説明

トイレ装置

【課題】停電等によって本体装置の設定情報が消失しても、再度設定することなく節電運転モードを確実に実行することができ、しかも構成コストも安価としうるトイレ装置を提供する。
【解決手段】設定された節電開始時刻tになると、リモコン20から発信される節電指令信号によって節電運転が開始し、ヒータ付き機器A,BのヒータがOFF状態とされる。また、設定された節電終了時刻tになると、リモコン20から発信される節電終了指令信号によって節電運転が終了する。時刻tの前に停電が生じた場合、停電復旧後、時刻tに節電開始指令信号が入力されるので、時刻t〜tの間に節電運転が滞りなく実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水洗浄便座等のトイレ装置に係り、特にヒータ付き機器のヒータへの通電を停止する節電運転モードを設定可能なトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体臀部に向って温水を噴出してその洗浄を行う温水洗浄便座にあっては、水道水を加熱するためのヒータを備えている。また、暖房便座装置にあっては、便座を加温するためのヒータが設けられている。このようなトイレ装置において、利用頻度が少ない夜間や日中の所定期間だけ温水タンクや便座のヒータの駆動を停止することにより、消費電力を節電する節電運転モードを設定できるようにしたものが広く市販されている。
【0003】
従来のトイレ装置では、この節電運転モードの設定スイッチや節電モードの開始時刻及び終了時刻の設定スイッチをリモコンに設けることが多い。温水洗浄装置本体は、リモコンからのモード設定時刻及び時刻指定信号を受信し、この信号に基づいて節電運転モードの開始時刻及び終了時刻をメモリに設定する。そして、この節電運転を毎日行うようにモード設定すると、毎日、この開始時刻に節電運転を開始し、終了時刻に節電運転モードを停止するよう制御が行われる。また、リモコンの表示画面に節電運転モード中であることを示す文字、マーク等の表示がなされる。
【0004】
しかしながら、従来のトイレ装置にあっては、上記メモリとして揮発性メモリを用いることが多く、停電になるとメモリ内容が消失して通常運転モードに戻ってしまうため、再度節電運転モード及びその時刻を設定しなければならないという不便があった。また、リモコンには節電運転モードが表示されているにも拘ず、温水洗浄便座本体では通常運転モードに戻っているという食い違いも生じる。
【0005】
このような不便を解消するものとして、特開平10−317467には、節電運転モードの開始時刻及び終了時刻を示す信号(節電タイマ設定情報)を24時間に1回、リモコンから温水洗浄便座本体に送信し、この節電タイマ設定情報を揮発性メモリに記憶させることが記載されている。この方式によれば、節電タイマ設定情報信号を受信する前に停電があっても、停電復旧後に、24時間に1回定期的に送信されてくる節電タイマ設定情報信号を受信することにより、節電運転モードを設定された時刻に実行できる。
【0006】
しかしながら、この場合、節電タイマ設定情報信号を受信してから節電運転モード開始前に停電が発生すると、揮発性メモリに設定された節電タイマ設定情報が消失してしまうので、次に節電タイマ設定情報信号が送信されてくるまで、長時間にわたって節電運転が行われないという不便がある。なお、この点については、後に第5図(b)に比較例として詳細に説明する。
【0007】
別の従来例として、特開2003−278243には、リモコンと温水洗浄便座本体との間で双方向通信を行い、停電が生じたときには、停電復旧後に、温水洗浄便座本体で消失した情報をリモコンから得るように構成したトイレ装置が記載されている。
【0008】
しかしながら、双方向通信システムは、リモコンのみから発信する機種に比べ、本体側の送信装置とリモコン側の受信装置とがさらに必要となり、コスト高である。
【0009】
同様に、メモリとして特開平8−246534のようにEEPROM等の不揮発性メモリを用いて必要なすべての設定条件を記憶させることも、コスト高となる。
【特許文献1】特開平10−317467
【特許文献2】特開2003−278243
【特許文献3】特開平8−246534
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、停電等によって本体装置の設定情報が消失しても、再度設定することなく節電運転モードを確実に実行することができ、しかも構成コストも安価としうるトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1のトイレ装置は、ヒータ付き機器を備えた本体装置と、該本体装置を操作するためのリモコンとを有するトイレ装置であって、該ヒータ付き機器のヒータへの通電を停止する節電運転モードを設定可能なトイレ装置において、該リモコンに、節電モード設定手段と、節電モードの開始時刻及び終了時刻を設定する時刻設定手段と、前記本体装置に対し少なくとも該開始時刻に節電モード実行指令信号を発信し、少なくとも終了時刻に節電モード終了指令信号を発信する指令信号発信手段とが設けられ、前記本体装置に、該節電モード実行指令信号に基づいて節電運転を実行し、該節電モード終了指令信号に基づいて節電運転を終了するように前記ヒータ付き機器を制御する制御手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2のトイレ装置は、請求項1において、前記指令信号発信手段は、節電モード終了指令信号を所定時間毎に発信することを特徴とするものである。
