説明

データ保持装置、データ保持システム、データ保持方法およびプログラム

【課題】ネットワークを介して接続された複数のデータ保持装置において、特定のデータまたはレプリカを保持するデータ保持装置が局所的に減少することを防ぐこと。
【解決手段】データ保持装置は、データまたはその複製であるレプリカを保持する保持部と、データまたはレプリカの削除の優先度に応じてデータまたはレプリカを削除するとともに、データまたはレプリカを削除する際、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対する削除の優先度を下げるように指示する通知を、ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置に送出する削除部と、前記通知を受けた場合において、前記通知において削除の優先度を下げるように指示されたデータまたはレプリカを保持しているときには、該データまたはレプリカに対する削除の優先度を下げる更新部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ保持装置、データ保持システム、データ保持方法、およびプログラムに関し、特に、広域データ配置システムのように、データの複製としてレプリカを保持するデータ保持装置、データ保持システム、データ保持方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地理的に離れた複数のデータ保持装置が連携する広域ストレージシステムが知られている。広域ストレージシステムとして、例えば、P2P(Peer−to−Peer)ファイル共有システム、CDN(Contents Delivery Network)などが挙げられる。
【0003】
これらのシステムでは、データの複製(以下、「レプリカ」という。)を生成して各データ保持装置に保持することにより、データ取得時間の短縮、ネットワーク使用帯域の削減、データ保持装置の負荷分散といった効果がもたらされる。以下、レプリカ配置によってもたらされる効果を「レプリカ配置効果」という。
【0004】
レプリカ配置効果は、データにアクセスする際に、自身が持つレプリカまたは近隣のデータ保持装置のレプリカにアクセスすることによって得られる。したがって、アクセス頻度の高いデータのレプリカを多く配置することで、高いレプリカ配置効果が得られる。
【0005】
特許文献1において、各データにつき、ネットワーク内にデータの更新が可能なコアデータを一つ配置し、読み出しのみが可能な複製データを複数分散配置することにより、データの一貫性を保持しつつデータの可用性を高める複製管理方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献2において、削除すべきファイルとして選択されたファイルの所有者が使用する端末装置に、その旨を示す削除確認通知を送信することで、記憶装置に保存されている画像ファイルが、その所有者の知らない間に削除されることを防ぐ画像ファイル管理装置が記載されている。
【0007】
さらに、特許文献3において、複数のローカルサーバの間で、他のローカルサーバが管理するアイテムへのアクセス履歴を用いて、自身が管理するアイテムへのアクセス履歴を更新するアクセス履歴生成方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−171278号公報
【特許文献2】特開2004−240511号公報
【特許文献3】特開2004−341635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以下の分析は、本発明者によってなされたものである。
【0010】
データ保持装置に対して新しいレプリカが格納されていく過程で、データ保持装置におけるレプリカ保持領域の容量が不足した場合には、レプリカの削除が行われる。レプリカ削除の方法として、一例として、各データ保持装置において独立にLeast Recently Used(LRU)アルゴリズムが用いられている。LRUアルゴリズムによると、レプリカはアクセス時刻が最も古いデータから順に削除される。
【0011】
しかし、各データ保持装置において独立にレプリカを削除するポリシによると、レプリカ密度のばらつきが発生する。ここでは、あるデータ保持装置とそれに隣接するデータ保持装置に格納されている任意のコンテンツのレプリカの個数を「レプリカ密度」と定義する。図6を参照して、レプリカ密度のばらつきについて説明する。図6を参照すると、データ保持装置は、オーバレイネットワークを構築している。また、いくつかのデータ保持装置は、あるデータのレプリカを保持しているものとする。
【0012】
図6は、各データ保持装置のレプリカ密度のばらつきが大きい場合を示している。図6を参照すると、データ保持装置aのレプリカ密度は3である。一方、データ保持装置kのレプリカ密度は0である。レプリカ密度のばらつきにより、アクセス頻度が中程度ないし低いデータに対するアクセス時間、帯域使用量、負荷がデータ保持装置によってばらつく。このとき、性能見積りが困難となり、リソース利用の効率が悪化するなどの問題が起こり得る。したがって、レプリカ密度のばらつきが小さい状態を保ちつつ、全体のレプリカ数が減少していくことが望ましい。
【0013】
しかし、各データ保持装置において独立にレプリカを削除するポリシに従った場合には、レプリカ数が少なくなる過程で、データ保持装置間でレプリカ配置効果のばらつきが大きくなるという問題が生じる。
【0014】
なお、特許文献2によると、ファイルを削除する際にファイル所有者による応答を要する上、ファイルが削除されるか否かはファイル所有者による応答結果に依存することから、上記の問題を解消することはできない。また、特許文献3によると、複数のローカルサーバ間が、所定のタイミングでアイテムへのアクセス履歴を互いに通知し合うに過ぎず、やはり、上記の問題を解消することはできない。
