説明

データ処理装置及び方法

【課題】消費電力を低減できるデータ処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】予め備えるデータに対する処理に要する処理時間の情報、並びに外部から供給される処理対象である複数のデータに対する処理の終了期限を示す処理期限情報に基づき、プロセッサが処理の終了期限を満たしつつ該複数のデータに対して処理を連続して実行するように、該複数のデータに対する処理の開始タイミングをそれぞれ制御する。または、蓄積バッファに蓄積されたデータ数を計数し、蓄積バッファに予め設定された所定数のデータが蓄積されたことを検出すると、プロセッサに蓄積バッファに蓄積された該所定数のデータに対する処理を連続して実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロセッサを用いてデータに所定の処理を実行するデータ処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録メディアや伝送系のディジタル化が進み、時間情報が付加されて記録または伝送された画像信号や音声信号に基づき、画像と音声を同期して再生する電子機器が増加している。一般に、このような電子機器では、録画または再生に必要な処理のリアルタイム性を確保するために、画像信号及び音声信号を所定の区間(フレーム)毎に区切り、該フレーム単位で、画像データ及び音声データに対して、録画や再生で必要な符号化や復号処理を実行する。
【0003】
例えば、画像データや音声データをDSP(Digital Signal Processor)で符号化または復号する場合、該DSPは、CPU(Central Processing Unit)等からの指示にしたがって、入力された画像データ及び音声データを、次のフレームの画像データや音声データが入力されている間に、順次符号化または復号する。なお、DSPにはフレーム毎の画像データ及び音声データがそれぞれ独立したタイミングで入力される。
【0004】
ところで、携帯電話機、携帯型のゲーム機、ノート型やタブレット型のパーソナルコンピュータ等の携帯型の電子機器では、機器全体の消費電力を低減することが重要である。消費電力が大きいために搭載する蓄電池の電池容量が大きくなると、該蓄電池が大型になり、また重量も増えるため、電子機器の携帯性が低下する。一方、蓄電池の大型化を避けるために電池容量を小さくすると、蓄電池に頻繁に充電しなければならない等の不便が生じる。
【0005】
DSP等のプロセッサを備える電子機器では、該プロセッサが所要の処理を実行しているときに電力を大きく消費するため、電子機器全体の消費電力を低減するには、該電子機器が備えるプロセッサの消費電力も低減する必要がある。
【0006】
プロセッサの消費電力を低減する方法としては、例えばプロセッサが処理を実行していないときに該プロセッサへの電力供給を停止する方法が知られている。すなわち、プロセッサの消費電力を低減するには、該プロセッサの電源をその動作状態に応じてこまめにON/OFFする方法が有効である。
【0007】
しかしながら、通常、プロセッサは、電源のON時に所要の状態遷移に伴って過渡的に多くの電力を消費するため、電源を頻繁にON/OFFすると、電源がOFFからONになる機会も増えて消費電力が増大する。
【0008】
例えば、上述した画像データや音声データをDSPで復号する電子機器では、画像データの復号/停止、並びに音声データの復号/停止に対応してDSPの電源をON/OFFすると、1フレーム毎に電源のON/OFFをそれぞれ2回ずつ実施することになり、電源のON/OFFを制御しない場合よりもDSPの消費電力が増大するおそれがある。
【0009】
なお、動作していない回路や電子デバイス(プロセッサを含む)への電力供給を停止することで機器全体の消費電力を低減することは、例えば特許文献1にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平05−233088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したようにプロセッサを備える電子機器では、プロセッサの動作状態に応じて電源をこまめにON/OFFすることで、該プロセッサの消費電力を低減できる。一方、プロセッサの電源を頻繁にON/OFFすると、電源のON/OFFを制御しない場合よりも消費電力が増大するおそれがある。
【0012】
