説明

ディーゼル粒状物のフィルター中の結合材の移行を軽減してフィルターの圧力低下と温度勾配とを減少するための、重合体のバリヤー被膜を製造する方法

セラミックのハニカム構造物と同の製法が開示される。該構造物は、重合体で被覆されて重合体のバリヤー被膜を形成され、そして無機繊維と、非晶質シリケート、アルミナイトまたはアルミノシリケート・ガラスおよびその他の無機粒子よりなる結合相とを含むセメントと一緒に接着された、少なくとも二種の別々の比較的小型のセラミックのハニカムよりなることができる。該重合体は、それがハニカム構造物の孔中に浸透性であるか、または孔を覆って、その上に薄いバリヤー層を形成して、無機繊維、結合相および水の、孔中への移行を軽減するように選択される。該重合体は、セメントとハニカムスキンの燃焼温度以下、または適用中のハニカム操作温度以下で焼却または分解されて、排気フィルターに形成される時に、セメントの移行によるどんな望ましくない圧力低下の増大をも伴わないハニカム構造物を形成するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は、参照することによりその全体を本明細書に引用されたこととされる、2009年12月31日に出願された米国仮出願第61/291,436号明細書の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
技術分野
ディーゼル粒状物のフィルターの製造において、ハニカムフィルターを集成してスキンで覆うためにセメントとスキンが使用される。セメントとスキンがそれらの接着機能を達成するために、ハニカム支持体に対する接着を形成するために、それらの調合物中に結合材が必須である。結合材は通常、無機および有機結合材を含む。セメントとスキンの適用工程中に、結合材は毛細管力により多孔性ハニカム支持体中に移行し、乾燥後に結合力を形成する。セメントとスキンの焼成後、有機結合材は焼き尽くされる(burned off)が、無機結合材はハニカム支持体内に残留し、焼結して、界面に無機結合物を形成する。
【0003】
結合材はハニカム支持体の1本以上のチャンネル中に拡散することができるので、焼結された無機結合材は多孔質のチャンネルの壁をブロックまたは一部ブロックして、セメントとスキンとを使用して、支持体の界面に隣接するチャンネル中に比較的高い圧力の低下をもたらし得る。一方で、これらのブロックされたチャンネル内の圧力低下の増加は、フィルター全体に、比較的高い、圧力の低下をもたらし、それはディーゼルの煤煙濾過機能とエンジンの性能にとって望ましくない。他方、フィルター再生工程期間中に、これらのブロックされたチャンネルを通る気流は減少される。その結果、その部分の比較的高い温度勾配がハニカムフィルターの熱衝撃の堅牢度を低下させる。増加したフィルター圧力の低下と温度勾配のために、ハニカム支持体上の無機結合材の焼結は、無機結合材と接触された領域のハニカム支持体の弾性率を増加する。ハニカム支持体における増加した弾性率は、与えられた適用温度の勾配に対して増加した応力を生成する。
【0004】
これらの課題を低減するために様々なアプローチが試みられてきた。例えば、一つの方法は、結合材調合物中の水分量を減少し、それにより、粘度を増加し、無機結合材を固定化することであった。その他のアプローチは、セメントとスキン調合物内で比較的小型の無機結合材を比較的大型の結合材と置き換えて、無機結合材の移行を低下させることである。しかし、これらすべての方法は既存の調合物の変更または新規調合物の開発を必要とし、従ってセメントとスキンの性能と加工性に影響を与える。
【0005】
ディーゼルの粒状物フィルターのようなハニカムセラミック製品中のセメントとスキンの性能と加工性に影響を与えずに、多孔質支持体を通る無機結合材の拡散を防止または最小化することにより、ハニカムの多孔質セラミック支持体中への無機結合材の移行による圧力低下と温度勾配のあらゆる増加を防止または減少させる方法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
簡単な要約
一つの態様において、セラミックのハニカム構造物と様々なそれらの製法が開示される。セラミック構造物は、重合体で被覆されて重合体のバリヤー被膜を形成され、そして無機繊維と、非晶質シリケート、アルミナイトまたはアルミノシリケート・ガラスおよびその他の無機粒子よりなる結合相とよりなるセメントで一緒に接着された、少なくとも二種
の別々の比較的小型のセラミックのハニカムを含むことができる。重合体はハニカム構造物の孔中に浸透性であって、その上に薄いバリヤー層を形成して、孔中へのあらゆる無機繊維と結合相または水の移行を軽減する。重合体は更に、ハニカム構造物が排気フィルターに形成される時に、どんな圧力低下をも経験しないように、セメントとハニカムスキンの燃焼温度以下で焼き尽くすようになっている。
【0007】
一つの態様において、ハニカム構造物を製造する方法は、セラミックのハニカム構造物を重合体で被覆して重合体のバリヤー被膜を形成し、重合体のバリヤー被膜を硬化し、無機繊維と、非晶質シリケート、アルミナイトまたはアルミノシリケート・ガラスおよびその他の無機粒子よりなる結合相とよりなるセメント(熱硬化または冷温硬化)を適用し(ここで、重合体はハニカム構造物の孔中に浸透性であって、その上に薄いバリヤー層を形成して、孔中への無機繊維と結合相の移行を軽減する)、そしてセメントとハニカムスキンの燃焼温度以下で重合体のバリヤー被膜を焼き尽くす工程を含む。他の態様において、冷温硬化セメントが使用される場合は、重合体のバリヤー被膜はハニカム支持体の操作温度以下で焼き尽くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本開示の一つの態様に従う重合体の被膜をもたないハニカム構造物のサンプルの圧力低下を表すグラフである。
【図2】図2は本開示の一つの態様に従う針状ムライトの支持体上の結合材の被膜の顕微鏡写真である。
【図3】図3はセグメントフィルターのバーナー中の熱電対の位置の顕微鏡写真である。
【図4】図4は250℃/分の加熱速度を使用するセグメントフィルターのバーナーテストにおける位置の間の温度差を表すグラフである。
【図5】図5は350℃/分の加熱速度を使用するセグメントフィルターのバーナーテストにおける位置の間の温度差を表すグラフである。
【図6】図6は本開示の少なくとも一つの態様に使用されるセメントの粘度を表すグラフである。
【図7】図7は本開示の一つの態様に従う重合体の被膜を伴う、および伴わないハニカム構造物のサンプルの圧力低下を表すグラフである。
【図8】図8は本開示のその他の態様に従う重合体の被膜を伴う、および伴わないハニカム構造物のサンプルの圧力低下を表すグラフである。
