説明

デジタルミキサおよびプログラム

【課題】 大型表示器を有するデジタルミキサにおいて、使用頻度の高い画面を表示する操作を簡略化し、高い操作性を実現する。
【解決手段】 タグボタン340〜346の選択に応じて表示される画面をタグ画面といい、タグボタン340〜346に係る一群のタグ画面の集合を画面グループという。何れか一の画面グループをホーム画面グループとしてホームボタン302に割り当て、任意の画面を表示しているときにこのホームボタン302をクリックすると、該ホーム画面グループに属する設定画面が大型表示器14に表示される。ここで、各画面グループにおいては、選択中のタグボタンやマウスカーソル370の位置等が保存され、途中で他の画面に切り換えた後に元の画面に戻ったとき、元の画面において実行中であった調整作業等を速やかに続行できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号のミキシングに用いて好適なデジタルミキサおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のミキサはデジタル化によって多機能化されており、様々な設定をユーザが行うことが可能になっている。これら複数の機能を実現するための操作子や表示器を全てデジタルミキサの操作パネル上に配置すると、操作パネルの面積が膨大になるため非現実的である。そこで、多目的の大型表示器を操作パネル上に設け、この大型表示器の機能を切り換えることによって多種多様な設定内容を表示することが一般的である。このようなデジタルミキサにおいて、ユーザの画面指定操作によってのみ設定画面を選択するようにすると、画面選択のためのユーザの操作が煩雑になるため、例えば音質のパラメータ設定に関連するユーザの操作に基づいて、対応する設定画面を自動的に大型表示器に表示する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−100066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、デジタルミキサの操作を行う際、大型表示器に表示させる画面の中に表示する頻度の高い画面が生じる場合がある。例えば、出力される音声信号の周波数特性をコンサートホール内の音響特性に応じて調整している場合には、その調整のためのグラフィックイコライザの画面が表示される頻度が高くなる。かかる場合には、ある共通の操作によって使用頻度の高い画面を表示できると便利である。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、使用頻度の高い画面を表示する操作を簡略化し、高い操作性を実現できるデジタルミキサおよびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明にあっては、下記構成を具備することを特徴とする。なお、括弧内は例示である。
請求項1記載のデジタルミキサにあっては、表示器(14)と、該表示器に表示され得る複数の画面(タグ画面)の集合を画面グループとし複数の画面グループの各々に対応する複数の選択ボタン(280−1〜280−6)と、ホームボタン(38)とを含む操作パネルと、前記複数の画面グループの各々に対応して、当該画面グループに属する複数の画面のうち一の画面(タグ画面)を示す画面指定情報(タグ番号TB)と、前記複数の画面グループのうち何れか一の画面グループを示すホーム情報(HSB)とを記憶する記憶手段(22)と、前記複数の選択ボタンの何れか一の選択ボタンに対する操作に応じて、前記表示器(14)に現在表示されている画面(タグ画面)の属する画面グループの画面指定情報として、当該画面を示す画面指定情報(タグ番号TB)を前記記憶手段に記憶するとともに、操作された選択ボタンに対応する画面グループの画面指定情報(タグ番号TB)が示す画面を選択し、選択された画面を前記表示器に表示させる第1表示制御手段(SP2〜SP8)と、所定の画面切換操作(タグボタン31〜34等の操作)に応じて、前記表示器の表示する画面(タグ画面)を、現在表示されている画面(タグ画面)の属する画面グループ内の他の画面(他のタグ画面)に切り換える第2表示制御手段(SP12〜SP18)と、所定のホーム設定操作(ホームボタン38,302の長押し)に応じて、前記複数の選択ボタンのうち何れか一の選択ボタンを選択し、該選択された選択ボタンを示す情報(SB)を前記ホーム情報(HSB)として前記記憶手段に記憶させるホーム設定手段(SP44)と、前記ホームボタン(38)に対する所定のホーム復帰操作(ホームボタン38,302の短時間の押下)に応じて、前記表示器に現在表示されている画面の属する画面グループの画面指定情報として、当該画面を示す画面指定情報(タグ番号TB)を前記記憶手段に記憶するとともに、前記ホーム情報が示す選択ボタンに対応する画面指定情報(タグ番号TB)が示す画面を選択し、選択された画面を前記表示器に表示させる第3表示制御手段(SP48,SP2〜SP8)とを有することを特徴とする。
さらに、請求項2記載の構成にあっては、請求項1記載のデジタルミキサにおいて、前記ホーム情報設定操作は、前記ホームボタン(38)に対して行われる所定の操作(長押し)であり、前記ホームボタン(38)に対する操作態様に応じて、前記ホーム設定操作が行われたのか否かを判別する判別手段(SP42)を有し、前記第3表示制御手段(SP48,SP2〜SP8)は、前記判別手段(SP42)の判別結果が否定的であった場合に動作するものであり、前記ホーム設定手段(SP44)は、前記判別手段(SP42)の判別結果が肯定的であった場合に動作するものであることを特徴とする。
さらに、請求項3記載の構成にあっては、請求項1または2記載のデジタルミキサにおいて、前記操作パネルにおける操作が所定時間以上行われなかった場合にその旨を検出する無操作検出手段(CPU18)と、前記操作パネルにおける操作が所定時間以上行われなかった旨を前記無操作検出手段(CPU18)が検出すると、前記表示器に現在表示されている画面(タグ画面)の属する画面グループの画面指定情報として、当該画面を示す画面指定情報(タグ番号TB)を前記記憶手段に記憶するとともに、前記ホーム情報が示す選択ボタンに対応する画面指定情報が示す画面を選択し、該選択された画面を前記表示器に表示させる第4表示制御手段(SP64)とをさらに有することを特徴とする。
さらに、請求項4記載の構成にあっては、請求項1ないし3の何れかに記載のデジタルミキサにおいて、複数チャンネルの音声信号の中から一の選択チャンネルを指定する選択チャンネル指定手段(SELキー248−1〜248−P)をさらに有し、前記第1ないし第4表示制御手段(SP2〜SP8)は、前記第1ないし第4表示制御手段が起動される前に指定された選択チャンネルを、前記第1ないし第4表示制御手段(SP2〜SP8)によって表示される画面に表示することを特徴とする。
