説明

データ処理方法および装置並びにその処理プログラム

【課題】空間検索と補助条件検索を同時に指定された場合に、高速に空間検索処理を行う。
【解決手段】地図データベースの空間検索用インデクス内に、空間情報のほかに補助条件である属性条件(付加情報)を1つまたは複数格納したことで、DBMSの複数検索条件結果のマージを行うことなく、空間検索用インデクスのアクセスだけで空間検索と補助条件検索の複合条件の検索を高速に行うことができる。また、n次元空間検索用インデクスに、補助属性データとして(n+1)次元の情報を記憶することにより、n次元の空間検索用インデクスで(n+1)次元の検索を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄積したデータの処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチメディアデータを取り扱うことができるRDBMS(Relational DataBase Management System:リレーショナル・データベース管理システム)が増加してきている。このマルチメディアデータの一種として、地図データを格納し、更新管理や、シンクライアントなどへの地図配信に利用されてきている。この地図データを高速に検索するための空間検索用インデクス技術が研究されてきた。
また、組込分野でも空間検索機能を有するDBMS(DataBase Management System:データベース管理システム)が開発されてきており、カーナビゲーション分野などへの応用が期待されている。
【0003】
空間検索用インデクスによく利用される空間分割手法として、R−tree(図11)や四分木(図12)が挙げられる。これらは、2次元空間を適切に分割していくことにより木構造を構成し、検索時のデータ処理件数を大幅に削減することを目的としている。
【0004】
図11のR−treeは、部分領域を包囲長方形によって管理し、さらにその内側に階層的に包囲長方形を再帰的に管理することにより空間情報を管理する方法である。対象空間の1段目(1101)として部分領域の包囲長方形を決定し、その範囲内の管理対象図形の分布により、必要に応じて2段目(1102)の包囲長方形を決定する。さらに1段目(1101)と同様に、2段目(1102)の範囲内の管理対象図形の分布により、必要に応じて3段目(1103)の包囲長方形を決定する。この分割を再帰的に繰り返すことにより、空間情報を木構造で管理することができる。
【0005】
図12の四分木は、空間を既定の割合で規則的に4分割し、それを再帰的に繰り返すことにより空間情報を管理する方法である。対象空間の1段目(1201)を既定の割合で4分割したものを2段目(1202)とする。さらに1段目(1201)と同様に、2段目(1202)を既定の割合で4分割したものを3段目(1203)とする。この分割を再帰的に繰り返すことにより、空間情報を木構造で管理することができる。
【0006】
図11、図12に示すような空間を木構造に分割するインデクスを用いて、空間検索を行う処理のフローチャートの一例を図13に示す。空間検索条件を取得し(ステップ1301)、空間検索用インデクスの木構造を再帰的に探索して、空間検索条件に接触または内包される枝から検索対象とすべき葉(リーフ)を抽出し(ステップ1302)、その葉から対象図形を取得し(ステップ1303)、取得した図形を個別に空間検索条件と比較(対象の図形が空間検索範囲条件に適合しているか否かを判別)し(ステップ1304)、条件に適合していたら、対象の図形を検索結果として出力する(ステップ1305)。
続いて、対象の葉の中にまだ図形があるかどうかを判定し(ステップ1306)、まだ図形があるならステップ1303から繰り返す。葉内の図形の処理が終わったら、検索対象となる葉がまだあるかどうか判定し(ステップ1307)、まだ対象となる葉があるならステップ1302から繰り返す。このような処理により、空間上に分布する図形群から目的の空間範囲の図形を高速に検索することができる。
【0007】
空間検索用インデクスを利用することにより、図9に示すような空間範囲での検索を高速に行うことができる。図9では、東京駅の座標(901)を中心に、指定の半径の円(902)内にあるランドマークをすべて検索した結果を示した。空間範囲外のランドマーク(903)は検索されず、空間範囲内のランドマーク(904)のみが検索される結果となる。この例で検索されるのは、Bレストラン神田店、Y銀行大手町支店、X銀行有楽町支店となる。
