説明

トイレ装置

【課題】シャッターのような遮蔽用構造部材を用いることなく、ケーシングのノズル突出用開口内への尿などの汚水の侵入を防止することができるトイレ装置を提供する。
【解決手段】洋風便器1の後部上面にケーシングとしての便座ボックス2が設置され、便座ボックス2の前端面には、衛生洗浄装置10のノズル11を洋風便器1の鉢部内に進出させるための開口5が設けられている。開口5の上縁に沿って、該開口5に水カーテンを形成するための吐水部材30(カーテンノズル33)が設けられている。洋風便器1の使用時には、開口5が水カーテンにより覆われるため、該開口5に汚水が浸入することが防止される。この水カーテンが汚れることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋風便器に設置されるトイレ装置に係り、特に汚水が衛生洗浄装置のノズルに付着することによる臭気発生を防止するよう改良された衛生洗浄等の機能を有したトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生洗浄装置は、周知の通り、洋風便器の後部上面に設置されたケーシングと、該ケーシング内に設置された洗浄ノズルとを有しており、洗浄ノズルから噴出した温水によって人体の臀部を洗浄するものである。このケーシングに対し便座が枢支されている。このケーシング内に温風ファンを設置し、洗浄後に温風を人体臀部に吹き付けて臀部を温風乾燥するよう構成されたものもある。また、便鉢内から臭気を吸引する脱臭装置を備えたものもある。
【0003】
上記の衛生洗浄装置のノズルは、ケーシングの開口を通って前方へ突出可能となっている。
【0004】
この開口内に尿などの汚水が入り込んでこびり付き、臭気発生の原因となることがある。このような隙間への汚水侵入を防止するために、特開平10−195957号公報には、ケーシング前部にノズル突出用の開口を有するものにおいて、この開口に開閉式のシャッターを設け、該開口内へ汚水が侵入することを防止することが記載されている。
【特許文献1】特開平10−195957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開平10−195957号公報にあっては、開口をシャッターで遮蔽するため、このシャッター自体に汚水が付着することになり、シャッターの清掃が必要となる。また、シャッター及びその開閉駆動機構が必要となり、トイレ装置の構成が複雑となる。
【0006】
本発明は、シャッターのような遮蔽用構造部材を用いることなく、ケーシングのノズル突出用開口内への尿などの汚水の侵入を防止することができるトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のトイレ装置は、洋風便器の後部上面に設置され、前部に開口を有したケーシングと、該ケーシングに支持された便座と、該ケーシング内に配置された衛生洗浄装置のノズルとを備えてなり、該ノズルは、該開口を通って前方へ突出可能となっているトイレ装置において、該開口に水カーテンを形成するための吐水部材を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2のトイレ装置は、請求項1において、前記洋風便器又は衛生洗浄装置の使用を検知する検知手段と、この検知手段の検知信号に基づいて前記吐水部材に給水を行うよう制御する制御手段を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3のトイレ装置は、請求項2において、該検知手段は、前記便座への着座を検知するものであり、前記制御手段は、便座への着座が検知されているときに前記吐水部材に給水を行うよう制御するものであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4のトイレ装置は、請求項2において、該検知手段は、前記便座への着座と衛生洗浄装置の使用とを検知するものであり、前記制御手段は、便座への着座及び衛生洗浄装置の使用が検知されているときに前記吐水部材に給水を行うよう制御するものであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5のトイレ装置は、請求項2において、前記ケーシングに便蓋が支持されており、前記検知手段は、該便蓋の開放と洋風便器近傍の人体とを検知するものであり、前記制御手段は、便蓋が開放状態にあり且つ人体が検知される場合に前記吐水部材に給水を行うよう制御するものであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6のトイレ装置は、請求項2において、前記検知手段は、前記便座の起立と洋風便器近傍の人体とを検知するものであり、前記制御手段は、便座が起立状態にあり且つ人体が検知される場合に前記吐水部材に給水を行うよう制御するものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトイレ装置にあっては、吐水部材から流出した水によって開口に水カーテンが形成され、この水カーテンによって尿などの汚水が開口内に侵入することが防止される。