本発明は上述したような背景技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、プロセッサの電源を動作状態に応じてON/OFFしつつ、消費電力を低減できるデータ処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため本発明のデータ処理装置は、所定の周期毎に入力される複数のデータに対して所定の処理を実行するプロセッサと、
処理対象である複数の前記データに対する前記処理を前記プロセッサに連続して実行させる制御部と、
を有する。
【0014】
一方、本発明のデータ処理方法は、プロセッサを用いて所定の周期毎に入力される複数のデータに対して所定の処理を実行するためのデータ処理方法であって、
コンピュータが、
処理対象である複数の前記データに対する前記処理を前記プロセッサに連続して実行させる方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プロセッサの電源を動作状態に応じてON/OFFしつつ、データ処理装置の消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態のデータ処理装置の一構成例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態のデータ処理装置の一構成例を示すブロック図である。
【図3】図2に示したデータ処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】データ処理装置の動作を示す図であり、同図(a)は背景技術の動作の一例を示すタイミングチャート、同図(b)は図2に示したデータ処理装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図5】データ処理装置の動作を示す図であり、同図(a)は背景技術の動作の他の例を示すタイミングチャート、同図(b)は図2に示したデータ処理装置の動作の他の例を示すタイミングチャートである。
【図6】第2の実施の形態のデータ処理装置の一構成例を示すブロック図である。
【図7】図6に示したデータ処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明について図面を用いて説明する。
【0018】
図1は本発明のデータ処理装置の一構成例を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本発明のデータ処理装置は、所定の周期毎に入力される複数のデータに対して所定の処理を実行するプロセッサ1と、処理対象である複数のデータに対する上記処理をプロセッサ1に連続して実行させる制御部2とを有する。
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態のデータ処理装置の一構成例を示すブロック図である。
【0020】
図2に示すように、第1の実施の形態のデータ処理装置は、開始タイミング調整部302、画像処理開始指示部112、音声処理開始指示部212及びDSP400を有する。DSP400は、符号化された画像データを復号する画像復号部102と、符号化された音声データを復号する音声復号部202とを備えている。第1の実施の形態のデータ処理装置において、図1に示したプロセッサ1は、例えば図2に示すDSP400で実現される。
【0021】
画像復号部102は、画像データ入力端子101を介して外部から入力された画像データを復号し、復号した画像データを画像出力端子103から出力する。音声復号部202は、音声データ入力端子201を介して外部から入力された音声データを復号し、復号した音声データを音声出力端子203から出力する。DSP400は、画像復号部102及び音声復号部202の機能を、予め備えるプログラムにしたがって処理を実行することで実現する。本実施形態では、DSP400が画像データ及び音声データを並列に復号処理することなく、順次復号処理を実行するものとする。
【0022】
開始タイミング調整部302は、画像開始信号入力端子111を介して外部から入力される画像処理開始信号、音声開始信号入力端子211を介して外部から入力される音声処理開始信号及び処理期限情報入力端子301を介して外部から入力される処理期限情報に基づき、画像データ及び音声データの復号開始タイミングをそれぞれ決定する。また、開始タイミング調整部302は、決定した画像データ及び音声データの復号開始タイミングにしたがって、画像データの復号開始を指示する画像復号開始指示信号及び音声データの復号開始を指示する音声復号開始指示信号を出力する。
【0023】