このような技術は、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特許第3649430号公報(特開2001−14338号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の空間検索機能を有するRDBMSを用いて、「空間的に検索する条件」と「その他の絞込み条件」とを複合した結果を検索することは良くある用途である。たとえばカーナビゲーション分野での「経路沿いのガソリンスタンド」、不動産検索システムでの「駅から半径1km以内で3LDK以上のマンション」、エリアマーケティング分野での「既存店舗から半径2km以内の競合店」などの付加条件付きの空間検索条件が挙げられる。
【0009】
図10に、空間検索条件と属性条件の複合条件の検索例を示す。本願の処理結果の例を示す図10では、東京駅の座標(1001)を中心に、所定半径の円(1002)内にあるランドマークのうち、ランドマークのカテゴリが銀行を表しているものを検索した結果を示している。一般的な空間検索の処理結果を示す図9と同様に空間範囲外のランドマーク(1003)は検索されず、さらに図10では、空間範囲内だが属性が条件に適合しないランドマーク(1004)も検索されない。つまり、空間範囲内且つ属性(属性情報ともいう)が条件に適合するランドマーク(1005)のみが検索される結果となっている。この例では、Bレストラン神田店は検索円の範囲内ではあるが属性条件が銀行ではないので検索されず、Y銀行大手町支店とX銀行有楽町支店が検索される結果となる。
【0010】
これらを検索する際に、従来型のRDBMSでは空間データカラムのほかに属性カラムを持ち、SQLの条件句で複数の検索条件をAND条件で結ぶことにより、RDBMS内で検索結果をマージし出力するという方式が考えられる。この場合、空間検索だけではあまり絞り込めないが、その後の付加条件で大きく絞り込める条件で、各々の条件で単独の検索を行ってはあまり性能が期待できない。しかしながら、そのような条件は往々にしてよく利用される条件となっているため、検索処理に時間が掛かり、高速な検索処理技術が望まれていた。
【0011】
本発明の目的は、空間検索用インデクス内に複合条件のヒントとなる付加情報を含めることにより、空間検索用インデクスの検索時に付加情報についても検索を可能とし、高速な空間検索処理を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の空間検索用インデクス(空間インデクスともいう)に、空間情報のほかに属性条件(付加情報)を1つまたは複数格納できるように拡張する。
【0013】
通常の空間検索用インデクスでは、2次元データを扱う場合、x座標とy座標を用いて空間分割を行い、その情報をインデクスに格納しておくことで、空間検索時にインデクスの参照により空間条件を絞り込むことができるよう設計されている。空間検索条件と付加属性条件との複合条件での検索では、空間検索で絞り込んだ後、他のカラムに格納された属性情報で判定するか、または他のカラムに割り当てられたインデクス検索結果とマージし、両方に含まれている結果を出力する。
【0014】
ここで、空間検索用インデクス内に属性条件のヒント情報を格納しておけば、空間検索で絞り込むとともに、属性条件についても絞り込むことができる。空間検索用インデクス内に格納する属性条件は、付加属性をキーワードや数値等の形式で格納しても良いが、インデクスの肥大化を避けるため、付加属性を項目別、ジャンル別などで分類し、その分類情報をヒント情報としてビット列として格納し、ビット列から特定のビット条件を満たすものだけ検索する方式を採ることもできる。
【0015】
また、2次元の空間検索用インデクス内に属性条件としてz軸の情報を取り込み、補助属性条件にも範囲検索を実装することにより、2次元の空間検索用インデクスで3次元の検索が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、空間検索用インデクス内に複合条件のヒントとなる付加情報を含めることにより、空間検索用インデクスの検索時に付加情報についても検索が可能なため、高速な空間検索処理が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を適用した空間検索システムの一実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態の一例を示すシステム構成図のうち、ホストシステム(データ処理装置)と通信端末で構成される例を示す。
本空間検索システムは、地図を格納する記録装置(記憶装置)101と、検索処理を行うホストシステム102と、ユーザからの指示を入力する入力装置103と、結果や状態を表示する表示装置104から構成される。ホストシステム102は、計算機や情報処理装置でも実現することが可能である。
