説明

データ収集システム

【課題】病院のような医療現場等でも安心して使用でき、センサによる多数の計測データを収集できるデータ収集システムを提供する。
【解決手段】医療センサ1により健診者の血圧や心拍数等の生体データを計測し、医療センサ1から端末装置10へ計測した生体データを送信する。端末装置10は、コーナーキューブプリズムと圧電素子を用いた変調部により、受信した生体データを光空間通信を用いてデータ管理装置20に送信する。データ管理装置20は、端末装置10を介して収集した多数の計測データを記録管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ収集システムに関し、特に、光通信を利用して多数のデータを収集するデータ収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来のデータ収集システムの例として、各受診者にICカードを発行し、このICカードに計測器で計測した複数の健康診断データを記録し、端末装置でICカードから健康診断データを読取ることにより、各受信者の健康診断データを収集するシステム(例えば特許文献1参照)や、管理対象者の健康データをセンサで自動計測し、複数の計測データを無線端末から電波を用いて遠隔の管理センタに送信することにより、管理対象者の健康データを収集監視するシステム(例えば、特許文献2参照)がある。
【特許文献1】特開平7−28905号公報
【特許文献2】特開平10−302188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されたものは、計測データをICカードに記録するためにICカードを計測器に対して抜差ししたり、ICカードに記録した計測データを収集するために端末装置に対してICカードを抜差ししたりする必要があり、面倒である。また、特許文献2に記載されたものは、ICカードを用いる場合のような面倒さはないが、計測データの送信に電波を利用しているため、病院のような医療現場においては法規制の問題や医療機器及び心臓ペースメーカーへの影響を考慮しなければならない。
【0004】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、医療現場に適用した場合でも医療機器及び心臓ペースメーカーへの影響等を考慮する必要がない、生体データ等の収集に有効なデータ収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明のデータ収集システムは、検査対象について予め定めた計測項目の計測を行うセンサと、該センサから計測データを受信する端末装置と、該端末装置を介して複数の前記計測データを収集管理するデータ管理装置と、を備え、前記端末装置から前記データ管理装置へのデータ伝送を光通信により行う構成としたことを特徴とする。
かかる構成では、センサで検査対象について予め定めた計測項目の計測を行い、端末装置で計測データを受信し、端末装置から光通信によりデータ管理装置へ計測データを送信し、データ管理装置が受信した計測データを記録管理するようになる。
【0006】
具体的には、請求項2のように、前記データ管理装置側から可視光を出射し、前記端末装置側で前記可視光を反射すると共にその反射光の反射状態を前記計測データに応じて制御して計測データを送信し、前記データ管理装置側で前記反射光を受光し前記反射状態に応じた受光出力に基づいて前記計測データを記録管理する構成とするとよい。
【0007】
請求項3のように、前記端末装置は、前記可視光を反射し前記計測データに応じた反射状態の反射光を出射するデータ送信部と、前記センサから受信した計測データに基づいて前記データ送信部の反射光の反射状態を可変制御して前記データ送信部からの計測データ送信を制御する制御部と、を備える構成とするとよい。
【0008】
請求項4のように、前記データ管理装置は、前記可視光を発光すると共に当該可視光に基づく反射光を受光して前記端末装置との間で光通信を行う送受光部と、該送受光部からの受光出力を処理して端末装置から送信された計測データに対応するデータ信号を生成する信号処理部と、該信号処理部からのデータ信号を記録管理するデータ記録部とを備える構成とするとよい。
【0009】
請求項5のように、前記データ送信部は、反射光の反射強度を変えることにより反射状態を可変する構成としてもよく、請求項6のように、反射光の反射方向を変えることにより反射状態を可変する構成としてもよい。
【0010】
