説明

データ信号監視装置および信号監視方法

【課題】 デジタル放送設備において、簡易にデータ信号の冗長伝送系に異常があることを検出するデータ信号監視装置、および信号監視方法を提供すること
【解決手段】 データ信号監視装置1は、比較判定部12が、冗長系を構成するデータ送出装置2のそれぞれが出力するデータ信号のパルスカウントを行い、両者のパルスカウントが所定のパルス数の差、又は、パルス数の比よりも大きくなった場合に、冗長系動作に異常が有ると判定してアラームを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送の冗長化送信系統におけるデータ信号監視装置および信号監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送では、映像信号をデジタル符号化した信号と合わせて各種のデジタルのデータ信号が多重して放送される。放送信号は、事故に備え2重化等の冗長化が行われており、デジタルのデータ信号も2台のデータ送出装置から多重装置であるMUXへデータ信号が出力されている。コンピュータを用いた情報処理システムの2重化されたデータ伝送系では、冗長伝送の動作が正常で有ることを確認するためにデータ照合等を行う(例えば、特許文献1。)。
【0003】
デジタル放送では、受信機におけるエラーの自己訂正のための誤り制御符号が付加されているので、各冗長系の送信系統それぞれをエラーチェックして詳細に異常を検出出来る。しかしながら、両系統に放送受信機と同様な復号回路を備えるためデータ信号監視装置が大型化すること、また伝送系統途中で信号を取り出して確認することが困難な問題が有った。
【特許文献1】特開2004−178048号公報 (第24頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デジタル放送設備では、各冗長伝送系それぞれにデータ監視装置を設けるが、放送受信機と同様な復号回路を備えるためデータ信号監視装置が大型化すること、また伝送系統途中で信号を取り出して確認することが困難な問題があった。
【0005】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、デジタル放送設備の送信系統上で、簡易にデータ信号の冗長伝送系に異常があることを検出出来るデータ信号監視装置および信号監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のデータ信号監視装置は、デジタル放送のデジタルの放送信号を伝送する同じ構成で2重化された伝送系を監視するデータ信号監視装置において、前記2重化された伝送系の第1、第2の系統に対応して同じ装置の入力、又は出力である前記放送信号を入力してそれぞれデータ量のカウントを行う第1、第2のカウント信号に変換して出力する第1、第2の入力部と、 前記第1、第2の入力部からの前記各カウント信号を受信し、データ量のカウントと比較を行い、前記比較の結果が所定の条件を超える場合、前記2重化された伝送系に異常があることを示すアラームを出力する比較判定手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また本発明のデータ信号監視装置の信号監視方法は、デジタル放送のデジタルの放送信号を伝送する同じ構成で2重化された伝送系のデータ信号監視装置の信号監視方法において、前記データ信号監視装置は、前記2重化された伝送系の第1、第2の系統に対応して同じ装置の入力、又は出力である前記放送信号をそれぞれ入力し、入力した前記放送信号を前記第1、第2の系統のデータ量のカウントを行うための第1、第2のカウント信号に変換し、前記第1、第2のカウント信号のデータ量のカウントと比較を行い、前記比較の結果が所定の条件を超える場合、前記2重化された伝送系に異常があることを示すアラームを出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、デジタル放送設備において、簡易にデータ信号の冗長伝送系に異常があることを検出出来る冗長伝送系のデータ信号監視装置および信号監視方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明の実施例に係るデータ信号監視装置が適用されるデジタル放送送信設備の構成を示す系統図である。
図1においてデジタル放送送信設備は、カメラ、VTR等のコンテンツ出力機器C1〜Cn、スイッチャSW、符号化装置E(#1、#2)、データ信号監視装置1、データ送出装置2(#1、#2)、MUX(多重装置)3、送信器4(#1、#2)とからなる。ここで(#1)、(#2)は、放送信号を伝送する2重化された各伝送系統の機器(装置)で有ることを示している。
