説明

デジタル復調器

【目的】 同じ動作クロック周波数で、より分解能を向上し、正確な復調データが得られる復調器を構成する。
【構成】 デジタル位相変調信号を入力端子1に入力し、リミッタ2により論理レベルに変換する。一方、発振器3からのクロック信号に基づき計数するカウンタ5の計数値とリミッタ出力により信号の1周期の前半、後半を判定する第5D型フリップフロップ21の反転出力はリミッタ2の出力信号に応答してこのとき第1D型フリップフロップ15を介してラッチ回路6に入力されている。その出力を1シンボル時間だけ遅延回路7が遅延し、減算回路8が減算して位相変化データを出力する。そのデータに対して、位相補償回路10が位相補償を行い、復号回路12がデータを再生する。また、同じ出力よりPLL回路11がシンボルクロックとデータクロックの再生を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はデジタル復調器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、伝送媒体を効率的に利用するために、デジタルの情報信号(ベースバンド信号)で搬送波信号を変調し復調することが行われている。斯る変調の方式としては、デジタルのベースバンド信号に応じて搬送波信号の振幅を変化させる振幅変調方式(ASK)、ベースバンド信号に応じて搬送波の周波数を偏移させる周波数変調方式(FSK)、ベースバンド信号に応じて搬送波の位相を変化させる位相変調方式(PSK)、ベースバンド信号に応じて搬送波の振幅及び位相をそれぞれ独立して変化させる直交振幅変調方式(QAM)などの種々の方式が用いられている。
【0003】このようにベースバンド信号に応じて変調された搬送波信号(変調波信号)S(t)は、一般に次のように表すことができる。
【0004】
【数1】


【0005】数式1から明らかなように、変調波信号は、2つの直交した成分で表すことができ、直交検波器等の復調回路にてベースバンド信号を復調することができる。尚、上式の第1項は変調波信号の同相(I相)成分、第2項は変調波信号の直交位相(Q相)成分と一般に称される。デジタル位相変調信号を全デジタル回路で復調するデジタル復調器として、特開平3−188737号報に開示された復調方式によるデジタル復調器がある。図10は、同方式におけるデジタル復調器の従来例のブロック図である。
【0006】図10において、101はデジタル位相変調信号入力端子、102はシンボルクロック信号入力端子、103は入力されたデジタル位相変調信号の振幅を一定にするリミッタ、104はリミッタ103の出力信号に応答してシンボルクロック信号をサンプルする同期化回路、105は搬送波信号の整数倍の周波数を発振する発振器、106は発振器105の出力に基づき計数するカウンタ、107はカウンタ106の出力を同期化回路104の出力に応答してラッチするラッチ回路、108は同期化回路104の出力に応答して、ラッチ回路107の出力を入力し遅延させる遅延回路、109はラッチ回路107の出力と遅延回路108の出力とを入力して1シンボル区間の位相の変化を比較演算する比較演算回路、110は比較演算回路によって再生されたデータを出力する再生データ出力端子である。
【0007】次に動作について説明するが、最初に日本のデジタル方式自動車電話システムの標準規格(RCR STD−27)の変調方式であるπ/4シフトQPSK変調方式について説明する。まず、入力のシリアル信号は、2ビットのパラレル信号である(Xk,Yk)なるシンボルに変換される。さらにこの(Xk,Yk)は、差動符号化され直交信号(Ik,Qk)に変換となる。
【0008】信号フォーマットの先頭ビットから2ビット毎に変調シンボルとする。入力シリアル信号から(Xk,Yk)への変換(2値/4値変換)は下記に従う。
【0009】
【表1】


【0010】(Xk,Yk)から(Ik,Qk)への変換は次式のようになる。
【0011】
【数2】


【0012】ただし、ΔΦ(Xk,Yk)=ΔΦkは次表のように規定されている。
【0013】
【表2】


【0014】このようにして得られたIk、Qk信号は、各々独立に低域通過フィルタによってベースバンド帯域制限がかけられ、直交変調器に供給されるI相成分i(t)、Q相成分q(t)が生成される。ここでシンボル周期をTとし、t=kTの位相をΦ(t)=Φkとすると、
【0015】
【数3】