本発明によると、シャッターのような遮蔽用構造部材が不要であり、トイレ装置の構成が簡易である。また、水カーテンには汚れが付着することがない。
【0014】
本発明では、洋風便器又は衛生洗浄装置の使用が検知手段で検知されると、吐水部材に給水を行うようにしてもよく、これにより、洋風便器の使用に伴って尿等が開口内に侵入したり、衛生洗浄装置のノズルの跳ね返り水(人体臀部に当って跳ね返ってくるノズル噴出水)が開口内に侵入することが防止される。
【0015】
この検知手段としては、便座への着座を検知するものであってもよく、便座への着座及び衛生洗浄装置の使用を検知するものであってもよく、便蓋の開放状態及び洋風便器近傍の人体を検知するものであってもよく、便座の起立及び洋風便器近傍の人体を検知するものであってもよい。
【0016】
いずれの場合でも、洋風便器の使用(例えば放尿など)や、衛生洗浄装置の使用時に尿や跳ね返り水が開口内に侵入することが確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
第1図は実施の形態に係るトイレ装置を備えた洋風便器の斜視図、第2図はこのトイレ装置を概略的に示す、便座ボックスの前部付近の縦断面図、第3図はこのトイレ装置の給排水系の回路図である。
【0019】
洋風便器1の後部上面にケーシングとしての便座ボックス2が設置され、この便座ボックス2の前部が該洋風便器1の鉢部に臨んでいる。この便座ボックス2の前部には、便座3及び便蓋4が上下方向回動可能に取り付けられている。なお、ケーシングとしては、便座ボックスの代わりにロータンクカバーが採用されてもよい。
【0020】
この実施の形態では、該便座ボックス2に、便座3(及び便蓋4)が第1図の如く起立した状態となっていることを検知する便座起立状態検知手段(図示略)が設けられている。この便座起立状態検知手段としては、例えば、便座3が起立姿勢となったときに該便座3に押されてONとなるスイッチや、該便座3の支軸(図示略)が所定角度まで回転したことを検知する回転角検知センサ等が挙げられるが、これに限定されない。
【0021】
また、該便座ボックス2には、洋風便器1の近傍(前方)に人体が存在していることを検知する人体検知手段(図示略)が設けられている。この人体検知手段としては、例えば、洋風便器1の前方に赤外線を照射してその反射光により人体の存在を検知する赤外線センサ等が挙げられるが、これに限定されない。この人体検知手段は、便座3が起立してもその陰にならない位置に設けられている。なお、この人体検知手段は、便座ボックス2以外の箇所、例えばトイレルームの壁面等に設けられてもよい。
【0022】
便座ボックス2内には、便座3に着出した用便者の臀部を温水で洗浄するノズル11(11A,11B)を備えた衛生洗浄装置10が設置されている。便座ボックス2の前端面には、該ノズル11を洋風便器1の鉢部内に進出させるための開口5が設けられている。また、この開口5の上縁に沿って、該開口5に水カーテンを形成するための吐水部材30が設けられている。この吐水部材30の構成については、後で述べる。
【0023】
第2図の通り、ノズル11は、シリンダ12と、該シリンダ12から前方に進出可能なノズル本体13と、該ノズル本体13の先端に設けられた温水の噴出口14等を有している。該シリンダ12内には、ノズル本体13を後退方向に付勢するリターンスプリング(図示略)が設けられている。該シリンダ12の後端側の給水口(図示略)に温水が供給されると、その水圧により、第2図において二点鎖線にて示すようにノズル本体13がシリンダ12から突出し、開口5を通って鉢部内に進出する。また、その先端の噴出口14から温水が噴出し、用便者の臀部が温水で洗浄される。温水の供給が止まると、ノズル本体13がリターンスプリングの付勢力により後退し、便座ボックス2内に格納される。
【0024】
