説明

デジタルペン及びそれを備えたデジタルペンシステム

【課題】デジタルペン使用者に対してインク残量が少量となった場合に、その旨を使用者に通知・警告可能なデジタルペンのインク残量通知システムを提供する。
【解決手段】デジタルペンには軌跡をデータ化し軌跡情報を生成する処理手段と、軌跡情報を記憶する記憶手段とを備え、PCには、前記デジタルペンから受領した軌跡情報から累積軌跡距離を算出し、当該累積軌跡距離とインク残量不足を通知する規定軌跡距離とを対比し、その長短を判定する処理手段と、判定の結果累積軌跡距離が長い場合にはインクの残量不足を通知する通知手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルペン及びそれを備えたデジタルペンシステムに関し、特に、容器交換が面倒な場合に好適に用いられるデジタルペン及びそれを備えたデジタルペンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
手書きの筆跡情報を即座にデジタルデータ化する筆記具としてデジタルペンがある。デジタルペンには記録手段が内蔵されており、筆記を行う専用紙上におけるペン先の座標情報、ペン先の軌跡、ペンの傾斜角度、筆記速度、筆圧、筆記日時といった情報が、筆跡情報として逐一記録される。
【0003】
かかる記録された筆跡情報は、USB等を介してデジタルペンを直接接続したり、有線・無線送信したりすることでコンピュータやサーバ等に送られ、情報を受領したコンピュータやサーバにおいて管理・処理される。デジタルペンから送信を受けた情報・データの管理や処理については、例えば以下の特許文献1から3に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2008−181339号公報
【特許文献2】特開2008−191845号公報
【特許文献3】特開2009−282727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、デジタルペン本体は、透明プラスチックを本体とする安価な汎用的ボールペンとは異なり、不透明な部材により構成されていることが多く、また、インク容器の不透明であることが多い。係る場合には、デジタルペンのインク容器内のインクの残量を外部から視認することができない。それゆえ、デジタルペン使用者がインク残量の少ないことを把握しないままペンを使用してインク切れを起こし、使用中に不意に筆記不能となる事態が生じやすい。
【0006】
そこで、本発明は、デジタルペン使用者に対してインク残量が少量となった場合に、その旨を使用者に通知・警告可能なデジタルペンのインク残量通知システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、デジタルペンと当該デジタルペンの軌跡情報を処理する情報処理装置とを備えるデジタルペンシステムにおいて、デジタルペンのインクの使用量を求める処理手段と、前記処理手段によって求められたインクの使用量が所定量よりも少なくなった場合にインク容器の交換を促すための報知手段とを備える。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、デジタルペンの軌跡をデータ化し軌跡情報を生成する処理手段と、軌跡情報を記憶する記憶手段とを備えておき、また、情報処理装置には、前記デジタルペンから受領した軌跡情報から求めた累積軌跡距離を所定の閾値とを対比してそれらの長短を判定する処理手段と、判定の結果累積軌跡距離が長い場合にはインクの残量不足を通知する通知手段(報知手段)とを備える。
【0009】
前記処理手段は、デジタルペンの使用履歴からインクの使用量を求めればよい。具体的には、デジタルペンの軌跡履歴に基づいて累積軌跡距離を積算することによってインクの使用量を求めればよい。
【0010】
また、前記報知手段は、情報処理装置に付帯する表示手段或いは音声出力手段、前記デジタルペンに設けられた表示手段或いは振動手段とすればよい。
【0011】
また、本発明のデジタルペンは、デジタルペン本体のインクの使用量を求める処理手段と、前記処理手段によって求められたインクの使用量が所定量よりも少なくなった場合にインク容器の交換を促すための報知手段とを備える。
【発明の実施の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明のデジタルペンのインク残量を通知するデジタルペンシステムの模式的な構成を示すブロック図である。図1には、情報処理装置であるところのパーソナルコンピュータ(以下、「PC」と称する。)100と、デジタルペン200とを示している。
【0014】
