説明

データサポート上で音響データを記録、再生及び操作する方法

本発明は、マルチトラック及び1つ又はそれ以上のチャンネルによって構成される音響信号をデジタル情報用記録サポートの単一トラック上にデジタルデータ形式で記録する方法、並びに前記記録サポートの単一トラック上にかかる形式で記録される音響信号を形成する複数のトラックの操作を可能にするかかる形式の再生方法に関する。
応用フィールドは、専門的音響部門において、ダンスホール及びディスコにおいて歌曲をミキシングすることに従事するディスクジョッキー(DJ)に向けたものであり、歌曲の楽器及び/又は声の異なるデジタルトラックを独立してリアルタイムで同時に操作することができる本発明を通して、これら専門家の能力を向上させてより創造的にする。家庭内音響環境(カラオケなど)にもまた適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル技術の分野に含まれ、詳細には音響信号の処理に関し、より詳細には、音楽産業においてその応用分野が見出される。
本明細書に開示される発明は、マルチトラック及び1つ又はそれ以上のチャンネルによって構成される音響信号をデジタル情報記録サポートの単一トラック上にデジタルデータ形式で記録する方法、並びにデジタル情報記録サポートの単一トラック上にこうした形式で記録される音響信号を形成する複数のトラックの操作をも可能にする前記形式を再生する方法に関する。
【0002】
本発明の目的は、音響トラックの情報を含むデータサポート上に記録され、マルチチャンネルか否か及び品質劣化が有るか否かに関係なく、従来の音響デジタル形式で記録されたトラックを形成する複数のサンプルから構築することができ、その結果、品質を損なうこと無くトラックのオリジナルチャンネルを用いてリアルタイムで再生することができ、また該チャンネル及びトラックを独立して操作することができるようにする音響形式を提供することである。
【0003】
本明細書で提案される発明は、専門的な音響産業に適用可能であり、詳細には、レコード業界及びディスクジョッキー(DJ)の業界の両方に適用可能であるが、音響産業分野の家庭用環境にも適用することができる。
【背景技術】
【0004】
音は、通常は空気中である我々が位置する媒体中で生成される振動によって聞こえる。この振動を記録することができ、その音を再生することを可能にする幾つかの方法がある。最も基本的な方法は、この振動を示す電波を用いるものである。マイクロホンの内部では、この振動が膜を動かして電気信号に変換され、一方、これを再生するためには逆のプロセスが行われ、信号を用いて膜を動かして空気を振動させ、これにより音を聞くことができる(ラウドスピーカ)。
【0005】
この音(波)を記憶するために、マイクログルーブを記録することができ、その凹凸が波を再生し、この波が針(レコード盤)又は特定の方向に配向された磁粉を用いて読取られる。このシステムは、テープで使用されるものである。音を記憶するこれらの形式はアナログと呼ばれ、すなわち音波が別の波によって記憶される。
情報技術の発達と共に、音を記憶する別の形式が考え出され、これは、その波の値をコンピュータに記憶することができる数値(0及び1)に変換することからなる。この方法で保存される音響信号は、デジタル音響として公知である。
【0006】
この音をデジタル化するためには、波上のポイントを取る必要があり、その瞬間での波の値が記録される。波は無数の値を選ぶことができ、時間連続であると同時に、コード化プロセスが離散的な値を生成し、すなわち限定数の利用可能な値の中から1つの値だけを取ることだけができ、各値はある時間間隔で持続し、連続的ではない。
【0007】
この音の品質は幾つかの要因に依存し、主に以下のものがある。
サンプリングレート:これは収集されるサンプル数を示し、この値が大きいほどデジタル音響がより正確にオリジナルを反映することになる。サンプリングレートはヘルツ(Hz)で計測されるが、ヘルツは単位ではなく、1秒当たりの事象の1周期を示す。すなわち、1000Hzのレートは、毎秒1000の値が収集されることを意味する。ナイキストの定理によれば、最小のサンプリングレートは、サンプリング化を望む音の最大周波数の2倍でなければならない。
【0008】
ワード長:利用可能な数の値に等しい。値はバイナリ形式(0及び1)で記憶される。すなわち8ビットの長さが与えられると、各サンプルは常に8つの0と1の組合せを有することになる。幾つの組合せがあるかを10進法で知るためには、2(利用可能な数字の数)をワード長で累乗すればよく、すなわち28=256である。
【0009】
チャンネル数:異なる音が幾つあるかを示す。1つのサウンドトラックしかなければ、モノラル(又はモノ)サウンドが聞こえる。すなわち、1対のラウドスピーカで再生されても、両方から同じ音が聞こえることになる。次の方法は、2つの異なるチャンネルがある立体音響サウンドすなわちステレオであり、これによって特定の効果を再現し、より大きな空間感覚の有する音を提供することが可能である。
