説明

デジタル・コンテンツ・メタデータ用統一フォーマット

デジタル・コンテンツ・メタデータについての統一されたフォーマットを提供する方法およびシステムが記載される。システムは、メディア・コンテンツに関連付けられたソース・データを取得するモジュールと;そのソース・データに基づいてメディア・コンテンツを識別するモジュールと;識別されたコンテンツに関連付けられたメタデータを取得する抽出器と;取得されたメタデータを、ポピュラー音楽フォーマットに従ってフォーマット整形する変換器とを有する。ポピュラー音楽フォーマットは三フィールド・フォーマットであり、三つのフィールドとは、アルバムのタイトル、トラックのタイトルおよびアーチスト名を記憶するためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〈優先権主張〉
本PCT出願は、2007年1月5日に出願された、「デジタル・コンテンツ・メタデータの統一フォーマットを提供する方法およびシステム」と題する米国仮特許出願第60/883,642号の出願日の利益を主張するものであり、この優先権はここに米国特許法第119条(e)のもとに主張される。前記文献の内容全体はここに参照によって組み込まれる。
【0002】
〈技術分野〉
本出願は、デジタル・コンテンツ・メタデータについての統一されたフォーマットを提供する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
先の千年紀を通じて、西洋のクラシック音楽ドキュメンテーションは、数多くの学者、文書館員、出版者、演奏家などの無数のきまぐれ、使用および必要にさらされてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その結果は、分類および体系化のごたまぜであり、これが一般的な実用および応用を阻んでいる。審美的、文化的および商業的境界を越える、台頭しつつあるデジタル世界では、デジタル領域において普遍的に適用できる整合的かつ一貫したクラシック・データ標準がない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、付属の図面において限定ではなく例として図示されている。図面において似た参照符号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】例示的な実施形態が実装されうるネットワーク環境の図的な表現である。
【図2】ある例示的な実施形態に基づく三行ソリューション(TLS: Three Line Solution)のブロック図である。
【図3】ある例示的な実施形態に基づく、デジタル・コンテンツ・メタデータのための統一フォーマットを提供する方法のフローチャートである。
【図4】ある例示的な実施形態に基づく、三行ソリューション(TLS)を利用したアーキテクチャの図的な表現である。
【図5】ある例示的な実施形態に基づく、さまざまなジャンルの作品の一つに関連付けられたメタデータの、ポピュラー音楽の作品に関連付けられた表示フォーマットへの変換を示すブロック図である。
【図6】ある例示的な実施形態に基づく、さまざまなジャンルの作品の一つに関連付けられたメタデータの、ポピュラー音楽の作品に関連付けられた表示フォーマットへの変換を示すブロック図である。
【図7】ある例示的な実施形態に基づく、さまざまなジャンルの作品の一つに関連付けられたメタデータの、ポピュラー音楽の作品に関連付けられた表示フォーマットへの変換を示すブロック図である。
【図8】ある例示的な実施形態に基づく、さまざまなジャンルの作品の一つに関連付けられたメタデータの、ポピュラー音楽の作品に関連付けられた表示フォーマットへの変換を示すブロック図である。
【図9】メディア・プレーヤーによるアクセスのためのコンテンツ・データベースにTLSフォーマットされたデータをアップロードするアーキテクチャの図的な表現である。
【図10】ある例示的な実施形態に基づく変換マップを示すブロック図である。
【図11】ある例示的な実施形態に基づく変換マップを示すブロック図である。
【図12】ある例示的な実施形態に基づく、TLSシステムによって処理され、メディア・プレーヤーに提供されうるコンテンツのさまざまなソースを示すブロック図である。
【図13】本稿で論じられる方法の一つまたは複数を機械に実行させるための命令の組が実行されうる、コンピュータ・システムの形の例示的な機械の図的な表現である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
デジタル・コンテンツ・メタデータのための統一フォーマットを提供する方法およびシステムが記載される。ある例示的な実施形態では、デジタル市場のコンテキストにおいて、デジタル・コンテンツ・メタデータのための統一フォーマット(以下単に統一フォーマットと称する)は、三行ポピュラー音楽パラダイムにおけるデジタル・コンテンツに関連付けられるメタデータのさまざまなコンポーネントを取得し、記憶し、アクセスし、表示するために利用されうる。デジタル・コンテンツに関連付けられるメタデータのさまざまなコンポーネントは典型的には、クラシック音楽に関連付けられるメタデータの四つの基本コンポーネント――アルバム・タイトル、アルバム・アーチスト、トラック・タイトルおよび作曲家――を含む。デジタル音楽製品およびアプリケーションにおいて一般に使われている三行ポピュラー音楽パラダイム(これはポップ・フォーマットと称されうる)は、演奏アーチスト・フィールド、アルバム・タイトル・フィールドおよびトラック・タイトル・フィールドを含むデジタル・コンテンツ・メタデータのフォーマットとして見てもよい。
【0008】
クラシック音楽メタデータをデジタル領域における既存の製品およびアプリケーションに提供することにおける面倒な問題は、データ・コンポーネントの四角い集合をデータ・フィールドの既存の三角集合に適合させることと等価であってきた。情報を与えられたリスニング経験をクラシック音楽のエンド・ユーザーに提供するために、メディア・プレーヤーは四つの基本的なデータ・コンポーネント:作曲家、録音アーチスト、アルバム・タイトルおよびトラック・タイトルをリストする必要がある。既存のメディア・プレーヤーは、演奏アーチスト、アルバム・タイトルおよびトラック・タイトル(たとえば歌のタイトル)のポピュラー音楽パラダイムに基づいて三つのフィールドしか提供しない。問題を複雑化することに、既存のデータが壊されず、かつツール、形態、プログラム、アプリケーションおよび最終製品の形における将来の革新を受け容れるのに十分に設計が弾力的であるシステムを考案する必要がある。現在のところ、デジタル的な記憶、再生および表示の目的のためにクラシック音楽データを一貫した形でリストする確立されたフォーマットはない。
【0009】
クラシック音楽(またはポップ・フォーマットの三つのフィールドに完全には揃わないメタデータをもちうる他のデジタル・コンテンツ)に関連付けられたメタデータの四つの基本コンポーネントが三行ポップ・フォーマットで表示される例示的な統一フォーマットは、三行ソリューション(TLS: Three Line Solution)と称されうる。TLSは、ユーザー(たとえば、エンド・ユーザーのほかオンライン音楽小売業者、製品開発者、製品マーケティング担当者)に対して、一貫性がありかつ予測可能な仕方でクラシック音楽メタデータにアクセスする能力を提供するために利用されうる。ある例示的な実施形態では、統一フォーマットは、上位互換性および下位互換性を提供するために区切られたデータ・ストリングを利用してもよい。統一フォーマットの利用は、統一フォーマットで表現されたコンテンツを、ポップ・フォーマットでコンテンツを記憶する既存のデータベースに統合することを許容しうる。統一フォーマットの利用はまた、新しいデータ構成および製品に拡張する能力をも容易にしうる。
【0010】
本発明の実施形態は、デジタル・オーディオ環境において展開されるとき、同時係属中の「再生装置の動作を制御する方法および装置」と題する米国仮出願第60/709,650号に記載されているシステムのコンポーネントと関連して利用されてもよい。前記文献の内容はここにその全体において組み込まれる。
【0011】
ある例示的な実施形態では、TLSは、クラシック音楽メタデータの四つの基本コンポーネントすべてが取得、記憶および表示の目的のために受け容れられるような仕方で、ポップ・フォーマットの既存の三つのデータ・フィールドに過剰ロードする(overload)。これは、特定の作品のタイトルを作曲家の名前と組み合わせ、演奏者(単数または複数)がアルバム・アーチスト・フィールドに表示され、もとの作品およびその個別の楽章、セクションなどがトラック・タイトル・フィールドに入力されることを許容することによって達成されうる。アルバム・アーチスト・フィールドを作曲家ではなく演奏者専用とすることによって、TLSは、ある例示的実施形態では、複数アーチストおよび/または複数作曲家の場面について(たとえばボックス入りコンパクト・ディスク(CD)およびデジタル・ビデオ・ディスク(DVD)セット、コンピレーション、コレクションなどについて)、トラック・レベルのアーチストをデフォルトとすることをも許容する。たとえばオペラ録音の場合、この技術は、各シーンの個々の歌手がそのトラックに現れる順にリストされることを許容しうる。
【0012】
トラック・タイトル・フィールド内の作品タイトルに作曲家の名前を追加することによって、そのトラックの状態が、「アルバム」の下位セットから、アーカイブ、マーケティングおよび小売目的のために操作されることのできる区別されるデータ・ストリングに拡張されうる。データ・ストリング内では、ある例示的実施形態では、TLSは、特定のパンクチュエーション・デリミタによって分離された特定のデータのシーケンス――作曲家名、作品タイトル、調、作品番号、カタログ番号、楽章番号およびタイトルなど――を確立する。ここで、各構成コンポーネントが、データ・ストリング全体の構文解析可能なサブセットになる。ある例示的実施形態では、TLSプロトコルおよびガイドラインは、略号、パンクチュエーション、大文字使用、必須および任意的データ・コンポーネント、個別言語のスペリングおよびアクセント(accents)、翻訳、転写ならびに特定の作品、アーチストおよび製品に関係した他のローカルな事項の個別的な利用をも確立する。
【0013】
デジタル・コンテンツ・メタデータのための統一フォーマットを提供する方法およびシステムは、ある例示的実施形態では、図1に示されるネットワーク環境100のコンテキストにおいて実装されうる。
【0014】
図1に示されるように、ネットワーク環境100はクライアント・システム(または単にクライアント)110およびTLSサーバー120を含みうる。クライアント・システム110は、メディア・プレーヤー・アプリケーション112を含んでいてもよく、通信ネットワーク130を介してTLSサーバー120によって提供されるサービスへのアクセスをもっていてもよい。TLSサーバー120は、コンテンツ・データベース122およびTLSアプリケーション124をホストしていてもよい。通信ネットワーク130は公共ネットワーク(たとえばインターネット、無線ネットワークなど)であっても私設ネットワーク(たとえばLAN、WAN、イントラネットなど)であってもよい。
【0015】
ある例示的実施形態では、クライアント110に関連付けられたユーザーは、CDのコンテンツにアクセスするためにクラシック音楽を含むCDを再生デバイスにロードし、クラシックのコンテンツに関連付けられたメタデータが統一フォーマットで提示されることを要求しうる。TLSアプリケーション124は、そのCD上で利用可能なコンテンツを識別し、そのコンテンツにアクセスし、そのコンテンツに関連付けられたメタデータを生成し、そのメタデータを処理(または再フォーマット)して統一フォーマットに編成し、そのフォーマットされたメタデータをユーザーへの表示のために提供しうる。コンテンツに関連付けられたメタデータは、コンテンツ・データベース122を利用して得られてもよい。コンテンツ・データベース122は、TLSサーバー120に関してローカルに位置されていてもリモートに位置されていてもよいことを注意しておく。
【0016】
もう一つの例では、クライアント110は、(たとえばマイクロホン装置を介して)オーディオ・コンテンツを、TLSサーバー120によってホストされていてもよいコンテンツ識別サービスに提供し、提供されたコンテンツに関連付けられたメタデータを要求してもよい。コンテンツ識別サービスは、提供されたデジタル・コンテンツを識別し、次いで識別されたコンテンツに関連付けられたメタデータを取得または生成し、そのメタデータをフォーマット処理のためにTLSアプリケーション124に提供してもよい。
【0017】
