説明

トイレの和洋改修方法

【課題】和風便器の上部を除去して新たな床面を形成し、その上に洋風便器を設置するトイレの和洋改修方法において、和風便器の破損や抜け落ちが防止され、且つ施工作業が容易なトイレの和洋改修方法を提供する。
【解決手段】和風便器10の前隠し部13のみを除去する。次いで、和風便器10の排水口11に連通するように排水パイプ21を立ち上げる。次いで、和風便器10の上部内に蓋材22を嵌め込み、その上側に高強度板23を被せ、ボルト24によってレベル調整する。この高強度板23の周囲に自硬性材料26を供給して均す。硬化後、洋風便器30を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、和風便器が設置されているトイレルームを洋風便器が設置されたトイレルームに改修するためのトイレの和洋改修方法に関する。詳しくは、コンクリート等よりなる床スラブ上に和風便器が設置されている場合に採用されるトイレの和洋改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事務所ビル等の和風トイレルームにあっては、コンクリート製床スラブに和風便器設置用の開口が設けられ、この開口に上方から嵌め込むようにして和風便器が設置されている。和風便器の排水口には、スラブ下を引き回された排便管が接続されている。
【0003】
このような和風トイレルームを洋風便器が設置された洋風トイレルームに改修する場合、和風便器をすべてハツリ落し、排便管を立て直し、スラブ開口に補強筋を配筋してコンクリートで埋めて床を構築し、その後洋風便器を設置することが行われている。しかしながら、この工法では、階下へ和風便器の解体ガラが落下したり排便管の移動などのために階下からの工事も必要となり、工期が長くなり、コストも嵩むものとなっていた。
【0004】
階上からだけの和洋改修が可能な工法として、特開2005−256467号公報には、トイレルームの床に設置された和風便器の上部を除去し、該和風便器の排水口に対して連通するように排水パイプを立ち上げ、該和風便器内を速硬性モルタルなどの自硬性充填物で埋め、その後、その上に洋風便器を設置する工法が記載されている。
【0005】
また、同号公報には、トイレルームの床に設置された和風便器の上部を除去した後、該和風便器の内面から周囲床面にかけてガラス繊維マットを貼着すること、自硬性材料の上を横断するようにプレートを設置し、その上に洋風便器を設置することが記載されている。
【特許文献1】特開2005−256467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開2005−256467号公報では、自硬性材料としてモルタルを用いているが、モルタルを浸透して和風便器内に水が入らないようにモルタルを密実に仕上げることが必要となり、施工に手間がかかる。
【0007】
また、モルタルの重量分だけ和風便器が重くなる。
【0008】
本発明は、和風便器の上部を除去して新たな床面を形成し、その上に洋風便器を設置するトイレの和洋改修方法において、和風便器内にモルタルを充填することが不要であり、しかも和風便器内に水が浸透することが十分に防止され、且つ施工作業が容易なトイレの和洋改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1のトイレの和洋改修方法は、床に和風便器が設置されたトイレルームを洋風便器が設置されたトイレルームに改修する和洋改修方法において、該和風便器の上部の少なくとも前隠し部を除去する工程と、該和風便器の排水口に対して連通するように排水パイプを立ち上げる工程と、該和風便器の上部内に蓋材を嵌め込む工程と、該蓋材及び和風便器の上側並びに和風便器周囲の床を覆うように高強度板を設置する工程と、床上に自硬性材料を供給する工程と、その後、前記洋風便器を設置する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
請求項2のトイレの和洋改修方法は、請求項1において、該蓋材は発泡樹脂よりなることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3のトイレの和洋改修方法は、請求項1又は2において、前記前隠し部のみを除去し、和風便器の上縁部は残すようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項4のトイレの和洋改修方法は、請求項1又は2において、該和風便器の上部を床の上面と略同レベルまで除去することを特徴とするものである。
【0013】
