データ対応付け装置およびその制御方法、データ対応付け装置制御プログラム、ならびに該プログラムを記録した記録媒体
【課題】工程間の計測データどうしまたは計測データの集合どうしを良好に対応付ける。
【解決手段】データ表示システム10は、複数の計測設備Yjが設けられた製造ラインMLにおいて、異なる計測設備Yjが計測した計測データCjどうしを対応付けるものである。データ表示システム10において、ライン情報記憶装置13は、異なる計測設備Yj間で生じる無駄個数に関する情報を記憶し、データ同期装置14は、無駄個数を利用して、異なる計測設備Yjの一方が計測した計測データに対応する、異なる計測設備Yjの他方が計測した計測データを特定する。
【解決手段】データ表示システム10は、複数の計測設備Yjが設けられた製造ラインMLにおいて、異なる計測設備Yjが計測した計測データCjどうしを対応付けるものである。データ表示システム10において、ライン情報記憶装置13は、異なる計測設備Yj間で生じる無駄個数に関する情報を記憶し、データ同期装置14は、無駄個数を利用して、異なる計測設備Yjの一方が計測した計測データに対応する、異なる計測設備Yjの他方が計測した計測データを特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、複数の製造対象物を計測した上記計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、製品の品質を向上する取り組みが行われるとともに、各種の品質制御方法が提案されている。
【0003】
例えば、トレーサビリティを実現するために、製品の中間品や該中間品が載置される台座などに、バーコードなどの識別コードを付して管理する方法が提案されている。また、トレーサビリティを実現するために、各製造工程に投入される中間品の順番で中間品を識別する方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、識別コードを付して管理する上記方法の場合、製造コストが上昇するという問題がある。また、製造工程では不良品の抜取りや手直し、再投入が発生することが多い。このため、中間品の順番で中間品を識別する上記方法で中間品を正しく識別できない場合がある。この場合、個々の中間品に関して、第1の製造工程にて計測した計測データと、第2の製造工程にて計測した計測データとを厳密に対応付けることは困難である。
【0005】
このような場合であっても、複数の中間品からなる集合に関して、或る製造工程の計測データと別の製造工程の計測データとを大まかに対応付けて、工程間の因果関係を明らかにすることが望まれている。
【0006】
例えば、特許文献1には、紙、フィルムなどの製品品質のプロファイルを表示する表示装置が開示されている。該表示装置は、操作部から測定部に製品が到達するまでの無駄時間分ずらして、操作部の操作量の画面と、測定部の測定値の画面とを整列して表示している。
【0007】
また、特許文献2には、製造ラインで製品を製造する際の製造工期と製品数とを予測する製造管理装置が開示されている。該製造管理装置では、平均ロット到着間隔と待ち行列との長さに基づき製品の平均待ち時間を演算し、演算した平均待ち時間と平均ロット処理間隔とに基づき製品の工期を演算し、歩留により製造される製品数を演算している。
【0008】
また、特許文献3には、シート状製品の幅方向のプロファイルを測定する方法が開示されている。該方法では、一定周期で厚さを測定して保存しておき、ロータリーダイまたはピンチロールに基準点を設けて、この基準点を通過した基準信号に基づいて保存したデータを切り出し、プロファイルを演算している。また、輸送時間に相当するデータの個数だけ、切り出すデータの位値を過去側にずらすようにしている。
【0009】
また、本願発明者らは、特許文献4において、所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置を開示している。該品質制御装置では、製造工程に設けられた複数の計測機器が計測した計測データを収集し、収集した計測データを、計測した時刻または収集した時刻とともに記憶しておき、計測した時刻または収集した時刻に、上記計測機器どうしの間で生じる無駄時間を考慮することにより、上記計測機器の計測データの集合どうしを対応付けている。
【特許文献1】特開2002−138384(2002年5月14日公開)
【特許文献2】特開2003−109885(2003年4月11日公開)
【特許文献3】特開2004−347558(2004年12月9日公開)
【特許文献4】特開2005−339498(2005年12月8日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のような従来の装置では、以下に示すような問題点がある。すなわち、従来は、製造条件を変更した時の計測データの変化度合いが、現場作業員に分かりやすく表示されているとは言い難かった。
【0011】
例えば、通常、変化前の計測データは多数存在するが、変化後の計測データは変化直後には少数しか存在しない。一方、現場作業員などは製造条件の変更による影響を一刻も早く知ることを望んでいる。そこで、従来は、変化前の十分な量の計測データと、変化後の不十分な量の計測データとに関する表示を行っていた。しかしながら、このような表示では、現場作業員などは量の多い変化前の計測データに影響を受けてしまい、変更後の状態把握を誤ることがあった。
【0012】
また、自動組立工程では、不定期な設備停止、工程間のバッファなどが存在するため、工程間の無駄時間およびバッファ個数が変化する。このため、上述のような従来の装置では、工程間の計測データどうしの対応付け、および工程間の計測データの集合どうしの対応付けの精度が低下し、因果関係の解析精度が低下する結果となっていた。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、工程間の計測データどうしまたは計測データの集合どうしの対応付けが良好なデータ対応付け装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るデータ対応付け装置は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、異なる上記計測設備が計測した計測データどうしを対応付けるデータ対応付け手段を備えるデータ対応付け装置であって、上記課題を解決するために、上記異なる計測設備間で生じる無駄個数に関する情報を記憶する記憶部を備えており、上記データ対応付け手段は、上記無駄個数を利用して、上記異なる計測設備の一方が計測した計測データに対応する、上記異なる計測設備の他方が計測した計測データを特定することを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係るデータ対応付け装置の制御方法は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、異なる上記計測設備が計測した計測データどうしを対応付けるデータ対応付け装置であって、上記異なる計測設備間で生じる無駄個数に関する情報を記憶する記憶部を備えるデータ対応付け装置の制御方法であって、上記課題を解決するために、上記無駄個数を利用して、上記異なる計測設備の一方が計測した計測データに対応する、上記異なる計測設備の他方が計測した計測データを特定することにより、上記異なる計測設備が計測した計測データどうしを対応付けることを特徴としている。
【0016】
上記の構成および方法によると、無駄個数を利用して、異なる計測設備の一方が計測した計測データに対応する、異なる計測設備の他方が計測した計測データを特定している。したがって、マーカ、区間データ、および同期データを用いることなく、無駄個数のみを用いて、異なる計測設備間の計測データどうしを良好に対応付けることができる。
【0017】
本発明に係るデータ対応付け装置は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置であって、上記課題を解決するために、上記異なる計測設備の一方に関して、上記計測データの集合である同期データを作成する同期データ作成手段と、上記異なる計測設備の他方に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成手段とを備えており、上記対応同期データ作成手段は、上記他方の計測設備に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データと同じ要素数を有する複数の同期データ候補を作成し、上記一方の計測設備に関する同期データと、上記他方の計測設備に関する同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、相関係数の絶対値が最大となる同期データ候補を特定し、これを上記他方の計測設備に関する同期データとすることを特徴としている。
【0018】
また、本発明に係るデータ対応付け装置の制御方法は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置の制御方法であって、上記課題を解決するために、上記異なる計測設備の一方に関して、上記計測データの集合である同期データを作成する同期データ作成ステップと、上記異なる計測設備の他方に関して、上記同期データ作成ステップにて作成された同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成ステップとを含んでおり、上記対応同期データ作成ステップは、上記他方の計測設備に関して、上記同期データ作成ステップにて作成された同期データと同じ要素数を有する複数の同期データ候補を作成し、上記一方の計測設備に関する同期データと、上記他方の計測設備に関する同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、相関係数の絶対値が最大となる同期データ候補を特定し、これを上記他方の計測設備に関する同期データとすることを特徴としている。
【0019】
上記の構成および方法によると、一方の計測設備に関して同期データを作成し、他方の計測設備に関して複数の同期データ候補を作成する。そして、上記同期データと上記同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、相関係数の絶対値が最大となる同期データ候補を特定し、これを上記他方の計測設備に関する同期データとしている。したがって、マーカおよび区間データを用いることなく、相関係数のみを用いて、異なる計測設備間の同期データどうしを良好に対応付けることができる。
【0020】
本発明に係るデータ対応付け装置は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置であって、上記課題を解決するために、各計測設備に関して、該計測設備が計測した計測データを取得するデータ取得手段と、上記製造ラインに投入されたマーカを検知するマーカ検知手段と、該マーカ検知手段が検知したマーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを上記データ取得手段から取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成する区間データ作成手段とを備えており、上記区間データ作成手段が作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付ける区間データ対応付け手段を備えることを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係るデータ対応付け装置の制御方法は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置の制御方法であって、各計測設備に関して、該計測設備が計測した計測データを取得するデータ取得ステップと、上記製造ラインに投入されたマーカを検知するマーカ検知ステップと、検知したマーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成する区間データ作成ステップとを含んでおり、作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付ける区間データ対応付けステップを含むことを特徴としている。
【0022】
上記の構成および方法によれば、マーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成し、作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付けている。マーカ間に含まれる複数の製造対象物は、多少の抜取りや継ぎ足しが行われることがあるが、全体として同じものである可能性が高い。従って、異なる計測設備間で対応付けられた区間データどうしは、良好な対応付けとなる。
【0023】
なお、マーカとしては、任意の物体を利用できるが、計測設備で製造対象物でないことが容易に判別可能なものが適している。また、マーカとしては、製造コストの面から、安価で繰り返し使用できるものが適しており、製造ライン上の搬送の面から、製造対象物と同一形状であるものが、運用時のトラブルが少ないので適している。また、導通しないなどの規格外の製造対象物も、マーカとして適している。この場合、検査工程でマーカを容易に発見でき、製造対象物から自動的に除去することができる。
【0024】
また、IDタグなどのような、非接触で検出可能な識別子を装着したものをマーカとして利用することもできる。しかしながら、この場合、上記識別子を読み取る読取装置を計測設備に設ける必要がある。
【0025】
本発明に係るデータ対応付け装置では、或る上記計測設備に関して、上記区間データに比べて少数の計測データの集合である同期データを作成する同期データ作成手段と、別の上記計測設備に関して、上記区間データ対応付け手段が上記複数の計測設備間で対応付けた区間データどうしを利用して、上記同期データ作成手段が作成した同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成手段とを備えてもよい。この場合、異なる計測設備間で対応付けられた同期データどうしも良好な対応付けを維持できる。
【0026】
本発明に係るデータ対応付け装置では、上記対応同期データ作成手段は、上記或る計測設備に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データにおいて所定の順序に位置する要素が、上記区間データにて位置する順序の、該区間データ内の要素数に対する比率である順序比を算出し、上記区間データに対応付けられた上記別の計測設備の区間データ内の要素数に上記順序比を乗算して、上記別の計測設備の区間データにおける順序を算出し、算出した順序の要素が上記所定の順序に位置するような同期データを作成してもよい。
【0027】
さらに、これらの同期データの作成方法を組み合わせることもできる。この場合、何れか1つの作成方法で同期データを作成し、作成した同期データを他の作成方法で調整すればよい。
【0028】
例えば、上記異なる計測設備間で生じる無駄時間および無駄個数と、上記同期データ作成手段および上記対応同期データ作成手段が作成した同期データどうしの相関係数とのうちの少なくとも1つを用いて、上記対応同期データ作成手段が作成した同期データを調整する同期データ調整手段をさらに備えることが挙げられる。
【0029】
なお、上記データ対応付け装置における各手段を、データ対応付け装置制御プログラムによりコンピュータ上で機能させることができる。さらに、上記データ対応付け装置制御プログラムをコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶させることにより、任意のコンピュータ上で上記データ対応付け装置制御プログラムを実行させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るデータ対応付け装置は、以上のように、無駄個数を利用して、異なる計測設備の一方が計測した計測データに対応する、異なる計測設備の他方が計測した計測データを特定しているので、マーカ、区間データ、および同期データを用いることなく、無駄個数のみを用いて、異なる計測設備間の計測データどうしを良好に対応付けることができるという効果を奏する。
【0031】
また、本発明に係るデータ対応付け装置は、以上のように、一方の計測設備に関する同期データと、他方の計測設備に関する同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、上記他方の計測設備に関する同期データを求めている。したがって、マーカおよび区間データを用いることなく、相関係数のみを用いて、異なる計測設備間の同期データどうしを良好に対応付けることができるという効果を奏する。
【0032】
また、本発明に係るデータ対応付け装置は、以上のように、マーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成し、作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付けているので、異なる計測設備間で対応付けられた区間データどうしは、良好な対応付けとなるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の一実施形態について、図1〜図15を参照して説明する。まず、図1を参照して本実施形態の概要について説明する。
【0034】
図1は、本実施形態のデータ表示システムの概略構成を示している。このデータ表示システム(データ表示装置、データ対応付け装置)10は、製造ラインMLに設けられた複数の計測設備Yj(jは1以上の整数)が計測した計測データを、異なる計測設備間で対応付け、対応付けられた計測データ、または該計測データに基づくデータを表示するものである。
【0035】
まず、製造ラインMLに設けられる製造設備S・Xi・Yj(iは1以上の整数)について説明する。図1に示されるように、製造ラインMLの上流端には投入設備Sが設けられ、その下流側には複数の加工設備Xiと複数の計測設備Yjとが設けられている。
【0036】
なお、添え字iは、投入設備Sを基準として、下流側に並ぶ加工設備の順番を示すものであり、複数または全体の加工設備を示す場合にはアルファベットで示す。同様に、添え字jは、投入設備Sを基準として、下流側に並ぶ計測設備の順番を示すものであり、複数または全体の計測設備を示す場合にはアルファベットで示す。
【0037】
投入設備Sは、製造ラインMLにワーク(製造対象物)を投入するものである。投入設備Sは、製造ラインMLにワークを投入する度に、投入信号を生成してマーカ制御装置11(マーカ投入制御手段)に送信する。
【0038】
本実施形態では、投入設備Sは、マーカ制御装置11からマーカ投入信号を受信すると、ワークの代わりにマーカを製造ラインMLに投入している。マーカは、計測設備Yjが計測する計測データを区分するために利用される。なお、マーカの詳細については後述する。
【0039】
加工設備Xiは、ワークの加工を行うものである。具体的には、加工設備Xiは、搬送されてきたワークを予め決められた手順で加工すると共に、必要に応じて現場作業員Wからの指示により加工条件を変更するものである。例えば、曲げ、圧力、温度などの加工条件を変更することにより、ワークの形状寸法、動作特性などの品質特性を調整することができる。
【0040】
計測設備Yjは、ワークの計測を行うものである。具体的には、計測設備Yjは、搬送されてきたワークの形状寸法、動作特性などの品質特性を計測し、計測データを計測時刻と共にデータ収集装置(データ対応付け装置)12に送信するものである。
【0041】
通常、同一計測設備にて複数の計測項目を計測することが多い。この場合、同一計測設備にてワーク毎に複数の計測データが作成されることになるが、本実施形態では、これら複数の計測データどうしが同期しており、完全に対応付けられているものとする。
【0042】
本実施形態では、計測設備Yjは、マーカが搬送されてきた場合、ワークと同様にマーカの計測を行い、計測データを計測時刻と共にデータ収集装置12に送信する。
【0043】
次に、データ表示システム10の概要について説明する。図1に示されるように、データ表示システム10は、マーカ制御装置11、データ収集装置12、ライン情報記憶装置(記憶部)13、データ同期装置(データ対応付け手段、データ対応付け装置)14、条件入力装置15、データ比較装置(データ比較手段)16、およびデータ表示装置(表示部、表示制御手段)17を備える構成である。
【0044】
データ収集装置12は、各計測設備Yjが計測した計測データを収集するものである。また、データ収集装置12は、マーカ制御装置11からの指示により投入設備Sから製造ラインMLに投入されたマーカを検知すると、マーカ間に含まれる複数の計測データの集合である区間データを作成する。
【0045】
次に、データ収集装置12は、上記マーカを利用して、異なる計測設備間の区間データどうしを対応付ける。そして、データ収集装置12は、各計測設備間で対応付けられた複数の区間データをデータ表示装置17に表示させる。これにより、現場作業員Wは、各計測設備間で対応付けられた区間データどうしを容易に比較することができる。
【0046】
データ同期装置14は、上記区間データを利用して、該区間データよりも少数の計測データの集合である同期データであって、異なる計測設備間で対応付けられた同期データを作成するものである。データ同期装置14は、各計測設備間で対応付けられた複数の同期データまたはその統計量をデータ表示装置17に表示させる。これにより、現場作業員Wは、各計測設備間で対応付けられた同期データどうしまたはその統計量どうしを容易に比較することができる。また、現場作業員Wは、同期データまたはその統計量の時間推移を容易に把握することができる。
