説明

デジタル・ビデオを処理するための方法及びシステム

デジタル・ビデオを処理するための方法及びシステム。本発明を使用すれば、コンピュータ・ネットワークを通して送出されるデジタル・ビデオの、早送り、巻戻し、一時停止、再生再開を行うことができる。本発明の種々の実施形態の場合には、情報が低減されたフレーム(例えば、P−フレーム及びB−フレームなど)はスキップされ、完全なフレームのサンプル(例えば、I−フレームなど)が送信され、遅れ時間を補償して一時停止/再生再開機能を強化するために、遅れの予測が行われる。本発明は、低帯域幅環境でデジタル・ビデオを送出するために使用することができる。さらに、本発明は、全フレーム及び情報が低減されたフレームが混在する任意のビデオ規格と一緒に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、概して、デジタル・ビデオに関し、特に、デジタル・ビデオの再生の早送り、巻戻し、又は再生の再開のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 一連のユビキタスなMPEG(Moving Pictures Expert Group)規格を含む現在のデジタル・ビデオ規格は、多数の圧縮技術を使用している。例えば、MPEGビデオの場合には、実際には、少数のフレームしか完全なスタンドアロンピクチャを含んでいない。このようなフレームは、「イントラフレーム」又は「I−フレーム」と呼ばれる。残りのフレームは、完全な画像は、I−フレームを含む他のフレームを参照することによってだけ構成することができる情報が低減されたセットを含む。これらの情報が低減されたフレームは、「予測フレーム」又はP−フレーム及び「双方向フレーム」又はB−フレームと呼ばれる。MPEGビデオ・ストリームは、多くの場合、多数のP−フレーム及びB−フレームにより相互に分離している幾つかのI−フレームを含む。P−フレーム及びB−フレームは、それら自身では、完全な画像を画定することはできないが、これらのフレームは、MPEGプレーヤが、一連のアルゴリズムを使用し、I−フレームを参照することにより、完全な画像を再構成することができる十分な情報を含んでいる。
【0003】
[0003] MPEGビデオを早送り又は巻き戻すために、MPEGプレーヤは、ビデオのフレームのうちの幾つかを処理するだけである。通常、これらのフレームは、I−フレーム及びB−フレームである。通常の状況では、この方法を使用することができる。
しかし、ネットワークを通してフレームを送信しようとしている場合のように、帯域幅が最優先課題であり、そのためフレームの数をさらに低減しなければならない幾つかの状況がある。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 上記のように、本発明は、ビデオ・データを処理するための方法を提供する。本発明のある実施形態の場合には、この方法は、デジタル記憶装置(ハード・ドライブ、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)プレーヤ、又はフラッシュ・メモリ装置であってもよい)からビデオ・データを読み出すステップと、このビデオ・データを、それぞれが画像全体を表す第1の複数の画像フレーム、及びそれぞれが画像全体より少ないデータを表す第2の複数の画像フレームを含むフォーマットに変換するステップとを含む。ビデオ・データ(早送り又は巻戻しコマンドなど)を走査するようにとのコマンドを受信した場合には、第1の複数の画像フレームのすべてよりは少ないデータを含んでいるが、第2の複数の画像フレームを全然含んでいないデータのストリームが送信される。一実施形態の場合には、第1の複数の各フレームは、I−フレームであり、第2の複数の各フレームは、P−フレーム又はB−フレームである。
【0005】
[0005] この方法は、さらに、ビデオ・データを、第1の複数の画像フレーム及び第2の複数の画像フレームの両方を含むビット・ストリームに変換するステップと、第2の複数の画像フレームのすべて及び第1の複数の画像フレームのうちの少なくとも幾つかをスキップするステップと、変更したビット・ストリーム内に含めるために、第1の複数の画像フレームのスキップしなかった画像フレームを選択するステップとを含むことができる。
【0006】