【0015】
そこで、ネットワークを介して接続された複数のデータ保持装置において、特定のデータまたはレプリカを保持するデータ保持装置が局所的に減少することを防ぐことが課題となる。本発明の目的は、かかる課題を解決するデータ保持装置、データ保持方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の視点に係るデータ保持装置は、
データまたはその複製であるレプリカを保持する保持部と、
データまたはレプリカの削除の優先度に応じてデータまたはレプリカを削除するとともに、データまたはレプリカを削除する際、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対する削除の優先度を下げるように指示する通知を、ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置に送出する削除部と、
前記通知を受けた場合において、前記通知において削除の優先度を下げるように指示されたデータまたはレプリカを保持しているときには、該データまたはレプリカに対する削除の優先度を下げる更新部と、を備えている。
【0017】
本発明の第2の視点に係るデータ保持方法は、
データ保持装置が、データまたはその複製であるレプリカを保持する保持部から、データまたはレプリカの削除の優先度に応じてデータまたはレプリカを削除する工程と、
データまたはレプリカを削除する際、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対する削除の優先度を下げるように指示する通知を、ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置に送出する工程と、
前記通知を受けた場合において、前記通知において削除の優先度を下げるように指示されたデータまたはレプリカを保持しているときには、該データまたはレプリカに対する削除の優先度を下げる工程と、を含む。
【0018】
本発明の第3の視点に係るプログラムは、
データまたはその複製であるレプリカを保持する保持部から、データまたはレプリカの削除の優先度に応じてデータまたはレプリカを削除する処理と、
データまたはレプリカを削除する際、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対する削除の優先度を下げるように指示する通知を、ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置に送出する処理と、
前記通知を受けた場合において、前記通知において削除の優先度を下げるように指示されたデータまたはレプリカを保持しているときには、該データまたはレプリカに対する削除の優先度を下げる処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るデータ保持装置、データ保持方法およびプログラムによると、ネットワークを介して接続された複数のデータ保持装置において、特定のデータまたはレプリカを保持するデータ保持装置が局所的に減少することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のデータ保持装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】実施形態に係るデータ保持装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係るデータ保持装置により、レプリカを削除する際の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施形態に係るデータ保持装置により、データアクセス時刻更新の通知を受信する際の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施例におけるデータ保持装置の動作について説明するための図である。
【図6】レプリカ配置効果のばらつきが大きい場合について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
はじめに、本発明の概要について説明する。図1を参照すると、本発明に係るデータ保持装置(201)は、保持部(25)、削除部(24)、および更新部(23)を備えている。なお、この概要において付記した図面参照番号は、専ら理解を助けるための例示であり、本発明は図示の態様に限定されるものではない。
【0022】
保持部(25)は、データまたはその複製であるレプリカを保持する。削除部(24)は、データまたはレプリカの削除の優先度に応じてデータまたはレプリカを削除する。また、削除部(24)は、データまたはレプリカを削除する際、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対する削除の優先度を下げるように指示する通知を、ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置に送出する。更新部(23)は、前記通知を受けた場合において、前記通知において削除の優先度を下げるように指示されたデータまたはレプリカを保持しているときには、該データまたはレプリカに対する削除の優先度を下げる。
【0023】
本発明に係るデータ保持装置(201)によると、ネットワークを介して接続された複数のデータ保持装置において、特定のデータまたはレプリカを保持するデータ保持装置が局所的に減少することを防ぐことができる。
【0024】
本発明において以下の形態が可能である。
[形態1]
上記第1の視点に係るデータ保持装置のとおりである。
【0025】
[形態2]