なお、図示したものはPC100とデジタルペン200を有線又は無線通信により直結した最も簡易な構成例であって、例えばPC100とデジタルペン200とをネットワークを介して構成することなどももちろん可能である。
【0015】
PC100は、以下説明する、通信手段110と、記録手段120と、処理手段130と、通知手段140と、表示手段150とを備える。通信手段110と記録手段120と処理手段130と通知手段140とは、例えば、PC100内のCPU(Central Processing Unit)及びメモリなどのハードウェアと、CPU等に後述する動作を実行させるプログラムとの協働によって実現することができる。
【0016】
PC100は、デジタルペン200との間で、有線又は無線により直接接続されるか、ネットワークを介して接続される。なお、デジタルペン200の接続先としてのPC100は情報処理装置の一例にすぎず、例えば、既述の特許文献に開示されているようなサーバとしてもよい。
【0017】
通信手段110は、前述の通り接続されたデジタルペン200から送出された軌跡情報を受信するものである。具体的には、有線接続の場合にはUSB(universal serial bus)接続、無線接続の場合にはブルートゥース接続などを実現する部分が、通信手段110に該当する。
【0018】
記録手段120は、通信手段110により受信した軌跡情報、処理手段130による累積軌跡距離の積算結果、デジタルペン200のインクの残量不足を利用者に報知するための閾値であるところの既定軌跡距離が記録されるものである。記録手段120の例としては、例えば、PC100に内蔵されているハードディスク、或いは、いわゆる外付けハードディスクなどが挙げられる。実際には、軌跡情報等は例えばデータベース化することが考えられ、軌跡情報の記録例としては、例えば時系列に従って軌跡情報を整理して記録するという、データロギングを採用することができる。
【0019】
閾値としての既定軌跡距離は、インク容器210のインク量から既定値として定まるものであり、一般的には例えば、600mから700mである。記録手段120に対する記録は、例えばPC100に接続されたキーボードを用いてデジタルペン200の利用者が手入力により行ってもよいし、デジタルペン200のデバイスドライバが格納されたCD−ROM等から読み出して行ってもよい。
【0020】
処理手段130は、通信手段110と記録手段120と通知手段140との動作の制御を司るものであり、主として、インクの使用量を求めるものである。具体的には、処理手段130は、記録手段120に記録された軌跡情報に基づいてデジタルペン200の累積軌跡距離を積算し、記録手段120等に記録されている既定軌跡距離と対比することによって、累積軌跡距離が既定軌跡距離を超えたか否かを判定するものである。
【0021】
通知手段140は、処理手段130により積算された累積軌跡距離が既定軌跡距離を超える場合に、デジタルペン200のインクの残量不足ゆえ、デジタルペン200の利用者に対してインク容器の交換を促すための報知情報を作成するものである。
【0022】
表示手段150は、通知手段140によって作成された報知情報を、デジタルペン200の利用者が認識できるように表示するものである。具体的には、表示手段150は、例えばPC110に付帯する内蔵あるいは外部接続の液晶モニター等が該当する。なお、報知情報は、視覚を通じて利用者に示すものに限られず、音声出力手段であるスピーカからビープ音などを出力するなど、聴覚を通じて利用者に示すものであってもよい。
【0023】
図2は、図1に示したデジタルペン200の模式的な構成の一例を示すブロック図である。デジタルペン200は、以下説明する、インク容器210と、カメラ220と、処理手段230と、記憶手段240と、通信手段250と、バッテリー260とを備える電子筆記具であり、インクの滲出により紙に線図を手書きできる通常の筆記具としての用途と、手書き時の軌跡をデジタルデータとして取得できる電子デバイスとしての用途を同時に実現できるものである。
【0024】
インク容器210は、インクが充填されており、ここでは、インクリフィルも含む。デジタルペン200のインクリフィルは、一般的な筆記具であるボールペンの替芯と同様のものであり、円筒状の容器内にインクが充填されていて、先端部にはペン先が設けられ、交換のためにデジタルペン200から着脱が可能となっている。これによりデジタルペン200の利用者は、紙に線図を書くことができる。
【0025】
なお、本実施形態のデジタルペンシステムの場合には、未使用のインク容器210には、既定量のインクが収容されていることが必要である点に留意されたい。
【0026】