[0006] 本発明の他の実施形態の場合には、コンピュータ・ネットワークと通信可能にリンクしているビデオ・ディスプレイ・ユニットは、ユーザから巻戻しコマンドを受信し、巻戻しコマンドを送信する。コンピュータ・ネットワークと通信可能にリンクしているビデオ・サーバは、ビデオをそれぞれが画像全体(例えば、I−フレームなど)を表す第1の複数の画像フレーム、及びそれぞれが画像全体(例えば、P−、又はB−フレームなど)より少ないデータを表す第2の複数の画像フレームを含むフォーマットに変換する。ビデオ・サーバは、巻戻しコマンドを受信し、巻戻しコマンドを受信した場合にビデオが再生モードであった場合には、第1の複数の画像フレームのすべてを逆の順序でビデオ・ディスプレイ・ユニットに送信する。ビデオ・サーバが巻戻しコマンドを受信した場合に、ビデオが巻戻しモードであった場合には、ビデオ・サーバは、第1の複数の画像フレームのすべてより少ない画像フレームを、逆の順序でビデオ・ディスプレイ・ユニットに送信する。ビデオ・サーバは、また、何らかの重複があるか否かを判定するために各画像フレームを判定することができ、これらの重複しているものを送信しない。
【0007】
[0007] さらに他の実施形態の場合には、ビデオ・サーバは、ビデオをマルチモードの早送り又は巻戻しモードにすることができる。少なくとも1つの早送りモード及び少なくとも1つの巻戻しモードの場合には、第1の複数の画像フレーム(例えば、すべてのI−フレームなど)のすべてが、ビデオ・ディスプレイ・ユニットに送信されるが、第2の複数の画像フレーム(例えば、P−又はB−フレームなど)は、いずれもビデオ・ディスプレイ・ユニットに送信されない。もう1つの早送りモード又は巻戻しモードの場合には、第1の複数の画像フレームのすべてよりは少ないデータが送信される。
【0008】
[0008] さらに他の実施形態の場合には、ビデオ・サーバは、早送りモード又は巻戻しモードから再生モードに切り替えることができ、そうしながら、コマンドを送信しているユーザと、ビデオ・サーバにより処理されているコマンドとの間の遅れ時間を補償することができる。この補償は、(早送りから再生に切り替える場合には)再生を再開する前にビデオを若干巻き戻すことにより、(巻戻しから再生に切り替える場合には)、再生を再開する前にビデオを若干先送りすることにより行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】[0009] 本発明のある実施形態により構成したビデオ・サーバのブロック図である。
【図2】[0010] 図1のビデオ・サーバがノードである、本発明のある実施形態によるコンピュータ・ネットワークのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0011] 本発明は、概して、デジタル・ビデオを処理するための方法及びシステムに関し、特に、コンピュータ・ネットワークを通して送出されるデジタル・ビデオの早送り、巻戻し及び再生の再開に関する。本発明の種々の実施形態の場合には、情報が低減されたフレーム(例えば、P−フレーム及びB−フレームなど)はスキップされ、完全なフレームのサンプル(例えば、I−フレームなど)が送信され、遅れ時間を補償して一時停止/再生再開機能を強化するために、遅延の予測が行われる。本発明は、低帯域幅環境でデジタル・ビデオを送出するために使用することができる。さらに、本発明は、完全なフレーム及び情報が低減されたフレームが混在している任意のビデオ規格と一緒に使用することができる。
【0011】
[0012] ここで、ジェット旅客機内で使用する飛行中のエンタテイメント・システムを参照しながら、本発明のある実施形態について説明する。図1を参照すると、全体を参照番号10で表すビデオ・サーバは、通信可能にコンピュータ・ネットワークとリンクしている。ビデオ・サーバ10は、プロセッサ11と、プロセッサ11により制御されるデジタル記憶装置12と、プロセッサ11がアクセスすることができるメモリ16とを含む。プロセッサ11は、ビデオ・プログラム18を実行する。デジタル記憶装置12の実行可能な実施態様としては、ハード・ドライブ、DVDプレーヤ及びフラッシュ・メモリ装置等がある。プロセッサ11及びデジタル記憶装置12の制御下で、符号化されたビデオ・データのブロック14(例えば、512キロバイト・ブロックなど)が、デジタル記憶装置12からメモリ16内に読み出される。次に、ブロック14は、ビデオ・プログラム18により処理され、この例の場合には、MPEGビット・ストリームであるビット・ストリーム20に変換される。ビット・ストリーム20は、図のシーケンス(左からスタートする)内の一連のフレームを含む。一連のフレームは、第1のI−フレーム100、第2のI−フレーム102、第3のI−フレーム104、第4のI−フレーム106、第5のI−フレーム108を含む。種々のI−フレームの間には、B−フレーム110及びP−フレーム112が位置する。B−フレーム及びP−フレームの数は変えることができ、I−フレームの数も変えることができることを理解されたい。また、図1のI−フレーム、B−フレーム及びP−フレームは単に例示としてのものであること、また実際には、ビット・ストリーム20内には多数のフレームを含むことができることを理解されたい。