請求項5のように反射光の反射強度を変える場合、請求項7のように、前記データ送信部は、入射する可視光を再帰反射する再帰反射手段と、前記制御部により駆動制御されて前記該再帰反射手段の反射光の反射強度を可変する反射強度可変手段とを備える構成とするよい。この場合、請求項8のように、前記再帰反射手段は、再帰反射プリズムであり、前記反射強度可変手段は、微小変位アクチュエータと、該微小変位アクチュエータに固定し前記再帰反射プリズムの再帰反射面に対して接離可能に配置した誘電体と、前記微小変位アクチュエータを駆動する駆動回路を備える構成であり、前記駆動回路により前記微小変位アクチュエータを駆動して前記誘電体を前記再帰反射面に対して接離動作させて前記再帰反射プリズムからの反射光の反射強度を可変する構成とするとよい。前記微小変位アクチュエータは、請求項9のように、圧電素子とするとよい。
【0011】
また、請求項6のように反射光の反射方向を変える場合、請求項10のように、前記データ送信部は、互いに直角に配置した3つの反射ミラーのうち、少なくとも1つを可動可能な可動反射ミラーで構成し、当該可動反射ミラーを可動させて反射光の反射方向を可変するコーナキューブレフレクタを備える構成とするとよい。この場合、請求項11のように、前記可動反射ミラーは、固定部に可動可能に支持され反射ミラーを設けた可動部と、前記可動部を駆動する駆動手段とを備え、前記駆動手段で前記可動部を可動させて前記反射ミラーの反射光の反射方向を可変する構成とするとよい。
【0012】
請求項12のように、前記検査対象を人とし、前記計測項目を各人の生体データとするとよい。この場合、請求項13のように、新体力テストの参加者に対する健康状態チェック用の生体データの収集に適用するとよい。
【0013】
請求項13において、具体的には、請求項14のように、前記データ管理装置の通信可能領域を設定し、複数の参加者がそれぞれ前記センサと端末装置とを装着して前記通信可能領域内に集合し、データ管理装置により各センサで計測した各参加者の前記生体データを収集する一方、参加者がパソコンにより画面に表示される質問に対する回答を入力し、この入力した回答データと前記生体データとを各参加者毎に対応付けて前記データ管理装置に記録し、この記録データに基づいて各参加者毎に前記新体力テストにおける体力テストの実施が可能か否かを判定可能な構成とするとよい。この場合、請求項15のように、前記端末装置は、端末装置固有のハッシュ値を生体データに付加して前記データ管理装置へ送信し、データ管理装置は、受信した前記ハッシュ値に基づいて生体データと参加者とを対応付けて記録する構成とするとよい。
また、請求項16のように、前記端末装置からデータ管理装置へ前記生体データを送信するときに、前記生体データに生体データ受信確認のための情報を付加して送信する構成とするとよい。
【0014】
請求項2〜16において、請求項17のように、前記可視光に代えて、赤外線又は紫外線を用いてもよい。
【0015】
請求項1〜11において、請求項18のように、前記検査対象を人以外の動物とし、前記計測項目を各動物の生体データとする構成としてもよく、請求項19のように、前記検査対象をロボット等の機械とし、前記計測項目を各機械の各種計測データとする構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のデータ収集システムによれば、センサで計測した計測データを端末装置からデータ管理装置へ伝送するのに光通信を用いる構成としたので、医療機器や心臓ペースメーカーへの影響を考慮する必要がない。従って、例えば、新体力テストや病院等の医療現場等における人の生体データの収集管理に有効なデータ収集システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るデータ収集システムの一実施形態のシステム概略図を示す。以下の実施形態では、新体力テストにおいて事前に行われる健康状態チェック用データ(例えば血圧及び心拍数)の収集に適用した例について説明する。
図1において、本実施形態の健康チェックデータ収集システムは、検査対象である新体力テスト参加者(以下、健診者とする)の健康状態チェックのため予め定めた計測項目として例えば血圧、心拍数(生体データ)の計測を行う医療センサ1と、医療センサ1から計測データを受信する端末装置10と、端末装置10を介して計測データを収集し管理するデータ管理装置20とを備え、端末装置10からデータ管理装置20へのデータ伝送を、例えば可視光を用いた光通信により行う構成である。尚、計測項目は、血圧、心拍数に限らないが、新体力テストにおいては血圧測定、心拍数測定は必ず行う。尚、可視光に代えて赤外線又は紫外線を用いてもよい。
【0018】
前記医療センサ1は、健診者に装着して血圧、心拍数を計測するもので、端末装置10と電気配線で接続されて計測データを伝送する。計測データの出力形式は、アナログ信号とディジタル信号のどちらでもよい。