【0016】となり、その1シンボル前、すなわちt=kT−Tの位相をΦ(t)=Φk-1とすると、
【0017】
【数4】


【0018】となる。数式2、数式3、数式4より、
【0019】
【数5】


【0020】となる。数式5を変形すると
【0021】
【数6】


【0022】となる。従って、数式6より、π/4シフトQPSK変調信号を復調する際、シンボル判定点にて位相Φkと1シンボル前の位相Φk-1を検出し、位相Φkより位相Φk-1を引くことによって1シンボル区間での位相変化ΔΦ(Xk,Yk)を求めることができ、位相差ΔΦ(Xk,Yk)より表2に従いXk、Ykを求め、・・・・an-1,an,an+1,an+2・・・・のシリアル信号を復調することができる。
【0023】図10において動作を説明すると、リミッタ103はデジタル位相変調信号入力端子101より入力されたデジタル位相変調信号の振幅を制限し、矩形波状の論理レベルに変換する。また、同期化回路104はシンボルクロック信号入力端子102より入力されたシンボルクロック信号をリミッタ103の出力信号の立ち上がりに応答してサンプルする。尚、このシンボルクロック信号は、立ち上がりタイミングがデータのサンプリングタイミング(シンボル判定点)に規定されている矩形波信号である。このサンプルされたシンボルクロック信号、つまり同期化回路104の出力信号の立ち上がりはデジタル位相変調信号のゼロクロス点に一致している。
【0024】一方、発振器105は、デジタル位相変調信号の搬送波周波数のn倍(nは整数)の周波数のクロック信号を発振するように設定されているので、発振器105のクロックを1/n分周するカウンタ106の出力は搬送波の1周期の位相をn分割したものが得られる。発振器105のクロック信号を入力して駆動するカウンタ106の計数値は同期化回路104の出力の立ち上がりでラッチ回路107に保持される。この計数値が数式3のデジタル位相変調信号の位相Φkを表している。
【0025】ラッチ回路107の出力は、さらに遅延回路108に入力され、同期化回路104の出力の立ち上がりで遅延回路108に保持される。この遅延された値が数式4の1シンボル前の位相Φk-1を表している。ラッチ回路107の出力(Φk)と遅延回路108の出力(Φk-1)は比較演算回路109に入力され1シンボル区間の位相の変化ΔΦ(Xk,Yk)を検出し、表2に従いシンボルデータを復調し、2ビットのシンボルデータをパラレル/シリアル変換によりシリアルデータに変換し、復調データを得る。この復調データを再生データ出力端子110に出力する。
【0026】また、発振器105の周波数をデジタル位相変調信号の搬送波周波数のn倍に設定しているので位相の分解能は2π/nとなる。従って発振器105の周波数をデジタル位相変調信号の搬送波周波数に比べ十分高く取れば、必要な位相計測の分解能を得ることができる。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】然し乍ら、上記従来の方法で位相を量子化すると、発振器105の周波数をデジタル位相変調信号の搬送波周波数に比べ十分高く取らなければ、必要な位相計測の分解能を得ることができない。一般的にCMOSデジタル回路においては動作クロック周波数が、高くなるほど消費電力が増加することが知られている。従って、分解能を向上するために動作クロックの周波数を上げると、消費電力が増加し、バッテリーで駆動される携帯電話などの端末においては、待ち受け時間が短くなるという問題点がある。
【0028】本発明は、従来と同じ動作クロック周波数で、より分解能を向上し、正確な復調データが得られる復調器を構成することを目的とする。
【0029】
【課題を解決するための手段】上記の課題に鑑み、本発明は、位相量子化手段を用い位相変化データを得て復調データを再生する位相遅延検波型復調回路において、入力された信号の波形を変換して論理レベル出力を発生する波形変換部、クロック信号が入力されるクロック信号入力端子部、該クロック信号入力端子部より入力されたクロック信号に基づき第1位相情報出力を発する第1位相情報出力部、前記波形変換部の出力を前記クロック信号の立ち上がり又は立ち下がりに応答して保持し第2位相情報出力を発する第2位相情報出力部、前記第1位相情報出力と前記第2位相情報出力を前記波形変換部の出力の立ち上がり又は立ち下がりに応答して保持し位相量子化出力を発生する保持部によって構成することを特徴とする。
【0030】
