説明

デオキシビオチニルヘキサメチレンジアミン−DOTAの合成

デオキシビオチニルヘキサメチレンジアミン-DOTAの合成方法を本明細書に説明される。該方法は、縮合剤としてベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホリウムヘキサフルオロホスフェートおよび塩基としてトリエチルアミンの存在下で、ビオチニルヘキサメチレンジアミンをトリ-t-ブチル-DOTAと反応させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
明細書に報告した本発明は、デオキシビオチニルヘキサメチレンジアミン-DOTAの合成のために改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
デオキシビオチニルヘキサメチレンジアミン-DOTAなる化合物は、本願出願人の名称で国際特許出願 WO 02066075 に説明されている。DOTAは、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカノテトラ-酢酸(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンテトラ−酢酸)である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
デオキシビオチニルヘキサメチレンジアミン-DOTAの構造式は、ここに完全に示される。
【化1】

【0004】
この生成物を合成するための方法はまた、同特許出願WO 02066075においても説明されており、上記出願の第15頁の実施例において報告されている。本明細書でST2210として報告した化合物は、WO 02066075の実施例の化合物4に対応する。特に、中間生成物であるビオチニルヘキサメチレンジアミンハイドロクロライド(WO 02066075の実施例のST2551または化合物3)を、55%の収率および未確定力価にて分取クロマトグラフィーにより得た。
【0005】
デオキシビオチニルヘキサメチレンジアミン−DOTA最終生成物(ST2210またはWO 02066075の実施例の化合物4)を、図式1で説明したようにST2551をDOTAと縮合することによって得た。
図式1
【化2】

【0006】
この方法で行った反応は、低い合成収率(DOTA内の4つの保護されていないカルボキシル基官能等価物の存在が、様々な副産物の形成に関与した)および精製による課題をもたらす。実際に最終生成物を得るためには、20%の収率により分取スケールでHPLCを使用する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(本発明の詳細な説明)
スケールアップ試験において、該方法の収率を改良し、精製方法を容易にするために、別の合成方法を試験した:
改善された合成方法は、先に説明した発明よりも下記の有利な点を持つ:
1.カップリング工程または縮合(WO 02066075において"工程d"として説明される)において、トリ-tert-ブチル-DOTAの使用により、制御されたpH条件下で操作する場合であっても起こる遊離のカルボキシル基の部分反応性を理由とするさらなる縮合産物の形成が回避される;
2.さらに、同じ工程において、縮合剤および塩基を変えた;縮合剤としてベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスフィウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP−ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)および塩基としてトリエチルアミン(TEA)を用いて、改良された収率を得た;
3.ジヒドロクロリドの使用が望ましくない生成物の量の増加をもたらし、特にST2551がトリ-t-ブチル-DOTAの2分子と反応することによるダイマーに対応する副生成物の顕著な形成があることを示していたため、ビオチニルヘキサメチレンジアミン(ST2251)を遊離の塩基として使用する:
4.最終工程は、1時間から12時間の間に該生成物と様々な割合の酸性水溶液(例えば、3Nから6NのHClを用いる)中で3つのter-ブチル基の加水分解からなり、96%〜98%の収率を有する;
5.2つの必要以上に面倒な分取クロマトグラフィー段階の合成方法の排除;
6.94%〜96%の力価を有する生成物を得る;
【発明の効果】
【0008】
従って、本発明の目的は、縮合剤としてベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホリウムヘキサフルオロホスフェートおよび塩基としてトリエチルアミンの存在下において、ビオチニルヘキサメチレンジアミンとトリ-t-ブチル-DOTAとの反応を含む、デオキシビオチニルヘキサメチレンジアミン-DOTAを合成するための方法である。
【0009】
そのために、本発明の方法は、酸性pHでの加水分解である縮合工程後の工程を包含する。縮合は有機溶媒中で行うのが好ましい。より好ましくは、この溶媒はジクロロメタンである。
【0010】
分析したものの中で、開発した最良の合成方法は、図式2で説明した段階を包含する方法である。
さらに、本発明は、実施例により説明されるが、実施例により発明自体を限定するものではない。
【0011】
図式2
【化3】