【0019】
端末装置10は、図2に示すように、後述するデータ管理装置20から出射された可視光を反射し計測データに応じた反射状態の反射光を出射するデータ送信部としての変調部11と、医療センサ1から受信した計測データに基づいて変調部11の反射光の反射状態を可変制御して変調部11による計測データ送信を制御する制御部としてのコントロールユニット12と、端末装置10の各部に駆動用電源を供給する電源13とを備える。
【0020】
前記変調部11は、計測データに応じて反射光の反射強度を変えることにより反射状態を可変する構成であって、計測データに応じて反射光を強度変調して計測データを送信するもので、入射する可視光を再帰反射する再帰反射手段としてのコーナーキューブプリズム11Aと、コーナーキューブプリズム11Aの再帰反射面に対して接離可能に設けた誘電体11Bを一端に固定した微小変位アクチュエータとして例えば圧電素子11Cと、該圧電素子11Cを駆動する駆動回路11Dとを備える。そして、コントロールユニット12からの計測データに応じた制御信号に基づく駆動回路11DのON/OFF信号で圧電素子11Cを駆動して、図3に示すように、誘電体11Bをコーナーキューブプリズム11Aの再帰反射面に対して接離させることにより、再帰反射光の強度を可変する。具体的には、駆動回路11DのOFF信号で圧電素子11Cにより誘電体11Bが図3(A)のように再帰反射面に接近(図中の距離dが小)し、誘電体11Bの吸収作用で再帰反射光は大きく減衰される。一方、駆動回路11DのON信号で圧電素子11Cにより誘電体11Bが図3(B)のように再帰反射面から離れ(図中の距離dが大)、再帰反射光は減衰することなくそのままの強度で反射する。尚、前記距離dについては、適宜設定すればよく、光の波長をλとすると、波長λの1/4より狭くなると反射光量は極めて少なくなり、波長λ以上離せば反射光量は1に近くなる。ここで、前記誘電体11B、圧電素子11C及び駆動回路11Dで、反射強度可変手段が構成されている。
【0021】
尚、駆動回路11Dから出力されるON/OFF信号と誘電体11Bの接離動作の関係は、上述した本実施形態の場合と逆(OFF信号で離れ、ON信号で接近する)でもよい。
【0022】
前記コントロールユニット12は、例えばマイクロコンピュータを内蔵し、医療センサ1から送信される計測データに応じたディジタル信号を制御信号として駆動回路11Dに出力して駆動回路11Dを駆動制御して変調部11によるデータ送信を制御する。このコントロールユニット12内の図示しないメモリに、端末装置10に予め設定した端末識別用の識別IDが記憶されている。また、コントロールユニット12は、入力した計測データと健診者の識別情報とを対応付けて一時的に前記メモリに格納する。健診者の識別情報(例えば各健診者に付与した番号情報等)と計測データの対応付けは、医療センサ1側で識別情報を入力し、入力した識別情報を計測データに付加して端末装置12側に送信するようにしてもよく、端末装置12に識別情報の入力部を設け、端末装置12側で入力された識別情報を、医療センサ1から入力した計測データに付加して格納するようにしてもよい。
【0023】
また、端末装置12は、図示しないが、センサ接続端子としてアナログ入力端子とディジタル入力端子を備える。アナログ入力端子から入力した計測データは、コントロールユニット12内でディジタル信号に変換される。尚、少なくともアナログ入力端子とディジタル入力端子のいずれか一方を備えていればよいが、アナログとディジタルの両入力端子を設けておけば、アナログ式とディジタル式のどちらのセンサも使用することができる利点がある。
【0024】
前記データ管理装置20は、可視光を出射し、この出射した可視光に基づく反射光を受光し、反射光の反射状態に応じた受光出力に基づいて計測データを解析し記録管理するもので、図4に示すように、可視光を発光すると共に当該可視光に基づく反射光を受光して端末装置10との間で光通信を行う送受光部21と、送受光部21からの受光出力を処理して端末装置10から送信された計測データに対応するデータ信号を生成する信号処理部22と、この信号処理部22からのデータ信号を解析し記録管理するデータ記録部としてのマイクロコンピュータ23とを備える。
【0025】
