説明

データキャリア

【課題】この発明は、内部データの保護に際して、不正に封止部材が開けられて内蔵部品の分解が試みられたとき、この封止部材の開口と同時に内蔵データを自動破壊するように分解不能に構成して、内部データの保護を図ったデータキャリアの提供を目的とする。
【解決手段】この発明は、データキャリアを製作する際、コイルを備えた封止部材とICを内蔵するモジュールとをキャリアケースに分解不能に固着して、内部データを改竄不能なデータキャリアを製作したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、製品のタグとして利用されるようなデータキャリアに関し、さらに詳しくは記憶データの改竄を防止するデータ保護機能を備えたデータキャリアに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、この種のデータキャリアは、製品の仕分け管理、売上登録管理等のデータ管理用に用いられ、例えば、図8に示すように、クリーニング店舗の衣服管理用のタグとして用いた場合は、各々の衣服81…にデータキャリア82を取付け、このデータキャリアの配送先別、サイズ別、履歴データ等の処理データを読取装置83が非接触に読取って、衣服処理ライン84に搬送される衣服を処理目的位置へと搬送している。
【0003】このようなデータキャリアは、図9及び図1010に示すように、小さな環状凹部のキャリアケース91内に、ICを含む電子部品を実装するモジュール92と、コイル93とをハンダ付けして内蔵し、その上方を円板状の封止部材94で封止して一体成形している。
【0004】しかし、このような封止構造では、外部よりデータキャリアの封止部材を開けて容易に分解可能であり、この分解時に内蔵部品を取出してICを解析し、このICデータを改竄してデータキャリアが不正使用される恐れがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこでこの発明は、内部データの保護に際して、不正に封止部材が開けられて内蔵部品の分解が試みられたとき、この封止部材の開口と同時に内蔵データを自動破壊するように分解不能に構成して、内部データの保護を図ったデータキャリアの提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、コイルを備えた封止部材とICを内蔵するモジュールとをキャリアケースに分解不能に固着したデータキャリアであることを特徴とする。
【0007】請求項2記載の発明は、封止部材にコイルを形成し、キャリアケースにICを内蔵するモジュールを形成して両者を分解不能に接合したデータキャリアであることを特徴とする。
【0008】請求項3記載の発明は、キャリアケースへの組込み後に、外部より加熱して分解不能に一体成形するデータキャリアであることを特徴とする。
【0009】請求項4記載の発明は、コイルを封止部材にエッチングして取付けることを特徴とする。
【0010】請求項5記載の発明は、コイルを封止部材に埋め込んで取付けることを特徴とする。
【0011】請求項6記載の発明は、コイルを封止部材に印刷して取付けることを特徴とする。
【0012】
【発明の作用及び効果】この発明によれば、データキャリアを製作する際、コイルを備えた封止部材とICを内蔵するモジュールとをキャリアケースに分解不能に固着してデータキャリアを構成する。このため、得られたデータキャリアは分解不能に固着されてデータが完全に保護された状態で使用される。従って、仮に不正行為者が外部より無理に封止部材を開けて分解を試みた場合は、固着部分が外れると同時にコイルが断線し、かつモジュールとの接合が破壊されるため、このデータの改竄を自動的に無効にしてデータキャリアの不正使用を完全に防止することができる。
【0013】また、封止部材にコイルを形成し、キャリアケースにICを内蔵するモジュールを形成して両者を分解不能に接合するように設定した場合は、2つの部材を接合するだけで簡単に製作することができる。
【0014】さらに、キャリアケースへの組込み後に、外部より加熱して分解不能に一体成形するように設定すれば、製作に際して、組込み操作と加熱操作とを分担できるため内蔵すべき組込み部品の取扱いが容易化し、また外部から容易に加熱操作することができる。
【0015】また、コイルの取付けに際して、コイルを封止部材にエッチングして取付けるように設定すれば、このエッチング処理によりコイルを封止部材の定位置に簡単に取付けることができる。
【0016】同じく、コイルの取付けに際して、コイルを封止部材に埋め込んで取付けるように設定すれば、封止部材に埋め込むだけで簡単に取付けることができる。
【0017】同じく、コイルの取付けに際して、コイルを封止部材に印刷して取付けるように設定すれば、封止部材にコイルを精度よく印刷することができる。
【0018】
【実施例】この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
[第1実施例]図1〜図3は抵抗溶接を用いて加熱接合したデータキャリア11を示し、このデータキャリア11は、円板状の下面にコイル12を形成した封止板13と、ICを内蔵するモジュール14とを、キャリアケース15に分解不能に固着して一体形成する。
【0019】上述の封止板13は、樹脂材にて形成した円板の下面にエッチング処理あるいは印刷処理によってコイル12を一体形成し、また上面に抵抗溶接用の小径の上電極16を上方から臨ませるための上電極挿入孔17を左右一対に開口している。この封止板13を後述するキャリアケース15の上面開放部に当てがって封止する。