【0013】
請求項3のトイレ装置は、請求項1又は2において、前記指令信号発信手段は、節電運転期間中に節電モード実行指令信号を所定時間毎に発信することを特徴とするものである。
【0014】
請求項4のトイレ装置は、請求項2又は3において、前記本体装置に、現状の運転モードが節電運転モードであるか否かを記憶する不揮発性記憶手段が設けられており、停電が生じた場合、停電復旧後には停電直前の運転モードで運転を再開するよう構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトイレ装置にあっては、リモコンに節電モードの開始時刻及び終了時刻が設定され、各々の時刻になると、リモコンが本体装置に対し節電モード実行指令信号及び節電モード終了指令信号を発信する。本体装置は、この信号に基づいて節電運転を開始及び終了する。この本体装置には、節電モードの開始時刻及び終了時刻を記憶するメモリは設けられておらず、本体装置に停電があっても、リモコンからの信号によって節電運転が実行される。
【0016】
なお、請求項2,3によれば、節電モードの開始時又は終了時に停電していても、停電回復後にリモコンからの信号が本体装置によって確実に受信される。
【0017】
請求項4のように、現状の運転モードを記憶しておき、停電があっても停電直前のモードで運転を再開するようにした場合には、節電モードの途中で短時間の停電があったときに、節電モード終了時刻まで節電モードで運転が行われる。また、節電モード終了時刻を跨いで停電があった場合でも、停電復旧後に節電モードにて運転が再開され、その後、リモコンからの信号により通常モードに戻る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
第1図は第1の実施の形態に係るトイレ装置の制御システムを示すブロック図、第2図はこのトイレ装置の運転パターンを示すチャートである。
【0020】
第1図の本体装置10は、洋風便器の上面に設置される便座ボックス(図示略)を備えている。この便座ボックス内にはヒータ付き機器Aとしての温水洗浄装置(温水タンク及び洗浄ノズルよりなる)が設けられている。また、便座ボックスには、ヒータ付き機器Bとしての暖房便座が連結されている。便座ボックス内には、脱臭ファン等の各種のヒータ無し機器Cが設置されている。これらの機器を制御する制御器11は、CPU、メモリ、各機器の駆動回路を備えている。この制御器11に対しては、商用電源から電源回路12を介して給電が行われる。また、制御器11には、リモコン20からの赤外線又は無線信号が受信部13を介して入力される。
【0021】
なお、この実施の形態では、制御器11には、現状の運転モードが節電運転モードであるか通常運転モード(非節電運転モード)であるかを記憶するメモリは設けられていない。
【0022】
リモコン20には、機器A〜Cの操作スイッチ21,22,23、節電モード設定スイッチ24、時刻設定スイッチ25が設けられ、これらの信号が制御器26に入力される。この制御器26によって、液晶パネル等の表示装置27が動作すると共に、送信部28から信号が本体装置10に向けて発信される。この制御器26は、CPU、メモリ、表示装置27の駆動回路、送信部28の駆動回路等を備えている。制御器26へは乾電池29から給電が行われる。
【0023】
スイッチ21を操作することにより、温水洗浄装置の洗浄動作が行われる。なお、スイッチ21には、洗浄開始スイッチ、洗浄終了スイッチ、洗浄強さ調節スイッチ、洗浄位置調節スイッチ、水温調節スイッチが含まれる。
【0024】
スイッチ22を操作することにより、暖房便座のON,OFFの設定を行うことができる。暖房便座をONとすることにより、便座がヒータによって加温され、OFFとすることにより、便座は非加温状態とされる。なお、以下の説明では、スイッチ22によって便座の暖房が設定されているものとする。
【0025】
スイッチ23を操作することにより、機器Cの作動や作動停止が行われる。
【0026】
時刻設定スイッチ25は、リモコン20に現在時刻や、節電運転開始時刻及び節電運転終了時刻を設定するためのものである。
【0027】