前記送受光部21は、可視光を発光する光源21Aと、端末装置10からの強度変調された反射光を受光する受光部としてのフォトディテクター21Bと、光源21Aの駆動電源である安定化電源21Cと、送受光部21で発生する熱を放熱するためのヒートシンク21Dと、光源21A及びフォトディテクター21Bのそれぞれの前面に設けたレンズ21E、21Fとを備えて構成される。光源21A及びフォトディテクター21Bは、図5(A)に示すように、データ管理装置20のケース24に形成した窓部25に設けられ、この窓部25に、例えば図5(B)に示すように、光源21Aとフォトディテクター21B(図の斜線部分)を1つの対としてそれぞれ前面にレンズ21E、21Fを設けて4対設けてある。尚、光源21Aとフォトディテクター21Bの数及び配置は、図5(B)に限らない。光源21Aとフォトディテクター21Bの数は、少なくとも1対あればよい。また、複数対の光源21Aとフォトディテクター21Bの配置として、アレイ状の配置等が考えられる。
【0026】
前記信号処理部22は、フォトディテクター21Bの受光出力電流値を電圧値に変換する電流−電圧変換部22Aと、電流−電圧変換部22Aの出力を増幅する増幅部22Bと、増幅器22Bの増幅出力を波形整形して計測データに対応したパルス信号を生成する波形整形部22Cとを備えて構成される。
【0027】
マイクロコンピュータ23は、CPU23A、メモリ23B、ディスプレイ23C及びキーボード23Dを備え、波形整形部22Cからのパルス信号を生体データ解析用ソフトによりCPU23Aで解析し、解析した計測データをメモリ23Bに格納する。そして、キーボード23Dの操作によりディスプレイ23Cにメモリ23Bに格納した計測データ等を表示することが可能である。
【0028】
次に、本実施形態のデータ収集システムによる新体力テストにおける健康状態チェック用の生体データの収集動作について説明する。
【0029】
ここで、新体力テストについて簡単に説明する。
新体力テストは、国民の体力の現状を把握し、体育、スポーツ活動の指導や行政上の資料として活用するための体力・運動能力調査として行われている。新体力テストでは安全性が重要である。このため、参加者に対して、体力テストの前に図6のような質問紙を用いた健康状態のチェックと、図7のような同じく質問紙を用いたADL(日常生活活動テスト)を実施し、その結果に基づいて体力テストを実施するか否かを各参加者に対して判定するようにしている。この際、健康状態のチェックにおいて血圧測定と心拍数測定を必ず行う。
【0030】
本実施形態のデータ収集システムでは、このような新体力テストにおける健康状態チェック用の生体データを効率よく収集することが可能であり、以下に、そのデータ収集動作を説明する。
【0031】
健診者は、例えば図7のようなADLの質問画面の表示されたパソコンで、音声質問形式により質問に対する回答を入力する。
その後、各健診者は、医療センサ1及び該医療センサ1と電気配線で接続された端末装置10とを装着し、例えば図1の円形部分で示されているような予め設定されたデータ管理装置20の可視光照射領域内に集合する。これにより、端末装置10とデータ管理装置20との間で光空間通信可能となり、この状態で各健診者が装着した端末装置10を介してデータ管理装置20により健診者の血圧及び心拍数等の生体データの収集を行う。尚、装着する医療センサ1は1つとは限らず、計測項目に応じて複数の医療センサ1を端末装置10に接続して装着するようにしてもよい。
【0032】
医療センサ1で計測された健診者の複数の生体データは、医療センサ1から端末装置10に送信される。端末装置10では、コントロールユニット12が医療センサ1からの計測データの入力を検出し計測データの入力完了と判断すると、コントロールユニット12により駆動回路11Dを駆動制御して健診者の識別情報と計測データの送信を開始する。尚、計測データの入力完了の検出は、計測データのデータ長が決まっているので、「1」、「0」のディジタル信号をビット換算することで判定できる。
【0033】
データの送信を開始すると、コントロールユニット12は、「1」、「0」のディジタル信号の計測データ及び識別情報に応じて駆動回路11Dを駆動制御して駆動回路出力をON/OFF制御する。即ち、「0」のときはOFFとして圧電素子11Cを介して誘電体11Bをコーナーキューブプリズム11Aに対して図5(A)に示すように接近させ、「1」のときはONにして誘電体11Bを図5(B)に示すように離間させる。これにより、コーナーキューブプリズム11Aの再帰反射光は、「0」のときに減衰されて反射光の強度が零又は低下し、「1」のときに減衰することなくそのまま反射する。このようにして、再帰反射光を強度変調し、計測データと健診者の識別情報をデータ管理装置20に送信する。
【0034】
尚、計測データと健診者の識別情報の送信時に、端末装置10の識別IDも付加して送信するとよい。こうすることにより、データ管理装置20側で各端末装置10の識別IDの受信の有無を監視することで、例えば所定時間以上識別IDが受信されない場合に、受信できない識別IDを持つ端末装置10について故障発生と判断でき、端末装置10の故障診断が可能である。