また、請求項5記載のプログラムにあっては、表示器(14)と、該表示器に表示され得る複数の画面(タグ画面)の集合を画面グループとし複数の画面グループの各々に対応する複数の選択ボタン(280−1〜280−6)と、ホームボタン(38)とを含む操作パネルと、データを記憶する記憶手段(22)と、処理装置(18)とを有するデジタルミキサの、前記処理装置(18)に実行させるプログラムであって、前記複数の選択ボタンの何れか一の選択ボタンに対する操作に応じて、前記表示器(14)に現在表示されている画面(タグ画面)の属する画面グループの画面指定情報として、当該画面を示す画面指定情報(タグ番号TB)を前記記憶手段(22)に記憶するとともに、操作された選択ボタンに対応する画面グループの画面指定情報(タグ番号TB)が示す画面を選択し、選択された画面を前記表示器に表示させる第1表示制御過程(SP2〜SP8)と、所定の画面切換操作(タグボタン31〜34等の操作)に応じて、前記表示器の表示する画面(タグ画面)を、現在表示されている画面(タグ画面)の属する画面グループの他の画面(他のタグ画面)に切り換える第2表示制御過程(SP12〜SP18)と、所定のホーム設定操作(ホームボタン38,302の長押し)に応じて、前記複数の選択ボタンのうち何れか一の選択ボタンを選択し、該選択された選択ボタンを示す情報(SB)を前記ホーム情報(HSB)として前記記憶手段に記憶させるホーム設定過程(SP44)と、前記ホームボタン(38)に対する所定のホーム復帰操作(ホームボタン38,302の短時間の押下)に応じて、前記表示器に現在表示されている画面の属する画面グループの画面指定情報として、当該画面を示す画面指定情報(タグ番号TB)を前記記憶手段に記憶するとともに、前記ホーム情報が示す選択ボタンに対応する画面指定情報(タグ番号TB)が示す画面を選択し、選択された画面を前記表示器に表示させる第3表示制御過程(SP48,SP2〜SP8)とを前記処理装置(18)に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このように、本発明によれば、ホームボタンに対する所定のホーム復帰操作に応じて、表示器に現在表示されている画面の属する画面グループの画面指定情報として、当該画面を示す画面指定情報を前記記憶手段に記憶するとともに、ホーム情報が示す選択ボタンに対応する画面指定情報が示す画面を選択し、選択された画面を表示器に表示させるから、使用頻度の高い画面グループをホームボタンに割り当てておくことにより、ホーム復帰操作を行うという簡単な操作で使用頻度の高い画面を表示器に表示させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
1.実施例のハードウエア構成
次に、本発明の一実施例のデジタルミキサ1のハードウエア構成を図1を参照し説明する。
図において4は電動フェーダ群であり、操作者の操作に基づいて各入出力チャンネルの信号レベルを調節する。さらに、電動フェーダ群4は、バスライン12を介して操作コマンドが供給されると、その操作位置が自動設定されるように構成されている。なお、詳細は後述するが、電動フェーダ群4は、複数の(P系統の)電動フェーダ242−1〜242−P(図4参照)から構成されている。
【0008】
2はスイッチ群であり、各種のスイッチおよびLEDキーから構成され、LEDキーに内蔵されたLEDの点滅状態はバスライン12を介して設定される。6は回転つまみ群であり、各入出力チャンネルの左右の音量バランスを設定する回転つまみ250−1〜250−P(図4参照)等から構成されている。そして、これら回転つまみの操作量はバスライン12を介して出力される。8は波形I/O部であり、アナログ音声信号またはデジタル音声信号を入出力する。本実施例においては、各種音声信号のミキシング処理・効果処理等は全てデジタル処理により実行される。しかし、外部から入力される音声信号および外部に出力すべき音声信号はデジタル、アナログ信号の双方が考えられる。このため、波形I/O部8においては、アナログ信号とデジタル信号間の変換、複数種類のデジタル信号相互間の変換等の処理が行われる。
【0009】
次に、10は信号処理部であり、一群のDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)によって構成されている。信号処理部10は、波形I/O部8を介して供給されたデジタル音声信号に対してミキシング処理や効果処理を施し、その結果を波形I/O部8に出力する。14は大型表示器であり、例えば「1024×768」程度の解像度を有するフラットパネルディスプレイによって構成されている。15は入力装置であり、操作パネル上の各種操作子、キーボードおよびマウス等から構成され、大型表示器14上のカーソル移動や該大型表示器14に表示されたボタンのオンオフ操作等を行う。16はその他I/O部であり、各種の外部機器との間でタイムコードその他の情報を入出力する。18はCPUであり、後述する制御プログラムに基づいて、バスライン12を介して各部を制御する。20はフラッシュメモリであり、その内部のプログラム領域には上記制御プログラムが記憶されている。22はRAMであり、CPU18のワークメモリとして使用される。
【0010】
本実施例のデジタルミキサにおいては、現在の動作を制御する各種パラメータ(カレントデータ)がRAM22の所定領域(カレント領域)に記憶されている。すなわち、スイッチ群2、電動フェーダ群4、回転つまみ群6、入力装置15を操作することによりカレントデータの内容が更新され、また、該カレントデータに基づいて信号処理部10におけるミキシング処理や効果処理、大型表示器14における表示状態、スイッチ群2のLEDの点滅状態、電動フェーダ群4の各フェーダの位置などが制御される。このカレントデータは、RAM22の所定領域(シーン領域)に対してシーンデータとして随時ストアすることができ、またシーン領域に記憶されたシーンデータをカレント領域に随時ストアすることができる。
【0011】
2.ミキシングアルゴリズム構成
次に、信号処理部10等において実現されるアルゴリズムの内容を図2を参照し説明する。なお、当該アルゴリズムは信号処理部10に設定されるプログラムによって実現されるものであり、該プログラムは、CPU18の制御の下、フラッシュメモリ20等から信号処理部10にロードされる。図2において102はアナログ入力部であり、マイクレベルまたはラインレベルのアナログ音声信号を受信すると、これをデジタル音声信号に変換し、信号処理部10に供給する。104はデジタル入力部であり、デジタル音声信号を受信すると、これを信号処理部10内部のフォーマットに変換する。128はアナログ出力部であり、信号処理部10から供給されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換し外部に出力する。130はデジタル出力部であり、信号処理部10から供給された内部フォーマットのデジタル音声信号を所定フォーマット(AES/EBU,ADAT,TASCAM等)のデジタル音声信号に変換し出力する。
【0012】
