トイレ装置
【課題】
要介護者の排泄を介助する場合において、要介護者及び介護者ともに容易にかつ安全に臀部の清拭を行うことができるトイレ装置を提供する。
【解決手段】椅子部２上に設置された座部３３を着座状態で回転可能とし、回転後に使用者の腹部前方に支持部材４が配設される構成にすることにより、介護者が介助し易い向きに使用者を回転させた後に、排便後の清拭のために使用者が前傾姿勢をとっても支持部材４がストッパーとなり、転倒、落下の事故を防止できる。また、この支持部材４は通常使用時の肘掛けとして利用でき、かつ着座及び立ち上がり時の動作を介助することができる。
要介護者の排泄を介助する場合において、要介護者及び介護者ともに容易にかつ安全に臀部の清拭を行うことができるトイレ装置を提供する。
【解決手段】椅子部２上に設置された座部３３を着座状態で回転可能とし、回転後に使用者の腹部前方に支持部材４が配設される構成にすることにより、介護者が介助し易い向きに使用者を回転させた後に、排便後の清拭のために使用者が前傾姿勢をとっても支持部材４がストッパーとなり、転倒、落下の事故を防止できる。また、この支持部材４は通常使用時の肘掛けとして利用でき、かつ着座及び立ち上がり時の動作を介助することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明はトイレ装置に関するもので、特に体に障害のある方や高齢者等の介護をする場合において、使用者の清拭を容易にかつ安全に行えるトイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
近年、高齢化時代の到来とともに在宅の寝たきり老人の介護が大きな社会問題となっている。この介護に際しては、特に、排泄物の処理が問題である。このような事情に鑑みて、要介護者が利用しやすく、かつ、介護者の負担が軽くなるトイレ装置として、たとえば特許文献１に開示されるような便器用便座がある。この便器用便座は、図７に示すように、洋式便器の上端部に位置する便座２０を水平面内で回動自在とする便座支持体２１を構成することにより、要介護者が便座２０に腰掛けた状態で体を左右に回転できるため、介護者が作業しやすい位置に要介護者の向きを変えることができる。また、出入り口方向へ体の向きを変えた状態で立ち上がることができるため、要介護者の負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開平７−２０４１２５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、上記特許文献１の技術は、要介護者の臀部の清拭をする場合に、要介護者に前傾姿勢をとってもらい、便座部と臀部の隙間に介護者の手を挿しいれる必要があるため、要介護者が前傾姿勢でバランスを崩し、便座から転落・転倒するおそれがあった。
【０００５】
そこで、この発明は、かかる不具合を解決するためになされたもので、要介護者の排泄後の臀部の清拭作業を、要介護者及び介護者ともに容易にかつ安全に行うことができることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明の第１の課題解決手段は、椅子部と、使用者が着座可能であり、前記椅子部に回転可能に支持され、前記椅子部に対して回転することにより、基本状態と第２の状態をとる座部と、使用者を支持可能であり、使用者が前記座部に着座した状態で前記座部が前記第２の状態のときに、使用者の少なくとも脚部が前記座部との間に位置するように配置される支持部材と、を備えるものである。
【０００７】
また、本発明の第２の課題解決手段は、第１の課題解決手段において、前記支持部材は、前記座部が前記第２の状態にあり、前記第２の状態において前記座部に着座していた使用者が前傾姿勢をとる際に使用者を支持可能なものである。
【０００８】
また、本発明の第３の課題解決手段は、第１の課題解決手段または第２の課題解決手段において、前記座部の回転中心位置が、前記座部の上方から見て使用者の着座状態における前側端部と後側端部を結んだ線の中心位置に対して、前記前側端部の側に配設されるものである。
【０００９】
また、本発明の第４の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第３の課題解決手段のいずれか一の解決手段において、座部を回転できる駆動装置を備えるものである。
【００１０】
また、本発明の第５の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第４の課題解決手段のいずれか一の課題解決手段において、前記座部の回転を所定の位置で保持する保持手段を備えるものである。
【００１１】
また、本発明の第６の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第５の課題解決手段のいずれか一の課題解決手段において、前記座部を前記第２の状態から前記基本状態に復帰させる復帰手段を備えるものである。
【００１２】
また、本発明の第７の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第６の課題解決手段のいずれか一の課題解決手段において、前記座部の回転範囲を規制するストッパー手段を備えるものである。
【００１３】
また、本発明の第８の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第７の課題解決手段のいずれか一の課題解決手段において、前記支持部材は、使用者が着座する際或いは立ち上がる際に手あるいは肘を置く肘掛け部として機能可能なものである。
【００１４】
また、本発明の第９の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第８の課題解決手段のいずれか一の課題解決手段において、前記座部には使用者の着座状態において使用者の後方側に凹み形状部あるいは不連続部が形成されるものである。
【００１５】
また、本発明の第１０の課題解決手段は、第９の課題解決手段において、前記凹み形状部には、前記座部の内側に向かってテーパ形状が形成されるものである。
【００１６】