【0020】上述のキャリアケース15は、樹脂材にて既述した封止板13と略同径の有底円筒形を有し、この上面中央部に小さな長方形状のモジュール14を嵌合する嵌合凹部18を開口し、ここにモジュール14の上面を露出させた状態で嵌合固定してキャリアケース15の上面中央部に搭載する。
【0021】このモジュール14は、両側に配線接続片19を突設しており、両配線接続片19を嵌合するキャリアケース15の各下面側には抵抗溶接用の小径の下電極20を下方から臨ませるための下電極挿入孔21を左右一対に開口している。また、この場合、配線接続片19の上面を上電極挿入孔17と対向する位置に設定し、上下の電極挿入孔17,21を対向させた状態で上電極16と下電極20とを臨ませて抵抗溶接したとき、この配線接続片19と上方のコイル12の一部分とが一体に溶接されて分解不能に接合される。
【0022】また、抵抗溶接に先立って、キャリアケース15にモジュール14を組込んだ後に、その上面開放部をコイル12を備えた封止板13で封止する際、キャリアケース15の周縁部と封止板13の周縁部との上下に対向する相互の環状接触面に粘着剤を塗布して接着し、一体化しておく。
【0023】このように構成されたデータキャリア11は、分解不能に固着されてデータが完全に保護された状態で使用されるため、仮に不正行為者が外部より無理に封止板13を開けて分解を試みた場合は、抵抗溶接した固着部分が外れると同時に、コイルが断線し、かつモジュールとの接合が破壊されるため、このデータの改竄を自動的に無効にしてデータキャリア11の不正使用を完全に防止することができる。
【0024】また、封止板13にはエッチング処理や印刷処理によってコイル12を一体形成することができ、またキャリアケース15にはモジュール14を嵌合固定して一体形成することができ、これらの2部材を接合するだけで簡単に製作することができる。ことに、キャリアケース15に封止板13を組込んだ組込み後に外部より抵抗溶接して分解不能に一体成形するため、製作に際して組込み操作と加熱操作とを分担でき、内蔵すべき組込み部品の取扱いが容易化し、また外部から容易に加熱操作することができる。
【0025】[第2実施例]図4はコイル埋設形の封止板を用いたデータキャリア41を示し、このデータキャリア41は、コイル42を埋め込んだ封止板43と、ICを内蔵するモジュール44を嵌合したキャリアケース45とを分解不能に一体形成するものであって、封止板43は樹脂材にて形成した円板の下面にコイル42を露出させた状態で一体に埋め込み、この封止板43を後述するキャリアケース45の上面開放部に当てがって封止する。
【0026】上述のキャリアケース45は、樹脂材にて既述した封止板43と略同径の有底円筒形を有し、この上面中央部に小さな長方形状のモジュール44を嵌合する嵌合凹部46を開口し、ここにモジュール44の上面を露出させた状態で嵌合固定し、キャリアケース45の上面中央部にモジュール44を搭載する。
【0027】また、モジュール44の両側に突設する配線接続片47が、封止板43のコイル42と接触対応する位置に配置構成され、キャリアケース45上に封止板43を接合した時には、配線接続片47とコイル42とが対応して配線接続される。この接合に際しては、予めキャリアケース45の周縁部と封止板43の周縁部との上下に対向する相互の環状接触面に粘着剤を塗布して接着固定し、接着後に外部より加熱して内部の配線接続片47とこれに対向するコイル42の一部分とが溶融固定して分解不能に接合する。
【0028】この場合、溶融接合面には予めハンダ等の溶融接合部材を介在させて、加熱時の接合性能を高めるのが好ましい。また組込み後に、封止板43及びキャリアケース45の外部から加熱するため、その材質にはポリフェニレンサルファイド(Polyphenylene Sulfide、以下PPSと称す)等の耐熱性樹脂材を使用する。このようなコイル埋設形の封止板43を用いても、分解不能なデータ保護機能に優れたデータキャリア41を構成することができる。
【0029】[第3実施例]図5及び図6は異方性導電シートを用いたデータキャリア51を示し、このデータキャリア51は、コイル52を形成した封止板53と、ICを内蔵するモジュール54を嵌合したキャリアケース55とを分解不能に接着用の異方性導電シート56を介在させて一体形成するものであって、この異方性導電シート56はモジュール54の両側に突設する配線接続片57に対応するシートの両側位置を導電材56aで形成し、その中間部分を非導電材56bで形成している。
【0030】そして、異方性導電シート56を介在させた状態で封止板53とキャリアケース55とを接合して配線接続するとき、予めキャリアケース55の周縁部と封止板53の周縁部との上下に対向する相互の環状接触面には粘着剤を塗布して一体に接着固定する。この接着後に外部より加熱して内部の導電材56aの接着性を高め、上下に対向するコイル52と配線接続片57とを分解不能に一体に接合する。
【0031】この溶融接着用の異方性導電シート56を介在させることにより、分解不能な接合性能を高めることができる。また組込み後に外部から加熱するため、封止板53及びキャリアケース55の材質にはPPS等の耐熱性樹脂材を使用する。
【0032】このような異方性導電シート56を用いて接合しても、分解不能なデータ保護機能に優れたデータキャリア51を構成することができる。