節電モード設定スイッチ24を1回押すと、制御器26のメモリに節電モードが設定されると共に、表示装置27に節電モードであることを示す「節電」という文字が表示される。そして、時刻設定スイッチ25で設定された節電モード開始時刻tに節電開始指令信号(節電モード実行指令信号)が発信され、節電モード終了時刻tに節電終了指令信号(節電モード終了指令信号)が発信される。また、節電モード設定スイッチ24をもう1回押すと、制御器26のメモリの節電モードが消去され、代りに通常モードが設定される。また、表示装置27の「節電」の表示が消える。
【0028】
この節電モードを設定している場合は、第2図(a)のように、設定された節電開始時刻tになると、リモコン20から発信される節電指令信号によって節電運転が開始し、ヒータ付き機器A,BのヒータがOFF状態とされる。また設定された節電終了時刻tになると、リモコン20から発信される節電終了指令信号によって節電運転が終了し、ヒータ付き機器A(温水洗浄装置)の温水タンクのヒータがONとされる。また、ヒータ付き機器B(暖房便座)も、節電運転終了に伴って便座ヒータがONとなる。
【0029】
以上の第2図(a)は、停電が生じない場合の運転状態を示している。
【0030】
第2図(b)は、時刻tの前に停電が生じた場合を示している。この場合、停電復旧後、時刻tに節電開始指令信号が入力されるので、時刻t〜tの間に節電運転が滞りなく実行される。
【0031】
第2図(c)は、時刻tを跨いで停電が発生した場合を示している。この場合は、時刻tに節電開始指令信号が発信されても、節電運転は開始しない。なお、翌日は正常通り節電運転が実行される。
【0032】
第2図(d)は、時刻tとtとの間に停電が発生し、時刻t前に復旧した場合を示している。第2図(e)は、時刻tとtとの間に停電が発生し、時刻t後に復旧した場合を示している。これらの場合は、停電に伴って節電運転は中断し、停電復旧後は非節電モードにて運転が行われる。
【0033】
なお、この第2図(b)のように、時刻t前に停電が復旧した場合、停電があった当日でも節電運転が滞りなく実行される。
【0034】
これに対し、前記特開平10−317467では、第5図(b)の通り、時刻t前に停電が復旧しても、停電があった当日は節電運転が実行されない。
【0035】
この点において、この第1の実施の形態は特開平10−317467よりも優れている。
【0036】
[第2の実施の形態]
この第2の実施の形態では、本体装置10の制御器11に現状の運転モードが節電運転モードであるか通常運転モード(非節電運転モード)であるかを記憶する不揮発性メモリが設けられている。
【0037】
また、リモコン20は、節電運転終了時刻t後も、所定時間毎に節電運転終了信号を繰り返し出力するよう構成されている。この所定時間は、0.5〜3時間の間から選定された時間であることが好ましい。
【0038】
第3図(a)は、停電が生じない場合の運転状態を示しており、時刻t〜tの間に節電運転が実行される。
【0039】
第3図(b)は、時刻tの前に停電が生じた場合を示している。この場合、停電復旧後時刻tに節電開始指令信号が入力されるので、時刻t〜tの間に節電運転が滞りなく実行される。
【0040】
第3図(c)は、時刻tを跨いで停電が発生した場合を示している。この場合は、時刻tに節電開始指令信号が発信されても、節電運転は開始しない。なお、翌日は正常通り節電運転が実行される。
【0041】
第3図(d)は、時刻tとtとの間に停電が発生し、時刻t前に復旧した場合を示している。第3図(e)は、時刻tとtとの間に停電が発生し、時刻tを過ぎた後に復旧した場合を示している。これらの場合は、停電に伴って節電運転は中断し、停電復旧後は節電モードにて運転が再開される。この節電運転は、その後入力される節電終了信号によって終了する。
【0042】
この第3図の実施の形態では、節電運転中に停電が発生しても、停電復旧後に再び節電運転が行われるので、節電効果が高い。また、第3図(e)のように、停電復旧が時刻t後であっても、その後、節電運転はリモコン20からの信号によって確実に終了する。
【0043】
[第3の実施の形態]
この第3の実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、本体装置10の制御器11に現状の運転モードが節電運転モードであるか非節電運転モードであるかを記憶する不揮発性メモリが設けられている。
【0044】
また、第2の実施の形態と同様に、リモコン20は、節電運転終了時刻t後も、所定時間毎に節電運転終了信号を繰り返し出力するよう構成されている。この第3の実施の形態では、リモコン20は、節電運転開始時刻t後も、時刻t〜tの間において規定時間毎に節電開始信号を繰り返し出力するよう構成されている。この規定時間は、0.5〜3時間の間から選定された時間であることが好ましい。
【0045】
第4図(a)は、停電が生じない場合の運転状態を示しており、時刻t〜tの間に節電運転が実行される。
【0046】