また、本発明の第１１の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第１０の課題解決手段のいずれか一の課題解決手段において、前記座部は、前記椅子部を覆う被覆状態と、前記椅子部から離間する開放状態をとり、前記被覆状態において前記椅子部に回転可能に支持されるものである。
【発明の効果】
【００１７】
本発明の第１の解決手段によれば、使用者を支持する支持部材が備えられているため、例えば、使用者が座部に着座した状態で座部を基本状態から第２の状態に回転させると、使用者の脚部が支持部材と座部との間に位置する状態となる。その結果、支持部材がストッパーの機能を果たして使用者の転倒や転落等を防止することができる。
【００１８】
また、本発明の第２の解決手段によれば、例えば、排便後の清拭のために使用者が前傾姿勢をとる際に、支持部材がストッパーの機能を果たして使用者の転倒や転落等を防止することができる。
【００１９】
また、本発明の第３の解決手段によれば、座部を回転させると、座部の後方部が椅子部の外周から外側に出る構成とすることができ、視認性及び作業性が向上し、介護者の負担を軽減することができる。
【００２０】
また、本発明の第４の解決手段によれば、例えば、使用者が座部に着座した状態で座部を回転させる際に、容易に任意の位置に体を向けることができる。
【００２１】
また、本発明の第５の解決手段によれば、例えば、排便後の清拭のため、所定の位置に座部を回転させた後に介護者が作業を行う際に、不用意な回動を防止することができるため、安全性を向上させることができる。
【００２２】
また、本発明の第６の解決手段によれば、座部を第２の状態から基本状態への復帰が容易となり、使い勝手が向上する。
【００２３】
また、本発明の第７の解決手段によれば、座部の必要以上の回動を防止することができ、さらに安全性を向上させることができる。
【００２４】
また、本発明の第８の解決手段によれば、使用者が座部に着座する際、或いは座部から立ち上がる際に、支持部材に手あるいは肘を置く、あるいは、支持部材を持つことにより、その動作を補助することができるため、使い勝手及び安全性が向上する。
【００２５】
また、本発明の第９あるいは第１０の解決手段によれば、着座中の使用者の臀部と座部との間に空間を確保することができるため、例えば、臀部の清拭を容易に行うことができる。
【００２６】
また、本発明の第１１の解決手段によれば、座部に腰掛けずに用を足す際に、座部が邪魔にならないようにできるため、使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【００２７】
【図１】本発明のトイレ装置の構成の一例を示す説明図である。
【図２】本発明のトイレ装置の座部の第２の状態を示す説明図である。
【図３】本発明のトイレ装置の使用状態を示す説明図である。
【図４】本発明のトイレ装置の座部が椅子部から離間した状態を示す説明図である。
【図５】本発明のトイレ装置の座部の凹み形状部およびテーパ形状部の例を示す説明図である。
【図６】本発明のトイレ装置の座部の不連続部の例を示す説明図である。
【図７】従来例である便座装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【００２８】
＜第一の実施形態＞
以下、本発明の第一の実施形態を図面を用いて説明する。図１（ａ）は本実施の形態のトイレ装置１の上面図、図１（ｂ）は本実施の形態のトイレ装置１の側面図、図２（ａ）は座部３３の第２の状態を示すトイレ装置１の上面図、図２（ｂ）は座部３３の第２の状態を示すトイレ装置１の側面図、図３は使用者がトイレ装置１を使用している状態を示す斜視図、図４は座部３３が椅子部２から離間した状態を示すトイレ装置１の側面図である。
【００２９】
全体の構成について説明する。図１において、トイレ装置１は、椅子部２と、便座３と、支持部材４から成っている。椅子部２上には便座３が設けられており、便座３は、本体部３１と、ベース部３２と、座部３３とを備えている。
【００３０】
本体部３１は、椅子部２の上部後側に固定されており、ベース部３２は、本体部３１に回転軸部１３を中心として図１（ｂ）中矢印方向（時計回り及び反時計回り方向）に回転可能に支持され、本体部３１ひいては椅子部２に対して上下動可能とされている。
【００３１】
座部３３は環状を呈し、ベース部３２に図１（ａ）中矢印方向（時計回り及び反時計回り方向）に回転可能に支持されている。即ち、座部３３は、ベース部３２及び本体部３１を介して椅子部２に対して回転可能に支持されるとともに、ベース部３２を介して本体部３１及び椅子部３に対して上下動可能とされている。この座部３３は使用者が着座した状態で回転可能な強度を有しており、合成樹脂材料等で構成されている。
【００３２】
図１において座部３３は、使用者が座部３３に着座した場合に正面を向く初期状態（第１の状態）をとっている。この初期状態から図１（ａ）中の矢印時計回り方向に座部３３が回転されると、図２に示されるように、使用者が座部３３に着座した場合に正面から右斜め前方向を向く清拭状態（第２の状態）をとることになる。
【００３３】
図２（ａ）においては、座部３３の初期状態から図１（ａ）中或いは図２（ａ）中の矢印時計回り方向に座部３３が回転された状態が示されているが、特にこの構成に限定されるものではなく、座部３３の初期状態から図１（ａ）中或いは図２（ａ）中の矢印反時計回り方向に座部３３が回転されて、使用者が座部３３に着座した場合に正面から左斜め前方向を向く清拭状態をとるようにされても良い。
【００３４】
図１（ａ）中に示されるように、座部３３が回転する回転中心位置Ａは、座部３３の上方から見て使用者の着座状態における座部３３の前側端部３３ａと後側端部３３ｂを結んだ線の中心位置Ｂに対して前側端部３３ａの側に配設されている。これにより、図２（ａ）に示されるように、座部３３が回転すると座部３３の後側が椅子部２の外周から外側に出るようになっている。これにより、例えば、排便後の清拭において介護者の視認性及び作業性が向上し、介護者の負担を軽減することができる。
【００３５】