画像処理開始信号及び音声処理開始信号は、例えば外部のCPU等で生成されて開始タイミング調整部302に入力される。画像処理開始信号は、復号対象である画像データが画像復号部102に供給され、画像復号部102による該画像データの復号が可能になると開始タイミング調整部302に入力される。同様に、音声処理開始信号は、復号対象である音声データが音声復号部202に供給され、音声復号部202による該音声データの復号が可能になると開始タイミング調整部302に入力される。
【0024】
処理期限情報は、画像データ及び音声データの復号処理の終了期限を示す情報であり、例えば外部のCPU等で生成されて開始タイミング調整部302に入力される。処理期限情報は、上記フレーム毎に更新される。例えば基準時刻を0msとし、1フレームの区間長を60msとした場合、時刻0〜60msの画像データ及び音声データは、さらに60msが経過した後、すなわち時刻120msまでに復号処理を終了なければならない。したがって、時刻0〜60msの画像データ及び音声データに対応する処理期限情報には、例えば時刻120msが設定される。同様に、時刻60〜120msの画像データ及び音声データに対応する処理期限情報は時刻180msが設定され、時刻120〜180msの画像データ及び音声データに対応する処理期限情報は時刻240msが設定される。
【0025】
画像処理開始指示部112は、開始タイミング調整部302から画像復号開始指示信号を受信すると、DSP400が備える画像復号部102を起動し、画像復号部102に画像データの復号を実行させる。
【0026】
音声処理開始指示部212は、開始タイミング調整部302から音声処理開始指示信号を受信すると、DSP400が備える音声復号部202を起動し、音声復号部202に音声データの復号を実行させる。
【0027】
第1の実施の形態のデータ処理装置において、図1に示した制御部2は、図2に示す開始タイミング調整部302、画像処理開始指示部112及び音声処理開始指示部212で実現できる。図2に示す開始タイミング調整部302、画像処理開始指示部112及び音声処理開始指示部212は、例えば周知の論理回路、メモリ、プログラムにしたがって所要の処理を実行するCPU等を備えた情報処理装置(コンピュータ)で実現できる。その場合、制御部2が備えるメモリにはCPUで実行する各種の制御用プログラムや処理で用いる各種のデータが格納される。CPUは、メモリに格納された制御用プログラムにしたがって処理(ソフトウェア処理)を実行することで、本実施形態の制御部2としての機能を実現する。
【0028】
なお、図2に示すDSP400の電源(以下、DSP電源と称す)のON/OFFは、本発明のデータ処理装置を含む電子機器等が有する不図示のCPU等で制御されるものとする。DSP電源のON/OFFは、例えば画像処理開始指示部112や音声処理開始指示部212から、DSP400へ電力を供給する不図示の電源部またはDSPへ指示されることで実施される。DSP電源をON/OFFするための具体的な方法は、DSP400のデバイス仕様に応じて最適な方法を選択すればよい。
【0029】
図3は、図2に示したデータ処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【0030】
図3に示すように、開始タイミング調整部302は、画像処理開始信号、音声処理開始信号及び処理期限情報が入力されると(ステップA1)、それらの信号及び情報に基づいて画像データ及び音声データの復号処理の開始タイミングを決定する(ステップA2)。
【0031】
続いて、開始タイミング調整部302は、決定した復号処理の開始タイミングを示す画像復号開始指示信号を画像処理開始指示部112に出力し、音声復号開始指示信号を音声処理開始指示部212に出力する(ステップA3)。
【0032】
画像処理開始指示部112は、画像復号開始指示信号を受信すると、DSP400の画像復号部102を起動し、画像復号部102に、入力された画像データの復号処理を実行させる。また、音声処理開始指示部212は、音声復号開始指示信号を受信すると、DSP400の音声復号部202を起動し、音声復号部202に、入力された音声データの復号を実行させる(ステップA4)。
【0033】
画像復号部102は復号した画像データを画像出力端子103から出力し、音声復号部202は復号した音声データを音声出力端子203から出力する(ステップA5)。
【0034】
次に、図2に示した開始タイミング調整部302による画像データ及び音声データの復号開始タイミングの決定方法について、図4及び図5を用いて背景技術と比較しつつ具体的に説明する。
【0035】