【0047】
データ比較装置16は、現場作業員Wが条件入力装置15にて或る製造設備の製造条件の変更を指示すると、各計測設備間で対応付けられた複数の同期データであって、上記変更による変化前後の同期データまたはその統計量を比較データとして作成するものである。データ比較装置16は、作成した比較データをデータ表示装置17に表示させる。これにより、現場作業員Wは、変化前後の同期データまたはその統計量を容易に比較することができる。
【0048】
次に、データ表示システム10に含まれる各種装置11〜17の詳細について説明する。
【0049】
まず、マーカ制御装置11の詳細について説明する。マーカ制御装置11は、投入設備Sにマーカの投入を指示するものである。具体的には、マーカ制御装置11は、投入設備Sからワークの投入信号を受信することにより、ワークの投入数を計数し、所定の投入数ごとに、マーカの投入を指示するマーカ投入信号を投入設備Sに送信するものである。これにより、マーカとマーカとの間に投入されるワークの数は一定であるので、データ収集装置12がマーカを利用して作成する区間データに含まれる要素(計測データ)の数を略一定にすることができ、計測データの対応付けの精度が向上する。
【0050】
また、マーカ制御装置11は、上記マーカ投入信号をデータ収集装置12にも送信している。なお、マーカの投入間隔は、後述のデータ同期装置14にて同期データを生成し易くするために、対応付けを行う集合に含まれる計測データの数に、途中の工程で増加または減少が予想されるワークの数を加算した大きさの整数倍であることが望ましい。
【0051】
ここで、マーカについて説明する。マーカとしては、計測設備Yjでワークでないことが容易に判別可能なものが適している。例えば、計測設備Yjが電気特性を測定している場合には、電気特性で簡単に判別できるものがマーカとして適しており、計測設備Yjが寸法精度を測定している場合には、寸法精度で判別できるものがマーカとして適している。また、計測設備Yjが形状を認識している場合には、独自の形状をワークに設けたものがマーカとして適している。
【0052】
また、マーカとしては、製造コストの面から、安価で繰り返し使用できるものが適しており、製造ラインML上の搬送の面から、ワークと同一形状であるものが、運用時のトラブルが少ないので適している。また、導通しない、重い、などの規格外のワークも、マーカとして適している。この場合、検査工程でマーカを容易に発見でき、完成品から自動的に除去することができる。
【0053】
例えば、ワークが電子部品である場合、通常であれば導通する2端子を導通しないように設計された電子部品(ダミー)を、マーカとして利用することが考えられる。このとき、計測設備Yjが上記2端子の導通チェックを行うことにより、マーカか否かを判別することができる。また、検査工程でマーカを容易に発見でき、規格外として自動的に除去できるので、マーカが製品に紛れ込むことが無い。
【0054】
また、バーコード、IDタグなどのような、非接触で検出可能な識別子を装着したものをマーカとして利用することが考えられる。しかしながら、この場合、上記識別子を読み取る読取装置を計測設備Yjに設ける必要がある。
【0055】
ところで、現場作業員がマーカをロットの区切り目ごとに手動で投入することも考えられる。しかしながら、この場合、マーカの投入忘れ、投入に費やす時間のバラツキなどが発生するため、異なる計測設備Yjが計測した計測データどうしの対応付けの精度が低下することになる。また、現場作業員の作業工程数が増加するので、製造コストが上昇することになる。
【0056】
なお、通常は、数百個のワークごとにマーカを投入することが考えられる。この場合、マーカどうしの間隔が広いため、マーカどうしを区別しなくても、データどうしの対応付けが困難となることはない。しかしながら、より密に(例えば数十個)マーカを投入することが考えられ、この場合、マーカどうしを識別する識別子をマーカに設けることが望ましい。但し、ワークの代わりにマーカが投入されるので、ワークの数に対するマーカの投入数が多くなればなるほど、生産効率が低下する。
【0057】
例えば、ワーク約100個に対しマーカ1個を投入する場合、ワーク約100個に対し不良品が1個発生することに等しく、したがって、生産効率が約1%低下することになる。一方、ワーク約1000個に対しマーカ1個を投入する場合、生産効率の低下は約0.1%で済む。
【0058】
また、本実施形態では、マーカ制御装置11は、ワークの所定の投入数ごとにマーカを投入させているが、所定の期間ごとにマーカを投入させてもよいし、その他の条件に従って、またはランダムにマーカを投入させてもよい。しかしながら、この場合、上述のように、約100個、望ましくは数百個のワークが投入された後にマーカが投入されるような制約をマーカ制御装置11に設ける必要がある。
【0059】
次に、データ収集装置12について図2〜図3を参照して説明する。図2は、データ収集装置12の概略構成を示している。図示のように、データ収集装置12は、計測データ取得部(データ取得手段)21、マーカ検知部(マーカ検知手段)22、区間データ作成部(区間データ作成手段)23、および区間データ対応付け部(区間データ対応付け手段)24を備える構成である。なお、計測データ取得部21、マーカ検知部22、および区間データ作成部23は、計測設備Yjごとに設けられる。
【0060】
計測データ取得部21は、該当する計測設備Yjが計測した計測データCjを取得するものである。計測データ取得部21は、取得した計測データCjをマーカ検知部22および区間データ作成部23に送信する。
【0061】
マーカ検知部22は、計測データ取得部21から受信した計測データCjからマーカを検知するものである。マーカ検知部22は、マーカを検知した旨を区間データ作成部23に通知する。マーカの検知は、例えば受信した計測データが規格値から外れていることにより行うことができる。
【0062】
また、マーカ検知部22は、マーカ制御装置11からマーカ投入信号を受信し、受信したマーカ投入信号を利用して、該当するマーカが到達したか否かをチェックしている。これにより、ワークをマーカと誤認識したり、マーカをワークと誤認識したりすることを防止できる。
【0063】
なお、マーカ検知部22は、マーカ制御装置11からマーカ投入信号を受信する代わりに、上流側に隣合う計測設備用のマーカ検知部22から、マーカを検知したことを示すマーカ検知信号を受信し、受信したマーカ検知信号を利用して、該当するマーカが到達したか否かをチェックしてもよい。この場合、計測設備Yjの設置順序に従って、該当するマーカが到達したか否かをチェックすることができる。さらに、最後の計測設備用のマーカ検知部22は、上記マーカ検知信号をマーカ制御装置11に送信してもよい。この場合、マーカ制御装置11は、或るマーカが全ての計測設備Yjを通過したことを検知することができ、その後に次のマーカを投入することができる。
【0064】
区間データ作成部23は、マーカ検知部22が検知したマーカ間に含まれる複数の計測データの集合である区間データを作成するものである。区間データ作成部23は、作成した区間データを区間データ対応付け部24に送信する。
【0065】
なお、マーカの検知は計測設備Yjが行ってもよい。この場合、マーカ検知部22は計測設備Yjに設ければよく、計測設備Yjは、マーカを検知すると、マーカを示す計測データをデータ収集装置12に送信すればよい。また、データ収集装置12の区間データ作成部23は、マーカを示す計測データを取得すると、上記区間データを作成すればよい。
【0066】
区間データ対応付け部24は、各計測設備Yjに対応する区間データ作成部23から受信した区間データどうしを対応付けるものである。区間データ対応付け部24は、各計測設備Yj間で対応付けられた複数の区間データを、データ同期装置14およびデータ表示装置17に送信する。
【0067】
この区間データどうしの対応付けの具体例に関して、図3を参照して説明する。図3は、最初の計測設備Y1が計測する動作電流の計測データC1と、2番目の計測設備Y2が計測する外形寸法の計測データC2とを時系列順に示すものである。図中の矢印は、データ収集装置12がマーカMを検知した時点を示している。
【0068】
図3に示されるように、最初の計測設備Y1がマーカMを検知して暫く後に、下流側にある2番目の計測設備Y2がマーカMを検知することになる。マーカM間に含まれるワークは、同じものである可能性が高い。従って、最初の計測設備Y1におけるk番目のマーカM(k)と(k+1)番目のマーカM(k+1)との間の区間データD1(k)は、2番目の計測設備Y2における上記マーカM(k)・M(k+1)間の区間データD2(k)と良好に対応付けることができる。
【0069】
次に、ライン情報記憶装置13について説明する。ライン情報記憶装置13は、製造ラインMLに関する各種情報を記憶するものである。本実施形態では、ライン情報記憶装置13は、各製造設備S・Xi・Yjの無駄時間および無駄個数を記憶している。
【0070】
ここで、無駄時間とは、或る製造設備に関して、或るワークが、上流側に隣合う製造設備にて処理されてから、当該製造設備にて処理されるまでに費やす時間をいう。この無駄時間の最小値である最小無駄時間は、如何に効率的に処理を行おうとも、製造設備の間で必ず費やされる時間となる。すなわち、上流側に隣合う製造設備にて処理されてから最小無駄時間が経過するよりも前に当該製造設備にてワークが処理されることは無い。
【0071】
一方、無駄個数とは、或る製造設備に関して、処理前のワークを蓄積している個数をいう。通常の製造設備では、処理前のワークが蓄積されすぎて製造ラインMLから溢れ出すことを防止するため、無駄個数が閾値を超えると、上流側に隣合う製造設備の停止を指示する。この閾値が無駄個数として取りうる最大値であるため、最大無駄個数と呼ばれている。すなわち、隣合う製造設備どうしの間に存在するワークまたはマーカの個数は、最大無駄個数を超えることは無い。
【0072】
したがって、無駄時間および無駄個数は、計測データの集合を異なる計測設備Yj間で対応付ける場合に、対応付けの精度を向上させるための新たな条件として利用することができる。
【0073】
本実施形態では、ライン情報記憶装置13が記憶する各製造設備S・Xi・Yjの無駄時間および無駄個数は、自製造設備の無駄時間および無駄個数と、自製造設備よりも上流側に設けられた全ての製造設備の無駄時間および無駄個数とをそれぞれ積算したものとしている。この場合、異なる計測設備Yj間の無駄時間および無駄個数は、下流側の計測設備の無駄時間および無駄個数から、上流側の計測設備の無駄時間および無駄個数を減算することにより求めることができる。
【0074】
なお、ライン情報記憶装置13は、理論上は、図1に示されるように、上記無駄時間として最小無駄時間Δt(xi)・Δt(yi)を記憶し、上記無駄個数として最大無駄個数Δn(xi)・Δn(yi)を記憶することが望ましい。しかしながら、これらを使用しても上記対応付けの条件が緩い場合には、複数の計測設備Yjにおける無駄時間および無駄個数の平均値をそれぞれ上記無駄時間および無駄個数として使用してもよい。
【0075】
次に、データ同期装置14について、図4〜図8を参照して説明する。図4は、データ同期装置14の概略構成を示している。図示のように、データ同期装置14は、区間データ取得部31、同期データ作成部(同期データ作成手段、対応同期データ作成手段、同期データ調整手段)32、および同期データ送信部33を備える構成である。
【0076】
区間データ取得部31は、各計測設備Yj間で対応付けられた区間データ{Dj(k)}を、データ収集装置12から取得するものである。区間データ取得部31は、取得した区間データ{Dj(k)}を同期データ作成部32に送信する。
【0077】
同期データ作成部32は、区間データ取得部31からの区間データ{Dj(k)}を利用して、区間データDjよりも少数の計測データCjの集合である同期データであって、異なる計測設備Yj間で対応付けられた同期データ{Ej(k)}を作成するものである。同期データ送信部33は、作成した上記同期データ{Ej(k)}を同期データ送信部33に送信する。
【0078】
同期データEjを作成する理由は下記の通りである。すなわち、上述のように、マーカMの投入による生産効率の低下を防止するため、マーカは、通常、数百個のワークごとに投入される。この場合、1つの区間データDjに含まれる計測データCjの数も数百個となる。一方、本実施形態では、複数の計測データCjを含む集合の統計量を算出し、その推移を調べることにより製造工程における変化を判断することになる。このため、区間データDjに含まれる計測データCjの数が多いと、製造工程における変化を見逃し易くなる。そこで、本実施形態では、同期データ作成部32は、上述の同期データを作成している。なお、同期データの作成の詳細は後述する。
【0079】
同期データ送信部33は、同期データ作成部32からの同期データ{Ej(k)}をデータ比較装置16およびデータ表示装置17に送信するものである。なお、同期データ{Ej(k)}を分かり易く表示するために、データ同期装置14は、同期データEj(k)に含まれる計測データCjから、例えば平均値、標準偏差、平均±(3×標準偏差)などの統計量を算出して、データ表示装置17に送信することが望ましい。
【0080】
上記同期データEj(k)の作成は以下のように行われる。すなわち、データ同期装置14は、まず、最初の計測設備Y1が計測した複数の計測データに関して、時系列順の所定数の計測データからなる同期データを作成し、これを所定数だけずらしながら、次々と同期データを作成する。
【0081】
次に、データ同期装置14は、最初の計測設備Y1に関して作成された同期データに対応する同期データを2番目の計測設備Y2に関して作成する。そして、この作成処理を他の計測設備Yjに関して繰り返すことにより、異なる計測設備Yj間で対応する同期データが作成される。
【0082】
本実施形態では、上記同期データを下記の方法で作成している。すなわち、まず、最初の計測設備Y1の或る同期データに関して、全体の計測データにおける所定位置に存在する計測データが、区間データにおける全計測データの個数に対し、何番目に位置するかを示す順序比を算出する。次に、2番目の計測設備Y2における対応する区間データに関して、算出した個数比に対応する計測データを上記所定位置に含む同期データを作成する。そして、この同期データの作成処理を、最初の計測設備Y1の全同期データに関して繰り返す。なお、上記所定位置の例としては、全体の計測データにおける先頭、真ん中、および最後尾が挙げられ、実施例では真ん中としている。
【0083】
図5は、同期データ作成部32が行う上記同期データの作成処理の具体例を示している。図示において、横軸は、或る時点(例えば製造開始時点)から計測設備Y2に到達したマーカMおよびワークの順序数njを示している。また、矢印は、データ収集装置12がマーカMを検知した時点を示しており、破線の範囲は1つの同期データEを示している。また、一点鎖線は、最初の計測設備Y1と2番目の計測設備Y2との間で対応するマーカMを示している。また、二点差線は、最初の計測設備Y1と2番目の計測設備Y2との間で対応する同期データE1・E2を示している。
【0084】
まず、同期データ作成部32は、最初の計測設備Y1において、最初のマーカM(1)を検知した直後のL個の計測データC1からなる同期データを、最初の同期データE1(1)として作成し、これをL/2個の計測データC1をずらしながら、次々と同期データE1を作成する。これにより、図5に示されるように、最初の計測設備Y1に関する複数の同期データ…E1(p)・E1(p+1)…(但し、pは1以上の整数)が作成される。なお、図示のように、同期データE1は、隣合う同期データE1と一部が重複しても良い。
【0085】
次に、同期データ作成部32は、2番目の計測設備Y2におけるp番目の同期データE2(p)の先頭の順序数n2(p)を次式(1)を用いて算出する。
nj+1(p)=Tj+1(k)×(nj(k)−nj(p))−(1−Tj+1(k))×L/2+nj+1(k) ・・・(1)。
【0086】
ここで、nj(k)は、j番目の計測設備Yjにおけるk番目のマーカM(k)の上記順序数であり、nj(p)は、j番目の計測設備Yjにおけるp番目の同期データEj(p)の先頭の上記順序数である。また、Tj+1(k)は、j番目の計測設備Yjにおけるk番目および(k+1)番目のマーカM(k)・M(k+1)間のワーク(計測データ)の個数に対する、(j+1)番目の計測設備Yj+1におけるk番目および(k+1)番目のマーカM(k)・M(k+1)間のワーク(計測データ)の個数の比率であり、次式(2)で表される。
Tj+1(k)=(nj+1(k+1)−nj+1(k))/(nj(k+1)−nj(k)) ・・・(2)。
【0087】
そして、上式(1)を用いて算出された先頭の順序数n2(p)からL個の計測データC2からなるp番目の同期データE2(p)が作成される。
【0088】
ところで、図5の例では、k番目のマーカM(k)と(k+1)番目のマーカM(k+1)との間のワークは、最初の計測設備Y1から2番目の計測設備Y2に到達するまでに、継ぎ足しにより増加している。このような場合でも、2番目の計測設備Y2における隣合う同期データE2は、上記式(1)により、先頭の順序数n2どうしの間隔が広がることになる。
【0089】
一方、(k+1)番目のマーカM(k+1)と(k+2)番目のマーカM(k+2)との間のワークは、最初の計測設備Y1から2番目の計測設備Y2に到達するまでに、抜き取りにより減少している。このような場合でも、2番目の計測設備Y2における隣合う同期データE2は、上記式(1)により、先頭の順序数n2どうしの間隔が狭くなる。したがって、異なる計測設備Yj間での同期データEの対応付けを精度良く行うことができる。
【0090】
なお、図5に示されるような同期データEjの作成方法は、マーカM間に含まれる計測データCjの個数が、同期データEjに含まれる計測データCjの個数の約10〜30倍程度であって、途中の抜取りおよび継ぎ足しが比較的均一に行われるような製造ラインMLに好適である。この場合、区間データDjの対応付けの精度が良好であるので、区間データDjに含まれる計測データCjの個数で均等配置した同期データEjの対応付けの精度も良好なモノとなる。
【0091】
さらに、本実施形態では、異なる計測設備Yj間で対応付けられた同期データEjに対し、ライン情報記憶装置13に記憶された最小無駄時間および最大無駄個数を利用して調整を行っている。これにより、上式(1)を利用して算出した同期データEjの先頭n2(p)を調整できる。したがって、異なる計測設備Yj間での同期データEの対応付けを精度良く行うことができる。
【0092】
図6は、無駄時間および無駄個数を用いて同期データEjを調整する具体例を示すものである。図6は、図5に比べて、特にp番目の同期データEj(p)を拡大して示している。図示において、横軸は時刻を示しており、×印は、ワークの計測データCjを計測した計測時刻を示している。
【0093】
図6に示されるように、最初の計測設備Y1に関するp番目の同期データE1(p)における先頭の計測時刻t1(p,1)と、2番目の計測設備Y2に関するp番目の同期データE2(p)における先頭の計測時刻t2(p,1)との差Δt2(p,1)が、2番目の計測設備Y2に関するp番目の同期データE2(p)における先頭の無駄時間となる。
【0094】
したがって、同期データ作成部32は、上記差Δt2(p,1)が次式を満たすか否かを判断する。
Δt(yj+1)−Δt(yj)≦Δtj+1(p,q) ・・・(3)。
ここで、Δt(yj)は、j番目の計測設備Yjにおける最小無駄時間であり、Δtj(p,q)はj番目の計測設備Yjに関するp番目の同期データEj(p)におけるq番目の計測データCjの無駄時間である。
【0095】
もし、上式(3)を満たさない場合、最初の計測設備Y1が時刻t1(p,1)に計測した計測データC1は、2番目の計測設備Y2が時刻t2(p,1)に計測した計測データC2に対応するのでは無く、時刻t2(p,1)より後に計測した計測データC2に対応することになる。従って、2番目の計測設備Y2に関するp番目の同期データE2(p)を右へずらせばよいことが理解できる。
【0096】
また、図6に示されるように、上記差(無駄時間)Δt2(p,1)の間に含まれる計測データC2の個数Δn2(p,1)が、無駄個数となる。図示の例では、Δt2(p,1)の間に計測データC2を1個含むので、Δn2(p,1)=1となる。また、Δt2(p,2)の間に計測データC2を含まないので、Δn2(p,2)=0となる。
【0097】
したがって、同期データ作成部32は、上記差Δn2(p,1)が次式を満たすか否かを判断する。
0≦Δnj+1(p,q)≦Δn(yj+1)−Δn(yj) ・・・(4)。
ここで、Δn(yj)は、j番目の計測設備Yjにおける最大無駄個数であり、Δnj(p,q)はj番目の計測設備Yjに関するp番目の同期データEj(p)におけるq番目の計測データCjの無駄個数である。
【0098】
もし、上式(4)を満たさない場合、最初の計測設備Y1が時刻t1(p,1)に計測した計測データC1は、2番目の計測設備Y2が時刻t2(p,1)に計測した計測データC2に対応するのでは無く、時刻t2(p,1)より前に計測した計測データC2に対応することになる。従って、2番目の計測設備Y2に関するp番目の同期データE2(p)を左へずらせばよいことが理解できる。
【0099】
なお、同期データEj内の中間または最後の計測データCjについても同様に実行しても良い。さらに、同期データEj内の全ての計測データCjについて同様に実行しても良い。この場合、同期データEj内の個々の計測データCjを、異なる計測設備Yj間で対応付けることができる。
【0100】
また、最小無駄時間および最大無駄個数の代わりに、平均無駄時間および平均無駄個数を利用することもできる。この場合、対応付けの精度がさらに向上する。
【0101】
また、上述のような無駄時間を利用する方法は、同期データEjに含まれる計測データCjの個数に比べて、各製造設備間のバッファが比較的多いが、各製造設備の稼働率が高いために長時間停止がほとんど発生しないような製造ラインMLに好適である。この場合、製造設備間の無駄時間が最小無駄時間で規定できるので、対応付けの精度が向上する。
【0102】
また、上述のような無駄個数を利用する方法は、同期データEjに含まれる計測データCjの個数に比べて、各製造設備間のバッファがさほど多くないが、長時間の停止が頻繁に発生するような製造ラインMLに好適である。この場合、長時間停止した製造設備の無駄個数が最大無駄個数で規定されるので、対応付けの精度が向上する。
【0103】
ところで、異なる計測設備Yjの計測項目の中には、同じものが存在したり、例えば動作電流および動作抵抗のように相関関係が存在したりすることがある。このような関連性を有する計測項目どうしの計測データCjは、関連性を有して変化したりすることが多い。
【0104】
そこで、本実施形態では、同期データ作成部32は、異なる計測設備Yjにおいて関連性を有する計測項目どうしを利用して、同期データEjの対応付けが適切であるか否かを判断している。上記対応付けが不適切である場合、上記対応付けが適切となるように、同期データEjを過去方向または現在方向にずらせばよい。これにより、上記対応付けの精度を向上させることができる。
【0105】
上記計測項目どうしの関連性について、図7および図8を参照して具体的に説明する。図7は、最初の計測設備Y1に関する計測データC1と同期データE1と、2番目の計測設備Y2に関する計測データC2と同期データE2とを時系列順に示すものである。
【0106】
図7では、最初の計測設備Y1が計測する計測データC1として、バネ定数および動作電流の計測データC1(1)・C1(2)を示しており、2番目の計測設備Y2が計測する計測データC2として、動作抵抗および外形寸法の計測データC2(1)・C2(2)を示している。図示の場合で、定電圧の電子部品を製造しているケースを想定すると、最初の計測設備Y1の動作電流と2番目の計測設備Y2の動作抵抗とは、オームの法則により負の相関が生じていることが予想される。
【0107】
図8は、最初の計測設備Y1の動作電流と2番目の計測設備Y2の動作抵抗との相関関係を示すグラフである。図示のグラフでは、上記動作電流の同期データE1(2)の平均計測値と、上記動作抵抗の対応する同期データE2(1)の平均計測値とを集合毎にプロットしている。図8を参照すると、上記動作電流と上記動作抵抗との間には負の相関関係があることが理解できる。
【0108】
なお、同様の品質のワークを同じ計測設備Yjで計測している以上、上記動作電流および上記動作抵抗はさほど変化しないのが通常である。したがって、図示のグラフは、特定の領域を拡大して示しており、上記動作電流と上記動作抵抗との関係を示す反比例の曲線は、直線状となっている。
【0109】
また、図8を参照すると、上記動作電流の同期データE1(2)の平均計測値と、上記動作抵抗の対応する同期データE2(1)の平均計測値とが、図示の破線で囲まれた範囲から外れている場合には、同期データE1・E2どうしの対応付けが不適切であると判断できることが理解できる。なお、計測項目どうしに相関関係があるか否かは、相関係数を求めることにより判断できる。なお、相関係数を求める式は周知であるので、その記載を省略する。
【0110】
したがって、同期データ作成部32は、具体的には、異なる計測設備Yjにおいて関連性を有する計測項目どうしと、該計測項目どうしの間での相関係数の範囲とを予め記憶しておき、マーカM間に含まれる上記計測項目どうしの同期データEjの平均計測値に関して、相関係数を算出し、算出した相関係数が上記範囲から外れている場合、同期データEjどうしの対応付けが不適切であると判断することになる。この場合、同期データEjの平均計測値を利用して上記対応付けの適切性を判断するので、途中でワークの抜取りおよび継ぎ足しが発生しても、上記平均計測値への影響が低く、したがって、上記適切性の判断への影響を抑えることができる。
【0111】
このように、同期データ作成部32は、計測項目の相関関係を利用して、同期データEjの対応付けの適切性を判断している。逆に言えば、同期データEjの対応付けが適切であれば、他の計測項目どうしの相関関係を求めることが可能であると考えられる。図7の例では、電気特性である動作電流と動作抵抗との相関関係を利用しているが、適切に対応付けられた同期データEjを利用して、機構特性であるバネ定数と外形寸法との相関関係を求めることができる。これにより、バネ定数と外形寸法との間に、負の相関関係が存在することが新たに示唆される。
【0112】
なお、上述のような相関関数を用いた調整は、マーカM間に含まれる計測データの計測値が変化する場合に好適である。したがって、同期データEj内の計測データCjの個数に対して、マーカM間に含まれる計測データの個数が多い場合(約30〜100倍程度)に好適である。
【0113】
次に、条件入力装置15について説明する。条件入力装置15は、製造設備の製造条件を変更するために、現場作業員Wから製造設備が選択され、新たな製造条件が入力されるものである。条件入力装置15は、選択された製造設備に対し、入力された製造条件を示す製造条件データを送信する。これにより、製造条件データを受信した製造設備の製造条件が変更される。以下では、製造条件が変更された製造設備を「変更設備」と称する。
【0114】
条件入力装置15は、現場作業員Wからの入力を受け付ける入力デバイスを備えている。入力デバイスの例としては、キーボード、テンキー、マウスなどのポインティングデバイス、およびタッチパネルが挙げられる。また、製造条件をバーコードで入力する場合は、バーコードリーダを条件入力装置15としてもよい。
【0115】
本実施形態では、条件入力装置15は、現場作業員Wが製造条件を入力した時刻を製造条件の変更時刻として取得し、取得した変更時刻と、現場作業員Wが選択した変更設備を示す変更設備情報とをデータ比較装置16に送信する。なお、変更設備が、製造条件を変更した時刻を示す変更時刻と、自設備を示す変更設備情報とをデータ比較装置16に送信してもよい。
【0116】
次に、データ比較装置16について、図9および図10を参照して説明する。図9は、データ比較装置16の概略構成を示している。図示のように、データ比較装置16は、同期データ取得部42、変更設備情報取得部43、変更時刻情報取得部(変更時刻取得手段)44、変化時刻推定部(変化判別手段、変化時刻推定手段)45、および比較データ作成部(表示制御手段)46を備える構成である。
【0117】
同期データ取得部42は、データ同期装置14から同期データEjを取得するものである。同期データ取得部42は、取得した同期データEjを変化時刻推定部45に送信する。
【0118】
変更設備情報取得部43は、条件入力装置15から変更設備情報を取得するものである。変更設備情報取得部43は、取得した変更設備情報をライン情報記憶装置13に送信する。これによりライン情報記憶装置13は、変更設備の平均無駄時間および平均無駄個数と、上記変更設備の下流側の最も近くに位置する計測設備Yjの平均無駄時間および平均無駄個数とを読み出して、変化時刻推定部45に送信する。
【0119】
変更時刻情報取得部44は、条件入力装置15から変更時刻情報を取得するものである。変更時刻情報取得部44は、取得した変更時刻情報を変化時刻推定部45に送信する。
【0120】
変化時刻推定部45は、変更設備の製造条件が変更されたことにより各計測設備Yjの計測データCjが変化する時刻である変化時刻を推定するものである。変化時刻推定部45は、推定した変化時刻よりも前の同期データを変化前の同期データとし、上記変化時刻よりも後の同期データを変化後の同期データとして比較データ作成部46に送信する。この変化時刻の推定処理について、図10を参照して説明する。
【0121】
図10は、無駄時間および無駄個数を用いて変化時刻を推定する具体例を示すものである。図10は、変化時刻の推定に関するもの以外は、図6と同様である。なお、図10の場合では、最初の加工設備X1を変更設備としている。したがって、変更設備の下流側の最も近くに位置する計測設備は、最初の計測設備Y1となる(図1を参照)。
【0122】
まず、変化時刻推定部45は、最初の加工設備X1の平均無駄時間および平均無駄個数と、最初の計測設備Y1の平均無駄時間および平均無駄個数とを、ライン情報記憶装置13から取得し、平均無駄時間および平均無駄個数の差分を算出する。この平均無駄時間および平均無駄個数の差分は、最初の加工設備X1から最初の計測設備Y1までの平均無駄時間および平均無駄個数に相当する。
【0123】
次に、変化時刻推定部45は、算出した平均無駄時間の差分を、変更時刻情報取得部44から受信した変更時刻に加算して、最初の計測設備Y1における変化時刻t1(In)を推定する。次に、推定した変化時刻t1(In)を計測データC1の計測期間に含む同期データ(図10の例では、p番目の同期データE1(p))を特定する。次に、特定した同期データE1(p)に関して、先頭の計測データC1の計測時刻から上記変化時刻までに含まれる計測データC1の個数Δn1(p,In)を算出する。図示の例では、上記個数Δn1(p,In)は3である。
【0124】
次に、変化時刻推定部45は、最初の計測設備Y1の上記同期データE1(p)に対応付けられた他の計測設備Yjの同期データEj(p)に関して、先頭から上記個数Δn1(p,In)に等しい個数Δnj(p,In)の順番に存在する計測データCjの計測時刻と、次の計測データCjの計測時刻との間に上記変化時刻tj(In)が存在すると推定する。これにより、先頭から上記個数Δnj(p,In)の順番に存在する計測データCjまでが変化前の計測データCjであり、それ以降の計測データCjが変化後の計測データCjであると推定できる。
【0125】
比較データ作成部46は、変化時刻推定部45から変化前の同期データと変化後の同期データを取得し、計測データCjの変化前後の様子を示す比較データFjを作成するものである。この比較データは、計測データCjの時系列データでもよいし、ヒストグラムなど、計測データCjの統計データでもよい。比較データ作成部46は、作成した比較データをデータ表示装置17に送信する。
【0126】
なお、変更設備よりも上流側の計測設備に関しては、製造条件の変更の影響は及ばないことが多いので、あえて比較データを作成する必要はない。また、同期データの統計量を比較データとすることもできる。しかしながら、この場合、変化前後におけるデータ変動の詳細を参照し難くなる虞がある。
【0127】
次に、データ表示装置17について図11および図12を参照して説明する。データ表示装置17は、データ収集装置12から区間データDjを、データ同期装置14から同期データEjを、データ比較装置16から比較データFjをそれぞれ受信し、受信した各種データをグラフ表示するものである。これにより、データ表示装置17に表示される各種データを現場作業員Wが参照することができる。
【0128】
データ表示装置17は、図には示していないが、液晶表示素子、プラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイやCRTなどの表示デバイスと、該表示デバイスを制御する表示コントローラとを備える構成である。また、データ表示装置17は、現場作業員Wからの指示により、上記区間データDj、同期データEj、および比較データFjのグラフ表示を切り替える切替え手段を備えることが望ましい。
【0129】
データ表示装置17が比較データFjの表示を行う具体例を図11および図12を参照して説明する。
【0130】
図11は、比較データFjとして計測データCjの時系列データを表示する場合の表示画面の一例を示している。この場合、図示のように、各計測設備Yjの変化時刻を中心として、各計測設備Yjの計測データCjを上下方向に揃えて配置されている。これにより、現場作業員Wは、各計測設備Yjの計測データCjどうしの対応関係を容易に把握することができる。また、各計測設備Yjの変化時刻を中心としているので、変更後に長時間が経過しても、現場作業員Wは変化前後の計測データCjどうしを比較することができる。
【0131】
ところで、変化時刻から時間が経過するに従って、製造条件の変更以外の要因による計測データCjへの影響が増大する。したがって、変化前後の計測データCjであって、中心に近い計測データCjどうしを比較することにより、製造条件の変更以外の要因による影響の少ない計測データCjどうしを比較することができる。
【0132】
ところで、リアルタイムに時系列データを比較する場合、過去の情報である変化前のデータは多数存在するが、未来の情報である変化後のデータは、変化直後には少数しか存在しないことが普通である。
【0133】
一方、現場作業員Wは製造条件の変更の結果を一刻も早く知ることを望んでいる。そこで、従来のデータ表示装置は、変化前の十分な量の計測データCjと、変化後の不十分な量の計測データCjとを表示していた。しかしながら、このような表示では、現場作業員Wは、量の多い変化前の計測データCjに影響を受けてしまい、変更後の状態把握を誤ることがあった。
【0134】
これに対し、本実施形態のデータ表示装置17は、図11に示されるように、変化前の計測データCjの数と、変化後の計測データCjの数を同程度として、計測データCjの時系列データの表示を行っている。これにより、変化前後の計測データCjの比較を現場作業員Wが適切に行うことができる。
【0135】
なお、図11の場合では、変化後の計測データCjが増えるにつれて、表示幅が中央から広がるようになる。これにより、変化後の計測データCjが多いか少ないかを現場作業員Wが直ちに判断でき、変化後の計測データCjの信頼性を直感的に判断できる。したがって、現場作業員Wは製造条件の変更に関して妥当な判断を下すことができる。
【0136】
ところで、上述のように、データ比較装置16は、基準となる計測設備Yj(図10では最初の計測設備Y1)の変化時刻と、各計測設備Yjの同期データEjどうしの対応付けとに基づいて、他の計測設備Yjの変化時刻を推定している。このため、上記対応付けの精度がさほど高くない場合、上記他の計測設備Yjの変化時刻が実際よりもずれている可能性が高くなる。このとき、実際には変化前の計測データCjが変化後の計測データCjとして表示されたり、或いはその反対のことが発生したりすることになり、現場作業員Wに誤った情報を提供する可能性がある。
【0137】
そこで、本実施形態のデータ表示装置17は、図11に示されるように、変化時刻nj(In)の付近に所定のマージン領域を設け、このマージン領域では計測データCjを非表示としている。これにより、現場作業員Wに誤った情報を提供することを防止できる。
【0138】
図12は、比較データFjとして計測データCjのヒストグラムを表示する場合の表示画面の一例を示している。この場合、変化前後のヒストグラムと、他の計測設備Yjのヒストグラムとを同時に比較する必要があるので、図示のように、2次元状にヒストグラムを配置している。
【0139】
なお、ヒストグラムを表示する場合でも、上述の時系列データを表示する場合と同様に、ヒストグラムの全度数を変化前後で同程度とすることが望ましく、変化時刻nj(In)の付近の計測データCjをヒストグラムの対象から外すことが望ましい。
【0140】
次に、上記構成のデータ表示システム10における処理動作を、図13を参照して説明する。図13は、データ表示システム10における処理動作の概要を示している。図示のように、まず、投入設備Sが投入する投入製品(ワーク)が所定数に到達すると(ステップS11。以下、単に「S11」と記載することがある。他のステップについても同様である。)、マーカ制御装置11は投入設備Sにマーカを投入させる(S12)。
【0141】
次に、或る計測設備Yjにマーカが到達すると(S13)、データ収集装置12は、各計測設備Yjが計測した計測データCjの時系列をマーカごとに分割して区間データDjを作成する(S14)。次に、異なる計測設備Yj間で同期すべき(対応付けるべき)区間データDjが存在するとデータ収集装置12が判断すると(S15)、データ同期装置14は、ライン情報記憶装置13からライン情報(最小無駄時間および最大無駄個数)を取得し、取得したライン情報を利用して、区間データDjから同期データEjを作成する(S16)。
【0142】
次に、現場作業員Wが、製造条件を変更しようとして(S17)、条件入力装置15にて変更時刻および変更設備が入力されると(S18)、データ比較装置16は、ライン情報記憶装置13からライン情報を取得し、取得したライン情報と同期データEjとを利用して、各計測設備Yjにおける変化時刻を推定し、推定した変化時刻前後での同期データEjを比較するための比較データを作成する(S19)。
【0143】
そして、データ表示装置17は、データ収集装置12からの区間データDj、データ同期装置14からの同期データEj、およびデータ比較装置16からの比較データFjの少なくとも1つを選択して表示する(S20)。その後、データ表示システム10における処理動作を終了する。
【0144】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0145】
例えば、上記実施形態では、マーカMは、製造ラインMLの上流端から投入しているが、製造ラインMLの中間から投入してもよい。例えば、対応付けを行いたい計測設備Yjよりも上流側であれば、任意の場所からマーカを投入できる。
【0146】
また、上記実施形態では、区間データDjに均等配置した同期データEjを作成し、各計測設備Yj間の同期データEjの対応付けを行い、無駄時間および無駄個数と相関係数とを利用して上記対応付けの調整を行っている。
【0147】
しかしながら、上記対応付けの調整は、無駄時間および無駄個数および相関係数のうちの少なくとも1つを用いて行うこともできる。
【0148】
また、マーカMを利用せずに、無駄時間、無駄個数、および相関係数のうちの少なくとも1つを用いて、同期データEjを作成し、異なる計測設備Yj間で対応付けることもできる。
【0149】
例えば、平均無駄時間および平均無駄個数を用いて、各計測設備Yj間で対応付けられた同期データEjを作成し、作成した同期データEjに関して、相関係数を用いて調整することが可能である。また、最小無駄時間および最大無駄個数を用いて、各計測設備Yj間で対応付けられる同期データEjが取りうる範囲を決定し、決定した範囲内で同期データEjの先頭をずらしながら相関係数を用いて調整することも可能である。
【0150】
さらに、マーカMを利用せずに、平均無駄時間、平均無駄個数、および相関係数のうちの少なくとも1つを用いて、異なる計測設備Yjの個々の計測データCjどうしを対応付けることもできる。
【0151】
最後に、データ表示システム10の各装置、特にデータ収集装置12、データ同期装置14、データ比較装置16、およびデータ表示装置17は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0152】
すなわち、データ表示システム10は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリなどの記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるデータ表示システム10の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記データ表示システム10に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0153】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープなどのテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスクなどの磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−Rなどの光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カードなどのカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROMなどの半導体メモリ系などを用いることができる。
【0154】
また、データ表示システム10を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網などが利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線などの有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網などの無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0155】
なお、本発明を以下のように構成してもよい。
【0156】
すなわち、本発明に係るデータ表示装置は、情報の表示を行う表示部と、或る時刻より前の一連の前データと、該時刻より後の一連の後データとに関する表示を行うように上記表示部を制御する表示制御手段とを備えるデータ表示装置であって、上記課題を解決するために、上記表示制御手段は、表示対象となる上記前データのデータ数が、表示対象となる上記後データのデータ数と同程度となるように上記表示部を制御する構成である。
【0157】
また、本発明に係るデータ表示装置の制御方法は、情報の表示を行う表示部に対し、或る時刻より前の一連の前データと、該時刻より後の一連の後データとに関する表示を行うように制御するデータ表示装置の制御方法であって、上記課題を解決するために、表示対象となる上記前データのデータ数が、表示対象となる上記後データのデータ数と同程度となるように上記表示部を制御している。
【0158】
ここで、一連の前データおよび後データとに関する表示の例としては、一連の前データおよび後データをそのまま表示することや、一連の前データおよび後データに対し統計処理をそれぞれ行って、作成された統計データを表示することなどが挙げられる。
【0159】
上記構成および方法によれば、或る時刻より前の一連の前データと、該時点より後の一連の後データとを、データ数を同程度として表示部に表示させている。これにより、表示部に表示される前データと後データとの比較を利用者が適切に行うことができる。具体的には、現場作業員が、製造条件の変更前後での比較を適切に行うことができるので、変更後の状態把握を誤認することを防止できる。
【0160】
ところで、前データと後データとに分離する上記時刻が正確に特定できない場合がある。この場合、実際には前データであるのに後データと判断されたり、或いはその反対のことが発生したりすることになる。
【0161】
例えば、或る製造設備の製造条件を変更した変更時刻と、該製造設備の下流側に位置する各計測設備が計測する計測データが変化する変化時刻との間にはタイムラグが存在する。したがって、上記変更時刻および上記タイムラグを正確に特定できれば、上記変化時刻を正確に推定することができる。しかしながら、上記タイムラグは、製造ラインにおいて不良品の抜取りや手直し、再投入が発生することにより、正確に特定することが困難な場合がある。この場合、上記変化時刻を正確に推定することが困難となる。
【0162】
上記変更時刻および上記タイムラグから推定された変化時刻が、実際の変化時刻と異なっていると、実際には変化前の計測データが変化後の計測データであると判断したり、或いはその反対のことが発生したりすることになる。その結果、現場作業員などの利用者に誤った情報を提供する虞がある。
【0163】
そこで、本発明に係るデータ表示装置では、上記表示制御手段は、上記一連の前データのうち、上記或る時刻から所定数または所定期間前までのデータを表示対象から除外すると共に、上記一連の後データのうち、上記或る時刻から所定数または所定期間後までのデータを表示対象から除外するように上記表示部を制御することが好ましい。この場合、上記或る時刻に近いデータであって、前データであるか後データであるかが明確ではないデータが表示されないので、利用者に不明確な情報を提供することを防止でき、利用者が前データと後データとの比較をより適切に行うことができる。
【0164】
本発明を、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、各計測設備が計測した計測データに基づくデータを表示するデータ表示装置に適用する場合、上記データ表示装置は、上記製造ラインに設けられた或る製造設備の製造条件が変更された場合に、該変更の行われた時刻である変更時刻を取得する変更時刻取得手段と、取得した変更時刻に基づいて、上記変更により或る計測設備の計測データが変化する前の計測データと変化した後の計測データとを判別する変化判別手段とをさらに備えており、上記表示制御手段は、上記変化前の一連の計測データを上記一連の前データとし、上記変化後の一連の計測データを上記一連の後データとして表示を行うように上記表示部を制御すればよい。この場合、現場作業員などの利用者が、製造条件の変更による計測データの変化を適切に把握することができる。
【0165】
本発明に係るデータ表示装置では、上記変化判別手段は、上記変化前の計測データと上記変化後の計測データとを、複数の上記計測設備ごとに判別しており、上記表示制御手段は、上記変化前の一連の計測データと上記変化後の一連の計測データとを、上記計測設備別に表示するように上記表示部を制御することが好ましい。この場合、上記変化前の一連の計測データと上記変化後の一連の計測データとが上記計測設備別に表示されるので、現場作業員などの利用者が、或る製造設備の製造条件の変更が製造ラインに及ぼす影響を適切に把握することができる。
【0166】
本発明に係るデータ表示装置では、上記製造条件の変更された製造設備から上記計測設備までに生じる無駄時間および無駄個数の少なくとも一方と、上記変更時刻取得手段が取得した変更時刻とを用いて、上記製造条件の変更により上記計測設備の計測データが変化する時刻である変化時刻を推定する変化時刻推定手段をさらに備えており、上記変化判別手段は、上記変化時刻推定手段が推定した変化時刻よりも前の計測データを上記変化前の計測データと判別し、上記変化時刻よりも後の計測データを上記変化後の計測データと判別することが好ましい。
【0167】
この場合、製造条件の変更された製造設備から上記計測設備までに生じる無駄時間および無駄個数の少なくとも一方を用いることにより、上記変化時刻を良好に推定することができる。したがって、上記計測設備に関する変化前の計測データと変化後の計測データとを良好に分離することができる。
【0168】
本発明に係るデータ表示装置では、或る計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合である同期データを、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け手段をさらに備えており、上記変化判別手段は、上記変化時刻を推定した計測設備である基準計測設備以外の計測設備に関して、上記基準計測設備における上記変化前の計測データを含む同期データに対応付けられた同期データに含まれる計測データを上記変化前の計測データと判別し、上記基準計測設備における上記変化後の計測データを含む同期データに対応付けられた同期データに含まれる計測データを上記変化後の計測データと判別することが好ましい。
【0169】
この場合、変化時刻を推定した基準計測設備以外の計測設備に関しても、上記基準計測設備に関して良好に分離された変化前後の計測データと、計測データの集合であって各計測設備間で対応付けられた同期データとを用いることにより、変化前の計測データと変化後の計測データとを良好に分離することができる。
【0170】
なお、製造条件を変更した製造設備と、変化時刻を推定する基準計測設備との製造ラインにおける距離が遠くなればなるほど、不確定要素が多くなって、推定した変化時刻の誤差が大きくなることが考えられる。そこで、上記基準計測設備は、上記製造条件の変更された製造設備から下流側の最も近くに位置する最近隣の上記計測設備であることが好ましい。この場合、推定した変化時刻の誤差を抑えることができる。
【0171】
本発明に係るデータ表示装置では、上記データ対応付け手段は、或る上記計測設備に関して、上記同期データを作成する同期データ作成手段と、別の上記計測設備に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成手段とを備えてもよい。
【0172】
なお、対応同期データ作成手段が同期データを作成する方法としては種々のものが考えられる。
【0173】
例えば、上記対応同期データ作成手段は、上記或る計測設備に関する上記同期データと同じ要素数を有する、上記別の計測設備に関する複数の同期データ候補を作成し、上記或る計測設備に関する同期データと、上記別の計測設備に関する同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、相関係数の絶対値が最大となる同期データ候補を特定し、これを上記別の計測設備に関する同期データとすることが挙げられる。
【0174】
また、上記対応同期データ作成手段は、上記或る計測設備と上記別の計測設備との間で生じる無駄時間および無駄個数の少なくとも一方を利用して、上記或る計測設備に関する上記同期データ内の複数の計測データにそれぞれ対応する、上記別の計測設備に関する複数の計測データを特定し、特定した複数の計測データからなる同期データを作成することが挙げられる。
【0175】
本発明に係るデータ表示装置では、上記計測設備が計測した計測データを取得するデータ取得手段と、上記製造ラインに投入されたマーカを検知するマーカ検知手段と、該マーカ検知手段が検知したマーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを上記データ取得手段から取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成する区間データ作成手段とを計測設備ごとに備えており、上記区間データ作成手段が作成した区間データを、上記複数の計測設備間で対応付ける区間データ対応付け手段を備えており、上記同期データ作成手段は、上記或る計測設備に関して、上記区間データに比べて少数の計測データの集合である同期データを作成し、上記対応同期データ作成手段は、上記別の計測設備に関して、上記区間データ対応付け手段が上記複数の計測設備間で対応付けた区間データどうしを利用して、上記同期データ作成手段が作成した同期データに対応する同期データを作成してもよい。
【0176】
この場合、マーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成し、作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付けている。マーカ間に含まれる複数の製造対象物は、多少の抜取りや継ぎ足しが行われることがあるが、全体として同じものである可能性が高い。従って、異なる計測設備間で対応付けられた区間データどうしは、良好な対応付けとなる。これにより、異なる計測設備間で対応付けられた同期データどうしも良好な対応付けを維持できる。また、区間データ内に複数の同期データを作成する場合、計測データの時間推移を把握し易くなる。
【0177】
本発明に係るデータ表示装置では、上記対応同期データ作成手段は、上記或る計測設備に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データにおいて所定の順序に位置する要素が、上記区間データにて位置する順序の、該区間データ内の要素数に対する比率である順序比を算出し、上記区間データに対応付けられた上記別の計測設備の区間データ内の要素数に上記順序比を乗算して、上記別の計測設備の区間データにおける順序を算出し、算出した順序の要素が上記所定の順序に位置するような同期データを作成してもよい。
【0178】
本発明に係るデータ表示装置では、上記製造ラインには、上記マーカを投入する投入設備が設けられており、上記製造対象物が上記製造ラインに所定数投入されるごとに上記マーカを投入するように上記投入設備を制御するマーカ投入制御手段をさらに備えることが好ましい。この場合、マーカ間の製造対象物の数をほぼ等しくすることができるので、同一計測設備の区間データどうしの比較が容易となる。
【0179】
なお、上記データ表示装置における各手段を、データ表示装置制御プログラムによりコンピュータ上で機能させることができる。さらに、上記データ表示装置制御プログラムおよび/または上記データ対応付け装置制御プログラムをコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶させることにより、任意のコンピュータ上で上記データ表示装置制御プログラムおよび/または上記データ対応付け装置制御プログラムを実行させることができる。
【0180】
本発明に係るデータ表示装置は、以上のように、或る時刻より前の一連の前データと、該時点より後の一連の後データとを、データ数を同程度として表示部に表示させているので、表示部に表示される前データと後データとの比較を利用者が適切に行うことができるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明に係るデータ対応付け装置およびデータ表示装置は、製造ライン以外にも、家電製品の制御など、種々のプロセスを監視して制御する装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明の一実施形態であるデータ表示システムの要部構成を示すブロック図である。
【図2】上記データ表示システムにおけるデータ収集装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】上記データ表示システムの最初の計測設備が計測する計測データと、2番目の計測設備が計測する計測データとを時系列順に示すグラフである。
【図4】上記データ表示システムにおけるデータ同期装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】上記データ同期装置における同期データの作成処理の具体例を示すグラフである。
【図6】上記データ同期装置において無駄時間および無駄個数を用いて同期データを調整する具体例を示すグラフである。
【図7】上記データ同期装置において、最初の計測設備に関する計測データおよび同期データと、2番目の計測設備に関する計測データおよび同期データとを時系列順に示すグラフである。
【図8】最初の計測設備の動作電流と2番目の計測設備の動作抵抗との相関関係を示すグラフである。
【図9】上記データ表示システムにおけるデータ比較装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】上記データ比較装置において、無駄時間および無駄個数を用いて変化時刻を推定する具体例を示すグラフである。
【図11】上記データ表示システムにおけるデータ表示装置が、計測データの時系列データを比較データとして表示した表示画面の一例を示す図である。
【図12】上記データ表示装置が、計測データのヒストグラムを比較データとして表示した表示画面の一例を示す図である。
【図13】上記データ表示システムにおける処理動作の概要を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0183】
10 データ表示システム(データ表示装置、データ対応付け装置)
11 マーカ制御装置(マーカ投入制御手段)
12 データ収集装置(データ対応付け装置)
13 ライン情報記憶装置(記憶部)
14 データ同期装置(データ対応付け手段、データ対応付け装置)
16 データ比較装置
17 データ表示装置(表示部、表示制御手段)
21 計測データ取得部(データ取得手段)
22 マーカ検知部(マーカ検知手段)
23 区間データ作成部(区間データ作成手段)
24 区間データ対応付け部(区間データ対応付け手段)
32 同期データ作成部(同期データ作成手段、対応同期データ作成手段、同期データ調整手段)
44 変更時刻情報取得部(変更時刻取得手段)
45 変化時刻推定部(変化判別手段、変化時刻推定手段)
46 比較データ作成部(表示制御手段)
ML 製造ライン
S 投入設備
Yj 計測設備
Cj 計測データ
Dj 区間データ
Ej 同期データ
Fj 比較データ
M マーカ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、複数の製造対象物を計測した上記計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、製品の品質を向上する取り組みが行われるとともに、各種の品質制御方法が提案されている。
【0003】
例えば、トレーサビリティを実現するために、製品の中間品や該中間品が載置される台座などに、バーコードなどの識別コードを付して管理する方法が提案されている。また、トレーサビリティを実現するために、各製造工程に投入される中間品の順番で中間品を識別する方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、識別コードを付して管理する上記方法の場合、製造コストが上昇するという問題がある。また、製造工程では不良品の抜取りや手直し、再投入が発生することが多い。このため、中間品の順番で中間品を識別する上記方法で中間品を正しく識別できない場合がある。この場合、個々の中間品に関して、第1の製造工程にて計測した計測データと、第2の製造工程にて計測した計測データとを厳密に対応付けることは困難である。
【0005】
このような場合であっても、複数の中間品からなる集合に関して、或る製造工程の計測データと別の製造工程の計測データとを大まかに対応付けて、工程間の因果関係を明らかにすることが望まれている。
【0006】
例えば、特許文献1には、紙、フィルムなどの製品品質のプロファイルを表示する表示装置が開示されている。該表示装置は、操作部から測定部に製品が到達するまでの無駄時間分ずらして、操作部の操作量の画面と、測定部の測定値の画面とを整列して表示している。
【0007】
また、特許文献2には、製造ラインで製品を製造する際の製造工期と製品数とを予測する製造管理装置が開示されている。該製造管理装置では、平均ロット到着間隔と待ち行列との長さに基づき製品の平均待ち時間を演算し、演算した平均待ち時間と平均ロット処理間隔とに基づき製品の工期を演算し、歩留により製造される製品数を演算している。
【0008】
また、特許文献3には、シート状製品の幅方向のプロファイルを測定する方法が開示されている。該方法では、一定周期で厚さを測定して保存しておき、ロータリーダイまたはピンチロールに基準点を設けて、この基準点を通過した基準信号に基づいて保存したデータを切り出し、プロファイルを演算している。また、輸送時間に相当するデータの個数だけ、切り出すデータの位値を過去側にずらすようにしている。
【0009】
また、本願発明者らは、特許文献4において、所定の品質を有する製品を製造するために製造工程の制御を行う品質制御装置を開示している。該品質制御装置では、製造工程に設けられた複数の計測機器が計測した計測データを収集し、収集した計測データを、計測した時刻または収集した時刻とともに記憶しておき、計測した時刻または収集した時刻に、上記計測機器どうしの間で生じる無駄時間を考慮することにより、上記計測機器の計測データの集合どうしを対応付けている。
【特許文献1】特開2002−138384(2002年5月14日公開)
【特許文献2】特開2003−109885(2003年4月11日公開)
【特許文献3】特開2004−347558(2004年12月9日公開)
【特許文献4】特開2005−339498(2005年12月8日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のような従来の装置では、以下に示すような問題点がある。すなわち、従来は、製造条件を変更した時の計測データの変化度合いが、現場作業員に分かりやすく表示されているとは言い難かった。
【0011】
例えば、通常、変化前の計測データは多数存在するが、変化後の計測データは変化直後には少数しか存在しない。一方、現場作業員などは製造条件の変更による影響を一刻も早く知ることを望んでいる。そこで、従来は、変化前の十分な量の計測データと、変化後の不十分な量の計測データとに関する表示を行っていた。しかしながら、このような表示では、現場作業員などは量の多い変化前の計測データに影響を受けてしまい、変更後の状態把握を誤ることがあった。
【0012】
また、自動組立工程では、不定期な設備停止、工程間のバッファなどが存在するため、工程間の無駄時間およびバッファ個数が変化する。このため、上述のような従来の装置では、工程間の計測データどうしの対応付け、および工程間の計測データの集合どうしの対応付けの精度が低下し、因果関係の解析精度が低下する結果となっていた。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、工程間の計測データどうしまたは計測データの集合どうしの対応付けが良好なデータ対応付け装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るデータ対応付け装置は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、異なる上記計測設備が計測した計測データどうしを対応付けるデータ対応付け手段を備えるデータ対応付け装置であって、上記課題を解決するために、上記異なる計測設備間で生じる無駄個数に関する情報を記憶する記憶部を備えており、上記データ対応付け手段は、上記無駄個数を利用して、上記異なる計測設備の一方が計測した計測データに対応する、上記異なる計測設備の他方が計測した計測データを特定することを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係るデータ対応付け装置の制御方法は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、異なる上記計測設備が計測した計測データどうしを対応付けるデータ対応付け装置であって、上記異なる計測設備間で生じる無駄個数に関する情報を記憶する記憶部を備えるデータ対応付け装置の制御方法であって、上記課題を解決するために、上記無駄個数を利用して、上記異なる計測設備の一方が計測した計測データに対応する、上記異なる計測設備の他方が計測した計測データを特定することにより、上記異なる計測設備が計測した計測データどうしを対応付けることを特徴としている。
【0016】
上記の構成および方法によると、無駄個数を利用して、異なる計測設備の一方が計測した計測データに対応する、異なる計測設備の他方が計測した計測データを特定している。したがって、マーカ、区間データ、および同期データを用いることなく、無駄個数のみを用いて、異なる計測設備間の計測データどうしを良好に対応付けることができる。
【0017】
本発明に係るデータ対応付け装置は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置であって、上記課題を解決するために、上記異なる計測設備の一方に関して、上記計測データの集合である同期データを作成する同期データ作成手段と、上記異なる計測設備の他方に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成手段とを備えており、上記対応同期データ作成手段は、上記他方の計測設備に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データと同じ要素数を有する複数の同期データ候補を作成し、上記一方の計測設備に関する同期データと、上記他方の計測設備に関する同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、相関係数の絶対値が最大となる同期データ候補を特定し、これを上記他方の計測設備に関する同期データとすることを特徴としている。
【0018】
また、本発明に係るデータ対応付け装置の制御方法は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置の制御方法であって、上記課題を解決するために、上記異なる計測設備の一方に関して、上記計測データの集合である同期データを作成する同期データ作成ステップと、上記異なる計測設備の他方に関して、上記同期データ作成ステップにて作成された同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成ステップとを含んでおり、上記対応同期データ作成ステップは、上記他方の計測設備に関して、上記同期データ作成ステップにて作成された同期データと同じ要素数を有する複数の同期データ候補を作成し、上記一方の計測設備に関する同期データと、上記他方の計測設備に関する同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、相関係数の絶対値が最大となる同期データ候補を特定し、これを上記他方の計測設備に関する同期データとすることを特徴としている。
【0019】
上記の構成および方法によると、一方の計測設備に関して同期データを作成し、他方の計測設備に関して複数の同期データ候補を作成する。そして、上記同期データと上記同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、相関係数の絶対値が最大となる同期データ候補を特定し、これを上記他方の計測設備に関する同期データとしている。したがって、マーカおよび区間データを用いることなく、相関係数のみを用いて、異なる計測設備間の同期データどうしを良好に対応付けることができる。
【0020】
本発明に係るデータ対応付け装置は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置であって、上記課題を解決するために、各計測設備に関して、該計測設備が計測した計測データを取得するデータ取得手段と、上記製造ラインに投入されたマーカを検知するマーカ検知手段と、該マーカ検知手段が検知したマーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを上記データ取得手段から取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成する区間データ作成手段とを備えており、上記区間データ作成手段が作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付ける区間データ対応付け手段を備えることを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係るデータ対応付け装置の制御方法は、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置の制御方法であって、各計測設備に関して、該計測設備が計測した計測データを取得するデータ取得ステップと、上記製造ラインに投入されたマーカを検知するマーカ検知ステップと、検知したマーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成する区間データ作成ステップとを含んでおり、作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付ける区間データ対応付けステップを含むことを特徴としている。
【0022】
上記の構成および方法によれば、マーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成し、作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付けている。マーカ間に含まれる複数の製造対象物は、多少の抜取りや継ぎ足しが行われることがあるが、全体として同じものである可能性が高い。従って、異なる計測設備間で対応付けられた区間データどうしは、良好な対応付けとなる。
【0023】
なお、マーカとしては、任意の物体を利用できるが、計測設備で製造対象物でないことが容易に判別可能なものが適している。また、マーカとしては、製造コストの面から、安価で繰り返し使用できるものが適しており、製造ライン上の搬送の面から、製造対象物と同一形状であるものが、運用時のトラブルが少ないので適している。また、導通しないなどの規格外の製造対象物も、マーカとして適している。この場合、検査工程でマーカを容易に発見でき、製造対象物から自動的に除去することができる。
【0024】
また、IDタグなどのような、非接触で検出可能な識別子を装着したものをマーカとして利用することもできる。しかしながら、この場合、上記識別子を読み取る読取装置を計測設備に設ける必要がある。
【0025】
本発明に係るデータ対応付け装置では、或る上記計測設備に関して、上記区間データに比べて少数の計測データの集合である同期データを作成する同期データ作成手段と、別の上記計測設備に関して、上記区間データ対応付け手段が上記複数の計測設備間で対応付けた区間データどうしを利用して、上記同期データ作成手段が作成した同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成手段とを備えてもよい。この場合、異なる計測設備間で対応付けられた同期データどうしも良好な対応付けを維持できる。
【0026】
本発明に係るデータ対応付け装置では、上記対応同期データ作成手段は、上記或る計測設備に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データにおいて所定の順序に位置する要素が、上記区間データにて位置する順序の、該区間データ内の要素数に対する比率である順序比を算出し、上記区間データに対応付けられた上記別の計測設備の区間データ内の要素数に上記順序比を乗算して、上記別の計測設備の区間データにおける順序を算出し、算出した順序の要素が上記所定の順序に位置するような同期データを作成してもよい。
【0027】
さらに、これらの同期データの作成方法を組み合わせることもできる。この場合、何れか1つの作成方法で同期データを作成し、作成した同期データを他の作成方法で調整すればよい。
【0028】
例えば、上記異なる計測設備間で生じる無駄時間および無駄個数と、上記同期データ作成手段および上記対応同期データ作成手段が作成した同期データどうしの相関係数とのうちの少なくとも1つを用いて、上記対応同期データ作成手段が作成した同期データを調整する同期データ調整手段をさらに備えることが挙げられる。
【0029】
なお、上記データ対応付け装置における各手段を、データ対応付け装置制御プログラムによりコンピュータ上で機能させることができる。さらに、上記データ対応付け装置制御プログラムをコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶させることにより、任意のコンピュータ上で上記データ対応付け装置制御プログラムを実行させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るデータ対応付け装置は、以上のように、無駄個数を利用して、異なる計測設備の一方が計測した計測データに対応する、異なる計測設備の他方が計測した計測データを特定しているので、マーカ、区間データ、および同期データを用いることなく、無駄個数のみを用いて、異なる計測設備間の計測データどうしを良好に対応付けることができるという効果を奏する。
【0031】
また、本発明に係るデータ対応付け装置は、以上のように、一方の計測設備に関する同期データと、他方の計測設備に関する同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、上記他方の計測設備に関する同期データを求めている。したがって、マーカおよび区間データを用いることなく、相関係数のみを用いて、異なる計測設備間の同期データどうしを良好に対応付けることができるという効果を奏する。
【0032】
また、本発明に係るデータ対応付け装置は、以上のように、マーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成し、作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付けているので、異なる計測設備間で対応付けられた区間データどうしは、良好な対応付けとなるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の一実施形態について、図1〜図15を参照して説明する。まず、図1を参照して本実施形態の概要について説明する。
【0034】
図1は、本実施形態のデータ表示システムの概略構成を示している。このデータ表示システム(データ表示装置、データ対応付け装置)10は、製造ラインMLに設けられた複数の計測設備Yj(jは1以上の整数)が計測した計測データを、異なる計測設備間で対応付け、対応付けられた計測データ、または該計測データに基づくデータを表示するものである。
【0035】
まず、製造ラインMLに設けられる製造設備S・Xi・Yj(iは1以上の整数)について説明する。図1に示されるように、製造ラインMLの上流端には投入設備Sが設けられ、その下流側には複数の加工設備Xiと複数の計測設備Yjとが設けられている。
【0036】
なお、添え字iは、投入設備Sを基準として、下流側に並ぶ加工設備の順番を示すものであり、複数または全体の加工設備を示す場合にはアルファベットで示す。同様に、添え字jは、投入設備Sを基準として、下流側に並ぶ計測設備の順番を示すものであり、複数または全体の計測設備を示す場合にはアルファベットで示す。
【0037】
投入設備Sは、製造ラインMLにワーク(製造対象物)を投入するものである。投入設備Sは、製造ラインMLにワークを投入する度に、投入信号を生成してマーカ制御装置11(マーカ投入制御手段)に送信する。
【0038】
本実施形態では、投入設備Sは、マーカ制御装置11からマーカ投入信号を受信すると、ワークの代わりにマーカを製造ラインMLに投入している。マーカは、計測設備Yjが計測する計測データを区分するために利用される。なお、マーカの詳細については後述する。
【0039】
加工設備Xiは、ワークの加工を行うものである。具体的には、加工設備Xiは、搬送されてきたワークを予め決められた手順で加工すると共に、必要に応じて現場作業員Wからの指示により加工条件を変更するものである。例えば、曲げ、圧力、温度などの加工条件を変更することにより、ワークの形状寸法、動作特性などの品質特性を調整することができる。
【0040】
計測設備Yjは、ワークの計測を行うものである。具体的には、計測設備Yjは、搬送されてきたワークの形状寸法、動作特性などの品質特性を計測し、計測データを計測時刻と共にデータ収集装置(データ対応付け装置)12に送信するものである。
【0041】
通常、同一計測設備にて複数の計測項目を計測することが多い。この場合、同一計測設備にてワーク毎に複数の計測データが作成されることになるが、本実施形態では、これら複数の計測データどうしが同期しており、完全に対応付けられているものとする。
【0042】
本実施形態では、計測設備Yjは、マーカが搬送されてきた場合、ワークと同様にマーカの計測を行い、計測データを計測時刻と共にデータ収集装置12に送信する。
【0043】
次に、データ表示システム10の概要について説明する。図1に示されるように、データ表示システム10は、マーカ制御装置11、データ収集装置12、ライン情報記憶装置(記憶部)13、データ同期装置(データ対応付け手段、データ対応付け装置)14、条件入力装置15、データ比較装置(データ比較手段)16、およびデータ表示装置(表示部、表示制御手段)17を備える構成である。
【0044】
データ収集装置12は、各計測設備Yjが計測した計測データを収集するものである。また、データ収集装置12は、マーカ制御装置11からの指示により投入設備Sから製造ラインMLに投入されたマーカを検知すると、マーカ間に含まれる複数の計測データの集合である区間データを作成する。
【0045】
次に、データ収集装置12は、上記マーカを利用して、異なる計測設備間の区間データどうしを対応付ける。そして、データ収集装置12は、各計測設備間で対応付けられた複数の区間データをデータ表示装置17に表示させる。これにより、現場作業員Wは、各計測設備間で対応付けられた区間データどうしを容易に比較することができる。
【0046】
データ同期装置14は、上記区間データを利用して、該区間データよりも少数の計測データの集合である同期データであって、異なる計測設備間で対応付けられた同期データを作成するものである。データ同期装置14は、各計測設備間で対応付けられた複数の同期データまたはその統計量をデータ表示装置17に表示させる。これにより、現場作業員Wは、各計測設備間で対応付けられた同期データどうしまたはその統計量どうしを容易に比較することができる。また、現場作業員Wは、同期データまたはその統計量の時間推移を容易に把握することができる。
【0047】
データ比較装置16は、現場作業員Wが条件入力装置15にて或る製造設備の製造条件の変更を指示すると、各計測設備間で対応付けられた複数の同期データであって、上記変更による変化前後の同期データまたはその統計量を比較データとして作成するものである。データ比較装置16は、作成した比較データをデータ表示装置17に表示させる。これにより、現場作業員Wは、変化前後の同期データまたはその統計量を容易に比較することができる。
【0048】
次に、データ表示システム10に含まれる各種装置11〜17の詳細について説明する。
【0049】
まず、マーカ制御装置11の詳細について説明する。マーカ制御装置11は、投入設備Sにマーカの投入を指示するものである。具体的には、マーカ制御装置11は、投入設備Sからワークの投入信号を受信することにより、ワークの投入数を計数し、所定の投入数ごとに、マーカの投入を指示するマーカ投入信号を投入設備Sに送信するものである。これにより、マーカとマーカとの間に投入されるワークの数は一定であるので、データ収集装置12がマーカを利用して作成する区間データに含まれる要素(計測データ)の数を略一定にすることができ、計測データの対応付けの精度が向上する。
【0050】
また、マーカ制御装置11は、上記マーカ投入信号をデータ収集装置12にも送信している。なお、マーカの投入間隔は、後述のデータ同期装置14にて同期データを生成し易くするために、対応付けを行う集合に含まれる計測データの数に、途中の工程で増加または減少が予想されるワークの数を加算した大きさの整数倍であることが望ましい。
【0051】
ここで、マーカについて説明する。マーカとしては、計測設備Yjでワークでないことが容易に判別可能なものが適している。例えば、計測設備Yjが電気特性を測定している場合には、電気特性で簡単に判別できるものがマーカとして適しており、計測設備Yjが寸法精度を測定している場合には、寸法精度で判別できるものがマーカとして適している。また、計測設備Yjが形状を認識している場合には、独自の形状をワークに設けたものがマーカとして適している。
【0052】
また、マーカとしては、製造コストの面から、安価で繰り返し使用できるものが適しており、製造ラインML上の搬送の面から、ワークと同一形状であるものが、運用時のトラブルが少ないので適している。また、導通しない、重い、などの規格外のワークも、マーカとして適している。この場合、検査工程でマーカを容易に発見でき、完成品から自動的に除去することができる。
【0053】
例えば、ワークが電子部品である場合、通常であれば導通する2端子を導通しないように設計された電子部品(ダミー)を、マーカとして利用することが考えられる。このとき、計測設備Yjが上記2端子の導通チェックを行うことにより、マーカか否かを判別することができる。また、検査工程でマーカを容易に発見でき、規格外として自動的に除去できるので、マーカが製品に紛れ込むことが無い。
【0054】
また、バーコード、IDタグなどのような、非接触で検出可能な識別子を装着したものをマーカとして利用することが考えられる。しかしながら、この場合、上記識別子を読み取る読取装置を計測設備Yjに設ける必要がある。
【0055】
ところで、現場作業員がマーカをロットの区切り目ごとに手動で投入することも考えられる。しかしながら、この場合、マーカの投入忘れ、投入に費やす時間のバラツキなどが発生するため、異なる計測設備Yjが計測した計測データどうしの対応付けの精度が低下することになる。また、現場作業員の作業工程数が増加するので、製造コストが上昇することになる。
【0056】
なお、通常は、数百個のワークごとにマーカを投入することが考えられる。この場合、マーカどうしの間隔が広いため、マーカどうしを区別しなくても、データどうしの対応付けが困難となることはない。しかしながら、より密に(例えば数十個)マーカを投入することが考えられ、この場合、マーカどうしを識別する識別子をマーカに設けることが望ましい。但し、ワークの代わりにマーカが投入されるので、ワークの数に対するマーカの投入数が多くなればなるほど、生産効率が低下する。
【0057】
例えば、ワーク約100個に対しマーカ1個を投入する場合、ワーク約100個に対し不良品が1個発生することに等しく、したがって、生産効率が約1%低下することになる。一方、ワーク約1000個に対しマーカ1個を投入する場合、生産効率の低下は約0.1%で済む。
【0058】
また、本実施形態では、マーカ制御装置11は、ワークの所定の投入数ごとにマーカを投入させているが、所定の期間ごとにマーカを投入させてもよいし、その他の条件に従って、またはランダムにマーカを投入させてもよい。しかしながら、この場合、上述のように、約100個、望ましくは数百個のワークが投入された後にマーカが投入されるような制約をマーカ制御装置11に設ける必要がある。
【0059】
次に、データ収集装置12について図2〜図3を参照して説明する。図2は、データ収集装置12の概略構成を示している。図示のように、データ収集装置12は、計測データ取得部(データ取得手段)21、マーカ検知部(マーカ検知手段)22、区間データ作成部(区間データ作成手段)23、および区間データ対応付け部(区間データ対応付け手段)24を備える構成である。なお、計測データ取得部21、マーカ検知部22、および区間データ作成部23は、計測設備Yjごとに設けられる。
【0060】
計測データ取得部21は、該当する計測設備Yjが計測した計測データCjを取得するものである。計測データ取得部21は、取得した計測データCjをマーカ検知部22および区間データ作成部23に送信する。
【0061】
マーカ検知部22は、計測データ取得部21から受信した計測データCjからマーカを検知するものである。マーカ検知部22は、マーカを検知した旨を区間データ作成部23に通知する。マーカの検知は、例えば受信した計測データが規格値から外れていることにより行うことができる。
【0062】
また、マーカ検知部22は、マーカ制御装置11からマーカ投入信号を受信し、受信したマーカ投入信号を利用して、該当するマーカが到達したか否かをチェックしている。これにより、ワークをマーカと誤認識したり、マーカをワークと誤認識したりすることを防止できる。
【0063】
なお、マーカ検知部22は、マーカ制御装置11からマーカ投入信号を受信する代わりに、上流側に隣合う計測設備用のマーカ検知部22から、マーカを検知したことを示すマーカ検知信号を受信し、受信したマーカ検知信号を利用して、該当するマーカが到達したか否かをチェックしてもよい。この場合、計測設備Yjの設置順序に従って、該当するマーカが到達したか否かをチェックすることができる。さらに、最後の計測設備用のマーカ検知部22は、上記マーカ検知信号をマーカ制御装置11に送信してもよい。この場合、マーカ制御装置11は、或るマーカが全ての計測設備Yjを通過したことを検知することができ、その後に次のマーカを投入することができる。
【0064】
区間データ作成部23は、マーカ検知部22が検知したマーカ間に含まれる複数の計測データの集合である区間データを作成するものである。区間データ作成部23は、作成した区間データを区間データ対応付け部24に送信する。
【0065】
なお、マーカの検知は計測設備Yjが行ってもよい。この場合、マーカ検知部22は計測設備Yjに設ければよく、計測設備Yjは、マーカを検知すると、マーカを示す計測データをデータ収集装置12に送信すればよい。また、データ収集装置12の区間データ作成部23は、マーカを示す計測データを取得すると、上記区間データを作成すればよい。
【0066】
区間データ対応付け部24は、各計測設備Yjに対応する区間データ作成部23から受信した区間データどうしを対応付けるものである。区間データ対応付け部24は、各計測設備Yj間で対応付けられた複数の区間データを、データ同期装置14およびデータ表示装置17に送信する。
【0067】
この区間データどうしの対応付けの具体例に関して、図3を参照して説明する。図3は、最初の計測設備Y1が計測する動作電流の計測データC1と、2番目の計測設備Y2が計測する外形寸法の計測データC2とを時系列順に示すものである。図中の矢印は、データ収集装置12がマーカMを検知した時点を示している。
【0068】
図3に示されるように、最初の計測設備Y1がマーカMを検知して暫く後に、下流側にある2番目の計測設備Y2がマーカMを検知することになる。マーカM間に含まれるワークは、同じものである可能性が高い。従って、最初の計測設備Y1におけるk番目のマーカM(k)と(k+1)番目のマーカM(k+1)との間の区間データD1(k)は、2番目の計測設備Y2における上記マーカM(k)・M(k+1)間の区間データD2(k)と良好に対応付けることができる。
【0069】
次に、ライン情報記憶装置13について説明する。ライン情報記憶装置13は、製造ラインMLに関する各種情報を記憶するものである。本実施形態では、ライン情報記憶装置13は、各製造設備S・Xi・Yjの無駄時間および無駄個数を記憶している。
【0070】
ここで、無駄時間とは、或る製造設備に関して、或るワークが、上流側に隣合う製造設備にて処理されてから、当該製造設備にて処理されるまでに費やす時間をいう。この無駄時間の最小値である最小無駄時間は、如何に効率的に処理を行おうとも、製造設備の間で必ず費やされる時間となる。すなわち、上流側に隣合う製造設備にて処理されてから最小無駄時間が経過するよりも前に当該製造設備にてワークが処理されることは無い。
【0071】
一方、無駄個数とは、或る製造設備に関して、処理前のワークを蓄積している個数をいう。通常の製造設備では、処理前のワークが蓄積されすぎて製造ラインMLから溢れ出すことを防止するため、無駄個数が閾値を超えると、上流側に隣合う製造設備の停止を指示する。この閾値が無駄個数として取りうる最大値であるため、最大無駄個数と呼ばれている。すなわち、隣合う製造設備どうしの間に存在するワークまたはマーカの個数は、最大無駄個数を超えることは無い。
【0072】
したがって、無駄時間および無駄個数は、計測データの集合を異なる計測設備Yj間で対応付ける場合に、対応付けの精度を向上させるための新たな条件として利用することができる。
【0073】
本実施形態では、ライン情報記憶装置13が記憶する各製造設備S・Xi・Yjの無駄時間および無駄個数は、自製造設備の無駄時間および無駄個数と、自製造設備よりも上流側に設けられた全ての製造設備の無駄時間および無駄個数とをそれぞれ積算したものとしている。この場合、異なる計測設備Yj間の無駄時間および無駄個数は、下流側の計測設備の無駄時間および無駄個数から、上流側の計測設備の無駄時間および無駄個数を減算することにより求めることができる。
【0074】
なお、ライン情報記憶装置13は、理論上は、図1に示されるように、上記無駄時間として最小無駄時間Δt(xi)・Δt(yi)を記憶し、上記無駄個数として最大無駄個数Δn(xi)・Δn(yi)を記憶することが望ましい。しかしながら、これらを使用しても上記対応付けの条件が緩い場合には、複数の計測設備Yjにおける無駄時間および無駄個数の平均値をそれぞれ上記無駄時間および無駄個数として使用してもよい。
【0075】
次に、データ同期装置14について、図4〜図8を参照して説明する。図4は、データ同期装置14の概略構成を示している。図示のように、データ同期装置14は、区間データ取得部31、同期データ作成部(同期データ作成手段、対応同期データ作成手段、同期データ調整手段)32、および同期データ送信部33を備える構成である。
【0076】
区間データ取得部31は、各計測設備Yj間で対応付けられた区間データ{Dj(k)}を、データ収集装置12から取得するものである。区間データ取得部31は、取得した区間データ{Dj(k)}を同期データ作成部32に送信する。
【0077】
同期データ作成部32は、区間データ取得部31からの区間データ{Dj(k)}を利用して、区間データDjよりも少数の計測データCjの集合である同期データであって、異なる計測設備Yj間で対応付けられた同期データ{Ej(k)}を作成するものである。同期データ送信部33は、作成した上記同期データ{Ej(k)}を同期データ送信部33に送信する。
【0078】
同期データEjを作成する理由は下記の通りである。すなわち、上述のように、マーカMの投入による生産効率の低下を防止するため、マーカは、通常、数百個のワークごとに投入される。この場合、1つの区間データDjに含まれる計測データCjの数も数百個となる。一方、本実施形態では、複数の計測データCjを含む集合の統計量を算出し、その推移を調べることにより製造工程における変化を判断することになる。このため、区間データDjに含まれる計測データCjの数が多いと、製造工程における変化を見逃し易くなる。そこで、本実施形態では、同期データ作成部32は、上述の同期データを作成している。なお、同期データの作成の詳細は後述する。
【0079】
同期データ送信部33は、同期データ作成部32からの同期データ{Ej(k)}をデータ比較装置16およびデータ表示装置17に送信するものである。なお、同期データ{Ej(k)}を分かり易く表示するために、データ同期装置14は、同期データEj(k)に含まれる計測データCjから、例えば平均値、標準偏差、平均±(3×標準偏差)などの統計量を算出して、データ表示装置17に送信することが望ましい。
【0080】
上記同期データEj(k)の作成は以下のように行われる。すなわち、データ同期装置14は、まず、最初の計測設備Y1が計測した複数の計測データに関して、時系列順の所定数の計測データからなる同期データを作成し、これを所定数だけずらしながら、次々と同期データを作成する。
【0081】
次に、データ同期装置14は、最初の計測設備Y1に関して作成された同期データに対応する同期データを2番目の計測設備Y2に関して作成する。そして、この作成処理を他の計測設備Yjに関して繰り返すことにより、異なる計測設備Yj間で対応する同期データが作成される。
【0082】
本実施形態では、上記同期データを下記の方法で作成している。すなわち、まず、最初の計測設備Y1の或る同期データに関して、全体の計測データにおける所定位置に存在する計測データが、区間データにおける全計測データの個数に対し、何番目に位置するかを示す順序比を算出する。次に、2番目の計測設備Y2における対応する区間データに関して、算出した個数比に対応する計測データを上記所定位置に含む同期データを作成する。そして、この同期データの作成処理を、最初の計測設備Y1の全同期データに関して繰り返す。なお、上記所定位置の例としては、全体の計測データにおける先頭、真ん中、および最後尾が挙げられ、実施例では真ん中としている。
【0083】
図5は、同期データ作成部32が行う上記同期データの作成処理の具体例を示している。図示において、横軸は、或る時点(例えば製造開始時点)から計測設備Y2に到達したマーカMおよびワークの順序数njを示している。また、矢印は、データ収集装置12がマーカMを検知した時点を示しており、破線の範囲は1つの同期データEを示している。また、一点鎖線は、最初の計測設備Y1と2番目の計測設備Y2との間で対応するマーカMを示している。また、二点差線は、最初の計測設備Y1と2番目の計測設備Y2との間で対応する同期データE1・E2を示している。
【0084】
まず、同期データ作成部32は、最初の計測設備Y1において、最初のマーカM(1)を検知した直後のL個の計測データC1からなる同期データを、最初の同期データE1(1)として作成し、これをL/2個の計測データC1をずらしながら、次々と同期データE1を作成する。これにより、図5に示されるように、最初の計測設備Y1に関する複数の同期データ…E1(p)・E1(p+1)…(但し、pは1以上の整数)が作成される。なお、図示のように、同期データE1は、隣合う同期データE1と一部が重複しても良い。
【0085】
次に、同期データ作成部32は、2番目の計測設備Y2におけるp番目の同期データE2(p)の先頭の順序数n2(p)を次式(1)を用いて算出する。
nj+1(p)=Tj+1(k)×(nj(k)−nj(p))−(1−Tj+1(k))×L/2+nj+1(k) ・・・(1)。
【0086】
ここで、nj(k)は、j番目の計測設備Yjにおけるk番目のマーカM(k)の上記順序数であり、nj(p)は、j番目の計測設備Yjにおけるp番目の同期データEj(p)の先頭の上記順序数である。また、Tj+1(k)は、j番目の計測設備Yjにおけるk番目および(k+1)番目のマーカM(k)・M(k+1)間のワーク(計測データ)の個数に対する、(j+1)番目の計測設備Yj+1におけるk番目および(k+1)番目のマーカM(k)・M(k+1)間のワーク(計測データ)の個数の比率であり、次式(2)で表される。
Tj+1(k)=(nj+1(k+1)−nj+1(k))/(nj(k+1)−nj(k)) ・・・(2)。
【0087】
そして、上式(1)を用いて算出された先頭の順序数n2(p)からL個の計測データC2からなるp番目の同期データE2(p)が作成される。
【0088】
ところで、図5の例では、k番目のマーカM(k)と(k+1)番目のマーカM(k+1)との間のワークは、最初の計測設備Y1から2番目の計測設備Y2に到達するまでに、継ぎ足しにより増加している。このような場合でも、2番目の計測設備Y2における隣合う同期データE2は、上記式(1)により、先頭の順序数n2どうしの間隔が広がることになる。
【0089】
一方、(k+1)番目のマーカM(k+1)と(k+2)番目のマーカM(k+2)との間のワークは、最初の計測設備Y1から2番目の計測設備Y2に到達するまでに、抜き取りにより減少している。このような場合でも、2番目の計測設備Y2における隣合う同期データE2は、上記式(1)により、先頭の順序数n2どうしの間隔が狭くなる。したがって、異なる計測設備Yj間での同期データEの対応付けを精度良く行うことができる。
【0090】
なお、図5に示されるような同期データEjの作成方法は、マーカM間に含まれる計測データCjの個数が、同期データEjに含まれる計測データCjの個数の約10〜30倍程度であって、途中の抜取りおよび継ぎ足しが比較的均一に行われるような製造ラインMLに好適である。この場合、区間データDjの対応付けの精度が良好であるので、区間データDjに含まれる計測データCjの個数で均等配置した同期データEjの対応付けの精度も良好なモノとなる。
【0091】
さらに、本実施形態では、異なる計測設備Yj間で対応付けられた同期データEjに対し、ライン情報記憶装置13に記憶された最小無駄時間および最大無駄個数を利用して調整を行っている。これにより、上式(1)を利用して算出した同期データEjの先頭n2(p)を調整できる。したがって、異なる計測設備Yj間での同期データEの対応付けを精度良く行うことができる。
【0092】
図6は、無駄時間および無駄個数を用いて同期データEjを調整する具体例を示すものである。図6は、図5に比べて、特にp番目の同期データEj(p)を拡大して示している。図示において、横軸は時刻を示しており、×印は、ワークの計測データCjを計測した計測時刻を示している。
【0093】
図6に示されるように、最初の計測設備Y1に関するp番目の同期データE1(p)における先頭の計測時刻t1(p,1)と、2番目の計測設備Y2に関するp番目の同期データE2(p)における先頭の計測時刻t2(p,1)との差Δt2(p,1)が、2番目の計測設備Y2に関するp番目の同期データE2(p)における先頭の無駄時間となる。
【0094】
したがって、同期データ作成部32は、上記差Δt2(p,1)が次式を満たすか否かを判断する。
Δt(yj+1)−Δt(yj)≦Δtj+1(p,q) ・・・(3)。
ここで、Δt(yj)は、j番目の計測設備Yjにおける最小無駄時間であり、Δtj(p,q)はj番目の計測設備Yjに関するp番目の同期データEj(p)におけるq番目の計測データCjの無駄時間である。
【0095】
もし、上式(3)を満たさない場合、最初の計測設備Y1が時刻t1(p,1)に計測した計測データC1は、2番目の計測設備Y2が時刻t2(p,1)に計測した計測データC2に対応するのでは無く、時刻t2(p,1)より後に計測した計測データC2に対応することになる。従って、2番目の計測設備Y2に関するp番目の同期データE2(p)を右へずらせばよいことが理解できる。
【0096】
また、図6に示されるように、上記差(無駄時間)Δt2(p,1)の間に含まれる計測データC2の個数Δn2(p,1)が、無駄個数となる。図示の例では、Δt2(p,1)の間に計測データC2を1個含むので、Δn2(p,1)=1となる。また、Δt2(p,2)の間に計測データC2を含まないので、Δn2(p,2)=0となる。
【0097】
したがって、同期データ作成部32は、上記差Δn2(p,1)が次式を満たすか否かを判断する。
0≦Δnj+1(p,q)≦Δn(yj+1)−Δn(yj) ・・・(4)。
ここで、Δn(yj)は、j番目の計測設備Yjにおける最大無駄個数であり、Δnj(p,q)はj番目の計測設備Yjに関するp番目の同期データEj(p)におけるq番目の計測データCjの無駄個数である。
【0098】
もし、上式(4)を満たさない場合、最初の計測設備Y1が時刻t1(p,1)に計測した計測データC1は、2番目の計測設備Y2が時刻t2(p,1)に計測した計測データC2に対応するのでは無く、時刻t2(p,1)より前に計測した計測データC2に対応することになる。従って、2番目の計測設備Y2に関するp番目の同期データE2(p)を左へずらせばよいことが理解できる。
【0099】
なお、同期データEj内の中間または最後の計測データCjについても同様に実行しても良い。さらに、同期データEj内の全ての計測データCjについて同様に実行しても良い。この場合、同期データEj内の個々の計測データCjを、異なる計測設備Yj間で対応付けることができる。
【0100】
また、最小無駄時間および最大無駄個数の代わりに、平均無駄時間および平均無駄個数を利用することもできる。この場合、対応付けの精度がさらに向上する。
【0101】
また、上述のような無駄時間を利用する方法は、同期データEjに含まれる計測データCjの個数に比べて、各製造設備間のバッファが比較的多いが、各製造設備の稼働率が高いために長時間停止がほとんど発生しないような製造ラインMLに好適である。この場合、製造設備間の無駄時間が最小無駄時間で規定できるので、対応付けの精度が向上する。
【0102】
また、上述のような無駄個数を利用する方法は、同期データEjに含まれる計測データCjの個数に比べて、各製造設備間のバッファがさほど多くないが、長時間の停止が頻繁に発生するような製造ラインMLに好適である。この場合、長時間停止した製造設備の無駄個数が最大無駄個数で規定されるので、対応付けの精度が向上する。
【0103】
ところで、異なる計測設備Yjの計測項目の中には、同じものが存在したり、例えば動作電流および動作抵抗のように相関関係が存在したりすることがある。このような関連性を有する計測項目どうしの計測データCjは、関連性を有して変化したりすることが多い。
【0104】
そこで、本実施形態では、同期データ作成部32は、異なる計測設備Yjにおいて関連性を有する計測項目どうしを利用して、同期データEjの対応付けが適切であるか否かを判断している。上記対応付けが不適切である場合、上記対応付けが適切となるように、同期データEjを過去方向または現在方向にずらせばよい。これにより、上記対応付けの精度を向上させることができる。
【0105】
上記計測項目どうしの関連性について、図7および図8を参照して具体的に説明する。図7は、最初の計測設備Y1に関する計測データC1と同期データE1と、2番目の計測設備Y2に関する計測データC2と同期データE2とを時系列順に示すものである。
【0106】
図7では、最初の計測設備Y1が計測する計測データC1として、バネ定数および動作電流の計測データC1(1)・C1(2)を示しており、2番目の計測設備Y2が計測する計測データC2として、動作抵抗および外形寸法の計測データC2(1)・C2(2)を示している。図示の場合で、定電圧の電子部品を製造しているケースを想定すると、最初の計測設備Y1の動作電流と2番目の計測設備Y2の動作抵抗とは、オームの法則により負の相関が生じていることが予想される。
【0107】
図8は、最初の計測設備Y1の動作電流と2番目の計測設備Y2の動作抵抗との相関関係を示すグラフである。図示のグラフでは、上記動作電流の同期データE1(2)の平均計測値と、上記動作抵抗の対応する同期データE2(1)の平均計測値とを集合毎にプロットしている。図8を参照すると、上記動作電流と上記動作抵抗との間には負の相関関係があることが理解できる。
【0108】
なお、同様の品質のワークを同じ計測設備Yjで計測している以上、上記動作電流および上記動作抵抗はさほど変化しないのが通常である。したがって、図示のグラフは、特定の領域を拡大して示しており、上記動作電流と上記動作抵抗との関係を示す反比例の曲線は、直線状となっている。
【0109】
また、図8を参照すると、上記動作電流の同期データE1(2)の平均計測値と、上記動作抵抗の対応する同期データE2(1)の平均計測値とが、図示の破線で囲まれた範囲から外れている場合には、同期データE1・E2どうしの対応付けが不適切であると判断できることが理解できる。なお、計測項目どうしに相関関係があるか否かは、相関係数を求めることにより判断できる。なお、相関係数を求める式は周知であるので、その記載を省略する。
【0110】
したがって、同期データ作成部32は、具体的には、異なる計測設備Yjにおいて関連性を有する計測項目どうしと、該計測項目どうしの間での相関係数の範囲とを予め記憶しておき、マーカM間に含まれる上記計測項目どうしの同期データEjの平均計測値に関して、相関係数を算出し、算出した相関係数が上記範囲から外れている場合、同期データEjどうしの対応付けが不適切であると判断することになる。この場合、同期データEjの平均計測値を利用して上記対応付けの適切性を判断するので、途中でワークの抜取りおよび継ぎ足しが発生しても、上記平均計測値への影響が低く、したがって、上記適切性の判断への影響を抑えることができる。
【0111】
このように、同期データ作成部32は、計測項目の相関関係を利用して、同期データEjの対応付けの適切性を判断している。逆に言えば、同期データEjの対応付けが適切であれば、他の計測項目どうしの相関関係を求めることが可能であると考えられる。図7の例では、電気特性である動作電流と動作抵抗との相関関係を利用しているが、適切に対応付けられた同期データEjを利用して、機構特性であるバネ定数と外形寸法との相関関係を求めることができる。これにより、バネ定数と外形寸法との間に、負の相関関係が存在することが新たに示唆される。
【0112】
なお、上述のような相関関数を用いた調整は、マーカM間に含まれる計測データの計測値が変化する場合に好適である。したがって、同期データEj内の計測データCjの個数に対して、マーカM間に含まれる計測データの個数が多い場合(約30〜100倍程度)に好適である。
【0113】
次に、条件入力装置15について説明する。条件入力装置15は、製造設備の製造条件を変更するために、現場作業員Wから製造設備が選択され、新たな製造条件が入力されるものである。条件入力装置15は、選択された製造設備に対し、入力された製造条件を示す製造条件データを送信する。これにより、製造条件データを受信した製造設備の製造条件が変更される。以下では、製造条件が変更された製造設備を「変更設備」と称する。
【0114】
条件入力装置15は、現場作業員Wからの入力を受け付ける入力デバイスを備えている。入力デバイスの例としては、キーボード、テンキー、マウスなどのポインティングデバイス、およびタッチパネルが挙げられる。また、製造条件をバーコードで入力する場合は、バーコードリーダを条件入力装置15としてもよい。
【0115】
本実施形態では、条件入力装置15は、現場作業員Wが製造条件を入力した時刻を製造条件の変更時刻として取得し、取得した変更時刻と、現場作業員Wが選択した変更設備を示す変更設備情報とをデータ比較装置16に送信する。なお、変更設備が、製造条件を変更した時刻を示す変更時刻と、自設備を示す変更設備情報とをデータ比較装置16に送信してもよい。
【0116】
次に、データ比較装置16について、図9および図10を参照して説明する。図9は、データ比較装置16の概略構成を示している。図示のように、データ比較装置16は、同期データ取得部42、変更設備情報取得部43、変更時刻情報取得部(変更時刻取得手段)44、変化時刻推定部(変化判別手段、変化時刻推定手段)45、および比較データ作成部(表示制御手段)46を備える構成である。
【0117】
同期データ取得部42は、データ同期装置14から同期データEjを取得するものである。同期データ取得部42は、取得した同期データEjを変化時刻推定部45に送信する。
【0118】
変更設備情報取得部43は、条件入力装置15から変更設備情報を取得するものである。変更設備情報取得部43は、取得した変更設備情報をライン情報記憶装置13に送信する。これによりライン情報記憶装置13は、変更設備の平均無駄時間および平均無駄個数と、上記変更設備の下流側の最も近くに位置する計測設備Yjの平均無駄時間および平均無駄個数とを読み出して、変化時刻推定部45に送信する。
【0119】
変更時刻情報取得部44は、条件入力装置15から変更時刻情報を取得するものである。変更時刻情報取得部44は、取得した変更時刻情報を変化時刻推定部45に送信する。