以上述べた構成は、信号処理部10とは別体のハードウエアである波形I/O部8およびここに介挿される各種カードにより実現されているが、上記以外の構成は信号処理部10において動作するプログラムによって実現されている。112は入力チャンネル調整部であり、操作パネルの電動フェーダおよび操作子の操作に基づいて、最大「48」チャンネルの入力チャンネルに対して音量・音質等の調整を行う。110はステレオ入力チャンネル調整部であり、最大4チャンネルのステレオ入力チャンネルに対して音量・音質等の調整を行う。なお、「1」系統のステレオの音声信号は左右「2」系統の音声信号から構成されていることとする。
【0013】
114はエフェクトリターン部であり、「4」チャンネルの音声信号に対して音量・音質等の調整を行う。なお、エフェクトリターン部114は、主としてエフェクト処理の施された音声信号に割り当てられる。108は入力パッチ部であり、入力部102,104等の複数の入力ポートから供給されたデジタル音声信号を、ステレオ入力チャンネル調整部110、入力チャンネル調整部112、エフェクトリターン部114の任意の入力チャンネルに割り当てる。106は内蔵エフェクタ部であり、最大「8」ユニットのエフェクタから成り、供給された音声信号に対して、リバーブ、ディレイ、モジュレーション等のエフェクト処理を施し、その結果を入力パッチ部108を介してエフェクトリターン部114等に供給する。
【0014】
116はMIXバス群であり、「12」系統のMIXバスから構成されている。各MIXバスにおいては、各入力チャンネル、各ステレオ入力チャンネルおよび各エフェクトリターン(以下、「入力チャンネル等」という)のデジタル音声信号のうち当該MIXバスに供給されたものがミキシングされる。各入力チャンネル等においては、音声信号をMIXバスに供給するか否かを各MIXバス毎に設定することができ、供給する場合には各MIXバスに対するセンドレベルやフェードモード(プリフェード/ポストフェード)等も系統毎に独立して設定することができる。118はステレオバスであり、「1」系統のステレオバスから構成されている。ステレオバスの構成は上記MIXバスと同様である。
【0015】
120はステレオ出力チャンネル部であり、該ステレオバスにおけるミキシング結果のレベル調節および音質調節を行なう。122はMIX出力チャンネル部であり、上記各MIXバスにおけるミキシング結果のレベル調節および音質調節を行なう。123はマトリクスバス群であり、ステレオ出力チャンネル部120およびMIX出力チャンネル部122の出力信号をさらにミキシングする。124はマトリクス出力チャンネル部であり、マトリクスバス群123におけるミキシング結果のレベル調節および音質調節を行なう。126は出力パッチ部であり、ステレオ出力チャンネル部120、MIX出力チャンネル部122およびマトリクス出力チャンネル部124の出力信号を、各出力部128,130または上記内蔵エフェクタ部106の任意のユニットに割り当てる。132はグラフィックイコライザ部であり、最大「6」ユニットのグラフィックイコライザから構成されている。各グラフィックイコライザは、入力チャンネル調整部112、MIXバス群116、ステレオバス118、マトリクスバス群123、ステレオ出力チャンネル部120、MIX出力チャンネル部122、マトリクス出力チャンネル部124の任意の箇所に挿入可能であり、挿入された箇所における周波数特性を調節する。また、グラフィックイコライザ部132が入力チャンネル調整部112、ステレオ出力チャンネル部120、またはMIX出力チャンネル部122に挿入される場合には、その詳細な挿入箇所を指定することが可能である。すなわち、挿入箇所として、後述する音質調整部150,170,180の「前段」、「後段」または「途中」の何れかを指定することが可能である。
【0016】
次に、入力チャンネル調整部112、ステレオ出力チャンネル部120およびMIX出力チャンネル部122におけるアルゴリズム構成の詳細を図3を参照し説明する。図において112−nは第n入力チャンネル調整部であり、第n入力チャンネル(1≦n≦48)における音質・音量調整を行う。また、122−mは第mMIX出力チャンネル部であり、第mMIX出力チャンネル(1≦m≦12)における音質・音量調整を行う。第n入力チャンネル調整部112−nの内部において150は音質調整部であり、第n入力チャンネルにおけるゲート処理、コンプレッサ処理、イコライザ処理等を行う。ここで、「ゲート処理」とは、不要なノイズを自動的にカットする処理であり、「コンプレッサ処理」とは、ダイナミックレンジを圧縮または伸長する処理であり、「イコライザ処理」とは、パラメトリックイコライザによって各チャンネルの音声信号の周波数特性を設定する処理である。152はチャンネル遅延部であり、必要に応じて第n入力チャンネルの音声信号を遅延させる。154は音量調整部であり、第n入力チャンネルの音声信号のゲインを調節する。156はオンオフ切換部であり、第n入力チャンネル全体のオンオフを切り換える。
【0017】
162−1〜162−12は信号切換部であり、第n入力チャンネルから「12」系統のMIXバスに各々出力され得る音声信号をフェードモードに応じて切り換える。すなわち、フェードモードが「プリフェード」に設定されると、チャンネル遅延部152の出力信号が選択され、「ポストフェード」に設定されるとオンオフ切換部156の出力信号が選択される。164−1〜164−12はセンドレベル調節部であり、各MIXバスに出力する信号のゲインすなわちセンドレベルを調節する。166−1〜166−12はセンドオンオフ切換部であり、各MIXバスに対する音声信号供給のオン/オフ状態を設定する。158はステレオセンドオンオフ切換部であり、第n入力チャンネルの音声信号をステレオバス118に供給するか否かを切り換える。160はPAN設定部であり、該音声信号をステレオバス118に供給する際の左右の音量バランスを設定する。
【0018】
次に、ステレオ出力チャンネル部120の内部において170は音質調整部であり、ステレオ出力チャンネルにおけるリミッタ処理、コンプレッサ処理、イコライザ処理等を行う。172−L,Rは音量調整部であり、ステレオ出力チャンネルの左右の出力ゲインを調節する。174−L,Rはオンオフ切換部であり、ステレオ出力チャンネルの左右のオン/オフ状態を切り換える。176はチャンネル遅延部であり、ステレオ出力チャンネルの音声信号を必要に応じて遅延する。次に、第mMIX出力チャンネル部122−mの内部において180は音質調整部であり、第mMIX出力チャンネルにおけるリミッタ処理、コンプレッサ処理、イコライザ処理等を行う。182は音量調整部であり、第mMIX出力チャンネルの出力ゲインを調節する。184はオンオフ切換部であり、第mMIX出力チャンネルのオン/オフ状態を切り換える。186はチャンネル遅延部であり、該出力チャンネルの音声信号を必要に応じて遅延する。
【0019】
3.パネル構成
次に、デジタルミキサ1の操作パネルの要部の外観構成を図4を参照し説明する。