ただし、ノズル11は、水圧による前進駆動方式以外のものであってもよい。例えば、エアー圧駆動方式や、モータ駆動方式、リニア駆動方式、あるいはこれらの複合式のものなどであってもよい。
【0025】
この実施の形態では、シャワー洗浄用及びビデ洗浄用の2本のノズル11A,11Bが設けられている。
【0026】
詳しい図示は省略するが、この実施の形態の衛生洗浄装置10においては、止水栓20から定流量弁21,メインバルブ22,バキュームブレーカ23及び流量センサ24を経由して温水ヒータ25に水が供給され、この温水ヒータ25で温められた温水が加圧ポンプ26及びノズル切替弁27を介して各ノズル11A,11Bに供給される。
【0027】
なお、この実施の形態では、ノズル11A,11Bの外面に水を掛けてノズル11A,11Bを洗浄するノズル洗浄機構28が設けられており、上記のノズル切替弁27は、ノズル11A,11B及びノズル洗浄機構28のいずれかに温水を供給するようになっている。この切替えは、便器使用者のスイッチ(図示略)操作に基づいて、制御回路(図示略)により行われる。
【0028】
具体的には、該制御回路は、シャワー洗浄スイッチが操作されると、ノズル切替弁27からの給水先をシャワー洗浄用のノズル11Aに切り替え、ビデ洗浄スイッチが操作されると、給水先をビデ洗浄用のノズル11Bに切り替え、ノズル洗浄スイッチが操作されると、給水先をノズル洗浄機構28に切り替える。また、これらのスイッチ操作に伴い、該制御回路は、温水ヒータ25を作動させてメインバルブ22を開弁する。これにより、該ノズル11A,11B又はノズル洗浄機構28に温水が供給される。
【0029】
前記吐水部材30は、給水バルブ32を介してバキュームブレーカ23の上流側の給水用配管に接続された給水管31と、該給水管31の先端側(下流側)に設けられたカーテンノズル33とを備えている。
【0030】
該カーテンノズル33は、この実施の形態では、第1図に示すように、前記開口5の上縁に沿って左右方向に延設されており、その下面側には、下方に向って開放する複数の小孔状の吐水口33a(第2図)が設けられている。この複数の吐水口33aは、左右方向に若干の間隔をあけて開口5の上縁の一端近傍から他端近傍まで配列されている。前記給水バルブ32が開弁し、給水管31を介して該カーテンノズル33に水が供給されると、第1図の通り、これらの吐水口33aから開口5の全副にわたってシャワー状(さみだれ状)に水が吐水され、これにより、該開口5を覆う水カーテンが形成される。
【0031】
なお、このようにカーテンノズル33に複数の小孔状の吐水口33aを設けてシャワー状に水カーテンを形成する代わりに、左右方向に延在するスリット状の吐水口を設け、該左右方向に連続する膜状の水カーテンを形成するようにしてもよい。
【0032】
この実施の形態では、前記制御回路は、前記便座起立状態検知手段により便座3が起立状態であることが検知され、なおかつ前記人体検知手段により、洋風便器1の近傍に人体が存在していることが検知されたときに、給水バルブ32を開弁するよう構成されている。また、この制御回路は、該人体検知手段により、洋風便器1の近傍に人体が存在していることが検知されなくなると、給水バルブ32を閉弁するよう構成されている。
【0033】
図示はしないが、便座ボックス2内には、衛生洗浄装置10及び吐水部材30の他に、温風乾燥装置や脱臭装置なども設置されている。これらの装置も、用便者のスイッチ操作に基づき、前記制御回路によって作動される。
【0034】
第3図の符号40は、バキュームブレーカ23内に流入した水を排出するための排水ラインを示しており、この排水ラインは、該バキュームブレーカ23内の水を洋風便器1の便鉢内に排出するよう配設されている。
【0035】
かかる構成のトイレ装置にあっては、カーテンノズル33の吐水口33aからシャワー状に吐水された水によって開口5に水カーテンが形成され、この水カーテンにより、尿などの汚水が開口5内に侵入することが防止される。このトイレ装置によれば、開口5にシャッターのような遮蔽用構造部材が不要であり、構成が簡易である。また、当然ながら、この水カーテンに汚れが付着することはないので、トイレ装置の清掃作業も容易である。
【0036】
この実施の形態では、便座3が起立状態とされて使用される場合、具体的には、主に男子小用としての使用時に、給水弁32が開弁して開口5に水カーテンが形成される。この男子小用時には開口5付近に尿などの汚水が飛散しやすいが、水カーテンにより、該開口5内に汚水が浸入することが確実に防止される。
【0037】