【0035】
データ管理装置20では、前述の可視光照射領域内に存在する多数の端末装置10からの変調光をフォトディテクター21Bで受光し、その受光出力を信号処理部20に送信する。信号処理部20では、前記受光出力を電流−電圧変換器22Aで電圧値に変換し、増幅部22Bで増幅し、波形整形部22Cで波形整形して受信計測データの「1」、「0」に対応するパルス信号を生成する。波形整形部22Cで生成したパルス信号は、マイクロコンピュータ23に送信される。マイクロコンピュータ23では、受信したパルス信号に基づいて解析ソフトを用いて計測データを解析し、計測データに付加された健診者の識別情報とその計測データとを対応付けてメモリ23Bに格納する。
【0036】
かかる構成のデータ収集システムによれば、多数の健診者の血圧及び心拍数データ(生体データ)を集団で一括して収集することができ、新体力テストにかかる時間を短縮できる。また、光通信を用いているので、心臓ペースメーカーを装着した健診者へ影響を与えることがない。また、データ管理装置20と端末装置10との間の光通信に再帰反射を利用したので、端末装置を装着した健診者が移動したとしても可視光照射領域内に存在していれば、健診者を追尾することなく光通信ができる。
【0037】
また、例えばデータ管理装置20において、計測項目(血圧、心拍数等)について体力テストの実施が可能か否かの判定基準を設定しておき、収集した各計測データと前記判定基準を比較することで、各健診者について体力テストの可否を自動判定することも可能である。この場合、例えば、ディスプレイ23Cに、体力テスト不可と判定した健診者を示す識別情報と生体データとを赤字等で表示するようにすれば、体力テスト不可の健診者を容易に判別できる。
【0038】
尚、上記実施形態では、端末装置10からのデータ送信を、計測データに応じて反射光の反射強度を可変する構成としたが、これに限らない。例えば、計測データに応じて反射光の反射方向を可変する構成でもよい。この場合、互いに直角に配置した3つの反射ミラーのうち、少なくとも1つを可動可能な可動反射ミラーで構成し、可動反射ミラーを可動させて反射光の反射方向を可変する構成としたコーナキューブレフレクタを利用するとよい。可動反射ミラーとしては、半導体基板を用いて、固定部に可動可能に支持した可動部を有し、駆動手段により可動部を可動する構成のアクチュエータを利用し、このアクチュエータの可動部に反射ミラーを設ける構成とし、計測データに応じて可動部を可動させて反射光の反射方向を可変する構成としてもよい。この場合、例えば通常状態では可動反射ミラーを他の反射ミラーと直角でない位置に設定し、コーナキューブリフレクタが再帰反射せず反射光がデータ管理装置20で受光されない状態に設定し、可動反射ミラーを可動することでコーナキューブリフレクタが再帰反射状態になって反射光がデータ管理装置20で受光されるよう構成する。これにより、計測データの「1」、「0」に対応させ、「1」のときに可動反射ミラーを駆動し、「0」のときは可動反射ミラーを駆動しないことで、計測データをデータ管理装置20に送信することができる。前記可動反射ミラーの駆動方式は、電磁方式、静電方式、圧電方式等のどのような駆動方式でもよい。また、可動反射ミラーは、可動部を回動して反射方向を制御する構成でもよく、光入射方向に対して可動部を前後方向に可動して反射方向を制御する構成でもよい。
【0039】
また、本発明のデータ収集システムのセンサから端末装置へのデータ伝送は、有線に限らない。医療機器や心臓ペースメーカー等への影響を考慮する必要がある環境(医療現場等)以外で、電波の使用可能な環境下で適用する場合は、電波による無線通信を用いる構成でもよい。
【0040】
端末装置10の識別IDとしてハッシュ値を利用してもよい。データ管理装置20は、このハッシュ値に基づいて端末装置10から送信された生体データと健診者とを対応付けて記録する。例えば、端末装置10固有の製造番号と端末装置が生成する乱数からハッシュ値を作成する。尚、ハッシュ値の作成は、健診開始以前に予め作成しておいてもよく、端末装置を最初に装着した健診者が操作して作成するようにしてもよい。次いで、端末装置10を装着した健診者は、データ管理装置20に端末装置10を近づけてハッシュ値をデータ管理装置20に送信すると共に、自身の識別データをデータ管理装置10に入力すると、データ管理装置20は、ハッシュ値と健診者データを対応付けて記録する。健診者が生体データの測定を行うと、その測定データは、端末装置10からハッシュ値を付加してデータ管理装置20へ送信する。データ管理装置は、受信したハッシュ値に基づいて既に入力されている健診者データを検索し、検索した健診者データと受信された測定データを対応付けて記録する。