【0012】
[0013] ビデオ・プログラム18は、ネットワークから入ってくるビデオ・コマンドを受信する。通常の速度での「再生」のようなある種のコマンドに応じて、ビデオ・プログラムは、ビット・ストリーム20をネットワークに送信する。「巻戻し」及び「早送り」コマンドのような他のコマンドに応じて、ビデオ・プログラム18は、変更したビット・ストリーム22を生成するために、ビット・ストリーム20を処理する。次に、ビット・ストリーム20又は変更したビット・ストリーム22は、パケット化され、ネットワークに送信される。一実施形態の場合には、ビット・ストリーム20又は変更したビット・ストリーム22は、リアルタイム・トランスポート・プロトコル(RTP)パケットにパケット化される。次に、RTPパケットは、それ自身、インターネット・プロトコル上のユーザ・データグラム・プロトコル(UDP/IP)によりパケット化される。次に、UDP/IPパケットは、イーサネット(登録商標)・フレームの一部としてネットワークに送信される。ビデオ・プロトコル18が、変更したビット・ストリーム22を生成するプロセスについては、以下にさらに詳細に説明する。変更したビット・ストリーム22は、ビット・ストリーム20と同じ速度(例えば、2メガビット/秒)でネットワークに送信されることに留意されたい。しかし、変更したビット・ストリーム22は、ビット・ストリーム20に含まれているデータのサブセットしか含んでいない。それ故、変更したビット・ストリーム22は、ネットワーク上で他の技術が早送り/巻戻しに必要とする帯域幅より狭い帯域幅しか必要としない。
【0013】
[0014] ここで図2を参照しながら、図1のビデオ・サーバ10を使用することができるコンピュータ・ネットワークの一例について説明する。ビデオ・サーバ10は、コンピュータ・ネットワーク52に通信可能にリンクしていて、その一部として機能する3つのビデオ・サーバのうちの1つである。任意の数のビデオ・サーバ10を使用することができる(一実施形態の場合には、20のビデオ・サーバを使用することができる)。図2に示す数は単に例示としてのものに過ぎない。コンピュータ・ネットワーク52は、飛行中のエンタテイメント・システムと統合されている。それ故、コンピュータ・ネットワーク52は、胴体内部の航空機のキャビン内に位置する。イーサネット(登録商標)・ケーブルのようなコンピュータ・ネットワーク52の部材は、キャビンの隔壁54に取り付けられ、他の部材は、(断面で示す)キャビンのフロア56の下に位置する。ビデオ・サーバ10の他に、コンピュータ・ネットワーク52は、イーサネット(登録商標)・スイッチ50及びビデオ・ディスプレイ・ユニット(VDU)58を含む。イーサネット(登録商標)・スイッチ50は、ビデオ・サーバ10及びVDU58と通信可能にリンクしている。各VDU58は、展開した場合、その座席の乗客が見ることができるように、乗客の座席に隣接して位置する。VDU58上(又はそれに取り付けられている)の制御装置を使用することにより、航空機上の乗客は、ビデオ・コンテンツ(例えば、映画、TVショー、ニュース・プログラムなど)を要求することができる。これは、次に、1つ又は複数のビデオ・サーバ10により、MPEGビット・ストリーム、又は以下に説明するように、変更したMPEGビット・ストリームの形でVDU58に送出される。各VDU58は、受信したビット・ストリームを解釈し、ビット・ストリームをVDU58の表示画面上に表示される動画に変換するMPEG復号装置を含む。本明細書においては、動画を「ビデオ」と呼ぶが、「ビデオ」は任意の種類のビデオ・コンテンツを含むことができることを理解されたい。
【0014】
[0015] ビデオを再生し、早送りし、巻戻しし、一時停止し、又は再生を再開するために、乗客は、VDU58にリンクしている一組の制御装置(例えば、手持ち式ユニットなど)を操作する。一実施形態の場合には、ビデオ制御装置は、乗客が再生と一時停止の間で切り替えることができ、現在早送り又は巻戻し中のビデオの再生を再開することができる「再生」/「一時停止」ボタンを含む。ビデオ制御装置は、また、「早送り」ボタン及び「巻戻し」ボタンを含む。「早送り」ボタン及び「巻戻し」ボタンを使用すれば、乗客は、それぞれ第1の速度、第2の速度、及び第3の速度を含む異なる速度でビデオを早送り又は巻戻すことができる(各速度は、ボタンを連続的に押すことにより選択することができる)。第1の「早送り」速度及び第1の「巻戻し」速度の場合には、ビデオは、通常の「再生」の3倍の速度で早送りされ、巻戻しされる。