【図9】図9は本開示の一つの態様に従う重合体の被膜を伴う、および伴わないハニカム構造物のサンプルの圧力低下を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
その一例が図3に示されるセラミックのハニカム10は、ハニカム本体の長さを通して軸方向に延伸する複数のセルをもつことを特徴とする。セル12は多数の交差する壁14により区画される。壁と交差点16は、セル18の数およびそれらの切断面のサイズとディメンションを規定する。多数の濾過または触媒の適用のために典型的なハニカムは25
〜1000個のセル/平方インチ(約4〜150個のセル/平方センチメーター)の断面積(すなわち縦の延びに対して横方向)を含むと考えられる。より厚いまたはより薄い壁の厚さを使用することができると考えられるが、壁の厚さは、典型的には0.05〜10mm、好適には0.2〜1mmである。
【0010】
セラミックのハニカムはモノリスである(すなわち、単一片に形成された)かまたは、別々に製造され、次に、通常個々の部品を一緒に接着するためにセラミックのセメントを使用して一緒に集成される、より小型のハニカム構造物のアセンブリーであることができる。
【0011】
ハニカムは、その選択が、構造物が使用される最終使用の適用により支配される、1種以上のセラミック物質でできている。代表的セラミックはアルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素および窒化アルミニウム、オキシ窒化珪素および炭窒化珪素、ムライト、コーディエライト、ベータ・リシア輝石、チタン酸アルミニウム、珪酸アルミニウムストロンチウム、珪酸アルミニウムリチウムを含む。好適な多孔質セラミック物体は、炭化珪素、コーディエライト、針状ムライトまたはそれらの混合物を含む。炭化珪素のハニカムは、米国特許第6,669,751号明細書、欧州特許第1142619号明細書および国際公開第2002/070106号パンフレットに記載されるようなものであることができる。針状ムライトのハニカム構造物の例は、参照することにより本明細書に引用されたこととされる、米国特許第5,194,154号、第5,173,349号、第5,198,007号、第5,098,455号、第5,340,516号、第6,596,665号および第6,306,335号明細書、米国特許出願第2001/0038810号明細書並びに国際公開第03/082773号パンフレットを含む。その他の適切な多孔質物体は、参照することにより本明細書に引用されたこととされる、米国特許第4,652,286号、第5,322,537号明細書、国際公開第2004/011386号、第2004/011124号パンフレット、米国特許第2004/0020359号明細書および国際公開第2003/051488号パンフレットにより記載されている。
【0012】
セラミックのハニカム構造物が濾過および触媒のような適用に使用される時は、ハニカムの壁は好適には、流体が1本の軸方向に延伸するセルから1個以上の隣接するセルに孔を通って流通することができるように多孔質である。
【0013】
このような場合のハニカムの壁は一般に、約30%〜85%の気孔率(porosity)をもつと考えられる。その壁は好適には、少なくとも約40%、より好適には少なくとも約45%、更により好適には少なくとも約50%、そしてもっとも好適には少なくとも約55%から、好適には最大約80%、より好適には最大約75%、そしてもっとも好適には最大約70%までの気孔率をもつ。ハニカムがセメントで一緒に結合された小型ハニカムのアセンブリーである場合は、1枚または複数のセメント層が同様な気孔率をもつことができる。気孔率は水浸漬法により決定される。
【0014】
無機のスキンは、ハニカムの周囲の少なくとも一部にスキン形成組成物を適用し、次にシリケート、アルミネートまたはアルミノシリケート結合相が形成する条件下で、組成物を燃成する工程により形成される。このガラス結合相はスキン中の無機繊維を一緒に結合し、末端のセラミックスキンをセラミックハニカムに接着する。スキン形成組成物は露出された内部をもつすべての末端のセルに適用されなければならない。
【0015】
図2に見られるように、無機のスキンは少なくとも2成分を含み、第1のものは少なくとも40重量パーセントの無機繊維20を含む無機充填材であり、そして第2はシリケート、アルミネートまたはアルミノシリケート結合相22である。無機のスキンは、5重量%以下の、乾燥工程が完了後に、無機繊維と異なる線膨張係数をもつ、低い縦横比の無機
粒子を含む。
【0016】
無機繊維は非晶質、結晶質または一部非晶質で一部結晶質であることができる1種以上の無機物質よりなる。繊維は、乾燥工程または何かその後の熱処理期間に少なくとも一部は結晶化する非晶質または半晶質物質であることができる。いずれの場合にも、無機繊維の特定の選択は一般に、製造または使用中に繊維が曝露されると考えられる熱条件を考慮して実施される。無機繊維は、それらの繊維の幾何学構造を維持するように、製造および使用条件期間中、著しく(significantly)熔融または軟化されてはならない。同様に、無機繊維は製造および使用条件期間に反応または分解してはならない。これが現実であろうが、通常、無機繊維が、下にあるセラミックのハニカムのものと同様な熱膨張係数をもつことは必要ではない。
【0017】
無機繊維は少なくとも10、好適には少なくとも20の縦横比(最短ディメンションで割った最長ディメンション)をもつ。約100までの縦横比がより一般的であるが、どんな長い縦横比も適当であることができる。一般に、繊維の口径は約0.1ミクロメーター〜約100ミクロメーターである。繊維の口径は少なくとも約0.2、0.4、0.6、0.8、1.2または4ミクロメーターから最大で約50、25、20、15、12、10または8ミクロメーターであることができる。
【0018】
無機繊維の数平均長さは100ミクロン〜130ミリメーター以上の範囲にあることができる。数平均長さは好適には少なくとも150ミクロンである。数平均長さは好適には、10ミリメーター以下である。数平均長さは5ミリメーター以下または2ミリメーター以下であることができる。10mm以上の長さをもつもののような、比較的長い繊維はしばしば、加工中に束を形成する傾向がある。これらの束はスキンを適用する際に問題を引き起こし、更にスキンの組成物との不整合(inconsistency)をもたらす。従って、比較的長い繊維は好適には、全くとは言えないが幾らか控えめに使用される。
【0019】
本発明の幾つかの態様において、本質的にすべての繊維が1mm未満の長さをもつ。
【0020】