【作用】本発明によれば、位相量子化手段に第1位相情報出力を発する第1位相情報出力部に第2位相情報出力を発する第2位相情報出力部を追加したので、動作クロックの周波数をデジタル位相変調信号の搬送波周波数のn倍に設定した場合、位相の分解能はπ/nと従来の復調器の分解能2π/nに比べ細かい分解能とすることができ、正確な位相量子化を行う。
【0031】
【実施例】図1は、本発明の一実施例を示すブロック図である。図1において、1はデジタル位相変調信号が入力される入力端子、2は入力されたデジタル位相変調信号の波形を変換し、2値のデジタル信号に変換するリミッタ、3はクロック信号を生成する発振器、4はクロック信号が入力されるクロック信号入力端子、5はクロック信号に基づき計数して、第1位相情報となる計数値を出力するカウンタ、6はリミッタ2の出力に応答してカウンタ5の計数値(第1位相情報)と第5D型フリップフロップの反転した出力(第2位相情報)を保持するラッチ回路(保持手段)、7はラッチ回路6で保持された位相情報をシンボルクロックと逓倍関係にあるデータクロック信号により1シンボル区間の時間遅延させる遅延回路、8はラッチ回路6が保持した位相情報と遅延回路7により1シンボル区間の時間遅延した位相情報とを減算処理する減算回路、9は所定周期のシンボルクロックで減算回路8の出力の位相変化データをサンプリングするサンプリング回路、10は位相変化データに対して位相補償を行う位相補償回路、11は減算回路8の出力を入力することによりシンボルクロック信号、該信号を逓倍したデータクロック信号を再生するPLL回路、12は位相補償回路10の出力の位相補償した位相変化データをデコードし、シンボルデータを形成導出し、シンボルデータをパラレル/シリアル変換して、シリアルデータを再生データとして出力する復号回路である。13は復号回路12の出力の再生データが出力される再生シリアルデータ出力端子、14はPLL回路11の出力のデータクロック信号が出力される再生データ用クロック出力端子である。15はリミッタの出力をクロック信号と同期させる第1D型フリップフロップ、16はデータクロック信号をクロック信号と同期させる第2D型フリップフロップ、17はクロック信号を反転する第1インバータ、18は直接位相量子化回路、19は第3D型フリップフロップ、20は第4D型フリップフロップ、21は第5D型フリップフロップ、22は第2インバータである。21と22により第2位相情報を出力する。
【0032】次に動作について図2及び図3を用いて説明する。ここでは、入力信号として42kbit/sで搬送波周波数450kHzのπ/4シフトQPSK信号を考える。入力端子1に図2のAのようなデジタル位相変調信号が入力されると、デジタル位相変調信号はリミッタ2により図2のBのような2値のデジタル信号に変換される。この時リミッタではなく、信号のゼロクロス点を検出して出力信号の”H”,”L”を切り替えるゼロクロス検出器でもよい。
【0033】一方では、発振器3のクロック信号に基づきカウンタ5は計数を行い、図2のCのような第1位相情報を出力する。例えば、発振器3のクロック信号の周波数をデジタル位相変調信号の搬送波周波数450kHzの16倍の7.2MHzでクロックのデューティが50%とすると、カウンタ5は1/16分周して4ビットパラレルの計数値を得る。この場合、カウンタ5の出力である第1位相情報出力は、図2のCのような滑らかな値でなく、実際は図4のように階段状の値となる。このカウンタ5の計数値を、リミッタ2の出力の立ち上がりに応答してラッチ回路6がラッチするが、図3のB、Eに示したように、カウンタ5の出力が不定のときに、リミッタ2の出力の立ち上がりが来ることがある。このような動作を防ぐために、本実施例では、リミッタの出力の位相をずらしてカウンタが安定した状態でラッチするものである。
【0034】このような動作を行うために、リミッタ2の出力をまず第1D型フリップフロップ15のD端子に入力する。そして第1D型フリップフロップ15のck端子に第1インバータ17を通過して反転したクロック信号を入力する。D型フリップフロップはck端子に入力される信号の立ち上がりでD端子に入力される信号を保持するので、リミッタ2の出力は図3のGの様にクロック信号の立ち下がりタイミングに合わせて遅延せしめられる。この第1D型フリップフロップ15の出力の立ち上がりに応答して、ラッチ回路6がカウンタ5の値をラッチすれば、図3に示す様にカウンタ5の出力が安定した状態でラッチが実行され、確実にカウンタ5の値を保持して出力することが出来る。その結果ラッチ出力はクロック信号の立ち下がりより少し遅れて出力されることになり、ラッチ出力の不定状態は、クロック信号の立ち下がりより後の半周期以内に発生する。