請求項5のトイレの和洋改修方法は、請求項1又は2において、前記床は、スラブとその上の仕上げ層とを有しており、前記和風便器の上部の除去に際し、該スラブが露呈するように該和風便器の仕上げ層を除去することを特徴とするものである。
【0014】
請求項6のトイレの和洋改修方法は、請求項1ないし5のいずれか1項において、該和風便器の露出面に、該和風便器の落下及び飛散防止用シートを貼り付けることを特徴とするものである。
【0015】
請求項7のトイレの和洋改修方法は、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記高強度板にレベル調整部材が設けられており、該高強度板の設置時に高強度板のレベルを調整することを特徴とするものである。
【0016】
請求項8のトイレの和洋改修方法は、請求項7において、該レベル調整部材は該高強度板の周縁部に設けられたねじ部材であり、該ねじ部材を前記床に当接させるように前記高強度板を設置することを特徴とするものである。
【0017】
請求項9のトイレの和洋改修方法は、請求項7又は8において、高強度板が前記和風便器から上方に離隔するように高強度板のレベルを調整することを特徴とするものである。
【0018】
請求項10のトイレの和洋改修方法は、請求項1ないし9のいずれか1項において、前記高強度板は繊維強化コンクリート板よりなることを特徴とするものである。
【0019】
請求項11のトイレの和洋改修方法は、請求項1ないし10のいずれか1項において、前記蓋材の嵌め込み前に前記和風便器を高強度線材によって前記床に連結することを特徴とするものである。
【0020】
請求項12のトイレの和洋改修方法は、請求項1ないし11のいずれか1項において、前記高強度板を設置する工程の後に、前記自硬性材料を供給する工程を行うことを特徴とするものである。
【0021】
請求項13のトイレの和洋改修方法は、請求項1ないし11のいずれか1項において、前記自硬性材料を供給する工程の後に、前記高強度板を設置する工程を行うことを特徴とするものである。
【0022】
請求項14のトイレの和洋改修方法は、請求項1ないし13のいずれか1項において、前記高強度板の上面のレベルと前記自硬性材料の上面のレベルとを同一にすることを特徴とするものである。
【0023】
請求項15のトイレの和洋改修方法は、請求項14において、高強度板の上面及び自硬性材料の上面に仕上げ層を設け、その後、前記洋風便器を設置することを特徴とするものである。
【0024】
請求項16のトイレの和洋改修方法は、請求項1ないし13のいずれか1項において、前記自硬性材料の上面のレベルを前記高強度板の上面のレベルよりも低くし、自硬性材料の上に仕上げ層を設け、この仕上げ層のレベルを前記高強度板の上面のレベルと同一とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明のトイレの和洋改修方法にあっては、和風便器の上部内に蓋材を嵌め込み、この蓋材の上側に高強度板を配置し、高強度板周囲の床に自硬性材料を供給する。従って、該和風便器内に充填物を充填しないため、和風便器が重量物とならず、該和風便器を支持している床スラブへの負荷を少なくすることができる。
【0026】
本発明では、該蓋材の上側に配置した高強度板を和風便器周囲の床にのみ支持させ、床上荷重を支えることも可能である。このためには、高強度板の周縁部にレベル調整部材を設け、高強度板が和風便器から離隔するように高強度板のレベルを調整するのが好ましい。なお、スペーサによって高強度板のレベルを調整してもよい。
【0027】
本発明のトイレの和洋改修方法においては、蓋材を和風便器に嵌め込むので、和風便器内への水の浸入が十分に防止される。
【0028】
本発明では、該蓋材として、発泡樹脂よりなるものを用いることも可能である。発泡樹脂よりなる蓋材であれば、カッターナイフ等で簡単に加工することが可能なので、施工作業をきわめて容易に行うことができる。ただし、本発明における蓋材の材質はこれに限定されるものではなく、種々の材質よりなる蓋材を用いることができる。
【0029】
本発明では、和風便器の前隠し部のみを切断除去してもよい。このようにすれば、和風便器のリムが残るので、和風便器の床への係止強度が高くなる。
【0030】
本発明では、和風便器の上部を全周にわたって床と面一となるように切断除去してもよい。これにより、新たに設置する洋風便器のレベルを低くすることができる。
【0031】
本発明では、床がスラブ上にタイル張り等の仕上げ層を設けたものである場合、このスラブの上面レベルまで仕上げ層と和風便器上部とを切断除去してもよい。これにより、新たに設置する洋風便器のレベルをさらに低いものとすることができる。
【0032】