上述したように、ある例示的実施形態では、メタデータ(たとえば、アルバム・タイトル、アルバム・アーチスト、作品(単数または複数)および作曲家)は、ポピュラー音楽パラダイムのために使われる入れ物に適合するような仕方、すなわち:演奏アーチスト・フィールド(またはアーチスト・フィールド)、アルバム・タイトル・フィールド(またはアルバム・フィールド)およびトラック・タイトル・フィールド(またはトラック・フィールド)でフォーマットされる。TLSアプリケーション124によってフォーマットされたメタデータは、規格化された様式で記憶され、その後エンド・ユーザーに(たとえばクライアント110を介して)返されうる。この例示的なTLSアプリケーション124は、クライアント・システム110においてメタデータを明確に区別された諸エンティティ(たとえば、アルバム・タイトル、アルバム・アーチスト、作品および作曲家)に規格化し直すことを許容する一連のデリミタを使用する。
【0018】
クライアント110は、ある例示的実施形態では、TLSアプリケーション124から受け取ったフォーマットされたメタデータのパック解除を受け持ちうるコンポーネントまたは機能モジュール(図示せず)を含んでいてもよい。パック解除は、表示目的またはそのフォーマットされたメタデータを必要としうる他の用途のために実行されてもよい。
【0019】
コンテンツの識別は、多様な技法を利用して実行されうる。たとえば、ファイル・ベースの識別(たとえば、ファイル名をデータベースに記憶されている名称と照合する、ファイル・メタデータをデータベースに記憶されているエントリーと照合する、など)、CDデータベースにおいてそのCDを検索する(たとえば、そのCDに関連付けられたインデックスまたはそのCDに関連付けられた他の何らかの識別情報を利用して)、あるいはコンテンツそのものに関連付けられた識別情報の判別(たとえば、オーディオ信号に関連付けられたフィンガープリントまたは電子透かしを使って)といった技法である。
【0020】
本記載の目的のためには、識別とは、デジタル・コンテンツ、たとえばデジタル・オーディオ・コンテンツがもとのまたは参照録音(original or reference recording)と同じであると認識されるプロセスである。デジタル・コンテンツのためのフィンガープリントは、識別目的のために、ある実施形態では、オーディオ信号から見分けられうる内在的な属性を利用することによって、生成されうる。このアプローチは、識別の手がかりとなる特徴がオーディオ信号の一部であり、したがって、相異なるオーディオ・コンテンツ(たとえば相異なる音楽作品)が異なる特徴によって特性付けされるという事実を利用している。
【0021】
ある例示的実施形態では、デジタル・コンテンツに関連付けられているフィンガープリントがTLSアプリケーション124によって受信され、コンテンツ・データベース122に記憶されていてもよい基準フィンガープリントと比較される。ある例示的実施形態では、コンテンツ・データベース122は、基準フィンガープリントを記憶するフィンガープリント・データベース、CDを識別するデータを記憶するCDデータベースおよびコンテンツ・ファイルに関連付けられるさまざまなメタデータを記憶する検索データベースといった複数のデータベースを含んでいてもよいことを注意しておく。TLSアプリケーション124の例示的機能コンポーネントは図2を参照して述べられうる。
【0022】
図2は、TLSシステム200のブロック図である。TLSシステム200は、ある例示的実施形態では、通信モジュール202、コンテンツ識別モジュール204、抽出器206、変換器208およびパッケージング・モジュール210を含む。通信モジュール202は、主題となるオーディオ・コンテンツに関連付けられた情報、オーディオ・コンテンツを識別する要求、所定のフォーマットに従ってメタデータを生成する要求または他の何らかのメッセージもしくは要求を取得または受信するよう構成されうる。抽出器204は、オーディオ・コンテンツに関連付けられたメタデータを生成または取得するよう構成されうる。具体的には、抽出器204は、オーディオ・コンテンツの特定の項目(item)について、アルバム・タイトル、アルバム・アーチスト、作品および作曲家といった情報を得るよう構成されうる。
【0023】
コンテンツ識別モジュール204は、主題となるコンテンツを識別するよう構成されうる。識別プロセスは、先述したような多様な技術を利用して、たとえば、主題オーディオ信号からフィンガープリントを取得してそのフィンガープリントをTLSシステム200に付随するデータベースに記憶されているデータと照合することによって、主題ファイルの名前に基づいてテキスト・マッチを実行してそれを付随するデータベースに記憶されているメタデータと照合することによって、また他の技法によって、実行されうる。いくつかの実施形態では、コンテンツ識別モジュール204が、TLSシステム200の他のモジュールからはリモートに位置されるコンピュータ・システムによってホストされていてもよいことを注意しておく。さらなる実施形態では、コンテンツ識別モジュール204はスタンドアローンのアプリケーションとして実装されてもよい。
【0024】
抽出器206は、識別された主題コンテンツに関連付けられたメタデータを、たとえばTLSシステム200に付随するさまざまなデータベース、たとえば図1のコンテンツ・データベース122から、取得するよう構成されてもよい。変換器208は、オーディオ・コンテンツに関連付けられたメタデータからのどの情報片がポップ・フォーマットに関連付けられる三つのデータ・フィールドのそれぞれに加えられるべきかを決定するよう構成されうる。たとえば、変換器208に利用可能なメタデータは、アルバムの名前でもあるもとの作品のタイトル、もとの作品の個々の楽章の名前、演奏者の名前および作曲家の名前を含みうる。変換器208は、特定の作品のタイトルをその作曲家の名前と組み合わせ、このデータをポップ・フォーマットのアルバム・タイトル・フィールドに含めうる。変換器208は演奏者の名前をポップ・フォーマットのアルバム・アーチスト・フィールドに含め、もとの作品のタイトルおよびその個々の楽章、セクションなどの名前をポップ・フォーマットのトラック・タイトル・フィールドに含めうる。そのような変換の例は図5に示されている。デジタル・コンテンツを識別するデータをフォーマットする他のいくつかの例は図6〜図8に示される。
【0025】
図3は、ある例示的実施形態に基づく、デジタル・コンテンツ・メタデータのための統一フォーマットを提供する方法300のフローチャートである。方法300は、ハードウェア(たとえば専用論理、プログラム可能論理、マイクロコードなど)、ソフトウェア(汎用コンピュータ・システムまたは専用機で走るような)または両者の組み合わせを含みうる処理論理によって実行されうる。ある例示的実施形態では、処理論理は図2のTLSサーバー200のところにあり、具体的には、TLSアプリケーション124によって提供されうる。ある例示的実施形態では、方法300は、図2を参照して上で論じたさまざまなモジュールによって実行されうる。これらのモジュールのそれぞれは処理論理を含みうる。
【0026】
図3に示されるように、方法300は、図2の通信モジュール202がメディア・コンテンツに関連付けられたソース・データを取得する動作302で始まる。メディア・コンテンツはオーディオ・コンテンツ、たとえばクラシック音楽の作品、オペラ作品、ジャズ音楽作品などであってもよい。メディア・コンテンツはまた、デジタル・ビデオ・ディスク(DVD)からのコンテンツ、たとえば映画であってもよい。動作304では、図2のコンテンツ識別モジュール204が前記ソース・データを利用してメディア・コンテンツを識別する。たとえば、メディア・コンテンツは「ジョージ・セル」およびクリーヴランド管弦楽団をフィーチャーするアルバム「新世界交響曲」のトラック4であってもよい。動作306では、図2の抽出器206がメディア・コンテンツに関連付けられたメタデータを識別(または取得)する。上の例では、メタデータは作曲家名、作品名、作品番号、カタログ番号、ニックネーム、楽章、指揮者およびアンサンブルを含む。動作308では、図2の変換器208が、取得されたメタデータの、三つのフィールド:アルバム・フィールド、アーチスト・フォールドおよびトラック・フィールドを含むポピュラー音楽用に利用されるフォーマットへの整形を実行する。動作310では、こうして三フィールドのポピュラー音楽フォーマットに変換されたメタデータが、ユーザーへの(たとえば再生装置またはアプリケーションへの)通信のためにパッケージ化される。
【0027】
本稿に記載される例示的なTLSシステムの実装によって提供されうる標準は、クラシックの諸時代および諸ジャンルを横断する一貫性、既存のポピュラー(ポップ)音楽データ表現パラダイムとの互換性、情報を得てのリスニング経験のために録音についての関連データを伝達する機能ならびに将来の技術的革新および応用へのスケーラビリティを提供する。この標準は、多様な呈示またはメディア・コンテンツ・ジャンル、たとえばジャズ、オペラ、映画などに関連付けられたメタデータを有利に変換するために利用されうる。本記載の目的のためには、統一フォーマットおよび関連する標準は、クラシック音楽メタデータへの適用に限定されるわけではないが、クラシック標準(Classical Standard)と称される。
【0028】
ある例示的実施形態では、クラシック標準の主眼は三行ソリューション(TLS)である。TLSを利用する例示的アーキテクチャ400が図4に示されている。例示的なTLS変換システム410はクラシックのデータ・コンポーネント420をポピュラー・データ表示430に変換するために使用されうる。例示的なクラシックのデータ・コンポーネント420はアルバム・タイトル項目422、作曲者項目424、トラック・タイトル項目426およびアルバム・アーチスト項目428を含む。図4に示されるように、ソース・コンテンツ項目(たとえば、クラシック音楽作品のある項目)に関連付けられるメタデータが、ポピュラー音楽フォーマットに関連付けられるトラック、アーチストおよびアルバムのフィールド(それぞれフィールド432、434および436)を埋めるために使われる。下記に示されるところでは、この例示的実施形態において必須なデータ項目は角括弧内に現れる。この例示的実施形態において任意的なデータはブレース({ })内に現れる。
【0029】
例示的ソリューション:[ ]=必須データ { }=任意的データ
トラック:[作曲家短縮名(Composer Short Name)]:[作品タイトル]{調},{作品番号},{カタログ番号},{「ニックネーム」}-[楽章番号].[楽章テンポまたは文字標題(text title)]
アーチスト:{ソリスト(単数または複数)},{指揮者};{アンサンブル},{合唱アンサンブル}
アルバム:製品にプリントされているとおり。例外あり。
【0030】
ポピュラー音楽のトラック/アーチスト/アルバム表示の慣例に合致するようフォーマットされたクラシック音楽に関連付けられたメタデータの下記の例が、このアプローチを例解する。
【0031】
トラック:ベートーヴェン:交響曲#6ヘ長調,Op.68,「田園」-1.アレグロ・マ・ノン・トロッポ
アーチスト:ヘルベルト・フォン・カラヤン;ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
アルバム:ベートーヴェン:交響曲#6,「田園」
トラック:モーツァルト:クラリネット協奏曲イ長調,KV622-1.アレグロ
アーチスト:アルフレート・プリンツ,カール・ベーム;ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
アルバム:モーツァルト:木管協奏曲
トラック:ドヴォルザーク:スラブ舞曲#2ホ短調,Op.46
アーチスト:イツァーク・パールマン,サミュエル・サンダーズ
アルバム:イツァーク・パールマンのグレーテスト・ヒッツ,Vol.2。
【0032】
デジタル・コンテンツ・メタデータのための統一フォーマットを提供する方法およびシステムは、いくつかの実施形態では、アプリケーション開発者、オンライン小売業者およびエンド・ユーザーのようなユーザーに対して有益であることが立証される。というのも、四つの基本的なクラシック音楽データ・コンポーネント――作曲家/録音,アーチスト/アルバム,タイトル/トラック,タイトル――がすべて再生アプリケーションおよび装置によって典型的に表示される三行に収容されうるからである。作曲家が演奏者から区別される、たとえば作曲家データはアーチスト・フィールドに表示されることは許されないというように、データは一貫性をもって表示されることができる。作曲家の名前を作品タイトルと一緒に使用することは、印刷物および学術研究ならびにレコード製品におけるクラシック作品のリスト化と完全に一貫している。デジタル・コンテンツ・メタデータのための統一フォーマットを提供する方法およびシステムは、いくつかの実施形態では、一般大衆のための提出プロセスを簡略化することがありえ、エンド・ユーザーがクラシック音楽データを配信または処理用の施設またはエンティティに提出するときに使うことを強いられてきたさまざまな場当たり的な方法に対する必要性を軽減することもありうる。
【0033】