カメラ220は、手書き時の軌跡を撮像して画像情報を取得する撮像手段であり、より具体的には専用紙に描かれた座標やドットパターンと、インク容器210先端のペン先の位置の両者を連続して撮像するものである。なお、デジタルペンと称されるものは、いくつかの種類があって、カメラ220が存在しないものもある。本実施形態のデジタルペン200は、カメラ220を必ずしも装備していなくてもよい。
【0027】
処理手段230は、カメラ220により撮像された画像情報を処理して、軌跡情報を生成する手段である。処理手段230は、典型的には、画像内から専用紙に描かれた座標やドットパターンを識別し、インク容器210先端のペン先の位置を割り出して座標情報を取得し、この座標情報に軌跡日時、軌跡時間、軌跡速度といった識別情報を付加して軌跡情報を生成するソフトウエアと、当該ソフトウエアを実行するCPUなどの演算装置とによって実現される。
【0028】
記憶手段240は、処理手段230が生成した軌跡情報を記憶するものである。具体的には、不揮発性メモリ等により実現される。
【0029】
通信手段250は、記憶手段240に記憶された軌跡情報を、USB接続又はブルートゥース接続などを通じて、PC100に送信するものである。
【0030】
バッテリー260は、カメラ220、処理手段230、記憶手段240、通信手段250を含む、デジタルペン200を構成する各電子素子に給電するものである。
【0031】
なお、デジタルペン200については、上記実施形態ではカメラ220にて連続して撮像した画像情報から座標情報を取得する方式のものについて説明したが、例えばペン先から赤外線と超音波とを同時に発射し、ある地点における到達時間のタイムラグから座標情報を取得する等、他の方式や構成を用いるものであってもよい。すなわち、デジタルペンのインク残量通知システムである本発明では、インク容器210が含まれるものであれば、デジタルペンの他の構成部分は特に限定されるものではない。
【0032】
図3(a)は、図1の記録手段120内の軌跡情報の記録例を示す図である。図3(a)に示すように、軌跡情報としては、例えば、デジタルペン200とPC100との接続の度に処理手段130によって固有に付される「データ番号」、デジタルペン200毎に固有に割り当てられる「ペンID」、デジタルペン200の利用情報(使用履歴)であるところの「軌跡日時」、「軌跡座標」、「軌跡時間」、「軌跡速度」、処理手段130によって算出された「軌跡距離」といった項目を用意している。
【0033】
図3(b)は、図3(a)に示す「ペンID」とこれに対応する「積算結果」及び「既定軌跡距離」との関係を示す図である。ここでの「積算結果」は、処理手段130によって算出されたものである。そして、図3(b)に示すように、「ペンID」と「積算結果」と「既定軌跡距離」が一組で記録されている。
【0034】
以下、本実施形態の情報処理手順を、実際のデジタルペン200の使用時の時系列に沿って順を追って説明する。
【0035】
デジタルペン利用者がデジタルペン200を用いて、予め座標や微細な円形のドットにより構成されるドットパターンが描かれている専用紙に筆記すると、カメラ220が専用紙に描かれた座標やドットパターンと、インク容器210先端に設けられたペン先の位置の両者を撮像する。
【0036】
カメラ220による撮像は、後に軌跡を軌跡として再現できるよう、例えば1秒間に70回から80回程度の一定回数連続して行う。そして、カメラ220は、撮像した画像情報を処理手段230に送る。
【0037】
処理手段230は、カメラ220より受け取った画像情報より、専用紙に描かれた座標やドットパターンから座標位置を識別し、インク容器210先端に設けられたペン先の位置を割り出して座標情報を取得する。この座標情報に、軌跡日時、軌跡時間、軌跡速度といった識別情報を付加して軌跡情報を生成する。そして、処理手段230は、生成した軌跡情報を記憶手段240に送る。
【0038】
記憶手段240は、処理手段230より送出された軌跡情報を受領して記憶、蓄積する。そして、記憶、蓄積された軌跡情報は、デジタルペン200とPC100とが有線又は無線通信により接続された際、通信手段250よりPC100へ送信される。
【0039】
PC100では、デジタルペン200とPC100とが有線又は無線通信により接続された際、デジタルペン200より送出された軌跡情報を通信手段110により受領する。かかる受領された軌跡情報には、処理手段130によって「データ番号」が付され、記録手段120に図3(a)に示した態様で、例えば時系列に従って記録される。
【0040】