図２に示されるように、便座３の座部３３には、モータ５１が内蔵された駆動装置５が備えられ、ベース部３２には、前側にレール部３２ｃが設けられ、後側に連続した歯部を備えたレール部３２ｄが設けられている。レール部３２ｃ、３２ｄと座部３３は、ベアリング等の摺動部材（図示なし）を介して接続され、座部３３の回動がスムーズに行われるように構成されている。モータ５１の出力軸にはウォームギアのウォーム部５２が設けられており、ウォーム部５２とレール部３２ｄの歯部が噛み合うように接続されている。
【００３６】
使用者がトイレ装置１に設置されたボタン（図示なし）あるいはリモコン等のスイッチ（図示なし）を操作することによって、モータ５１の出力軸が回転すると、ウォームギアの減速機構によって回転が減速される。そして、減速されたウォーム部５２の回転に合わせてウォーム部５２とレール部３２ｄの歯部とが順次噛み合わされることにより、便座３の座部３３が図２（ａ）中矢印方向に回動する。これにより、使用者が座部３３に着座した状態で座部３３を回転させる際に、使用者自身の力で体を回転させなくとも、容易に任意の位置に体を向けることができる。
【００３７】
この駆動装置５は、便座３のベース部３２側に設けられていてもよく、もちろん椅子部２側に設置されていてもよい。また、便座３の座部３３は駆動装置５を駆動させずに使用者の力、あるいは介護者の力によって回転させてもよい。
【００３８】
便座３には、座部３３を回転させた際に所定の位置に保持するロック機構としての保持手段６が備えられている。ロック機構は、使用者がトイレ装置１に設置されたボタン等の操作によって座部３３に設けられたラッチ３３ｅがレール部３２ｄの歯部に噛み込むことにより、座部３３がロックされる。
【００３９】
これにより、例えば、排便後の清拭のため、所定の位置に座部３３を回転させた後に介護者が作業を行う際に、不用意な座部３３の回動を防止することができるため、安全性を向上させることができる。
【００４０】
この保持手段６は、駆動装置５の駆動を停止させることによって座部３３を任意の回転位置に保持してもよい。
【００４１】
便座３には、座部３３を回転させた位置から使用者が力を加えずに元の正面の向きに復帰する復帰手段７が備えられている。この復帰手段７は、座部３３とベース部３２との間にばね９の端部をそれぞれ接続した状態で設けられ、このばね９の付勢力によって座部３３を正面を向く初期状態（第１の状態）に復帰させてもよい。これにより、座部３３の清拭状態から初期状態への復帰が容易となり、使い勝手が向上する。
【００４２】
また、便座３に座部３３の回転位置を検出する位置検出装置（図示なし）および座部３３の回転位置を記憶する位置記憶装置（図示なし）を設けることにより、復帰手段７を構成することもできる。この場合、あらかじめ座部３３の初期状態の位置を位置記憶装置が記憶しておき、座部３３の回動により初期状態から回転した角度を位置検出装置によって検出する。そして、使用者が座部３３を初期状態へ復帰させるためにスイッチを操作することによって、位置検出装置が検出した位置から初期状態の位置までの回転角度分だけ自動的に駆動装置が駆動し、座部３３を初期状態の向きに復帰させることができる。
【００４３】
便座３には、座部３３を回転させる際に、所定の回転位置からはそれ以上回転しなくなるようなストッパー手段８が備えられている。このストッパー手段８は、ベース部３２に設けられた突起部３２ｆと座部３３に設けられた突起部３３ｇが当接することにより、座部３３の回動を停止させてもよい。これにより、座部３３の必要以上の回動を防止することができ、さらに安全性を向上させることができる。
【００４４】
また、便座３に設けた位置検出装置によって座部３３の初期状態の位置からの回転角度を検出して、座部３３が所定の回転角度に達したことを位置検出装置が検出した時に駆動装置５の駆動を強制的に停止させることにより、ストッパー手段８を構成することもできる。
【００４５】
図１、図２に示されるように、椅子部２上の便座３の座部３３に使用者が着座した状態において、使用者の左側および右側には棒状の支持部材４が椅子部２に一体的に設けられている。使用者がトイレ装置を使用する場合、使用者が用を足した後に着座状態で座部３３を右側（図１（ａ）、図２（ａ）中時計回り方向）に回転させた際に（即ち、座部３３の清拭状態において）、図３に示されるように使用者の脚部が便座３ひいては座部３３と支持部材４の間に入り込む状態、すなわち、使用者の腹部前方付近に支持部材４が位置する状態となる。
【００４６】
座部３３の清拭状態において、介護者が使用者の臀部の清拭を行うために使用者が前傾姿勢をとった場合に、例えば使用者の腹部前方が支持部材４に当接し、これにより、使用者は支持部材４によって支持される。すなわち、支持部材４は、使用者が椅子部２から落下したり転倒したりするのを防止するストッパーとしての機能を果たす。また、使用者が前傾姿勢をとる場合に、手で支持部材４を持つことにより、使用者が支持部材４によって支持された状態で前傾姿勢をとることができる。なお、支持部材４は、座部３３を左側（図１（ａ）、図２（ａ）中反時計回り方向）に回転させた際においても同様の機能を果たす。
【００４７】
支持部材４は、使用者を支持することができる強度と大きさを備えている。また、支持部材４は、使用者が便座３に着座あるいは便座３から立ち上がる際に、手あるいは肘によって支持部材４を利用して体を支えながら動作を介助できる肘掛け部としての機能も有している。これにより、トイレ装置１の使い勝手及び安全性が向上する。
【００４８】
なお、本実施例では、支持部材４は椅子部２に一体的に設けられているが、トイレ装置１が設置されている部屋の床あるいは壁に一体的に設けられる構成でもよい。また、本実施例では、支持部材４は椅子部２の左右両側に配置されているが、片側のみに設けられていてもよい。また、図１、図２では、支持部材４は棒状の形状をしているが、使用者が便座３に着座して前傾姿勢をとった時に使用者の落下や転倒が防止できる形状であればよく、例えば、トイレ装置１が設置されている部屋の天井あるいは壁から吊り輪を下げた形状であってもよい。
【００４９】