トラック・レベルにおいて作曲家および作品名を使用することは、オペラ・トラックのリスト化にまつわるさまざまな問題、特に個々のシーン(トラック)におけるアリアおよび二重唱/三重唱などに個々の歌手を、そのトラック上で現れる順に割り当てる問題の解決に貢献しうる。作曲家の姓だけを(該当する場合には修飾するイニシャルを付けて)使うことは、特定の作品に対して基本的な帰属を提供しうるが、専用の作曲家名フィールドにおける作曲家のフルネームの使用を冗長にしない。いくつかの実施形態では、クラシック・タイトルの圧倒的に多くは音楽様式(たとえば交響曲、協奏曲、ソナタ、パルティータなど)に基づいているので、作曲家の名前が作品タイトルの一部として現れる。第九交響曲は(ハイドン、ベートーヴェン、モーツァルトによるものなど)数多くありうるので、クラシック音楽において「第九交響曲」ということはそれに帰属される作曲家の名前なしでは十分な情報を伝えない。再生装置またはアプリケーションのコンテキストにおいて追加的なデータ・フィールド(およびそれを表示する手段)が利用可能であれば、トラック、アルバムおよびアーチスト名の中のデリミタを使って情報を個別のフィールドに構文解析してもよい。さまざまなジャンルの作品に関連付けられたメタデータの、ポピュラー音楽の作品に関連付けられた表示フォーマットへの変換は、図5〜図8を参照しつつ述べられうる。
【0034】
図5は、ある例示的実施形態に基づく、クラシック音楽の作品に関連付けられたメタデータの、ポピュラー音楽の作品に関連付けられた表示フォーマットへの変換を示すブロック図500である。前TLSデータ(クラシック・データ・コンポーネント520)は、指揮者ジョージ・セルおよびクリーヴランド管弦楽団をフィーチャーするアルバム「新世界交響曲」のトラック4に基づいている。図5に示されるように、TLSインターフェース/変換モジュール510は、クラシック・データ・コンポーネント520を受領し、メタデータ530を決定する。TLSインターフェース/変換モジュール510は、アルバム、作曲家および作品フィールドを組み合わせて、過積載されたアルバム・タイトル・フィールドを形成する(作曲家のフルネームは短縮名に変換される)。作曲家、作品および楽章フィールドは、過積載されたトラック・タイトル・フィールドを形成するために組み合わされる。アーチスト・タイプ・フィールド(ここでは指揮者フィールドおよびアンサンブル・フィールド)は組み合わされて、アルバム・アーチスト・フィールドを形成する。アステリスク(「*」)で示される任意的なコンポーネントは、TLSで必須にされたデリミタとともにデータ・ストリングに加えられる。次いでメタデータ530はTLSデータ540に再構成される。TLSデータ540は、ポピュラー音楽表示フォーマットに関連付けられた三つのフィールドに含められる。
【0035】
図6は、ある例示的実施形態に基づく、クラシック音楽の作品に関連付けられたメタデータの、ポピュラー音楽の作品に関連付けられた表示フォーマットへの変換を示すブロック図600である。前TLSデータ(DVDデータ・コンポーネント620)は、DVD「スター・ウォーズ、エピソード4:新たなる希望」に基づいている。図6に示されるように、TLSインターフェース/変換モジュール610は、DVDデータ・コンポーネント620を受領し、メタデータ630を決定し、TLSデータ640を生成する。TLSデータ640は、この例では、DVDタイトル・フィールド、チャプター・フィールドおよびディスク・アーチスト・フィールドを含む。
【0036】
図7は、ある例示的実施形態に基づく、クラシック音楽の作品に関連付けられたメタデータの、ポピュラー音楽の作品に関連付けられた表示フォーマットへの変換を示すブロック図700である。前TLSデータ(ジャズ・データ・コンポーネント720)は、マイルス・デイヴィスによるアルバム「キング・オブ・ブルース」のトラック4に基づいている。図7に示されるように、TLSインターフェース/変換モジュール710は、ジャズ・データ・コンポーネント720を受領し、メタデータ730を決定する。アルバム・タイトル・フィールドおよび作曲家フィールドが組み合わさって過積載されたアルバム・タイトル・フィールドを形成する(作曲家のフルネームは短縮名に変換される)。作曲家フィールドおよびトラック・フィールドは組み合わされて、過積載されたトラック・タイトル・フィールドを形成する。マイルス・デイヴィスがアルバム・アーチストとして設定され、別個のトラック・レベル・アーチストを示すためにコンピレーション・フラグが設定される。この例では、コンピレーション・フラグはデフォルトで「さまざまなアーチスト」になり、これは個々のトラック・レベル・アーチストをデフォルトとする。トラック・レベル・アーチスト・データは複数ソリスト・セクションにおいて再び組み合わされる。TLSデータ740は、ポピュラー音楽表示フォーマットに関連付けられる三つのフィールドに含められる。
【0037】
図8は、ある例示的実施形態に基づく、クラシック音楽の作品に関連付けられたメタデータの、ポピュラー音楽の作品に関連付けられた表示フォーマットへの変換を示すブロック図800である。前TLSデータ(ジャズ・データ・コンポーネント820)は、「ウェスト・サイド・ストーリー」のオリジナル・キャスト収録のトラック5に基づいている。図8に示されるように、TLSインターフェース/変換モジュール810は、基本的なブロードウェー・ミュージカル・データの四行に関連付けられたデータ:アルバム・タイトル、作曲者(単数または複数)、作品タイトル(単数または複数)、アルバム・アーチスト(単数または複数)(ミュージカル・データ・コンポーネント820)を受領し、メタデータ830を決定する。アルバム・タイトル・フィールドおよび作曲家フィールドが組み合わされて過積載されたアルバム・タイトル・フィールドを形成する(作曲家のフルネームは短縮名に変換される)。作曲家フィールドおよびトラック・フィールドは組み合わされて、過積載されたトラック・タイトル・フィールドを形成する。アーチスト・データはアルバム・アーチスト・フィールド(各トラックに異なる演奏者がある場合には「さまざまなアーチスト」をデフォルトとする)にロードされる。必須および任意的なコンポーネントがTLSで必須とされるデリミタとともにデータ・ストリングに追加される。TLSデータ840は、ポピュラー音楽表示フォーマットに関連付けられる三つのフィールドに含められる。
【0038】
図9は、TLSフォーマットされたデータを、メディア・プレーヤーによるアクセス用のコンテンツ・データベースにアップロードするためのアーキテクチャ900の図的な表現である。図9に示されるように、アルバム「新世界交響曲」のトラック4に基づくクラシック・データ・コンポーネントは、ポピュラー音楽に関連付けられる三フィールド表示フォーマットにフォーマットされている(ブロック922、924および926)。TLSフォーマットされたクラシック・データ・コンポーネントはコンテンツ・データベース910にアップロードされる。コンテンツ・データベース910から、TLSフォーマットされたデータは、メディア・プレーヤー930に提供され、あるいはメディア・プレーヤー930によってアクセスされうる。メディア・プレーヤーはハードウェア装置の形、ソフトウェア・アプリケーションの形などであってよいことを注意しておく。
【0039】
図10は、サーバー側TLS変換マップ1000の図的な表現である。図10に示されるように、TLSインターフェース1010はデータ・フィード1012(たとえばクラシック音楽の作品に関連付けられたオーディオ・コンテンツ)を受領する。TLSインターフェース1010は、データ・フィード1012を介して受領したコンテンツを処理するために、作曲家テーブル1014、作品テーブル1016および演奏者テーブル1018を利用する。TLSインターフェース1010によって処理されたコンテンツは、編集上のフォーマット整形(editorial formatting)1020にかけられてもよい。フォーマットされたデータは次いでコンテンツ・データベース1030にアップロードされる。
【0040】
図11は、より詳細なサーバー側TLS変換マップ1100の図的な表現である。図11に示されるように、TLSインターフェース1110はデータ・フィード1020(たとえばクラシック音楽の作品に関連付けられたオーディオ・コンテンツ)を受領する。TLSインターフェース1010は、データ・フィード11120を介して受領したコンテンツを処理するために、比較および変換動作を実行する。TLSフォーマットされたデータは次いでコンテンツ・データベース1030にアップロードされる。TLSインターフェース1010によって処理されたコンテンツは、編集上の品質保証(quality assurance)動作(Q/A)1140にかけられてもよい。コンテンツ・データベース1130から、TLSフォーマットされた(そして任意的に編集された)データがクライアントに送達されうる(ブロック1150)。
【0041】
〈例示的なクラシック音楽メタデータ標準〉
クラシック・データおよびそれをリストできる仕方の複雑さおよび多様性のため、TLSシステムは、プロセスの各レベルで使用されるべき一連のプロトコルおよびガイドラインを含んでいてもよい。それらのプロトコルは、横断的なTLSデータ、コンテンツ・メタデータが編成され、最終的に表示される仕方を支配する、いわゆるマクロ規則または「グローバル」規則およびその例外を輪郭付けるものである。ガイドラインは、データ・ストリングの個別的な側面を支配するミクロ規則または「粒子状(granular)」規則と見られてもよい。
【0042】
〈例示的なTLSプロトコル〉
基本用法プロトコル(BUP: Basic Usage Protocol)が記述される。以下は、TLSシステムに当てはまりうるデータ使用の例示的な一般的規則である。これらの規則は、後続のページで概説されることになる三つの基本フィールドをなすデータ・ストリングならびにクロスオーバー、音楽/ドキュメンタリーおよびオペラ・レコーディングのような特化した製品に含まれるデータ・ストリングを含みうる。特に断りのない限り、これらの規則は以下にさらに述べるクラシック音楽データに係るものである。
【0043】
コンテンツ項目に関連付けられるデータ・ストリング中のすべての語は、「先頭大文字」フォーマットであってもよい。すなわちすべての語の最初の文字が大文字化される。この例示的規約は、作品タイトルにもアーチスト名にも当てはまる:
例:ラフマニノフ(Rachmaninov):パガニーニの主題による変奏曲(Variations On A Theme By Paganini)
例:アカデミー・オブ・セントマーティン・イン・ザ・フィールズ(Academy Of St. Martin In The Fields)
これは非英語使用における連子符でつながれた語にも当てはまる。
例:ビゼー(Bizet):アルルの女組曲(L'Arlesienne Suite)
例:スイス・ロマンド管弦楽団(L'Orchestre De La Suisse Romande)。
【0044】
TLSデータ標準では、パンクチュエーションはしばしば、たとえば作曲家短縮名、作品タイトル、作品番号などによってデータ・ストリング中に諸セグメントをソートする区切り目的をはたす。これらの主要作品/タイトル・セグメントは、ダッシュによって楽章データから分離されてもよい。トラック・レベルのデータ・ストリング内のダッシュの後では、パンクチュエーション、略語、番号および他の限定詞の使用は一般に、BUP規則および規定されたデータ・ストリング長の条件のもとに、もとの提出物または生成物における使用に従う。
【0045】
区切りパンクチュエーションは、アルバム・タイトル、トラック・タイトルおよびアーチスト名のストリングにおけるコロン、セミコロン、コンマおよびダッシュを含みうる。例示的な使用は、以下の関連するセクションで例示する。区切りパンクチュエーションはまた、アルバムまたはトラック・タイトルにおけるダッシュの後では非区切り目的のために使用されてもよい。括弧はさまざまな仕方で使用されうる。それには、タイトルのサブタイトルからの分離(例:クライスラー:アンダンティーノ(マルティーニの様式で))、タイトルの翻訳からの分離(例:火の鳥(L'Oiseau De Feu))、タイトルの付随データからの分離(例:火の鳥(1911年版))または作曲家短縮名の修飾イニシャルからの分離(例:バッハ(JS))といったものが含まれる。
【0046】
ブラケットの使用は、アルバム・タイトル・フィールドにおいて、ディスクのセットにおけるディスク番号または多巻セットのディスクの構成要素を囲む使用のためにリザーブされてもよい。
例:ワーグナー:トリスタンとイゾルデ[ディスク2]
例:モーツァルト:全集,Vol.9―オペラ―ドン・ジョヴァンニ[CD2]。
【0047】
データ・ストリング・スペースを節約するために、クラシック・データにおけるさまざまな普通に使われる語が略記されてもよく、あるいはその一般的な記号が使用されてもよい。略号のいくつかの例を下記に示す。
【0048】
・および=&
・巻=Vol.