図4は、データ処理装置の動作を示す図であり、同図(a)は背景技術の動作の一例を示すタイミングチャート、同図(b)は図2に示したデータ処理装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0036】
また、図5は、データ処理装置の動作を示す図であり、同図(a)は背景技術の動作の他の例を示すタイミングチャート、同図(b)は図2に示したデータ処理装置の動作の他の例を示すタイミングチャートである。
【0037】
図4は、開始タイミング調整部302に時刻200msで画像処理開始信号が入力され、時刻185msで音声処理開始信号が入力される、第1ケースの動作例を示し、図5は、開始タイミング調整部302に時刻205msで画像処理開始信号が入力され、時刻185msで音声処理開始信号が入力される、第2ケースの動作例を示している。
【0038】
なお、以下では、画像復号部102が1フレーム分の画像データを復号するのに要する時間は30msであり、音声復号部202が1フレーム分の音声データを復号するのに要する時間は10msであるとする。音声データや画像データの復号に要する処理時間は、DSP400の性能に応じて決まる一定時間または最大時間が開始タイミング処理部302に予め登録されているものとする。
【0039】
また、図4及び図5は、時刻120ms〜180msで入力された画像データ及び音声データを、時刻180ms〜240msでそれぞれ復号処理する場合のデータ処理装置の動作例を示している。この場合、開始タイミング調整部302には、時刻120ms〜180msで入力された画像データ及び音声データに対応する処理期限情報として、時刻240msを示す情報が入力されるものとする。
【0040】
まず、開始タイミング調整部302に時刻200msで画像処理開始信号が入力され、時刻185msで音声処理開始信号が入力される、第1ケースの動作について、図4を用いて説明する。
【0041】
第1ケースの場合、背景技術のデータ処理装置では、画像データ及び音声データの復号開始タイミングを調整しないため、図4(a)に示すように時刻185msで音声処理開始信号が入力されると時刻185〜195msで音声データを復号し、時刻200msで画像処理開始信号が入力されると時刻200〜230msで画像データを復号する。ここで、DSP400で処理を実行していないときにDSP電源をOFFにする制御を行うと、図4(a)で示すようにDSP電源のON/OFFが制御される。
【0042】
具体的には、DSP電源は、時刻185msまでOFFであり、時刻185msになると音声データの復号処理を開始するためにONされる。続いて、時刻195msになると音声データの復号が終了してOFFされ、時刻200msになると画像データの復号処理を開始するために再びONされる。そして、時刻230msになると画像データの復号が終了してOFFされる。すなわち、時刻180〜240ms間でDSP電源は2回ONされ、2回OFFされる。
【0043】
一方、本実施形態のデータ処理装置では、開始タイミング調整部302によって画像データ及び音声データの復号開始タイミングがそれぞれ調整される。
【0044】
開始タイミング調整部302は、画像処理開始信号または音声処理開始信号のいずれか一方を受信すると、他方の処理開始信号も受信しているか否かを判定し、他方の処理開始信号を受信していない場合は、該処理開始信号の受信を待って画像データ及び音声データの復号開始指示信号を出力する。すなわち、開始タイミング調整部302は、複数のデータ(ここでは画像データ及び音声データ)が連続して処理できるように各データの処理開始タイミングを調整する。
【0045】
具体的には、図4(b)に示すように、開始タイミング調整部302は、時刻185msで音声処理開始信号を受信すると、画像処理開始信号を未だ受信していないため、DSP400に音声データの復号を開始させない。すなわち、音声処理開始指示部212に音声復号開始指示信号を出力しない。したがって、音声データの復号処理は開始されず、DSP電源もOFFのままである。
【0046】
第1ケースの場合、開始タイミング調整部302は、時刻200msで画像処理開始信号を受信するため、この時点でDSP400に音声データ及び画像データの復号処理を開始させる。すなわち、音声処理開始指示部212に音声復号開始指示信号を出力し、画像処理開始指示部112に画像復号開始指示信号を出力する。この場合、時刻200msから音声データ及び画像データの復号処理を開始し、時刻200msから30ms+10ms=40ms後、すなわち時刻240msでそれぞれの復号処理が終了するため、上記処理期限情報に違反することはない。また、DSP電源は、時刻200msでOFFからONに切り替えられ、時刻240msでONからOFFへ切り替えられる。