更に、支持部材４は、使用者の身長、体格によって最適なストッパーの機能を有する位置に配置されるように、上下左右に設置位置を移動可能な機能を有していれば、様々な体格の使用者のストッパーおよび肘掛け部として対応することができる。また、支持部材４は椅子部２の下方あるいは後方に格納できる機能を有していれば、トイレ装置１を利用する使用者で、支持部材４を不要とする使用者、例えば、健常者が通常のトイレ装置と何ら変わりなく快適に用を足すことができる。
【００５０】
また、図１、図２においてはベース部３２ひいては座部３３は、椅子部２の上部を覆う被覆状態をとっている。トイレ装置１の使用方法が男性の小用等の場合には、図４に示すように、便座３のベース部３２を回転軸部１３を中心に上方向（図４中矢印方向）に回動させることにより、座部３３及びベース部３２は椅子部２から離間させる開放状態をとることができる。これにより、使用者は便座３が邪魔にならずに用を足すことができる。
【００５１】
＜第二の実施形態＞
上述の第一の実施形態では、座部３３の回転により使用者及び介護者の負担を軽減できる構成を説明したが、座部３３の形状によって更なる効果を得ることができる。
【００５２】
本発明の第二の実施形態を図５および図６を用いて説明する。図５は本実施の形態のトイレ装置の座部３３の凹み形状部１０およびテーパ形状部１２の例を示す斜視図、図６は本実施の形態のトイレ装置の座部３３の不連続部１１の例を示す斜視図である。
【００５３】
図５において、使用者の着座状態における座部３３の後側には、使用者の臀部が座部３３と接触する面に対して段差を有する凹み形状部１０が設けられている。また、凹み形状部１０の底面には更に座部３３の外周端部側から中心方向に向かって凹み量が大きくなるようにテーパ形状部１２が設けられている。
【００５４】
この時、使用者が用を足した後、介護者が使用者の臀部の清拭を行うために手を臀部と座部３３の間に挿しいれる際に、使用者がわずかに前傾姿勢をとるか腰を浮かせるだけで、臀部と凹み形状部１０の間には手を挿し入れることができる空間が形成されるため、介護者は容易に使用者の臀部の清拭を行うことができる。
【００５５】
なお、トイレ装置が設置されている部屋内のトイレ装置の配置に応じて、介護者がトイレ装置の後側へ移動しなくとも作業ができるように、凹み形状部１０は座部３３の斜め後方側に形成されていてもよく、斜め後方の左右２箇所にそれぞれ形成されていてもよい。
【００５６】
更に、凹み形状部１０を２箇所形成する場合には、介護者が作業する頻度が低い側の凹み形状部１０を覆う着脱式のカバー（図示なし）を設けてもよい。この場合、使用者が座部３に着座した際に、臀部と座部３の接触する面積がカバーのない時よりも増えるため、座り心地がよくなるとともに、トイレ装置を設置するさまざまな部屋に対応できる座部３３を一種類の形状で共通化して製造することができる。
【００５７】
図５において、使用者の臀部の清拭をするために介護者が手を挿し入れる空間を形成する凹み形状部１０を設けたが、より大きな空間を形成するために、図６に示すように座部３３の後側に不連続部１１を設けることもできる。この場合、使用者が前傾姿勢をとったり、腰を浮かせたりしなくとも、介護者は座部３３の不連続部１１に手を挿し入れて使用者の臀部の清拭を容易にすることができるとともに、使用者の負担をより軽減することができる。
【００５８】
また、上述の第一および第二の実施形態を併用することにより、更に使用者および介護者の負担を軽減することができ、好適である。
【００５９】
以上、本発明を上記実施の形態に則して説明したが、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の原理に準ずる各種態様を含むものである。
【符号の説明】
【００６０】
１・・・トイレ装置
２・・・椅子部
３・・・便座
４・・・支持部材（肘掛け部）
Ａ・・・回転中心位置
５・・・駆動装置
６・・・保持手段
７・・・復帰手段
８・・・ストッパー手段
１０・・・凹み形状部
１１・・・不連続部
１２・・・テーパ形状部
３３・・・座部
【技術分野】
【０００１】
本発明はトイレ装置に関するもので、特に体に障害のある方や高齢者等の介護をする場合において、使用者の清拭を容易にかつ安全に行えるトイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
近年、高齢化時代の到来とともに在宅の寝たきり老人の介護が大きな社会問題となっている。この介護に際しては、特に、排泄物の処理が問題である。このような事情に鑑みて、要介護者が利用しやすく、かつ、介護者の負担が軽くなるトイレ装置として、たとえば特許文献１に開示されるような便器用便座がある。この便器用便座は、図７に示すように、洋式便器の上端部に位置する便座２０を水平面内で回動自在とする便座支持体２１を構成することにより、要介護者が便座２０に腰掛けた状態で体を左右に回転できるため、介護者が作業しやすい位置に要介護者の向きを変えることができる。また、出入り口方向へ体の向きを変えた状態で立ち上がることができるため、要介護者の負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開平７−２０４１２５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、上記特許文献１の技術は、要介護者の臀部の清拭をする場合に、要介護者に前傾姿勢をとってもらい、便座部と臀部の隙間に介護者の手を挿しいれる必要があるため、要介護者が前傾姿勢でバランスを崩し、便座から転落・転倒するおそれがあった。
【０００５】
そこで、この発明は、かかる不具合を解決するためになされたもので、要介護者の排泄後の臀部の清拭作業を、要介護者及び介護者ともに容易にかつ安全に行うことができることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明の第１の課題解決手段は、椅子部と、使用者が着座可能であり、前記椅子部に回転可能に支持され、前記椅子部に対して回転することにより、基本状態と第２の状態をとる座部と、使用者を支持可能であり、使用者が前記座部に着座した状態で前記座部が前記第２の状態のときに、使用者の少なくとも脚部が前記座部との間に位置するように配置される支持部材と、を備えるものである。
【０００７】