【0041】
複数の健診者の生体データを収集するにあたって、計測データ量が異なる場合、データ長が異なる。このような場合は、センサ1と端末装置10間及び端末装置10とデータ管理装置20間のデータ送信において、データ受信の同期を取るため、データ受信側でデータ受信を確認するための情報としてデータ送信側で設定したチップシーケンス或いはチェックサム値とデータサイズ情報を送信データの先頭に付加することにより、受信側においてデータの受信タイミングを取るようにするとよい。これにより、他の健診者の計測データとの混信防止と共に正常にデータ受信ができたか否かを確認できる。また、データ受信確認のための情報としてシーケンス番号を送信データに付加することで、正常にデータ受信ができたか否かを確認できるようにしてもよい。
【0042】
上述の実施形態では、新体力テストにおける生体データの収集を例として説明したが、本発明のデータ収集装置の適用はこれに限らない。例えば、病院等の医療現場において、手術中の患者の複数の生体データ収集にも好適である。この場合、端末装置10から光空間通信でデータ管理装置20へデータ伝送できるため、手術室内の配線を減らせ、しかも、医療機器に影響を与えることもない。
【0043】
また、市民マラソン等を実施する際に、事前に参加者の健康状態をペースメーカー装着者も含めて集団でチェックすることも可能である。更に、レース中も、コースに複数のデータ収集拠点(例えばデータ管理装置を内蔵したゲート等)を設置し、センサ1と端末装置10を装着したレース参加者が前記拠点を通過することで、レースの継続が可能な状態か否かを判断することも可能であり、これにより、レース参加者の安全確保を図ることができる。
【0044】
本発明のデータ収集システムは、上述した例に限らず、人間以外の動物(例えば競走馬、家畜等)の生体データ収集や、移動ロボット等の機械における例えば動作の観察、監視、検査等のための各種計測データ収集等、センサを用いて計測した複数のデータを収集するものであれば、光通信が可能な限りどのようなものにも適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るデータ収集システムの一実施例の概略構成図
【図2】端末装置のブロック図
【図3】端末装置のコーナーキューブプリズムによるデータ送信原理の説明図
【図4】データ管理装置のブロック図
【図5】データ管理装置の送受光部の光源及びフォトディテクター取付け状態の説明図
【図6】健康状態チェック用の画面表示の一例を示す図
【図7】ADLの画面表示の一例を示す図
【符号の説明】
【0046】
1 医療センサ
10 端末装置
11 変調部
11A コーナーキューブプリズム
11B 誘電体
11C 圧電素子
11D 駆動回路
12 コントロールユニット
20 データ管理装置
21 送受光部
21A 光源
21B フォトディテクター
21C 安定化電源
22 信号処理部
23 マイクロコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象について予め定めた計測項目の計測を行うセンサと、
該センサから前記計測項目の計測データを受信する端末装置と、
該端末装置を介して複数の前記計測データを収集管理するデータ管理装置と、
を備え、
前記端末装置から前記データ管理装置へのデータ伝送を光通信により行う構成としたことを特徴とするデータ収集システム。
【請求項2】
前記データ管理装置側から可視光を出射し、前記端末装置側で前記可視光を反射すると共にその反射光の反射状態を前記計測データに応じて制御して計測データを送信し、前記データ管理装置側で前記反射光を受光し前記反射状態に応じた受光出力に基づいて前記計測データを記録管理する構成とした請求項1に記載のデータ収集システム。
【請求項3】
前記端末装置は、前記可視光を反射し前記計測データに応じた反射状態の反射光を出射するデータ送信部と、前記センサから受信した計測データに基づいて前記データ送信部の反射光の反射状態を可変制御して前記データ送信部からの計測データ送信を制御する制御部と、を備える構成としたことを特徴とする請求項2に記載のデータ収集システム。
【請求項4】
前記データ管理装置は、前記可視光を発光すると共に当該可視光に基づく反射光を受光して前記端末装置との間で光通信を行う送受光部と、該送受光部からの受光出力を処理して端末装置から送信された計測データに対応するデータ信号を生成する信号処理部と、該信号処理部からのデータ信号を記録管理するデータ記録部とを備える構成である請求項2又は3に記載のデータ収集システム。