【0047】
したがって、第1ケースでは、本実施形態のDSP電源のON/OFF制御を採用すると、時刻180〜240msの60ms間でDSP電源のON/OFFがそれぞれ1回だけで済む。そのため、DSP電源のON/OFF回数が増えることによる消費電力の増大が抑制される。
【0048】
次に、開始タイミング調整部302に時刻205msで画像処理開始信号が入力され、時刻185msで音声処理開始信号が入力される、第2ケースの動作について、図5を用いて説明する。
【0049】
第2ケースの場合、背景技術のデータ処理装置では、画像データ及び音声データの復号開始タイミングを調整しないため、図5(a)に示すように時刻185msで音声処理開始信号が入力されると時刻185〜195msで音声データを復号し、時刻205msで画像処理開始信号が入力されると時刻205〜235msで画像データを復号する。ここで、DSP400で処理を実行していないときにDSP電源をOFFにする制御を行うと、図5(a)で示すようにDSP電源のON/OFFが制御される。
【0050】
具体的には、DSP電源は、時刻185msまでOFFであり、時刻185msになると音声データの復号処理を開始するためにONされる。続いて、時刻195msになると音声データの復号が終了してOFFされ、時刻205msになると画像データの復号処理を開始するために再びONされる。そして、時刻235msになると画像データの復号が終了してOFFされる。すなわち、時刻180〜240ms間でDSP電源は2回ONされ、2回OFFされる。
【0051】
一方、本実施形態のデータ処理装置では、第1ケースと同様に、開始タイミング調整部302は、時刻185msで音声処理開始信号が入力されても、画像処理開始信号が入力されていないため、画像データの復号を開始させない。すなわち、音声処理開始指示部212に音声復号開始指示信号を出力しない。したがって、音声データの復号処理は開始されず、DSP電源もOFFのままである。
【0052】
ここで、上述したように画像データ及び音声データの復号に要する時間は40msであり、時刻120ms〜180msで入力された画像データ及び音声データに対応する処理期限情報は時刻240msであるため、画像処理開始信号を受信した時刻205msから音声データ及び画像データの復号を開始すると、それぞれの復号が終了するのは、時刻205msから30ms+10ms=40ms後、すなわち時刻245msとなる。したがって、処理期限情報で指定された処理の終了期限である時刻240msまでに画像データ及び音声データの復号が終了しない。
【0053】
そこで、開始タイミング調整部302は、処理期限情報に基づいて処理の終了期限までに画像データ及び音声データの復号処理がそれぞれ終了するように、復号開始タイミングを決定する。
【0054】
具体的には、図5(b)に示すように、処理期限情報の時刻240msから画像データ及び音声データの復号に必要な処理時間、すなわち処理の終了期限の40ms前の時刻200msの時点で、画像処理開始信号を受信していなくても音声データの復号を開始させる。このように制御すれば処理の終了期限である時刻240msまでに画像データ及び音声データの復号がそれぞれ終了する。
【0055】
第2ケースにおいても、第1ケースと同様に時刻180〜240msの間でDSP電源のON/OFFはそれぞれ1回で済むため、DSP電源のON/OFF回数が増えることによる消費電力の増大が抑制される。また、画像データ及び音声データの復号は、処理期限情報で指定された、その処理の終了期限までに終了させることができるため、処理のリアルタイム性を損ねることがない。
【0056】
本実施形態によれば、DSP400により複数のデータを連続して処理するように各データの処理開始タイミングを調整することで、処理を実行していない期間でプロセッサ電源をOFFにしつつ、ON/OFF回数を抑制できるため、データ処理装置の消費電力を低減できる。
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態のデータ処理装置の一構成例を示すブロック図である。
【0057】
図6に示すように、第2の実施の形態のデータ処理装置は、カウンタ部303、開始タイミング指示部304、画像データ蓄積バッファ104、スイッチ105、音声データ蓄積バッファ204、スイッチ205、画像処理開始指示部112、音声処理開始指示部212及びDSP400を有する。DSP400は、符号化された画像データを復号する画像復号部102と、符号化された音声データを復号する音声復号部202とを備えている。