【0035】また、クロック信号の周波数が搬送波周波数の16倍であるカウンタ5の出力の4ビットの第1位相情報出力だけでは分解能が不十分であるために正確な復調が出来ない。そこで、本実施例においては位相の分解能を向上するために第1位相情報出力に第2位相情報出力を追加して利用する。以下、第2位相情報出力について説明する。
【0036】図3のEに示すリミッタ出力が、図3のAのクロック信号の”L”の状態のときに立ち上がる場合、すなわち図3のEのリミッタ出力の下に記入したイのタイミングでリミッタ出力が立ち上がった場合、図3のCに示した第5フリップフロップの出力のハの状態は”H”になり、その反転信号である図3のDに示した第2インバータ出力のニの状態は”L”になる。この様子を破線で示す。
【0037】同様に、図3のEに示すリミッタ出力が、図3のAのクロック信号の”H”の状態のときに立ち上がる場合、すなわち図3のEのリミッタ出力の下に記入したロのタイミングでリミッタ出力が立ち上がった場合、図3のCに示した第5フリップフロップの出力のハの状態は”L”になり、その反転信号である図3のDに示した第2インバータ出力のニの状態は”H”になる。この様子を実線で示す。
【0038】この、第2インバータ22の出力は、図3のEのリミッタ出力の第1位相情報出力である図3のBに示すカウンタ5の出力より、さらに細な位相情報となる。すなわち第2インバータ22の出力は、図3のEに示したリミッタ出力の立ち上がりが、図3のAのクロック信号の1周期の前半であるか後半であるかを判定し、前半であれば”L”後半であれば”H”を出力する。従って第2インバータ出力は、1ビットの第2位相情報として利用できる。
【0039】つまり、カウンタ5の出力である4ビットの第1位相情報出力を上位ビットに対応させ、第2インバータ22の出力である1ビットの第2位相情報を下位ビットに対応させて導出される5ビットの位相情報が得られる。位相情報が5ビットとなることで1周期を32分割でき、分解能を2π/32とすることができる。従来例で、2π/32の分解能を得るには、14.4MHzのクロック信号が必要である。
【0040】この様に、カウンタ5の出力である4ビットの第1位相情報出力を上位ビットに対応させ、第2インバータ22の出力である1ビットの第2位相情報出力を下位ビットに対応させて導出される5ビットの位相情報を第1D型フリップフロップ15の出力の立ち上がりに応答してラッチ回路6がラッチし、5ビットの瞬時位相データを得ることができる。
【0041】斯くして、図2の位相情報が5ビットのDのような瞬時位相データ(ラッチ出力データ)が得られる。そしてラッチ回路6の出力の保持された瞬時位相データを遅延回路7により1シンボル区間遅延させると、図2のEのような1シンボル前の位相データが得られる。この時もまた、ラッチ回路6の出力が不定の時にデータクロックの立ち上がりが来ることがあるので、ラッチ回路6の出力が安定状態の時にデータクロックの立ち上がりが来る様にして、遅延回路7を確実に動作させる。
【0042】第2D型フリップフロップ16のD端子にデータクロックを入力し、ck端子に第1インバータ17を通過して反転したクロック信号を入力する。前述したようにD型フリップフロップはck端子に入力される信号の立ち上がりでD端子に入力される信号を保持するので、データクロックは図3のJの様にラッチ出力の不定タイミングより外れたクロック信号の立ち下がりタイミングに遅延される。この第2D型フリップフロップ16の出力の立ち上がりに応答して遅延回路7を駆動すれば、ラッチ回路6の出力は安定状態なので、遅延回路7は確実な動作を行う。但し、本実施例では遅延回路7をデータクロックに応答して作動させている関係上、遅延出力はデータクロック周期でのみ導出され、リミッタ出力の全ての立ち上がり出力に応答して導出されることはない。
【0043】次にラッチ回路6の出力の瞬時位相データから遅延回路7の出力の1シンボル前の位相データを減算回路8で減算し、図2のFのような1シンボル時間の位相変化データが得られる。前記減算回路8は論理回路で構成されており、その出力は、ラッチ出力の不定期間と遅延出力の不定期間の両方で、不定状態となる。減算回路8の出力の位相変化データをシンボルクロックに同期させると図5のようなアイパターンとなる。図5に示すように位相変化データはシンボル判定点(立ち上がり部分)において3π/4、π/4、−π/4、−3π/4の4値に収束する。