また、本発明の第２の課題解決手段は、第１の課題解決手段において、前記支持部材は、前記座部が前記第２の状態にあり、前記第２の状態において前記座部に着座していた使用者が前傾姿勢をとる際に使用者を支持可能なものである。
【０００８】
また、本発明の第３の課題解決手段は、第１の課題解決手段または第２の課題解決手段において、前記座部の回転中心位置が、前記座部の上方から見て使用者の着座状態における前側端部と後側端部を結んだ線の中心位置に対して、前記前側端部の側に配設されるものである。
【０００９】
また、本発明の第４の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第３の課題解決手段のいずれか一の解決手段において、座部を回転できる駆動装置を備えるものである。
【００１０】
また、本発明の第５の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第４の課題解決手段のいずれか一の課題解決手段において、前記座部の回転を所定の位置で保持する保持手段を備えるものである。
【００１１】
また、本発明の第６の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第５の課題解決手段のいずれか一の課題解決手段において、前記座部を前記第２の状態から前記基本状態に復帰させる復帰手段を備えるものである。
【００１２】
また、本発明の第７の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第６の課題解決手段のいずれか一の課題解決手段において、前記座部の回転範囲を規制するストッパー手段を備えるものである。
【００１３】
また、本発明の第８の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第７の課題解決手段のいずれか一の課題解決手段において、前記支持部材は、使用者が着座する際或いは立ち上がる際に手あるいは肘を置く肘掛け部として機能可能なものである。
【００１４】
また、本発明の第９の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第８の課題解決手段のいずれか一の課題解決手段において、前記座部には使用者の着座状態において使用者の後方側に凹み形状部あるいは不連続部が形成されるものである。
【００１５】
また、本発明の第１０の課題解決手段は、第９の課題解決手段において、前記凹み形状部には、前記座部の内側に向かってテーパ形状が形成されるものである。
【００１６】
また、本発明の第１１の課題解決手段は、第１の課題解決手段乃至第１０の課題解決手段のいずれか一の課題解決手段において、前記座部は、前記椅子部を覆う被覆状態と、前記椅子部から離間する開放状態をとり、前記被覆状態において前記椅子部に回転可能に支持されるものである。
【発明の効果】
【００１７】
本発明の第１の解決手段によれば、使用者を支持する支持部材が備えられているため、例えば、使用者が座部に着座した状態で座部を基本状態から第２の状態に回転させると、使用者の脚部が支持部材と座部との間に位置する状態となる。その結果、支持部材がストッパーの機能を果たして使用者の転倒や転落等を防止することができる。
【００１８】
また、本発明の第２の解決手段によれば、例えば、排便後の清拭のために使用者が前傾姿勢をとる際に、支持部材がストッパーの機能を果たして使用者の転倒や転落等を防止することができる。
【００１９】
また、本発明の第３の解決手段によれば、座部を回転させると、座部の後方部が椅子部の外周から外側に出る構成とすることができ、視認性及び作業性が向上し、介護者の負担を軽減することができる。
【００２０】
また、本発明の第４の解決手段によれば、例えば、使用者が座部に着座した状態で座部を回転させる際に、容易に任意の位置に体を向けることができる。
【００２１】
また、本発明の第５の解決手段によれば、例えば、排便後の清拭のため、所定の位置に座部を回転させた後に介護者が作業を行う際に、不用意な回動を防止することができるため、安全性を向上させることができる。
【００２２】
また、本発明の第６の解決手段によれば、座部を第２の状態から基本状態への復帰が容易となり、使い勝手が向上する。
【００２３】
また、本発明の第７の解決手段によれば、座部の必要以上の回動を防止することができ、さらに安全性を向上させることができる。
【００２４】
また、本発明の第８の解決手段によれば、使用者が座部に着座する際、或いは座部から立ち上がる際に、支持部材に手あるいは肘を置く、あるいは、支持部材を持つことにより、その動作を補助することができるため、使い勝手及び安全性が向上する。
【００２５】
また、本発明の第９あるいは第１０の解決手段によれば、着座中の使用者の臀部と座部との間に空間を確保することができるため、例えば、臀部の清拭を容易に行うことができる。
【００２６】
また、本発明の第１１の解決手段によれば、座部に腰掛けずに用を足す際に、座部が邪魔にならないようにできるため、使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【００２７】
【図１】本発明のトイレ装置の構成の一例を示す説明図である。
【図２】本発明のトイレ装置の座部の第２の状態を示す説明図である。
【図３】本発明のトイレ装置の使用状態を示す説明図である。
【図４】本発明のトイレ装置の座部が椅子部から離間した状態を示す説明図である。
【図５】本発明のトイレ装置の座部の凹み形状部およびテーパ形状部の例を示す説明図である。
【図６】本発明のトイレ装置の座部の不連続部の例を示す説明図である。
【図７】従来例である便座装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【００２８】
＜第一の実施形態＞
以下、本発明の第一の実施形態を図面を用いて説明する。図１（ａ）は本実施の形態のトイレ装置１の上面図、図１（ｂ）は本実施の形態のトイレ装置１の側面図、図２（ａ）は座部３３の第２の状態を示すトイレ装置１の上面図、図２（ｂ）は座部３３の第２の状態を示すトイレ装置１の側面図、図３は使用者がトイレ装置１を使用している状態を示す斜視図、図４は座部３３が椅子部２から離間した状態を示すトイレ装置１の側面図である。