【0010】
圧縮レベル:より少ないスペースにより多くの音響を記憶することを可能にする目的で、デジタル情報に圧縮を加えることができ、これには損失あり(不可逆性)又は損失なし(可逆性)の場合がある。
コンピュータにおいて、この情報をデジタル化して圧縮し、次いでこれを再生する方法(及びアルゴリズム)をコーデック(符号化−復号化)と呼ぶ。
【0011】
現在では多くのデジタル音響形式が存在し、様々な用途がある。これらの中でも特に3つのタイプが重要とすることができる。
1.品質劣化のないPCM形式
2.品質劣化のある音響圧縮形式
3.ビデオ及びゲーム用の音響マルチチャンネル形式
【0012】
品質劣化のないPCM形式の中で2つのクラスに分類される。
1.a. CD音響:パルス符号変調(PCM)コード化が行われ、その特性は、サンプリングレート44.1kHz、16ビット、ステレオである。
1.b. Wav及びAiff:それぞれMicrosoft(登録商標)及びApple(登録商標)によって開発された音響形式、これらは音を記憶する形式であり、異なるコーデックを用いてエンコードすることが可能である。
【0013】
品質劣化のある音響圧縮形式に関しては、2つの類似のタイプが知られている。
2.a. MP3及びAtrac:非可聴周波数を除去する圧縮方法であり、品質は劣化するが、一連のアルゴリズムを用いて非常に小さな記憶スペースを占める音を実現することができる。MP3は、インターネット上での歌曲の交換用に最も広く普及した形式であり、この名称は、MPEG3(この標準規格は存在しない)を示すものではなくMPEG1−layer3であり、当初は、MPEG1のビデオ用に考え出された音響仕様であった。Atracは、MP3と同様の概念である、Sony(登録商標)の圧縮形式(デジタルレコーダ及びミニディスクで用いられる)である。
【0014】
空間的位置設定用の音響マルチチャンネル形式としては、主にゲーム用にSoundblaster(登録商標)によって開発され、PCで最も広く普及した形式の1つであるマルチチャンネルサウンドEAX(登録商標)がある。これは通常、4つのチャンネル(左前、右前、左後、及び右後)からなる。マルチチャンネル音響はまた、Microsoft(登録商標)のDirectX(登録商標)及びDirectSound(登録商標)ライブラリを使用することによっても得ることができる。
【0015】
DVDが出現するまでは、家庭で楽しむことができる最先端の音響システムはステレオ(ステレオ放送又はVHSステレオのいずれかによる)であった。これは、2つの異なる音響チャンネル(左及び右)からなる。しかしながら、一部の会社は仮想サラウンドサウンドシステムに着手したが、2つのチャンネルだけを用いたサラウンドサウンド感覚の生成では極めて低品質である。
【0016】
映画におけるマルチチャンネルサウンドを実現する最初の試みは、Dolby Surround Prologic(登録商標)であった。これは、通常のステレオ信号にエンコードされた4つのチャンネル(左、中央、右及び周囲又は後方)からなり、これは、その特性を備えたステレオ信号を受信しサラウンドサウンドラウドスピーカを有するプロセッサが、実際に問題のサラウンドサウンドを生成することができることを意味する。これらのプロセッサが発展して、通常のステレオ源からサラウンドサウンドをエミュレートすることができるようになり、詳細には、Dolby Prologic II(登録商標)が最近得られた。これはアナログ信号であり、信号がDolby Prologic(登録商標)であることは、Dolby Prologic(登録商標)を処理しないあらゆるユニットのステレオモードではその再生には影響しない。
【0017】
その後、Dolby Digital(登録商標)が現れて、マルチチャンネルデジタル音響システムとなり、これが現在の家庭用映画の標準規格及び基準となっている。これは、5つの独立した音響チャンネルと、サブウーファで使用される低周波(.1)すなわちLFE用のもう1つの音響チャンネルとに基づく。このシステムは、ラウドスピーカがより高品質の大きなコーン及びボックスを必要とするので、ユーザがラウドスピーカセットを入手する際に、最低周波数を許容可能に再生することができる5つのラウドスピーカを購入する必要がないように作られた。
【0018】
幾つかのDolby Digital(登録商標)コードがあり、2/0:通常ステレオ;2/2:右、左、左後、及び右後;3/2:2/2に中央前方チャンネルが追加されたものである。ラウドスピーカのこの構成は、5.1として知られる。映画では、最も一般的な状況は、会話が前方ラウドスピーカを通して聞こえ、音楽が右及び左前方ユニットを通して、及びサウンド効果が5つのいずれかを通して聞こえ、音楽DVDでは、鑑賞者を聴衆の中(前方の3つのユニットで音楽を、後ろのユニットで聴衆の周囲の音)か、或いはバンドの中心に配置するよういずれかを選択することができ、各楽器をチャンネルに配向する。音楽はサラウンドとすることができ、会話は後方ラウドスピーカなどを通して画像から出てくるように聞こえることができるので、この配分はあまり閉鎖的ではない。