【0058】
画像復号部102は、第1の実施の形態と同様に、画像データ入力端子101を介して外部から入力された画像データを復号し、復号した画像データを画像出力端子103から出力する。音声復号部202は、音声データ入力端子201を介して外部から入力された音声データを復号し、復号した音声データを音声出力端子203から出力する。DSP400は、画像復号部102及び音声復号部202の機能を、予め備えるプログラムにしたがって処理を実行することで実現する。本実施形態では、DSP400が画像データ及び音声データを並列に復号処理することなく、順次復号処理を実行するものとする。第2の実施の形態のデータ処理装置において、図1に示したプロセッサ1は、例えば図6に示すDSP400で実現される。
【0059】
画像データ蓄積バッファ104は、画像データ入力端子101を介して外部から入力される画像データを所定数だけ蓄積する。
【0060】
音声データ蓄積バッファ204は、音声データ入力端子201を介して外部から入力される音声データを所定数だけ蓄積する。
【0061】
カウンタ部303は、画像処理開始信号及び音声処理開始信号の入力数をそれぞれカウントし、カウント値が予め設定された所定値に到達したら、開始タイミング指示部304にカウント終了を示すカウント終了信号を出力する。例えば、所定値が「5」に設定されている場合、カウンタ部303は、画像処理開始信号及び音声処理開始信号の入力数をそれぞれ計数し、画像処理開始信号及び音声処理開始信号の入力数がそれぞれ「5」になると、すなわち、画像データ蓄積バッファ104に5フレーム分の画像データが蓄積され、音声データ蓄積バッファ204に5フレーム分の音声データが蓄積されると、開始タイミング指示部304にカウント終了信号を出力する。
【0062】
開始タイミング指示部304は、カウンタ部303からカウント終了信号を受信すると、画像処理開始指示部112に画像復号開始指示信号を出力し、音声処理開始指示部212に音声復号開始指示信号を出力する。
【0063】
画像処理開始指示部112は、画像復号開始指示信号を受信すると、スイッチ105をONにすると共にDSP400の画像復号部102を起動し、画像復号部102に、画像データ蓄積バッファ104に蓄積された画像データの復号を実行させる。
【0064】
音声処理開始指示部212は、音声復号開始指示信号を受信すると、スイッチ205をONにすると共にDSP400の音声復号部202を起動し、音声復号部202に、音声データ蓄積バッファ204に蓄積された音声データの復号を実行させる。
【0065】
第2の実施の形態のデータ処理装置において、図1に示した制御部4は、図6に示す画像データ蓄積バッファ104、音声データ蓄積バッファ204、カウンタ部303、開始タイミング指示部304、スイッチ105、スイッチ205、画像処理開始指示部112及び音声処理開始指示部212で実現できる。
【0066】
図6に示す画像データ蓄積バッファ104、音声データ蓄積バッファ204、カウンタ部303、開始タイミング指示部304、スイッチ105、スイッチ205、画像処理開始指示部112及び音声処理開始指示部212は、例えば周知の論理回路、メモリ、プログラムにしたがって所要の処理を実行するCPU等を備えた情報処理装置(コンピュータ)で実現できる。その場合、制御部4が備えるメモリにはCPUで実行する各種の制御用プログラムや処理で用いる各種のデータが格納される。CPUは、メモリに格納された制御用プログラムにしたがって処理(ソフトウェア処理)を実行することで、本実施形態の制御部4としての機能を実現する。
【0067】
なお、図6に示すDSP400の電源のON/OFFは、第1の実施の形態と同様に、本発明のデータ処理装置を含む電子機器等が有する不図示のCPU等で制御されるものとする。DSP電源のON/OFFは、例えば画像処理開始指示部112や音声処理開始指示部212から、DSP400へ電力を供給する不図示の電源部またはDSPへ指示されることで実施される。DSP電源をON/OFFするための具体的な方法は、DSP400のデバイス仕様に応じて最適な方法を選択すればよい。
【0068】
図7は、図6に示したデータ処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【0069】
図7に示すように、開始タイミング調整部302は、画像処理開始信号及び音声処理開始信号を受信すると、その入力数をそれぞれカウントし(ステップB1)、画像処理開始信号及び音声処理開始信号の入力数がそれぞれ所定値に到達すると、開始タイミング指示部304にカウント終了信号を出力する(ステップB2)。