【0019】
記録装置101は、地図データを格納する地図データベース105と、空間検索の高速化のために構成された空間検索用インデクス106から構成される。
【0020】
ホストシステム102は、演算処理を行うCPU107と、モジュール(プログラム)やデータを格納するメモリ108と、検索処理要求に従い記録装置101にアクセスするデータベース処理モジュール109と、検索処理結果を配信する通信装置110から構成される。
【0021】
データベース処理モジュール(データ処理プログラム)109は、空間座標データ(位置情報ともいう)およびその付加属性データ(属性情報ともいう)についての検索要求(検索条件を含んでもよい)と更新要求もしくは追加要求、削除要求を処理する空間検索用インデクス処理部111と、記録装置101にアクセスするデータアクセスモジュール112から構成される。一般的なデータベース処理を行うデータベース処理モジュールは、その他の検索要求や更新要求を処理するモジュールも含む場合もあるが、図1からは省略している。
【0022】
空間検索用インデクス処理部111は、空間座標による検索処理を実行する空間検索処理モジュール113と、付加属性の検索処理を実行する付加属性検索処理モジュール114と、更新要求時に使用するインデクス更新処理モジュール115から構成される。
空間検索用インデクス処理部111は、空間検索条件と属性条件の複合条件において、空間検索用インデクス106を用いて地図データベース105に格納されているデータの中から必要な(検索要求を満たす)レコードを高速に選択することができる。
【0023】
インデクス更新処理モジュール115は、空間座標データおよびその付加属性データの更新要求時に、地図データベース105と同期して空間検索用インデクス106を更新する。空間検索用インデクスは、空間インデクスともいう。
【0024】
このホストシステム102から地図データおよび地図関連データを受信する移動端末装置116は、無線回線によって基地局117と通信可能となっている。そして、基地局117は有線の公衆回線網によるネットワーク118と接続され、このネットワーク118にホストシステム102が接続されている。従って、移動端末装置116とホストシステム102とは、基地局117に到る無線回線およびネットワーク118を通じてホストシステム102に接続されている(通信可能となっている)ことになる。
【0025】
図2は、本実施の形態の一例を示すシステム構成図のうち、組み込み機器として構成される例を示す。本空間検索システムは、地図を格納する記録装置201と、検索処理を行う組み込み機器202と、ユーザからの指示を入力する入力装置203と、結果や状態を表示する表示装置204から構成される。
【0026】
記録装置201は、地図データを格納する地図データベース205と、空間検索の高速化のために構成された空間検索用インデクス206から構成される。
【0027】
組み込み機器202は、モジュールを実行するための処理を行うCPU207と、モジュール(プログラム)やデータを格納するメモリ208と、入力した(もしくは、受け付けた)検索処理要求に従い記録装置201にアクセスするデータベース処理モジュール209と、ユーザからの入力やユーザへの地図表示や状態表示を管理するユーザインタフェース処理モジュール210から構成される。これらの処理部やモジュールは、プログラムやオブジェクト、プロセス、スレッドなどにより実現することができる。また、これら処理部やモジュールはハードウェアで実現することも可能である。組込み機器は、地図検索装置やナビゲーションシステム、カーナビゲーションシステムでも良い。
【0028】
データベース処理モジュール209は、図1と同様に、空間座標データおよびその付加属性データについての検索要求と更新要求を処理する空間検索用インデクス処理部211と、記録装置201にアクセスするデータアクセスモジュール212から構成される。一般的なデータベース処理モジュールは、その他の検索要求や更新要求を処理するモジュールも含む場合もあるが、図2からは省略している。
【0029】
空間検索用インデクス処理部211は、空間座標による検索処理を実行する空間検索処理モジュール213と、付加属性の検索処理を実行する付加属性検索処理モジュール214と、更新要求時に使用するインデクス更新処理モジュール215から構成される。
【0030】
空間検索用インデクス処理部211は、空間検索条件と属性条件の複合条件において、空間検索用インデクス206を用いて地図データベース205に格納されているデータの中から必要なレコードを高速に選択することができる。