【0019】
現在多様なデジタル音響形式が存在するにもかかわらず、単一形式による単一のデータファイルでデジタル記録サポート(メモリ又はハードディスク、光ディスク、デジタルテープなど)上に記録された音響信号を形成する異なるトラック及び異なるチャンネルを同時に且つリアルタイムで操作することができるものは今まで知られていない。
【0020】
現時点での形式及びシステムは、こうした既知の形式を再生するものが知られており、音響信号の異なるトラック又はチャンネルの操作を可能にするが、デジタル記録物理サポート(CD、DVDなど)の異なるトラック上に別個に記録され、すなわち各トラックは、特定の形式を構成するデータファイル内にあり、音響信号が別個に記録されるトラックの各々の特定の形式で幾つかのデータファイルが存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
現在音楽市場にあり、所与の形式で記録された別個のトラック及びミックスの両方を同時に再生し操作することができるサウンド録音後の編集又は合成プログラムのようなシステムもあるが、このシステムは、ミックスの再生がリアルタイムで可能なように異なるファイルに記録される異なる音楽トラックを有する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記で概説した問題を解決するために、本明細書に開示される発明は、音響信号を形成し全てのトラック及びチャンネルの組合せ記録が可能であり、結果として単一のデータファイルをもたらすデジタル音響形式の生成に基づいており、デジタル音響形式は、本発明の方法オブジェクトを用いてデジタル記録用物理的サポート(磁気ディスク:コンピュータなどのハードディスク、メモリカード、光ディスク:CD、DVDなど、又はデジタルテープ:DAT、DVなど、及び将来実装することができるデータ記録用のあらゆるサポート)によって記録することができる。
【0023】
本発明の一態様は、音響データを記録する方法であり、音響データは、幾つかの空間的位置設定チャンネル及び音響トラックによって形成されるマルチトラック及びマルチチャンネルデジタル音響信号にほぼ対応する。前記記録方法において、前記デジタル音響形式を定め、デジタル記録サポートの単一トラック上に物理的に記録される前記独自の形式によって音響信号を形成するチャンネルの情報と組み合わされるがミックスされない全ての音響トラックの情報を含むデジタル信号構造が生成される。
【0024】
本発明の別の態様は、前述の手順によって得られたデジタル音響形式を再生する方法であり、この方法はまた、元々はミックス形式で再生する音響信号が形成されるトラック及びチャンネルの各々をリアルタイムで操作することも可能である。
【0025】
本発明の最終態様は、前記記録方法によって生成された形式でデジタル情報記録サポート上にマルチトラック及びマルチチャンネル音響信号を記録すること、並びに前記再生及び操作方法を用いて前記形式の再生及びマルチトラックとマルチチャンネル音響信号の操作を可能にするシステムを提供する。
【0026】
本発明の基礎となり、独自のデータファイルに記録される音響デジタル形式は、音響信号を形成するトラックのミックスを含まないが、トラックの各々は別個に及び全て組合せ手法で単一形式に含まれる。
【0027】
従って、デジタル音響信号の記録のための本発明の方法へのデータ入力は、音響信号の異なるトラックが従来のデジタル音響形式(PCM、WAV、AIFF、MP3、ATRAC、EAX、ドルビーサラウンド、プロロジック、デジタルなど)でこれまで及び別個に記録されていた異なるデータファイルによって構成され、全ての記録されたトラックに共通しているので、生成された出力は別の独自の形式による単一データファイル内にある。
【0028】
入力時、異なる音響トラックがデジタル情報用の物理的サポート(メモリカード、ディスク:HD、CD、DVDなど、又はテープ:DAT、DVなど)の異なるトラックに記録され、出力は、開示された記録方法を用いて同一又は別のデジタル情報用の物理的サポートの単一トラック上に記録される。
【0029】
前記独自の形式は、組み合わされるがミックスされないトラックを有するが、本発明の方法はまた、オリジナル音響信号及び異なるトラック又は異なるチャンネルを別個に構成するミックスを再生することもでき、そのリアルタイムの操作が可能となる。
【0030】