第2の「早送り」速度及び第2の「巻戻し」速度の場合には、ビデオは、通常の「再生」速度の9倍の速度で早送りされ、巻戻しされる。第3の「早送り」速度及び第3の「巻戻し」速度の場合には、ビデオは、通常の「再生」速度の30倍の速度で早送りされ、巻戻しされる。乗客の入力に応じて、VDU58は、ビデオ・サーバ10のうちの1つに対応するビデオ・コマンドを送信する。ビデオ・サーバ10は、まだ行われていない場合には、デジタル記憶装置2(図1)からデータを読み出すことにより応答し、適当なビット・ストリームを生成し、ビット・ストリームを変更し(「早送り」又は「巻戻し」コマンドを受信した場合)、ネットワーク52を通してVDU58にビット・ストリームを送信する。
【0015】
[0016] 本発明のある実施形態の場合には、ビデオ・サーバ10が、VDU58から「早送り」コマンドを受信した場合には、ビデオ・サーバ10は、変更したビット・ストリーム22を生成し、変更したビット・ストリーム22をVDU58に送信することにより応答する。変更したビット・ストリーム22は、乗客にビデオの早送りを行ったような感じを与えるが、従来の早送り方法よりはネットワーク52上で狭い帯域幅しか使用しない。ここで、この実行方法の一例について説明する。この例の場合には、VDU58に送信した最も最近のフレームが第1のI−フレーム100(図1)であると仮定する。また、受信したコマンドは、第1の「早送り」速度であると仮定する。P−フレームを第1のI−フレーム100の直後に処理する代わりに、ビデオ・プログラム18は、第2のI−フレーム102にスキップし、次に、第3のI−フレーム104スキップするなどなど。次に、ビデオ・プログラムは、すべてのI−フレームを変更したビット・ストリーム22内に挿入するが、P−又はB−フレームは挿入しない。
【0016】
[0017] ここで、ビデオ・ストリーム20から変更したビット・ストリーム22を生成する方法のもう1つの例について説明する。この例の場合には、再度、VDU58に送信した最も最近のフレームは、第1のI−フレーム100(図1)であると仮定する。しかし、前の例とは対照的に、ここでは、VDU58から受信したコマンドは、第2又は第3の「早送り」速度を表すものと仮定する。P−フレームを第1のI−フレーム100の直後に処理する代わりに、ビデオ・プログラム18は、図1にTで表す所定の時間の間、前方にスキップし、その所定の時間の後でストリーム内に発生するI−フレームの位置を探し、そのI−フレームを変更したビット・ストリーム22内に挿入する。図1の例の場合には、所定の時間Tの後で発生する第1のI−フレームは、第3のI−フレーム106である。次に、ビデオ・プログラム18は、このプロセスを繰り返し、時間Tだけ前方にスキップし、第5のI−フレーム108である次のI−フレームの位置を探し、それを変更したビット・ストリーム22内に挿入する。このプロセスを再度繰り返すことにより、ビデオ・プログラム18は、第5のI−フレーム108を変更したビット・ストリーム22内に挿入する。次に、変更したビット・ストリーム22は、VDU58に送信される。その結果、変更したビット・ストリーム22は、すべてのI−フレームより少ないI−フレームを含み、P−又はB−フレームを全然含んでいない。第2及び第3の「早送り」速度の間の違いは、時間Tであることに留意されたい。何故なら、第3の「早送り」速度は、第2の「早送り」速度に対する時間Tより長いからである。
【0017】
[0018] 本発明のある実施形態の場合には、ビデオ・サーバ10は、また「巻戻し」機能を実行するために「早送り」機能の上記手順を使用することができる。例えば、ビデオ・サーバ10が、VDU58のうちの1つから、第1の「巻戻し」速度を表すコマンドを受信した場合には、ビデオ・プログラム18(図1)は、デジタル記憶装置12から、先行ビデオ・ブロック14(すなわち最も最近処理したものの直前のビデオ・ブロック)を読み込み、ビデオ・ブロック14をビット・ストリーム20に変換する。次に、ビデオ・プログラム18は、最後のI−フレームの位置を特定するまで、ビット・ストリーム20内を順方向に進む。次に、ビデオ・プログラム18は、そのI−フレームを変更したビット・ストリーム22内に挿入し、ビット・ストリーム20内を逆方向に移動し、次のI−フレームの位置を特定し、そのI−フレームを変更したビット・ストリーム22内に挿入するなどなど。例えば、前ビデオ・ブロックが図1のビデオ・ブロック14であり、結果として得られるビット・ストリームが図1のビット・ストリーム20であると仮定しよう。ビデオ・プログラム18は、この例の場合には、第5のI−フレーム108であるビット・ストリーム20内の最後のI−フレームの位置を特定する。