前記削除部は、Least Recently Used(LRU)アルゴリズムを用いてアクセス時刻の古いデータまたはレプリカを削除するとともに、データまたはレプリカを削除する際、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対するアクセス時刻を更新するように指示する通知を、ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置に送出し、前記更新部は、前記通知を受けた場合において、前記通知においてアクセス時刻を更新するように指示されたデータまたはレプリカを保持しているときには、該データまたはレプリカに対するアクセス時刻を更新するようにしてもよい。
【0026】
[形態3]
前記削除部は、前記通知において、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対するアクセス時刻を、該削除の時刻へ更新するように指示してもよい。
【0027】
[形態4]
前記削除部は、前記通知において、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対するアクセス時刻を、更新前のアクセス時刻と該削除の時刻との間の時刻へ更新するように指示してもよい。
【0028】
[形態5]
前記近隣のデータ保持装置は、ネットワークを介して所定のホップ数で到達しうるデータ保持装置であってもよい。
【0029】
[形態6]
データ保持装置は、ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置のアドレスを保持する近隣データ保持装置管理部と、前記近隣データ保持装置管理部から取得したアドレスを用いて、前記通知を近隣のデータ保持装置に送出する送受信部と、をさらに備えていてもよい。
【0030】
[形態7]
データ保持システムは、ネットワークを介して互いに接続された、形態1ないし6のいずれかに記載のデータ保持装置を複数備えていることが好ましい。
【0031】
[形態8]
上記第2の視点に係るデータ保持方法のとおりである。
【0032】
[形態9]
データ保持装置が、Least Recently Used(LRU)アルゴリズムを用いてアクセス時刻の古いデータまたはレプリカを削除する工程と、データまたはレプリカを削除する際、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対するアクセス時刻を更新するように指示する通知を、ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置に送出する工程と、前記通知を受けた場合において、前記通知においてアクセス時刻を更新するように指示されたデータまたはレプリカを保持しているときには、該データまたはレプリカに対するアクセス時刻を更新する工程と、を含んでいてもよい。
【0033】
[形態10]
上記第3の視点に係るプログラムのとおりである。
【0034】
[形態11]
Least Recently Used(LRU)アルゴリズムを用いてアクセス時刻の古いデータまたはレプリカを削除する処理と、データまたはレプリカを削除する際、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対するアクセス時刻を更新するように指示する通知を、ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置に送出する処理と、前記通知を受けた場合において、前記通知においてアクセス時刻を更新するように指示されたデータまたはレプリカを保持しているときには、該データまたはレプリカに対するアクセス時刻を更新する処理と、をコンピュータに実行させるようにしてもよい。
【0035】
(実施形態)
次に、実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図2は、本実施形態のデータ保持装置の構成を示すブロック図である。
【0036】
図2を参照すると、データ保持装置101は、レプリカ管理部11において、レプリカの削除をし、そのレプリカのアクセス時刻を更新する通知を出す削除部14と、アクセス時刻の更新通知を送受信する送受信部12と、アクセス時刻の更新通知を受信し、保持しているレプリカのアクセス時刻を更新する更新部13とを備え、あるデータ保持装置であるレプリカの削除が行われた場合、近隣のデータ保持装置にそのレプリカのアクセス時刻を更新する通知を出し、近隣のデータ保持装置群で同時期に同じレプリカが削除されることを回避する。
【0037】
図2を参照すると、本実施形態のデータ保持装置101を備えたデータ保持システムは、複数のデータ保持装置と、これらを接続する伝送路100とを有する。なお、データ保持装置の台数は、特に制限されない。
【0038】
データ保持装置101は、近隣データ保持装置管理部10と、レプリカ管理部11と、保持部15とを備えている。レプリカ管理部11は、送受信部12、更新部13および削除部14を含む。
【0039】
これらの各部は、次のように動作する。近隣データ保持装置管理部10は、データ保持装置101で構築される論理ネットワークおよびオーバレイネットワーク構成を管理するとともに、その論理ネットワーク上における近隣データ保持装置を管理する。レプリカ管理部11は、データ保持装置101が保持しているデータの複製であるレプリカを管理する。保持部15は、レプリカを保持する。
【0040】
送受信部12は、レプリカのアクセス時刻更新通知を他の近隣データ保持装置へ送信し、他の近隣データ保持装置からのアクセス時刻更新通知を受信する。また、送受信部12は、近隣のデータ保持装置を近隣データ保持装置管理部10に問い合わせる。更新部13は、送受信部12を介して、他のデータ保持装置からのレプリカアクセス時刻更新通知を受信し、対象となるレプリカを保持している場合には、そのレプリカのアクセス時刻を更新する。削除部14は、レプリカを削除する際、削除すべきレプリカを決定する。また、削除部14は、削除対象のレプリカのアクセス時刻更新通知を、送受信部12を介して送信する。
