説明

デュアル・プレッシャー多段電解による水素発生方法

【課題】低温度、低圧力で高効率を達成する多段圧ハイブリッド・サルファー・プロセス(2)を提供する。
【解決手段】
多段圧ハイブリッド・サルファー・プロセス(2)は少なくとも1基の電解ユニット(16)を含み、電解ユニット(16)は1MPa乃至9MPaの圧力下に作用してガス状HSOを形成する予熱/気化反応器(20)にHSO溶液を供給し、ガス状HSOは7MPa乃至9MPaの圧力下に作用する分解反応器(14)に送られて分解され、分解されたHSOはそれぞれが好ましくは0.1MPa乃至7MPaの圧力下に作用する少なくとも1基のスクラバー・ユニット(14)および少なくとも1基の電解槽ユニット(16)の送られ、ユニット(14)および(16)は連携のランキン・サイクル出力変換ユニット(50)によって給電される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本願は2006年7月17日付け仮出願第60/831,332号に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
サルファー・サイクルは主として高温熱源からの高温熱エネルギーを利用して水素を発生させることができる1群の熱化学的製法である。図1に示すウェスチングハウス・サルファー・プロセス(WSP;HySまたはハイブリッド・サルファー・プロセスとしても知られている)と、図2に示すサルファー アイオダイン(S/I)プロセスとは、このカテゴリーに属する2つの製法である。高温熱源は、例えば、高温ガス冷却型原子炉(HTGR)または天然ガスを燃料とする燃焼器のような約800℃を超える利用可能な熱を発生するなら、如何なる熱源でもよい。
【0003】
ウェスチングハウス・サルファー・プロセスは低温電気化学的ステップにおいて水素を発生させるが、詳しくは、このステップにおいて亜硫酸から硫酸および水素が発生する。この反応は温度約60℃、電流密度約500ma/sq.cm, 電圧0.17乃至0.6Vにおいて進めることができる。サイクルの第2ステップは760℃以上の温度における硫酸の高温分解ステップである。これまでにウェスチングハウスによって実施された研究によって、この反応をPBMRのようなHTGRとの協働で実施するための触媒とプロセス設計が明らかになっている。このプロセスの最終ステップは、室温で水中のSOを吸収することによって亜硫酸およびSOを含まないO流れを形成するステップである。これは本明細書において「標準WSP」と定義する公知プロセスである:
(1)H2SO4≪SO3+H2O≪SO2+0.5O2+H2O(必要な熱>760℃)
(2)SO2+2H2O+0.5O2≪H2SO3+H2O+0.5O2(T<100℃);および
(3)H2O+H2SO3(R)H2+H2SO4(約100℃以下の電解槽)
【0004】
アイオダイン/サルファー・プロセスも760℃以上の温度で硫酸を分解することによって上記の二酸化硫黄を形成する可逆反応から始まり、次いで、二酸化硫黄をヨウ素と反応させることによってHIを形成する。これは本明細書において「標準S/I」と定義する公知プロセスである:
【0005】
(1)H2SO4≪SO3+H2O≪SO2+0.5O2+H2O(必要な熱>760℃)
【0006】
(2)I2+SO2+2H2O+0.5O2+余剰H2O≪2HI+H2SO4+0.5O2+余剰HO(発生熱約100℃乃至200℃);および、
【0007】
(3)2HI≪H2+I2(必要な熱400℃超)。
【0008】
両プロセスに共通のステップは:
HSO≪SO+HO+0.5O
【0009】
上記の標準WSPプロセスおよび標準S/IプロセスはLahoda et al.の米国公報第US2006/0002845 A1に詳しく記載されている。
【0010】
2003年11月に米国ルイジアナ州ニューオーリンズ市で開催されたAmerican Nuclear Society Annual Winter Meetingの会報American Nuclear Society Global Paper #88017に掲載されたGoosen et al.の論文“Improvements in the Westinghouse Process for Hydrogen Production”もウェスチングハウス・サルファー・プロセスについて言及し、これをサルファー・アイオダイン・プロセスと比較している。即ち、ウェスチングハウス・プロセスの経済性について論ずるとともに、ぺブル・ベッド・モジュール炉(PBMR)のような高温ガス冷却型原子炉(HTGR)と一体化し、WSPまたはS/IプロセスのHSO反応器に約800℃−900℃の熱を供給することによって反応を促進することを記述している。