【００２９】
全体の構成について説明する。図１において、トイレ装置１は、椅子部２と、便座３と、支持部材４から成っている。椅子部２上には便座３が設けられており、便座３は、本体部３１と、ベース部３２と、座部３３とを備えている。
【００３０】
本体部３１は、椅子部２の上部後側に固定されており、ベース部３２は、本体部３１に回転軸部１３を中心として図１（ｂ）中矢印方向（時計回り及び反時計回り方向）に回転可能に支持され、本体部３１ひいては椅子部２に対して上下動可能とされている。
【００３１】
座部３３は環状を呈し、ベース部３２に図１（ａ）中矢印方向（時計回り及び反時計回り方向）に回転可能に支持されている。即ち、座部３３は、ベース部３２及び本体部３１を介して椅子部２に対して回転可能に支持されるとともに、ベース部３２を介して本体部３１及び椅子部３に対して上下動可能とされている。この座部３３は使用者が着座した状態で回転可能な強度を有しており、合成樹脂材料等で構成されている。
【００３２】
図１において座部３３は、使用者が座部３３に着座した場合に正面を向く初期状態（第１の状態）をとっている。この初期状態から図１（ａ）中の矢印時計回り方向に座部３３が回転されると、図２に示されるように、使用者が座部３３に着座した場合に正面から右斜め前方向を向く清拭状態（第２の状態）をとることになる。
【００３３】
図２（ａ）においては、座部３３の初期状態から図１（ａ）中或いは図２（ａ）中の矢印時計回り方向に座部３３が回転された状態が示されているが、特にこの構成に限定されるものではなく、座部３３の初期状態から図１（ａ）中或いは図２（ａ）中の矢印反時計回り方向に座部３３が回転されて、使用者が座部３３に着座した場合に正面から左斜め前方向を向く清拭状態をとるようにされても良い。
【００３４】
図１（ａ）中に示されるように、座部３３が回転する回転中心位置Ａは、座部３３の上方から見て使用者の着座状態における座部３３の前側端部３３ａと後側端部３３ｂを結んだ線の中心位置Ｂに対して前側端部３３ａの側に配設されている。これにより、図２（ａ）に示されるように、座部３３が回転すると座部３３の後側が椅子部２の外周から外側に出るようになっている。これにより、例えば、排便後の清拭において介護者の視認性及び作業性が向上し、介護者の負担を軽減することができる。
【００３５】
図２に示されるように、便座３の座部３３には、モータ５１が内蔵された駆動装置５が備えられ、ベース部３２には、前側にレール部３２ｃが設けられ、後側に連続した歯部を備えたレール部３２ｄが設けられている。レール部３２ｃ、３２ｄと座部３３は、ベアリング等の摺動部材（図示なし）を介して接続され、座部３３の回動がスムーズに行われるように構成されている。モータ５１の出力軸にはウォームギアのウォーム部５２が設けられており、ウォーム部５２とレール部３２ｄの歯部が噛み合うように接続されている。
【００３６】
使用者がトイレ装置１に設置されたボタン（図示なし）あるいはリモコン等のスイッチ（図示なし）を操作することによって、モータ５１の出力軸が回転すると、ウォームギアの減速機構によって回転が減速される。そして、減速されたウォーム部５２の回転に合わせてウォーム部５２とレール部３２ｄの歯部とが順次噛み合わされることにより、便座３の座部３３が図２（ａ）中矢印方向に回動する。これにより、使用者が座部３３に着座した状態で座部３３を回転させる際に、使用者自身の力で体を回転させなくとも、容易に任意の位置に体を向けることができる。
【００３７】
この駆動装置５は、便座３のベース部３２側に設けられていてもよく、もちろん椅子部２側に設置されていてもよい。また、便座３の座部３３は駆動装置５を駆動させずに使用者の力、あるいは介護者の力によって回転させてもよい。
【００３８】
便座３には、座部３３を回転させた際に所定の位置に保持するロック機構としての保持手段６が備えられている。ロック機構は、使用者がトイレ装置１に設置されたボタン等の操作によって座部３３に設けられたラッチ３３ｅがレール部３２ｄの歯部に噛み込むことにより、座部３３がロックされる。
【００３９】
これにより、例えば、排便後の清拭のため、所定の位置に座部３３を回転させた後に介護者が作業を行う際に、不用意な座部３３の回動を防止することができるため、安全性を向上させることができる。
【００４０】
この保持手段６は、駆動装置５の駆動を停止させることによって座部３３を任意の回転位置に保持してもよい。
【００４１】
便座３には、座部３３を回転させた位置から使用者が力を加えずに元の正面の向きに復帰する復帰手段７が備えられている。この復帰手段７は、座部３３とベース部３２との間にばね９の端部をそれぞれ接続した状態で設けられ、このばね９の付勢力によって座部３３を正面を向く初期状態（第１の状態）に復帰させてもよい。これにより、座部３３の清拭状態から初期状態への復帰が容易となり、使い勝手が向上する。
【００４２】
また、便座３に座部３３の回転位置を検出する位置検出装置（図示なし）および座部３３の回転位置を記憶する位置記憶装置（図示なし）を設けることにより、復帰手段７を構成することもできる。この場合、あらかじめ座部３３の初期状態の位置を位置記憶装置が記憶しておき、座部３３の回動により初期状態から回転した角度を位置検出装置によって検出する。そして、使用者が座部３３を初期状態へ復帰させるためにスイッチを操作することによって、位置検出装置が検出した位置から初期状態の位置までの回転角度分だけ自動的に駆動装置が駆動し、座部３３を初期状態の向きに復帰させることができる。
【００４３】
便座３には、座部３３を回転させる際に、所定の回転位置からはそれ以上回転しなくなるようなストッパー手段８が備えられている。このストッパー手段８は、ベース部３２に設けられた突起部３２ｆと座部３３に設けられた突起部３３ｇが当接することにより、座部３３の回動を停止させてもよい。これにより、座部３３の必要以上の回動を防止することができ、さらに安全性を向上させることができる。
【００４４】
また、便座３に設けた位置検出装置によって座部３３の初期状態の位置からの回転角度を検出して、座部３３が所定の回転角度に達したことを位置検出装置が検出した時に駆動装置５の駆動を強制的に停止させることにより、ストッパー手段８を構成することもできる。
