説明

データ伝送プロトコル制御方法及び装置

【課題】 通信時間を短縮化することのできるデータ伝送プロトコル制御方法及び装置を提供する。
【解決手段】 非接触ICカードとリーダライタ間のデータ伝送を制御するデータ伝送プロトコル制御方法において、送信側から受信側に対して複数のブロックを連続して送信する際、最初に送信するブロックに連続して送信するブロック数を伝送データに含めるデータ伝送プロトコル制御方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波によって通信を行うリーダライタと非接触ICカード間のデータ伝送プロトコル制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の通信媒体として電磁波を使用するリーダライタと非接触ICカード間のデータ伝送プロトコル制御に関しては、非特許文献1の国際標準規格が広く一般に知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ISO/IEC(International Organization For Standardization/International Electro technical Commission)14443−4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際標準規格で定められているアンチコリジョンシーケンス(活性化)後のブロックフォーマットによるデータ伝送プロトコル制御では、送信コマンドあるいはレスポンスに対する受信側の応答が必要とされている。このため、通信時間が必要以上にかかってしまうという問題があった。
【0005】
本願発明は係る事情に鑑みてなされたものであって、通信時間を短縮化することのできるデータ伝送プロトコル制御方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、非接触ICカードとリーダライタ間のデータ伝送を制御するデータ伝送プロトコル制御方法において、送信側から受信側に対して複数のブロックを連続して送信する際、最初に送信するブロックに連続して送信するブロック数を伝送データに含めるデータ伝送プロトコル制御方法である。
【0007】
また本発明は、非接触ICカードとリーダライタとに搭載されて、両者間のデータ伝送を制御するデータ伝送プロトコル制御装置において、送信側から受信側に対して複数のブロックを連続して送信する際、最初に送信するブロックに連続して送信するブロック数を伝送データに含めるブロック数設定手段を備えたデータ伝送プロトコル制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
この発明のデータ伝送プロトコル制御方法及び装置によれば、通信時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】非接触ICカードの構成を示す概略図。
【図2】ICチップの構成を示すブロック図。
【図3】伝送ブロックの構成を示す図。
【図4】従来のリーダライタと非接触ICカード間のデータ伝送プロトコル制御のシナリオを示す図。
【図5】本実施の形態のリーダライタと非接触ICカード間のデータ伝送プロトコル制御のシナリオを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
非接触ICカードは、入退出の管理、鉄道の改札など日常生活に関連する領域において広く利用されている。例えば鉄道の改札では、非接触ICカードは自動改札機に設けられたリーダライタとの間で、電磁誘導による電源の供給や信号のやり取りを行って、乗降等に関する情報の授受を行う。
【0011】
非接触ICカードは、リーダライタと接触させる必要が無いため、例えば、定期券をケースから取り出すことなく自動改札機に読み取らせることができるなど、操作性に優れている。
【0012】
図1は非接触ICカードの構成を示す概略図である。
非接触ICカード100はプラスチック等で形成され、そのカード内にはICチップ101が埋設されている。非接触ICカード100は、表面がプラスチック等で覆われており、金属端子が設けられていないため、耐環境性に優れている。
【0013】
図2は、ICチップ101の構成を示すブロック図である。
ICチップ101は、ROM201、RAM202、不揮発性メモリ203、CPU204及び入出力インターフェイス205を備えている。
【0014】
CPU204は、演算、制御などを行い、ICチップ101を統括して制御する。ROM201は、読み出し専用メモリである。ROM201には、オペレーティングシステム(OS)などの基本ソフトウェア、アプリケーションプログラム及びデータが格納されている。RAM202は、CPU204の処理における作業領域として使用される。
【0015】
不揮発性メモリ203は、EEPROM、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性のメモリであり、通常ユーザのワークエリア、プログラムエリアなどとして使用されている。入出力インターフェイス205は、リーダライタ(不図示)との通信を実現するインターフェイスである。
