説明

デッキクレーン

【課題】クレーンジブの中間部を支持した場合に、クレーンジブに生じるモーメントを抑制すること。
【解決手段】旋回ポスト1と、前記旋回ポスト1に対して上下に揺動可能となるように基端が支承されたクレーンジブ2と、前記クレーンジブ2の中間部を上方に支持する中間支持機構と、を備えるデッキクレーンにおいて、前記中間支持機構によって支持されるクレーンジブ2の中間部を、前記中間支持機構による支持方向とは逆方向の撓み剛性を生じ得る逆撓み構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶上などに装備されるデッキクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
デッキクレーンは、固定ポストの上に旋回ポストが旋回可能に設けられている。旋回ポストは、クレーンジブが設けられている。クレーンジブは、長尺の2本の支持部が互いに連結して構成されている。2本の支持部は、各基端が旋回ポストに支持されて上下に揺動可能に設けられている。そして、クレーンジブは、旋回ポストに設けられた俯仰用ウインチによるワイヤの巻き取りまたは繰り出しによって俯仰する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、特許文献2に記載の大形クレーンブーム俯仰装置では、ブームを先端および中間で支持する構成として、俯仰ロープが掛け渡されるブライドルの補助ブライドルと、ブームの中間部とを、中間支持ロープで連結する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−101292号公報
【特許文献2】特公昭59−35830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1に記載されたデッキクレーンにおいて、上述した特許文献2に記載された構成のように、クレーンジブの中間部を支持することが考えられる。しかし、クレーンジブの中間部を支持する場合、当該支持部分でクレーンジブの中間部が引き上げられることから上方に撓みが発生しやすくなる。そして、荷役によってクレーンジブを長さ方向で圧縮する荷重が掛かった場合、前記撓みを基にしたモーメントがクレーンジブに生じやすくなる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、クレーンジブの中間部を支持した場合に、クレーンジブに生じるモーメントを抑制することのできるデッキクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明のデッキクレーンは、旋回ポストと、前記旋回ポストに対して上下に揺動可能となるように基端が支承されたクレーンジブと、前記クレーンジブの中間部を上方に支持する中間支持機構と、を備えるデッキクレーンにおいて、前記中間支持機構によって支持される前記クレーンジブの中間部を、前記中間支持機構による支持方向とは逆方向の撓み剛性を生じ得る逆撓み構造とすることを特徴とする。
【0008】
クレーンジブは、中間支持機構を介して中間部が上方に向けて支持される。そして、荷役によって、先端側は基端側に向けて荷重が生じ、旋回ポストに支承されている基端側に反力が生じることで、クレーンジブには、長手方向を縮める圧縮力が生じることになる。このデッキクレーンによれば、中間支持機構による支持方向とは逆方向の撓み剛性を生じ得る逆撓み構造とすることで、中間支持機構による中間部の撓みが逆撓みによって抑えられることから、圧縮力が生じても、クレーンジブが上方に大きく撓むことがない。このため、撓みを基にしてクレーンジブに生じるモーメントを抑制することができる。この結果、クレーンジブの強度が向上し、安全で壊れにくいデッキクレーンを得ることができる。
【0009】
また、本発明のデッキクレーンでは、前記逆撓み構造は、前記中間支持機構によって支持される前記クレーンジブの中間部の断面性を最も高く構成し、かつ前記クレーンジブの基端から先端に至る外形を、前記中間支持機構によって支持する側を平坦としつつ逆側を突出させて構成することを特徴とする。