本発明のトイレの和洋改修方法にあっては、上部が除去された和風便器の露出面に和風便器の落下及び飛散防止用シートを貼り付けてもよい。これにより、和風便器の落下や割れ飛散の防止を図ることができる。
【0033】
本発明では、ステンレス線などの高強度線材によって和風便器を床に連結してもよい。これにより、和風便器の保持強度が高いものとなると共に、該和風便器が割れて部分的に落下することも防止される。なお、前述のように、本発明では和風便器内に充填物を充填しないため、該和風便器が重量物とならず、この落下及び飛散防止用シートや高強度線材への負荷も少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0035】
[第1の実施の形態]
第1図〜第4図(a)及び第5図〜第7図は第1の実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順を示す縦断面図、第4図(b)は、和風便器の落下及び飛散防止用シートの配置を示す平面図である。第8図は洋風便器設置前のトイレ床面の斜視図、第9図(a)は洋風便器設置後の縦断面図、第9図(b)は同(a)図のB付近の拡大図である。
【0036】
第1図に示すように、トイレルームの床1に和風便器設置用開口2が設けられ、この開口2に上方から嵌め込まれるようにして陶器製の和風便器10が設置されている。この実施の形態では、該床1はコンクリート製の床スラブ本体と、該床スラブ本体の上面に形成されたモルタルやタイル等よりなる仕上げ層とからなる。
【0037】
図示の通り、この床1の下側空間に排便管3が配設され、この排便管3と和風便器10の排水口11とが接続されている。
【0038】
符号13は該便鉢12の前部から立設された前隠し部(金隠し部)を示し、符号14は和風便器10への給水管を示している。
【0039】
なお、この実施の形態では、該便鉢12の前部に排水トラップ15が設けられている。
【0040】
以下に、この和風トイレを洋風トイレに改修するための施工手順について説明する。
【0041】
まず、第1図から第2図のように、和風便器10の前隠し部13のみをダイヤモンドカッター等を用いて切除する。和風便器10の前隠し部13以外の上縁部は除去せずに残しておく。
【0042】
次に、第3図のように便鉢12の底部のうち排水口11の上方に位置する部分をダイヤモンドカッター等で切除して開放口12aをあけ、排水口11が便鉢12の上方へ露見するようにする。また、排水トラップ15内の溜水を除去する。
【0043】
次に、第4図(a)のように、この和風便器10の露出面(便鉢12や排水トラップ15等の内側面、並びに該便鉢12の上縁部)に、該和風便器10の落下及び飛散防止用シート20を貼り付ける。
【0044】
この実施の形態では、該落下及び飛散防止用シート20は、不織布の片面にブチルゴムやゴム化アスファルトコンパウンド等の粘着材料を付着ないし含浸させてなる自己粘着性シートである。ただし、本発明において落下及び飛散防止用シート20として用いられる自己粘着性シートの材質及び構成はこれに限定されるものではなく、これ以外の種々の自己粘着性シートを落下及び飛散防止用シート20として用いることができる。
【0045】
この実施の形態では、第4図(b)の通り、該落下及び飛散防止用シート20は帯状のものとなっており、複数本の落下及び飛散防止用シート20を、該和風便器10を縦横複数方向に横切るように貼り付けている。
【0046】
なお、この落下及び飛散防止用シート20の貼り付けに当っては、該落下及び飛散防止用シート20が和風便器10の全面にわたって付着するのが望ましいが、部分的に該落下及び飛散防止用シート20が付着していない箇所が存在していてもよい。
【0047】
和風便器10の全面にわたって飛散防止用シート20を貼り付けた場合には、後述する、和風便器10の上部内に嵌め込まれる蓋材22と、この落下及び飛散防止用シート20とが防水シートとしても機能し、床の防水性も高いものとなる。
【0048】
この落下及び飛散防止用シート20の貼り付け後、第5図のように、排水口11に対して連通するように排水パイプ21を立ち上げる。詳しくは、該排水口11に上方から排水パイプ21の下端側を差し込む。なお、この排水パイプ21の下端部にはガスケット21aを装着しておく。
【0049】
この排水パイプ21の上端側は、和風便器10の上面よりも上方に突出させておく。
【0050】
次いで、この和風便器10の上部に蓋材22を装着する。この蓋材22としては、断熱性及び切削性がよく、該和風便器10の上部内に嵌め込みやすいところから、発泡スチロールなどの発泡合成樹脂板が好適である。
【0051】