【0016】
リーダライタは、ICチップ101に対して、コマンドを送信する。ICチップ101のCPU204は、リーダライタから受信したコマンドに対応する処理を行い、結果をレスポンスとしてリーダライタへ送信する。
【0017】
次に、ICチップ101とリーダライタとの間の通信規約(プロトコル)について説明する。
非接触ICカード100が活性化後、リーダライタとの間で、所定の通信プロトコルに従って情報の授受を行う。この際、リーダライタからコマンドを伝送送信し、非接触ICカード100からはそれに対するレスポンスを伝送返信する動作が繰り返して実行される。
【0018】
通信プロトコルとして、例えば情報をブロック単位で伝送するブロック伝送では、I(情報)ブロック、R(受信確認)ブロックなどが規定されている。
【0019】
図3は、伝送ブロックの構成を示す図である。
伝送ブロックは、先頭フィールド、情報フィールド及び最終フィールドで構成されている。先頭フィールド及び最終フィールドには、伝送をコントロールする情報、エラーをチェックする情報など伝送プロトコルを制御するための情報が格納されている。情報フィールドには、アプリケーション情報やステイタス情報の内容が格納されている。
【0020】
図4は、従来のリーダライタと非接触ICカード100間のデータ伝送プロトコル制御のシナリオを示す図である。
リーダライタと非接触ICカード100間では、一度に送受信できる最大長のフレームの長さ(バイト)が定められている。図4では、活性化後の状態において、最大長のフレームの長さを超えるデータを伝送する場合の信号授受手順を示している。
【0021】
図4で用いた記号は、以下のように定義されている。
PCDは、Proximity Coupling Deviceの略であり、リーダライタを表している。
PICCは、Proximity Cardの略であり、非接触ICカード100を表している。
I(1)xは、チェイニングありのI−blockで、ブロック番号がxである。
I(0)xは、チェイニングなしのI−blockで、ブロック番号がxである。
R(ACK)xは、受信OKのR−blockで、ブロック番号がxである。
なお、チェイニングはISO/IEC14443−4で規定されている機能で、最大長のフレームの長さを超えるデータを伝送する場合に使用される。
【0022】
ステップ1において、PCDはI(情報)ブロックを送信する。PICCは、対応する情報を返そうとするが、情報のデータ長がフレームの最大長を超えている。
【0023】
そこで、PICCは、情報を例えば3つの伝送ブロックに分割して、ステップ2において、分割した最初のデータを格納したI(情報)ブロックをPCDに送信する。この際、PICCは、先頭フィールドに、このブロックが分割したブロックであり、次の送信のブロックと関連があることを示す情報(チェイニングあり)を設定する。
【0024】
ステップ3において、PCDは、受信OK(ACK)を表すR(受信確認)ブロックをPICCに送信する。ステップ4において、PICCは、分割した2番目のデータを格納したI(情報)ブロックをPCDに送信する。この際、PICCは、先頭フィールドに、このブロックが分割したブロックであり、次の送信のブロックと関連があることを示す情報(チェイニングあり)を設定する。
【0025】
ステップ5において、PCDは、受信OK(ACK)を表すR(受信確認)ブロックをPICCに送信する。ステップ6において、PICCは、分割した最後のデータを格納したI(情報)ブロックをPCDに送信する。この際、PICCは、先頭フィールドに、このブロックは次の送信のブロックと関連がないことを示す情報(チェイニングなし)を設定する。
【0026】
PCDは、最終データを受信すると分割されたデータを結合して元の情報を生成し、それに基づいて所定の処理を実行する。そして、ステップ7において、最初のデータの送信に対するレスポンスを格納したI(情報)ブロックをPICCに送信する。ステップ8において、PICCは、応答終了のI(情報)ブロックをPCDに送信する。
【0027】
図5は、本実施の形態のリーダライタと非接触ICカード100間のデータ伝送プロトコル制御のシナリオを示す図である。
ステップS1において、PCDはI(情報)ブロックを送信する。PICCは、対応する情報を返そうとするが、情報のデータ長がフレームの最大長を超えている。
【0028】
そこで、PICCは、情報をn個の伝送ブロックに分割して、ステップS2において、分割した最初のデータを格納したI(情報)ブロックをPCDに送信する。この際、PICCは、先頭フィールドに、このブロックが分割したブロックであり、次の送信のブロックと関連があることを示す情報(チェイニングあり)を設定する。そして、情報フィールドに分割数nを格納する。
【0029】
ステップS3において、PICCは、所定時間経過後に分割した次のデータを格納したI(情報)ブロックをPCDに送信する。この際、PICCは、先頭フィールドに、このブロックが分割したブロックであり、次の送信のブロックと関連があることを示す情報(チェイニングあり)を設定する。なお分割2回目以降の送信では、情報フィールドには分割数nに関連したデータを格納しない。
