はエンジンルーム、8はエンジンフード、9はアッパメンバ、10はフロントバンパである。
車両前部のエンジンルーム7には、クランク軸11が車両前後方向Xと直交する方向の車両幅方向Yに指向した多気筒用のディーゼルエンジン(以下単に「エンジン」という)12と、このエンジン12の車両幅方向Yの左方のバッテリ13とが並べて配置されている。バッテリ13は、長手方向が車両前後方向Xに向いている。
エンジン12には、後部で吸気マニホルド14が取り付けられている。
また、エンジンルーム7内には、エンジン12よりも前方で、アッパメンバ9に支持されたラジエータ15が車両左側に配置されているととも、吸入空気を冷却するインタクーラ16が車両右側でアッパメンバ9に支持されている。ラジエータ15の後面部には、ファンシュラウド17が取り付けられている。
【0012】
また、エンジンルーム7には、バッテリ13の前方で、長手方向が車両幅方向Yに向いたエアクリーナ18が配設されている。このエアクリーナ18には、エンジン12に連結する空気ダクト19が車両幅方向Yに延びて接続している。
エンジン12の上部には、インタクーラ16と吸気マニホルド14との間を連絡する吸気配管20と、燃料噴射装置21に供給する燃料を高圧に加圧する高圧ポンプ22とが、互いに近接する状態で取り付けられている。燃料噴射装置21は、各気筒に対応した位置の複数の燃料噴射弁23と、コモンレール24とを備えている。
車両1の燃料タンク25から高圧ポンプ22を経由して燃料噴射装置21に燃料を供給するフィード燃料配管26と、高圧ポンプ22及び燃料噴射装置21から燃料タンク25に余剰燃料を戻すリターン燃料配管27とは、エンジン12の側面部のうちバッテリ13と対向する位置に配置され、車両前後方向Xに延びている。
即ち、燃料噴射装置21においては、燃料タンク25の燃料をフィード燃料配管26から高圧ポンプ22を経て燃料噴射弁23に供給する一方、余剰燃料を高圧ポンプ22からリターン燃料配管27を経て燃料タンク25に戻している。
【0013】
エンジン12には、図4、図5に示すように、燃料冷却装置28が設けられる。
この燃料冷却装置28において、フィード燃料配管26及びリターン燃料配管27とバッテリ13との間には、その断面が車両前後方向Xに延びるリザーバタンク29を配置する。
また、フィード燃料配管26及びリターン燃料配管27とリザーバタンク29との間には、冷却風Aがフィード燃料配管26とリターン燃料配管27とに沿って流れる空間部30を形成する。
更に、フィード燃料配管26とリターン燃料配管27とには、金属製のパイプからなる放熱部31として、フィード管側放熱部32とリターン管側放熱部33とを形成する。そして、このフィード管側放熱部32とリターン管側放熱部33とは、空間部30の車両後方で、金属製のブラケット34を介して吸気配管20のうち金属製のパイプ部35に取り付けられている。この場合、このブラケット34は、複数の固定ボルト36でパイプ部35に固定される。
【0014】
上記の構造において、フィード燃料配管26及びリターン燃料配管27とバッテリ13との間には、その断面が車両前後方向Xに延びるリザーバタンク29を配置し、また、フィード燃料配管26及びリターン燃料配管27とリザーバタンク29との間には、冷却風Aがフィード燃料配管26とリターン燃料配管27とに沿って流れる空間部30を形成することにより、車両前方から導入されてエンジン12とバッテリ13との間に流れる冷却風Aはリザーバタンク29によって形成される空間部30でその流速が上げられ、この流速が上がった冷却風Aを空間部30に流し込むことができる。
また、フィード燃料配管26とリターン燃料配管27とには、金属製のパイプからなる放熱部31としてのフィード管側放熱部32とリターン管側放熱部33とを形成し、そして、このフィード管側放熱部32とリターン管側放熱部33とを、空間部30の車両後方で、金属製のブラケット34を介して吸気配管20のうち金属製のパイプ部35に取り付けたことにより、空間部30によって流速を高めた冷却風Aをフィード管側放熱部32とリターン管側放熱部33とに吹きかけることができ、フィード管側放熱部32とリターン管側放熱部33とを冷却できる。
さらに、フィード管側放熱部32とリターン管側放熱部33を金属製のブラケット34を介してインタクーラ16で冷却された空気が流れる吸気配管20のうち金属製のパイプ部35との間で熱交換、又は、熱伝達でき、フィード燃料配管26とリターン燃料配管27内を流れる燃料を冷却できる。
よって、フィード燃料配管26とリターン燃料配管27内を流れる高温な燃料をフィード管側放熱部32とリターン管側放熱部33とで冷却でき、エンジン12の燃焼の安定性を向上させることができる。