その他の態様において、繊維は二峰または多峰の長さ分布をもち、繊維の一部分は100〜1000ミクロンの数平均長さをもつ比較的短い繊維であり、そして繊維の少なくとも一つのその他の部分は少なくとも1ミリメーター、好適には1〜100ミリメーター、より好適には2〜100ミリメーターそして更により好適には5〜30ミリメーターの数平均長さをもつ比較的長い繊維である。このような態様において、比較的長い繊維は好適には、無機繊維の総重量の1〜50パーセント、より好適には3〜30パーセント、そして更により好適には5〜25パーセントを構成する。混合された長さの繊維は特定の利点を与える。僅かな割合の比較的長い繊維の存在は、組成物中の一定の繊維含量においてスキン形成組成物の粘度を増加する傾向がある。スキン形成組成物が乾燥することができる前に、ハニカムから垂れ下がったり、または流出せずに、容易に適用され、成形され得るように、スキン形成組成物の粘度は幾らか高くなければならない。少量の割合の、比較的長い繊維の存在は、繊維含量を不必要に増加することなく、良好な作業粘度を達成させることができる。繊維含量が高くなり過ぎると、組成物中に、繊維を相互に、または下にあるハニカムに適切に結合させるのに十分なコロイド状シリカおよび/またはコロイド状アルミナがないかも知れない。繊維の数はそれらの長さが増加するに従って減少し、そしてより少ない繊維は、それらが一緒に結合されることができる交差点が少ないことを意味するために、スキンの強度は典型的には、繊維の長さ増加とともに減少する傾向がある。比較的短い繊維と比較的長い繊維の混合物が使用される時は、スキンの強度はしばしば、等しい割合の短い繊維のみを含むスキンの強度に匹敵する。従って、比較的短い繊維と少量の割合の比較的長い繊維の混合物が、ほとんどまたは全く、対応する欠点を伴わずに、著しい加工の利点を与えることができる。
【0021】
繊維の長さと縦横比は顕微鏡検査により本発明の目的のために決定される。適切な倍率下(走査電子顕微鏡下のような)で検査される繊維の代表的サンプル(一般に100〜200で十分)は、測定することができる個々の繊維の長さと直径を表すことができる。次に個々の繊維測定値から、当業者に周知の方法で、数平均長さと縦横比を計算する。
【0022】
適切な無機繊維は、非晶質、一部結晶質または完全に結晶質であることができる、例えばシリケートまたはアルミノシリケート繊維を含む。無機繊維はガラスにより囲まれた結晶質相を含むことができる。繊維はまた、その他の化合物、例えば希土類、ジルコニウム、鉄、ホウ素およびアルカリ土類、を含むことができる。有用な無機繊維の例は、ムライト繊維(Unifraxから市販のような)、アルミナ−ジルコニウム−シリケート繊維(Unifraxから市販のような)、10重量%までのシリカを含むアルミナ繊維(Saffilから市販のような)、ムライト繊維(Unifraxまたは3Mから市販のような)、a−アルミナおよびa−アルミナ+ムライト繊維(3MからのNexte1 312またはNextel 610繊維のような)、y−アルミナ+ムライト+非晶質SiO繊維(3MからのNextel 440繊維のような)、y−アルミナ+非晶質SiO繊維(3MからのNextel 500繊維のような)、石英繊維(Saint Gobainから市販のような)、e−ガラスまたはs−ガラス繊維、ホウ珪酸塩繊維(Mo−SiC Corporationから市販のような)、玄武岩質繊維(Alb arrieから市販のような)、珪灰岩繊維(Fibertecから市販のような)、等を含む。
【0023】
スキン形成組成物は前記の無機繊維の他に、低い縦横比の無機充填材粒子を含むことができる。これらの無機充填材粒子は、スキン形成組成物のコロイド状シリカおよび/またはコロイド状アルミナ成分と異なり、それらを含まない。無機充填材粒子は、スキン形成組成物が乾燥される時に、結合相を形成しない。その代わりに、無機充填材粒子はその他の粒子または無機繊維に対してガラス状結合相により結合されることはできるが、乾燥工程を通してそれらの粒状物の性状を保持する。前記の「低い縦横比」は10未満、好適には5未満の縦横比を表す。
【0024】
本発明の目的のためのこれらの無機充填材の粒子は2タイプに分類することができる。第1のタイプは、乾燥工程が完了した後に、無機繊維と同一CTEまたはほぼ同一に近いCTEをもつ(すなわち、100〜600℃の温度範囲で1ppm/℃以下だけ異なる)粒子である。例えば、起る可能性がある結晶度および/または組成の変化による、乾燥工程中に繊維および/またはその他の粒子に起る可能性があるCTEの変化に起因する乾燥したスキン組成物に基づいて比較を実施する。このタイプの粒子は一般に、無機繊維と同一のまたはほぼ同一の化学組成をもつ。このタイプの粒子の一般的な原料は、繊維の製造工程の副産物であり、無機繊維の多数の商業的等級に含まれるいわゆる「ショット」材料である。しかし、このタイプの粒子はその他の原料からも同様に供給されることができる。
【0025】
第2のタイプの無機充填材粒子は、乾燥工程が完了した後に、無機繊維のCTEと著しく異なるCTE(すなわち、100〜600℃の温度範囲において1ppm/℃超だけ、より好適には少なくとも2ppm/℃だけ異なる)をもつ。本発明の一つの利点は、充填材を添加する、あるいはまた、下にあるハニカムの係数に、スキンの熱膨張係数を「合わせる」ことを試みる必要がないことである。この第2のタイプの無機充填材粒子の例は、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素、ムライト、コーディエライトおよびチタン酸アルミニウムである。
【0026】
スキン形成組成物はまた、コロイド状シリカ、コロイド状アルミナまたはコロイド状シ
リカとコロイド状アルミナの混合物を含む。このようなコロイド状物質は1ミクロメーター未満、好適には250ナノメーター未満の数平均粒度をもつ粒状物の形態を採る。粒子は水またはその他のキャリヤー液中に分散されることができる。粒子は結晶質または非晶質であることができる。コロイド状粒子は好適には非晶質である。コロイドは好適にはシリケート、アルミネート、アルミノシリケート・ゾルである。コロイド状シリカ製品は一般に塩基性pHおよび、電気泳動により測定される陰性の表面電荷をもつ。コロイド状アルミナは望ましくは酸性のpHをもち、電気泳動により測定されるとアルミナ粒子が陽性の電荷をもつ。実例となるコロイドは、PQ Corporation,Valley Forge,PA.からのKASILおよびN、Zaclon Incorporated,Cleveland,OHからのZACSIL、Occidental Chemical Corporatin,Dallas,TXからのSodium Silicates(珪酸ナトリウム)、Nyacol Nanotechnologies Inc.からのNexsilコロイド状シリカおよびAl 20コロイド状アルミナ、Aremco Products Inc.,Valley Cottage,NYからのAshland MAおよびAremco 644Aおよび644Sのような商品名で市販のものである。