【0030】
以降、PICCは、所定時間経過後に分割したデータを格納したI(情報)ブロックを順次繰り返してPCDに送信する。なお、上述の所定時間は、PCDとPICCとの間で初期状態において取り決めた、タイムアウト判定用の時間である待ち時間(FWT:Frame Waiting Time)よりも短い時間である。
【0031】
ステップS(n+1)において、PICCは、分割した最後のデータを格納したI(情報)ブロックをPCDに送信する。この際、PICCは、先頭フィールドに、このブロックは次の送信のブロックと関連がないことを示す情報(チェイニングなし)を設定する。
【0032】
PCDは、最終データを受信すると分割されたデータを結合して元の情報を生成し、所定の処理を実行する。そして、ステップS(n+2)において、最初のデータの送信に対するレスポンスを格納したI(情報)ブロックをPICCに送信する。ステップS(n+3)において、PICCは、応答終了のI(情報)ブロックをPCDに送信する。
【0033】
以上説明したように、PICCがPCDからIブロックを受信し、複数の連続したn個のI(情報)ブロックをPCDに返信する場合、Iブロックを順番に連続して返信する。このとき、最初のIブロックにはn個のIブロックが連続して送信されることを示すデータが含まれる。よって、PCDはPICCから送られてくるn個の最後のIブロックに対してのみ、受信OKのRブロックをPICCへ送信する。PICCは、それに対する応答としてIブロックをPCDに返信する。
【0034】
従って、従来のデータ伝送プロトコル制御のシナリオと比較すると、受信OKのRブロックをPICCへ送信する回数が大幅に削減されていることがわかる。
【0035】
なお、図5では、PICCからPCDに対して複数のIブロックを送信したが、本発明の実施の形態のデータ伝送プロトコル制御方式は、伝送方向によらずPCDからPICCに対して複数のIブロックを送信する場合にも当然に適用することができる。
【0036】
なお、上述の各実施の形態で説明した機能は、ハードウエアを用いて構成するに留まらず、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0037】
尚、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0038】
100…ICカード、101…ICチップ、201…ROM、202…RAM、203…不揮発性メモリ、204…CPU、205…入出力インターフェイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触ICカードとリーダライタ間のデータ伝送を制御するデータ伝送プロトコル制御方法において、
送信側から受信側に対して複数のブロックを連続して送信する際、最初に送信するブロックに連続して送信するブロック数を伝送データに含めることを特徴とするデータ伝送プロトコル制御方法。
【請求項2】
受信側では、最初に受信したブロックから連続して送信されるブロック数を認識し、その後連続して送信された複数のブロックの最後のブロックに対してのみ前記送信側に対して応答を返信することを特徴とする請求項1記載のデータ伝送プロトコル制御方法。
【請求項3】
連続して送信される複数のブロックの最後のブロックを除くそれぞれのブロックに、次の送信のブロックと関連があることを示す情報を含めることを特徴とする請求項2記載のデータ伝送プロトコル制御方法。
【請求項4】
非接触ICカードとリーダライタとに搭載されて、両者間のデータ伝送を制御するデータ伝送プロトコル制御装置において、
送信側から受信側に対して複数のブロックを連続して送信する際、最初に送信するブロックに連続して送信するブロック数を伝送データに含めるブロック数設定手段を備えたことを特徴とするデータ伝送プロトコル制御装置。
【請求項5】
複数のブロックを連続して受信する際、最初に受信したブロックから連続して送信されるブロック数を認識するブロック数認識手段と、
その後連続して送信された複数のブロックの最後のブロックに対してのみ前記送信側に対して応答を返信する応答返信手段と
を更に備えたことを特徴とする請求項4記載のデータ伝送プロトコル制御装置。
【請求項6】
連続して送信される複数のブロックの最後のブロックを除くそれぞれのブロックに、次の送信のブロックと関連があることを示す情報を設定するチェイニング設定手段を更に備えたことを特徴とする請求項5記載のデータ伝送プロトコル制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−226360(P2010−226360A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70585(P2009−70585)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】