ビデオ・プログラム18は、この第5のI−フレーム108を変更したビット・ストリーム22内に挿入する。次に、ビデオ・プログラム18は、ビット・ストリーム20内を後方にスキップし、この例の場合には、第4のI−フレーム106であるその点で発見することができるI−フレームを探す。ビデオ・プログラム18は、第4のI−フレーム106を(第5のI−フレーム108の後のシーケンス内の)変更したビット・ストリーム内に挿入する。このプロセスは、そのブロックに対して、変更したビット・ストリーム22内にすべてのI−フレームが挿入されるまで繰り返して行われるが、P−又はB−フレームは挿入されない。次に、ビデオ・プログラム18は、変更したビット・ストリーム22をVDU58(図2)に送信する。VDU58は、変更したビット・ストリームに基づいて,逆方向に移動するビデオとして表示される画像を乗客に対して表示する。
【0018】
[0019] 「巻戻し」機能のもう1つの例の場合には、ビデオ・サーバ10が、第2又は第3の「巻戻し」速度を表すコマンドを受信した場合には、ビデオ・プログラム18(図1)は、デジタル記憶装置12から先行ビデオ・ブロック14(すなわち、最も最近処理したものの直前のビデオ・ブロック)を読み込み、ビデオ・ブロック14をビット・ストリーム20に変換する。次に、ビデオ・プログラム18は、最後のI−フレームの位置を特定するまでビット・ストリーム20内の順方向に進む。次に、ビデオ・プログラム18は、このI−フレームを変更したビット・ストリーム22内に挿入し、所定の時間Tの間ビット・ストリーム20内を逆方向に移動し、次のI−フレームの位置を特定し、そのI−フレームを変更したビット・ストリーム22内に挿入するなどなど。例えば、前ビデオ・ブロックが図1のビデオ・ブロック14であり、結果として得られるビット・ストリームが、図1のビット・ストリーム20であると仮定しよう。ビデオ・プログラム18は、この例の場合には、第5のI−フレーム108であるビット・ストリーム20内の最後のI−フレームの位置を特定する。ビデオ・プログラム18は、この第5のI−フレーム108を変更したビット・ストリーム22内に挿入する。次に、ビデオ・プログラム18は、時間Tの間ビット・ストリーム20内を後方にスキップし、この例の場合には、第3のI−フレーム104であるその点で発見することができるI−フレームを探す。ビデオ・プログラム18は、第3のI−フレーム104を(第5のI−フレーム108の後のシーケンス内の)変更したビット・ストリーム内に挿入する。ビデオ・プログラム18は、このプロセスを繰り返し、第5及び第3のI−フレーム108、104の後の変更したビット・ストリーム22内に第1のI−フレーム100を挿入する。次に、ビデオ・プログラム18は、変更したビット・ストリーム22をVDU58(図2)に送信する。この例の場合には、変更したビット・ストリーム22は、すべてのI−フレームより少ないI−フレームを含んでいて、P−又はB−フレームは全然含んでいない。VDU58は、変更したビット・ストリームに基づいて,逆方向に移動するビデオとして表示される画像を乗客に対して表示する。第2及び第3の「巻戻し」速度の間の違いは、時間Tであることに留意されたい。何故なら、第3の「巻戻し」速度は、第2の「巻戻し」速度に対する時間Tより長いからである。
【0019】
[0020] 本発明の一実施形態の場合には、ビデオ・プログラム18は、また各「巻戻し」モードの間に重複チェックを行う。すなわち、ビデオ・プログラム18が、前の各I−フレームを探して後方にスキップする場合に、ビデオ・プログラム18は、I−フレームが、VDU58にまだ送信されていないことを確認するためにI−フレームをチェックする。I−フレームがすでにVDU58に送信済みであると判定した場合には、ビデオ・プログラム18は、I−フレームを変更したビット・ストリーム内に挿入しないで、代わりにビデオ・プログラム18が発見することができる次のI−フレーム(第1の「巻戻し」モードの場合には、次のI−フレーム、第2又は第3の「巻戻し」モードの場合には、時間Tの後の次のI−フレーム)まで後方にスキップする。
【0020】