【0041】
なお、図示しないが、データ保持装置101において、オリジナルのデータを保持する手段、レプリカを作成する手段等が動作しているものとする。また、本発明においては、レプリカ作成方法の種類は制限されない。
【0042】
次に、図3、図4のフローチャートを参照して、本実施形態のデータ保持装置101を備えたデータ保持システムの動作について詳細に説明する。
【0043】
まず、レプリカ削除時における動作について説明する。図3のフローチャートを参照して、データ保持装置101において、レプリカの削除が行われる場合の処理について説明する。
【0044】
レプリカ管理部11の削除部14は、保持部15が保持しているレプリカを削除すべきタイミングが到来した場合には、削除すべきレプリカをLRUアルゴリズムに従って決定する(ステップS100)。削除部14は、削除対象レプリカのアクセス時刻更新通知を送信するように送受信部12に依頼する(ステップ101)。
【0045】
送受信部12は、近隣データ保持装置管理部10に問い合わせて、アクセス時刻更新通知を送信する近隣のデータ保持装置のアドレス情報を取得する(ステップS102)。送受信部12は、取得したアドレス情報を基にアクセス時刻更新通知を送信する(ステップS103)。
【0046】
次に、削除部14は、削除対象のレプリカを削除する(ステップS104)。データ保持装置101は、以上のフローチャートにしたがって、レプリカを削除する。
【0047】
次に、アクセス時刻更新通知の受信時におけるデータ保持装置101の動作について説明する。ここでは、図4のフローチャートを参照して、データ保持装置101が他のデータ保持装置からアクセス時刻更新通知を受信した場合の処理について説明する。
【0048】
まず、送受信部12は、他のデータ保持装置からアクセス時刻更新通知を受信する(ステップS200)。そして、送受信部12は、受信した通知を更新部13に渡す。
【0049】
次に、更新部13は、アクセス時刻更新通知の対象レプリカを保持しているかどうかを調べる(ステップS201)。対象のレプリカを保持していない場合には(ステップS201のNo)、更新部13は何も行わない。一方、対象のレプリカを保持している場合(ステップS201のYes)、更新部13は対象レプリカのアクセス時刻を更新する(ステップS202)。
【0050】
地理的に離れた複数のデータ保持装置が連携する広域ストレージシステムでデータの複製であるレプリカを複数のデータ保持装置が保持する場合、各データ保持装置において独立にレプリカを削除するポリシに従った場合には、システム全体のレプリカ数が減少していく過程で、データ保持装置間でレプリカ配置効果のばらつきが大きくなる。
【0051】
しかしながら、本実施形態に係るデータ保持装置によると、システム全体のレプリカ数が少なくなる過程で、局所的なデータ保持装置群で同時期にレプリカ配置効果がばらつくことを回避できる。なぜなら、あるデータ保持装置であるレプリカの削除が行われる場合には、近隣のデータ保持装置にそのレプリカのアクセス時刻を更新する通知を出し、近隣のデータ保持装置群で同時期に同じレプリカが削除されることが回避されるからである。
【実施例】
【0052】
次に、具体的な実施例を用いて、上記実施形態に係るデータ保持装置101の動作について説明する。
【0053】
一例として、図5に示すネットワーク構成を仮定し、データ保持装置Aがあるデータのレプリカを削除する場合について考える。また、本実施例では、アクセス時刻更新を通知する範囲を隣接する1ホップのデータ保持装置とする。なお、アクセス時刻更新を通知する範囲に制限はなく、例えば、2ホップ先の近隣ノードまで通知するなどの方法が考えられる。また、本実施例ではアクセス時刻を現在時刻に更新するものとする。なお、更新する時刻は特に制限されず、例えば、最終アクセス時刻と現在時刻の中間の時刻に更新するようにしてもよい。
【0054】
データ保持装置Aの保持部15の容量の制限により、レプリカの削除が必要となり、削除部14は、あるデータのレプリカを削除対象として選択したとする(図3のステップS100)。次に、送受信部12は、そのレプリカのアクセス時刻更新の通知先のデータ保持装置として、隣接データ保持装置管理部10から、隣接しているデータ保持装置B,C,Dのアドレス情報を取得する(ステップS102)。次に、データ保持装置Aの送受信部12は、データ保持装置B,C,Dのそれぞれに対し、削除対象のレプリカのアクセス時刻を更新するように通知する(ステップS103)。
【0055】
データ保持装置B、C、Dは、それぞれ、アクセス時刻更新通知を受信する(図4のステップS200)。データ保持装置BおよびCは、データ保持装置Aにおいて削除対象とされたレプリカと同一のレプリカを保持しているため(ステップS201のYes)、そのレプリカのアクセス時刻を現在時刻に更新する(ステップS202)。一方、データ保持装置Dは、対象となるレプリカを保持していないため(ステップS201のNo)、何もしない。
【0056】
以上のような処理を行うことで、データ保持装置BおよびCのレプリカは、LRUアルゴリズムにおいて、直ちに削除対象とされることがなくなる。したがって、レプリカが削除されたデータ保持装置Aの近隣のデータ保持装置において、短時間内に同一のレプリカが削除されることを防ぐことができる。このとき、レプリカが減少していく過程で、局所的なデータ保持装置群で同時期にレプリカ密度のばらつきが大きくなることを回避できる。したがって、本実施形態のデータ保持装置によると、レプリカ配置効果のばらつきが大きくなることを回避することができる。