再生及び操作の前記方法の入力は、提案された独自の音響デジタル形式で物理的データ記録サポート上に記録されるマルチトラック及びマルチチャンネル音響信号であり、その内容から本方法は、トラック及びチャンネルを分離してリアルタイムに同時手法でこれらを再生し操作することができる。
【0031】
音響データのデータサポート上への記録方法であって、前記音響データは異なるデータファイルに一般的で既知のデジタル音響形式で記録された少なくとも1つの音響トラックによって形成され、前記トラックは同様に既知のサイズである最大数の複数のサンプルによって組み込まれ、本方法は、独立して、リアルタイムで、音響トラックの各々の品質劣化がなく再生及び/又は操作が可能であることを目的とする。
【0032】
本発明の記録オブジェクトの方法は、存在する最大数のサンプルと同じ数のデータブロックによって形成されるデジタル情報の構造からなり、前記サンプルの番号付けに従って配列されたデータフィールドを記録することを含むことを特徴とする。データブロックの各々は、サンプル全てのグループ分けによって形成され、これはトラックの各々に対する同じ順番の番号に対応する。
【0033】
多量の情報を保存するために、前記データフィールド記録時に、無音に対応するサンプルはデータサポート上に書き込まれない。
【0034】
この保存を可能にするために、上述のデータブロックによって形成されるデータフィールドを記録する際、ブロックヘッダの記録は、前記データブロックの各々の前に含められ、このヘッダは、どのトラックが無音に対応するサンプルを含み、どれが含まないのかを識別する。
【0035】
詳細には、ブロックヘッダは、トラックの数に等しい固定長を備えたビットフィールドであり、各ビットはトラックに対応し、そのトラックのサンプルが音を含むものを「1」で示し、「0」は、そのトラックのサンプルが無音である(ヌル値を有するサンプル)ことを示す。
【0036】
従って、本発明の方法によってデータサポート上に記録されるデータフィールドは、「ヘッダ・サンプル/ヘッダ・サンプル/ヘッダ・サンプル/・・・」のように構成される。前記方法によって音響データを記録する間、ヌル値を備えたサンプルは、データブロックに反映されないが、代わりにブロックヘッダに反映され、従って、ファイル全体のサイズが保存される。
【0037】
これとは別に、データフィールド全体の前に、各トラックのサンプルに関する情報を含む形式ヘッダが記録される。形式ヘッダのこの情報は、トラックが記録される既知の形式ヘッダから得られるデータであり、これは、サンプリング周波数、サンプル当たりのビット数、及び前記トラックによって形成される音響信号のサンプルの最大持続時間のようなデータを含み、既知の形式によるこうしたデータの値並びに前記音響信号を形成するチャンネル数の値に応じて記録される。
【0038】
また、前記形式ヘッダは、ユーザによって導入される音響データを識別する情報を含むことができる。音響データが歌曲などのマルチトラック及びマルチチャンネル音響信号に対応する場合、ユーザは、グラフィックインターフェースを用いて曲名又は歌手名を、本発明の方法が記録しているものに従って音響形式の一般ヘッダ内にASCIIフィールドとして入る幾つかのテキストフィールドに挿入することができる。
【0039】
任意選択的に、特別データフィールドもまた、一般ヘッダとデータフィールドとの間に含めることができ、データフィールドは、本発明の音響形式オブジェクトによって記録される1つより多いマルチトラック音響信号の再生に用いることが意図された同期化データなどの他の情報を含む。
【0040】
本発明の音響形式オブジェクトの目的は、歌曲に記録された各トラックを独立して聴き操作することを可能にすることである。トラックは、音楽プロデューサによって作られ、1つ又は幾つかの楽器及び/又は声の組合せであると理解される。各トラックは、例えばステレオ(左及び右チャンネル)である空間的位置設定チャンネルを有することができる。
【0041】
現在のところ、最も類似した形式は、Dolby Digital5.1とすることができ、これは独立したチャンネルを備えるデータフレームを有する。しかしながらこの形式は、再生中、異なるチャンネルの空間的位置設定を前記形式に埋め込ませることができるように設計されている。
【0042】
従って、本発明のデジタル音響形式オブジェクトの新規の有用性は、歌曲を構成する異なるサウンドチャンネルを独立した手法で含むことあり、各トラックの空間的位置設定を組み込むことが可能である。
この新たな形式の中心となるものは、あらゆる音楽作品の一部を形成するマルチトラックの組合せ及び暗号化(標準規格のPCM形式)にある。
【0043】
基本的に、及び一例として、ほとんどの歌曲において、一方が声(VOICE)であり、他方が楽器(MUSICAL INSTRUMENTS)である、2つの基本トラックを区別することができる。これによって、両方のトラックを組み合わせたファイルが生成されると、再生時には、これらの1つ又は両方、或いはファイルを構成する大量の「q」トラックのあらゆる組合せを聴くことができる。従って、再生には各トラックのオリジナルPCM形式を独立した手法で使用し、新たな形式の生成には品質劣化、等化などを備えた圧縮アルゴリズムを用いないので、全てのトラックの識別は、これらのいずれの音質にも影響を及ぼさない。