ただし、本発明においては、給水バルブ32の制御方法はこれに限定されない。
【0038】
例えば、用便者の便座3への着座を検知する着座検知手段を設け、前記制御回路は、この着座検知手段によって用便者の便座3への着座が検知されたときに給水バルブ32を開弁させるよう構成してもよい。この場合、便座3に着座した用便者による洋風便器1の使用に伴って尿等が開口5内に侵入することも防止される。
【0039】
この便座着座検知手段としては、便座3に荷重が加えられたことを検知する感圧センサ等が挙げられるが、これに限定されない。
【0040】
これ以外にも、例えば、用便者の便座3への着座が検知された状態で衛生洗浄装置10のシャワー洗浄スイッチ又はビデ洗浄スイッチが操作されたときに給水バルブ32を開弁させるようにしてもよい。この場合、用便者が衛生洗浄装置10を使用したときに、ノズル11から噴出して該用便者の臀部に当り、跳ね返ってきた汚水が開口5内に侵入することも防止される。
【0041】
あるいは、便蓋4が起立状態となっていることを検知する便蓋起立状態検知手段と、洋風便器1の近傍に人体が存在していることを検知する人体検知手段とを設け、便蓋が起立状態となっており、なおかつ洋風便器1の近傍に人体が存在していることが検知されたときに給水バルブ32が開弁するよう構成してもよい。
【0042】
なお、この便蓋起立状態検知手段としては、前述の便座起立状態検知手段と同様のものを用いることができる。
【0043】
上記の制御方法を組み合わせてもよい。もちろん、上記以外の制御方法を採用してもよい。
【0044】
上記の実施の形態では、衛生洗浄装置10と共通の給水ラインから吐水部材30に水カーテン形成用の水が供給されているが、これに限定されない。吐水部材30に独立した給水ラインを設けてもよい。
【0045】
上記の実施の形態は本発明の一例を示すものであり、本発明は上記の実施の形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施の形態に係るトイレ装置を備えた洋風便器の斜視図である。
【図2】図1のトイレ装置の構成を示す、便座ボックスの前部付近の断面図である。
【図3】図1のトイレ装置の給排水系の回路図である。
【符号の説明】
【0047】
1 洋風便器
2 便座ボックス
3 便座
4 便蓋
5 開口
10 衛生洗浄装置
11 ノズル
30 吐水部材
33 カーテンノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋風便器の後部上面に設置され、前部に開口を有したケーシングと、
該ケーシングに支持された便座と、
該ケーシング内に配置された衛生洗浄装置のノズルとを備えてなり、
該ノズルは、該開口を通って前方へ突出可能となっているトイレ装置において、
該開口に水カーテンを形成するための吐水部材を備えたことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記洋風便器又は衛生洗浄装置の使用を検知する検知手段と、この検知手段の検知信号に基づいて前記吐水部材に給水を行うよう制御する制御手段を設けたことを特徴とするトイレ装置。
【請求項3】
請求項2において、該検知手段は、前記便座への着座を検知するものであり、
前記制御手段は、便座への着座が検知されているときに前記吐水部材に給水を行うよう制御するものであることを特徴とするトイレ装置。
【請求項4】
請求項2において、該検知手段は、前記便座への着座と衛生洗浄装置の使用とを検知するものであり、
前記制御手段は、便座への着座及び衛生洗浄装置の使用が検知されているときに前記吐水部材に給水を行うよう制御するものであることを特徴とするトイレ装置。
【請求項5】
請求項2において、前記ケーシングに便蓋が支持されており、
前記検知手段は、該便蓋の開放と洋風便器近傍の人体とを検知するものであり、
前記制御手段は、便蓋が開放状態にあり且つ人体が検知される場合に前記吐水部材に給水を行うよう制御するものであることを特徴とするトイレ装置。
【請求項6】
請求項2において、
前記検知手段は、前記便座の起立と洋風便器近傍の人体とを検知するものであり、
前記制御手段は、便座が起立状態にあり且つ人体が検知される場合に前記吐水部材に給水を行うよう制御するものであることを特徴とするトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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