・番号/No.=#
・作品番号=Op.
・シーン=Sc.(オペラ、バレエなどで「シーン」として使われるとき)*
*正式なタイトルの一部として使用されるときは短縮されない。例:Scene Du Ballet(バレエの情景)。
【0049】
作曲家の姓または「短縮名」がアルバム・タイトルおよびトラック・タイトルのストリングにおいて使用されうる。
例:ヨハネス・ブラームス=ブラームス
例:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト=モーツァルト。
【0050】
姓が共通の作曲家の場合、イニシャルまたは他の修飾語が短縮名の一部として括弧で囲んで使用される。
例:ヨハン・ゼバスチャン・バッハ=バッハ(JS)
例:ヨハン・シュトラウスSr.〔父〕=シュトラウスSr(J)
*注:ある実施形態では、略語「Jr.」および「Sr.」はピリオドを付けない。
【0051】
作曲家の短縮名の接頭辞の使用は、慣用プロトコル(後述)によって支配されてもよい。一般に、「ヴァン」「フォン」「ド・ラ」「デュ」などといった接頭辞は短縮名では使用されない。
例:フランツ・フォン・ズッペ=ズッペ
接頭辞が普通に作曲家の姓とともに用いられる場合には、短縮名の一部にしてもよい。
例:ジャン・バティスト・デュ・ピュイ=デュピュイ。
【0052】
他の場合には、特に中世およびルネサンス時代の作曲家の場合、慣用に基づいて、作曲家のファースト・ネームが短縮名を構成してもよい。
例:ジョスカン・デ・プレ=ジョスカン。
【0053】
ある例示的実施形態によれば、常にアーチストのフルネームが使用される。「サー」「デイム」といった敬称や「国王」のような正式な肩書きは省略されうる。
例:サー・ゲオルグ・ショルティ=ゲオルグ・ショルティ
例:国王リチャード一世=リチャード一世。
【0054】
すべてのタイトルおよび名前において、個別言語のアクセントが使用されることがありうる。テキスト、たとえばストリング中のフレーズおよび/またはセンテンスにおけるアクセントの使用は、テキスト変換における変数に起因して任意的である。
例:ビゼー:アルルの女組曲(L'Arlesienne Suite)
例:ズッペ(Suppe)=ズッペ(Supp´e)。
【0055】
作品タイトルの翻訳を含めることが任意的に行われてもよく、データ・ストリング長プロトコルに従う。含められるとき、作品タイトルの翻訳は括弧で囲まれてもよく――ただし、引用符では囲まない――ストリング中のタイトル自身の隣にリストされる。
例:ストラヴィンスキー:Le Sacre Du Printemps(春の祭典)。
【0056】
のちにさらに述べる慣用プロトコルによってカバーされる場合を除いて、ある例示的実施形態では、常にアラビア数字が使われる。タイトルにおける冠詞の使用は任意的にされてもよい。のちにさらに記述される製品完全性プロトコルが適用されてもよい。
例:ストラヴィンスキー:The Firebird(火の鳥)⇒ストラヴィンスキー:Firebird(火の鳥)。
【0057】
アルバムおよびトラック作品タイトルにおいて、「組曲」は主要作品タイトルの一部として含められてもよい。これは、組曲は普通、同じタイトルのもとの作品とは区別される作品(または諸セグメントの凝縮)だからである。
例:ストラヴィンスキー:火の鳥組曲。
【0058】
TLS目的のためには、「巻(Book)」「部(Part)」「ボリューム(Volume)」(Vol.)といった用語は、主要作品名のサブセットと考えられてもよく、主要作品タイトルからコンマによって分離されてもよい
例:バッハ(JS):平均律クラヴィーア曲集,Vol.1。
【0059】
作品タイトルにおける幕(Act)および場(Scene)の使用:オペラおよびバレエのような(主として)劇場用作品では、特定の幕および場面が楽章の一部であり、したがって、データ・ストリングにおけるダッシュの後にリストされる。幕番号にはコロンが続く。場面(Scene)は短縮され(Sc.)、ダッシュが続く。
【0060】
〈例示的な慣用プロトコル(CUP: Common Usage Protocol)〉
TLSシステムは、ある例示的実施形態では、クラシック音楽データのさまざまな側面の使用を体系化する一方、例外に遭遇することもありうる。この場合、CUPが適用される。TLS目的のためには、「慣用(Common Usage)」は、TLSガイドラインが使用および/または表示の優勢な学問的または一般的標準と対立するときの、名前、タイトル、パンクチュエーションなどの非TLS使用として定義される。CUPの使用は編集上の求め(editorial call)であり、ケースバイケースに適用されうる。
【0061】
・翻訳:作品タイトルの場合、個別言語のタイトルが最も普通に使われるタイトルであるときを除いて、通例は英語の翻訳が適用される
例:ベルリオーズ:Symphonie Fantastique(幻想交響曲)。この作品についてはフランス語タイトルが常に使用される。したがって、「Fantastic Symphony」のように翻訳することはしない。
【0062】
・数字:TLSではアラビア数字の使用が標準である。しかしながら、ローマ数字が名前の適用と一体的である場合には、CUPが適用される
例:リチャード一世(Richard I)はRichard 1としてリストされることはない(注:TLSにおける敬称の排除と一貫して、「国王」はこの作曲者短縮名には含められない)。
【0063】
〈例示的な製品完全性プロトコル(PIP: Product Integrity Protocol)〉
製品完全性プロトコル(またはPIP)は、ある例示的実施形態では、CUPの、製品に関係した変形である。これは、レコード・レーベルによって提供される、あるいは製品そのものから検証できる公式に認定されたデータに適用されうる。PIPは、アーチスト、レーベル、プロデューサーなど編集上の選好を受け容れるために、TLSフォーマット処理のもとで、製品に現れるままのデータのリスト化を許容する。これは、作品の翻訳の選択から、楽章のシーケンス、TLSで必須のデリミタに関係しないパンクチュエーション、オペラ・トラックの歌う役のリスト、作品またはトラックについての補足的情報(たとえばバージョン日付または番号)まであり、これらはみな、データ・ストリング長プロトコル内に含められ得る
例:(製品A):モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ,KV527-第1幕:夜も昼も苦労しているのは
例:(製品B):モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ-第1幕:夜も昼も苦労しているのは(レポレロ)
例:(製品A):ストラヴィンスキー:L'Oiseau De Feu-2.カスチェイの魔法の庭園
例:(製品B):ストラヴィンスキー:火の鳥(1911年版)-カスチェイの魔法の庭園。
【0064】
〈例示的なデータ・ストリング長プロトコル(DSL: Data String Length Protocol)〉
データ・ストリング中のスペース節約のため、データのさまざまなセグメントが「必須」または「任意的」と指定されうる。ストリングの長さは、すべての必須データを表示するために必要とされるスペースの数によって支配されてもよく、したがって、必要なだけ長くできる。ある例示的実施形態では、DSLは限界ではなく、ストリングに任意的データを追加してもよい、あるいは追加してはいけない点を指定する閾値である。この閾値は、たとえばストリング当たり70スペースまたはそれ未満に指定されうる。
【0065】
〈例示的なTLSガイドライン――三つの基本フィールド〉
上述したように、TLSシステムにおける三つの基本フィールドはアルバム・タイトル、トラック・タイトルおよびアーチスト名(アルバムおよびトラック・レベルのアーチストについての)である。以下の例では、データの各側面は、所定の順序に従って具体的なパンクチュエーション(コンマ、セミコロン、コロンおよびダッシュ)によって分離される。
【0066】
〈パート1――アルバム・タイトル〉
クラシック・アルバムのタイトルは、形および複雑さにおいて変化がある。一般に、データが製品(たとえばコンパクト・ディスク)から直接、あるいは公式に認定された提出手順を介してくる場合、PIPが適用されることになる。しかしながら、これらの場合であっても、「アルバム・タイトル」の概念は曖昧でありうる。製品または公式に認定されたデータが利用可能でない場合、アルバム・タイトルは、アルバム中にフィーチャーされている作品(単数または複数)に適用されるTLS標準およびデフォルトに基づいて定式化されうる。クロスオーバー、音楽ドキュメンタリーおよびオペラ・アルバムについてのタイトルは、のちにさらに論じる。
【0067】
〈タイトルの型〉
作曲家、演奏者および/または個別的な作品の羅列ではない、文字ベースである標題の正式タイトルは、文字通りに使用されうる。
例:ベスト・オブ・バロック(The Best Of The Baroque)
例:パヴァロッティが歌うイタリアのアリア(Pavarotti Sings Italian Arias)。
【0068】
相異なる「セクション」に分割されている文字標題では、ダッシュがセクションと次のセクションを分離する。
例:ベスト・オブ・バロック-ヴィヴァルディ(The Best Of The Baroque-Vivaldi)
例:パヴァロッティが歌うイタリアのアリア-プッチーニ(Pavarotti Sings Italian Arias-Puccini)。
【0069】
タイトル中に作曲家および作品がフィーチャーされているときは常に、作曲家の短縮名にコロンを続ける。
例:ベスト・オブ・バロック-ヴィヴァルディ:四季(The Best Of The Baroque-Vivaldi: The Four Seasons)。
【0070】
製品が文字標題なしの一組の作品であるとき、タイトルは作曲家の短縮名、コロンおよびフィーチャーされている曲(単数または複数)をもって作成される。
例:シュトラウス(R):ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
同じ作曲家による二つ以上の作品をフィーチャーするアルバムでは、作品はコンマによって分離される。
例:シュトラウス(R):ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら,ドン・ファン