【0011】
SO分解反応器(標準WPSおよび標準S/Iプロセスに共通のプロセス・ステップ)に続いて、HTGRの一次ループから、1組のガスタービンから成る出力変換ユニット(PCU)に高温ガスが送られ、ここで残るエネルギーが抽出される。しかし、HSO分解に必要な高品質の熱が吸収された後では、ガスの温度はもはや好ましいブレイトン・サイクルのガスタービンから得られる高い効率を充分に活用できるほどの高温ではない。
【0012】
このプロセスのうち、図1に参照符号12で示す部分、即ち、硫酸を二酸化硫黄、水蒸気および酸素に分解するステップは高温下に行われる。分解反応器の生成物流れの凝縮温度は供給流れに比較して低いから、図1に参照符号20で示す予熱/気化ユニットのSO/HO/O出口は比較的高温、典型的には9MPaで約260℃に維持されねばならない。(1MPa=145ポンド/平方インチ“psi”)。結果として、予熱器において回収できる熱量は制限される。図1に参照符号14で示すSOスクラバーへ導入され前に、SO/O/HO流れは最終的に約90℃まで冷却しなければならず、この冷却は著しいエネルギー損を意味する。
【0013】
図1に参照符号20で示す予熱/気化ユニットにも材料についての厳しい問題がある。蒸発の過程で、先ず水が沸騰するから、この流れは予熱器において約30乃至50重量%の比較的低濃度のHSO溶液から、最高温度に達した時点で80乃至95重量%の濃縮HSO溶液に変化する。必要な温度(200乃至700℃)で作用できる材料もあるが、そのような材料は極めて高価である。
【0014】
このプロセスにとって固有の別の非効率なところは、供給されるHSOと共に流入する水の蒸発および凝縮である。供給される硫酸は通常30乃至50重量%であるから、凝縮され且つ再循環されるだけのために多量の水が予熱され、凝縮される。この水の蒸発熱もまたエネルギーの観点から極めて不利な条件である。分解プロセスは触媒の存在に助けられるのが普通であり、分解プロセスへの供給材料中の水の存在が分解用の触媒の寿命を著しく縮める。
【0015】
冷却後、SO/O/HO流れが図1に参照符号14で示すSOスクラバーおよびO回収ステップに送られ、ここでSOを水が吸収して亜硫酸を生成させる(HO+SO≪HSO)。この亜硫酸が図1に参照符号16で示す水相電解槽へ供給され、ここで亜硫酸が酸化されて硫酸となり、水素を発生させる(2HO+SO≪H+HSO)。電解ステップが効率的に機能するためには、SOが水に溶解したままの状態でなければならない。しかし、二酸化硫黄の水溶解度は比較的低い。圧力を増大させればスクラバー溶液が吸収可能なSOの量も増大し、生成するOに混在するSOのレベルが低下し、補給SOを少なくすることになる。しかし、圧力を増大させればプロセス機器のコスト、特に電解ユニットを内蔵する容器のコストも増大する。
【0016】
従って、低コストのスチールを使用して効率を高めることができるように運転温度および運転圧力を低くすることが今後の課題である。本発明の主要な目的は低い温度、低い圧力で高い効率を達成することにある。
【発明の概要】
【0017】
上記の必要性を満たし、上記の目的を達成するため、本発明はHSO気化ユニットと、7MPa乃至9MPaの圧力において動作するHSO分解反応器と、生成物冷却器と、0.1MPa乃至7MPaの圧力で作用してOをも生成させ、同じ圧力においてHを発生させる電解槽へ供給するSO回収プロセスとを含むデュアル・プレッシャー・システムを含むハイブリッド・サルファー・プロセスを提供する。
【0018】
本発明はまた、(a)ウェスチングハウス・サルファー・プロセスおよびサルファー・アイオダイン・プロセスから成る群から選択されたサルファー・サイクルであって、電解槽がHSO溶液を1MPa乃至9MPaの圧力および気化したガス状HSOを生成するのに有効な温度で作用するH気化反応器に供給し、気化したガス状HSOが7MPa乃至9MPaの圧力で作用する分解反応器においてHO、SOおよびOに分解され、ガスが少なくとも1基の電解槽ユニットで作用する少なくとも1基のSOスクラバー・ユニットに送られ、少なくとも1基の電解槽ユニットに電力が入力されることによって水素ガスおよび液状HSOが生成し、少なくとも1基のSOスクラバー・ユニットも少なくとも1基の電解槽ユニットも0.1MPa乃至7MPaの圧力で作用するように構成された前記サルファー・サイクルと;(b)少なくとも電解槽ユニットに給電するランキン・サイクル出力変換ユニットと;(c)原子炉およびガス燃料燃焼器から成る群から選択され、ランキン・サイクル・ユニットおよびサルファー・サイクルに流体熱を供給する熱源を含むハイブリッド・サルファー・プロセスにある。
【0019】
本発明の詳細を添付の図面と関連させながら以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の説明に先立って、従来技術の図1および図2に戻って、図1は900 psi未満で作用する標準的なWSPプロセス2を示す。図2に示す標準的なS/Iプロセス4も900 psi未満で作用する。図1において、約760℃乃至1000℃の熱エネルギーが酸素発生/硫酸分解反応器12に送られて図示の反応を起こし、HO、SOおよびOを酸素回収/SOスクラバー・ユニット14に送り、ユニット14からのHOおよびSOが直流給電される電解槽16へ送られて、参照符号6で示すようにHを生成させる一方、生成したHSOは予熱器/気化器20において熱エネルギー22によって気化され、気化されたHSOが図示のように酸素発生器/硫酸分解反応器12に供給される。
【0021】
図2に示すように、温度に対するS/Iの反応を略示するサクリ(Sakuri)プロセスにおいて、硫酸26は気化器28において気化された後、約760℃乃至810℃の分解反応器30に送られてOを発生させ、O、HOおよびSOをヨウ素反応器32へ送ると、反応器32がHIを発生させ、HIは第2分解反応器34において分解され、余剰I分離器36を経た後、参照符号6で示すHを生成させる。分解反応器34はブンゼン反応器とも呼称されるヨウ素反応器32のための、参照符号38で示すIの主要供給源となる。
【0022】
WSPまたはS/Iサイクルを終始約1450psi(10.0MPa-メガ パスカル)で運用することによってエネルギー的に非効率的な冷凍システムまたは過剰な水を使用することなく20℃乃至75℃超の温度でユニット14においてシステムからSOを除去することができる。詳細は米国公報第2006/0002843 A1号(Lahoda et al.)明細書に記載されている。
【0023】
種々の改善策が提案され、これらを組み合わせることによって「発明の概要」の末尾に言及した問題の多くが解決される。先ずは好ましくは発電のための蒸気をベースとするランキン・サイクルを利用する一体化プロセスを採用することである。この奇抜なアプローチを図3に示す。
【0024】
高温ガス供給源とタービンとの間の中間流体として蒸気を使用するランキン・サイクルよりもガスタービンを利用するブレイトン・サイクルの方が効率的である。しかし、高温ガス供給源の温度が約750℃まで低下すると、ランキン・サイクルの方がブレイトン・サイクルよりも効率的になる。これは高温熱源を使用して先ずHSOを分解する場合である。分解の結果として、温度が約750℃になり、従って、意外にもランキン・サイクルのほうがブレイトン・サイクルよりも有効である。
【0025】
SO/O/HO混合物をHSO反応器12の出口温度から90℃まで冷却することはかなり大きい熱負荷となる(下に掲げる表1を参照)。
【0026】
表 1
出力変換ユニット(PCT)に供給されるエネルギーおよび正味WSPプロセス効率に対する圧力の影響

圧力 SOスクラバー PCUへのMW(t)/ 水素生成率 WSPプロセス
(MPa) 冷却器への 総可用MW(t) (kg/sec) の効率
SO流れ温度(℃)
9 262 59.2/59.2 0.797 42.0%
8 259 61.4/61/4 0.778 42.0%
7 255 63.7/65.2 0.748 41.5%
6 249 60.5/66.4 0.725 40.3%
5 240 56.1/70.5 0.704 38.9%
4 229 50.7/71.2 0.682 37.3%
【0027】
SO/O/HO混合物からの熱を図1に参照符号14で示す水冷熱交換器/SOスクラバー・ユニットによって冷却すれば、高温のSO/O/HO流れを利用して図3に示すランキン・サイクルの出力変換ユニットへの給水を予熱することにより、熱を有効に利用することができる。しかし、有効利用できる熱量はSO/O/HO流れの入口温度とランキン・サイクルの沸騰温度とに依存する。これらの流れの温度は分解反応器およびランキン・サイクル・ボイラーにおける圧力に依存する。計算結果によれば、18MPaのランキン・サイクルのPCUの場合、給水予熱に有効利用できるエネルギー%は、もし図1に参照符号12で示す分解反応器における圧力が7乃至9MPa未満なら、100%にはるかに届かない。
【0028】
実際のランキン・サイクルには非効率性が伴う。図4のT-S図は実際のサイクルを示す。(1′)から(1)に至る経路は作動流体をボイラーの高圧部へポンプバックするステップを表わす。
【0029】
(1)から(2)に至る経路はSO/O/HO流れによって行なわれるボイラー給水の予熱を表わす。(2)から(3)に至る経路は分解反応器の出口からの高温Heによる水の沸騰を表わす。湿り蒸気はタービン翼を腐食させるから、通常は蒸気を状態(4)まで過熱する。膨張には効率を妨げる要因があり、断熱性も可逆性もないから、膨張ステップをエントロピーがやや増大している経路(4)-(5)で示してある。タービンを出た蒸気は飽和しないから、熱交換器の図示しない部分がステップ(5)-(5′)において蒸気から顕熱を除去する。詳細は1964年John Wiley & Sons 刊行のJames Coull and Edward Stuart著“Equilibrium Thermodynamics”に記載されている。
【0030】
本発明のプロセスにとって極めて重要なのはデュアル・プレッシャー・システムの提案である。図1に参照符号12で示す分解反応器は7乃至9MPaで運転され、SO冷却デューティの殆どすべてをPCU-ランキン・サイクル-給水予熱用として回収することができる。SOスクラッビング-電解プロセスに要するコストを大きく軽減するため、図1のユニット14、16に相当するシステム部分の圧力を分解反応器12の圧力7乃至9MPa未満に低下させる。但し、図1に示すハイブリッド・サルファー・プロセスの低圧側14-16は分解反応器12において生成し、電解槽への供給溶液中に含まれるSOを吸収するのに充分な高い圧力レベルを維持しなければならない。さもなければ、過剰なSOがOと共に失われ、下に掲げる表2に示すような問題を惹起する:
【0031】
表 2
圧力および吸収/電解回数に応じたO流れ中SOの損失
圧力(MPa) 単一段/3段の場合の 単一段/3段の場合の
生成量中SO損失(kg/hr) O中のSO
9 0.46/0.006 6.7%/0.094%
8 0.755/0.020 11%/0.32%
7 1.4/0.111 19%/1.18%
6 2.6/0.472 31%/7.5%
5 5.0/1.57 47%/22%
4 11.0/4.11 66%/43%
【0032】
特記すべきは、この問題を解決するための好ましい実施形態として図6に示すような多段SO吸収/電解プロセスを提案する。図6は3つの並列SO吸収/電解段14’、14’、14’・16’、16’、16’を有するシステムを示す。但し、所要のO中SOレベルを生成させるのに必要な段数を使用することができ、並列であることが好ましい。この重要なアプローチにおいては、SOが複数段に亘って吸収され、電解される。従って、それぞれの電解段を出るごとに硫酸中に含まれるSOが減少し、後続の吸収段において酸がスクラッビング液として有効に利用されることになる。このアプローチは分解反応器において必要とされる圧力(表1参照)よりもはるかに低い圧力下で作用しながらO中のSO損失を激減させる。従って、現実的な見地からしてこのアプローチは圧力を低下させることによって電解領域における設備コストを著しく軽減し、プロセス全体を商業的に採用し易くする。
【0033】
図3は熱エネルギー損を最小限に抑制するPCU-ハイブリッド・サルファー・システムを示す。図3ではPBMRとして示す原子炉またはガス燃料燃焼器は950℃の流体熱、ここではHeを第1中間熱交換器44に供給し、熱交換器44は熱46を図1または図2に示すようなハイブリッド・サルファー・プロセス、ここではWSP2に送る一方、約776℃の熱48をランキン・サイクルPCU50に送る。WSP2からの流体熱52は再び第1中間熱交換器44に戻される。ランキン・サイクル50からの電力は図1に示すユニット16、即ち、WSP2における電解槽への給電に利用される。He温度を含むエネルギー・データを詳細に示す図3から明らかなように、ランキン・サイクルは冷却された流体熱56をPBMRに戻す。
【0034】
例えば、図1に示すような本発明のハイブリッド・サルファー・プロセスにおいて、WSPは(1)サルファー・サイクル、好ましくはウェスチングハウス サルファー プロセス2と;(2)ランキン・サイクル出力変換ユニット50と;(3)ランキン サイクル ユニット50およびサルファー・サイクルに流体熱を供給する原子炉およびガス燃料燃焼炉から成るグループから選択される熱源40とから成る。サルファー・サイクルは、1MPa乃至9MPaの圧力および熱源10-熱エネルギーを利用して気化状態のHSOを発生させるに充分な温度において作用する図1に示すHSO予熱/気化/分解反応器20にHSOを供給する電解槽16を含み、HO、SOおよびOから成る分解されたHSOが好ましくは、図6に示すように複数の電解槽ユニット16’と並列に運転される複数のSOスクラバー ユニット14’に送られ、電解槽ユニットが給電されると水素ガスが発生し、SOスクラバー・ユニットも電解槽ユニットも0.1MPa乃至7MPaの圧力下に作用してデュアル・プレッシャー・システムを構成する。ランキン・サイクル出力変換ユニット50はサルファー・サイクルおよび複数の電解槽ユニットに給電する。熱源は原子炉であることが好ましい。
【0035】
図5は高温のSO/O/HO流れをまとめて図3に参照符号50で示すランキン・サイクルを運転する態様を示す。図5はまた、分解反応器から排出されるガスからの熱を利用して給水ポンプからの給水を加熱して水蒸気にする態様をも示す。図5は過熱および再加熱の2段ランキン・タービン・サイクルを示すが、本発明の範囲を逸脱することなく、好適な過熱および予熱段を含む任意の数の蒸気タービン段を使用することができる。図5において、参照符号60は複数のSO吸収段を通過する常温SO/O/HOを示し、参照符号62は分解反応器の出口からの高温SO/O/HOを示す。
【0036】
分解反応器への供給システムに直接接触熱交換器およびHSO濃縮器を使用することも本発明の特徴である。従来型熱交換器は極めて広い熱交換面積を必要とし、その結果、多大のコストと部品数が必要になる。間接熱交換器の使用は内部温度臨界点、即ち、予熱器の両側で起こる相変化が原因で高温側の流体温度が低温側の流体温度に接近する熱交換器における点によって制限される。しかし、本発明のプロセスは図1に参照符号12で示す分解反応器に供給される極めて高濃度(80%乃至95%)のHSOを生成させる(余剰水を気化するためのエネルギー負荷を著しく軽減する)ことによって分解反応器による生成流と供給流との間の効率的なエネルギー交換を可能にする。図1に参照符号20で示すHSO濃縮器/気化器/予熱器を図7に示すように物理的に図1に参照符号12で示す分解反応器の上方に配置すれば、反応器への供給液は反応器から排出される生成物よりもはるかに濃密であるから、分解反応器への供給にポンプを使用する必要がなくなる。図7は分解反応器との重力関係において上方に位置する直接接触濃縮器の具体例を示す。
【0037】
最後に、もう1つの設計上の特徴として、再循環硫酸の圧力を吸収/電解部における圧力よりもさらに大気圧まで低下させる。これにより酸貯蔵タンクのコストを軽減し、溶解Oおよび還元SOを酸から排気することができ、このように供給液からの余計な生成物を排除することによって分解反応器への供給液の腐食性を軽減するとともにHSOからSO/O/HOへの変換を促進することができる。
【0038】
好ましい実施形態を以上に説明したが、後記する特許請求の範囲内において、本発明を上記以外の形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ウェスチングハウス・サルファー・プロセスの従来技術ブロックダイヤグラムである。
【図2】サルファー・アイオダイン・プロセスの従来技術ブロックダイヤグラムである。
【図3】本発明の代表的な実施例として、ランキン・サイクルおよび水素生成を利用するハイブリッド・サルファー・プロセスの総合的なフローダイヤグラムである。
【図4】実際のランキン・サイクルの動向を示すグラフである。
【図5】熱エネルギー損を最小限に抑制するためのPCUとハイブリッド・サルファー・システムの相互連結を示すブロックダイヤグラムである。
【図6】並列多段SO吸収電解システムを示すブロックダイヤグラムである。
【図7】一体化されたHSO濃縮反応器およびHS分解反応器を示す簡略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉または天然ガス燃料燃焼器から得られる熱によるHSOのHO、SOおよびOへの分解を利用して水素を発生させるデュアル・プレッシャー・ハイブリッド・サルファー・プロセスにおいて、
(a)7MPa乃至9MPaの圧力において動作するHSO分解反応器と;
(b)0.1MPa乃至7MPaの圧力で行なわれる少なくとも1つのSO回収プロセスと;
(c)液状HSOを生成させる少なくとも1つの電解槽と;
(d)ハイブリッド・サルファー・プロセスに電力を供給するランキン・サイクルを含むデュアル・プレッシャー・ハイブリッド・サルファー・プロセス。
【請求項2】
デュアル・プレッシャー・ハイブリッド・サルファー・プロセスにおいて、
(a)ウェスチングハウス・サルファー・プロセスおよびサルファー・アイオダイン・プロセスから成る群から選択されたサルファー・サイクルであって、電解槽がHSO溶液を気化したガス状HSOを生成するのに有効な圧力及び温度で作用するH気化反応器に供給し、気化したガス状HSOが7MPa乃至9MPaの圧力で作用する分解反応器においてHO、SOおよびOに分解され、ガスが少なくとも1基の電解槽ユニットで作用する少なくとも1基のSOスクラバー・ユニットに送られ、少なくとも1基の電解槽ユニットに電力が入力されることによって水素ガスおよび液状HSOが生成し、少なくとも1基のSOスクラバー・ユニットも少なくとも1基の電解槽ユニットも0.1MPa乃至7MPaの圧力で作用するように構成された前記サルファー・サイクルと;
(b)少なくとも電解槽ユニットに給電するランキン・サイクル出力変換ユニットと;
(c)原子炉およびガス燃料燃焼器から成る群から選択され、ランキン・サイクル・ユニットおよびサルファー・サイクルに流体熱を供給する熱源を含むデュアル・プレッシャー・ハイブリッド・サルファー・プロセス。
【請求項3】
熱交換器とHSO気化器の組み合わせを使用することによって流入する硫酸溶液を予熱してこれを80%乃至95%のHSO溶液に濃縮し、高温の高濃度HSOを分解反応器に供給する請求項2に記載のハイブリッド・サルファー・プロセス。
【請求項4】
SO気化反応器を分解反応器の上方に配置することによって、高濃度/ガス状HSOの重力流動を可能にして分解反応器へのポンプによる供給を不要にする請求項3に記載のハイブリッド・サルファー・プロセス。
【請求項5】
複数のSOスクラバー・ユニットおよび電解槽ユニットが存在する請求項2に記載のハイブリッド・サルファー・プロセス。
【請求項6】
複数の段階に亘ってSOを吸収および電解して、HSOがそれぞれの電解槽ユニットを出るごとにこれに混在するSOを激減させることにより、後続の吸収段階のためのスクラッブ溶液における酸を有効に使用できるようにする請求項5に記載のハイブリッド・サルファー・プロセス。
【請求項7】
ランキン・サイクルが蒸気をベースとする請求項2に記載のハイブリッド・サルファー・プロセス。
【請求項8】
分解反応器を約750-760℃で運転することによって連携するランキン・サイクルの効率を高める請求項2に記載のハイブリッド・サルファー・プロセス。
【請求項9】
熱源が原子炉である請求項2に記載のハイブリッド・サルファー・プロセス。
【請求項10】
原子炉からの流体熱を先ず熱交換器に通した後、ランキン・サイクルへ導入する請求項9に記載のハイブリッド・サルファー・プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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