【0033】[第4実施例]図7はハンダ片を用いて加熱接合したデータキャリア71を示し、このデータキャリア71はコイル72を形成した封止板73と、ICを内蔵するモジュール74を嵌合したキャリアケース75とを分解不能に溶融接着用のハンダ片76を介在させて一体形成するものであって、このハンダ片76はモジュール74の両側に突設する配線接続片77と対応する両側位置に載せた状態で接合する。またこの場合、モジュール74の両側に突設する配線接続片77は封止板73のコイル72と対応する位置に配置構成される。
【0034】そして、ハンダ片76を介在させた状態で封止板73とキャリアケース75とを一体形成する際、予めキャリアケース75の周縁部と封止板73の周縁部との上下に対向する相互の環状接触面に粘着剤を塗布して接着固定し、接着後に外部より加熱して内部のハンダ片76を溶融固定して、上下に対向するコイル72と配線接続片77とを分解不能に一体に接合する。
【0035】この溶融接着用のハンダ片76を介在させることにより、分解不能な接合性能を高めることができる。また組込み後に外部から加熱するため、封止板73及びキャリアケース75の材質にはPPS等の耐熱性樹脂材を使用する。このようなハンダ片76を用いて接合しても、分解不能なデータ保護機能に優れたデータキャリア71を構成することができる。
【0036】上述のように、データキャリアを製作する際、コイルを備えた封止板とICを内蔵するモジュールとをキャリアケースに分解不能に固着してデータキャリアを構成する。このため、得られたデータキャリアは分解不能に固着されてデータが完全に保護された状態で使用される。従って、仮に不正行為者が外部より無理に封止板を開けて分解を試みた場合は、固着部分が外れると同時にコイルが断線し、かつモジュールとの接合が破壊されるため、このデータの改竄を自動的に無効にしてデータキャリアの不正使用を完全に防止することができる。
【0037】また、封止板にコイルを形成し、キャリアケースにICを内蔵するモジュールを形成して両者を分解不能に接合するため、2つの部材を接合するだけで簡単に製作することができる。ことに、キャリアケースへの組込み後に外部より加熱して分解不能に一体成形するため、製作に際して組込み操作と加熱操作とを分担することができ、内蔵すべき組込み部品の取扱いが容易化し、また外部から容易に加熱操作することができる。
【0038】また、コイルの取付けに際して、コイルを封止板にエッチング処理して取付けるように設定すれば、このエッチング処理によりコイルを封止板の定位置に簡単に取付けることができる。同じく、コイルを封止板に埋め込んで取付けるように設定すれば、封止板に埋め込むだけで簡単に取付けることができる。さらに、コイルを封止板に印刷して取付けるように設定すれば、封止板の平面部分にコイルを精度よく印刷することができる。
【0039】この発明と、上述の一実施例の構成との対応において、この発明の封止部材は、実施例の封止板13,43,53,73に対応するも、この発明は請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、上述の一実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1実施例のデータキャリアを示す展開斜視図。
【図2】 この発明の第1実施例のデータキャリアの接合状態を示す縦断面図。
【図3】 この発明の第1実施例のデータキャリアを示す縦断面図。
【図4】 この発明の第2実施例のデータキャリアの接合状態を示す縦断面図。
【図5】 この発明の第3実施例のデータキャリアの接合状態を示す縦断面図。
【図6】 この発明の第3実施例の異方性導電シートとモジュールとの対応状態を示す斜視図。
【図7】 この発明の第4実施例のデータキャリアの接合状態を示す縦断面図。
【図8】 従来のタグとして用いたデータキャリアの使用状態を示す斜視図。
【図9】 従来のデータキャリアを示す展開斜視図。
【図10】 従来のデータキャリアを示す縦断面図。
【符号の説明】
11,41,51,71…データキャリア
12,42,52,72…コイル
13,43,53,73…封止板
14,44,54,74…モジュール
15,45,55,75…キャリアケース
19,47,57,77…配線接続片
56…異方性導電シート
56a…導電材
56b…非導電材
76…ハンダ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】コイルを備えた封止部材とICを内蔵するモジュールとをキャリアケースに分解不能に固着したことを特徴とするデータキャリア。
【請求項2】封止部材にコイルを形成し、キャリアケースにICを内蔵するモジュールを形成して両者を分解不能に接合することを特徴とするデータキャリア。
【請求項3】キャリアケースへの組込み後に外部より加熱して分解不能に一体成形することを特徴とする請求項1または2記載のデータキャリア。
【請求項4】コイルは封止部材にエッチングして取付けることを特徴とする請求項1、2または3記載のデータキャリア。
【請求項5】コイルは封止部材に埋め込んで取付けることを特徴とする請求項1、2または3記載のデータキャリア。
【請求項6】コイルは封止部材に印刷して取付けることを特徴とする請求項1、2または3記載のデータキャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2000−124337(P2000−124337A)
【公開日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−298327
【出願日】平成10年10月20日(1998.10.20)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)