二人以上による作品をフィーチャーするアルバムでは、各作曲家/作品のデータ・セットがセミコロンによって分離される
例:シューベルト:交響曲第8番;ヴィヴァルディ:四季
三人以上の作曲家による作品を含むアルバムでは、データ・フィールドにおけるスペース節約のため、二番目の作曲家/作品セット(前の作品からセミコロンによって分離されている)の後で「他(Etc.)」の使用が任意的である
例:モーツァルト:交響曲第25番;ハイドン:弦楽四重奏第2番;他。
【0071】
〈略号〉
上に挙げたBUP関係の略号が適用される。ある実施形態では、タイトル中の作品番号は「#」記号を使用する(「第(No.)」または他の語や記号ではなく)。「と」の代わりに記号「&」が、「巻〔ボリューム〕」の代わりにVol.が使用される
例:ベートーヴェン:交響曲#5
例:バッハ(JS):プレリュード&フーガ
例:シューベルト:歌曲,Vol.2。
【0072】
〈翻訳〉
個別言語のタイトルは、作品およびアーチストについて、(利用可能であれば)製品に呈示されているまま正確に表示される
例:Le Quattro Stagioni(「四季」ではなく)。
【0073】
製品または公式に認定されたデータが利用可能でないときは、作品/アーチスト(単数または複数)は、CUPがそうでないことを指示するのでない限り(たとえばベルリオーズのSymphonie Fantastiqueなど)、英語をデフォルトとする。タイトルの二つ以上の個別言語バージョンが普通に使われるとき、タイトルは英語をデフォルトとする。
例:ストラヴィンスキー:The Firebird
*注:ストラヴィンスキーのもともとのフランス語のタイトルL'Oiseau Du Feuはデフォルトで英語の対応物となる。両方のタイトルが交換可能に使われるからである。
【0074】
〈サブタイトル〉
サブタイトルは、作品のタイトルに対する追加である。サブタイトルはタイトルに続いて、括弧で囲まれて含められる。タイトル・フィールドに含めることは任意的である。
例:ウォルトン:ハムレット(大規模オーケストラのための9楽章のシェークスピア・シナリオ)。
【0075】
〈ニックネーム/別名〉
ニックネームおよび別名は、作品のタイトルの追加的な――だが別個の――コンポーネントである。タイトル・フィールドに含められるとき、ニックネームおよび別名は、引用符で囲まれてもよい。サブタイトルの場合と同様、タイトル・フィールドに含めることは任意的である。
例:ベートーヴェン:交響曲#9,「合唱」("Choral")。
【0076】
〈楽器属性〉
楽器属性は、作品の正式なタイトルの一部であれば、タイトル・フィールドに含められる。
例:バルトーク:弦楽、打楽器とチェレスタのための音楽。
【0077】
楽器属性がタイトルに対して括弧に入れられている作品については、その使用は任意的である(DSLに基づく)。
例:シェーンベルク:浄夜(弦楽合奏版)=シェーンベルク:浄夜。
【0078】
独奏楽器をフィーチャーする作品については、その楽器が作品様式に先行する。
例:グリーグ:ピアノのための協奏曲イ短調,Op.16=グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調,Op.16。
【0079】
補足的な楽器属性は、その作品がもともと意図されていたのではない楽器(単数または複数)によって演奏されるその作品の特定のバージョンを示すためにのみ使われているのであれば、任意的である(DSLに基づく)。
例:ベンダ(JA):ヴァイオリン協奏曲ト長調(チェロ版)=ベンダ(JA):ヴァイオリン協奏曲ト長調。
【0080】
〈タイトルにおける番号付き作品〉
アルバム・タイトルにおいて、一連の番号付き作品は複数形を使い、作品を挙げるためには「#」を(最初の番号に付けて)使う。
例:ベートーヴェン:交響曲(Symphonies)#2&3。
【0081】
〈複数ディスク・セットの番号付け〉
コンパクト・ディスク(CD)が複数ディスク・セットの一部である場合、ディスク番号が、ブラケットで囲まれて「ディスク(Disc)」によって示されてタイトルに含められる。
例:モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ[ディスク2]
この例において、「ディスク」はオペラの二枚ディスク・セットの二番目のディスクを表す。
【0082】
CDが包括的な多巻セットの一部である複数ディスクからなるボリュームの一部である場合、ボリューム番号がアルバム・タイトルに含められ、そのボリューム中のそのCDの番号がブラケット内の「CD」によって指定される。
例:モーツァルト:全集,第9巻―オペラ―ドン・ジョヴァンニ[CD35]
この例において、このCDは、170枚ディスク・セットの44枚CDのボリューム(Vol.9)の第35番目である。ブラケット内の「ディスク」ではなく「CD」の使用は、ボリューム中でのその番号を示す。(セット全体についての)「ディスク」番号は170のうちの165である。その使用は任意的である。
【0083】
〈パート2―トラック・タイトル〉
TLSシステムにおいて、ある例示的実施形態では、トラック・タイトルは一般にアルバム・タイトルについてのガイドラインに従うが、厳密に作品レベルでである。しかしながら、トラック・タイトルは通例、より多くの複雑なデータ・ストリング、区切られたパンクチュエーションおよび楽章データの追加された複雑さを含む。クロスオーバー、音楽ドキュメンタリーおよびオペラ・アルバムについてのトラック・タイトルはのちにさらに論じる。
【0084】
ある例示的実施形態では、トラック・タイトルは、ダッシュで分離された二つのセクション、作品タイトルおよび楽章タイトルに分割される。特定の作品の必須(m: mandatory)および任意的(o: optional)コンポーネントは次のような順序である。作曲家短縮名(m)に続いてコロン;正式な作品タイトルまたは音楽様式(m)に続いてコンマ;もしあれば楽器属性、それに続いてコンマ;調号(o)に続いてコンマ;作品番号(o)に続いてコンマ;カタログ・イニシャル(単数または複数)および番号(o)に続いてコンマ;もしあればニックネーム/別名(o)。
例:ドヴォルザーク:交響曲#9ホ短調,Op.95,B178,「新世界から」
TLSによって定義されるところの楽章(movement)とは、作品の最小の構成部分である。それは、ある実施形態によれば、ダッシュによって分離される。楽章レベルのコンポーネントはトラックまたは楽章番号、幕および場面番号、正式な文字標題、テンポ指定などを含む。
例:ドヴォルザーク:交響曲#9ホ短調,Op.95,B178,「新世界から」-
1.アレグロ
テンポ、文字標題、トラック番号、楽章番号およびその他の楽章レベルのコンポーネントのリスト化においては諸変形が許容されうる。データ・ストリングにおいて作品タイトルを楽章タイトルから分離するダッシュの後では、パンクチュエーションは区切りの目的を果たさず、その使用は製品に応じて変わりうる。以下の例において、三つどれも許容可能である。
例:グリーグ:ペールギュント組曲#1,Op.46-3.アニトラの踊り-テンポ・ディ・マズルカ
グリーグ:ペールギュント組曲#1,Op.46-アニトラの踊り-テンポ・ディ・マズルカ
グリーグ:ペールギュント組曲#1,Op.46-アニトラの踊り。
【0085】
楽章/トラック番号と作品番号:データ・ストリング中のダッシュの後では、実際のトラックの番号付けは二つの基準に基づくことになる。(1)データが作品の楽章番号を示す場合、数字が使用され、ピリオドがそれに続く。
例:ヴィヴァルディ:四季,Op.8/1,「春」-1.アレグロ
(2)データが一組の作品のうちのある区別される作品を示す場合、「#」が使用され、それにピリオドなしの数字が続く。
例:ショパン:エチュード,Op.10-#1ハ長調
作品の組の例はのちにさらに示す。トラック・タイトルは全体的な作品の言語を反映する。
例:Le Quattro Stagioni(四季)については、トラック・タイトルは:
ヴィヴァルディ:Le Quattro Stagioni,Op.8/1,「La Primavera」-1.アレグロ
であり、
例:アルバム・タイトルが四季であれば、トラック・タイトルは:
ヴィヴァルディ:四季,Op.8/1,「春」-1.アレグロ
となる。
【0086】
ある実施形態では、トラック・タイトルは常に、アルバムの実際のトラックに従う。異なる製品は同じ作品の異なるバージョンをフィーチャーするであろう。このことは、トラック・データ・ストリングにおいて反映されるべきである。
例:(製品A)ヴィヴァルディ:四季,Op.8/1,「春」-1.アレグロ(このトラックは「春」の第1楽章を含む)
例:(製品B)ヴィヴァルディ:四季,Op.8/1,「春」(このトラックは「春」の三つの楽章すべてを含む)。
【0087】
一組の作品の一部をなす作品は二つの仕方でリストできる:(1)その組を作品タイトルとし、構成要素の個々の作品を楽章とする、あるいは(2)構成要素の個々の作品を作品タイトルとする。
例(1):ショパン:エチュード,Op.10-#1ハ長調
例(2):ショパン:エチュード#1ハ長調,Op.10
その組が作品番号によって指定されるとき、変形は、(その組の中の)構成要素作品の番号を、その組の作品番号とともに、スラッシュで分離して含むであろう。
例:ショパン:エチュード,Op.10/1-ハ長調
作品番号が組ではなく構成要素作品に当てはまる場合には、作品番号は構成要素作品と一緒にデータ・ストリングの楽章セクションにおいてリストされる。
例:モーツァルト:教会ソナタ-#14ハ長調,K278。
【0088】
上に挙げた二つの基本的方法は、「文字」標題(たとえば音楽様式のような「一般的」タイトルに対していう)をもつ組に拡張される。
例(1):ドヴォルザーク:スラヴ舞曲-#1ト短調
例(2):ドヴォルザーク:スラヴ舞曲#1ト短調。
【0089】
包括的な組または「一般的」な音楽種別の一部である他の作品と同様、合唱作品および声楽曲はさまざまな仕方でリストされる。作品の文字標題セクションは、データ中でニックネームを構成するときには引用符で囲まれることを注意しておく。
例:バッハ(JS):カンタータ#211,BWV211,「おしゃべりはやめてお静かに」=
バッハ(JS):おしゃべりはやめてお静かに=
バッハ(JS):カンタータ#211