つぎに、処理手段130は、インクの使用量を求めるために、まず、記録手段120に新たに記録された軌跡情報に基づいて軌跡距離を算出し、図3(a)に示すように、今回算出した軌跡距離を記録手段120に記録させる。つぎに、処理手段130は、その軌跡距離に係る「ペンID」に対応する「積算結果」を読み出して、これに今回算出した軌跡距離を加えることで、最新の累積軌跡距離を積算する。積算結果は、図3(b)に示すように、記録手段130に記録される。
【0041】
その後、処理手段130は、最新の累積軌跡距離と閾値としての既定軌跡距離とを比較する。比較の結果、累積軌跡距離が既定軌跡距離未満の場合には、特段の処理はしないが、逆に、累積軌跡距離が既定軌跡距離以上の場合には、処理手段130は通知手段140に通知指示を送出する。
【0042】
通知手段140は、処理手段130より通知指示を受領すると、インクが残量不足である旨を利用者に通知するために、報知情報を作成する。かかる報知情報は、デジタルペン200の利用者が視覚により認識できるよう、表示手段150に表示される。
【0043】
具体的には、報知情報は「デジタルペンのインク残量が不足しています。インク容器を交換してください。」などのメッセージとすることができ、これを表示手段150に表示すれば、デジタルペン200の利用者にインクの残量不足を認識させ、新たなインク容器210への交換を促すことができる。
【0044】
なお、デジタルペン200に、新品のインク容器210を装着した場合には、例えばキーボードによる手入力等で利用者が図3(b)の「積算結果」をリセットすればよい。或いは、デジタルペン200のインク容器210部分にスイッチを設け、新品のインク容器210の装着時にスイッチがオンされると、その後に、デジタルペン200をPC100へ接続したときに、スイッチのオン情報を、デジタルペン200からPC100へ送信することで、「積算結果」をリセットしてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、PC100側で累積軌跡距離を積算する例を説明したが、デジタルペン200で行ってもよい。係る場合には、表示手段150に相当するものとして、デジタルペン200に例えばLEDによるインク残量通知ランプや、小型液晶モニターによる表示窓等を設け、これを通じて、インク容器210の交換を利用者に促せばよい。或いは、例えば、デジタルペン200にバイブレーターを設け、累積軌跡距離が既定軌跡距離を超えた場合に、振動によって利用者に、インク容器210の交換を促してもよい。
【0046】
また、PC100側で累積軌跡距離を積算するものの、上記のように、デジタルペン200にインク残量通知ランプ等設けることで、インク容器210の交換は、デジタルペン200を通じて促してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のデジタルペンのインク残量を通知するデジタルペンシステムの模式的な構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したデジタルペンの模式的な構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図1の記録手段120内の軌跡情報の記録例及び「ペンID」とこれに対応する「積算結果」及び「既定軌跡距離」との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
100 PC
130 処理手段
140 通知手段
200 デジタルペン
210 インク容器
230 処理手段
240 記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルペンと当該デジタルペンの軌跡情報を処理する情報処理装置とを備えるデジタルペンシステムにおいて、
デジタルペンのインクの使用量を求める処理手段と、
前記処理手段によって求められたインクの使用量が所定量よりも少なくなった場合にインク容器の交換を促すための報知手段と、を備えるデジタルペンシステム。
【請求項2】
前記処理手段は、前記デジタルペンの使用履歴からインクの使用量を求める、請求項1記載のデジタルペンシステム。
【請求項3】
前記処理手段は、前記デジタルペンの軌跡履歴に基づいて累積軌跡距離を積算することによってインクの使用量を求める、請求項1記載のデジタルペンシステム。
【請求項4】
前記報知手段は、情報処理装置に付帯する表示手段或いは音声出力手段、前記デジタルペンに設けられた表示手段或いは振動手段である、請求項1記載のデジタルペンシステム。
【請求項5】
デジタルペン本体のインクの使用量を求める処理手段と、
前記処理手段によって求められたインクの使用量が所定量よりも少なくなった場合にインク容器の交換を促すための報知手段と、を備えるデジタルペン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate