説明

データ配信システム、データ配信装置、データ符号化装置、及びデータ符号化方法

【課題】クライアント側への負荷を増加させることなく、フレーム欠落による一時的な再生停止を抑制することのできるデータ符号化装置、データ配信装置、データ配信システム、及びデータ符号化方法を提供すること。
【解決手段】サーバ1の符号化部12において、動画データを、フレーム単位に細分化し、イントラフレーム(Iフレーム)と予測フレーム(Pフレーム)からなる第1のフレーム群に加えて、対応する予測フレームの参照フレームを補完する補完フレーム(Cフレーム)からなる第2のフレーム群とを生成しておき、クライアント4の要求に応じて第1フレーム群のフレームを送信し、フレーム欠落が生じた場合には第2フレーム群の補完フレームを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画データを圧縮符号化するデータ符号化装置及び方法、当該圧縮符号化した動画データを配信するデータ配信装置及び方法、並びに圧縮符号化した動画データをサーバからクライアントへと配信するデータ配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット等のネットワークを介して、動画や音楽等の様々なコンテンツデータが配信されており、このようなコンテンツデータは、配信に適するよう圧縮符号化(encode)されている。
特にデータ量の大きい動画データについては、例えばMPEG−2方式、MPEG−4AVC、H.264等の圧縮方式が標準化されている。
【0003】
このような圧縮方式では、動画データを時間に応じて複数のフレーム(画像)に細分化している。また、連続して表示される動画は前後のフレーム間で変化する部分が限られている場合が多いことから、前後異なる時点のフレームを参照し、この参照フレームとの差分部分のみを符号化するフレーム間予測という技術が用いられている。
当該フレーム間予測では、現時点のフレームより時間的に前(過去)のフレームから予測して符号化された前方向予測フレーム(Predicted Frame)(以下、Pフレームともいう)や現時点のフレームの時間的に前後のフレームから予測して符号化された前後方向予測フレーム(Bi-directional Predicted Frame)(以下、Bフレームともいう)がある。また、フレーム間予測を用いず、フレーム内の情報のみから符号化されたフレームを、イントラフレーム(Intra-coded Frame)(以下Iフレームともいう)と呼ぶ。動画開始時や画面の切換時等には当該イントラフレームが用いられる。
【0004】
このように圧縮符号化された各フレームからなる動画データは配信元であるサーバから、一般のパーソナルコンピュータ、及びテレビ受像機やビデオプレーヤのようなコンテンツ再生機器等のクライアントへとフレーム単位で配信される。そして、クライアントでは受信したフレームを復号化(decode)した上で再生を行う。
しかし、クライアント側において上記Pフレームが一度欠落すると、この欠落したPフレームを参照する次のPフレームも正しく復号化できなくなり、イントラフレームを受信するまで、一時的に動画再生が停止するという問題がある。
【0005】
そこで、クライアント側において、復号化済みのフレーム(ピクチャ)を所定量バッファしておき、参照するフレームが欠落している場合には、バッファされたフレームから代替参照フレームを取得してフレームを生成する復号化装置が開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−177648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、復号化済みフレームのバッファ量が所定量に満たないときには代替参照フレームを使用できず、動画再生が一時的に停止してしまう。
また、上記特許文献1では、クライアント側で、復号化済みフレームをバッファし、当該バッファした情報から代替参照フレームを生成するため、クライアント側の演算負荷が増大するという問題がある。例えば、クライアントへのネットワークの帯域幅が狭い場合等は、フレームの欠落が比較的多く生じ、復号化済みフレームを十分バッファできない上、代替参照フレームを生成する機会が多いためクライアント側の演算負荷も過大となる。
【0008】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、クライアント側への負荷を増加させることなく、フレーム欠落による一時的な再生停止を抑制することのできるデータ符号化装置、データ配信装置、データ配信システム、及びデータ符号化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、請求項1の符号化装置では、データ配信手段からネットワークを介して複数のクライアントに動画データが配信されるデータ配信システムであって、前記データ配信手段は、動画データを符号化する符号化装置において、前記動画データを、時間に応じてフレーム単位に細分化し、フレーム単体の情報から符号化したイントラフレーム、及び他のフレームを参照フレームとして当該参照フレームとの差分を符号化した予測フレームから構成された第1のフレーム群と、前記各予測フレームと対応した時期に設けられ、それぞれ対応する予測フレームの前記参照フレームを補完