【0044】
本発明の別の態様は、音響形式を用いた、本発明の方法が実装されるマルチチャンネル及びマルチトラック音響システムであり、以下を含む。
エンコーダ:様々なPCMステレオで始まり、ファイルは、説明された記録方法に従ってデジタル音響形式でエンコードされ記録される。この部分は、音楽プロデューサ及びレコード会社の管理下にある。
【0045】
デコーダ:本発明の方法を用いて記録されたデジタル音響形式を再生するために、トラックを別個に聴き操作することが可能である。この部分は、音響プロデューサ或いは専門家(ディスクジョッキーなど)又は家庭環境において音のミキシングを用いるエンドユーザの管理下にある。
【0046】
エンコーダシステムへの入力として、様々な楽器、周囲、音、声などを「m」チャンネル(例えばステレオ=2チャンネル)で表すことができる「q」音響ファイル(例えば4音響トラック)があり、そのサンプリング周波数(例えば44100Hz)、サンプル当たりのビット(例えば16ビット)、及びBPM(毎分の拍子)は同じである。エンコーダの出力(及びデコーダ/再生装置の入力)として、圧縮化(品質劣化なしの、すなわちオリジナル音響ファイルと同じダイナミックレンジを備えた)及び暗号化された単一ファイルがある。
このファイルは、あらゆるデジタルデータサポート上に記録することができる。
【0047】
デコーダは、ファイルが記録形式で記録されるデジタルデータサポートを読取る装置であり、これを解読する(復号化する、解凍する、ミックスする、及び再生する)。デコーダはまた、連続モードで各ステレオ音響トラック(0dBから∞まで)の容量を規制することができる幾つかの物理的制御システム(例えばリニアポテンシオメータなど)を有する。これらトラックは、装置によってミックスされ、出力は「q」トラックのミックスであり、装置制御部の位置に従って振幅変調され、「m」物理的音響出力を有し、ここで「m」はこの形式のチャンネルの数である。
【0048】
利用可能な応用分野は専門音響産業部門に見出すことができる。現在のところ、レコード会社が、ダンスホール及びディスコにおいてディクスジョッキー(DJ)によって歌曲をミックスすることに従事する専門家向けのディスクを製造して、各セッションがこれまでのものとは異なる方法で、これら専門家の活動を促進し、より創造的にする。
【0049】
現在のところ、DJは、ミックスを生成する際に、音響の品質劣化を伴って歌曲の一部のわずかな部分を等化及び除去する機能だけを有する。すなわち、後からのものとのミックスが完璧であるように、特に歌曲からベース又はいかなる楽器も排除することは不可能であり、これら専門家の創造性及び可能性のほとんどを制限する。
本発明は、この障壁を打破し、歌曲のミキシングにおける新たな分野を開拓する目的に起因する。
【0050】
エンコーダを用いて、レコード会社及び/又はプロデューサは、マスターミックスに基づいてこの新たな形式であらゆるデジタルデータサポート(例えばCD、DVDなど)上にディスクを発表することができる。
この新たな形式は、既存の形式の通常の販路を介して販売することができる。
【0051】
更にDJは、前記形式にあるトラックと同じ数量制御部を備えるデコーダ(レコード会社が新たな形式を発表するデジタルサポートの再生装置)を有する必要がある。従って、DJは、形式の1、2、3・・・の再生装置を有することができ、例えば再生装置1のトラック1が再生装置2のトラック3、及び再生装置3のトラック1、2及び4にミックスされ、これらは全て毎分の拍子(BPM)で同期され、発表される基本の歌曲から新しい新規の創造的なセッションを生成する。
【0052】
家庭音響レベルの別の応用分野は、以下のものとすることができる。
カラオケ(声が除去され、原曲から残りの楽器が残る)
オペラ(歌手又は音楽のみを聴く)
ポップ/ロック(楽器を除去することができ、その楽器又は別の楽器を演奏しながらユーザが原曲に伴奏する)
要約すると、この新たなプロDJシステムは、専門家及び家庭用の両方における音響部門に創造性と商業性の両方の新たな可能性を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
有用な実施形態の好ましい実施例に従って提供される説明を完全にし、且つ本発明の特徴をより理解するのを助ける目的で、例証として非限定的に以下に提示される一連の図面を前記の説明の重要部分として添付する。
【0054】