【0031】
インデクス更新処理モジュール215は、空間座標データおよびその付加属性データの更新要求時に、地図データベース205と同期して空間検索用インデクス206を更新する。ただし、組込み機器の構成により更新機能を持たない場合は、インデクス更新処理モジュール215は省略することができる。
【0032】
図1の空間検索用インデクス106および図2の空間検索用インデクス206には、各々の地図データベース105、205に格納されている空間座標データのほかに、付加属性を格納している。このデータ構造を図3および図4に示す。空間の分割状態を木構造(301、401)で表し、その中の個別の要素を枝(302、402)と呼ぶ。各々の枝には、その枝が管理するデータのリストを格納する領域として葉(303、403)を1つまたは複数持つ。木構造によっては枝が葉を持たない実装もある。
【0033】
この葉のデータリストの中に、各図形の個別の図形領域を格納し、検索時に参照する。本実施の形態では、この葉のデータリストの中に、各図形の個別の図形領域(304、404)に追加して、補助属性(付加属性)(305、405)を格納する。例としてx座標、y座標に補助属性(付加属性)を1つ付加したものを図示した。この座標領域部は例で図示した1点座標以外にも、図形の外接矩形などの概形を格納し検索に使用する方法もよく使用される。また本実施の形態で付加する属性は、例で図示した場合は1つの属性だが、複数の属性を付加する方法もある。
【0034】
本実施の形態では、この補助属性(付加属性)に対し、空間検索条件のほかに、補助属性検索条件を含めて検索を行うことができる。この検索処理の概要のフローチャートを図5に示す。この図5のフローチャートは、図13の点線枠1310の処理フローを置き換えるものである。
【0035】
まず、対称の図形が空間検索範囲条件に適合しているか否かを判別することで、指定された空間検索条件で空間検索用インデクスを参照して候補を絞り込む(ステップ501)。空間検索範囲条件に適合していたら、空間検索用インデクス内から、空間検索で絞り込まれた候補レコードに付加されている補助属性の値を取得して補助属性検索条件と照らし合わせることで対称の図形の属性が補助属性検索条件に適合しているか否かを判別し(ステップ502)、補助属性検索条件も満たしていたなら対象の図形を検索結果として出力する(ステップ503)。
【0036】
なお、ステップ501の処理は空間検索処理モジュール113(213)が機能し、ステップ502の処理は付加属性検索処理モジュール114(214)が機能する。
【0037】
ステップ502で判定する補助属性検索条件には、値の一致、範囲比較、ビット判定異の条件を指定できる。各々の処理のフローチャートを図6〜図8に示す。図6〜図8のフローチャートも図5と同様に、図13の点線枠1310の処理フローを置き換えるものである。
【0038】
図6の値の一致判定では、補助属性検索条件として、1つまたは複数の値を指定できる。
まず、対象の図形は空間検索範囲条件に適合しているか否かを判別することで指定された空間検索条件で候補を絞り込む(ステップ601)。空間検索範囲条件に適合していたら、その候補に付加されている補助条件の値を取得し、その値が補助属性検索条件として指定された値と一致しているかを判定することで対象の図形の属性が補助属性検索条件と一致しているか否かを判別する(ステップ602)。一致していたら対象の図形を検索結果として出力する(ステップ603)。ここで、補助属性検索条件として複数の値が指定された場合、ステップ602では、複数の値と比較しどれか1つでも一致したら適合と判定する。この判定は、たとえば補助属性にカテゴリ値を格納しておき、「特定のカテゴリと一致する」という補助検索条件で検索する際に使用する。この場合のデータ構造の例としては図3が挙げられる。たとえば図3の付加属性(305)にランドマークのカテゴリ情報を格納する。例としてガソリンスタンドやコンビニなどの種別をカテゴリIDとして数値化して格納した場合、「カテゴリIDが50と一致する」という付加属性条件を付加すると、空間検索条件の適合した中から、カテゴリIDが一致するレコードだけを抽出できる。一致する条件には複数指定できるので、例えば「カテゴリIDが50または60と一致する」という検索条件を指定することもできる。
【0039】
なお、ステップ601の処理は空間検索処理モジュール113(213)が機能し、ステップ602の処理は付加属性検索処理モジュール114(214)が機能する。
【0040】
図7のビット判定条件では、補助属性検索条件として、ANDやORなどのビット演算子と、ビット演算値を指定できる。