【0027】
スキン形成組成物はまた、キャリヤー液を含む。キャリヤー液とコロイド状シリカおよび/またはコロイド状アルミナ粒子の混合物は、それに無機充填材が分散されるペーストまたは粘性の流体を形成する。スキン形成組成物の流体または半流体の性状が、乾燥工程が完了するまで、下にあるハニカムに容易に適用させ、十分に接着させる。キャリヤー液は例えば水または有機液体であることができる。適切な有機液体はアルコール、グリコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、エステル、カルボン酸、カルボン酸塩化物、アミド、アミン、ニトリル、ニトロ化合物、スルフィド、スルホキシド、スルホン等を含む。脂肪族、不飽和脂肪族(アルケンおよびアルキンを含む)および/または芳香族炭化水素を含む炭化水素は有用なキャリヤーである。有機金属化合物もまた有用なキャリヤーである。キャリヤー流体は好適には、アルコール、水またはそれらの組み合わせ物である。アルコールが使用される時は、それは好適にはメタノール、プロパノール、エタノールまたはそれらの組み合わせ物である。水がもっとも好ましいキャリヤー液である。
【0028】
セメントは、無機充填材、コロイド状シリカおよび/またはコロイド状アルミナおよびキャリヤー流体の他に、その他の有用な成分を含むことができる。有機結合材または可塑化剤はスキン形成組成物に望ましいレオロジー特性を与えることができ、従って好適に含まれる。結合材は好適にはキャリヤー液に溶解する。適切な結合材と有機可塑化剤の例は、セルロースエーテル(例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリエチレングリコール、脂肪酸、脂肪酸エステル等を含む。
【0029】
その他の、場合により使用される成分は、Introduction to the Principles of Ceramic Processing,J.Reed,John Wiley and Sons,NY,1988の第10〜12章に記載のような分散剤、解膠剤、凝集剤、消泡剤、滑剤および保存剤を含む。スキン形成組成物はまた、1種または複数のポロゲンを含むことができる。ポロゲン(porogens)は非晶質相を形成するために加熱された後に、スキンに空隙(void)を形成するために特別に添加される物質である。これらは典型的には、空隙を残すための加熱または燃焼工程期間に分解、蒸発または場合により気化するあらゆる粒状物である。例は、粉末(flour)、木材粉末、炭素粒状物(非晶質または黒鉛型)、ナッツの殻粉末またはそれらの組み合わせ物を含む。
【0030】
繊維は少なくとも10重量%のスキン形成組成物の固形分(solids)を構成しな
ければならず、その90重量%までを構成することができる。この計算の目的のための「固形分」はセメント組成物が燃焼された後にスキン中に残留する、充填材および無機結合相を含むスキン形成組成物中の無機物質により構成される。大部分の場合、固形分は無機繊維、コロイド状シリカおよび/またはコロイド状アルミナ、プラス、存在することができるあらゆる無機充填材粒子でできていると考えられる。キャリヤー流体と有機物質は一般に、1回または複数の乾燥工程中に組成物から喪失され、乾燥スキン中にもはや存在しない。従って、「固形分」はどんな量のこれらの物質をも含まない。
【0031】
繊維は典型的には、スキン形成組成物中の固形分の少なくとも30重量%、好適には少なくとも重量50パーセント、そしてより好適には少なくとも60重量%を構成する。繊維は好適には、固形分の重量の85%以下、更により好適には80%以下を構成する。
【0032】
コロイド状シリカおよび/またはアルミナは、セメント組成物中の固形分の重量の10〜70%、好適には15〜50%、そしてより好適には20〜40%を構成しなければならない。結合材、ポロゲン、可塑化剤等のような有機物質は典型的には骨材中で、スキン形成組成物の総重量の0〜15%、好適には1〜10%を構成する。
【0033】
低縦横比の充填材は、多少とも存在する場合は、繊維と低縦横比の充填材の合わせた重量の2/3までを構成することができる。低縦横比の充填材は好適には、繊維と低縦横比の充填材の合わせた重量の25%以下、更により好適には15%以下を構成する。前記の第1のタイプの低縦横比の充填材(繊維に近いCTEをもつ)は、繊維と低縦横比の充填材の合わせた重量の2/3まで、好適には25%まで、そしてより好適には10重量%までを構成することができる。前記の第2のタイプの低縦横比の充填材(繊維のCTEと異なる、少なくとも1ppm/℃のCTEをもつ)は、好適にはセメント組成物の固形分の5%以下を構成する。
【0034】
繊維と低縦横比の充填材は一緒に、スキン形成組成物中の固形分の重量の30〜90%、好適には50〜85%、そしてより好適には60〜80重量%を構成することができる。
【0035】
一つの態様において、スキン形成組成物は、充填材として、無機繊維のみ、無機繊維からの「ショット」材料および、場合によりセメントの固形分の0〜5重量%の量で存在することができるが、第1のタイプのその他の有機充填材の粒子は本質的に含まない(5重量パーセント未満、好適には1%未満)、第2のタイプの無機充填材の粒子、を含む。
【0036】
その他の態様において、スキン形成組成物は無機繊維および、固形分の重量の0〜5重量パーセントの第2のタイプの無機充填材を含むが、「ショット」材料または第1のタイプのその他の無機充填材は含まない。従って、スキン形成組成物は第2のタイプの無機充填材粒子を全く含むことができないか、またはスキン形成組成物の固形分の、例えば0〜3%または0〜2%または0〜1%のような、それらの非常に少量の割合のみを含むことができる。
【0037】
スキン形成組成物は、コロイド状シリカおよび/またはアルミナを湿らせ、その中に無機繊維が分散されるペーストまたは粘性流体を生成するのに十分なキャリヤー流体を含む。#6のスピンドルおよび5rpmの速度を使用して、25℃における有用なブルックフィールド粘度は典型的には、少なくとも約5、10、25、50、75または更に100Pa・s・〜約1000Pa・s、好適には約500Pa・sまでである。スキン形成組成物は、その粘度がより高い剪断においてより低くなるような剪断減粘性動態を示すことができる。スキン形成組成物中のキャリヤー流体の総量(コロイド状シリカおよび/またはコロイド状アルミナとともに取り入れることができるあらゆるキャリヤー流体を含む)