【0044】また、図5に示す位相変化データのゼロクロス点は平均的に、シンボル判定点間の中央にあると見なせるので、PLL回路11は、位相変化データの符号反転タイミングとシンボルクロック信号立ち下がりタイミングが平均的に一致する様にシンボルクロック信号の位相を制御している。さらにPLL回路11はシンボルクロックを逓倍(2逓倍)したデータクロック信号を形成し、クロック出力端子14にこのデータクロックを出力する。
【0045】斯様なPLL回路の一例を図7に示す。位相比較回路71により入力信号(位相変化データの符号反転タイミング)と出力信号(シンボルクロック信号)の位相差を検出し、これを”進み”と”遅れ”の2値で表わし、プリセット値としてNが設定される可逆カウンタ72を加算または減算させる。可逆カウンタ72の内容が2Nになると−、0になると+の制御信号を発生し、この信号の発生とともに可逆カウンタの値をNにリセットする。位相制御回路74は、クロック信号入力端子4から入力クロック信号を入力し、可逆カウンタ72の出力に従って通過するクロック信号の数を制御している。即ち、位相制御回路74は可逆カウンタ72が+信号を発するとクロック信号に1パルスを付加し、−信号を発するとクロック信号より1パルスを除去し、位相を制御する。分周回路75、76は、パルス数を制御された位相制御出力を計数して分周出力の位相タイミングを制御する。こうして、シンボルクロック信号と位相変化データの符号反転タイミングが平均的にほぼ同期するように制御される。
【0046】遅延回路7は、独立したクロック信号で駆動しても良いが、PLL回路11の出力であるデータクロック信号を用いることにより、遅延回路7、減算回路8、PLL回路11でフィードバックループを構成し、確実な動作が期待できる。一方、入力されたデジタル位相変調信号の搬送波周波数が、前述したように発振器3の周波数の丁度1/16であると、サンプリング回路9は入力された位相変化データをPLL回路11の出力のシンボルクロック信号の立ち上がりでラッチし、3π/4、π/4、−π/4、−3π/4の4値のいずれかであるラッチ出力を、位相補償回路10を介して復号回路12に供給する。
【0047】前述する減算出力の不定期間の内、ラッチに起因する不定期間は、第1D型フリップフロップ15の出力、即ちクロックの立ち下がりタイミングに連動して変調信号周期で発生し、遅延に起因する不定期間も、同様に第2D型フリップフロップ16の出力、即ちクロックの立ち下がりタイミングに連動してシンボルクロックの1/2周期で発生する。従って、不定期間はクロック信号の立ち下がりより後で而も立ち上がりより前に発生する。
【0048】そこで、本実施例では、そのタイミングにシンボルクロックが立ち上がらない様に、そのサンプリング位相をクロックの立ち下がりタイミングに遅らせるべく、シンボルクロック信号を第3D型フリップフロップ19に入力し、反転クロックによってラッチをしている。その結果、サンプリング回路では、不定期間を外れたタイミングでサンプリングが実行される。
【0049】また更に、前述するサンプリング出力の不定期間は、サンプリング直後即ちクロック信号の立ち下がり後の期間であり、サンプリング出力を位相補償した出力もクロック信号の立ち上がり迄には安定となる。そこで本実施例では、位相補償出力の不定期間に復号回路12が復号を行わない様に、入力するデータクロックの位相を第4D型フリップフロップ20を介在させることにより、位相シフトして、位相補償出力の安定な期間即ちクロック信号の立ち下がりタイミングに復号が為される様に補償をしている。
【0050】従って、第4D型フリップフロップ20は、データクロックをD端子に入力、反転クロック信号をck端子に入力して、データクロックをクロック信号の立ち下がりに合わせて遅延して出力している。復号回路12は、位相変化が3π/4、π/4、−π/4、−3π/4の4値に対する2ビットのシンボルデータを表2に従いデコードし、この2ビットのシンボルデータをパラレル/シリアル変換することによって受信したリアルデータを再生し、出力端子13に出力する。復号回路12にデータクロックを供給する場合も、確実に動作をするようにD型フリップフロップ20を介してデータクロックを供給する。
【0051】次に位相補償回路10の補償動作について説明する。図8に位相補償回路の一例を示す。一般的に移動通信ではフェージングに伴ったランダムFM雑音の影響による搬送波周波数変動、及び送信機と受信機との基準発振器の周波数の差に起因する周波数偏差△ωcが生じる。周波数偏差△ωcを考慮すると数式1は次のようになる。
【0052】
【数7】