第一の例(上)では、「おしゃべりはやめてお静かに」が引用符で囲まれているが、これは正式な作品タイトルであるカンタータ#211の代わりとして使われているからである。第二の例では、引用符にはいっていないが、これは正式な作品タイトルとして使われているからである。第三の例では、交響曲、協奏曲などと同様に、「カンタータ」およびその番号が唯一の作品タイトルである。いずれの場合にも、製品それ自身の内部で一貫して方法(1)または(2)に従う限り、PIPが適用される。
【0090】
中世およびルネサンス期からの多くのより古い作品では、作曲家の名前は知られていない。このために、作曲家短縮名のところには、作曲家の名前の代わりに「Anon」(Anonymous[作者不詳])を使う(ピリオドなしでコロンが続く)。
例:Anon:女王の歓び。
【0091】
Tradの使用:作者不詳の作品が、一般に受け入れられている民間伝承(folk tradition)の一部である場合、作曲家短縮名のところには「Trad〔伝承〕」が使われる(ピリオドなしでコロンが続く)。
例:Trad:彼女は市を駆け抜けた(She Moved Through the Fair)。
【0092】
もとの作品が第二の作曲家によってトランスクリプションまたは編曲されているとき、もとの作曲家の短縮名がデータ・ストリング中で最初に挙げられ、スラッシュが続き、次いで第二の作曲家の短縮名がくる。
例:ベートーヴェン/リスト:交響曲#9
(これはベートーヴェンの第九交響曲のリストによるピアノ・トランスクリプションの一覧名である。)
例:ムソルグスキー/ラヴェル;展覧会の絵
これはムソルグスキーの展覧会の絵のラヴェルによる編曲の一覧名である。
【0093】
作品名の翻訳が含められうるのは、それを含めることで、DSLによって定義されるところにより不相応に長いデータ・ストリングが生じない限りにおいてである。翻訳は、トラック・タイトルに含められるときは、括弧で囲まれる。
例:ストラヴィンスキー:Le Sacre Du Printemps(春の祭典)。
【0094】
タイトルのシーケンス化:一次作品のタイトルは常にトラックの一覧名の前端において使用されるべきであり、帰属を示す語――「より」「の」――は削除される。
例:ウェーバー:摩弾の射手より序曲,J277=
ウェーバー:摩弾の射手,J277-序曲
(この規則はPIPのオーバーライドである。)
上記の場合、序曲はより長い作品の構成部分であり、したがってダッシュのあとに現れる。個別の楽曲である序曲および他の付随作品の場合、正式なタイトルが適用される。
例:ベートーヴェン:エグモント序曲,Op.84。
【0095】
一次作品タイトルに続いてサブタイトルが括弧に囲まれて含められてもよい。サブタイトルは作品のタイトルへの追加として定義される。サブタイトルを含めることは任意的である。
例:ウォルトン:ハムレット(大規模オーケストラのための9楽章のシェークスピア・シナリオ)。
【0096】
ニックネームまたは別名は、作品の一次タイトルに対する補足的タイトルとして定義され、引用符によって囲まれる。それを含めることは任意的である。
例:ベートーヴェン:交響曲第9番,「合唱」。
【0097】
帰属指示用サブタイトル:これは他の作曲家または作品を引用するサブタイトルである。帰属指示が正式タイトルの一部であれば、括弧で囲まれない。
例:ラフマニノフ:パガニーニの主題による変奏曲
帰属がタイトルの一部であるが追加として使用される場合には、括弧で囲まれる。
例:コシュキン:アッシャー・ワルツ(エドガー・アラン・ポーに基づく),Op.29。
【0098】
外来的/任意的データは、ストリングの他の部分が同じ情報を与えるのであれば削除されてもよい。
例:シューベルト:今こそ用心せよ,D76A(第1稿)
シューベルト:今こそ用心せよ,D76B(第2稿)
この場合、括弧内の表記は、同じ情報が作品番号の「A」および「B」によって与えられるので、削除してもよい。
【0099】
アルバムおよびトラックの作品タイトルにおいて、「組曲」は一次作品の一部として含められてもよい。組曲は普通、同じタイトルのもとの作品とは区別される作品(または諸セグメントの凝縮)だからである。
例:ストラヴィンスキー:火の鳥組曲
「巻(Book)」「部(Part)」「ボリューム(Volume)」(略Vol.)の使用は、TLS目的のためには、一次作品の「チャプター」――個々の楽章ではなく――と考えられ、一次作品のタイトルからコンマによって分離されてもよい。
例:バッハ(JS):平均律クラヴィーア曲集,第1巻。
【0100】
オペラおよびバレエのような(主として)劇場用作品では、特定の幕および場面が楽章の一部であり、データ・ストリングにおけるダッシュの後にリストされてもよい。場面(Scene)は「Sc.」と短縮される(Sc.)。
例:モーツァルト:コシ・ファン・トゥッテ,KV588-第1幕(Act 1):Sc.1-素晴らしいセレナーデ。
【0101】
〈作品番号ガイドライン〉
追加的な作品番号略記――Op. Posth(遺作)――にはピリオドを付けるべきではない。
例:メトナー:ピアノ五重奏ハ長調,Op. Posth-モルト・プラチード。
【0102】
二次的/三次的作品番号は含められない。
例:グリーグ:ペールギュント,Op55/5(Op.23/9)-山の魔王の娘の踊り=
グリーグ:ペールギュント,Op55/5-山の魔王の娘の踊り。
【0103】
「作品番号なし」の作品はピリオドなしでWoOと略記されてもよく(先頭大文字は適用されない)、出版のための作品番号が割り当てられていないすべての作曲家の作品に適用される。
【0104】
楽章作品番号は、一次作品または作品の組の中での楽章またはセクションに割り当てられている番号である。この場合、作品番号は楽章タイトルの一部として、データ・ストリング中のダッシュに続いて挙げられてもよい。
例:グリーグ:歌曲のピアノ・トランスクリプション#2,Op.52-ソルヴェーグの歌,Op.23/18。
【0105】
〈カタログ・ガイドライン〉
カタログ作成者のイニシャルは一般的に使用されるイニシャル付け体系に従ってもよい。たとえばビバルディによる作品の場合、カタログ・イニシャル「R」および「RV」は二つの別個のカタログ作成者を指し、したがって後者を「R」に短縮することはない。ケッヘル/モーツァルト・カタログの場合は逆で、「K」と「KV」(または「Kv」)は交換可能である。また、先頭大文字はカタログ作成者のイニシャルには適用されない――場合によっては(たとえば上例)、両方の文字が一般に大文字化されるが、他の場合には(グルックおよびC・P・E・バッハの作品についての「Wq」)二番目の文字は一般に小文字である。カタログ・イニシャルにはPIPが適用される。
【0106】
複数のカタログ番号を含めることはしない。その代わり、カタログ番号は一般に挙げられる最初のカタログ番号をデフォルトとする。
例:スカルラッティ(D):鍵盤楽器ソナタニ長調,K96/L465/P210-アレグリッシモ=
スカルラッティ(D):鍵盤楽器ソナタニ長調,K96-アレグリッシモ。
【0107】
カタログ・データへの追加が利用可能なときは含められてもよい。追加は先頭大文字であり、ピリオドは付けない。
例:ハイドン:ピアノ・ソナタ#18変ホ長調,Hob Deest 16-メヌエット
(「Deest」はもとの「Hob」カタログにその後追加された作品についての略号である。)
「Ahnhang」(追加または付録)はピリオドなしで「Ahn」と略記される。
【0108】
〈トラック・タイトルの詳細例〉
TLS標準をトラック・タイトルに適用すると、アントニン・ドヴォルザークの第九交響曲の第一楽章の完全な一覧名(必須および任意的データを含む)は次のようになる
ドヴォルザーク:交響曲#9ホ短調,Op.95,B178,「新世界から」-1.
アダージョ。
【0109】
上記の例示的トラック・タイトルは以下の構成要素からなる。
【0110】
作曲家の短縮名(コロンが続く):ドヴォルザーク:
作曲家の短縮名はその姓を含み、姓が他の作曲家と共通である場合には括弧内に最初のイニシャルまたは他の修飾詞を付ける。すなわち、バッハ(JS)またはシュトラウスJr.(J)。
【0111】
作品タイトル:作品の名前。これはしばしば音楽様式と等価である(この場合のように作品タイトルの一部として調性が含められる時を除いてコンマが続く):交響曲#9。
注:文字/標題の作品、すなわち、ストラヴィンスキー:火の鳥、は同じシーケンスに従う。タイトルは引用符で囲まない。
【0112】
調号:含められるときは、短調(minor)および変(flat)/嬰(sharp)の指定はスペルアウトされ、大文字化される(コンマが続く)。「ホ短調(In E Minor)」。
注:調号のあとの「長調」の使用は冗長であり、使用されない。調号追加物、嬰および変はそれらの記号の代わりに使用される。
注:「長調(major)」および「短調(minor)」の非英語使用(たとえば「dur」、「moll」)は製品または公式に認定された提出物によって指定されている場合にのみ使用され、タイトル自身における言語使用と一貫していなければならない。
【0113】
作品番号:出版された作品の番号。略号およびアラビア数字を使う(コンマが続く)。「Op.95,」
注:同じ作品番号内に整理された一組の作品の場合、作品番号は、作品番号自身と、普通のスラッシュで分離された、その一部である区別される作品/楽章等を含む。Op.8/1。
【0114】
カタログ番号:作品番号に続いて作品の公式カタログ番号がくる(作曲家の作品群が一般に受け容れられている学者によって編纂されている場合)。(そして、「ニックネーム」タイトルもある場合にはコンマが続く。)「B178,」
注:カタログ・イニシャル(単数または複数)のあとにはピリオドはない。
【0115】
ニックネーム/別名:タイトル・ニックネームはカタログ番号の後に挙げられ、引用符で囲まれる:「新世界から」("From The New World")。
【0116】
ダッシュ:ダッシュは正式な作品タイトル(および付随するデータ)を楽章データ(もしあれば)から分離する。
【0117】
楽章番号:トラック/楽章番号の使用は、諸楽章タイトルにおいて繰り返し現れる一般的なテンポ、ダンスまたは他の単語/術語、すなわちアレグロ、アダージョなどをフィーチャーする作品においては任意的である。これは、主としてバロックおよび古典派時代からの多くの協奏曲、交響曲などを含む。これは、特定の楽章文字標題が繰り返して使用される宗教作品にも当てはまる。楽章番号はアラビア数字で表示されねばならない(ピリオドが続く)。
例:ドヴォルザーク:交響曲#9ホ短調,Op.95,B178,「新世界から」-1.