【0120】
変化時刻推定部45は、変更設備の製造条件が変更されたことにより各計測設備Yjの計測データCjが変化する時刻である変化時刻を推定するものである。変化時刻推定部45は、推定した変化時刻よりも前の同期データを変化前の同期データとし、上記変化時刻よりも後の同期データを変化後の同期データとして比較データ作成部46に送信する。この変化時刻の推定処理について、図10を参照して説明する。
【0121】
図10は、無駄時間および無駄個数を用いて変化時刻を推定する具体例を示すものである。図10は、変化時刻の推定に関するもの以外は、図6と同様である。なお、図10の場合では、最初の加工設備X1を変更設備としている。したがって、変更設備の下流側の最も近くに位置する計測設備は、最初の計測設備Y1となる(図1を参照)。
【0122】
まず、変化時刻推定部45は、最初の加工設備X1の平均無駄時間および平均無駄個数と、最初の計測設備Y1の平均無駄時間および平均無駄個数とを、ライン情報記憶装置13から取得し、平均無駄時間および平均無駄個数の差分を算出する。この平均無駄時間および平均無駄個数の差分は、最初の加工設備X1から最初の計測設備Y1までの平均無駄時間および平均無駄個数に相当する。
【0123】
次に、変化時刻推定部45は、算出した平均無駄時間の差分を、変更時刻情報取得部44から受信した変更時刻に加算して、最初の計測設備Y1における変化時刻t1(In)を推定する。次に、推定した変化時刻t1(In)を計測データC1の計測期間に含む同期データ(図10の例では、p番目の同期データE1(p))を特定する。次に、特定した同期データE1(p)に関して、先頭の計測データC1の計測時刻から上記変化時刻までに含まれる計測データC1の個数Δn1(p,In)を算出する。図示の例では、上記個数Δn1(p,In)は3である。
【0124】
次に、変化時刻推定部45は、最初の計測設備Y1の上記同期データE1(p)に対応付けられた他の計測設備Yjの同期データEj(p)に関して、先頭から上記個数Δn1(p,In)に等しい個数Δnj(p,In)の順番に存在する計測データCjの計測時刻と、次の計測データCjの計測時刻との間に上記変化時刻tj(In)が存在すると推定する。これにより、先頭から上記個数Δnj(p,In)の順番に存在する計測データCjまでが変化前の計測データCjであり、それ以降の計測データCjが変化後の計測データCjであると推定できる。
【0125】
比較データ作成部46は、変化時刻推定部45から変化前の同期データと変化後の同期データを取得し、計測データCjの変化前後の様子を示す比較データFjを作成するものである。この比較データは、計測データCjの時系列データでもよいし、ヒストグラムなど、計測データCjの統計データでもよい。比較データ作成部46は、作成した比較データをデータ表示装置17に送信する。
【0126】
なお、変更設備よりも上流側の計測設備に関しては、製造条件の変更の影響は及ばないことが多いので、あえて比較データを作成する必要はない。また、同期データの統計量を比較データとすることもできる。しかしながら、この場合、変化前後におけるデータ変動の詳細を参照し難くなる虞がある。
【0127】
次に、データ表示装置17について図11および図12を参照して説明する。データ表示装置17は、データ収集装置12から区間データDjを、データ同期装置14から同期データEjを、データ比較装置16から比較データFjをそれぞれ受信し、受信した各種データをグラフ表示するものである。これにより、データ表示装置17に表示される各種データを現場作業員Wが参照することができる。
【0128】
データ表示装置17は、図には示していないが、液晶表示素子、プラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイやCRTなどの表示デバイスと、該表示デバイスを制御する表示コントローラとを備える構成である。また、データ表示装置17は、現場作業員Wからの指示により、上記区間データDj、同期データEj、および比較データFjのグラフ表示を切り替える切替え手段を備えることが望ましい。
【0129】
データ表示装置17が比較データFjの表示を行う具体例を図11および図12を参照して説明する。
【0130】
図11は、比較データFjとして計測データCjの時系列データを表示する場合の表示画面の一例を示している。この場合、図示のように、各計測設備Yjの変化時刻を中心として、各計測設備Yjの計測データCjを上下方向に揃えて配置されている。これにより、現場作業員Wは、各計測設備Yjの計測データCjどうしの対応関係を容易に把握することができる。また、各計測設備Yjの変化時刻を中心としているので、変更後に長時間が経過しても、現場作業員Wは変化前後の計測データCjどうしを比較することができる。
【0131】
ところで、変化時刻から時間が経過するに従って、製造条件の変更以外の要因による計測データCjへの影響が増大する。したがって、変化前後の計測データCjであって、中心に近い計測データCjどうしを比較することにより、製造条件の変更以外の要因による影響の少ない計測データCjどうしを比較することができる。
【0132】
ところで、リアルタイムに時系列データを比較する場合、過去の情報である変化前のデータは多数存在するが、未来の情報である変化後のデータは、変化直後には少数しか存在しないことが普通である。
【0133】
一方、現場作業員Wは製造条件の変更の結果を一刻も早く知ることを望んでいる。そこで、従来のデータ表示装置は、変化前の十分な量の計測データCjと、変化後の不十分な量の計測データCjとを表示していた。しかしながら、このような表示では、現場作業員Wは、量の多い変化前の計測データCjに影響を受けてしまい、変更後の状態把握を誤ることがあった。
【0134】
これに対し、本実施形態のデータ表示装置17は、図11に示されるように、変化前の計測データCjの数と、変化後の計測データCjの数を同程度として、計測データCjの時系列データの表示を行っている。これにより、変化前後の計測データCjの比較を現場作業員Wが適切に行うことができる。
【0135】
なお、図11の場合では、変化後の計測データCjが増えるにつれて、表示幅が中央から広がるようになる。これにより、変化後の計測データCjが多いか少ないかを現場作業員Wが直ちに判断でき、変化後の計測データCjの信頼性を直感的に判断できる。したがって、現場作業員Wは製造条件の変更に関して妥当な判断を下すことができる。
【0136】
ところで、上述のように、データ比較装置16は、基準となる計測設備Yj(図10では最初の計測設備Y1)の変化時刻と、各計測設備Yjの同期データEjどうしの対応付けとに基づいて、他の計測設備Yjの変化時刻を推定している。このため、上記対応付けの精度がさほど高くない場合、上記他の計測設備Yjの変化時刻が実際よりもずれている可能性が高くなる。このとき、実際には変化前の計測データCjが変化後の計測データCjとして表示されたり、或いはその反対のことが発生したりすることになり、現場作業員Wに誤った情報を提供する可能性がある。
【0137】
そこで、本実施形態のデータ表示装置17は、図11に示されるように、変化時刻nj(In)の付近に所定のマージン領域を設け、このマージン領域では計測データCjを非表示としている。これにより、現場作業員Wに誤った情報を提供することを防止できる。
【0138】
図12は、比較データFjとして計測データCjのヒストグラムを表示する場合の表示画面の一例を示している。この場合、変化前後のヒストグラムと、他の計測設備Yjのヒストグラムとを同時に比較する必要があるので、図示のように、2次元状にヒストグラムを配置している。
【0139】
なお、ヒストグラムを表示する場合でも、上述の時系列データを表示する場合と同様に、ヒストグラムの全度数を変化前後で同程度とすることが望ましく、変化時刻nj(In)の付近の計測データCjをヒストグラムの対象から外すことが望ましい。
【0140】
次に、上記構成のデータ表示システム10における処理動作を、図13を参照して説明する。図13は、データ表示システム10における処理動作の概要を示している。図示のように、まず、投入設備Sが投入する投入製品(ワーク)が所定数に到達すると(ステップS11。以下、単に「S11」と記載することがある。他のステップについても同様である。)、マーカ制御装置11は投入設備Sにマーカを投入させる(S12)。
【0141】
次に、或る計測設備Yjにマーカが到達すると(S13)、データ収集装置12は、各計測設備Yjが計測した計測データCjの時系列をマーカごとに分割して区間データDjを作成する(S14)。次に、異なる計測設備Yj間で同期すべき(対応付けるべき)区間データDjが存在するとデータ収集装置12が判断すると(S15)、データ同期装置14は、ライン情報記憶装置13からライン情報(最小無駄時間および最大無駄個数)を取得し、取得したライン情報を利用して、区間データDjから同期データEjを作成する(S16)。
【0142】
次に、現場作業員Wが、製造条件を変更しようとして(S17)、条件入力装置15にて変更時刻および変更設備が入力されると(S18)、データ比較装置16は、ライン情報記憶装置13からライン情報を取得し、取得したライン情報と同期データEjとを利用して、各計測設備Yjにおける変化時刻を推定し、推定した変化時刻前後での同期データEjを比較するための比較データを作成する(S19)。
【0143】
そして、データ表示装置17は、データ収集装置12からの区間データDj、データ同期装置14からの同期データEj、およびデータ比較装置16からの比較データFjの少なくとも1つを選択して表示する(S20)。その後、データ表示システム10における処理動作を終了する。
【0144】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0145】
例えば、上記実施形態では、マーカMは、製造ラインMLの上流端から投入しているが、製造ラインMLの中間から投入してもよい。例えば、対応付けを行いたい計測設備Yjよりも上流側であれば、任意の場所からマーカを投入できる。
【0146】
また、上記実施形態では、区間データDjに均等配置した同期データEjを作成し、各計測設備Yj間の同期データEjの対応付けを行い、無駄時間および無駄個数と相関係数とを利用して上記対応付けの調整を行っている。
【0147】
しかしながら、上記対応付けの調整は、無駄時間および無駄個数および相関係数のうちの少なくとも1つを用いて行うこともできる。
【0148】
また、マーカMを利用せずに、無駄時間、無駄個数、および相関係数のうちの少なくとも1つを用いて、同期データEjを作成し、異なる計測設備Yj間で対応付けることもできる。
【0149】
例えば、平均無駄時間および平均無駄個数を用いて、各計測設備Yj間で対応付けられた同期データEjを作成し、作成した同期データEjに関して、相関係数を用いて調整することが可能である。また、最小無駄時間および最大無駄個数を用いて、各計測設備Yj間で対応付けられる同期データEjが取りうる範囲を決定し、決定した範囲内で同期データEjの先頭をずらしながら相関係数を用いて調整することも可能である。
【0150】
さらに、マーカMを利用せずに、平均無駄時間、平均無駄個数、および相関係数のうちの少なくとも1つを用いて、異なる計測設備Yjの個々の計測データCjどうしを対応付けることもできる。
【0151】
最後に、データ表示システム10の各装置、特にデータ収集装置12、データ同期装置14、データ比較装置16、およびデータ表示装置17は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0152】
すなわち、データ表示システム10は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリなどの記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるデータ表示システム10の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記データ表示システム10に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0153】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープなどのテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスクなどの磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−Rなどの光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カードなどのカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROMなどの半導体メモリ系などを用いることができる。
【0154】
また、データ表示システム10を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網などが利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線などの有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網などの無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0155】
なお、本発明を以下のように構成してもよい。
【0156】
すなわち、本発明に係るデータ表示装置は、情報の表示を行う表示部と、或る時刻より前の一連の前データと、該時刻より後の一連の後データとに関する表示を行うように上記表示部を制御する表示制御手段とを備えるデータ表示装置であって、上記課題を解決するために、上記表示制御手段は、表示対象となる上記前データのデータ数が、表示対象となる上記後データのデータ数と同程度となるように上記表示部を制御する構成である。
【0157】
また、本発明に係るデータ表示装置の制御方法は、情報の表示を行う表示部に対し、或る時刻より前の一連の前データと、該時刻より後の一連の後データとに関する表示を行うように制御するデータ表示装置の制御方法であって、上記課題を解決するために、表示対象となる上記前データのデータ数が、表示対象となる上記後データのデータ数と同程度となるように上記表示部を制御している。
【0158】
ここで、一連の前データおよび後データとに関する表示の例としては、一連の前データおよび後データをそのまま表示することや、一連の前データおよび後データに対し統計処理をそれぞれ行って、作成された統計データを表示することなどが挙げられる。
【0159】
上記構成および方法によれば、或る時刻より前の一連の前データと、該時点より後の一連の後データとを、データ数を同程度として表示部に表示させている。これにより、表示部に表示される前データと後データとの比較を利用者が適切に行うことができる。具体的には、現場作業員が、製造条件の変更前後での比較を適切に行うことができるので、変更後の状態把握を誤認することを防止できる。
【0160】
ところで、前データと後データとに分離する上記時刻が正確に特定できない場合がある。この場合、実際には前データであるのに後データと判断されたり、或いはその反対のことが発生したりすることになる。
【0161】
例えば、或る製造設備の製造条件を変更した変更時刻と、該製造設備の下流側に位置する各計測設備が計測する計測データが変化する変化時刻との間にはタイムラグが存在する。したがって、上記変更時刻および上記タイムラグを正確に特定できれば、上記変化時刻を正確に推定することができる。しかしながら、上記タイムラグは、製造ラインにおいて不良品の抜取りや手直し、再投入が発生することにより、正確に特定することが困難な場合がある。この場合、上記変化時刻を正確に推定することが困難となる。
【0162】
上記変更時刻および上記タイムラグから推定された変化時刻が、実際の変化時刻と異なっていると、実際には変化前の計測データが変化後の計測データであると判断したり、或いはその反対のことが発生したりすることになる。その結果、現場作業員などの利用者に誤った情報を提供する虞がある。
【0163】
そこで、本発明に係るデータ表示装置では、上記表示制御手段は、上記一連の前データのうち、上記或る時刻から所定数または所定期間前までのデータを表示対象から除外すると共に、上記一連の後データのうち、上記或る時刻から所定数または所定期間後までのデータを表示対象から除外するように上記表示部を制御することが好ましい。この場合、上記或る時刻に近いデータであって、前データであるか後データであるかが明確ではないデータが表示されないので、利用者に不明確な情報を提供することを防止でき、利用者が前データと後データとの比較をより適切に行うことができる。
【0164】
本発明を、複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、各計測設備が計測した計測データに基づくデータを表示するデータ表示装置に適用する場合、上記データ表示装置は、上記製造ラインに設けられた或る製造設備の製造条件が変更された場合に、該変更の行われた時刻である変更時刻を取得する変更時刻取得手段と、取得した変更時刻に基づいて、上記変更により或る計測設備の計測データが変化する前の計測データと変化した後の計測データとを判別する変化判別手段とをさらに備えており、上記表示制御手段は、上記変化前の一連の計測データを上記一連の前データとし、上記変化後の一連の計測データを上記一連の後データとして表示を行うように上記表示部を制御すればよい。この場合、現場作業員などの利用者が、製造条件の変更による計測データの変化を適切に把握することができる。
【0165】
本発明に係るデータ表示装置では、上記変化判別手段は、上記変化前の計測データと上記変化後の計測データとを、複数の上記計測設備ごとに判別しており、上記表示制御手段は、上記変化前の一連の計測データと上記変化後の一連の計測データとを、上記計測設備別に表示するように上記表示部を制御することが好ましい。この場合、上記変化前の一連の計測データと上記変化後の一連の計測データとが上記計測設備別に表示されるので、現場作業員などの利用者が、或る製造設備の製造条件の変更が製造ラインに及ぼす影響を適切に把握することができる。
【0166】
本発明に係るデータ表示装置では、上記製造条件の変更された製造設備から上記計測設備までに生じる無駄時間および無駄個数の少なくとも一方と、上記変更時刻取得手段が取得した変更時刻とを用いて、上記製造条件の変更により上記計測設備の計測データが変化する時刻である変化時刻を推定する変化時刻推定手段をさらに備えており、上記変化判別手段は、上記変化時刻推定手段が推定した変化時刻よりも前の計測データを上記変化前の計測データと判別し、上記変化時刻よりも後の計測データを上記変化後の計測データと判別することが好ましい。
【0167】
この場合、製造条件の変更された製造設備から上記計測設備までに生じる無駄時間および無駄個数の少なくとも一方を用いることにより、上記変化時刻を良好に推定することができる。したがって、上記計測設備に関する変化前の計測データと変化後の計測データとを良好に分離することができる。
【0168】
本発明に係るデータ表示装置では、或る計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合である同期データを、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け手段をさらに備えており、上記変化判別手段は、上記変化時刻を推定した計測設備である基準計測設備以外の計測設備に関して、上記基準計測設備における上記変化前の計測データを含む同期データに対応付けられた同期データに含まれる計測データを上記変化前の計測データと判別し、上記基準計測設備における上記変化後の計測データを含む同期データに対応付けられた同期データに含まれる計測データを上記変化後の計測データと判別することが好ましい。
【0169】
この場合、変化時刻を推定した基準計測設備以外の計測設備に関しても、上記基準計測設備に関して良好に分離された変化前後の計測データと、計測データの集合であって各計測設備間で対応付けられた同期データとを用いることにより、変化前の計測データと変化後の計測データとを良好に分離することができる。
【0170】
なお、製造条件を変更した製造設備と、変化時刻を推定する基準計測設備との製造ラインにおける距離が遠くなればなるほど、不確定要素が多くなって、推定した変化時刻の誤差が大きくなることが考えられる。そこで、上記基準計測設備は、上記製造条件の変更された製造設備から下流側の最も近くに位置する最近隣の上記計測設備であることが好ましい。この場合、推定した変化時刻の誤差を抑えることができる。
【0171】
本発明に係るデータ表示装置では、上記データ対応付け手段は、或る上記計測設備に関して、上記同期データを作成する同期データ作成手段と、別の上記計測設備に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成手段とを備えてもよい。
【0172】
なお、対応同期データ作成手段が同期データを作成する方法としては種々のものが考えられる。
【0173】
例えば、上記対応同期データ作成手段は、上記或る計測設備に関する上記同期データと同じ要素数を有する、上記別の計測設備に関する複数の同期データ候補を作成し、上記或る計測設備に関する同期データと、上記別の計測設備に関する同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、相関係数の絶対値が最大となる同期データ候補を特定し、これを上記別の計測設備に関する同期データとすることが挙げられる。