【００４５】
図１、図２に示されるように、椅子部２上の便座３の座部３３に使用者が着座した状態において、使用者の左側および右側には棒状の支持部材４が椅子部２に一体的に設けられている。使用者がトイレ装置を使用する場合、使用者が用を足した後に着座状態で座部３３を右側（図１（ａ）、図２（ａ）中時計回り方向）に回転させた際に（即ち、座部３３の清拭状態において）、図３に示されるように使用者の脚部が便座３ひいては座部３３と支持部材４の間に入り込む状態、すなわち、使用者の腹部前方付近に支持部材４が位置する状態となる。
【００４６】
座部３３の清拭状態において、介護者が使用者の臀部の清拭を行うために使用者が前傾姿勢をとった場合に、例えば使用者の腹部前方が支持部材４に当接し、これにより、使用者は支持部材４によって支持される。すなわち、支持部材４は、使用者が椅子部２から落下したり転倒したりするのを防止するストッパーとしての機能を果たす。また、使用者が前傾姿勢をとる場合に、手で支持部材４を持つことにより、使用者が支持部材４によって支持された状態で前傾姿勢をとることができる。なお、支持部材４は、座部３３を左側（図１（ａ）、図２（ａ）中反時計回り方向）に回転させた際においても同様の機能を果たす。
【００４７】
支持部材４は、使用者を支持することができる強度と大きさを備えている。また、支持部材４は、使用者が便座３に着座あるいは便座３から立ち上がる際に、手あるいは肘によって支持部材４を利用して体を支えながら動作を介助できる肘掛け部としての機能も有している。これにより、トイレ装置１の使い勝手及び安全性が向上する。
【００４８】
なお、本実施例では、支持部材４は椅子部２に一体的に設けられているが、トイレ装置１が設置されている部屋の床あるいは壁に一体的に設けられる構成でもよい。また、本実施例では、支持部材４は椅子部２の左右両側に配置されているが、片側のみに設けられていてもよい。また、図１、図２では、支持部材４は棒状の形状をしているが、使用者が便座３に着座して前傾姿勢をとった時に使用者の落下や転倒が防止できる形状であればよく、例えば、トイレ装置１が設置されている部屋の天井あるいは壁から吊り輪を下げた形状であってもよい。
【００４９】
更に、支持部材４は、使用者の身長、体格によって最適なストッパーの機能を有する位置に配置されるように、上下左右に設置位置を移動可能な機能を有していれば、様々な体格の使用者のストッパーおよび肘掛け部として対応することができる。また、支持部材４は椅子部２の下方あるいは後方に格納できる機能を有していれば、トイレ装置１を利用する使用者で、支持部材４を不要とする使用者、例えば、健常者が通常のトイレ装置と何ら変わりなく快適に用を足すことができる。
【００５０】
また、図１、図２においてはベース部３２ひいては座部３３は、椅子部２の上部を覆う被覆状態をとっている。トイレ装置１の使用方法が男性の小用等の場合には、図４に示すように、便座３のベース部３２を回転軸部１３を中心に上方向（図４中矢印方向）に回動させることにより、座部３３及びベース部３２は椅子部２から離間させる開放状態をとることができる。これにより、使用者は便座３が邪魔にならずに用を足すことができる。
【００５１】
＜第二の実施形態＞
上述の第一の実施形態では、座部３３の回転により使用者及び介護者の負担を軽減できる構成を説明したが、座部３３の形状によって更なる効果を得ることができる。
【００５２】
本発明の第二の実施形態を図５および図６を用いて説明する。図５は本実施の形態のトイレ装置の座部３３の凹み形状部１０およびテーパ形状部１２の例を示す斜視図、図６は本実施の形態のトイレ装置の座部３３の不連続部１１の例を示す斜視図である。
【００５３】
図５において、使用者の着座状態における座部３３の後側には、使用者の臀部が座部３３と接触する面に対して段差を有する凹み形状部１０が設けられている。また、凹み形状部１０の底面には更に座部３３の外周端部側から中心方向に向かって凹み量が大きくなるようにテーパ形状部１２が設けられている。
【００５４】
この時、使用者が用を足した後、介護者が使用者の臀部の清拭を行うために手を臀部と座部３３の間に挿しいれる際に、使用者がわずかに前傾姿勢をとるか腰を浮かせるだけで、臀部と凹み形状部１０の間には手を挿し入れることができる空間が形成されるため、介護者は容易に使用者の臀部の清拭を行うことができる。
【００５５】
なお、トイレ装置が設置されている部屋内のトイレ装置の配置に応じて、介護者がトイレ装置の後側へ移動しなくとも作業ができるように、凹み形状部１０は座部３３の斜め後方側に形成されていてもよく、斜め後方の左右２箇所にそれぞれ形成されていてもよい。
【００５６】
更に、凹み形状部１０を２箇所形成する場合には、介護者が作業する頻度が低い側の凹み形状部１０を覆う着脱式のカバー（図示なし）を設けてもよい。この場合、使用者が座部３に着座した際に、臀部と座部３の接触する面積がカバーのない時よりも増えるため、座り心地がよくなるとともに、トイレ装置を設置するさまざまな部屋に対応できる座部３３を一種類の形状で共通化して製造することができる。
【００５７】
図５において、使用者の臀部の清拭をするために介護者が手を挿し入れる空間を形成する凹み形状部１０を設けたが、より大きな空間を形成するために、図６に示すように座部３３の後側に不連続部１１を設けることもできる。この場合、使用者が前傾姿勢をとったり、腰を浮かせたりしなくとも、介護者は座部３３の不連続部１１に手を挿し入れて使用者の臀部の清拭を容易にすることができるとともに、使用者の負担をより軽減することができる。
【００５８】
また、上述の第一および第二の実施形態を併用することにより、更に使用者および介護者の負担を軽減することができ、好適である。
【００５９】
以上、本発明を上記実施の形態に則して説明したが、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の原理に準ずる各種態様を含むものである。
【符号の説明】
【００６０】
１・・・トイレ装置
２・・・椅子部
３・・・便座
４・・・支持部材（肘掛け部）