【0070】
開始タイミング指示部304は、カウント終了信号を受信すると、画像復号開始指示信号を画像処理開始指示部112に出力し、音声復号開始指示信号を音声処理開始指示部212に出力する(ステップB3)。
【0071】
画像処理開始指示部112は、画像復号開始指示信号を受信すると、スイッチ105をONにすると共にDSP400の画像復号部102を起動し、画像復号部102に、画像データ蓄積バッファ104に蓄積された画像データの復号を実行させる。
【0072】
音声処理開始指示部212は、音声復号開始指示信号を受信すると、スイッチ205をONにすると共にDSP400の音声復号部202を起動し、音声復号部202に、音声データ蓄積バッファ204に蓄積された音声データの復号を実行させる(ステップB4)。
【0073】
画像復号部102は復号した画像データを画像出力端子103から出力し、音声復号部202は復号した音声データを音声出力端子203から出力する(ステップB5)。
【0074】
本実施形態のデータ処理装置では、例えばカウンタ部303に予め所定値として「5」が設定されている場合、カウンタ部303からカウント終了信号が出力されたとき、画像データ蓄積バッファ104には5フレーム分の画像データが蓄積され、音声データ蓄積バッファ204には5フレーム分の音声データが蓄積されている。そのため、画像復号部102及び音声復号部202は、それら蓄積された5フレーム分のデータを連続して処理できる。
【0075】
例えば、時刻0〜60msのデータ、時刻60〜120msのデータ、時刻120〜180msのデータ、時刻180〜240msのデータ、時刻240〜300msのデータが蓄積されている場合、それらのデータの復号処理を時刻300msから開始する。
【0076】
ここで、第1の実施の形態と同様に、画像復号部102が1フレーム分の画像データを復号するのに要する時間は30msであり、音声復号部202が1フレーム分の音声データを復号するのに要する時間は10msであるとすると、処理に要する時間は(30+10)×5=200msであり、時刻300msから開始した復号処理は時刻500msで終了する。したがって、DSP電源は、時刻300msでONにし、時刻500msでOFFすればよい。
【0077】
第1の実施の形態のデータ処理装置では、1フレーム毎にDSP電源のON/OFFがそれぞれ1回ずつ実施されるため、時刻300〜600msではDSP電源のON/OFFがそれぞれ5回ずつ実施される。
【0078】
一方、第2の実施の形態のデータ処理装置では、300ms毎にDSP電源のON/OFFがそれぞれ1回ずつ実施されるだけであり、第1の実施の形態よりもさらにDSP電源のON/OFF回数が抑制されて、データ処理装置の消費電力を低減できる。
【0079】
また、第2の実施の形態のデータ処理装置では、カウンタ部303に予め設定された所定値×処理単位である所定の区間(フレーム)長だけ、最初の復号処理の開始タイミングが遅れるが、その後はフレーム毎の画像データ及び音声データが途切れることなく順次復号処理される。したがって、処理のリアルタイム性を損ねることがない。
【0080】
したがって、第2の実施の形態によれば、画像や音声等の処理のリアルタイム性を確保しつつ、第1の実施の形態のデータ処理装置よりも消費電力を低減できる。
【0081】
なお、第2の実施の形態では、画像データと音声データとが1対1で対応している例を示しているが、データ処理装置には、画像データと音声データとを異なる周期(サンプリングレート)で処理する構成もある。その場合、カウンタ部303がカウント終了信号を出力する画像処理開始信号の入力数と音声処理開始信号の入力数とは異なっていてもよい。
【0082】
また、上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、DSP400を用いて画像データ及び音声データを復号するデータ処理装置の構成例を示したが、本発明は画像データ及び音声データを符号化する構成にも適用可能である。
【0083】
また、上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、DSP400の動作状態に応じてDSP電源をON/OFFする例を示したが、例えばDSP400が低消費電力モードを備えている場合は、DSP電源のON/OFFに代わってDSPの動作モード(低消費電力モード/通常動作モード)を切り替えてもよい。
【0084】