して符号化した補完フレームから構成された第2のフレーム群とを生成する符号化手段と、前記第1のフレーム群及び第2のフレーム群の各フレームを記憶する記憶手段と、前記クライアントからのフレーム要求またはクライアントの受信状況に応じて前記記憶手段に記憶されている前記第1のフレーム群のフレームを送信するとともに、前記フレーム要求が前記予測フレームであり当該予測フレームの参照フレームが欠落している場合には、当該予測フレームに代えて、第2のフレーム群から対応する前記補完フレームを送信する送信制御手段と、を備え、前記クライアントは、前記データ配信手段から送信されたフレームを受信して復号化する復号化手段と、前記復号化されたフレームを再生する再生手段と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項2の符号化装置では、請求項1において、前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームの次の予測フレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームであることを特徴としている。
請求項3の符号化装置では、請求項1において、前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、直前のイントラフレームの次の予測フレームから対応する予測フレームまでを補完するフレームであることを特徴としている。
【0011】
請求項4のデータ配信装置では、ネットワークを介して接続されたクライアントに動画データを配信するデータ配信装置であって、前記動画データを、時間に応じてフレーム単位に細分化し、フレーム単体の情報から符号化したイントラフレーム、及び他のフレームを参照フレームとして当該参照フレームとの差分を符号化した予測フレームから構成された第1のフレーム群と、前記各予測フレームと対応した時期に設けられ、それぞれ対応する予測フレームの前記参照フレームを補完して符号化した補完フレームから構成された第2のフレーム群とを生成する符号化装置と、前記第1のフレーム群及び第2のフレーム群の各フレームを記憶する記憶手段と、前記クライアントからのフレーム要求またはクライアントの受信状況に応じて前記記憶手段に記憶されている前記第1のフレーム群のフレームを送信するとともに、前記フレーム要求が前記予測フレームであり当該予測フレームの参照フレームが欠落している場合には、当該予測フレームに代えて、第2のフレーム群から対応する前記補完フレームを送信する送信制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0012】
請求項5のデータ配信装置では、請求項4において、前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームの次の予測フレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームであることを特徴としている。
請求項6のデータ配信装置では、請求項4において、前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、直前のイントラフレームの次の予測フレームから対応する予測フレームまでを補完するフレームであることを特徴としている。
【0013】
請求項7のデータ符号化装置では、動画データを符号化するデータ符号化装置において、
前記動画データを、時間に応じてフレーム単位に細分化し、フレーム単体の情報から符号化したイントラフレーム、及び他のフレームを参照フレームとして当該参照フレームとの差分を符号化した予測フレームから構成された第1のフレーム群と、前記各予測フレームと対応した時期に設けられ、それぞれ対応する予測フレームの前記参照フレームを補完して符号化した補完フレームから構成され、前記第1のフレーム群のフレームの復号化が欠落したときに用いられる第2のフレーム群とを生成することを特徴としている。
【0014】
請求項8のデータ符号化装置では、請求項7において、前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームであることを特徴としている。
請求項9のデータ符号化装置では、請求項7において、前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームの次の予測フレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームであることを特徴としている。
【0015】
請求項10のデータ符号化方法では、動画データを符号化するデータ符号化方法において、前記動画データを、時間に応じてフレーム単位に細分化し、フレーム単体の情報から符号化したイントラフレーム、及び他のフレームを参照フレームとして当該参照フレームとの差分を符号化した予測フレームから構成された第1のフレーム群と、前記各予測フレームと対応した時期に設けられ、それぞれ対応する予測フレームの前記参照フレームを補完して符号化した補完フレームから構成され、前記第1のフレーム群のフレームの復号化が欠落したときに用いられる第2のフレーム群とを生成することを特徴としている。
【0016】