【0011】
デジタル放送は、コンテンツ出力機器C1〜Cnから放送番組の時刻表に応じてスイッチャSWが選択する映像信号は、2系統の符号化装置E(#1、#2)で所定の符号化が行われMUX3へ入力される。一方、データ信号は、2系統のデータ送出装置2(#1、#2)から、MUX(多重装置)3へ入力される。MUX3では、符号化された映像信号と、データ信号を多重し、送信器4(#1、#2)へ出力する。
【0012】
これらの冗長化系統では、上記2系統のうち、(#1)又は、(#2)の系統のいずれか一方の信号が放送信号として送信器4のいずれか一方からオンエアされ、オンエアされている系統(現用系)に異常が発生した場合でも信号が常に連続するシームレス切換が行われる。従って、同じデジタル信号が(#1)、(#2)の系統で伝送されねばならないことから、冗長系の両者が常に正常であることを確かめる必要がある。
【0013】
冗長系の両系統が正常に動作しているか否かを確認するには、冗長系統の最終段で、デジタル放送に用いられているインターリーブなどエラー訂正のためのエラー検出機能を用いて、詳細に伝送状態を観察することが出来る。しかし、この方法では復号化など実際の放送受信機と同様に符号化復元を行うのに加えて、更に解析機能などを備えなければならず監視装置規模が大きくなり、また、伝送路上での監視ポイントを自由に選ぶことが困難である。
【0014】
本発明は、冗長系を構成する伝送系統上、同じ伝送ステップ、言い換えると各系統での同じ機器の出力か、入力点などの測定点(以下、監視ポイントと称する。)でのデータフロー量を測定比較し、2者の間に所定以上の差が有れば、現用、又は予備系に異常が有ることをアラーム出力することにより、容易に冗長系動作が出来るデータ信号監視装置を提供するものである。
【0015】
即ち、図1においてデータ信号監視装置1は、データ送出装置2(#1、#2)の各出力端に接続され、各系統のデータ信号を入力し、両データ送出装置2が出力するデジタル信号のデータ量を測定比較し、一致しない場合に異常と判定して警報を出力する。この方法では、デジタル信号の誤り訂正機能を利用しないので装置が小型化出来る効果がある。
【0016】
図2は、本発明の実施例に係るデータ信号監視装置の機能構成を示すブロック図である。
図2においてデータ信号監視装置1は、入力部11a、入力部11b、比較判定部12と、測定出力部13とを備えている。
【0017】
入力部11a、入力部11bは、それぞれデータ送出装置2(#1)とデータ送出装置2(#2)の各出力との電気的インタフェース整合をとってデータパルスを取り出す回路である。
【0018】
例えば、データ送出装置2のデータ出力を分岐出力するコネクタと、分岐された電気信号を所定のインピーダンス、又はハイインピーダンスで取り出し元のデータ送出装置2のデータ出力に影響を与えないようにしてデータ信号を取り出して比較判定部12へ出力する変換回路とで構成される。
【0019】
この入力部11a、11bは、データ送出装置2のデータ出力がベースバンド出力の場合は、上記の様な、レベル、インピーダンス変換のみでも良い。そして、例えば、データ送出装置1(#1、#2)の入力側など、冗長系を構成する任意の伝送途中のポイントでも監視が必要な場合には、監視ポイントでの符号化復元、クロック再生機能等を備えるように予め符号化復元機能を備えて、ベースバンドでのデータ信号が得られるようにして置けば良い。なお、ここでは、低速のデジタルデータ信号を例にデータ信号監視装置1の動作説明をしているが、本発明によるデータ信号監視装置1は、符号化映像信号と多重された信号を送受信する送信器4(#1、#2)の入力に適用されても良い。
【0020】
比較判定部12は、入力部11a、入力部11bから入力されるデータ信号のパルスカウントを行い、両者のパルスカウントに所定以上の差がある場合、異常と判定してアラーム信号を生成して測定出力部13へ出力する。
【0021】
測定出力部13は、アラーム信号を更にブザー音や、警報ランプ、または、所定のレベルの電気信号にしてオペレータや外部の制御器に警報を出力する。
【0022】
図3は、比較判定部12の1つの回路例を説明するブロック図である。
図3において、比較判定部12は、それぞれの系統からのデータ信号を変換出力する入力部2aと入力部2aに接続されるカウンタ121a、カウンタ121bと、タイマ122、および差分検出部123とからなる。
【0023】
タイマ122からは、パルスカウントを比較するためのタイミング信号が、カウンタ121a、カウンタ121bと、差分検出部123とへ出力され、一定の間隔のタイミングで各系統から入力されるパルスがカウントされる。
【0024】