蓋材22を装着するには、和風便器10の上面の開口形状に合わせてこの蓋材の原板をカットする。また、この蓋材22のうち前記排水パイプ21と重なる部分に、該排水パイプ21を挿通するための孔22aを形成する。そして、この孔22aに排水パイプ21を挿通しつつ、蓋材22を和風便器10内に嵌め込む。この際、該蓋材22の側周面と和風便器10の内周面との間、及び前記開口と排水パイプ21との間に、シーリング材22bを充填する(第5図(b))。
【0052】
第5図のように、蓋材22を、その上面が和風便器10の上面と略面一状となるように和風便器10内に嵌め込むのが好ましい。なお、複数の蓋材22を、和風便器10内で突き合わせるようにして嵌め込んでもよい。
【0053】
次に、第6図の通り、この蓋材22の上側及び和風便器10周囲の床1を覆うように高強度板23を被せる。この高強度板23としては、繊維強化コンクリート板特にスチールファイバや炭素繊維などの高強度、高弾性率の繊維で強化されたコンクリート板が好適である。
【0054】
この高強度板23のコーナー部などの周縁部の下面側には、レベル調整用のボルト24が上下方向螺進可能に螺着されている。このボルト24にはロック用のナット25が螺着されている。
【0055】
このボルト24の下方への突出長さを調節することにより高強度板23を水平にする。この際、高強度板23を和風便器10の上縁からごく僅か上方に離隔させ、高強度板23にガタツキが生じないようにするのが好ましい。なお、このようにすれば、後述の洋風便器30の荷重が和風便器10にかからないようになる。
【0056】
次いで、第7図及び第8図の通り、排水パイプ21の上端のうち高強度板23から突出する部分を切断した後、排水パイプ21に排水ソケット27を装着する。
【0057】
その後、第9図の通り、この和風便器10の周囲の床1上に自硬性材料26を供給し、平坦に均す。自硬性材料26としては、軽量・速乾・無収縮性のモルタルが好適であり、その上面のレベルが、高強度板23の上面と面一となるようにするのが好ましいが、自硬性材料26の上にタイル張りをする場合には、高強度板23の上面よりも低いレベルとしておく。自硬性材料26の上を塩化ビニルシートなどのシート材で仕上げ処理する場合、自硬性材料26のレベルを高強度板23の上面と面一とし、高強度板23の上も該シート材で覆うようにしてもよい。なお、自硬性材料26を高強度板23の下側にも充填するのが好ましい。
【0058】
なお、自硬性材料26を供給して硬化させた後、排水パイプ21の上端側のうち高強度板23から突出する部分を切断除去し、該排水パイプ21の上端に排水ソケット27を装着してもよい。また、図示では省略されているが、必要に応じ、該自硬性材料26の上面にタイル張り等の床の表面の仕上げ処理が行われる。そして、排水ソケット27を介して洋風便器30の排水口と排水パイプ21とを接続しつつ、高強度板23上に洋風便器30を設置する。洋風便器30は、その全体が高強度板23上に載置されてもよく、一部が高強度板23からはみ出してもよい。
【0059】
このトイレの和洋改修方法にあっては、和風便器10の前隠し部13のみを切断除去し、和風便器10のリムを残し、このリムを床1の開口2の縁部に係止させたままとしているので、和風便器10の床1への係止強度が高い。また、和風便器10に蓋材23を装着しており、和風便器10内への水の浸入が防止される。また、和風便器10内に充填物を充填しないので、和風便器10が重量物とならず、該和風便器10を支持している床スラブ1や、該和風便器10の落下及び飛散防止用シート20への負荷を少なくすることができる。また、該シート20を貼ってあるので、万一、和風便器10がひび割れした場合でも、落下する危険性が少ない。
【0060】
[第2の実施の形態]
第10図〜第15図を参照して、第2の実施の形態に係る、和風便器10の上縁全体を除去する工法について説明する。
【0061】
第10図は前記第1の実施の形態の第2図に相当する断面図である。この第10図の通り、和風便器10のうち床1から上側の部分をダイヤモンドカッター等で切断除去し、床1と和風便器10の切断面とを面一とする(ただし、和風便器10の切断面が床1の上面よりも若干上位となるようにしてもよい。この場合には、高強度板23とこの切断面との間に若干の隙間をあけ、高強度板23から荷重が和風便器10にかからないようにする。)。次いで、第11図(前記実施の形態の第4図(a)に相当)の通り、落下及び飛散防止用シート20を和風便器10の内面に貼着する。次いで、第12図の通りステンレスワイヤなどの高強度線材31の一端を和風便器10に掛け、他端を床1のビス32に連結して和風便器10の落下防止対策を行う。高強度線材31の該一端は、和風便器10に設けた開放口12aに挿通されたり、フック33を介して該開放口12aの縁部に掛止される。ビス32は、床1の上面に打ち込まれている。