は一般に、全組成物の約25重量%〜最大約90重量%である。キャリヤー流体の好適な量は全組成物の40〜70重量%である。
【0038】
スキンは、スキン形成組成物をセラミックのハニカムの周辺の少なくとも一部に適用し、そしてスキン形成組成物を乾燥する工程により形成される。ハニカム上に存在する可能性がある前以て既存のあらゆるスキンは好適には、スキン形成組成物を適用する前に取り除かれる。
【0039】
スキン形成組成物を適用する方法は重大ではなく、所望の厚さに組成物を適用することができるあらゆる適切な方法が適当である。スキン形成組成物は手動で、または様々なタイプの機械装置の使用により適用することができる。スキン形成組成物は適用工程中にキャリヤー流体の除去を容易にするために、大気圧より低い圧力下で適用することができる。
【0040】
セラミックハニカムの周辺は通常、滑らかではなく、大部分の場合、ハニカムの周辺の軸方向に延伸するセルの特定の割合は、スキンが適用される前は開放されていると考えられる。スキン形成組成物は典型的にはこれらの開放セルを充填し、そして幾らか滑らかな外面を形成するような方法で適用されると考えられる。従って、スキンの厚さは通常ばらつくと考えられる。そのもっとも薄い地点で適用されるスキンは少なくとも1mmの厚さでなければならず、25mmまでの厚さであることができる。
【0041】
結合材の移行が、ハニカム構造物内の圧力低下および温度勾配を増加する可能性がある課題であったことは理解されていた。本開示は、多孔質のハニカムセラミック支持体を通る結合材の拡散を軽減することにより、無機結合材の移行による圧力低下と温度勾配の増加を防止または低下させる方法を含む。これは、焼成の前に、支持体に、支持体中に浸透しそして結合材およびハニカム支持体内の孔との間にバリヤーを形成するか、または孔中に、孔の口径を縮小させて孔中への結合材の移行を低減させる被膜を形成すると思われる重合体を適用する、工程により達成することができる。
【0042】
重合体は有機または無機のいずれでもよい。
【0043】
適切な有機重合体を、疎水性および親水性重合体またはそれらの混合物よりなる群から選択することができる。有機重合体は通常、焼成中に気化し、非常に少量の焼結灰を残す。
【0044】
結合材の移行を防止するために、バリヤーが結合材と孔との間に形成されなければならないことが決定される時は、疎水性重合体を使用することができる。あらゆる疎水性重合体は、焼成中に気化されることができる場合に使用することができる。限定されない適当な疎水性重合体は、アクリル誘導体、アミド、イミド、カーボネート、ジエン、エステル、エーテル、フルオロカーボン、オレフィン、スチレン、ビニルアセテート、ビニルおよびビニリデンクロリド、ビニルエステル、ビニルケトン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン重合体、およびそれらの混合物よりなる群から選択することができる。
【0045】
親水性重合体は、孔中への結合材の移行を軽減または防止するために、それらの相対的サイズを縮小するために、セラミック構造物内の孔を被覆するために使用することができる。焼成期間中にそれが気化されることができる場合にはあらゆる親水性重合体を使用することができる。限定されない適切な親水性重合体は、アクリル誘導体、アミン官能性重合体、エーテル、スチレン、ポリスチレンスルホネート重合体、ビニル酸、ビニルアルコールおよびそれらの混合物よりなる群から選択されることができる。
【0046】
無機重合体はまた、結合材の移行を軽減し、圧力低下と温度勾配を減少するために使用することができる。無機重合体は孔を充填し、孔の上に膜を形成するか、または支持体の水接触角を変えて、水と結合材の移行を妨げる、または減少させることができる。限定されない適切な無機重合体は、焼成前に支持体に適用することができそして一旦焼成された後は、減少された灰容量まで焼結されることができる、シリコーンまたは関連(relative)重合体であることができる。
【0047】
どちらの重合体が選択されるにしても、それは幾つか名前を挙げると、ブラッシング、噴霧、ローリング、浸漬、粉末被覆および熔融により、焼成の前に支持体に適用することができる。適用後、重合体の被膜は硬化される。硬化は、セラミックハニカム上の気流を増加することにより、支持体の温度を高めて重合体の硬化を促進することにより、またはそれらのあらゆる組み合わせ物により促進させることができる。
【0048】
重合体が適用され、硬化された後に、ハニカムセラミック構造物全体をセラミック構造物とスキンについて前記の通りに焼成し、重合体バリヤーを気化させる。
【0049】
次に、適用されたスキン形成組成物を焼成して、セラミックハニカムの周辺の少なくとも一部上に無機のスキンを形成する。「焼成(firing)」により、それは組成物が、キャリヤー流体、存在することができるあらゆる有機物を除去し、そしてコロイド状シリカおよび/またはコロイド状アルミナを、無機繊維を一緒に結合し、スキンを下にあるハニカムに接着する結合相に転化するのに十分な高温にさらされる、ことを意味する。乾燥は、場合により少なくとも一部は、0〜40℃のような、ほぼ外界温度で実施することができる。例えば、スキン形成組成物が適用される時ですら、キャリヤー流体の大部分はしばしば喪失される。焼成工程は好適には、一般に可塑化剤、結合材およびポロゲンのような有機物質を除去するのに十分な、少なくとも500℃の温度を含む。焼成工程は少なくとも800℃、少なくとも1000℃、少なくとも1100℃または少なくとも1400℃の温度を含むことができる。被覆されたハニカムがこのような温度に曝露される時間は、キャリヤー流体(ある場合は)を取り除き、存在する可能性があるあらゆる有機物を焼き尽くし、そしてコロイド状シリカおよび/またはコロイド状アルミナを結合相に転化するのに十分である。この時間は数分のように短いものから数時間までであることができる。熱衝撃による割れを防止するために、その部分を最大焼成および/またはか焼温度まで徐々にもたらし、そして焼成工程が完了した時は、その部分を外界温度に徐々に冷却することが好適である。
【0050】
焼成工程を2以上の別々の準工程で実施するか、または焼成工程の次に、より高温で実施される1以上のか焼(calcination)工程を続けて実施することができる。か焼工程はしばしば、スキン適用されたハニカムを、それがその後の使用中に曝露されると考えられる温度条件に調整するために有用である。
【0051】