【0053】数式7よりt=k・Tの時の位相をθ(t)=θkとすると、
【0054】
【数8】


【0055】となり、1シンボル前、即ちt=k・T−Tのときの位相をθ(t)=θk-1とすると、
【0056】
【数9】


【0057】となる。1シンボル区間の位相変化△θkは、
【0058】
【数10】


【0059】となる。周波数偏差△ωcTがある場合、ラッチ回路6の出力はθkとなり、遅延回路7の出力はθk-1となるので、減算回路8の出力は△θkとなる。そして数式10より、入力されるデジタル位相変調信号の搬送波周波数に周波数偏差△ωcがある場合の位相変化データのアイパターンは、図6のようになる。このように、入力されるデジタル位相変調信号の搬送波周波数に周波数偏差△ωcがある場合、図6に示すように位相変化データはシンボル判定点において3π/4+△ωcT、π/4+△ωcT、−π/4+△ωcT、−3π/4+△ωcTの4値に収束し、全ての位相変化データに直流成分△ωcTが重畳される。
【0060】この直流成分△ωcTは図8のような回路で取り除くことができる。△ωcTを求める場合、雑音等を考慮して△ωcTを数シンボルにわたって計測し、これを平均化することによってほぼ正確な△ωcTを求めることが出来る。そして、サンプリング回路9の出力から平均化によって得られた△ωcTを減算することにより、周波数偏差即ちDC成分のない位相変化データが得られる。尚、この位相補償は、サンプリングの後段であっても前段であっても良く、遅延検波型復調回路であれば従来のような構成に採用しても有効であり、本実施例の構成にのみ有効なものではないことを付言しておく。
【0061】前述した実施例の復調回路は、回路内でシンボルクロック信号を形成するタイプの復調回路に本発明を採用するものであるが、予め形成されたシンボルクロックを利用する従来例の様な復調回路に本発明を採用することも当然可能であり、図9は前述する従来例の復調回路に本発明を採用する他の実施例を示す。尚、図9の各構成要素については図1及び図10の構成要素として開示されており、符号を共通にして重複説明を割愛する。
【0062】斯くして本発明による動作は達成されるが、本実施例のπ/4シフトQPSK信号以外の他のデジタル位相変調方式でも実現可能である。また、本実施例ではハードによって本発明を構成しているが、ハードの一部をソフトに替えても実現可能であることは云うまでもない。更に、本実施例は必要に応じて変更可能であることも付言しておく。
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、位相量子化手段に第1位相情報出力を発する第1位相情報出力部に第2位相情報出力を発する第2位相情報出力部を追加したので、動作クロックの周波数をデジタル位相変調信号の搬送波周波数のn倍に設定した場合、位相の分解能はπ/nと従来の復調器の分解能2π/nに比べ細かい分解能とすることができ、正確な位相量子化を行うことができる。
【0064】更に、デジタル位相変調信号の波形を変換し、該変換された信号をクロック信号に同期させて、同期した信号に応答してクロック信号基づき発せられる第1位相情報出力と第2位相情報出力を保持し、前記保持した位相情報を、クロック信号に同期させた遅延の基準となる信号により1シンボル区間の時間遅延させて、前記保持した位相情報と前記遅延させた位相情報とを演算するようにしたので、正確な復調を行うことができる。
【0065】また、前記演算の後に、加算・減算を行い位相補償するようにしたので、クロック信号の周波数がデジタル位相変調信号の搬送波周波数の整数倍に設定されなくてもよく、フェージングに伴ったランダムFM雑音の影響により、搬送波周波数が変動しても伝送特性が劣化しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の動作を説明する図である。
【図3】本発明のタイミングチャートを示す図である。
【図4】本発明の位相分解能が2π/16の場合の第1位相情報出力を示す図である。