請求項11のデータ符号化方法では、請求項10において、前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームであることを特徴としている。
請求項12のデータ符号化方法では、請求項10において、前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームの次の予測フレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
上記手段を用いる本発明の請求項1、4、7、10のデータ配信システム、データ配信装置、データ符号化装置、及びデータ符号化方法によれば、動画データを、フレーム単位に細分化し、イントラフレームと予測フレームからなる第1のフレーム群に加えて、当該第1のフレーム群のフレームの復号化が欠落したときに用いるべく、当該各予測フレームと対応した時期に設けられそれぞれ対応する予測フレームの前記参照フレームを補完して符号化した補完フレームからなる第2のフレーム群を生成しておくことで、第1のフレーム群におけるフレーム欠落直後に、第2のフレーム群の補完フレームを用いて動画再生を早期に復帰させることができる。
【0018】
これにより、当該動画データをクライアントへと送信する場合に、当該クライアントへの負荷を増加させることなく、フレーム欠落による一時的な再生停止を抑制することができる。
請求項2、5、8、11のデータ配信システム、データ配信装置、データ符号化装置、及びデータ符号化方法によれば、補完フレームを、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームとする。つまり、当該補完フレームはイントラフレームと同様、参照フレームなしで復号化が可能であり、イントラフレーム欠落時に対しても早期に再生を復帰させることができる。
【0019】
請求項3、6、9、12のデータ配信システム、データ配信装置、データ符号化装置、及びデータ符号化方法によれば、補完フレームを、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームの次の予測フレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームとする。つまり、当該補完フレームは予測フレームのみを補完したフレームであることから、当該補完フレームを差分情報のみの最小限の情報量に抑えることができ、高い圧縮効率を維持することができる
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る全体構成を示した概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るサーバにて実行される動画配信制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態に係るサーバ及びクライアントにおける動画データのフレーム構成を示す説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るサーバ及びクライアントにおける動画データのフレーム構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
まず、第1実施形態について説明する。
図1には、本発明の第1実施形態における全体構成を示した概略構成図が示されている。
同図に示すように、動画や音楽等のコンテンツデータを配信するサーバ1(データ配信装置)が、インターネット2(ネットワーク)を介して、パーソナルコンピュータ、及びテレビ受像機やビデオプレーヤのようなコンテンツ再生機器等の複数のクライアント4と接続されることでコンテンツデータの配信システムが構築されている。当該サーバ1とクライアント4とは、インターネット2を介してお互いにTCP/IPを用いてデータのやり取りが可能である。また、当該サーバ1は、コンテンツデータをクライアント4に対しストリーミング方式で配信するものであり、ライブ配信等も可能である。以下、コンテンツデータにおける動画データの配信に関して詳しく説明する。なお、サーバ1とクライアント4とを接続するネットワークはインターネットに限られず、イントラネット等、他のネットワークでも構わない。
【0022】
サーバ1は、動画データを作成するデータ作成部10、作成された動画データを圧縮符号化する符号化部12(符号化装置)、各データを保存するデータ記憶部14(記憶手段)、及びサーバ1におけるデータの管理やクライアント4とのデータの送受信等を制御する制御部16を有している。
データ作成部10は、動画データを作成し、データ記憶部14に保存するものである。動画データの作成は、クライアント4の要求に応じて新たに作成したり、データ記憶部14にすでに保存されているデータを加工したりすることで行う。
【0023】
符号化部12は、作成された動画データを配信に適した形式に圧縮符号化するものである。具体的には、当該符号化部12は、連続した一連の動画データを時間に応じてフレーム単位に細分化する。そして、各フレームをイントラフレーム(以下Iフレームという)または予測フレーム(以下Pフレームという)に符号化し、これらIフレーム及びPフレームから構成される第1フレーム群を生成する。Iフレームは、フレーム単体の情報のみから符号化したフレームであり、Pフレームはフレーム間予測を用いて、時間的に1つ前のフレームを参照し当該参照フレームとの差分を符号化した、いわゆる前方向予測フレームである。