カウントされるパルスは、入力部11a、入力部11bでベースバンドに変換され、「1」のレベルのパルス数がカウントされる。理由は、例えば、バイフェーズ符号化でのパルスをそのままカウントすると、データの有無に拘わらず常に一定のパルスカウントをしてしまうのでそれを防ぐためである。なお、データが無信号で有る場合には出力レベルが「0」に保たれるものであれば、ベースバンドに復元しなくてもパルスカウントを行うことは出来るので符号化復元は省略しても良い。
【0025】
こうして、カウンタ121a、121bが「1」のレベルのパルス数をカウントし、差分検出部123でタイマ122を参照し、例えば、0.1秒間隔のパルスカウント数を単位として2つの系統でのパルスカウント数を照合比較して、その差が一定数値以上になった場合、異常と判定してアラーム信号を測定出力部13へ出力する。
【0026】
デジタル放送のデータ形態によってデータ送出装置2(#1、#2)のデータ出力速度(伝送速度)が、例えば、数kbpsから数百kbpsの様に異なったり、監視ポイントによってデータ出力速度も異なる場合がある。その場合、パルスカウント時間(タイミング)を同一のままカウントすると、パルスカウントは、伝雄速度によって異なってしまう。
【0027】
そこで差分検出部123が異常と判定する基準は、両系統のパルスカウント数の比率を求めて、例えば差が10%異常になった場合アラームを出力するようにすると誤警報発生確率を下げ、安定運用をすることが出来る。
【0028】
一方、パルス数そのものの差でアラームを出すようにする場合は、感度の高い検出をすることが出来る。このパルス数の判定基準の設定は、差分検出部123に接続される図示されないスイッチ等の入力手段によって調整出来る様にすればよい。もしくは、タイマ122へ図示されないスイッチ等によってデータ伝送速度の違いに応じてパルスカウントをする時間間隔を変更出来るようにしても良い。
【0029】
図4は、比較判定部12の他の回路例を説明するブロック図である。
図4において、比較判定部12は、それぞれの系統からのデータ信号を変換出力する入力部2aと入力部2aに接続される検波整流部121x、検波整流部121yと、コンパレータ124とからなる。
【0030】
入力部11a、入力部11bでベースバンドに変換された各系統のパルス信号は、それぞれの検波整流部121x、121yで直流レベルに変換され、コンパレータ124へ入力される。このコンパレータ124は2入力の信号レベル差に応じて動作するので、この方法は、間接的にデータ送出装置2から出力されるパルスをカウントしていることになる。
【0031】
即ち、両系統が異常なく動作していれば、「1」になるマーク率が等しいので検波整流された直流レベルも等しいが、いずれか一方に異常が有ればこの直流レベルのバランスが崩れるので異常を検出することが出来る。この第2の方法では、タイマ122が不要でクロック速度によることなく簡便に伝送データ量を比較出来る特徴がある。なお、タイマのカウント時間単位に相当するものとして整流検波部121の積分時定数をデータ伝送速度を変える様にしてもよい。
【0032】
以上説明した如く、本発明のデータ信号監視装置は、容易に冗長系の2系統での伝送データ量の差を簡単に測定することにより、冗長動作の異常を検出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例に係るデータ信号監視装置が適用されるデジタル放送送信設備の構成を示す系統図。
【図2】本発明の実施例に係るデータ信号監視装置の機能構成を示すブロック図。
【図3】比較判定部の回路の1例のブロック図。
【図4】比較判定部の回路の他の例のブロック図。
【符号の説明】
【0034】
1 データ信号監視装置
11a、11b 入力部
12 比較判定部
121a、121b カウンタ
121x、121y 整流検波部
122 タイマ
123 差分検出部
124 コンパレータ
13 測定出力部
2 データ送出装置
3 MUX(多重装置)
4 送信器
C1〜Cn コンテンツ出力機器(装置)
SW スイッチャ
E 符号化装置E

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送のデジタルの放送信号を伝送する2重化された伝送系を監視するデータ信号監視装置において、
前記2重化された伝送系の第1、第2の系統に対応して同じ装置の入力、又は出力である前記放送信号を入力してそれぞれデータ量のカウントを行う第1、第2のカウント信号に変換して出力する第1、第2の入力部と、
前記第1、第2の入力部からの前記各カウント信号を受信し、データ量のカウントと比較を行い、前記比較の結果が所定の条件を超える場合、前記2重化された伝送系に異常があることを示すアラームを出力する比較判定手段とを