前述の図面に照らしながら、音響データをデータサポート上に記録する方法において、音響データが少なくとも1つの音響トラック(P1−Pq)によって既知の形式で形成され、トラックが既知のサイズの最大数(n)のサンプル(M1−Mn)によって組み込まれ、データサポートから音響トラック(P1−Pq)の再生及び/又は操作をリアルタイムで品質劣化がなく独立した手法で可能にすることを目的とする方法であって、データブロック(B1−Bn)によって形成されるデジタル情報構造からなり且つ最大数(n)のサンプルと同じ数だけあり前記サンプルの番号付けに従って配列されたデータフィールド(D)を記録することを含み、データブロック(B1−Bn)の各々が、トラック(P1−Pq)の各々に対して同じ順番の番号に対応するサンプル(M1−Mn)全てのグループ分けによって形成されることを特徴とする方法は、本発明の実施可能な実施形態の1つとして説明することができる。
【0055】
データフィールドを形成するデータブロックのサイズ(n)を低減することによって、データフィールド(D)の容量を最適化するためには、これに加えて、記録方法が、データブロック(B1−Bn)の各々のブロックヘッダ(C1−Cn)を記録することを含み、該ブロックヘッダはデジタル情報構造からなり、その長さは固定されトラックの数(q)に等しく、トラックが無音に対応するサンプルを有するか否かに関する情報を含む。
【0056】
従って、「i」が1からブロックの総数までの数であり、サンプルの最大数(n)に等しく、すなわちi=1からi=nまでとすると、ブロックヘッダCiは、ビット数「j」と同定され、ここで「j」は1からトラックの総数(q)までの数、すなわちj=1からj=q、トラックPjは、ビットが「0」であれば無音に対応するヌル値を備えたサンプルMiを有し、ビットが「1」の場合には音を含む。この最後の場合において、データブロックBiは、トラックPjのサンプルMiを含み、そうでなければ、データブロックBi内の前記トラックPjにおいてサンプルは記録されない。
【0057】
記載される方法によって記録された音響形式からのトラックの再生において、ブロックヘッダCiのビット「0」と同定されるトラックは、トラックを再生するときの実際の再生方法によって挿入されるサンプルMiのヌル値を備えた時点「i」で再生される。
【0058】
データフィールド(D)の前に、本記録方法は形式ヘッダ(F)を構成し、これは、PCM形式などの既知の音響形式の1つに従って記録されたトラックのそれぞれのヘッダに含まれるデータに基づき、生成されたデジタル音響形式に固有のものであり、このヘッダは図2に示される。
【0059】
より詳細には、形式ヘッダ(F)は、音響トラックを形成するサンプル、前記トラックに存在する空間的位置設定のチャンネル、及びトラックのミキシングのための再生速度に関する情報を含む。この情報に関連するデータは、図5に示されるフィールドに記録され、これは以下で説明される。
【0060】
ステレオフィールド:記録されるデジタル音響信号を形成するトラックが有する空間的位置設定のチャンネルの数であり、モノラルに相当する0、立体音響に相当する1、4チャンネルに相当する4などとすることができる。
トラックフィールドの数:記録されるデジタル音響信号を形成し、PCM形式又は別の既知の音響形式で記録される音響トラックの数(P1−Pq)である。
【0061】
サンプリング周波数フィールド:各トラックがサンプリングされる周波数。トラックがPCM形式で記録される場合、サンプリング周波数すなわち1秒当たりのサンプルの数は44100Hzである。
ビット/サンプルフィールド:各サンプルのビット数のサイズ。PCM形式において、トラックのサンプルは16ビットのサイズである。
【0062】
BPMフィールド:トラックが形成する歌曲の毎分の拍子(BPM)であり、このパラメータは、音楽プロデューサによって示され、歌曲を再生するためのトラックのミキシングの補助として機能する。
フィールド持続時間:最大数のサンプルにおける歌曲の長さ。サンプルの最大長さは、再生長さを制限し、実施例において、サンプルの最大数(n)は232=4,294,967,296である。
【0063】
形式ヘッダ(F)の前に、本記録方法では、本発明のデジタル音響形式の生成は一般ヘッダ(C)を先頭に置き、該一般ヘッダは、図3で示されるように音響データの識別に関する情報を含む。
【0064】
識別フィールド:本発明のデジタル音響形式オブジェクトのタイプを識別するASCII文字。
バージョンフィールド:本発明のデジタル音響形式オブジェクトのバージョン番号であり、この数字に関して、形式は機能的変化を含むか、又は将来のバージョンにおいて新たな機能を付加加することができる。
【0065】
シードフィールド:形式ヘッダ(F)及びデータフィールド(D)が記録方法中に暗号化されるキーであり、好ましくは、暗号化のために進化キー手法が用いられ、このフィールドから始まってデータの残りが暗号化される。
タイトルフィールド:歌曲のタイトル。