上述したように、デジタルミキサ1は「48」入力チャンネルを有しているが、これら入力チャンネルは「12」チャンネルづつの「4」レイヤに分割される。また、「12」MIX出力チャンネルは「1」レイヤ(マスタレイヤ)にまとめられている。204〜212はレイヤ・キーであり、これら何れかのレイヤを択一的に選択する。また、これらキーにはLEDが内蔵され、選択されているレイヤに係るLEDが点灯状態にされる。なお、本明細書においてその他「キー」の名称が付されている構成要素には、全てLEDが内蔵されており、当該キーに係るパラメータがオン状態になると、そのLEDが点灯状態になる。また、240−1〜240−Pはチャンネルストリップであり、各チャンネルストリップは選択されたレイヤに属する入出力チャンネル、およびレイヤの選択状態にかかわらず操作が必要なステレオ出力チャンネル等に割り当てられる。
【0020】
チャンネルストリップ240−1の内部において、242−1は電動フェーダであり、対応する入出力チャンネルの音量を調節する。すなわち該チャンネルストリップが入力チャンネルに割当てられているならば、電動フェーダ242−1は該入力チャンネルに係る音量調整部154(図3参照)のゲインを調節する。244−1はオン/オフ・キーであり、対応する入出力チャンネルのオンオフ切換部156におけるオン/オフ状態を設定する。246−1はソロ・キーであり、対応する入出力チャンネルの音声信号を操作者のモニタ用のソロバス(図示せず)に供給するか否かを切り替える。また、248−1はSELキーであり、チャンネルストリップ240−1に係る入出力チャンネルを択一的に「選択状態」に設定する。この選択された入出力チャンネルを「選択チャンネル」という。
【0021】
ここで「選択状態」とは、音質調整部150や信号切換部162−1〜162−12等に対する詳細な設定を行うべきチャンネルとして選択された状態の意である。また、250−1は回転つまみであり、該チャンネルストリップ240−1が入力チャンネルに割当てられている場合には、当該入力チャンネルのPAN設定部160における左右の音量バランスを設定する。そして、他のチャンネルストリップにおいても、チャンネルストリップ240−1と同様に、電動フェーダ、オン/オフ・キー、ソロ・キー、SELキーおよび回転つまみが各々設けられている。
【0022】
260はダイナミックス調整部であり、選択チャンネルの音質調整部150,170,180におけるコンプレッサ処理の内容を設定する。270はイコライザ調整部であり、該選択チャンネルの音質調整部150,170,180におけるイコライジング処理の内容を設定する。262,272は選択ボタンであり、大型表示器14に表示される画面グループ(詳細は後述する)として、各々コンプレッサ処理およびイコライジング処理に係る画面グループを選択するものである。280は選択ボタン群であり、大型表示器14に表示される画面グループを選択するための複数の選択ボタン280−1〜280−6から構成されている。なお、選択ボタン280−1〜280−6のうち何れかに対して、上記選択ボタン262,272と同一の機能を割り当てることも可能である。大型表示器14の下方において30〜35はタグボタンであり、設定画面の表示内容を選択するために用いられる。大型表示器14の右方において38はホームボタンであり、ここには選択ボタン280−1〜280−6のうち何れかの機能と同等の機能が付与される。
【0023】
大型表示器14には、各エフェクタまたは「選択状態」に設定されたチャンネル等について詳細な設定画面が表示される。220〜226はカーソルボタンであり、この大型表示器14に表示されるカーソルを移動させる。230はインクリメント・ボタン、232はデクリメント・ボタン、233はホイール操作子、234はエンター・ボタンであり、これらは上述した入力装置15の一部を構成している。すなわち、これら構成要素によって大型表示器14に表示すべき画面の選択、画面内のパラメータ値の増減、確定等の操作が行われる。236はタッチパッド、237,238はタッチパッド用ボタンであり、これらはマウスに代えて使用される。
【0024】
4.実施例の動作
4.1.画面の表示例(1)
選択ボタン群280において選択ボタン280−1が押下されると、例えば図5に示すような内蔵エフェクト・GEQ設定画面300が表示される。この画面は、内蔵エフェクタ部106およびグラフィックイコライザ部132の状態を設定する画面であり、画面内部に表示されたタグボタン340〜346によって、大型表示器14内に表示される画面の詳細な内容が決定される。すなわち、タグボタン340は内蔵エフェクタ部106の状態、タグボタン342は内蔵エフェクタ部106の設定の雛型となるライブラリの内容、タグボタン344はグラフィックイコライザ部132の状態、タグボタン346はグラフィックイコライザ部132の設定の雛型となるライブラリの内容に、各々対応する。図示の例ではタグボタン344によって、グラフィックイコライザ部132の状態を設定するための要素が表示されている。
【0025】
また、大型表示器14の下方に設けられたタグボタン31〜34には、タグボタン340〜346と同一の機能が付与される。また、タグボタン30,35は、タグの数が「5」以上ある場合のスクロール用に使用される。以後、各タグボタンによって特定される画面を「タグ画面」という。また、これら一画面内のタグによって選択されるタグ画面の集合を「画面グループ」という。先に、選択ボタン280−1が押下されると、内蔵エフェクト・GEQ設定画面300が表示される旨を述べたが、より正確には内蔵エフェクトやグラフィックイコライザの内容を設定する「画面グループ」が選択ボタン280−1によって選択されることになる。また、上述したように、ホームボタン38には、選択ボタン280−1〜280−6のうち何れかの機能と同等の機能が付与されるため、ホームボタン38によって選択される画面グループを「ホーム画面グループ」という。
【0026】
310はユニット名称部であり、設定対象になるユニット名(ここではグラフィックイコライザ)を表示する。312はユニットナンバ部であり、内蔵エフェクタ部106またはグラフィックイコライザ部132のユニットナンバを設定および表示する。314は画面グループ名称部であり、内蔵エフェクト・GEQ設定画面300の略称が表示されている。316は選択チャンネル番号表示部であり、現在の選択チャンネル番号を表示する。なお、選択チャンネルの番号は、内蔵エフェクト・GEQ設定画面300内においては、特に設定内容には関係しない。318はオンオフ設定部であり、設定対象ユニット(図示の例ではグラフィックイコライザの第1ユニット)のオン/オフ状態を設定する。320は挿入箇所設定部であり、設定対象ユニットの挿入箇所を設定する。上述したように、挿入箇所としては、入力チャンネル調整部112、MIXバス群116、ステレオバス118、マトリクスバス群123、ステレオ出力チャンネル部120、MIX出力チャンネル部122、マトリクス出力チャンネル部124のうち任意の箇所を選択することができ、入力チャンネル調整部112、ステレオ出力チャンネル部120、およびMIX出力チャンネル部122においては、さらに詳細な挿入箇所(「前段」、「後段」または「途中」)を指定することが可能である。なお、図示の例では第2MIX出力チャンネル部122−2の後段が挿入箇所として設定されている。