さらに、このような構造において、フィード管側放熱部32とリターン管側放熱部33とをリザーバタンク29の側方に形成される空間部30の車両後方に配置したことで、車両1が車両側方から外力を受けてリザーバタンク29がエンジン12側に移動したとしても、フィード管側放熱部32とリターン管側放熱部33とがリザーバタンク29とエンジン12との間で挟まれることがなく、フィード燃料配管26とリターン燃料配管27とを保護できる。
【0015】
また、吸気配管20を構成する金属製のパイプ部35は、空間部30の車両後方に配置されている。
このような構造によって、空間部30を通過する速度を高めた走行風Aをパイプ部35に吹きかけてこのパイプ部35の冷却性を高めることができ、パイプ部35を低温にできる。
これにより、パイプ部35とフィード管側放熱部32及びリターン管側放熱部33との熱交換をさらに高めることができ、フィード管側放熱部32及びリターン管側放熱部33の温度を低下でき、フィード燃料配管26とリターン燃料配管27を流れる燃料を確実に冷却できる。
【0016】
図6は、この実施例に係る燃料冷却装置28の変形例を示すものである。
この変形例において、吸気配管20を構成する金属製のパイプ部35の外周面には、空間部30に沿って流れる冷却風Aに対して平行になるフィン37を設けた。
このような構造により、パイプ部35のフィン37でパイプ部35の温度を低減できるとともに、フィード管側放熱部32及びリターン管側放熱部33からパイプ部35に伝達される熱をフィン37によって放熱できる。
これにより、フィード燃料配管26やリターン燃料配管27を流れる燃料を、より一層冷却することができる。
【0017】
なお、この発明においては、吸気配管20を構成する金属製のパイプ部35の外周面に、凹凸や羽根形状を形成して表面積を大きくして、冷却効果をより高くすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
この発明に係るディーゼルエンジン車両の燃料冷却装置を、各種エンジンに適用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 車両
7 エンジンルーム
12 エンジン
13 バッテリ
14 吸気マニホルド
20 吸気配管
21 燃料噴射装置
22 高圧ポンプ
25 燃料タンク
26 フィード燃料配管
27 リターン燃料配管
28 燃料冷却装置
29 リザーブタンク
30 空間部
31 放熱部
32 フィード燃料配管の放熱部
33 リターン燃料配管の放熱部
34 ブラケット
35 吸気配管のパイプ部
37 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気マニホルドを後部に取り付けたエンジンとバッテリとを車両前部のエンジンルーム内に車両幅方向に並べて配置し、吸入空気を冷却するインタクーラと前記吸気マニホルドとの間を連絡する吸気配管と、燃料噴射装置に供給する燃料を高圧に加圧する高圧ポンプとを、互いに近接する状態で前記エンジンの上部に取り付け、燃料タンクから前記高圧ポンプを経由して前記燃料噴射装置に燃料を供給するフィード燃料配管と、前記高圧ポンプ及び前記燃料噴射装置から前記燃料タンクに余剰燃料を戻すリターン燃料配管とを、前記エンジンの側面部のうち前記バッテリと対向する位置に配置したディーゼルエンジン車両の燃料冷却装置において、前記フィード燃料配管及び前記リターン燃料配管と前記バッテリとの間にその断面が車両前後方向に延びるリザーバタンクを配置し、前記フィード燃料配管及び前記リターン燃料配管と前記リザーバタンクとの間には冷却風が前記フィード燃料配管と前記リターン燃料配管とに沿って流れる空間部を形成し、前記フィード燃料配管と前記リターン燃料配管とに金属製のパイプからなる放熱部を形成し、この放熱部を、前記空間部の車両後方に配置するとともに金属製のブラケットを介して前記吸気配管のうち金属製のパイプ部に取り付けたことを特徴とするディーゼルエンジン車両の燃料冷却装置。
【請求項2】
前記吸気配管を構成する金属製のパイプ部を、前記空間部の車両後方に配置したことを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジン車両の燃料冷却装置。
【請求項3】
前記吸気配管を構成する金属製のパイプ部の外周面には、前記空間部に沿って流れる冷却風に対して平行になるフィンを形成したことを特徴とする請求項2に記載のディーゼルエンジン車両の燃料冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−102616(P2012−102616A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249364(P2010−249364)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)