【0024】
当該符号化部12は、第1フレーム群の各Pフレームの時期と対応させて、それぞれ対応するPフレームについての参照フレームを補完して符号化した補完フレーム(complementary frame)(以下Cフレームという。)を生成する。より詳しくは、当該補完フレームは、対応するPフレームに対して時間的に前であって最も近いIフレームから当該対応するPフレームまでの各Pフレームの差分を全て反映させることで補完したフレームである。このようにIフレームを含んで補完するCフレームは、Iフレームと同様、参照フレームなしで復号化が可能である。そして、符号化部12は、これらCフレームからなる第2フレーム群を生成する。
【0025】
データ記憶部14は、例えばデータ作成部10において作成された圧縮符号化前の動画データや、符号化部12において符号化された各フレーム群等を記憶するものである。
制御部16は、クライアント4からの要求を受けて、それに応じたデータをデータ記憶部14から選択してクライアント4へと送信する等の制御を行うものである。より具体的には、当該制御部16は、クライアント4から要求されているフレームがIフレームであればIフレームを、PフレームであればPフレームを送信する。このように原則的には第1フレーム群のフレームを送信するが、クライアント4から要求されたフレームがPフレームであるのに対して当該Pフレームの参照フレームが欠落している場合には、Pフレームに代えて対応するCフレームを送信する。
【0026】
一方、クライアント4は、復号化部20、及び再生部22を有している。
復号化部20は、サーバ1から受信した圧縮符号化されているフレームを復号化するものである。例えば受信したフレームがIフレームまたはCフレームであれば当該フレームを復号化するだけで1つの出力フレームが生成される。受信したフレームがPフレームである場合は当該Pフレームを復号化して差分データを生成し、1つ前の復号化済みのフレームを参照して差分部分を変更することで1つの出力フレームを生成する。
【0027】
再生部22は、例えばディスプレイやスピーカ等の再生機器であり、復号化部20において生成された出力フレームを再生するものである。
各クライアント4はそれぞれ同様の構成を有しており、サーバ1上にて作成された所望の動画データを再生部22において再生するため、サーバ1に対して当該動画データについて符号化されたフレームを逐次要求する。そして、当該要求に応じてサーバ1から送信されたフレームを受信し、復号化部20において復号化して再生部22にて再生する。
【0028】
以下、このように構成された本発明の第1実施形態の作用について説明する。
図2には、サーバ1にて実行される動画配信制御ルーチンがフローチャートによって示されており、以下同フローチャートに沿って説明する。
図2に示すように、まずステップS1として、サーバ1は制御部16において、いずれかのクライアント4からフレームの要求があるか否かを判別する。いずれのクライアント4からもフレームの要求がない場合には、当該判別結果は偽(No)となり、当該ルーチンをリターンする。一方、クライアント4からフレームの要求がある場合には、次のステップS2に進む。
【0029】
ステップS2では、クライアント4から要求されているn番目のフレームがIフレームであるか否かを判別する。符号化された動画データは時系列に応じてフレームに番号が付されているものとし、今回クライアント4から要求されているn番目のフレーム(以下、要求フレームnともいう)がIフレームである場合は、ステップS3に進む。
ステップS3では、第1フレーム群から要求フレームnに対応するIフレームをクライアント4に送信し、次のフレーム要求に応じるべく当該ルーチンをリターンする。
【0030】
一方、上記ステップS2において、要求フレームnがIフレームではない場合、即ち要求フレームがPフレームである場合には当該判別結果は偽(No)となり、ステップS4に進む。
ステップS4では、要求フレームnの一つ前のフレームn−1が利用可能であるか否かを判別する。これは、例えばTCP/IPに基づき受信状況を監視し、当該クライアント4がフレームn−1を受信しているか否かを判別する。当該フレームn−1をクライアント4が受信していた場合には当該ルーチンは真(Yes)となり、ステップS3に進む。そして、ステップS3では、第1フレーム群から要求フレームnに対応するPフレームをクライアント4に送信し、当該ルーチンをリターンする。
【0031】
一方、ステップS4において、1つ前のフレームn−1を当該クライアント4が受信していないために参照フレームを利用不可能である場合には、判別結果は偽(No)となり、ステップS5に進む。
ステップS5ではPフレームに代えて、第2フレーム群から要求フレームnに対応するCフレームを選択してクライアント4に送信し、当該ルーチンをリターンする。
【0032】
サーバ1の制御部16は、各クライアント4の要求に応じて以上のような制御ルーチンを繰り返すことで、各クライアント4へ動画データを配信する。
ここで、図3を参照すると、本発明の第1実施形態に係るサーバ及びクライアントにおける動画データのフレーム構成が示されており、以下同図に基づき説明する。なお、同図では、説明の簡略化のためフレーム構成を単純化して例示している。
【0033】