【0010】
このデッキクレーンによれば、逆撓み構造とするにあたり、クレーンジブの基端から先端に至る外形を、中間支持機構によって支持する側を平坦としつつ逆側を突出させて構成しているため、逆撓み構造を容易に製造することができる。
【0011】
また、本発明のデッキクレーンでは、前記逆撓み構造は、前記中間支持機構によって支持される前記クレーンジブの中間部の断面剛性を最も高く構成することを特徴とする。
【0012】
このデッキクレーンによれば、中間支持機構による支持方向とは逆方向の撓み剛性を生じ得るため、撓みを基にしてクレーンジブに生じるモーメントを抑制することができ、クレーンジブの強度が向上し、安全で壊れにくいデッキクレーンを得ることができる。
【0013】
また、本発明のデッキクレーンは、前記旋回ポストに設けられてワイヤを繰り出しまたは巻き取ることで前記クレーンジブを俯仰させる俯仰装置を備え、前記中間支持機構は、前記ワイヤによって前記クレーンジブの中間部を支持する態様で、前記ワイヤを掛け渡す滑車を前記クレーンジブの中間部に設け、前記ワイヤの先端を前記旋回ポスト側に固定してなることを特徴とする。
【0014】
このデッキクレーンによれば、ワイヤを滑車に掛け渡して先端を旋回ポスト側に固定することで、滑車を設けず、ワイヤの先端をクレーンジブの中間部に固定する構成と比較し、ワイヤの取り回しやメンテナンスを容易に行うことができる。
【0015】
また、本発明のデッキクレーンは、前記旋回ポストに設けられて水平方向に延在する支軸と、前記クレーンジブの基端に設けられて前記支軸が挿通されるボス部と、前記ボス部と支軸との間に介在され、前記支軸廻りの前記ボス部の回転を許容しつつ、前記ボス部の水平方向への傾動を規制するブッシュと、を備えることを特徴とする。
【0016】
旋回ポストを旋回させるときにクレーンジブに対して水平方向への荷重が掛かる。ここで、例えば、2つの長尺の支持部を連結してクレーンジブを構成し、当該クレーンジブの基端の軸受構造として上記ブッシュを用いず、水平方向に傾動し得るように球面軸受を用いた場合、クレーンジブの軸受部分への水平方向の荷重を逃がすことが可能であるが、各支持部を連結した部分に荷重が集中するため、当該連結部分において強度を増さなければならない。このため、クレーンジブの重量が嵩み、クレーンジブを俯仰する装置を大型化する必要がある。この点、クレーンジブの基端の軸受構造としてブッシュを用いたことにより、当該軸受構造において、水平方向の荷重を受けることから、軸受構造と連結部分とに水平方向の荷重が分散される。このため、球面軸受を用いた場合と比較し、水平方向の荷重を受けるために連結部分の強度を増すことがなく、クレーンジブを軽量化し、クレーンジブを俯仰する装置の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クレーンジブの中間部を支持した場合に、クレーンジブに生じるモーメントを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るクレーンジブを有するデッキクレーンの概略側面図である。
【図2】図2は、図1に示すデッキクレーンの概略平面図である。
【図3】図3は、図1に示すデッキクレーンのワイヤを示す概略斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係るクレーンジブの断面図である。
【図5】図5は、クレーンジブに掛かる荷重の説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係る他のクレーンジブの断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係るクレーンジブの軸受構造を示す平面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るクレーンジブを有するデッキクレーンの概略側面図であり、図2は、図1に示すデッキクレーンの概略平面図であり、図3は、図1に示すデッキクレーンのワイヤを示す概略斜視図である。