DSPが低消費電力モードにあるとき、該DSPでは、DSP電源をOFFするよりも、わずかではあるが電力を消費する。しかしながら、一般に、DSPが処理を開始するまでの時間は、DSP電源をOFFからONさせたときよりも、DSPを低消費電力モードから通常動作モードへ移行させる方が短くて済む。そのため、DSP電源をON/OFFするよりもDSPによる処理時間を短縮できる。さらに、DSP電源のON/OFF頻度によっては、DSPの動作モードを切り替える方がDSPの総消費電力を少なくできる場合もある。
【符号の説明】
【0085】
1 プロセッサ
2、4 制御部
3 蓄積バッファ
101 画像データ入力端子
102 画像復号部
103 画像出力端子
104 画像データ蓄積バッファ
105、205 スイッチ
111 画像開始信号入力端子
112 画像処理開始指示部
201 音声データ入力端子
202 音声復号部
203 音声出力端子
204 音声データ蓄積バッファ
211 音声開始信号入力端子
212 音声処理開始指示部
301 処理期限情報入力端子
302 開始タイミング調整部
303 カウンタ部
304 開始タイミング指示部
400 DSP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周期毎に入力される複数のデータに対して所定の処理を実行するプロセッサと、
処理対象である複数の前記データに対する前記処理を前記プロセッサに連続して実行させる制御部と、
を有するデータ処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
予め備える、前記データに対する前記処理に要する処理時間の情報、並びに外部から供給される、処理対象である複数の前記データに対する前記処理の終了期限を示す処理期限情報に基づき、前記プロセッサが、前記処理の終了期限を満たしつつ該複数のデータに対して前記処理を連続して実行するように、該複数のデータに対する前記処理の開始タイミングをそれぞれ制御する請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記データを蓄積する蓄積バッファを備え、
前記蓄積バッファに蓄積されたデータ数を計数し、前記蓄積バッファに予め設定された所定数のデータが蓄積されたことを検出すると、前記蓄積バッファに蓄積された該所定数のデータに対する前記処理を、前記プロセッサに連続して実行させる請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記データに対して前記処理を実行しているとき所要の電力が供給され、前記データに対して前記処理を実行していないとき、電力供給が停止される請求項1から3のいずれか1項記載のデータ処理装置。
【請求項5】
プロセッサを用いて所定の周期毎に入力される複数のデータに対して所定の処理を実行するためのデータ処理方法であって、
コンピュータが、
処理対象である複数の前記データに対する前記処理を前記プロセッサに連続して実行させるデータ処理方法。
【請求項6】
前記コンピュータが、
予め備える、前記データに対する前記処理に要する処理時間の情報、並びに外部から供給される、処理対象である複数の前記データに対する前記処理の終了期限を示す処理期限情報に基づき、前記プロセッサが、前記処理の終了期限を満たしつつ該複数のデータに対して前記処理を連続して実行するように、該複数のデータに対する前記処理の開始タイミングをそれぞれ制御する請求項5記載のデータ処理方法。
【請求項7】
前記コンピュータが、
前記データを蓄積する蓄積バッファに蓄積されたデータ数を計数し、前記蓄積バッファに予め設定された所定数のデータが蓄積されたことを検出すると、前記蓄積バッファに蓄積された該所定数のデータに対する前記処理を、前記プロセッサに連続して実行させる請求項5記載のデータ処理方法。
【請求項8】
前記プロセッサが前記データに対して前記処理を実行しているとき、前記プロセッサに所要の電力を供給し、前記プロセッサが前記データに対して前記処理を実行していないとき、前記プロセッサへの電力供給を停止する請求項5から7のいずれか1項記載のデータ処理方法。
【請求項9】
プロセッサを用いて所定の周期毎に入力される複数のデータに対して所定の処理を実行させるデータ処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
処理対象である複数の前記データに対する前記処理を、前記プロセッサに連続して実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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