図3に示すように、サーバ1には、符号化部12において符号化されたIフレーム及びPフレームからなる第1フレーム群と、Cフレームからなる第2フレーム群がデータ記憶部14に記憶されている。なお、フレームNo.は時系列に応じた番号であり、各フレームそれぞれに対しても順番に番号を付している。例えば、第1フレーム群のIフレームとしてI1〜I3が一定の間隔で設けられており、その間にそれぞれ5つのPフレームP1〜P10が形成されている。また第2フレーム群では、各Pフレームに対応してCフレームC1〜C10が生成されている。
【0034】
またここでは、各フレームが持つ情報を単純な数値に置き換えて説明する。例えばIフレームはI1=10、I2=20、I=30とし、差分情報である各Pフレームは符号付きの値でそれぞれ+1とする。Cフレームは、対応するPフレームに対して時間的に前であって最も近いIフレームから当該対応するPフレームまでの各Pフレームを補完するものであり、例えばフレームNo.3に対応するCフレームC2は、時間的に前であって最も近いIフレームI1から対応するPフレームP2までを補完するI1+P1+P2であり、数値としては10+1+1=11となる。
【0035】
図3には、このように構成された動画データを、ネットワークの帯域幅が十分高い第1クライアント4aに送信した場合が示されている。当該第1クライアント4aは各フレームNo.毎に第1フレーム群のフレームを欠落なく全て受信しており、正常に動画を再生できる場合の数値が示されている。
一方、図3では、同じ動画データを、ネットワークの帯域幅が比較的低い第2クライアント4bに送信したものが示されている。当該第2クライアント4bにおいては、フレームNo.3、No.7、No.8にてフレームの欠落している。
【0036】
ここで、第2クライアント4bがフレームNo.3においてPフレームP2を欠落した場合には、サーバ1の制御部16は上記フローチャートに従い、次のフレームNo.4の要求に対し、対応するPフレームP3の参照フレームがないことからPフレームP3に代えてCフレームC3を送信する。当該CフレームC3は上述したようにI1からP3を補完するフレームであり、当該CフレームC3単体を復号化することで正しい数値の出力フレームが生成される。そして、次のPフレームP4も復号化済みの当該CフレームC3を参照することで正しい出力フレームとなり、以降欠落がない限り第1フレーム群のフレームを受信することで正常な出力フレームが生成される。
【0037】
また、当該第2クライアント4bがフレームNo.7に対応するIフレームI2を欠落し、この欠落に基づき次のフレームNo.8にてPフレームP6に代えて送信されたCフレームC6も欠落した場合においても、その次のフレームNo.9に対応するCフレーム7を受信することで、第2クライアント4bの出力フレームは即座に正しい数値に復帰する。
【0038】
このように本実施形態におけるCフレームは、Iフレームを含んで補完していることから、クライアント4がIフレームを欠落した場合でも、即座に再生を復帰させることができる。
以上のように、動画データの配信を行うサーバ1の符号化部12において、当該動画データを、Iフレーム及びPフレームからなる第1フレーム群に加えて、当該第1フレーム群のフレーム欠落を補完するCフレームからなる第2フレーム群から構成することで、クライアント4が第1フレーム群のフレームを欠落した場合にも、欠落直後にCフレームを送信することで、早期に再生を復帰させることができる。
【0039】
また、クライアント4においては、サーバ1から送信されるフレームをその都度復号化するだけであり、フレーム欠落した場合でも次のIフレームを待つことなく当該欠落直後から再生を復帰できる。
このようにして本発明に係る第1実施形態は、クライアント4側への負荷を増加させることなく、フレーム欠落による一時的な再生停止を抑制することができる。
【0040】
次に本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態におけるサーバ及びクライアントの基本構成やサーバの制御部が実行する制御ルーチンは、図1、2で示した第1実施形態と同じであり、以下各構成については同じ符号を付し、各構成及び制御ルーチンについての詳しい説明は省略する。
【0041】
第2実施形態では、符号化部12により形成される第2フレーム群の補完フレーム(以下、C’フレームという)の構成が異なっており、当該第2実施形態におけるC’フレームは、対応するPフレームに対して時間的に前であって最も近いIフレームの次のPフレームから対応するPフレームまでを補完するフレームである。つまり、当該C’フレームは、Iフレームを参照することで復号化が可能である。
【0042】
当該第2実施形態について、詳しくは図4に基づき説明する。
図4には、本発明の第2実施形態に係るサーバ及びクライアントにおける動画データのフレーム構成が示されており、第1フレーム群の構成や第1クライアント4aが受信したフレームの構成は図3と同様である。
【0043】
図4に示すように、サーバ1の記憶部14に記憶されている第2フレーム群のC’フレームは、Iフレームを含まず、Pフレームのみを補完している。例えばフレームNo.3に対応するC’フレームC’2は、時間的に前であって最も近いIフレームI1の次のPフレームP1から対応するPフレームP2までを補完するP1+P2であり、数値としては+1+1=+2となる。このように当該C’フレームはIフレームとの差分部分のみを補完している。