備えることを特徴とするデータ信号監視装置。
【請求項2】
前記カウンタ信号は、
前記放送信号のベースバンド信号であるデータパルスであることを特徴とする請求項1に記載のデータ信号監視装置。
【請求項3】
前記比較判定手段は、
前記第1の入力部からのカウント信号が入力される第1のカウンタと、
前記第2の入力部からのカウント信号が入力される第2のカウンタと、
タイマと、
差分検出手段を備え、
前記差分検出手段は、前記第1、第2のカウンタから入力されるカウント数と前記タイマからの時間情報により単位時間あたりの両前記カウント数の差を求め、所定の差よりも大きい場合前記アラームを出力することを特徴とする請求項1に記載のデータ信号監視装置。
【請求項4】
前記比較判定手段は、
前記第1の入力部からのカウント信号が入力される第1のカウンタと、
前記第2の入力部からのカウント信号が入力される第2のカウンタと、
タイマと、
差分検出手段を備え、
前記差分検出手段は、前記第1、第2のカウンタから入力されるカウント数と前記タイマからの時間情報により単位時間あたりの両前記カウント数の比を求め、所定の比よりも大きい場合前記アラームを出力することを特徴とする請求項1に記載のデータ信号監視装置。
【請求項5】
前記比較判定手段は、
コンパレータと、
前記第1の入力部からのカウント信号を検波整流して第1の直流信号を前記コンパレータへ出力する第1の検波整流部と、
前記第2の入力部からのカウント信号を検波整流して第2の直流信号を前記コンパレータへ出力する第2の検波整流部と、
を備え、
前記コンパレータは、前記第1、第2直流信号のレベル差を測定し、所定の差よりも大きい場合前記アラームを出力することを特徴とする請求項2に記載のデータ信号監視装置。
【請求項6】
前記第1、第2の入力部へ入力される前記放送信号は、
デジタル放送の符号化映像信号に多重されるデジタルデータのデータ送出装置である
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ信号監視装置。
【請求項7】
デジタル放送のデジタルの放送信号を伝送する2重化された伝送系のデータ信号監視装置の信号監視方法において、
前記データ信号監視装置は、前記2重化された伝送系の第1、第2の系統に対応して同じ装置の入力、又は出力である前記放送信号をそれぞれ入力し、
入力した前記放送信号を前記第1、第2の系統のデータ量のカウントを行うための第1、第2のカウント信号に変換し、
前記第1、第2のカウント信号のデータ量のカウントと比較を行い、前記比較の結果が所定の条件を超える場合、前記2重化された伝送系に異常があることを示すアラームを出力する
ことを特徴とするデータ信号監視装置の信号監視方法。
【請求項8】
前記第1、前記第2のカウント信号は、それぞれ第1、第2のカウンタへ入力され、
両カウンタがカウントしたデータパルス数と、自装置の備えるタイマの時間情報により単位時間あたりの両前記カウント数を照合比較してそれらの間の差を求め、
その差が所定の差よりも大きい場合前記アラームを出力する
ことを特徴とする請求項7に記載のデータ信号監視装置の信号監視方法。
【請求項9】
前記第1、前記第2のカウント信号は、それぞれ第1、第2のカウンタへ入力され、
両カウンタがカウントしたデータパルス数と、自装置の備えるタイマの時間情報により単位時間あたりの両前記カウント数を照合比較してそれらの間の比を求め、
その比が所定の差よりも大きい場合前記アラームを出力する
ことを特徴とする請求項7に記載のデータ信号監視装置の信号監視方法。
【請求項10】
前記それぞれ入力される放送信号は、
前記放送信号のベースバンド信号のデータパルスの前記カウンタ信号に変換され、
前記変換された各前記カウンタ信号は、
検波整流された第1、第2の直流信号に更に変換され、
前記第1、第2の直流信号は、自装置の備えるコンパレータへ入力され、
前記コンパレータは、前記入力された第1、第2直流信号のレベル差を測定し、所定の差よりも大きい場合前記アラームを出力することを特徴とする請求項7に記載のデータ信号監視装置の信号監視方法。
【請求項11】
前記データ信号監視装置へ入力される前記放送信号は、
デジタル放送の符号化映像信号に多重されるデジタルデータのデータ送出装置である
ことを特徴とする請求項7に記載のデータ信号監視装置の信号監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−221346(P2007−221346A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38197(P2006−38197)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】