注:弁別的な文字標題をもつ楽章をもつ作品については番号は使用されない。すなわち、「ムソルグスキー:展覧会の絵-リモージュの市場」や「ベルリオーズ:幻想交響曲,Op.14-サバトの夜の夢」。しかしながら、PIPが適用される場合にはトラック番号は許される。
【0118】
楽章タイトル:通例は速度表示:
例:ドヴォルザーク:交響曲#9ホ短調,Op.95,B178,「新世界から」-1.アダージョ。
【0119】
〈パート3―アーチスト名〉
すべてのアーチスト・フィールドにおける「アーチスト」は、作曲家ではなく演奏するアーチストとして定義される。演奏者(単数または複数)のフルネームが常に挙げられる。クラシック音楽において「アーチスト」は多くの形を取りうるので、TLS標準はそれを6つの基本カテゴリーに分割する。
【0120】
1.ソリスト:単独で演奏する個別の楽器奏者/声楽家。
例:ヨーヨー・マ
・伴奏者(単数または複数)をリストに挙げることは、その製品が主としてソロ演奏者に帰属されるときは、任意的である。伴奏者はコンマによって分離される。
例:アンネ・ゾフィー・ムター または
アンネ=ゾフィー・ムター,ランバート・オーキス。
【0121】
2.複数ソリスト:製品が(名前のない)アンサンブルとしてまたはさまざまな構成で演奏する二人以上のアーチストをフィーチャーするとき、それらのアーチストは製品上での順番(製品カバー(cover)上で左から右または上から下)にリストされる。アーチストはコンマによって分離され、最後のソリストは「&」ではなくコンマによって分離される。
例:ムスティスラフ・ロストポーヴィッチ,マルタ・アルゲリッチ
三人以上のソリストの場合、「Etc.(他)」の使用は任意的である。
例:ムスティスラフ・ロストポーヴィッチ,マルタ・アルゲリッチ他
・指揮者とアンサンブルはソリストと一緒にリストされるときには一個の演奏者として数えられ、ストリング中でソリストの後にくる。
例:ムスティスラフ・ロストポーヴィッチ,マルタ・アルゲリッチ,サイモン・ラトル;ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。
【0122】
3.アンサンブル:これは正式な名称のもとに演奏する音楽家のグループとして定義される。
例:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
東京クヮルテット
・芸術上の「チーム」をなす複数の個人については「&」を使う。
例:カティア&マリエル・ラベック。
【0123】
4.指揮者;アンサンブル:指揮者(セミコロンによって分離される)はアンサンブルの前にリストされるべきである。
例:レナード・バーンスタイン;ニューヨーク・フィルハーモーニー管弦楽団。
【0124】
5.ソリストおよび指揮者;アンサンブル:ソリスト(コンマによって分離される)は指揮者およびアンサンブルの前にリストされるべきである。
例:サイモン・スタンデイジ,トレヴァー・ピノック;イングリッシュ・コンサート\
フィーチャーされる声楽家(単数または複数)およびナレーター(単数または複数)は器楽ソリストと同じに扱ってよい。
例:ドーン・アップショー,マイケル・ティルソン・トーマス;サンフランシスコ交響楽団。
【0125】
6.指揮者;アンサンブルおよび合唱セッティングにおけるフィーチャーされる声楽家および声楽アンサンブル:声楽家(単数または複数)は指揮者の前に、合唱グループ(単数または複数)はアンサンブルの後にリストされる。
例:ジュリア・ハマリ,カール・ベーム;ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団&合唱団。
【0126】
コンピレーション発売に関連するアルバム・レベルのアーチスト名は以下のガイドラインに従うべきである。ソリスト、指揮者/アンサンブルおよび/または他のアーチストの複数の組み合わせがある場合、アルバム・アーチストは「さまざまなアーチスト(Various Artists)」と指定され、個々のアーチスト名(単数または複数)はトラック・レベルでリストされる。同じアンサンブルと共演する複数の指揮者がいる場合、アンサンブルの名前がアルバム・アーチストとなり、個々の指揮者の名前は(アンサンブルと一緒に)トラック・レベルでリストされる。同じ指揮者と共演する複数のアンサンブルがある場合には、指揮者の名前がアルバム・アーチストとなり、その指揮者の名前は(個々のアンサンブルと一緒に)トラック・レベルでリストされる。
【0127】
〈パート4―他のデータ(該当する場合)〉
アルバム・タイトル/アーチスト/トラックのフィールド内のデータ(これについては上記した)以外のデータは、クラシック音楽に関係する独自の個別的標準に従ってもよい。
・データ言語:これはアルバムのライナーノーツが書かれている言語である。多くのクラシックのアルバムが複数言語のノーツをもつので、製品に英語が含まれているときはいつでも英語が使用される。個別言語の(language-specific)非米国アルバムについては、使用されている言語をリストする。
・ディスク番号:製品が単一CD発売物である場合、「1」のうちの「1」と指定される。セットの一部である場合には、「5」枚中の「1」、「5」枚中の「2」などとなる。
・コンピレーション:アルバムがトラック・レベルでさまざまなアーチストをフィーチャーする場合、および/またはトラック・レベルでさまざまなアーチストと共演するフィーチャーされるソリストにクレジットされる場合、そのアルバムはコンピレーションである。
・レーベル・フィールド:レーベルがアルバム・カバー(cover)上で示されているとき、より大きな配給業者ではなく、そのレーベルが、その製品を発売している特定のレコーディング・レーベルである。
例:ユニバーサルではなくドイツ・グラモフォンがリストされるレーベルとなる。
・一次ジャンル/二次ジャンル:一般的なガイドラインは次のとおり:
−作曲家の一次ジャンルはその音楽上の時代、すなわち中世、ルネサンス、バロック、古典派、ロマン派、印象派、現代(ほぼ1900〜1950年)および同時代(1950年〜今)。二次ジャンルは空白のままにされる。
−演奏アーチストの一次ジャンルはその主要な楽器であるべきである。二次ジャンルは、該当するなら、時代/様式であることができる。すなわち「古楽」。
例:J・S・バッハの一次ジャンルはバロック時代となる。
例:ピアニストのグレン・グールドの一次ジャンルは「ピアノ」となり、二次ジャンルは製品上で彼が演奏している特定の時期に関係することになる。二つ以上の時期が演奏されている場合には二次ジャンルはリストしない。
【0128】
〈パート5―オペラ〉
オペラは通例、クラシック音楽の一部と考えられるものの、実際には独自の組のデータ要求をもつ別個のジャンルである。その多くは上記のTLS標準によって満たされ、TLS標準が当てはまるときにはそれらの標準に従うべきである。以下はいくつかの例示的な例外である。
【0129】
アルバム・タイトルは作曲家の短縮名(コロンが続く)およびオペラの文字標題と一緒に、追加的な作品番号やカタログ番号はなしで、含められてもよい。
例:プッチーニ:トスカ。
【0130】
CDが複数ディスク・セットの一部である場合には、ディスク番号がブラケット内に含められてもよい。
例:ワーグナー:トリスタンとイゾルデ[ディスク2]。
【0131】
アルバム・アーチスト・フィールドは、指揮者およびアンサンブルと並んで二人の主要声楽家を含んでもよい。「他(Etc.)」の使用はさらなるキャストを示す。
例:マリア・カラス,レナート・チオーニ,他,カルロ・フェリーチェ・チラーリオ;ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団。
【0132】
トラック・タイトル(ダッシュの前)は作曲家の短縮名およびオペラ・タイトルを含みうる。作品番号とカタログ・データは任意的である。
例:モーツァルト:コシ・ファン・トゥッテ,KV588。
【0133】
オペラは作曲家にクレジットされ、台本作家の名前は含まないが、作曲家/作詞家のチームの場合を例外とする。
例:ギルバート&サリヴァン:ペンザンスの海賊。
【0134】
ダッシュに続く幕および場面データは、製品または提出物に応じてさまざまでありうる。幕および場の番号からアリア、レチタティーヴォ等の指定、場面からのテキスト抜粋、歌われている役の名および幕と幕の間の器楽アンサンブル/セクションについての明文化までありうる。
例:モーツァルト:コシ・ファン・トゥッテ,KV588-Act1:Sc.1-素晴らしいセレナーデ
モーツァルト:コシ・ファン・トゥッテ,KV588-Act1:三重唱-素晴らしいセレナーデ
モーツァルト:コシ・ファン・トゥッテ,KV588-素晴らしいセレナーデ。
【0135】
一般にオペラCDデータについてはアルバム・アーチストで十分であるが、TLSは提出者に、各トラックでのフィーチャーされるソリストを含めて、指揮者およびアンサンブルと一緒にトラックに表示されるようにする機能を許容する。たとえば、マリア・カラスをタイトル・ロールに、レナート・チオーニをカヴァラドッシとしてフィーチャーする「トスカ」のあるバージョンでは、台本はこの二重唱においてトスカとカヴァラドッシをフィーチャーされるキャラクターとしてリストし、このトラックについてのトラック・レベルのアーチストは次のように見えてもよい。
例:マリア・カラス,レナート・チオーニ,カルロ・フェリーチェ・チラーリオ;ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団。
【0136】
ソリストのない器楽および/または合唱のパッセージでは、指揮者およびアンサンブルがトラック・アーチストとなる(他の指定がされていなければ)。
例:カルロ・フェリーチェ・チラーリオ;ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団。
【0137】
〈パート6―音楽教育/ドキュメンタリー・アルバム〉
クラシック音楽メタデータのコンテキストでは、これらは、音楽演奏ならびにナレーター(単数または複数)および/または俳優(単数または複数)をフィーチャーする別個のトラックをもつ、音楽関係のCDである。これらは、別個の標準のセットをもつオーディオ・ブックと混同されるべきではない。一般にはTLS標準が当てはまる。しかしながら、三つの基本的フィールドにおける例外について下記に示す。
【0138】
CDの正式なタイトルに最初のサブセクション(もしあれば)をダッシュで分離して付ける。
例:生涯と作品-リスト。
【0139】
タイトルが作曲家および作品(単数または複数)を含む場合、作曲家の短縮名のあとにコロンが続く。
例:オペラ解説-モーツァルト:コシ・ファン・トゥッテ
これは作曲家以外にも当てはまる。
例:芸術と音楽-ダヴィンチ:その時代の音楽。
【0140】
演奏者の名前の後にはダッシュが続く。
例:ナイジェル・ケネディ-バイオリンの芸術。
【0141】
アルバム・アーチストはテキスト/ダイアログの作者であってもよい。
例:ジェレミー・シープマン
指揮者、演奏者および/またはアンサンブルも製品の一部としてフィーチャーされる場合には、前記作者の名前は最初にソリスト(単数または複数)としてリストされ、その後にコンマが続く。
例:ジェレミー・シープマン,ヘルベルト・フォン・カラヤン;ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
作者と俳優(単数または複数)がクレジットされる場合、作者の名前が最初にリストされ、それからコンマで区切られて(複数のソリスト/アンサンブルの場合と同様)俳優がくる。
例:ジェレミー・シープマン,マルコム・シンクレア
トラック・タイトルは作者の名前で始まり、その後にコロンおよびトラック・タイトルが続く。
例:ジェレミー・シープマン:コシ・ファン・トゥッテ入門。
【0142】
音楽セレクションが含まれる場合(付随するナレーションなしで)、そのトラックは所与の作品についてのTLSトラックとしてリストされる。
例:モーツァルト:コシ・ファン・トゥッテ,K588-3.Act1:Sc.1-剣を抜け。
【0143】
トラック・アーチストは作者および/またはナレーターであってもよい。
例:ジェレミー・シープマン。
【0144】
トラックがテキスト中にちりばめられているナレーションおよびダイアログを含む場合、作者/ナレーターが最初にリストされ、その後に役者(単数または複数)が続く。
例:ジェレミー・シープマン,マルコム・シンクレア。
【0145】
音楽トラックが含まれる場合、アーチストは音楽演奏者(単数または複数)である。
例:ヘルベルト・フォン・カラヤン;ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。
【0146】
〈パート7―クロスオーバー・アルバム〉
「クロスオーバー」・アルバムとは、TLS標準の目的のためには、一般に受け容れられている「クラシック」のアーチスト(単数または複数)がクラシック以外の音楽を演奏することおよび/または非クラシック系のアーチスト(単数または複数)がクラシック音楽を演奏することならびに場合によっては両者の組み合わせ、たとえばスティングがルチアーノ・パヴァロッティと二重唱を歌うことをフィーチャーする任意の製品として定義される。ある例示的実施形態では、これらの基準は、映画音楽および舞台ミュージカルは適用されない。
【0147】
クロスオーバー・アルバムの正式な文字標題は文字通りにリストされる。
例:シャルロット・チャーチ-エンチャントメント
例:パヴァロッティ&フレンズ。
【0148】
アルバムが「ポップ」作曲家/アーチストによる「クラシック」作品をフィーチャーするときは、リストはTLSフォーマットされたクラシック・アルバムと同じである。
例:コステロ:イル・ソーニョ
「クラシック」の作曲家が「ポップ」のコンテキストで(ポップ・アーチストと一緒にまたはポップ・アーチストなしで)活動するときは、リストはやはりTLSフォーマットである。
例:グラス:ソングズ・フロム・リキッド・デイズ
クラシックの形式をポップのセッティングに適応させる(たとえばフーのロック・オペラ「トミー」)非クラシックの作曲家/アーチストはポップ・フォーマットでリストされる。
例(アルバム・タイトル):トミー
例(アルバム・アーチスト):フー。
【0149】