【0174】
また、上記対応同期データ作成手段は、上記或る計測設備と上記別の計測設備との間で生じる無駄時間および無駄個数の少なくとも一方を利用して、上記或る計測設備に関する上記同期データ内の複数の計測データにそれぞれ対応する、上記別の計測設備に関する複数の計測データを特定し、特定した複数の計測データからなる同期データを作成することが挙げられる。
【0175】
本発明に係るデータ表示装置では、上記計測設備が計測した計測データを取得するデータ取得手段と、上記製造ラインに投入されたマーカを検知するマーカ検知手段と、該マーカ検知手段が検知したマーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを上記データ取得手段から取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成する区間データ作成手段とを計測設備ごとに備えており、上記区間データ作成手段が作成した区間データを、上記複数の計測設備間で対応付ける区間データ対応付け手段を備えており、上記同期データ作成手段は、上記或る計測設備に関して、上記区間データに比べて少数の計測データの集合である同期データを作成し、上記対応同期データ作成手段は、上記別の計測設備に関して、上記区間データ対応付け手段が上記複数の計測設備間で対応付けた区間データどうしを利用して、上記同期データ作成手段が作成した同期データに対応する同期データを作成してもよい。
【0176】
この場合、マーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成し、作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付けている。マーカ間に含まれる複数の製造対象物は、多少の抜取りや継ぎ足しが行われることがあるが、全体として同じものである可能性が高い。従って、異なる計測設備間で対応付けられた区間データどうしは、良好な対応付けとなる。これにより、異なる計測設備間で対応付けられた同期データどうしも良好な対応付けを維持できる。また、区間データ内に複数の同期データを作成する場合、計測データの時間推移を把握し易くなる。
【0177】
本発明に係るデータ表示装置では、上記対応同期データ作成手段は、上記或る計測設備に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データにおいて所定の順序に位置する要素が、上記区間データにて位置する順序の、該区間データ内の要素数に対する比率である順序比を算出し、上記区間データに対応付けられた上記別の計測設備の区間データ内の要素数に上記順序比を乗算して、上記別の計測設備の区間データにおける順序を算出し、算出した順序の要素が上記所定の順序に位置するような同期データを作成してもよい。
【0178】
本発明に係るデータ表示装置では、上記製造ラインには、上記マーカを投入する投入設備が設けられており、上記製造対象物が上記製造ラインに所定数投入されるごとに上記マーカを投入するように上記投入設備を制御するマーカ投入制御手段をさらに備えることが好ましい。この場合、マーカ間の製造対象物の数をほぼ等しくすることができるので、同一計測設備の区間データどうしの比較が容易となる。
【0179】
なお、上記データ表示装置における各手段を、データ表示装置制御プログラムによりコンピュータ上で機能させることができる。さらに、上記データ表示装置制御プログラムおよび/または上記データ対応付け装置制御プログラムをコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶させることにより、任意のコンピュータ上で上記データ表示装置制御プログラムおよび/または上記データ対応付け装置制御プログラムを実行させることができる。
【0180】
本発明に係るデータ表示装置は、以上のように、或る時刻より前の一連の前データと、該時点より後の一連の後データとを、データ数を同程度として表示部に表示させているので、表示部に表示される前データと後データとの比較を利用者が適切に行うことができるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明に係るデータ対応付け装置およびデータ表示装置は、製造ライン以外にも、家電製品の制御など、種々のプロセスを監視して制御する装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明の一実施形態であるデータ表示システムの要部構成を示すブロック図である。
【図2】上記データ表示システムにおけるデータ収集装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】上記データ表示システムの最初の計測設備が計測する計測データと、2番目の計測設備が計測する計測データとを時系列順に示すグラフである。
【図4】上記データ表示システムにおけるデータ同期装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】上記データ同期装置における同期データの作成処理の具体例を示すグラフである。
【図6】上記データ同期装置において無駄時間および無駄個数を用いて同期データを調整する具体例を示すグラフである。
【図7】上記データ同期装置において、最初の計測設備に関する計測データおよび同期データと、2番目の計測設備に関する計測データおよび同期データとを時系列順に示すグラフである。
【図8】最初の計測設備の動作電流と2番目の計測設備の動作抵抗との相関関係を示すグラフである。
【図9】上記データ表示システムにおけるデータ比較装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】上記データ比較装置において、無駄時間および無駄個数を用いて変化時刻を推定する具体例を示すグラフである。
【図11】上記データ表示システムにおけるデータ表示装置が、計測データの時系列データを比較データとして表示した表示画面の一例を示す図である。
【図12】上記データ表示装置が、計測データのヒストグラムを比較データとして表示した表示画面の一例を示す図である。
【図13】上記データ表示システムにおける処理動作の概要を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0183】
10 データ表示システム(データ表示装置、データ対応付け装置)
11 マーカ制御装置(マーカ投入制御手段)
12 データ収集装置(データ対応付け装置)
13 ライン情報記憶装置(記憶部)
14 データ同期装置(データ対応付け手段、データ対応付け装置)
16 データ比較装置
17 データ表示装置(表示部、表示制御手段)
21 計測データ取得部(データ取得手段)
22 マーカ検知部(マーカ検知手段)
23 区間データ作成部(区間データ作成手段)
24 区間データ対応付け部(区間データ対応付け手段)
32 同期データ作成部(同期データ作成手段、対応同期データ作成手段、同期データ調整手段)
44 変更時刻情報取得部(変更時刻取得手段)
45 変化時刻推定部(変化判別手段、変化時刻推定手段)
46 比較データ作成部(表示制御手段)
ML 製造ライン
S 投入設備
Yj 計測設備
Cj 計測データ
Dj 区間データ
Ej 同期データ
Fj 比較データ
M マーカ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、異なる上記計測設備が計測した計測データどうしを対応付けるデータ対応付け手段を備えるデータ対応付け装置であって、
上記異なる計測設備間で生じる無駄個数に関する情報を記憶する記憶部を備えており、
上記データ対応付け手段は、上記無駄個数を利用して、上記異なる計測設備の一方が計測した計測データに対応する、上記異なる計測設備の他方が計測した計測データを特定することを特徴とするデータ対応付け装置。
【請求項2】
複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置であって、
上記異なる計測設備の一方に関して、上記計測データの集合である同期データを作成する同期データ作成手段と、
上記異なる計測設備の他方に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成手段とを備えており、
上記対応同期データ作成手段は、
上記他方の計測設備に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データと同じ要素数を有する複数の同期データ候補を作成し、
上記一方の計測設備に関する同期データと、上記他方の計測設備に関する同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、相関係数の絶対値が最大となる同期データ候補を特定し、これを上記他方の計測設備に関する同期データとすることを特徴とするデータ対応付け装置。
【請求項3】
複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置であって、
各計測設備に関して、
該計測設備が計測した計測データを取得するデータ取得手段と、
上記製造ラインに投入されたマーカを検知するマーカ検知手段と、
該マーカ検知手段が検知したマーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを上記データ取得手段から取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成する区間データ作成手段とを備えており、
上記区間データ作成手段が作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付ける区間データ対応付け手段を備えることを特徴とするデータ対応付け装置。
【請求項4】
或る上記計測設備に関して、上記区間データに比べて少数の計測データの集合である同期データを作成する同期データ作成手段と、
別の上記計測設備に関して、上記区間データ対応付け手段が上記複数の計測設備間で対応付けた区間データどうしを利用して、上記同期データ作成手段が作成した同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成手段とを備えることを特徴とする請求項3に記載のデータ対応付け装置。
【請求項5】
上記対応同期データ作成手段は、
上記或る計測設備に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データにおいて所定の順序に位置する要素が、上記区間データにて位置する順序の、該区間データ内の要素数に対する比率である順序比を算出し、
上記区間データに対応付けられた上記別の計測設備の区間データ内の要素数に上記順序比を乗算して、上記別の計測設備の区間データにおける順序を算出し、算出した順序の要素が上記所定の順序に位置するような同期データを作成することを特徴とする請求項4に記載のデータ対応付け装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1項に記載のデータ対応付け装置を動作させるためのデータ対応付け装置制御プログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるためのデータ対応付け装置制御プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のデータ対応付け装置制御プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項8】
複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、異なる上記計測設備が計測した計測データどうしを対応付けるデータ対応付け装置であって、上記異なる計測設備間で生じる無駄個数に関する情報を記憶する記憶部を備えるデータ対応付け装置の制御方法であって、
上記無駄個数を利用して、上記異なる計測設備の一方が計測した計測データに対応する、上記異なる計測設備の他方が計測した計測データを特定することにより、上記異なる計測設備が計測した計測データどうしを対応付けることを特徴とするデータ対応付け装置の制御方法。
【請求項9】
複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置の制御方法であって、
上記異なる計測設備の一方に関して、上記計測データの集合である同期データを作成する同期データ作成ステップと、
上記異なる計測設備の他方に関して、上記同期データ作成ステップにて作成された同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成ステップとを含んでおり、
上記対応同期データ作成ステップは、
上記他方の計測設備に関して、上記同期データ作成ステップにて作成された同期データと同じ要素数を有する複数の同期データ候補を作成し、
上記一方の計測設備に関する同期データと、上記他方の計測設備に関する同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、相関係数の絶対値が最大となる同期データ候補を特定し、これを上記他方の計測設備に関する同期データとすることを特徴とするデータ対応付け装置の制御方法。
【請求項10】
複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置の制御方法であって、
各計測設備に関して、
該計測設備が計測した計測データを取得するデータ取得ステップと、
上記製造ラインに投入されたマーカを検知するマーカ検知ステップと、
検知したマーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成する区間データ作成ステップとを含んでおり、
作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付ける区間データ対応付けステップを含むことを特徴とするデータ対応付け装置の制御方法。
【請求項1】
複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、異なる上記計測設備が計測した計測データどうしを対応付けるデータ対応付け手段を備えるデータ対応付け装置であって、
上記異なる計測設備間で生じる無駄個数に関する情報を記憶する記憶部を備えており、
上記データ対応付け手段は、上記無駄個数を利用して、上記異なる計測設備の一方が計測した計測データに対応する、上記異なる計測設備の他方が計測した計測データを特定することを特徴とするデータ対応付け装置。
【請求項2】
複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置であって、
上記異なる計測設備の一方に関して、上記計測データの集合である同期データを作成する同期データ作成手段と、
上記異なる計測設備の他方に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成手段とを備えており、
上記対応同期データ作成手段は、
上記他方の計測設備に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データと同じ要素数を有する複数の同期データ候補を作成し、
上記一方の計測設備に関する同期データと、上記他方の計測設備に関する同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、相関係数の絶対値が最大となる同期データ候補を特定し、これを上記他方の計測設備に関する同期データとすることを特徴とするデータ対応付け装置。
【請求項3】
複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置であって、
各計測設備に関して、
該計測設備が計測した計測データを取得するデータ取得手段と、
上記製造ラインに投入されたマーカを検知するマーカ検知手段と、
該マーカ検知手段が検知したマーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを上記データ取得手段から取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成する区間データ作成手段とを備えており、
上記区間データ作成手段が作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付ける区間データ対応付け手段を備えることを特徴とするデータ対応付け装置。
【請求項4】
或る上記計測設備に関して、上記区間データに比べて少数の計測データの集合である同期データを作成する同期データ作成手段と、
別の上記計測設備に関して、上記区間データ対応付け手段が上記複数の計測設備間で対応付けた区間データどうしを利用して、上記同期データ作成手段が作成した同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成手段とを備えることを特徴とする請求項3に記載のデータ対応付け装置。
【請求項5】
上記対応同期データ作成手段は、
上記或る計測設備に関して、上記同期データ作成手段が作成した同期データにおいて所定の順序に位置する要素が、上記区間データにて位置する順序の、該区間データ内の要素数に対する比率である順序比を算出し、
上記区間データに対応付けられた上記別の計測設備の区間データ内の要素数に上記順序比を乗算して、上記別の計測設備の区間データにおける順序を算出し、算出した順序の要素が上記所定の順序に位置するような同期データを作成することを特徴とする請求項4に記載のデータ対応付け装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1項に記載のデータ対応付け装置を動作させるためのデータ対応付け装置制御プログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるためのデータ対応付け装置制御プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のデータ対応付け装置制御プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項8】
複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、異なる上記計測設備が計測した計測データどうしを対応付けるデータ対応付け装置であって、上記異なる計測設備間で生じる無駄個数に関する情報を記憶する記憶部を備えるデータ対応付け装置の制御方法であって、
上記無駄個数を利用して、上記異なる計測設備の一方が計測した計測データに対応する、上記異なる計測設備の他方が計測した計測データを特定することにより、上記異なる計測設備が計測した計測データどうしを対応付けることを特徴とするデータ対応付け装置の制御方法。
【請求項9】
複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置の制御方法であって、
上記異なる計測設備の一方に関して、上記計測データの集合である同期データを作成する同期データ作成ステップと、
上記異なる計測設備の他方に関して、上記同期データ作成ステップにて作成された同期データに対応する同期データを作成する対応同期データ作成ステップとを含んでおり、
上記対応同期データ作成ステップは、
上記他方の計測設備に関して、上記同期データ作成ステップにて作成された同期データと同じ要素数を有する複数の同期データ候補を作成し、
上記一方の計測設備に関する同期データと、上記他方の計測設備に関する同期データ候補との相関係数を算出し、これを各同期データ候補について繰り返すことにより、相関係数の絶対値が最大となる同期データ候補を特定し、これを上記他方の計測設備に関する同期データとすることを特徴とするデータ対応付け装置の制御方法。
【請求項10】
複数の計測設備が設けられた製造ラインにおいて、該計測設備が複数の製造対象物を計測した計測データの集合を、上記複数の計測設備間で対応付けるデータ対応付け装置の制御方法であって、
各計測設備に関して、
該計測設備が計測した計測データを取得するデータ取得ステップと、
上記製造ラインに投入されたマーカを検知するマーカ検知ステップと、
検知したマーカ間に含まれる複数の製造対象物の計測データを取得し、取得した複数の計測データの集合である区間データを作成する区間データ作成ステップとを含んでおり、
作成した区間データを、異なる計測設備間で対応付ける区間データ対応付けステップを含むことを特徴とするデータ対応付け装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−80845(P2009−80845A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318602(P2008−318602)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【分割の表示】特願2006−159085(P2006−159085)の分割
【原出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【分割の表示】特願2006−159085(P2006−159085)の分割
【原出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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