【0062】
排水パイプ21を立てた後、前記実施の形態と同様に蓋材22を和風便器10に装着する。この際、蓋材22の上面のレベルは、床1の上面と面一か又はそれよりもごく僅か(例えば5mm以内)低位とする。
【0063】
次いで、第13,14図の通り、高強度板23を和風便器10及びその周囲の床1を覆うように被せ、排水パイプ21に排水ソケット27を装着する。
【0064】
なお、和風便器10の切断面及び蓋材22と高強度板23との間には変成シリコーン系接着剤などの弾性接着剤を介在させるのが好ましい。また、高強度板23と床1とは二液性エポキシ系接着剤などによって接着する。
【0065】
その後、第15図の通り、高強度板23の周囲に自硬性材料26を供給して均す。自硬性材料26が硬化した後、洋風便器30を設置する。この実施の形態では、洋風便器30のレベルが第1の実施の形態よりも低いものとなる。
【0066】
なお、第15図の通り、ビス32が高強度板23よりも外側となるように打っておくと、高強度板23を床1に面当り状に当てることができ、ガタつきが防止される。
【0067】
[第3の実施の形態]
上記各実施の形態では、床1は開口2の縁部に至るまでスラブにて構成されているが、第16図の通り、スラブ1Aに比較的大きな開口2Aを設け、この開口2Aの内面にモルタル1Mを詰めるようにした和風トイレルームも存在する。
【0068】
このような和風トイレルームを改修する場合には、第17図のように高強度板23としてスラブ1Aに掛かる十分に大きいものを用いる。
【0069】
第17図は和風便器10の上部を全周にわたって切除する第10図〜第15図の実施の形態に適用した例であるが、前隠し部のみを切除する第1図〜第9図の実施の形態の場合も同様に適用される。即ち、この場合には、ボルト24がスラブ1Aに当るように十分に大きい高強度板23を用いる。
【0070】
[第4の実施の形態]
第18図は、床1がスラブ1aと、仕上げ層として、その上に張り付けモルタル1cを介してタイル1bが貼り付けられたトイレルームを改修する一例を示している。この場合、和風便器10のうちタイル1bの上面よりも上位部分のみを切断除去してもよいが、スラブ1aの上面が露呈するようにタイル1b及び張り付けモルタル1cよりなる仕上げ層のみを和風便器10の上縁と共に切断除去してもよい。その後の処置は第1図〜第9図、第10図〜第15図のいずれの方法としてもよい。
【0071】
この実施の形態によると、洋風便器30のレベルがさらに低いものとなる。
【0072】
[その他の実施の形態]
本発明では、第19図のように、落下及び飛散防止用シート20が和風便器10の切断した上縁面をも覆うように貼着されてもよい。また、図示はしないが、和風便器10の周囲の床1上面にまで落下及び飛散防止用シート20を張り出して貼着してもよい。
【0073】
第10図〜第15図の実施の形態では、ビス32を高強度板23よりも外側に配置しているが、第20図のように高強度板23の下側にビス32を配置してもよい。第20図の符号35は、蓋材22と高強度板23との間の弾性接着剤を示し、36は高強度板23を床1に接着するエポキシ系接着剤を示す。
【0074】
本発明では、落下及び飛散防止用シート20の貼着に先立って和風便器10の露出面の少なくとも一部に、鉄ブラシで擦ることなどにより擦過傷を付けておいてもよい。このようにすると、落下及び飛散防止用シート20と和風便器10との結合強度が高まり、和風便器10の保持強度が極めて高くなる。
【0075】
上記実施の形態では、落下及び飛散防止用シート20は自己粘着性シートにより構成されているが、本発明においては、自己粘着性シート以外の材料により落下及び飛散防止用シート20を構成し、接着剤等により、和風便器10に貼り付けるようにしてもよい。
【0076】
該落下及び飛散防止用シート20としては、ガラス繊維マットや金属繊維マット、カーボン繊維(カーボンファイバー)マットなどの種々の繊維マットに接着剤を含浸させたものを用いてもよい。なお、コスト、取り扱い性の良さ並びに接着後の和風便器10の保持強度の高さから、ガラス繊維マットが好適である。また、この場合、接着剤としては、該ガラス繊維マットと和風便器10の表面のガラス質との接着力の高さから、エポキシ樹脂系のものが好適である。
【0077】
このようにガラス繊維マット等よりなる落下及び飛散防止用シート20を接着剤で和風便器10の露出面に貼着する場合にも、この貼着に先立ち、該露出面を鉄ブラシで擦るなどして該露出面の少なくとも一部、好ましくは接着剤が付着される部分全体に擦過傷を付けておくことにより、該飛散防止用シート20と和風便器10との接着力を高めることができる。