【0021】
図1および図2に示すように、デッキクレーンは、旋回ポスト1にクレーンジブ2が設けられている。旋回ポスト1は、デッキ3に固定された固定ポスト4に対して軸心Sの廻りに回転可能に設けられている。この旋回ポスト1は、図示しない駆動機構により軸心Sの廻りに旋回駆動される。
【0022】
また、旋回ポスト1は、その下側に、俯仰装置をなす俯仰用ウインチ5および巻上装置をなす昇降用ウインチ6が設けられている。また、旋回ポスト1は、その上端に、5つの滑車7a〜7eが設けられている。
【0023】
クレーンジブ2は、長尺に形成されている。クレーンジブ2は、その基端が旋回ポスト1の下側に、水平方向に延在する支軸2Aによって支承され、上下に揺動可能に設けられている。具体的に、クレーンジブ2は、長尺に形成された2つの支持部21が並設されつつ、連結部22により複数箇所で連結され、平面視でほぼA字状に形成されたもので、各支持部21の基端が支軸2Aを介して旋回ポスト1に取り付けられている。
【0024】
また、クレーンジブ2は、その先端上部に、5つの滑車7f〜7jが設けられている。また、クレーンジブ2は、その長手方向の中間部を連結する連結部22に対し、1つの滑車7kが設けられている。
【0025】
図3に示すように、俯仰用ウインチ5に巻かれたワイヤ8aは、旋回ポスト1側の滑車7b、クレーンジブ2先端側の滑車7g、旋回ポスト1側の滑車7c、クレーンジブ2中間側の滑車7kの順で架け渡され、先端が旋回ポスト1に固定されている。そして、俯仰用ウインチ5によりワイヤ8aを巻き取ることでワイヤ8aが引っ張られ、クレーンジブ2の先端側の滑車7gおよび中間部の滑車7kが引き上げられる。このため、クレーンジブ2が、支軸2Aを中心に上方に揺動し、先端が上昇する。一方、俯仰用ウインチ5によりワイヤ8aを繰り出すことでワイヤ8aが弛み、クレーンジブ2の先端側の滑車7gおよび中間側の滑車7kが吊り下ろされる。このため、クレーンジブ2が、支軸2Aを中心に下方に揺動し、先端が下降する。このように、クレーンジブ2は、俯仰用ウインチ5によるワイヤ8aの巻き上げまたは繰り出しにより俯仰する。このように、クレーンジブ2の中間部を支持するための俯仰用ウインチ5、ワイヤ8aおよび滑車7kは、中間支持機構を構成している。なお、図には明示しないが、中間支持機構は、滑車7kを設けず、ワイヤ8aの先端を旋回ポスト1ではなくクレーンジブ2の中間部に固定することで構成してもよい。
【0026】
図3に示すように、昇降用ウインチ6に巻かれたワイヤ8bは、旋回ポスト1側の滑車7a、クレーンジブ2先端側の滑車7f、フックなどからなる昇降部材9に設けられた滑車9a、クレーンジブ2先端側の滑車7j、旋回ポスト1側の滑車7e、クレーンジブ2先端側の滑車7i、旋回ポスト1側の滑車7d、クレーンジブ2先端側の滑車7hの順で架け渡され、先端が旋回ポスト1に固定されている。そして、昇降用ウインチ6によりワイヤ8bを巻き取ることでワイヤ8bが引っ張られ、滑車9aが引き上げられる。このため、クレーンジブ2先端下側にて昇降部材9が上昇する。一方、昇降用ウインチ6によりワイヤ8bを繰り出すことでワイヤ8bが弛み、滑車9aが吊り下ろされる。このため、クレーンジブ2先端下側にて昇降部材9が下降する。このように、昇降部材9は、昇降用ウインチ6によるワイヤ8bの巻き上げまたは繰り出しにより昇降する。つまり、昇降部材9に荷(図示せず)を取り付けることで荷を昇降することが可能になる。
【0027】
そして、上述した旋回ポスト1の旋回、クレーンジブ2の俯仰、昇降部材9の昇降により、昇降部材9に取り付けた荷を移動させることが可能となる。なお、旋回ポスト1の旋回、クレーンジブ2の俯仰、昇降部材9の昇降は、旋回ポスト1に設けられた操縦室1aでオペレータにより操作される。
【0028】
図4は、本実施の形態に係るクレーンジブの断面図であって、図4(a)は図1におけるA−A断面に相当し、図4(b)は図1におけるB−B断面に相当し、図4(c)は図1におけるC−C断面に相当する。なお、図4では、クレーンジブ2の2つの支持部21のうちの1つの断面を示している。