セラミックハニカムが針状ムライトである時は、焼成工程は、残留フッ素がハニカムから除去される熱処理工程と組み合わせることができる。これらの二つの操作を単一工程に組み合わせる能力は一つの処理工程の排除と生産コストの相当する節減に導くことができる。
【0052】
焼成工程後に残留する生成物は、スキンを周辺の少なくとも一部に適用され、結合される中央のセラミックハニカムである。スキンは典型的には30〜90重量%、好適には50〜80重量%、そしてより好適には60〜80重量%の前記のような無機繊維を含む。繊維は好適には、100ミクロンを超える数平均長さをもち、前記のように二峰または多峰の粒度分布をもつことができる。繊維は好適には、スキン内にランダムに配向されている。スキンはまた、典型的には10〜70%、好適には15〜50%、そしてより好適には20〜40%のシリケート、アルミネートまたはアルミノシリケート結合相を含む。結合相は繊維を相互に(そして存在する場合は、無機充填材粒子に)結合させ、そして更にスキンを下にあるセラミックハニカムに結合する。スキンは低縦横比の無機充填材粒子を含むことができるが、5重量%超の、無機繊維のCTEと著しく異なるCTEをもつ低縦横比の無機充填材粒子を含むべきではない。
【0053】
スキンは通常多孔質である。スキンの気孔率は10〜90%であることができ、より典型的には40〜70%である。
【0054】
スキンの材料は典型的には、下にあるセラミックのハニカムの値より有意に低い弾性率をもつ。その弾性率は例えば、ハニカム材料の値の3〜25%の範囲内にあることができる。この低い弾性率は少なくとも一部は、スキンの、より高い亀裂抵抗に起因することができる。スキン材料の弾性率は、スキン形成組成物から8mm×4mm×40mmのテスト棒を形成し、それらを乾燥し、そしてASTM 1259−98に従って弾性率を測定することにより、測定することができる。
【0055】
スキンを適用したハニカムを、特に動力装置(power plant)(移動性または固定された)の排気ガスから粒状物質を取り除くための、粒状物フィルターとして使用することができる。このタイプの特別の適用は、内燃エンジン、特にディーゼルエンジンのための煤煙のフィルターである。
【0056】
官能性物質を、様々な方法を使用してスキンを適用の前後に、スキン適用ハニカムに適用することができる。官能性物質は有機または無機であることができる。無機官能性物質、特に金属および金属酸化物は、これらの多数が望ましい触媒特性をもち、吸着材として働く、または何かその他の必要な機能を実施するために興味深い。複合物体上に金属または金属酸化物を導入する一つの方法は、ハニカムを金属の塩または酸の溶液で含浸し、次に加熱するかまたは溶媒を取り除き、そして必要な場合は塩または酸をか焼または分解して、所望の金属または金属酸化物を形成する工程による。
【0057】
従って、触媒または吸着物質がその上に堆積(deposited)されることができるより大きい表面積を提供するために、例えばアルミナ被膜またはその他の金属酸化物の被膜がしばしば、適用される。アルミナはハニカムをコロイド状アルミナで含浸し、次に、典型的には含浸された物体中に気体を通すことにより乾燥させる工程により堆積させることができる。この方法は所望量のアルミナを堆積するために、必要に応じて繰り返すことができる。チタニアのようなその他のセラミック被膜は同様な方法で適用することができる。
【0058】
バリウム、白金、パラジウム、銀、金等のような金属は、例えば硝酸白金、塩化金、硝酸ロジウム、硝酸テトラアミンパラジウム、ギ酸バリウム、のような金属の可溶性塩で、ハニカム(好適にはアルミナまたはその他の金属酸化物で被覆された内壁)を含浸し、次に乾燥し、そして好適には、か焼する工程により複合体上に堆積することができる。動力装置の排気流、特に自動車のための触媒コンバーターをその方法でスキン適用ハニカムから調製することができる。
【0059】
ハニカム構造物上に様々な無機物質を堆積するために適した方法は例えば、参照することにより本明細書に引用されたこととされる、米国特許第205/0113249号明細書および国際公開第2001045828号パンフレットに記載されている。これらの方法は一般に本発明のスキン適用ハニカムに関連している。
【0060】
特に好適な態様において、アルミナと白金、アルミナとバリウムまたはアルミナ、バリ
ウムと白金は、1以上の工程においてハニカム上に堆積されて、自動車の機関からのような動力装置の排気から、煤煙、NOx化合物、一酸化炭素および炭化水素のような粒状物を同時に除去することができるフィルターを形成することができる。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は本発明を具体的に示すために提供されるが、その範囲を限定することは意図されない。すべての部および百分率は別記されない限り重量に基づく。
【比較例A】
【0062】
42.0重量%のボールミル粉砕珪酸ジルコニウムアルミニウム繊維(Unifrax
LLC,Niagara Falls,NYから市販のFIBERFRAX Long
Staple Fine繊維)、13.5重量%のコロイド状アルミナ(Nyacol
Nano Technologies,Inc,Ashland,MAから市販のAL20SD)、40.5重量%の水、2重量%のメチルセルロース(The Dow Chemical Co.Midland,MIから市販のMETHOCEL A15LV)、および2重量%のポリエチレングリコール400(Alfa Aesar,Ward Hill,MAから市販)を混合して均一な混合物を達成した。
【0063】
ハニカムの圧力低下に対するセメント被膜の効果を研究するために、1平方インチのセル構造物当たり200セル(CPSI)をもつ10セル×10セル×3インチの針状ムライト(ACM)のハニカムを使用した。その圧力低下を3051圧力トランスミッター(Rosemount Inc,Eden Prairie,MNから市販)により測定した。次にセメント混合物をハニカムの周辺上に被覆し、1100℃に燃焼して、最終部品を得た。燃焼後に、被覆された10セル×10セル×3インチのハニカムの圧力低下を再度測定した。圧力低下のデータは図1に示される。本実施例ではハニカムは周辺上をセメントで被覆された後に、より高い圧力低下を示す。6m/時の空気流量において、セメント被膜をもつハニカムの圧力低下はセメント被膜を伴わないものより6%高い。セメント被覆後のハニカム支持体の走査電子顕微鏡分析は、アルミナ無機結合材が支持体に移行し、図2に示すように、ACM針上およびその間に被膜を形成することを示す。セメント被覆後のハニカムの、増加した圧力低下とSEM画像が、ハニカム支持体中への結合材の移行が、ハニカム支持体におけるより高い圧力低下をもたらしたことを示唆している。比較例Aにおける圧力低下は実施例1の圧力低下と比較するために使用される。