【0044】
このようなフレーム構成の動画データについて、図4では、ネットワークの帯域幅が低い第2クライアント4bは、フレームNo.3、No.9、No.10のフレームを欠落した場合が示されている。
詳しくは、第2クライアント4bがフレームNo.3においてPフレームP2を欠落した場合には、サーバ1の制御部16は、上記フローチャートに従い、次のフレームNo.4の要求に対し、対応するPフレームP3の参照フレームがないことからPフレームP3に代えてC’フレームC’3を送信する。当該C’フレームC’3はP1からP3を補完するフレームであり、IフレームI1を参照して復号化されることで正しい数値の出力フレームが生成され、これ以降も欠落がない限り第1フレーム群のフレームを受信することで正常な出力フレームが生成される。
【0045】
また、第2クライアント4bがフレームNo.9に対応するPフレームP7を欠落し、当該欠落に基づき次のフレームNo.10にてPフレームP8に代えて送信されたC’フレームC’8も欠落した場合においても、フレームNo.11に対応するC’フレーム9を受信することで即座に正しい数値に復帰する。
以上のように、第2実施形態においても上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0046】
また、第2実施形態におけるC’フレームはPフレームのみを補完していることから、Iフレームの受信を前提とするが、C’フレームを差分情報のみの最小限の情報量に抑えることができ、圧縮効率を高めることができるという利点がある。これにより、クライアント4側の演算負荷も最小限に抑えることができる。なお、クライアント4がIフレームを欠落した場合、サーバ2の制御部16は次のフレーム要求に対し、対応するC’フレームとともに欠落したIフレームを当該クライアント4に送信してもよい。これにより、当該第2実施形態においてIフレームを欠落した場合でも、次のIフレームを待つことなく当該欠落直後から再生を復帰できる。
【0047】
このようにして本発明に係る第2実施形態は、クライアント4側への負荷を確実に抑えつつ、フレーム欠落による一時的な再生停止を抑制することができる。
以上で本発明に係る実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態では、サーバ1の符号化部12は、第1フレーム群の予測フレームとして前方向予測フレーム(Pフレーム)のみ符号化しているが、これに加えて前後方向予測フレーム(Bフレーム)を符号化して第1フレーム群を構成しても構わない。このような場合は、サーバの符号化部により、当該Pフレーム及びBフレームに対応した時期に、それぞれ対応するPフレームまたはBフレームの参照フレームを補完する補完フレームを符号化し、これらの補完フレームからなる第2フレーム群を生成することで上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0048】
また、上記実施形態では、符号化部12は第2フレーム群として一種類のCフレームのみを生成しているが、符号化部は第2フレーム群として、上記第1実施形態におけるIフレーム及びPフレームを補完するCフレーム、及び第2実施形態におけるPフレームのみを補完するC’フレームの両方を生成しても構わない。このような場合、サーバの制御部は、例えばクライアントがIフレームを含んで欠落している場合には第1実施形態のCフレームを、Pフレームのみ欠落している場合には第2実施形態のC’フレームを送信するというように、CフレームとC’フレームとを使い分けて送信してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 サーバ(データ配信装置)
2 インターネット(ネットワーク)
4 クライアント
10 データ作成部
12 符号化部(符号化装置)
14 データ記憶部(記憶手段)
16 制御部(制御手段)
20 復号化部(復号化手段)
22 再生部(再生手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ配信装置からネットワークを介して複数のクライアントに動画データが配信されるデータ配信システムであって、
前記データ配信装置は、
前記動画データを、時間に応じてフレーム単位に細分化し、フレーム単体の情報から符号化したイントラフレーム、及び他のフレームを参照フレームとして当該参照フレームとの差分を符号化した予測フレームから構成された第1のフレーム群と、前記各予測フレームと対応した時期に設けられ、それぞれ対応する予測フレームの前記参照フレームを補完して符号化した補完フレームから構成された第2のフレーム群とを生成する符号化装置と、
前記第1のフレーム群及び第2のフレーム群の各フレームを記憶する記憶手段と、
前記クライアントからのフレーム要求またはクライアントの受信状況に応じて前記記憶手段に記憶されている前記第1のフレーム群のフレームを送信するとともに、前記フレーム要求が前記予測フレームであり当該予測フレームの参照フレームが欠落している場合には、当該予測フレームに代えて、第2のフレーム群から対応する前記補完フレームを送信する送信制御手段と、を備え、
前記クライアントは、
前記データ配信手段から送信されたフレームを受信して復号化する復号化手段と、