【0029】
図4に示すように、クレーンジブ2を構成する2つの支持部21は、長手方向に沿って側部が開口して形成された略断面コ字形の長尺の本体部材21aと、本体部材21aの開口部分に固定された長尺の板部材21bとで構成されている。
【0030】
この支持部21は、上述した中間支持機構によって支持される中間部を、中間支持機構による支持方向とは逆方向の撓み剛性を生じ得る逆撓み構造とされている。
【0031】
具体的に、図4に示すように、逆撓み構造は、支持部21において、中間部の断面高さH2を、支軸2Aによって支承される基端側の断面高さH1、および滑車7gを介して支持される先端側の断面高さH3に対して大きくしている。このため、支持部21の長手方向において、中間支持機構によって支持される支持部21の中間部の断面剛性が最も高くなる。なお、本実施の形態では、断面剛性を異ならせるにあたり、中間部の断面高さH2を他の断面高さH1,H3と異ならせ、断面幅W1,W2,W3、本体部材21aの厚さT1−1,T2−1,T3−1および板部材21bの厚さT1−2,T2−2,T3−2を同じくしている。さらに、逆撓み構造は、中間支持機構によって支持する側(上面)を同じ高さとしつつ逆側(下面)を突出させている。そして、支持部21は、その長手方向において、中間部の断面形状が基端部の断面形状や先端部の断面形状になるように漸次変化して構成されている。
【0032】
このように、図4に示す逆撓み構造は、中間支持機構によって支持される支持部21の中間部の断面剛性を最も高くし、かつ支持部21の基端から先端に至る外形を、中間支持機構によって支持する側を平坦としつつ逆側を突出させている。
【0033】
この逆撓み構造では、図4に示すように、支持部21において、中間部の断面中心O2が、基端側の断面中心O1、および先端側の断面中心O3に対して低くなることから、中間支持機構による支持方向(図4中上側)とは逆方向(下側)の撓み剛性を生じ得ることになる。
【0034】
図5は、クレーンジブに掛かる荷重の説明図であって、図5(a)は逆撓み構造とした支持部21(クレーンジブ2)を示し、図5(b)は逆撓み構造とした支持部21(クレーンジブ2)を模式的に示し、図5(c)は逆撓み構造を採用していない支持部(クレーンジブ)を模式的に示している。なお、図5(a)および図5(b)において、符号Pは、逆撓み構造とした部分を示す。
【0035】
図5(a)に示すように、支持部21は、中間支持機構の滑車7kを介して中間部が上方に向けて支持される。そして、荷役によって、滑車7gが設けられた先端側は基端側に向けて荷重が生じ、支軸2Aに支承されている基端側に反力が生じることで、支持部21には、長手方向を縮める圧縮力が生じることになる。このような場合、図5(c)に示すように逆撓み構造を採用せず長手方向に均一な直線状の基線LUで示す撓み剛性とした支持部21では、中間支持機構によって中間部が上方に撓んだところに圧縮力が生じるため、太線で示すように支持部21が上方に大きく撓む。この撓み量をFUで示す。一方、図5(b)に示すように逆撓み構造を採用して基線LNで示す撓み剛性とした支持部21では、中間支持機構による中間部の撓みが逆撓みによって抑えられることから、圧縮力が生じても、太線で示すように支持部21が上方に大きく撓むことがなく、長手方向に均一な直線Lに対する撓み量FNは、図5(c)で示す撓み量FUよりも小さくなる。このため、逆撓み構造とした本実施の形態のデッキクレーンによれば、撓みを基にして支持部21(クレーンジブ2)に生じるモーメントを抑制することが可能になる。この結果、支持部21(クレーンジブ2)の強度が向上し、安全で壊れにくいデッキクレーンを得ることが可能になる。
【0036】
しかも、本実施の形態では、逆撓み構造とするにあたり、支持部21の基端から先端に至る外形を、中間支持機構によって支持する側を平坦としつつ逆側を突出させて構成している。このため、逆撓み構造を容易に製造することが可能である。
【0037】