第4図(b)は、時刻tの前に停電が生じた場合を示している。この場合、停電復旧後、時刻tに節電開始指令信号が入力されるので、時刻t〜tの間に節電運転が滞りなく実行される。
【0047】
第4図(c)は、時刻tを跨いで停電が発生した場合を示している。この場合は、時刻tに節電開始指令信号が発信されても、節電運転は開始しない。しかしながら、2度目の節電開始信号の入力前に停電が復旧するため、2度目の節電開始信号を受信することにより節電運転が開始する。この節電運転は時刻tに終了する。
【0048】
第4図(d)は、時刻tとtとの間に停電が発生し、時刻t前に復旧した場合を示している。第4図(e)は、時刻tとtとの間に停電が発生し、時刻tが過ぎた後に復旧した場合を示している。これらの場合は、停電に伴って節電運転は中断し、停電復旧後は節電モードにて運転が再開される。この節電運転は、その後入力される節電終了信号によって終了する。
【0049】
この第4図の実施の形態では、第3図の場合と同じく、節電運転中に停電が発生しても、停電復旧後に再び節電運転が行われるので、節電効果が高い。また、第4図(e)のように、停電復旧が時刻t後であっても、その後、節電運転はリモコン20からの信号によって確実に終了する。
【0050】
この第4図の実施の形態では、節電開始時刻tを跨いで停電が発生しても、時刻t〜tの間に節電運転が開始するので、節電効果がさらに高いものとなる。
【0051】
[実施の形態と従来例との対比]
前記特開平10−317467(特許文献1)では、停電に備えて1日に1回、節電運転情報をリモコンから本体装置に送信し、その都度、本体装置に節電運転条件を設定している。
【0052】
このような制御方式であると、節電開始前に停電が発生すると、本体装置のメモリから節電運転情報が消えてしまうため、第5図(b)の通り、停電があった当日は節電運転が実行されないことになる。
【0053】
これに対し、各実施の形態では、いずれも、時刻tにリモコン20から本体装置10へ節電運転開始指令信号が送信されてくるので、第5図(a)の通り、時刻tよりも前に停電があっても、t〜tの間に確実に節電運転が行われる。なお、第5図(a)は、第1の実施の形態に係る第2図(b)を再掲したものである。
【0054】
また、本発明では、本体装置に、すべての節電運転情報を記憶するための不揮発性メモリは不要であり、コストも安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施の形態に係るトイレ装置の制御システムのブロック図である。
【図2】実施の形態に係るトイレ装置の作動を示すタイミングチャートである。
【図3】実施の形態に係るトイレ装置の作動を示すタイミングチャートである。
【図4】実施の形態に係るトイレ装置の作動を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明例と従来例とを対比するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0056】
10 本体装置
20 リモコン
11,26 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータ付き機器を備えた本体装置と、該本体装置を操作するためのリモコンとを有するトイレ装置であって、
該ヒータ付き機器のヒータへの通電を停止する節電運転モードを設定可能なトイレ装置において、
該リモコンに、
節電モード設定手段と、
節電モードの開始時刻及び終了時刻を設定する時刻設定手段と、
前記本体装置に対し少なくとも該開始時刻に節電モード実行指令信号を発信し、少なくとも終了時刻に節電モード終了指令信号を発信する指令信号発信手段と
が設けられ、
前記本体装置に、該節電モード実行指令信号に基づいて節電運転を実行し、該節電モード終了指令信号に基づいて節電運転を終了するように前記ヒータ付き機器を制御する制御手段が設けられていることを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記指令信号発信手段は、節電運転停止期間中に節電モード終了指令信号を所定時間毎に発信することを特徴とするトイレ装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記指令信号発信手段は、節電運転期間中に節電モード実行指令信号を所定時間毎に発信することを特徴とするトイレ装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記本体装置に、現状の運転モードが節電運転モードであるか否かを記憶する不揮発性記憶手段が設けられており、
停電が生じた場合、停電復旧後には停電直前の運転モードで運転を再開するよう構成されていることを特徴とするトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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