まず、対称の図形が空間検索範囲条件に適合しているか否かを判別することで、指定された空間検索条件で候補を絞り込む(ステップ701)。空間検索範囲条件に適合していたら、補助属性検索条件として指定された値と、絞り込んだ候補に付加されている補助条件(対象の図形の属性)の値とのAND演算を行う(ステップ702)。
そして、補助属性検索条件として指定された演算子によって判定を分け(ステップ703)、AND演算子が指定されていた場合は、必要な全ビットが一致(つまり、ステップ702の演算結果が補助属性検索条件の値と一致)しているかを判定し(ステップ704)、あるいはOR演算子が指定されていた場合は、どれか1ビットでも一致している(つまり、ステップ702の演算結果が0以外)かを判定し(ステップ705)、一致していたら対象の図形を検索結果として出力する(ステップ706)。
【0041】
この判定は、たとえば補助属性にカテゴリ値を格納するが、カテゴリを即値で表すと条件が足りなくなる場合に、カテゴリやジャンルなどで分類しておき、その分類結果を抽象化してビット列として表現し、必要なビットを割り当て、1回のビット演算だけで「特定のカテゴリ群と一致する」などの補助検索条件で検索する際に使用する。
【0042】
また、ビット列の元になる情報は1つではなく、複数の属性データにビットを割り当て、複数の属性検索条件について一度に検索処理を行うことができる。この場合のデータ構造の例としては図4が挙げられる。たとえば図4の付加属性(405)にランドマークのカテゴリ情報や、その他の情報を抽象化してビット列として格納する。
【0043】
例えば、下位7ビット目(01000000)に「銀行なら1」となるビットを配置し、下位3ビット目(00000100)に「レストランなら1」となるビットを配置した場合、「付加属性情報と、ビット列01000000とのAND条件が成立する」という付加属性条件を付加すると、空間検索条件の適合した中から、付加属性のビット条件が一致するレコードだけを抽出できる。このビット条件には、たとえば「夜間に営業しているビット」、「駐車場が付属している施設ビット」、「トイレが利用可能ビット」など、各々全く異なる付加情報をビット列として配置することができる。そして付加属性条件として、指定した任意のビットを同時に満たすAND条件、どれか1つを満たすOR条件で検索することができる。
【0044】
なお、ステップ701の処理は空間検索処理モジュール113(213)が機能し、ステップ702の処理は付加属性検索処理モジュール114(214)が機能する。
【0045】
図8の範囲比較判定では、補助属性検索条件として、値の範囲を指定できる。
まず、対称の図形が空間検索範囲条件に適合しているか否かを判別することで、指定された空間検索条件で候補を絞り込む(ステップ801)。空間検索条件に適合していたら、その候補に付加されている補助条件の値を取得し、その値が補助属性検索条件として指定された値の範囲に含まれているかを判定することで、対称の図形の属性が補助属性検索条件の範囲に適合しているか否かを判別する(ステップ802)。値の範囲に含まれていたら、対象の図形を検索結果として出力する(ステップ803)。この判定は、たとえば補助属性にz座標の値を格納しておき、空間検索条件にz軸の検索範囲を付加して3次元で検索する際に使用する。この場合のデータ構造の例としては図3が挙げられる。たとえば図3の付加属性(305)に高さ情報としてz軸の値を格納した場合、「z軸の値が40〜50の範囲にある」という付加属性条件を付加すると、空間検索条件の適合した中から、z軸の値が指定範囲に適合するレコードだけを抽出できる。
【0046】
このように、地図データベースの空間検索用インデクス内に補助条件のヒント情報を格納し、検索処理で適切に利用することにより、DBMSの複数検索条件結果のマージを行うことなく、空間検索用インデクスのアクセスだけで空間検索と補助条件検索の複合条件の検索を高速に行うことができる。
【0047】
なお、ステップ801の処理は空間検索処理モジュール113(213)が機能し、ステップ802の処理は付加属性検索処理モジュール114(214)が機能する。
【0048】
以上によれば、空間検索条件と補助属性条件との複合検索条件において、従来のRDBMSのように、代表の検索条件の後に残りの条件で個別に絞り込んだり、複数の検索条件の結果をマージしたりすることなく、空間検索と同時に属性検索を行うことができる。また、空間検索用インデクスに補助属性データをそのまま取り込むことも可能だが、項目別やジャンル別で分類し、分類情報をビット列として格納し検索することにより、空間検索用インデクスの肥大化を避けることができると共に、ビット演算を用いることで1度の演算で複数の付加条件の判定を行うことができる。