【実施例】
【0012】
実施例(化合物の番号は図式2を参照されたい)
方法
実施した試験を、ダイオードアレイ検出器および電気スプレーによる質量分析器と連結させた分析用HPLC系を用いて追跡した。開発した分析方法は、ACE C-18 分析用カラム(150 x 4.60 mm、5μ)[流速1.0 mL/分、20分間でBの5-95%(A=H2O + 0.1% TFA;B=AcCN + 0.1% TFA)または20分間でBの10-90%の直線溶出勾配、または別法として6分間でBの10%等張液、その後20分間でBの10-90%勾配]の使用を包含する。最終生成物ST2210について、15%でBの等張液において作業する方法を40分間用いる。検出器によって試験した波長範囲は205-400nmである。
TLCによる迅速な追跡は、OEt 酸型:イソプロパノール:NH330%またはDCM:イソプロパノール:NH30% (4:5:1)の溶出混合物の使用を包含し、I2またはリンモリブデン試薬を用いて分類した(UVでなく可視)生成物を示す。
【0013】
遊離塩基としてのビオチニルヘキサメチレンジアミン(ST2551)の調製(2.)
生成物 ST2551 [(1), 91%の純度, 400 mg, 1.0 mmol]を水(20 mL)に溶解して、該溶液を分離漏斗に注いだ;2MのNaOH(20mL)溶液を添加し、沈殿した該生成物を、DCM(40 mL)で3回抽出した。合わせた有機相を、無水Na2SO4で脱水し、減圧下で蒸発させた。該生成物を白色固体(2)として得た(290 mg, 収率=98%)。
1H-NMR (200 MHz, CDCl3) d (ppm): 1.25-2.05 [m, 16H, CH(CH2)4およびNHCH2(CH2)4)]; 2.50-3.30 (m, 9H, 2 x HCHS および CHS および 3 x CH2N); 4.32 (m, 1H, CHCHNH); 4.51 (m, 1H, CHCHNH); 5.77 (s, 1H, CONH); 6.05 (s, 1H, CONH).
ES-MS m/z: 329.5 [M+H]+.
【0014】
デオキシビオチニルヘキサメチレンジアミン−ter−ブチル−DOTA(4)の合成
室温で10分間攪拌下においたDCM (5 mL)中のトリ-tert-ブチル-DOTA [(3), 524 mg, 0.915 mmol, 1 eq]、PyBOP(714 mg, 1.37 mmol, 1.5 eq)およびトリエチルアミン(166 μL, 1.19 mmol, 1.3 eq)溶液を、ST2551を含まない塩基[(2), 300 mg, 0.915 mmol, 1 eq]のDCM(5 mL)溶液に滴加して、40℃5分間混合物を加熱することによって得た。室温で3時間反応させ、上記方法に従ってTLCおよびLC-MSによって反応の完了を追跡した。
【0015】
反応の終了時に、該溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をDCM中に溶解し、1M NaOHで2回洗浄した。該有機相をNa2SO4で脱水し、真空下で蒸発させた。こうして残留物をシリカゲルカラムでのクロマトグラフィー(粗生成物:シリカ 1:30の重量比)により得た。溶出系としてDCM 混合物:イソプロパノール 5:4、これに30%水性NH3を徐々に濃度を上げて(0.2〜1)加えた。カラムを初期段階のDCM 混合物:イソプロパノール:NH3(5:4:0.2)により充填し、該方法をNH3の濃度勾配と共に継続した[溶出混合物は通常攪拌後に均質となる;NH3=1である溶出の最終段階にのみ、混合性を改善するためにイソプロパノールを加えることが必要であることが判っており、この場合、重量比(4:5:1)(DCM:イソプロパノール:NH3)を用いる。真空下では泡沫状固体を形成する傾向がある淡黄色の油状生成物を得た[(4), ,600 mg, 収率 = 74%)。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6, T=50℃) δ (ppm): 1.16-1.70 (m, 43H, CH(CH2)4 および NHCH2(CH2)4 および 9 x CH3); 2.40-3.32 (m, 34H, 2 x HCHS および 3 x CH2N, 8 x DOTA環 CH2 および CHS および 4 x DOTA CH2CO および NH アミン); 4.13 (m, 1H, CHCHNH); 4.29 (m, 1H, CHCHNH); 6.18 (s, 1H, NH ビオチン); 6.21 (s, 1H, NH ビオチン); 8.10 (t, 1H, NH アミド).
13C-NMR (75 MHz, DMSO-d6) d (ppm): 27.22; 27.35; 27.56; 28.50; 28.61; 29.04; 29.23; 30.14; 30.25; 30.39; 39.14; 40.42; 50.07; 52.59; 52.82; 53.24; 54.72; 56.14; 56.92; 57.38; 59.31; 60.05; 61.90; 80.75; 163.34; 170.98; 171.25.
ES-MS m/z: 883.4 [M+H]+.
【0016】
デオキシビオチニルヘキサメチレンジアミン-DOTAの合成[ST2210, (5)]
(4) (210 mg, 0.238 mmol)のHCl 6N [1 mL, (4) 20% w/v 溶液]溶液を、1時間室温で攪拌下においた。次いで、該混合物を減圧下で蒸発させ、該残留物をH2O(約1:50 w/v)に溶解させ、該溶液を凍結乾燥した。白色固体を得た(205 mg, 96%)。1H-NMR (200 MHz, DMSO-d6) d (ppm): 1.30-1.77 [m, 16H, CH(CH2)4 および NHCH2(CH2)4]; 2.59 (d, 1H, HCHS); 2.77-2.88 (m, 7H, HCHS および 3 x CH2N); 2.98-3.70 (m, 25H, 8 x DOTA-環CH2およびCHSおよび4 x DOTA CH2CO); 4.15 (m, 1H, CHCHNH); 4.31 (m, 1H, CHCHNH); 7.58 (br s, 2H, 2 x ビオチン NH); 8.86 (t, 1H, NH アミド); 9.19 (br s, 2H, NH2+).
13C-NMR (75 MHz, DMSO-d6) d (ppm): 25.77; 25.85; 26.32; 26.53; 26.70; 28.74; 29.16; 47.08; 47.16; 48.54; 49.00; 51.35; 53.13; 54.51; 55.38; 56.02; 59.90; 61.61; 163.44; 165.58; 168.90; 172.31。
ES-MS m/z: 715.4 [M+H]+.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合剤としてベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェートおよび塩基としてトリエチルアミンの存在下でビオチニルヘキサメチレンジアミンをトリ-t-ブチル-DOTAと反応することを含む、デオキシビオチニルヘキサメチレンジアミン−DOTAを合成するための方法。
【請求項2】
ビオチニルヘキサメチレンジアミンが、有機溶媒中でトリ-t-ブチル-DOTAと反応する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
有機溶媒がジクロロメタンである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
酸性pHを有する水性環境においてその後に加水分解の工程を含む、前項いずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2009−500368(P2009−500368A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519888(P2008−519888)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062800
【国際公開番号】WO2007/003478
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】