【0078】
なお、本発明においては、接着剤をガラス繊維マット等の繊維マットに対し現場にて付着ないし含浸させて用いるようにしてもよい。
【0079】
本発明においては、蓋材22を和風便器10に嵌め込むのに先立ち、該和風便器10内に発泡樹脂製ビーズを充填してもよい。
【0080】
このように、和風便器10内に発泡樹脂製ビーズを充填し、蓋材22を、このビーズ上に載せるようにして和風便器10内に嵌め込むようにすることにより、該蓋材22が充填物23の重量や床上荷重等によって和風便器10内に落ち込むのを防止することができる。なお、このビーズ26は発泡樹脂製であり、軽量であることから、このビーズ26を和風便器10内に充填しても、これによって和風便器10に過度に大きな荷重が掛かることはない。
【0081】
また、万一、和風便器10内に水が浸入しても、このように和風便器10内にビーズ26が充填されていることにより、該和風便器10内に水が溜まりにくく、万一、和風便器10にひび割れ等の破損が生じた場合でも、一度に大量の水が階下に漏れ出すことがない。
【0082】
本発明では、洋風便器30は、その設置時の前後方向が、トイレルームに元々設置されていた和風便器10の前後方向と交差方向となるように設置されてもよく、同方向あるいは逆方向となるようにしてもよい。
【0083】
上記実施の形態では、高強度板23を設置した後、自硬性材料26を供給して均すようにしているが、先に自硬性材料26を和風便器10の切断面又は蓋材22の上面レベルに合わせて供給して均し、その後、高強度板23を設置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレルームの改修手順の説明図である。
【図2】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図3】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図4】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図5】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図6】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図7】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図8】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図9】洋風便器設置後の縦断面図である。
【図10】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図11】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図12】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図13】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図14】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図15】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図16】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図17】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図18】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図19】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【図20】実施の形態に係るトイレの和洋改修方法によるトイレの改修手順の説明図である。
【符号の説明】
【0085】
1 床
1A,1a 床スラブ
1b タイル
1c 張り付けモルタル
1M モルタル
2,2A 和風便器設置用開口
3 排便管
10 和風便器
11 排水口
12 便鉢
13 前隠し部
15 排水トラップ
20 落下及び飛散防止用シート
21 排水パイプ
22 蓋材
23 高強度板
24 ボルト
25 ナット
26 自硬性材料
27 排水ソケット
31 高強度線材
32 ビス