Ａ・・・回転中心位置
５・・・駆動装置
６・・・保持手段
７・・・復帰手段
８・・・ストッパー手段
１０・・・凹み形状部
１１・・・不連続部
１２・・・テーパ形状部
３３・・・座部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
椅子部と、
使用者が着座可能であり、前記椅子部に回転可能に支持され、前記椅子部に対して回転することにより、基本状態と第２の状態をとる座部と、
使用者を支持可能であり、使用者が前記座部に着座した状態で前記座部が前記第２の状態のときに、使用者の脚部が前記座部との間に位置するように配置される支持部材と、
を備えたトイレ装置。
【請求項２】
前記支持部材は、前記座部が前記第２の状態にあり、前記第２の状態において前記座部に着座していた使用者が前傾姿勢をとる際に使用者を支持可能な請求項１に記載のトイレ装置。
【請求項３】
前記座部は、回転中心位置が、前記座部の上方から見て使用者の着座状態における前側端部と後側端部を結んだ線の中心位置に対して、前記前側端部の側に配設されていることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載のトイレ装置。
【請求項４】
前記座部には、前記座部を回転できる駆動装置が備えられていることを特徴とする請求項１乃至請求項３のいずれか一に記載のトイレ装置。
【請求項５】
前記座部の回転を所定の位置で保持する保持手段が備えられていることを特徴とする請求項１乃至請求項４のいずれか一に記載のトイレ装置。
【請求項６】
前記第２の状態から前記基本状態に復帰させる復帰手段が備えられていることを特徴とする請求項１乃至請求項５のいずれか一に記載のトイレ装置。
【請求項７】
前記座部の回転範囲を規制するストッパー手段が備えられていることを特徴とする請求項１乃至請求項６のいずれか一に記載のトイレ装置。
【請求項８】
前記支持部材は、使用者が着座する際或いは立ち上がる際に手あるいは肘を置く肘掛け部として機能可能なことを特徴とする請求項１乃至請求項７のいずれか一に記載のトイレ装置。
【請求項９】
前記座部には、使用者の着座状態において使用者の後方側に凹み形状部あるいは不連続部が形成されていることを特徴とする請求項１乃至請求項８のいずれか一に記載のトイレ装置。
【請求項１０】
前記凹み形状部には、前記座部の内側に向かってテーパ形状が形成されていることを特徴とする請求項９に記載のトイレ装置。
【請求項１１】
前記座部は、前記椅子部を覆う被覆状態と、前記椅子部から離間する開放状態をとり、前記被覆状態において前記椅子部に回転可能に支持されることを特徴とする請求項１乃至請求項１０のいずれか一に記載のトイレ装置。
【請求項１】
椅子部と、
使用者が着座可能であり、前記椅子部に回転可能に支持され、前記椅子部に対して回転することにより、基本状態と第２の状態をとる座部と、
使用者を支持可能であり、使用者が前記座部に着座した状態で前記座部が前記第２の状態のときに、使用者の脚部が前記座部との間に位置するように配置される支持部材と、
を備えたトイレ装置。
【請求項２】
前記支持部材は、前記座部が前記第２の状態にあり、前記第２の状態において前記座部に着座していた使用者が前傾姿勢をとる際に使用者を支持可能な請求項１に記載のトイレ装置。
【請求項３】
前記座部は、回転中心位置が、前記座部の上方から見て使用者の着座状態における前側端部と後側端部を結んだ線の中心位置に対して、前記前側端部の側に配設されていることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載のトイレ装置。
【請求項４】
前記座部には、前記座部を回転できる駆動装置が備えられていることを特徴とする請求項１乃至請求項３のいずれか一に記載のトイレ装置。
【請求項５】
前記座部の回転を所定の位置で保持する保持手段が備えられていることを特徴とする請求項１乃至請求項４のいずれか一に記載のトイレ装置。
【請求項６】
前記第２の状態から前記基本状態に復帰させる復帰手段が備えられていることを特徴とする請求項１乃至請求項５のいずれか一に記載のトイレ装置。
【請求項７】
前記座部の回転範囲を規制するストッパー手段が備えられていることを特徴とする請求項１乃至請求項６のいずれか一に記載のトイレ装置。
【請求項８】
前記支持部材は、使用者が着座する際或いは立ち上がる際に手あるいは肘を置く肘掛け部として機能可能なことを特徴とする請求項１乃至請求項７のいずれか一に記載のトイレ装置。
【請求項９】
前記座部には、使用者の着座状態において使用者の後方側に凹み形状部あるいは不連続部が形成されていることを特徴とする請求項１乃至請求項８のいずれか一に記載のトイレ装置。
【請求項１０】
前記凹み形状部には、前記座部の内側に向かってテーパ形状が形成されていることを特徴とする請求項９に記載のトイレ装置。
【請求項１１】
前記座部は、前記椅子部を覆う被覆状態と、前記椅子部から離間する開放状態をとり、前記被覆状態において前記椅子部に回転可能に支持されることを特徴とする請求項１乃至請求項１０のいずれか一に記載のトイレ装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２０１１−２１２２１５（Ｐ２０１１−２１２２１５Ａ）
【公開日】平成２３年１０月２７日（２０１１．１０．２７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−８２９５９（Ｐ２０１０−８２９５９）
【出願日】平成２２年３月３１日（２０１０．３．３１）
【出願人】（０００００００１１）アイシン精機株式会社 (5,421)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年１０月２７日（２０１１．１０．２７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年３月３１日（２０１０．３．３１）
【出願人】（０００００００１１）アイシン精機株式会社 (5,421)
【Ｆターム（参考）】
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