【0064】
混合物はまた、4セグメントのアセンブリーを伴うセグメントハニカムに対するセメントおよびスキンとして使用された。円筒状のセグメントハニカムは6インチ(15.2cm)の長さと5.66インチ(14.4cm)の口径をもち、セグメントは200 CPSIのセル構造をもつ。セグメントハニカムはバーナー試験にかけられ、そこでフィルターを熱気が通過して、その部分に熱機械的応力を形成した。試験において、フィルターは250℃/分で750℃に加熱され、別の試験では350℃/分で加熱された。多数の位置における温度を記録し、バーナー試験の位置は図3に示される。その部分の温度勾配はセグメントの中央部にある位置15における温度から、セグメントにおける個々の位置の温度を引くことにより計算された。2回のバーナー試験のフィルターの温度勾配が図4と5に示された。比較例Aの温度勾配は実施例1と比較するために使用される。
【0065】
セメントの粘度は、室温で、No.6のディスクスピンドルを使用して、Brookfield Engineering Laboratories,Inc.(Middleboro,MA)からの粘度計(モデル:RVDV−I Prime)
により測定した。本実施例のセメントの粘度は図6に示され、実施例1のものと比較するために使用される。
【0066】
ハニカム支持体の弾性率に対する結合材の移行の効果を研究するために、本実施例ではハニカムをセメントでスキン適用し、1400℃まで6時間燃焼した。弾性率は、ASTM標準C1259−98に従うGrindosonic法、動力学的ヤングの弾性率の標準試験法、剛性率および振動の衝撃励起による新型セラミックのポアソン比(Poisson’s Ratio for Advanced Ceramics by Impulse Excitation of Vibration)により測定した。本実施例のスキンの直下のハニカム支持体の弾性率は27GPaであった。これは、24GPaであった、セメントとスキンによる被覆の前のハニカム支持体の弾性率と比較して、弾性率の約13%増加である。結合材の移行と焼結はハニカム支持体の弾性率の増加をもたらした。
【実施例1】
【0067】
本実施例においては、水分量が比較例Aで添加された水分量の90%に減少されることを除いて、比較例Aにおけるすべての成分の量は同一である。従って、本調合物においては、43.9重量%のボールミル粉砕珪酸ジルコニウムアルミニウム繊維(Unifrax LLC,Niagara Falls,NYから市販のFIBERFRAX Long Staple Fine繊維)、14.1重量%のコロイド状アルミナ(Nyacol Nano Technologies,Inc,Ashland,MAから市販のAL20SD)、38重量%の水、2重量%のメチルセルロース(The Dow Chemical Co.Midland,MIから市販のMETHOCEL A15LV)、および2重量%のポリエチレングリコール400(Alfa Aesar,Ward Hill,MAから市販)を混合して均一な混合物を達成した。10セル×10セル×3インチの針状ムライト(ACM)のハニカムおよび、200CPSIセル構造物を伴う、6インチ(15.2cm)の長さと5.66インチ(14.4cm)の口径をもつ円筒状セグメントハニカムもまた、圧力低下と温度勾配を研究するために比較例Aにおけるように製造した。
【0068】
実施例1におけるセメントの粘度は図6に示す。比較例Aに比較して、本セメント調合物中の水分の減少が粘度の増加をもたらした。拡散のために使用可能な水分量が減少する外に、セメントの増加した粘度は、乾燥工程における多孔質ハニカムを通るセメントの拡散を遅らせる。
【0069】
図7に示す10セル×10セル×3インチのハニカムの圧力低下は、実施例1のセメントを被覆したハニカムにおける圧力低下の増加が、図1に示した比較例Aの増加より少ないことを示す。6m/時の空気流量において、実施例1で被覆されたハニカムの圧力低下の増加は3%であり、それは比較例Aで被覆されたハニカムに対する6%増加の半分のみである3%である。減少した水分量は、減少したアルミナ結合材の移行と圧力低下の増加をもたらした。
【0070】
250℃/分および350℃/分のバーナー試験における実施例1のセメントを使用したセグメントフィルターの温度勾配は図4と5に示す。実施例1のセメントとスキンを伴うセグメントフィルターは比較例Aのセメントとスキンを伴うフィルターより低い温度勾配を示した。位置1と15の間の温度勾配については、その減少は約20〜25%であった。従って、セメント調合物内の減少した水分含量は、その部分でより低い温度勾配をもたらし、従って、ハニカムフィルターの熱衝撃の堅牢性を改善した。
【実施例2】
【0071】
本実施例においては、水分量が比較例Aにおいて添加された水分量の85%に減少されることを除いて、比較例Aにおけるすべての成分の量は同様である。従って、本調合物中には、44.8重量%のボールミル粉砕珪酸ジルコニウムアルミニウム繊維(Unifr
ax LLC,Niagara Falls,NYから市販のFIBERFRAX Long Staple Fine繊維)、14.4重量%のコロイド状アルミナ(Nyacol Nano Technologies,Inc,Ashland,MAから市販のAL20SD)、36.6重量%の水、2.1重量%のメチルセルロース(The Dow Chemical Co.Midland,MIから市販のMETHOCEL A15LV)、および2.1重量%のポリエチレングリコール400(Alfa Aesar,Ward Hill,MAから市販)を混合して均一な混合物を達成した。
【0072】
実施例2におけるセメントの粘度は図6に示す。比較例Aと実施例1に比較して、本セメント調合物中の水分の15%の減少は、本実施例のセメントに対して最低量の水分および従って、最高の粘度をもたらした。セメントの粘度の更なる増加は更に、乾燥工程における多孔質ハニカムを通るセメントの拡散を遅らせる。
【0073】
200CPSIのセル構造物を伴う10セル×10セル×3インチのACMのハニカムもまた、圧力低下を研究するために、比較例Aにおけるように製造された。図8に示すハニカムの圧力低下は、実施例2のセメントを被覆したハニカムにおける圧力低下の増加が比較例Aの増加より少ないことを示す。6m/時の空気流量において、実施例2で被覆されたハニカムの圧力低下の増加は2%であり、それは比較例Aで被覆されたハニカムに対する6%の増加および実施例1で被覆されたハニカムに対する3%の増加より少ない2%である。セメント調合物中の水分量の更なる減少は、アルミナ結合材の移行と圧力低下の増加の、更なる減少をもたらした。