メディア・コンテンツ・メタデータをなすデータ・ストリングにおけるデリミタの自由な――定式化されているとしても――使用は、データ・ストリングとポップ音楽フォーマットを用いる他の製品との相互作用を容易にするコンテキストにおいて有利でありうる。たとえば、デリミタの自由だが定式化された使用は、個々のデータ・コンポーネントをメディア・プレーヤーの表示に組み込むための規格化された諸フィールドに分離するよう、データ・ストリングの粒度を拡張することに係る。たとえばクラシック音楽の場合、デリミタの使用は「演奏者」データがソリスト、指揮者、アンサンブル、合唱グループなどによって描かれることを許容しうる。ある例示的実施形態では、TLSシステムは、コロンが常にアンサンブル(単数または複数)のデータの前に来て、セミコロンが常に指揮者のデータの前に来て、コンマ(単数または複数)がソリストおよびアンサンブルを分離するというように構成されうる。
【0150】
映画(DVDに記憶されているコンテンツ)の場合、デリミタの使用は、映画タイトルからキャスト(個々に)、監督、脚本家、公開年などに至るまでさまざまなデータ・コンポーネントを含むことのできる表示を許容しうる。
【0151】
デジタル・コンテンツのための統一されたフォーマットを提供する方法およびシステムが主にオーディオ・コンテンツを参照して記述されているが、本稿に記載される技法は他の型のデジタル・コンテンツにも、たとえばDVD、ブルーレイおよび高精細度(HD)DVDなどの形のデジタル・ビデオ・コンテンツにも有利に利用されうる。一つの例が図6に示される。
【0152】
図1のクライアント110に関連するユーザーにとって利用可能でありうるさまざまなメディア・ソースが図12に示され、また下記の表1にリストされている。
【0153】
【表1】

図12に示されるように、環境1200のコンテキストにおいて、ソース・コンテンツはTLSシステム1210においてハードディスク・ドライブから、CDから、衛星通信を介して、ラジオ通信を介してまたローカルおよびオンライン・データベースから受信されうる。TLSシステム1210は、メディア・プレーヤー1220にコンテンツ・メタデータを統一されたフォーマットで提供するためにフォーマット整形動作を実行しうる。
【0154】
図13は、本稿で論じられる方法の一つまたは複数を機械に実行させるための命令の組が実行されうる、コンピュータ・システム1300の例示的な形の機械の図的な表現を示している。代替的な諸実施形態では、前記機械はスタンドアローン装置として動作し、あるいは他の機械に接続され(ネットワーク化され)てもよい。ネットワーク化した展開では、前記機械は、サーバー・クライアント・ネットワーク環境においてサーバーまたはクライアント機械の資格で、あるいはピアツーピア(または分散)ネットワーク環境においてピア機械として動作してもよい。前記機械はパーソナル・コンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ウェブ機器、ネットワーク・ルータ、スイッチもしくはブリッジまたはその機械が取るべき行動を指定する(逐次的またはその他の)命令の組を実行する機能をもつ任意の機械でありうる。さらに、単一の機械しか図示されていないが、用語「機械」は、本稿で論じられる方法の任意の一つまたは複数を実行するために個別的にまたは合同して命令の組(または複数の組)を実行する機械の任意の集まりをも含むものと解釈されるものとする。
【0155】
例示的なコンピュータ・システム1300は、バス1308を介して互いに通信するプロセッサ1302(たとえば中央処理ユニット(CPU)、グラフィック処理ユニット(GPU)または両方)、メイン・メモリ1304および静的メモリ1306を含む。コンピュータ・システム1300はさらに、ビデオ表示ユニット1310(たとえば液晶ディスプレイ(LCD)または陰極線管(CRT))を含んでいてもよい。コンピュータ・システム1300はまた、英数字入力デバイス1312(たとえばキーボード)、ユーザー・インターフェース(UI)・ナビゲーション・デバイス1314(たとえばカーソル制御装置)、ディスク・ドライブ・ユニット1316、信号生成装置1318(たとえばスピーカー)およびネットワーク・インターフェース・デバイス1320をも含む。
【0156】
ディスク・ドライブ・ユニット1316は、本稿に記載される方法または機能の任意の一つまたは複数を具現するまたはそれによって利用される命令およびデータ構造の一つまたは複数の組(たとえばソフトウェア1324)が記憶されている機械可読媒体1322を含む。ソフトウェア1324はまた、コンピュータ・システム1300によるその実行の間、完全にまたは少なくとも部分的に、メイン・メモリ1304内および/またはプロセッサ1302内にあってもよく、該メイン・メモリ1304およびプロセッサ1302も機械可読媒体をなす。
【0157】
ソフトウェア1324はさらに、ネットワーク1326を通じてネットワーク・インターフェース・デバイス1320を介して、いくつものよく知られた転送プロトコル(たとえば、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP))の任意のものを使って、送信または受信されてもよい。
【0158】
機械可読媒体1322は例示的な実施形態において単一の媒体として示されているが、用語「機械可読媒体」は、命令の前記一つまたは複数の組を記憶する単一の媒体または複数の媒体(たとえば中央集中されたまたは分散されたデータベースおよび/または関連するキャッシュおよびサーバー)を含むものと解釈すべきである。用語「機械可読媒体」はまた、機械による実行のための命令の組を記憶、エンコードまたは担持することができ、機械に本発明の実施形態の方法の任意の一つまたは複数を実行させ、そのような命令の組によって利用されるまたはそのような命令の組に関連付けられたデータ構造を記憶、エンコードまたは担持することができる、いかなる媒体をも含むものと解釈されるものとする。したがって、用語「機械可読媒体」は、これに限定されないが、固体メモリ、光学式および磁気式媒体ならびに搬送波信号を含むものと解釈されるべきである。そのような媒体はまた、限定されることなく、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、フラッシュメモリ・カード、デジタル・ビデオ・ディスク、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)などをも含みうる。
【0159】
本稿に記載された実施形態は、コンピュータ上にインストールされたソフトウェアを有する動作環境において、ハードウェアにおいて、あるいはソフトウェアとハードウェアの組み合わせにおいて実装されうる。
【0160】
このように、TLSの例示的な形で実装されうるデジタル・コンテンツ・メタデータのための統一フォーマットを提供する方法およびシステムについて記載してきた。このソリューションの諸実施形態は、基本的な購入点として(as the basic point-of-purchase)、区別される製品としてのアルバムから個々のトラックへのシフトを受け容れるために利用されうる。TLSを使って、クラシックのトラック・データは一意的な、全部を含んだアルバムの一部としてのトラックではなく、マーケティング可能なデータ・コンポーネントとして使用されうる。個別的な例示的実施形態を参照して諸実施形態が記載されてきたが、本発明の主題の広義の精神および範囲から外れることなく、それらの実施形態にさまざまな修正および変更がなしうることは明白であろう。したがって、明細書および図面は、制約する意味ではなく例示的な意味で見なされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディア・コンテンツに関連付けられたソース・データを取得する通信モジュールと;
前記ソース・データを使って前記メディア・コンテンツを識別するコンテンツ識別モジュールと;
前記識別されたコンテンツに関連付けられたソース・メタデータを取得する抽出器と;
前記取得されたソース・メタデータを、ポピュラー音楽に関連するフォーマットを使ってフォーマット整形する変換器とを有する、
システム。
【請求項2】
前記フォーマット整形されたメタデータに基づいてパッケージングされたメタデータを生成するパッケージング・モジュールを有する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記パッケージングされたメタデータをレンダリングするレンダラーを有する、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記ポピュラー音楽に関連付けられたフォーマットが、アルバム・フィールド、トラック・フィールドおよびアーチスト・フィールドを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記メディア・コンテンツがオーディオ・コンテンツである、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記メディア・コンテンツがクラシック音楽に関連付けられ;
前記ソース・メタデータがアルバム・データ、作曲家データ、音楽作品データ、楽章データ、指揮者データおよびアンサンブル・データを含む、
請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記変換器が:
アルバム・フィールドに作曲家データおよび作品データを過剰ロードし;
トラック・フィールドに作曲家データ、作品データおよび楽章データを過剰ロードし;
アーチスト・フィールドに指揮者データおよびアンサンブル・データを過剰ロードする、
請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記メディア・コンテンツがオペラに関連する、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記メディア・コンテンツがジャズ音楽に関連する、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
メディア・コンテンツに関連付けられたソース・データを取得する段階と;
前記ソース・データを使って前記メディア・コンテンツを識別する段階と;
前記識別されたコンテンツに関連付けられたソース・メタデータを取得する段階と;
前記取得されたソース・メタデータを、ポピュラー音楽に関連するフォーマットを使ってフォーマット整形する段階とを有する、
方法。
【請求項11】
前記フォーマット整形されたメタデータに基づいてパッケージングされたメタデータを生成する段階を有する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記パッケージングされたメタデータをレンダリングする段階を有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ポピュラー音楽に関連付けられたフォーマットが、アルバム・フィールド、トラック・フィールドおよびアーチスト・フィールドを含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記メディア・コンテンツがオーディオ・コンテンツである、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記メディア・コンテンツがクラシック音楽に関連付けられ;
前記ソース・メタデータがアルバム・データ、作曲家データ、音楽作品データ、楽章データ、指揮者データおよびアンサンブル・データを含む、
請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記取得されたソース・メタデータをフォーマット整形する前記段階が:
アルバム・フィールドに作曲家データおよび作品データを過剰ロードし;
トラック・フィールドに作曲家データ、作品データおよび楽章データを過剰ロードし;
アーチスト・フィールドに指揮者データおよびアンサンブル・データを過剰ロードする、
請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記メディア・コンテンツがミュージカルに関連する、請求項10記載の方法。
【請求項18】
前記メディア・コンテンツに関連付けられた前記ソース・データがデジタル・ビデオ・ディスク(DVD)に関連付けられており;
前記ソース・メタデータがディスク・タイトル、チャプター・タイトル、監督データおよびキャスト・データを含む、
請求項10記載の方法。
【請求項19】
前記取得されたソース・メタデータをフォーマット整形する前記段階が:
アルバム・フィールドにディスク・タイトルを過剰ロードし;
トラック・フィールドにディスク・タイトルおよびチャプター・タイトルを過剰ロードし;
アーチスト・フィールドに監督データおよびキャスト・データを過剰ロードする、
請求項18記載の方法。
【請求項20】
命令データを有する機械可読媒体であって、前記命令データは機械に:
メディア・コンテンツに関連付けられたソース・データを取得する段階と;
前記ソース・データを使って前記メディア・コンテンツを識別する段階と;
前記識別されたコンテンツに関連付けられたソース・メタデータを取得する段階と;
前記取得されたソース・メタデータを、ポピュラー音楽に関連するフォーマットを使ってフォーマット整形する段階とを実行させるためのものである、
機械可読媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−515975(P2010−515975A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544973(P2009−544973)
【出願日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/050130
【国際公開番号】WO2008/086104
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(501112323)グレースノート インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】