【0027】
328はグラフ表示部であり、該グラフィックイコライザにおける周波数特性(ゲイン特性)または該グラフィックイコライザの出力信号の周波数スペクトラムを表示する。両者のうち何れを表示するかは、ゲイン表示ボタン324およびスペクトラム表示ボタン326によって切り換えることができる。330はフェーダ部であり、各音声帯域のゲインを調節する。370はマウスカーソルである。322はフラット設定ボタンであり、フェーダ部330の状態を強制的にフラットに設定する。302はホームボタンであり、操作パネル上のホームボタン38と同様に、選択ボタン280−1〜280−6のうち何れかの機能と同等の機能が付与される。304はチェックボックスであり、ホームボタン38,302の動作を有効ならしめるか否かをトグルで切り換える。306はレベルメータであり、ステレオ出力チャンネルの音声信号のレベルを表示する。308はシーンナンバ表示部であり、現在呼び出されているシーンデータを表すシーンナンバを表示する。
【0028】
4.2.画面の表示例(2)
また、ダイナミックス調整部260において選択ボタン262が押下されると、ダイナミックスを設定する画面グループのうち、画面情報に応じたタグ画面が表示される。ここでは、図6に示すダイナミックス画面350が表示されたとする。この画面グループは、選択チャンネルにおける音質調整部150,170,180の状態、特にゲート処理の内容とコンプレッサ処理の内容とを設定する画面である。そして、タグボタン380はゲート処理の状態、タグボタン382はゲート処理の雛型となるライブラリの内容、タグボタン384はコンプレッサ処理の状態、タグボタン386はコンプレッサ処理の雛型となるライブラリの内容に、各々対応するタグ画面を表示させるものである。図示の例ではタグボタン380によって、ゲート処理を設定するためのタグ画面が表示されている。また、図5の例と同様に、タグボタン31〜34にはタグボタン380〜386と同一の機能が付与される。
【0029】
352はタグ画面名称部であり、選択チャンネル番号(CH48)とタグ画面名称(GATE EDIT)とが表示されている。354は画面グループ名称部であり、ダイナミックス画面350の略称である「DYNAMICS」なる文字列が表示されている。356は選択チャンネル番号表示部であり、処理対象である選択チャンネルの番号を表示する。358はキーインソース設定部であり、選択チャンネルにゲートを施すためのソースを選択する。ここで、ゲート処理とは、例えば、「ソース」となる音声信号があるレベル以下になったときに選択チャンネルの音声信号を消音するような処理であり、キーインソース設定部358においては各種の音声信号の中から上記「ソース」が選択可能になっている。図中において「SELF」は当該選択チャンネル自体、「CHANNEL」は指定された別のチャンネル、また、「AUX」は何れかのMIXバスから対応する第mMIX出力チャンネル部122−mへ供給される音声信号がソースとして選択されることを意味する。366はオンオフ設定部であり、ゲートのオン/オフ状態を設定する。360はステレオリンク部であり、二つのチャンネルをステレオペアとみなして、双方のチャンネルを双方に対するゲートとして使用するか否かを設定する。
【0030】
362はゲートタイプ設定部であり、適用されるゲートの種別であるゲートタイプを選択する。368はパラメータ設定部であり、ゲート処理に関する各種パラメータを設定する。364はグラフ表示部であり、ゲートタイプ設定部362において選択されたゲートタイプおよびパラメータ設定部368において設定されたパラメータに基づくゲート特性をグラフとして表示する。また、ホームボタン302、チェックボックス304、レベルメータ306、シーンナンバ表示部308は内蔵エフェクト・GEQ設定画面300のものと共通である。但し、ホームボタン302は、表示されている画面グループがホーム画面グループである場合は点灯状態(図上においてはハッチングで点灯状態を表す)にされ、それ以外の場合は消灯状態になる。
【0031】
4.3.各種イベント処理
以下、各種イベント処理の内容について説明するが、最初にこれらの処理において使用される変数について説明する。まず、デジタルミキサ1の操作パネル上に実在する全てのボタン、回転つまみ、電動フェーダ、および大型表示器14の画面内に表示される全ての要素には、固有の要素番号bが付与されている。また、選択ボタン262,272,280−1〜280−6に対して付与される要素番号bを特に「選択ボタン番号SB」と呼ぶ。また、各画面グループは選択ボタンに一対一に対応するため、「選択ボタン番号SB」によって対応する画面グループが一意に特定される。
【0032】
また、各タグの要素番号bを特に「タグ番号TB」と呼ぶ。従って、各画面グループ内におけるタグ画面は、タグ番号TBによって特定されることになる。また、内蔵エフェクト・GEQ設定画面300(図5)においては、設定対象ユニットによっても画面内容が変わる。これらユニットを「ユニットナンバUN」によって識別する。ここで、ユニットナンバUNは、各タグ画面に対して共通であるが、グラフィックイコライザ部132のユニットナンバUNと、内蔵エフェクタ部106のユニットナンバUNとは別のものとして扱われる。また、マウスカーソル370の位置は、タグ画面毎に独立して保存することができる。そこで、カーソル位置は、タグ番号TBを添字とする「カーソル位置CP(TB)」によって表す。
【0033】
4.3.1.選択ボタン操作イベント
さて、選択ボタン群280における何れかの選択ボタンが押下されると、この選択ボタンの要素番号bを引数として、図7(a)に示す選択ボタン操作イベントルーチンが起動される。図において処理がステップSP2に進むと、現在表示されているタグ画面のタグ番号TBと、ユニットナンバUNと、カーソル位置CP(TB)と、その他必要な情報とが、現在表示されている設定画面の選択ボタン番号SBに対応付けられ、選択ボタン番号SBに係る画面情報としてRAM22の所定領域(画面情報領域)に記憶される。
【0034】
次に、処理がステップSP4に進むと、選択ボタン番号SBが新たに押下された選択ボタンの要素番号bに変更される。次に、処理がステップSP6に進むと、この新たな選択ボタン番号SBに対応する画面情報が画面情報領域から読み出される。次に、処理がステップSP8に進むと、該選択ボタン番号SBと、読み出された画面情報とに基づいて、設定画面の内容が構築され大型表示器14に表示される。
【0035】
ここで、図5に示す通りの内蔵エフェクト・GEQ設定画面300が表示されている状態で選択ボタン280−1以外の選択ボタンが押下されると、他の画面グループに属する設定画面が大型表示器14に表示される。そして、当該他の設定画面において各種の操作が行われた後に選択ボタン280−1が押下されると、再び設定画面300(図5)が大型表示器14に表示される。再表示された設定画面300は、前回表示された設定画面300と同様の内容であり、特に、以下に列挙するものが再現される点が本実施例の特徴である。