[0021] 本発明のある実施形態の場合には、乗客は、乗客の制御装置上の「再生」/「一時停止」ボタンを押すことにより、ビデオを「早送り」又は「巻戻し」モードから解放して、「再生」モードにすることができる。この動作を行うと、VDU58は、ビデオ・サーバ10に「再生」コマンドを発行する。乗客が「再生」/「一時停止」ボタンを押す時間とビデオ・サーバ10が「再生」コマンドを受信する時間との間の遅れを補償するために、ビデオ・プログラム18は、(「巻戻し」から「再生」に切り替る場合には)ビデオを若干順方向に送り、(「早送り」から「再生」に切り替える場合には)ビデオを若干逆方向に巻き戻す。例えば、ビデオが「早送り」モードのうちの1つになっている場合で、ビデオ・プログラム18が、「再生」コマンドを受信した場合には、ビデオ・プログラム18は、推定した遅れ時間に対応する幾つかのフレームを後方にスキップして、その時点からビット・ストリームの再生を再開することにより遅れを補償する。例えば、ビデオ・サーバ10が、ビット・ストリームが第5のI−フレーム108(図1)に前進した場合に、「再生」コマンドを受信し、ビデオ・プログラム18が遅れ時間がTに等しいと推定し、VDU58から「再生」コマンドを受信した場合には、ビデオ・プログラムは、第3のI−フレーム104まで後方にスキップする。次に、ビデオ・プログラム18は、第3のI−フレーム104からスタートして、VDU58にビット・ストリーム20を送信する。それ故、乗客が見た場合、乗客が「早送り」動作を停止しようとした時点から、ビデオの再生が正しく再開される。
【0021】
[0022] 他の例の場合には、ビデオが「巻戻し」モードのうちの1つになっている場合で、ビデオ・プログラム18が「再生」コマンドを受信した場合には、ビデオ・プログラム18は、推定した遅れ時間に対応する幾つかのフレームを順方向にスキップし、その時点からビット・ストリームの再生を再開することにより遅れを補償する。例えば、ビデオ・サーバ10が、ビット・ストリームが第3のI−フレーム104(図1)に巻戻しされ、ビデオ・プログラム18が遅れ時間がTに等しいと推定した場合に「再生」コマンドを受信した場合には、VDU58から「再生」コマンドを受信した場合、ビデオ・プログラムは、第5のI−フレーム108まで順方向にスキップする。次に、ビデオ・プログラム18は、第5のI−フレーム104からスタートして、VDU58にビット・ストリーム20を送信する。それ故、乗客が見た場合、乗客が「巻戻し」動作を停止しようとした時点からビデオの再生が正しく再開される。
【0022】
[0023] 今まで、デジタル・ビデオを処理するための新しく、有用な方法及びシステムについて説明してきた。上記実施形態を種々に変更することができ、それらは添付の特許請求の範囲に入ることに留意されたい。さらに、本明細書に記載するすべての実施態様及び構成は、単に例示としてのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。また、本発明を説明する際に(特に添付の特許請求の範囲内で)ある(「a」及び「an」及び「the」)という用語、及び類似の用語を使用した場合には、単数及び複数の両方を含むものと解釈すべきである。最後に、本明細書に記載するすべての方法のステップは、本明細書に別段の指示がない限り、又は別の意味で本明細書の記述に明らかに矛盾しないのであれば、任意の適当な順序で実行することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオ・データを処理するための方法であって、
デジタル記憶装置からビデオ・データを読み出すステップと、
前記ビデオ・データを、それぞれが画像全体を表す第1の複数の画像フレームと、それぞれが画像全体より少ないデータを表す第2の複数の画像フレームとを含むフォーマットに変換するステップと、
ビデオ・データを走査するためのコマンドを受信するステップと、
前記コマンドに応じて、前記第1の複数の画像フレームのすべてより少ない画像フレームを含むが、前記第2の複数の画像フレームを全然含まないデータのストリームを送信するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記デジタル記憶装置が、ハード・ドライブ、デジタル・バーサタイル・ディスク・プレーヤ及びフラッシュ・メモリ装置からなるグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビデオ・データを走査するためのコマンドが、巻戻しコマンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ビデオ・データを走査するためのコマンドが、早送りコマンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の複数の画像フレームのそれぞれが、I−フレームである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の複数の画像フレームのそれぞれが、P−フレームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の複数の画像フレームのそれぞれが、B−フレームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ビデオ・データが変換される前記フォーマットが、MPEG(Moving