図6は、本実施の形態に係る他のクレーンジブの断面図であって、図6(a)は図1におけるA−A断面に相当し、図6(b)は図1におけるB−B断面に相当し、図6(c)は図1におけるC−C断面に相当する。なお、図6では、クレーンジブ2の2つの支持部21のうちの1つの断面を示している。
【0038】
この支持部21は、上述した中間支持機構によって支持される中間部を、中間支持機構による支持方向とは逆方向の撓み剛性を生じ得る逆撓み構造とされている。
【0039】
具体的に、図6に示すように、逆撓み構造は、支持部21において、本体部材21aおよび板部材21bの高さ方向に延在する部分について、中間部の厚さT2−1,T2−2を、基端側および先端側の厚さT1−1,T1−2,T3−1,T3−2に対して厚くしている。このため、支持部21の長手方向において、中間支持機構によって支持される支持部21の中間部の断面剛性が最も高くなる。そして、支持部21は、その長手方向において、中間部の断面形状が基端部の断面形状や先端部の断面形状になるように漸次変化して構成されている。
【0040】
このように、図6に示す逆撓み構造は、中間支持機構によって支持される支持部21の中間部の断面剛性を最も高くしている。このため、中間支持機構による支持方向(図6中上側)とは逆方向(下側)の撓み剛性を生じ得ることになる。
【0041】
そして、この図6に示す逆撓み構造においても、図5で説明したように、撓みを基にして支持部21(クレーンジブ2)に生じるモーメントを抑制することが可能になる。この結果、支持部21(クレーンジブ2)の強度が向上し、安全で壊れにくいデッキクレーンを得ることが可能になる。
【0042】
また、上述したデッキクレーンにおいては、中間支持機構は、俯仰装置をなす俯仰用ウインチ5のワイヤ8aによってクレーンジブ2の中間部を支持する態様で、ワイヤ8aを掛け渡す滑車7kをクレーンジブ2の中間部に設け、ワイヤ8aの先端を旋回ポスト1側に固定してなる。
【0043】
このデッキクレーンによれば、ワイヤ8aを滑車7kに掛け渡して先端を旋回ポスト1側に固定することで、滑車7kを設けず、ワイヤ8aの先端をクレーンジブ2の中間部に固定する構成と比較し、ワイヤ8aの取り回しやメンテナンスを容易に行うことが可能になる。
【0044】
なお、上述したデッキクレーンにおいて、図には明示しないが、支持部21の中空内にリブを配置することで剛性を向上することが可能であり、このリブによって中間支持機構によって支持される支持部21の中間部の断面剛性を最も高くし、中間支持機構による支持方向とは逆方向の撓み剛性を生じさせてもよい。
【0045】
図7は、本実施の形態に係るクレーンジブの軸受構造を示す平面視断面図である。図7では、クレーンジブ2の1つの支持部21を支承する軸受構造を示している。
【0046】
クレーンジブ2(支持部21)の基端を支承する軸受構造は、図7に示すように、旋回ポスト1に設けられた支軸2Aが、クレーンジブ2の基端に設けられたボス部2Bに挿通されている。そして、ボス部2Bと支軸2Aとの間には、ブッシュ2Cが介在されている。ブッシュ2Cは、ボス部2Bに挿通されるとともに、支軸2Aの先端の細径部2Aaを挿通する筒状に形成されている。このブッシュ2Cは、支軸2Aの延在方向で2分割されており、それぞれの外側端部において、ボス部2Bの開口縁に形成された環状凹部2Baに嵌合するフランジ2Caが形成されている。2分割されたブッシュ2Cは、それぞれボス部2Bの外側から挿入され、そこに支軸2Aの細径部2Aaが挿入される。そして、2分割された一方のブッシュ2Cのフランジ2Caは、細径部2Aaをなす段部2Abに当接する。また、2分割された一方のブッシュ2Cのフランジ2Caは、支軸2Aに対してボルト2Dで固定される円盤状の押さえ部材2Eに当接する。この軸受構造では、ブッシュ2Cは、支軸2A廻りのボス部2Bの回転を許容しつつ、ボス部2Bの水平方向への傾動(図7に矢印Gで示す)を規制することになる。
【0047】