(1)タグ番号TB
(2)カーソル位置CP(TB)
(3)ユニットナンバUN
【0036】
但し、以下に列挙するものについては、前回の表示内容は保存されない場合がある。
(1)ホームボタン302:ホーム画面グループとして何れの画面グループを選択するかは、全ての設定画面において共通の情報である。従って、ホーム画面グループの指定が変更された場合には、ホームボタン302の点灯/消灯状態も変更される場合がある。
(2)チェックボックス304:ホームボタン38,302を有効ならしめるか否かも、全ての設定画面において共通の情報であるため、その状態が変更されている場合もある。
(3)レベルメータ306:レベルメータ306は時々刻々の音声信号のレベルを表示するものであるため、設定画面とは関係なく表示内容が変更される。
(4)シーンナンバ表示部308:現在のシーンデータはデジタルミキサ1全体において共通の情報であるため、再表示前後において内容が異なる場合がある。
(5)選択チャンネル番号表示部316の状態:選択チャンネルもデジタルミキサ1全体において共通の情報であるため、再表示前後において内容が異なる場合がある。
(6)グラフ表示部328(スペクトラム表示の場合):スペクトラム表示ボタン326がオン状態にされグラフ表示部328に音声信号のスペクトラムが表示されている場合には、その内容は時々刻々の音声信号の状態に応じて変化する。
【0037】
このように、本実施例においては、設定画面300の再表示の前後において殆どの要素の状態が保持される。特にマウスカーソル370のカーソル位置CP(TB)が再現されることにより、従前に行っていた調整作業を再表示後に続行するとき、きわめて速やかに作業を続行することができる。
【0038】
4.3.2.タグボタン操作イベント
設定画面内の対応するタグボタンがマウスでクリックされると、図7(b)に示すタグボタン操作イベントルーチンが起動される。なお、タグボタン31〜34の何れかが押下された場合も同ルーチンが起動されるが、同ルーチンを呼び出す際の引数である要素番号bは、タグボタン31〜34自体の要素番号ではなく、設定画面内の対応するタグボタンの要素番号が使用される。図において処理がステップSP12に進むと、現在のタグ画面におけるカーソル位置CP(TB)が、現在の選択ボタン番号SBに係る画面情報領域に記憶される。
【0039】
次に、処理がステップSP14に進むと、タグ番号TBが新たに押下されたタグボタンの要素番号bに更新される。次に、処理がステップSP16に進むと、この新たなタグ番号TBに係る画面情報のうちカーソル位置CP(TB)が取得される。次に、処理がステップSP18に進むと、画面情報内に含まれる選択ボタン番号SB、タグ番号TB、カーソル位置CP(TB)、ユニットナンバUN、および選択チャンネルSC等に基づいて、大型表示器14に対応する設定画面が表示される。すなわち、該設定画面は選択ボタン番号SBに係る画面グループのうちタグ番号TBに対応するタグ画面である。
【0040】
このように、本実施例においては、タグ画面を切り換える場合においてもカーソル位置CP(TB)が保存されるから、後に元のタグ画面が再表示されたとき、従前に行っていた調整作業を速やかに作業を続行することができる。元のタグ画面が再表示されたとき、再表示前後で状態が変更されている可能性のある要素は、上述した画面グループが変更された場合と同様に、ホームボタン302、チェックボックス304、レベルメータ306、シーンナンバ表示部308、選択チャンネル番号表示部316、およびグラフ表示部328(スペクトラム表示の場合)のみである。
【0041】
なお、本ルーチンのステップSP12においては、上述したステップSP2とは異なり、ユニットナンバUNはタグボタンに応じた情報としては保存されないが、これは「後に元のタグ画面が再表示されるときにユニットナンバUNが変更されている可能性がある」という意味ではない。まず、ダイナミックスに係る画面グループのうちグラフィックイコライザのユニットナンバUNが変更される可能性のあるタグ画面はタグボタン344に係るタグ画面のみであり、エフェクタのユニットナンバUNが変更される可能性のあるタグ画面はタグボタン340に係るタグ画面のみである。従って、ユニットナンバUNについては、特にタグ画面に対応付けて記憶しておく必要はなく、画面グループに対応付けて記憶しておけば、対応するタグ画面の表示状態を再現することができるのである。
【0042】
4.3.3.SELキー操作イベント
また、SELキー248−m(mは1〜Pのうち何れか)が押下されると、図7(c)に示すSELキー操作イベントルーチンが起動される。図において処理がステップSP22に進むと、押下されたSELキー248−mに係るチャンネルが選択チャンネルSCに設定される。次に、処理がステップSP24に進むと、該SELキー248−mが点灯状態に設定されるとともに、他のSELキーが全て消灯状態に設定される。次に、処理がステップSP26に進むと、該新たな選択チャンネルSCとともに、選択ボタン番号SB、タグ番号TB、カーソル位置CP(TB)およびユニットナンバUNに基づいて設定画面の内容が新たな選択チャンネルSCに対するものに変更される。上述したように選択チャンネルSCはデジタルミキサ1全体において共通の情報であるため、画面情報として記録されることはない。また、SELキー248−mの操作は、大型表示器14における画面表示の内容にかかわらず有効であり、例えば大型表示器14に選択チャンネルとは直接的には関係しない内蔵エフェクト・GEQ設定画面300(図5)等が表示されている場合であっても、SELキー248−mの操作に応じて選択チャンネルが切り替えられることになる。
【0043】
4.3.4.ユニット選択イベント
内蔵エフェクト・GEQ設定画面300(図5)のユニットナンバ部312等において、ユニットが選択されると(ユニットナンバの設定または変更されると)、図7(d)に示すユニット選択イベントルーチンが起動される。図において処理がステップSP32に進むと、ユニットナンバUNが、新たに選択されたユニットナンバに変更される。次に、処理がステップSP34に進むと、この新たなユニットナンバUNとともに、選択ボタン番号SB、タグ番号TB、カーソル位置CP(TB)および選択チャンネルSCに基づいて、設定画面の内容が新たなユニットナンバUNに対するものに変更される。なお、表示中の画面グループに係る画面情報には、この新たなユニットナンバUNが記録される。また、ユニットナンバ部312におけるユニット選択は、設定画面300等、当該ユニットに関連する画面の中においてのみ実行可能であり、ユニットに関係しない画面が大型表示器14に表示されている場合には変更することはできない。
【0044】
4.3.5.ホームボタン操作イベント