【図5】本発明のデジタル位相変調信号の搬送波周波数に周波数偏差がない場合の位相変化データのアイパターンを示す図である。
【図6】本発明のデジタル位相変調信号の搬送波周波数に周波数偏差が△ωcである場合の位相変化データのアイパターンを示す図である。
【図7】PLL回路の一例を示すブロック図である。
【図8】位相補償回路の一例を示すブロック図である。
【図9】本発明の他の実施例を示す図である。
【図10】従来例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1、101 デジタル位相変調信号入力端子
2、103 リミッタ
3、105 発振器
4 クロック信号入力端子
5、106 カウンタ
6、107 ラッチ回路
7、108 遅延回路
8 減算回路
9 サンプリング回路
10 位相補償回路
11 PLL回路
12 復号回路
13、110 再生シリアルデータ出力端子
14 再生データ用クロック出力端子
15 第1D型フリップフロップ
16 第2D型フリップフロップ
17 第1インバータ
18 直接位相量子化回路
19 第3D型フリップフロップ
20 第4D型フリップフロップ
21 第5D型フリップフロップ
22 第2インバータ
104 同期化回路
109 比較演算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 デジタル位相変調された信号が入力される入力端子と、該入力端子より入力された信号の波形を変換して論理レベル出力を発生する波形変換部、クロック信号が入力されるクロック信号入力端子部、該クロック信号入力端子部より入力されたクロック信号に基づき第1位相情報出力を発する第1位相情報出力部、前記波形変換部の出力を前記クロック信号の立ち上がり又は立ち下がりに応答して保持し第2位相情報出力を発する第2位相情報出力部、前記第1位相情報出力と前記第2位相情報出力を前記波形変換部の出力の立ち上がり又は立ち下がりに応答して保持し位相量子化出力を発生する保持部を有する位相量子化手段と、前記位相量子化出力を1シンボル区間の時間だけ遅延させる遅延手段と、前記位相量子化出力と前記遅延手段の出力とを減算して位相変化データを出力する減算手段と、前記位相変化データをシンボルデータに変換する復号手段とを具備することを特徴とするデジタル復調器。
【請求項2】 前記波形変換部がゼロクロス検出手段で構成されることを特徴とする請求項1記載のデジタル復調器。
【請求項3】 前記波形変換部が信号の振幅を論理レベルに変換してリミッタ出力を発生するリミッタ手段で構成されることを特徴とする請求項1記載のデジタル復調器。
【請求項4】 前記波形変換部の出力を前記クロック信号に基づき位相シフトさせて、前記保持部を該信号に応答させる同期手段を備えることを特徴とする請求項1記載のデジタル復調器。
【請求項5】 前記位相量子化手段が、前記第1位相情報出力を上位ビットに対応させ、前記第2位相情報出力を下位ビットに対応させて導出される位相情報を、前記波形変換部の出力の立ち上がり又は立ち下がりに応答して保持することを特徴とする請求項1記載のデジタル復調器。
【請求項6】 前記第2位相情報出力部がフリップフロップにて構成されることを特徴とする請求項5記載のデジタル復調器。
【請求項7】 前記波形変換部の出力を前記クロック信号に基づき位相シフトさせて、前記保持部を該信号に応答させる同期手段を備えることを特徴とする請求項5記載のデジタル復調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開平6−232934
【公開日】平成6年(1994)8月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−16391
【出願日】平成5年(1993)2月3日
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)