アーティストフィールド:歌手の名前、これら最後の2つのASCIIフィールドは、グラフィックインターフェースを介してユーザによって導入される。
【0066】
本発明の別の任意選択的な実施形態において、本記録方法は、特別データフィールド(E)を含み、該フィールドは、記載される音響形式の2つの再生装置が通信するときの歌曲の自動ミキシング用のコマンドを保持する可変長の幾つかのフィールドによって形成される。前記フィールドの実施例は、図4に示されるものであり、これに従って特別データフィールド(E)は、2つの最初のASCII文字「XB」及び別の2つの最終のASCII文字「XE」によって定義されている。実施例において、特定のトラックの音が始まると、値は音響ファイルの開始に関するアドレスマークで示される。
【0067】
最後に、図6A及び図6Bは、データブロック(B1−Bn)と共にブロックヘッダ(C1−Cn)によって決定される可変長構成を有するデータフィールド(D)を示す。記録中、ヌル値を備えるサンプルは、データブロック(B1−Bn)を構成するSAMPLESサブフィールドを図示しておらず、ヌルサンプルが対応するトラックに値「0」が設定されるビットを備えたブロックヘッダ(C1−Cn)を図示しており、データフィールドの長さが保存される。従って、ブロックヘッダCi(i=1からi=nまで)において、ビット数「j」に「0」が現れると、これは、トラックPjのサンプルMiが無音であることに相当し、データブロックBiには含まれないことを示し、ビット数「j」が「1」である場合、データブロックBiにおいて、サンプルMiはトラックPjに記録される。各SAMPLESサブフィールドにおけるデータは、トラックの番号付けに従って配列され、SAMPLESサブフィールドはサンプルの番号付けに従って配列される。更に、各SAMPLESサブフィールドのデータは、チャンネルの数に従って配列され、各チャンネルが表す空間的位置設定に関連して、左から右及び前から後ろに形式ヘッダ(F)のステレオフィールド内に示される。
【0068】
本明細書及び一連の図に照らして、説明された本発明の実施形態は、本発明の目的の範囲内にある複数の方法で組み合わせることができる点は当業者であれば理解することができる。本発明をその好ましい幾つかの実施形態に従って説明してきたが、当業者であれば、請求項に記載された発明の目的から逸脱することなく多数の変形形態を好ましい実施形態に導入することができる点は明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のデジタル音響形式オブジェクトを形成するヘッダ、データ及びデータブロックフィールドの構造を示す図である。
【図2】PCM音響形式のヘッダフィールドを示す図である。
【図3】本発明の方法が記録する音響形式の一般ヘッダフィールドを示す図である。
【図4】本発明の方法が記録する音響形式の特別データフィールドを示す図である。
【図5】本発明の方法が記録する音響形式の形式ヘッダフィールドを示す図である。
【図6A】ブロックヘッダ及びデータブロックによって形成される、本発明の方法が記録する音響形式のデータフィールドを示す図である。
【図6B】ブロックヘッダ及びデータブロックによって形成される、本発明の方法が記録する音響形式のデータフィールドを示す図である。
【図7】システムエンコーダのブロック図を示す図である。
【図8】システムデコーダのブロック図を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響データをデータサポート上に記録する方法において、前記音響データは少なくとも1つの音響トラック(P1−Pq)によって既知の形式で形成され、前記トラックは既知のサイズの規定数(n)のサンプル(M1−Mn)によって組み込まれ、前記データサポートから前記音響トラック(P1−Pq)の再生及び/又は操作をリアルタイムで品質劣化がなく独立した手法で可能にすることを目的とする方法であって、
データブロック(B1−Bn)によって形成されるデジタル情報構造からなり、前記サンプルの数(n)と同じ数で前記サンプルの番号付けに従って配列されたデータフィールド(D)を記録することを含み、前記データブロック(B1−Bn)の各々は、前記トラック(P1−Pq)の各々に対して同じ順番の番号に対応する前記サンプル(M1−Mn)全てのグループ分けによって形成されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記音響データが、デジタル音響信号からなることを特徴とする請求項1に記載のデータサポートに音響データを記録する方法。
【請求項3】
前記音響トラック(P1−Pq)の既知の形式が、品質劣化のないPCM形式、品質劣化のある音響圧縮形式、及び空間的位置設定の音響マルチチャンネル形式の中から選択されることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のデータサポート上に音響データを記録する方法。