【請求項5】
前記データ送信部は、反射光の反射強度を変えることにより反射状態を可変する構成である請求項3又は4に記載のデータ収集システム。
【請求項6】
前記データ送信部は、反射光の反射方向を変えることにより反射状態を可変する構成である請求項3又は4に記載のデータ収集システム。
【請求項7】
前記データ送信部は、入射する可視光を再帰反射する再帰反射手段と、前記制御部により駆動制御されて前記再帰反射手段の反射光の反射強度を可変する反射強度可変手段とを備える請求項5に記載のデータ収集システム。
【請求項8】
前記再帰反射手段は、再帰反射プリズムであり、前記反射強度可変手段は、微小変位アクチュエータと、該微小変位アクチュエータに固定し前記再帰反射プリズムの再帰反射面に対して接離可能に配置した誘電体と、前記微小変位アクチュエータを駆動する駆動回路を備える構成であり、前記駆動回路により前記微小変位アクチュエータを駆動して前記誘電体を前記再帰反射面に対して接離動作させて前記再帰反射プリズムからの反射光の反射強度を可変する請求項7に記載のデータ収集システム。
【請求項9】
前記微小変位アクチュエータが、圧電素子である請求項8に記載のデータ収集システム。
【請求項10】
前記データ送信部は、互いに直角に配置した3つの反射ミラーのうち、少なくとも1つを可動可能な可動反射ミラーで構成し、当該可動反射ミラーを可動させて反射光の反射方向を可変するコーナキューブレフレクタを備える請求項6に記載のデータ収集システム。
【請求項11】
前記可動反射ミラーは、固定部に可動可能に支持され反射ミラーを設けた可動部と、前記可動部を駆動する駆動手段とを備え、前記駆動手段で前記可動部を可動させて前記反射ミラーの反射光の反射方向を可変する構成である請求項10に記載のデータ収集システム。
【請求項12】
前記検査対象を人とし、前記計測項目を各人の生体データとすることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載のデータ収集システム。
【請求項13】
新体力テストの参加者に対する健康状態チェック用の生体データの収集に適用することを特徴とする請求項12に記載のデータ収集システム。
【請求項14】
前記データ管理装置の通信可能領域を設定し、複数の参加者がそれぞれ前記センサと端末装置とを装着して前記通信可能領域内に集合し、データ管理装置により各センサで計測した各参加者の生体データを収集する一方、参加者がパソコンにより画面に表示される質問に対する回答を入力し、この入力した回答データと前記生体データとを各参加者毎に対応付けて前記データ管理装置に記録し、この記録データに基づいて各参加者毎に前記新体力テストにおける体力テストの実施が可能か否かを判定可能とした請求項13に記載のデータ収集システム。
【請求項15】
前記端末装置は、端末装置固有のハッシュ値を生体データに付加して前記データ管理装置へ送信し、データ管理装置は、受信した前記ハッシュ値に基づいて生体データと参加者とを対応付けて記録する構成とした請求項14に記載のデータ収集システム。
【請求項16】
前記端末装置からデータ管理装置へ前記生体データを送信するときに、前記生体データに生体データ受信確認のための情報を付加して送信する構成である請求項14又は15に記載のデータ収集システム。
【請求項17】
前記可視光に代えて、赤外線又は紫外線を用いる請求項2〜16のいずれか1つに記載のデータ収集システム。
【請求項18】
前記検査対象を人以外の動物とし、前記計測項目を各動物の生体データとすることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載のデータ収集システム。
【請求項19】
前記検査対象をロボット等の機械とし、前記計測項目を各機械の各種計測データとすることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載のデータ収集システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−261765(P2009−261765A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117113(P2008−117113)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【出願人】(397057809)株式会社津村総合研究所 (5)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】