33 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に和風便器が設置されたトイレルームを洋風便器が設置されたトイレルームに改修する和洋改修方法において、
該和風便器の上部の少なくとも前隠し部を除去する工程と、
該和風便器の排水口に対して連通するように排水パイプを立ち上げる工程と、
該和風便器の上部内に蓋材を嵌め込む工程と、
該蓋材及び和風便器の上側並びに和風便器周囲の床を覆うように高強度板を設置する工程と、
床上に自硬性材料を供給する工程と、
その後、前記洋風便器を設置する工程と、
を有することを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項2】
請求項1において、該蓋材は発泡樹脂よりなることを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記前隠し部のみを除去し、和風便器の上縁部は残すようにしたことを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項4】
請求項1又は2において、該和風便器の上部を床の上面と略同レベルまで除去することを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項5】
請求項1又は2において、前記床は、スラブとその上の仕上げ層とを有しており、
前記和風便器の上部の除去に際し、該スラブが露呈するように該和風便器の仕上げ層を除去することを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、該和風便器の露出面に、該和風便器の落下及び飛散防止用シートを貼り付けることを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記高強度板にレベル調整部材が設けられており、該高強度板の設置時に高強度板のレベルを調整することを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項8】
請求項7において、該レベル調整部材は該高強度板の周縁部に設けられたねじ部材であり、該ねじ部材を前記床に当接させるように前記高強度板を設置することを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項9】
請求項7又は8において、高強度板が前記和風便器から上方に離隔するように高強度板のレベルを調整することを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、前記高強度板は繊維強化コンクリート板よりなることを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項において、前記蓋材の嵌め込み前に前記和風便器を高強度線材によって前記床に連結することを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項において、前記高強度板を設置する工程の後に、前記自硬性材料を供給する工程を行うことを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれか1項において、前記自硬性材料を供給する工程の後に、前記高強度板を設置する工程を行うことを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項において、前記高強度板の上面のレベルと前記自硬性材料の上面のレベルとを同一にすることを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項15】
請求項14において、高強度板の上面及び自硬性材料の上面に仕上げ層を設け、その後、前記洋風便器を設置することを特徴とするトイレの和洋改修方法。
【請求項16】
請求項1ないし13のいずれか1項において、前記自硬性材料の上面のレベルを前記高強度板の上面のレベルよりも低くし、自硬性材料の上に仕上げ層を設け、この仕上げ層のレベルを前記高強度板の上面のレベルと同一とすることを特徴とするトイレの和洋改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−223382(P2008−223382A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65174(P2007−65174)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【出願人】(500020427)株式会社INAXエンジニアリング (2)
【Fターム(参考)】