【請求項4】
前記データフィールド(D)の記録において、前記記録は、前記データブロック(B1−Bn)の各々のブロックヘッダ(C1−Cn)が含まれ、前記ブロックヘッダは、その長さが固定されトラックの数(q)に等しいデジタル情報構造からなり、トラックが無音に対応するサンプルを有するか否かに関する情報を含むことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のデータサポート上に音響データを記録する方法。
【請求項5】
前記データフィールド(D)の記録において、無音に対応する前記サンプルが前記データサポート上に書き込まれないことを特徴とする請求項4に記載のデータサポート上に音響データを記録する方法。
【請求項6】
各トラック(P1−Pn)のサンプル(M1−Mn)及びサンプルの数(n)に関する情報を含むデジタル情報構造からなる形式ヘッダ(F)を記録することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のデータサポート上に音響データを記録する方法。
【請求項7】
前記音響データに関する識別情報を含むデジタル情報構造からなる一般ヘッダ(C)を記録することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のデータサポート上に音響データを記録する方法。
【請求項8】
前記識別情報が、グラフィックインターフェースを用いてユーザによって導入されることを特徴とする請求項7に記載のデータサポート上に音響データを記録する方法。
【請求項9】
再生における同期化のためのトラック(P1−Pn)に関する情報を含むデジタル情報構造からなる特別データフィールド(E)を記録することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のデータサポート上に音響データを記録する方法。
【請求項10】
各トラック(P1−Pq)の前記サンプル(M1−Mn)が、少なくとも1つの空間的位置設定チャンネルの情報を含むことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のデータサポート上に音響データを記録する方法。
【請求項11】
前記データフィールド(D)をキーを用いて暗号化することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のデータサポート上に音響データを記録する方法。
【請求項12】
前記形式ヘッダ(F)の暗号化が前記キーを用いることを特徴とする請求項11に記載のデータサポート上に音響データを記録する方法。
【請求項13】
前記データサポートが、メモリカード、光ディスク、磁気ディスク、又は磁気テープの中から選択されることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のデータサポート上に音響データを記録する方法。
【請求項14】
請求項1から13に記載の方法によってデータが記録されることを特徴とする音響データを含むデータサポート。
【請求項15】
前記サポートが、メモリカード、光ディスク、磁気ディスク又は磁気テープの中から選択されることを特徴とする請求項14に記載のデータサポート。
【請求項16】
音響データをデータサポート上で記録、再生及び操作する方法において、前記音響データは少なくとも1つの音響トラック(P1−Pq)によって既知の形式で形成され、前記トラックは既知のサイズの規定数(n)のサンプル(M1−Mn)によって組み込まれ、請求項1から13に記載の方法に従って記録される方法であって、
前記データサポートから前記音響トラック(P1−Pq)をリアルタイムで品質劣化がなく独立した手法で再生及び操作することを含む方法。
【請求項17】
前記音響トラック(P1−Pq)が、空間的位置設定チャンネルを含み、前記データサポートからリアルタイムで品質劣化がなく独立した手法で再生されることを特徴とする請求項16に記載のデータサポートに音響データを記録、再生及び操作する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−505430(P2008−505430A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519815(P2007−519815)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【国際出願番号】PCT/ES2005/000341
【国際公開番号】WO2006/013221
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(507005229)
【出願人】(507005230)
【Fターム(参考)】