設定画面内のホームボタン302または操作パネル上のホームボタン38が押下され、その後にリリースされると、図8(a)に示すホームボタン操作イベントルーチンが起動される。図において処理がステップSP42に進むと、ホームボタンが長押しされたか否か、すなわち該ホームボタンが押下された後にリリースされるまでの時間が数秒程度の所定時間以上であるか否かが判定される。ここで「NO」と判定されると、処理はステップSP46に進み、ホームボタン番号HSBがヌルデータであるか否かが判定される。ここで「YES」と判定されると、実質的な処理が行われず本ルーチンの処理が終了する。
【0045】
一方、ステップSP46において「NO」と判定されると、処理はステップSP48に進み、ホームボタン番号HSBを引数として上記選択ボタン操作イベントルーチン(図7(a))が呼び出される。これにより、該ホームボタン番号HSBに係る設定画面が大型表示器14に表示される。なお、上述したように、本実施例においては、ホームボタン番号HSBのみによっては、設定画面の内容すなわちタグ画面は特定されるものではなく、ホームボタン番号HSBに対応する画面情報に基づいて設定画面の内容が特定されることになる。一方、ホームボタンが長押しされた場合は、処理はステップSP44に進み、ホームボタン番号HSBが、現在の設定画面に係る選択ボタン番号SBに変更される。また、この際に、チェックボックス304は強制的にオン状態(ホームボタンが有効な状態)に設定される。
【0046】
従って、使用頻度の高い選択ボタンの選択ボタン番号SBをホームボタン番号HSBとして登録しておくことにより、ワンタッチで当該選択ボタンに対応する設定画面を大型表示器14に表示させることができる。本実施例においては、ホームボタン38,302の操作に応じて表示される設定画面の内容は、ホームボタン番号HSBのみによって一意には特定されるものではなく、上述したように、画面情報として記録されているタグ番号TB、カーソル位置CP(TB)、ユニットナンバUN、および選択チャンネルSC等に基づいて、表示される設定画面の内容が特定される。これにより、ホーム画面グループにおいて実行していた調整作業を中断し他の画面グループに係る調整を行った後、再びホーム画面グループに係る調整作業を続行する場合には、中断前の状態がほとんど再現され、きわめて速やかにホーム画面グループにおける作業を続行することができるのである。
【0047】
4.3.6.チェックボックス・クリックイベント
チェックボックス304がマウスでクリックされると、クリックされる毎にそのオン状態とオフ状態とがトグルで切り替えられ、さらにその後に図8(b)に示すチェックボックス・クリックイベントルーチンが起動される。図において処理がステップSP52に進むと、チェックボックス304がオフ状態であるか否かが判定される。ここで「YES」と判定されると、ホームボタン番号HSBがヌルデータに設定される。一方、ここで「NO」と判定されると、処理はステップSP54に進み、ホームボタン番号HSBが現在の設定画面に係る選択ボタン番号SBに設定される。
【0048】
4.3.7.所定時間無操作イベント
大型表示器14に関係する操作が数分程度の所定時間以上行われなかった場合には、図8(c)に示す所定時間無操作イベントルーチンが起動される。図において処理がステップSP62に進むと、ホームボタン番号HSBがヌルデータであるか否かが判定される。ここで「YES」と判定されると、実質的な処理が行われず本ルーチンの処理が終了する。一方、「NO」と判定されると処理はステップSP64に進み、ホームボタン番号HSBを引数として上記選択ボタン操作イベントルーチン(図7(a))が呼び出される。これにより、該ホームボタン番号HSBに係る設定画面が大型表示器14に表示される。このように、本ルーチンによれば、ホーム画面グループ以外の画面において各種調整作業が行われ、しかる後に大型表示器14に関係する操作が所定時間以上行われなかった場合には、自動的に設定画面をホーム画面グループの画面に戻すことができる。
【0049】
5.変形例
本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように種々の変形が可能である。
(1)上記実施例においては、CPU18上で動作するプログラムによって、各種処理(図7,図8)を実行したが、これらのプログラムのみをCD−ROM、フレキシブルディスク等の記録媒体に格納して頒布し、あるいは伝送路を通じて頒布することもできる。
【0050】
(2)上記実施例においては、タッチパッド236またはマウス等によって大型表示器14上の各種要素を操作したが、大型表示器14上にタッチスクリーンを設け、このタッチスクリーンを介して大型表示器14上の要素を操作するようにしてもよい。
【0051】
(3)上記実施例においては、ホームボタンが長押しされた場合に、ホームボタン番号HSBが、現在の設定画面に係る選択ボタン番号SBに変更された。しかし、ホームボタン番号HSBを変更する方法はホームボタンの「長押し」に限定されるものではなく、他の種々の方法を採用してもよい。例えば、所定のシフトキーが押下されつつホームボタンが押下された場合にホームボタン番号HSBを現在の設定画面に係る選択ボタン番号SBに変更する一方、該シフトキーが押下されていなかった場合には、ホームボタンの押下時間にかかわらず、ホームボタン番号HSBを変更しないようにしてもよい。
【0052】
(4)上記実施例においては、選択ボタンが押下されたときに(図7(a)のステップSP2が実行されたときに)、現在のタグ画面のタグ番号TB、ユニットナンバUN、カーソル位置CP(TB)等が画面情報として保存された。しかし、このような画面情報を保存するタイミングは、選択ボタンが押下されたときに限られるものではない。例えば、各タグ画面毎に独立してRAM22内に画面情報を確保できる場合には、タグ画面内でなんらかの操作が行われたとき、その操作タイミングにおいて直ちに画面情報を更新しておくこともできる。かかる場合には、選択ボタンが操作されたタイミングでは特に画面情報を更新する必要が無いため、ステップSP2の処理を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例のデジタルミキサ1のハードウエアブロック図である。
【図2】信号処理部10等において実現されるミキシングアルゴリズムのブロック図である。
【図3】図2のアルゴリズムの要部のブロック図である。
【図4】デジタルミキサ1の操作パネルの要部の平面図である。
【図5】内蔵エフェクト・GEQ設定画面300の内容を示す図である。
【図6】ダイナミックス画面350の内容を示す図である。
【図7】本実施例における各種イベントルーチンのフローチャートである。