【実施例3】
【0074】
36重量%のボールミル粉砕珪酸ジルコニウムアルミニウム繊維(Unifrax LLC,Niagara Falls,NYから市販のFIBERFRAX Long Staple Fine繊維)、48重量%のコロイド状アルミナ(Aremco Products Inc.,Valley Cottage,NYから市販のCerama−Bind 644A)、16重量%のコロイド状シリカ(Aremco Products Inc.,Valley Cottage,NYから市販のCerama−Bind
644S)を混合して均一な混合物を達成した。644Aコロイド状アルミナは4のpHをもち、他方644Sコロイド状シリカは9のpHをもち、アルミナとシリカ結合材の混合は結合材のゲル化をもたらし、繊維は結合材ゲル中に懸濁された。
【0075】
200CPSIのセル構造物を伴う10セル×10セル×3インチのACMのハニカムもまた、圧力低下を研究するために比較例Aにおけるように製造された。図9に示すハニカムの圧力低下は、ハニカムが実施例3で被覆された後に圧力低下の増加がないことを示す。アルミナとシリカ結合材を混合することによる無機結合材のゲル化は、結合材の固定化をもたらし、従ってハニカム支持体中への結合材の移行はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体で被覆されて重合体のバリヤー被膜を形成され、そして無機繊維と、非晶質シリケート、アルミナイトまたはアルミノシリケート・ガラスおよびその他の無機粒子よりなる結合相とを含むセメントと一緒に接着された、少なくとも二種の別々の比較的小型のセラミックのハニカムよりなる、セラミックのハニカム構造物であって、ここで前記重合体が、前記ハニカム構造物の孔中に浸透性であるか、または孔を覆って、その上に薄いバリヤー層を形成して、前記無機繊維と結合相との前記孔中への移行を軽減し、そして更に、セメントとハニカムスキンとの燃焼温度以下で焼き尽くされるか、または冷温硬化セメントが使用される場合は、適用中のハニカム操作温度以下で焼き尽くされるようになっている、セラミックのハニカム構造物。
【請求項2】
重合体が有機重合体、無機重合体およびそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1のセラミックのハニカム構造物。
【請求項3】
重合体が前記バリヤー被膜を形成した後に、前記重合体が前記ハニカムスキンまたはセメント溶剤に不溶性である、請求項1のセラミックのハニカム構造物。
【請求項4】
重合体のバリヤー層が、固化後に、前記の孔を少なくとも一部を充填するか、または覆う、請求項3のセラミックのハニカム構造物。
【請求項5】
有機重合体が疎水性重合体、親水性重合体およびそれらの混合物である、請求項2のセラミックのハニカム構造物。
【請求項6】
有機重合体が、アクリル誘導体、アミドおよびイミド、カーボネート、ジエン、エステル、エーテル、フルオロカーボン、オレフィン、スチレン、ビニルアセタール、ビニルおよびビニリデンクロリド、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン重合体並びにそれらの混合物よりなる群から選択される疎水性重合体を含む、請求項2のセラミックのハニカム構造物。
【請求項7】
有機重合体がアクリル誘導体、アミン官能性重合体、エーテル、スチレン、ポリスチレンスルホネート重合体、ビニル酸、ビニルアルコールおよびそれらの混合物よりなる群から選択される親水性重合体を含む、請求項2のセラミックのハニカム構造物。
【請求項8】
無機重合体がポリジメチルシロキサンのような、反復単位内に炭素以外の元素を含む重合体を含む、請求項2のセラミックのハニカム構造物。
【請求項9】
セラミックのハニカム構造物を重合体で被覆して、重合体のバリヤー被膜を形成し、
重合体バリヤー被膜を硬化し、
無機繊維と、非晶質シリケート、アルミナイトまたはアルミノシリケート・ガラスおよびその他の無機粒子よりなる結合相とを含むセメントを適用し、ここで前記重合体は前記ハニカム構造物の孔中に浸透性であるか、または孔を覆って、その上に薄いバリヤー層を形成して前記の孔中への前記無機繊維と結合相との移行を軽減し、そして
前記重合体のバリヤー被膜を、セメントとハニカムスキンの燃焼温度以下または、冷温硬化セメントが使用される場合は、適用中のハニカム操作温度以下で焼き尽くす、
工程を含んでなる、セラミックのハニカム構造物を形成する方法。
【請求項10】
更に、前記重合体のバリヤー層の硬化を促進するための添加剤を添加する工程を含む、請求項11の方法。
【請求項11】
添加剤がポリアミン単量体、コバルト化合物およびそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項12の方法。
【請求項12】
有機重合体が疎水性、親水性およびそれらの混合物である、請求項11の方法。
【請求項13】
疎水性重合体のバリヤーが前記の孔中への水および無機結合材の移行を軽減する、請求項14の方法。
【請求項14】
重合体のバリヤーが前記の孔中への無機結合材の移行を軽減する、請求項14の方法。
【請求項15】
重合体のバリヤーがブラッシング、噴霧、圧延、浸漬被覆、粉末被覆および熔融により適用される、請求項11の方法。
【請求項16】
更に、前記セラミックのハニカム構造物上の気流を増加して、前記重合体のバリヤー被膜の硬化を促進する工程を含む、請求項11の方法。
【請求項17】
更に、前記セラミックのハニカム構造物上の温度を上昇させて、前記重合体のバリヤー被膜の硬化を促進する工程を含む、請求項11の方法。
【請求項18】
重合体が少なくとも1種の無機重合体を含み、そして前記の無機重合体が反復単位内に炭素以外の元素を含む、請求項11の方法。
【請求項19】
重合体が前記バリヤー被膜を形成した後に、前記重合体があらゆるハニカムスキンまたはセメント溶剤に不溶性である、請求項11の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−516379(P2013−516379A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547327(P2012−547327)
【出願日】平成23年1月3日(2011.1.3)
【国際出願番号】PCT/US2011/020045
【国際公開番号】WO2011/082399
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】