Pictures Expert Group)フォーマットである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ビデオ・データを、前記第1の複数の画像フレーム及び前記第2の複数の画像フレームの両方を含むビット・ストリームに変換するステップと、前記第2の複数の画像フレームのすべて、及び前記第1の複数の画像フレームのうちの少なくとも幾つかをスキップするステップと、変更したビット・ストリームに含めるために、前記第1の複数の画像フレームのうちのスキップしなかった画像フレームを選択するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ビデオを巻戻しするための方法であって、
コンピュータ・ネットワークに通信可能にリンクしているビデオ・ディスプレイ・ユニット上で、
ユーザから巻戻しコマンドを受信するステップと、
前記巻戻しコマンドを送信するステップと、
を含むステップを実行するステップと、
前記コンピュータ・ネットワークに通信可能にリンクしているビデオ・サーバ上で、
前記ビデオを、それぞれが画像全体を表す第1の複数の画像フレームと、それぞれが画像全体より少ないデータを表す第2の複数の画像フレームとを含むフォーマットに変換するステップと、
前記巻戻しコマンドを受信するステップと、
前記巻戻しコマンドを受信した場合において前記ビデオが再生モードであるときは、前記ビデオ・ディスプレイ・ユニットに逆の順序で前記第1の複数の画像フレームのすべてを送信するステップと、
前記巻戻しコマンドを受信した場合において前記ビデオが巻戻しモードであるときは、前記ビデオ・ディスプレイ・ユニットに逆の順序で前記第1の複数の画像フレームのすべてより少ない画像フレームを送信するステップと、
を含むステップを実行するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記ビデオ・ディスプレイ・ユニットに前記画像フレームがすでに送信されたか否かを判定するために、前記第1の複数の画像フレームのうちの少なくとも1つをチェックするステップと、
前記画像フレームがすでに送信されていた場合に、前記ビデオ・ディスプレイ・ユニットへの前記画像フレームの送信を控えるステップとをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の複数の画像フレームのそれぞれが、I−フレームを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の複数の画像フレームのそれぞれが、P−フレームを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の複数の画像フレームのそれぞれが、B−フレームを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
ビデオを早送りするための方法であって、
コンピュータ・ネットワークに通信可能にリンクしているビデオ・ディスプレイ・ユニット上で、
ユーザから早送りコマンドを受信するステップと、
前記早送りコマンドを送信するステップと、
を含むステップを実行するステップと、
前記コンピュータ・ネットワークに通信可能にリンクしているビデオ・サーバ上で、
前記ビデオを、それぞれが画像全体を表す第1の複数の画像フレームと、それぞれが画像全体より少ないデータを表す第2の複数の画像フレームとを含むフォーマットに変換するステップと、
前記早送りコマンドを受信するステップと、
前記早送りコマンドを受信した場合において前記ビデオが再生モードであるときは、前記ビデオ・ディスプレイ・ユニットに前記第1の複数の画像フレームのすべてを送信するステップと、
前記早送りコマンドを受信した場合において前記ビデオが早送りモードであるときは、前記ビデオ・ディスプレイ・ユニットに前記第1の複数の画像フレームのすべてより少ない画像フレームを送信するステップと、
を含むステップを実行するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
前記第2の複数の画像フレームのそれぞれが、P−フレームを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の複数の画像フレームのそれぞれが、B−フレームを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ビデオを再生モードにするための方法であって、