【図8】本実施例における他のイベントルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1:デジタルミキサ、2:スイッチ群、4:電動フェーダ群、6:回転つまみ群、8:波形I/O部、10:信号処理部、12:バスライン、14:大型表示器(表示器)、15:入力装置、16:その他I/O部、18:CPU(処理装置)、20:フラッシュメモリ、22:RAM(記憶手段)、38:ホームボタン、102:アナログ入力部、104:デジタル入力部、106:内蔵エフェクタ部、108:入力パッチ部、110:ステレオ入力チャンネル調整部、112:入力チャンネル調整部、116:MIXバス群、118:ステレオバス、120:ステレオ出力チャンネル部、122:MIX出力チャンネル部、122−m:第mMIX出力チャンネル部、123:マトリクスバス群、124:マトリクス出力チャンネル部、126:出力パッチ部、128:アナログ出力部、130:デジタル出力部、132:グラフィックイコライザ部、150,170,180:音質調整部、204〜212:レイヤ・キー、220〜226:カーソルボタン、237,238:タッチパッド用ボタン、240−1〜240−P:チャンネルストリップ、242−1〜242−P:電動フェーダ、248−1〜248−P:SELキー、250−1〜250−P:回転つまみ、260:ダイナミックス調整部、262,272:選択ボタン、270:イコライザ調整部、280:選択ボタン群、280−1〜280−6:選択ボタン、300:設定画面、300:内蔵エフェクト・GEQ設定画面、302:ホームボタン、304:チェックボックス、306:レベルメータ、308:シーンナンバ表示部、310:ユニット名称部、312:ユニットナンバ部、314:画面グループ名称部、316:選択チャンネル番号表示部、318:オンオフ設定部、320:挿入箇所設定部、322:フラット設定ボタン、324:ゲイン表示ボタン、326:スペクトラム表示ボタン、328:グラフ表示部、330:フェーダ部、340〜346:タグボタン、350:ダイナミックス画面、352:タグ画面名称部、354:画面グループ名称部、356:選択チャンネル番号表示部、358:キーインソース設定部、360:ステレオリンク部、362:ゲートタイプ設定部、364:グラフ表示部、366:オンオフ設定部、368:パラメータ設定部、370:マウスカーソル、380〜386:タグボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示器と、該表示器に表示され得る複数の画面の集合を画面グループとし複数の画面グループの各々に対応する複数の選択ボタンと、ホームボタンとを含む操作パネルと、
前記複数の画面グループの各々に対応して、当該画面グループに属する複数の画面のうち一の画面を示す画面指定情報と、前記複数の画面グループのうち何れか一の画面グループを示すホーム情報とを記憶する記憶手段と、
前記複数の選択ボタンの何れか一の選択ボタンに対する操作に応じて、前記表示器に現在表示されている画面の属する画面グループの画面指定情報として、当該画面を示す画面指定情報を前記記憶手段に記憶するとともに、操作された選択ボタンに対応する画面グループの画面指定情報が示す画面を選択し、選択された画面を前記表示器に表示させる第1表示制御手段と、
所定の画面切換操作に応じて、前記表示器の表示する画面を、現在表示されている画面の属する画面グループ内の他の画面に切り換える第2表示制御手段と、
所定のホーム設定操作に応じて、前記複数の選択ボタンのうち何れか一の選択ボタンを選択し、該選択された選択ボタンを示す情報を前記ホーム情報として前記記憶手段に記憶させるホーム設定手段と、
前記ホームボタンに対する所定のホーム復帰操作に応じて、前記表示器に現在表示されている画面の属する画面グループの画面指定情報として、当該画面を示す画面指定情報を前記記憶手段に記憶するとともに、前記ホーム情報が示す選択ボタンに対応する画面指定情報が示す画面を選択し、選択された画面を前記表示器に表示させる第3表示制御手段と
を有することを特徴とするデジタルミキサ。
【請求項2】
前記ホーム情報設定操作は、前記ホームボタンに対して行われる所定の操作であり、
前記ホームボタンに対する操作態様に応じて、前記ホーム設定操作が行われたのか否かを判別する判別手段を有し、
前記第3表示制御手段は、前記判別手段の判別結果が否定的であった場合に動作するものであり、
前記ホーム設定手段は、前記判別手段の判別結果が肯定的であった場合に動作するものである
ことを特徴とする請求項1記載のデジタルミキサ。
【請求項3】
前記操作パネルにおける操作が所定時間以上行われなかった場合にその旨を検出する無操作検出手段と、
前記操作パネルにおける操作が所定時間以上行われなかった旨を前記無操作検出手段が検出すると、前記表示器に現在表示されている画面の属する画面グループの画面指定情報として、当該画面を示す画面指定情報を前記記憶手段に記憶するとともに、前記ホーム情報が示す選択ボタンに対応する画面指定情報が示す画面を選択し、該選択された画面を前記表示器に表示させる第4表示制御手段と
をさらに有することを特徴とする請求項1または2記載のデジタルミキサ。
【請求項4】
複数チャンネルの音声信号の中から一の選択チャンネルを指定する選択チャンネル指定手段をさらに有し、
前記第1ないし第4表示制御手段は、前記第1ないし第4表示制御手段が起動される前に指定された選択チャンネルを、前記第1ないし第4表示制御手段によって表示される画面に表示することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のデジタルミキサ。
【請求項5】
表示器と、該表示器に表示され得る複数の画面の集合を画面グループとし複数の画面グループの各々に対応する複数の選択ボタンと、ホームボタンとを含む操作パネルと、データを記憶する記憶手段と、処理装置とを有するデジタルミキサの、前記処理装置に実行させるプログラムであって、
前記複数の選択ボタンの何れか一の選択ボタンに対する操作に応じて、前記表示器に現在表示されている画面の属する画面グループの画面指定情報として、当該画面を示す画面指定情報を前記記憶手段に記憶するとともに、操作された選択ボタンに対応する画面グループの画面指定情報が示す画面を選択し、選択された画面を前記表示器に表示させる第1表示制御過程と、
所定の画面切換操作に応じて、前記表示器の表示する画面を、現在表示されている画面の属する画面グループの他の画面に切り換える第2表示制御過程と、
所定のホーム設定操作に応じて、前記複数の選択ボタンのうち何れか一の選択ボタンを選択し、該選択された選択ボタンを示す情報を前記ホーム情報として前記記憶手段に記憶させるホーム設定過程と、
前記ホームボタンに対する所定のホーム復帰操作に応じて、前記表示器に現在表示されている画面の属する画面グループの画面指定情報として、当該画面を示す画面指定情報を前記記憶手段に記憶するとともに、前記ホーム情報が示す選択ボタンに対応する画面指定情報が示す画面を選択し、選択された画面を前記表示器に表示させる第3表示制御過程と
を前記処理装置に実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−36325(P2007−36325A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212185(P2005−212185)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】