前記復号化されたフレームを再生する再生手段と、
を備えることを特徴とするデータ配信システム。
【請求項2】
前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームの次の予測フレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームであることを特徴とする請求項1記載のデータ配信システム。
【請求項3】
前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、直前のイントラフレームの次の予測フレームから対応する予測フレームまでを補完するフレームであることを特徴とする請求項1記載のデータ配信システム。
【請求項4】
ネットワークを介して接続されたクライアントに動画データを配信するデータ配信装置であって、
前記動画データを、時間に応じてフレーム単位に細分化し、フレーム単体の情報から符号化したイントラフレーム、及び他のフレームを参照フレームとして当該参照フレームとの差分を符号化した予測フレームから構成された第1のフレーム群と、前記各予測フレームと対応した時期に設けられ、それぞれ対応する予測フレームの前記参照フレームを補完して符号化した補完フレームから構成された第2のフレーム群とを生成する符号化装置と、
前記第1のフレーム群及び第2のフレーム群の各フレームを記憶する記憶手段と、
前記クライアントからのフレーム要求またはクライアントの受信状況に応じて前記記憶手段に記憶されている前記第1のフレーム群のフレームを送信するとともに、前記フレーム要求が前記予測フレームであり当該予測フレームの参照フレームが欠落している場合には、当該予測フレームに代えて、第2のフレーム群から対応する前記補完フレームを送信する送信制御手段と、
を備えることを特徴とするデータ配信装置。
【請求項5】
前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームの次の予測フレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームであることを特徴とする請求項4記載のデータ配信装置。
【請求項6】
前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、直前のイントラフレームの次の予測フレームから対応する予測フレームまでを補完するフレームであることを特徴とする請求項4記載のデータ配信装置。
【請求項7】
動画データを符号化するデータ符号化装置において、
前記動画データを、時間に応じてフレーム単位に細分化し、
フレーム単体の情報から符号化したイントラフレーム、及び他のフレームを参照フレームとして当該参照フレームとの差分を符号化した予測フレームから構成された第1のフレーム群と、
前記各予測フレームと対応した時期に設けられ、それぞれ対応する予測フレームの前記参照フレームを補完して符号化した補完フレームから構成され、前記第1のフレーム群のフレームの復号化が欠落したときに用いられる第2のフレーム群とを生成することを特徴とするデータ符号化装置。
【請求項8】
前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームであることを特徴とする請求項7記載のデータ符号化装置。
【請求項9】
前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームの次の予測フレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームであることを特徴とする請求項7記載のデータ符号化装置。
【請求項10】
動画データを符号化するデータ符号化方法において、
前記動画データを、時間に応じてフレーム単位に細分化し、
フレーム単体の情報から符号化したイントラフレーム、及び他のフレームを参照フレームとして当該参照フレームとの差分を符号化した予測フレームから構成された第1のフレーム群と、
前記各予測フレームと対応した時期に設けられ、それぞれ対応する予測フレームの前記参照フレームを補完して符号化した補完フレームから構成され、前記第1のフレーム群のフレームの復号化が欠落したときに用いられる第2のフレーム群とを生成することを特徴とするデータ符号化方法。
【請求項11】
前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームであることを特徴とする請求項10記載のデータ符号化方法。
【請求項12】
前記補完フレームは、対応する予測フレームに対し、時間的に前であって最も近いイントラフレームの次の予測フレームから当該対応する予測フレームまでを補完して符号化したフレームであることを特徴とする請求項10記載のデータ符号化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−138780(P2012−138780A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290022(P2010−290022)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(506430325)株式会社フォーラムエイト (5)
【Fターム(参考)】