デジタル記憶装置から前記ビデオを読み出すステップと、
ビデオ・ディスプレイ・ユニットに、複数の全画像フレームを含む第1のビット・ストリームを送信するステップと、
コンピュータ・ネットワークを介して、前記ビデオ・ディスプレイ・ユニットから再生コマンドを受信するステップと、
前記ビデオが現在早送りモードである場合には、所定の時間に対応する幾つかのフレームの間、前記ビデオを反転するステップと、前記反転ステップの後で、前記ビデオを再生するステップとを含むステップを実行するステップと、
前記ビデオが現在反転モードである場合には、所定の時間の間に対応する幾つかのフレームの間、前記ビデオを先送りするステップと、前記先送りステップの後で、前記ビデオを再生するステップとを含むステップを実行するステップと、
前記ビデオ・ディスプレイ・ユニットに、再生中の前記ビデオを表し、前記複数の全画像フレーム及び複数の部分画像フレームを含む第2のビット・ストリームを送信するステップとを含む方法。
【請求項19】
前記デジタル記憶装置が、ハード・ドライブ、デジタル・バーサタイル・ディスク・プレーヤ及びフラッシュ・メモリ装置からなるグループから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記全画像フレームが、I−フレームを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記部分画像フレームが、P−フレームを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
全画像フレームが、MPEG(Moving Pictures Expert Group)I−フレームを含み、前記部分画像フレームが、MPEG P−フレーム及びMPEG B−フレームを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記コンピュータ・ネットワークが、飛行中のエンタテイメント・ネットワークの一部であり、航空機に搭載される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
航空機上でデジタル・ビデオを処理するためのシステムであって、
コンピュータ・ネットワークと、
前記航空機の乗客シートに近接して配置され、表示画面及び乗客用制御装置を備え、前記コンピュータ・ネットワークに通信可能にリンクし、巻戻しコマンド及び早送りコマンドを送信するためのソフトウェアを実行するビデオ・ディスプレイ・ユニットと、
前記コンピュータ・ネットワークに通信可能にリンクし、前記ビデオ・ディスプレイ・ユニットから前記巻戻しコマンド及び前記早送りコマンドを受信し、それに応じて、第1の複数の画像フレーム及び第2の複数の画像フレームを含むビデオを、複数の巻戻しモードのうちの1つ及び複数の早送りモードのうちの1つにするビデオ・サーバとを備え、
前記第1の複数の画像フレームのそれぞれが、それ自身完全な画像を画定し、
前記第2の複数の画像フレームのそれぞれが、それ自身部分画像を画定し、前記第1の複数の画像フレームのうちの1つ又は複数を参照することにより完全な画像を画定し、
前記早送りモードのうちの少なくとも1つ、かつ,前記巻戻しモードのうちの少なくとも1つである場合に、前記ビデオ・サーバが、前記ビデオ・ディスプレイ・ユニットに前記第1の複数の画像フレームのすべてを送信し、前記ビデオ・ディスプレイ・ユニットに前記第2の複数の画像フレームのいずれも送信せず、
前記早送りモードのうちの少なくとも1つ、かつ,前記巻戻しモードのうちの少なくとも1つである場合に、前記ビデオ・サーバが、前記ビデオ・ディスプレイ・ユニットに前記第1の複数の画像フレームのすべてより少ない画像フレームを送信し、前記ビデオ・ディスプレイ・ユニットに前記第2の複数の画像フレームのいずれも送信しないシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−540747(P2009−540747A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515421(P2009−515421)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/013246
【国際公開番号】WO2007/145949
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(503202756)タレス アビオニクス インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】