【0057】
なお、上記の特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
10 近隣データ保持装置管理部
11 レプリカ管理部
12 送受信部
13 更新部
14 削除部
15 保持部
23 更新部
24 削除部
25 保持部
100 伝送路
101 データ保持装置
201 データ保持装置
A〜K データ保持装置
a〜k データ保持装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データまたはその複製であるレプリカを保持する保持部と、
データまたはレプリカの削除の優先度に応じてデータまたはレプリカを削除するとともに、データまたはレプリカを削除する際、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対する削除の優先度を下げるように指示する通知を、ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置に送出する削除部と、
前記通知を受けた場合において、前記通知において削除の優先度を下げるように指示されたデータまたはレプリカを保持しているときには、該データまたはレプリカに対する削除の優先度を下げる更新部と、を備えていることを特徴とするデータ保持装置。
【請求項2】
前記削除部は、Least Recently Used(LRU)アルゴリズムを用いてアクセス時刻の古いデータまたはレプリカを削除するとともに、データまたはレプリカを削除する際、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対するアクセス時刻を更新するように指示する通知を、ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置に送出し、
前記更新部は、前記通知を受けた場合において、前記通知においてアクセス時刻を更新するように指示されたデータまたはレプリカを保持しているときには、該データまたはレプリカに対するアクセス時刻を更新することを特徴とする、請求項1に記載のデータ保持装置。
【請求項3】
前記削除部は、前記通知において、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対するアクセス時刻を、該削除の時刻へ更新するように指示することを特徴とする、請求項2に記載のデータ保持装置。
【請求項4】
前記削除部は、前記通知において、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対するアクセス時刻を、更新前のアクセス時刻と該削除の時刻との間の時刻へ更新するように指示することを特徴とする、請求項2に記載のデータ保持装置。
【請求項5】
前記近隣のデータ保持装置は、ネットワークを介して所定のホップ数で到達しうるデータ保持装置であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のデータ保持装置。
【請求項6】
ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置のアドレスを保持する近隣データ保持装置管理部と、
前記近隣データ保持装置管理部から取得したアドレスを用いて、前記通知を近隣のデータ保持装置に送出する送受信部と、をさらに備えていることを特徴とする、請求項1または5に記載のデータ保持装置。
【請求項7】
ネットワークを介して互いに接続された、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のデータ保持装置を複数備えていることを特徴とするデータ保持システム。
【請求項8】
データ保持装置が、データまたはその複製であるレプリカを保持する保持部から、データまたはレプリカの削除の優先度に応じてデータまたはレプリカを削除する工程と、
データまたはレプリカを削除する際、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対する削除の優先度を下げるように指示する通知を、ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置に送出する工程と、
前記通知を受けた場合において、前記通知において削除の優先度を下げるように指示されたデータまたはレプリカを保持しているときには、該データまたはレプリカに対する削除の優先度を下げる工程と、を含むことを特徴とするデータ保持方法。
【請求項9】
データまたはその複製であるレプリカを保持する保持部から、データまたはレプリカの削除の優先度に応じてデータまたはレプリカを削除する処理と、
データまたはレプリカを削除する際、削除されるデータまたはレプリカと同一のデータまたはレプリカに対する削除の優先度を下げるように指示する通知を、ネットワークを介して接続された近隣のデータ保持装置に送出する処理と、
前記通知を受けた場合において、前記通知において削除の優先度を下げるように指示されたデータまたはレプリカを保持しているときには、該データまたはレプリカに対する削除の優先度を下げる処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−99072(P2012−99072A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248777(P2010−248777)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度、独立行政法人情報通信研究機構「次世代ネットワーク(NGN)基盤技術の研究開発」)は産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】