【0049】
また、2次元空間検索用インデクスに補助属性データとしてz軸の情報を取り込み、補助属性条件にも範囲検索を実装することにより、2次元の空間検索用インデクスで3次元の検索を可能とする。つまり、(n+1)次元目の情報を補助属性データとしてn次元の空間検索用インデクスを作成することにより、n次元の空間検索用インデクスで(n+1)次元の検索を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態例を示すシステム構成図(ホストシステム)
【図2】本発明の一実施の形態例を示すシステム構成図(組み込み機器)
【図3】空間検索用インデクスのデータ構造の一例(属性値)
【図4】空間検索用インデクスのデータ構造の一例(属性の抽象化ビット列)
【図5】空間検索処理の概要のフローチャート
【図6】補助属性検索条件の処理部分のフローチャート(値の一致条件)
【図7】補助属性検索条件の処理部分のフローチャート(ビット判定条件)
【図8】補助属性検索条件の処理部分のフローチャート(範囲比較条件)
【図9】一般的な空間検索の処理結果の例(空間検索のみ)
【図10】本発明の処理結果の例(空間検索+属性検索)
【図11】空間検索用インデクスの空間分割例(R−tree)
【図12】空間検索用インデクスの空間分割例(四分木)
【図13】空間検索用インデクスを用いた一般的な空間検索処理のフローチャート
【符号の説明】
【0051】
101 記録装置(記憶装置)
102 ホストシステム(データ処理装置)
103 入力装置
104 表示装置
105 地図データベース
106 空間検索用インデクス
107 CPU
108 メモリ
109 データベース処理モジュール
110 通信装置
111 空間検索用インデクス処理部
112 データアクセスモジュール
113 空間検索処理モジュール
114 付加属性検索処理モジュール
115 インデクス更新処理モジュール
116 移動端末装置
117 基地局
118 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶装置を備えたデータ処理装置におけるデータ処理方法において、
複数の検索対象物における位置情報と属性情報とをリーフに含む空間インデクスを生成して前記記憶装置に格納し、
前記検索対象物を検索するための位置情報と属性情報とを含む検索要求の入力に応じて、前記記憶装置に格納された空間インデクスを参照し、前記検索要求を満たす前記検索対象物を抽出することを特徴とするデータ処理方法。
【請求項2】
前記属性情報をビット情報で構成することを特徴とする請求項1記載のデータ処理方法。
【請求項3】
前記位置情報に前記検索対象物のx座標における位置情報とy座標における位置情報とを割り当て、前記属性情報に前記検索対象物のz座標における位置情報を割り当てることを特徴とする請求項1記載のデータ処理方法。
【請求項4】
n次元空間検索用インデクスのリーフに属性情報として追加軸である(n+1)次元における位置情報を記憶することにより、前記n次元の空間検索用インデクスを参照して(n+1)次元の空間検索を行うことを特徴とする請求項1記載のデータ処理方法。
【請求項5】
記憶装置を備えたデータ処理装置において、
複数の検索対象物における位置情報と属性情報とをリーフに含む空間インデクスを生成して前記記憶装置に格納する手段と、
前記検索対象物を検索するための位置情報と属性情報とを含む検索要求の入力に応じて、前記記憶装置に格納された空間インデクスを参照し、前記検索要求を満たす前記検索対象物を抽出する手段とを備えることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項6】
記憶装置を備えたデータ処理装置にデータを処理させるためのデータ処理プログラムにおいて、
前記データ処理装置に、
複数の検索対象物における位置情報と属性情報とをリーフに含む空間インデクスを生成させて前記記憶装置に格納させ、
前記検索対象物を検索するための位置情報と属性情報とを含む検索要求の入力に応じて、前記記憶装置に格納された空間インデクスを参照させ、前記検索要求を満たす前記検索対象物を抽出させることを特徴とするデータ処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−233658(P2007−233658A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54160(P2006−54160)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】