このように、上述した軸受構造を有するデッキクレーンは、旋回ポスト1に設けられて水平方向に延在する支軸2Aと、クレーンジブ2の基端に設けられて支軸2Aが挿通されるボス部2Bと、ボス部2Bと支軸2Aとの間に介在され、支軸2A廻りのボス部2Bの回転を許容しつつ、ボス部2Bの水平方向への傾動を規制する平軸受としてのブッシュ2Cとを備える。
【0048】
デッキクレーンにおいては、荷役時に旋回ポスト1を旋回させるときにクレーンジブ2に対して水平方向への荷重が掛かる。ここで、例えば、クレーンジブ2の基端の軸受構造として上記ブッシュ2Cを用いず、水平方向に傾動し得るように球面軸受を用いた場合、クレーンジブ2の軸受部分への水平方向の荷重を逃がすことが可能であるが、連結部22で連結した部分に荷重が集中するため、連結部22と支持部21との連結部分において強度を増さなければならない。このため、クレーンジブ2の重量が嵩み、クレーンジブ2を俯仰する俯仰装置を大型化する必要がある。この点、上述したように、クレーンジブ2の基端の軸受構造としてブッシュ2Cを用いたことにより、当該軸受構造において、水平方向の荷重を受けることから、軸受構造と、連結部22と支持部21との連結部分とに水平方向の荷重が分散される。このため、球面軸受を用いた場合と比較し、水平方向の荷重を受けるために連結部22と支持部21との連結部分の強度を増すことがなく、クレーンジブ2を軽量化し、クレーンジブ2を俯仰する俯仰装置の小型化を図ることが可能になる。
【符号の説明】
【0049】
1 旋回ポスト
2 クレーンジブ
21 支持部
22 連結部
2A 支軸
2Aa 細径部
2Ab 段部
2B ボス部
2Ba 環状凹部
2C ブッシュ
2Ca フランジ
2D ボルト
2E 押さえ部材
5 俯仰用ウインチ
6 昇降用ウインチ
7a〜7k 滑車
8a,8b ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回ポストと、前記旋回ポストに対して上下に揺動可能となるように基端が支承されたクレーンジブと、前記クレーンジブの中間部を上方に支持する中間支持機構と、を備えるデッキクレーンにおいて、
前記中間支持機構によって支持される前記クレーンジブの中間部を、前記中間支持機構による支持方向とは逆方向の撓み剛性を生じ得る逆撓み構造とすることを特徴とするデッキクレーン。
【請求項2】
前記逆撓み構造は、前記中間支持機構によって支持される前記クレーンジブの中間部の断面性を最も高く構成し、かつ前記クレーンジブの基端から先端に至る外形を、前記中間支持機構によって支持する側を平坦としつつ逆側を突出させて構成することを特徴とする請求項1に記載のデッキクレーン。
【請求項3】
前記逆撓み構造は、前記中間支持機構によって支持される前記クレーンジブの中間部の断面剛性を最も高く構成することを特徴とする請求項1に記載のデッキクレーン。
【請求項4】
前記旋回ポストに設けられてワイヤを繰り出しまたは巻き取ることで前記クレーンジブを俯仰させる俯仰装置を備え、
前記中間支持機構は、前記ワイヤによって前記クレーンジブの中間部を支持する態様で、前記ワイヤを掛け渡す滑車を前記クレーンジブの中間部に設け、前記ワイヤの先端を前記旋回ポスト側に固定してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のデッキクレーン。
【請求項5】
前記旋回ポストに設けられて水平方向に延在する支軸と、
前記クレーンジブの基端に設けられて前記支軸が挿通されるボス部と、
前記ボス部と支軸との間に介在され、前記支軸廻りの前記ボス部の回転を許容しつつ、前記ボス部の水平方向への傾動を規制するブッシュと、
を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のデッキクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−250785(P2012−250785A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122308(P2011−122308)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】