説明

トイレ装置

【課題】タンク内部で汚物等の詰まり等による圧力異常が発生した場合に、タンク部の内部を自動的に減圧する。
【解決手段】トイレ装置100は、汚物を受容する便器本体10と、便器本体10から流入される汚物等を粉砕機構2jにより細かく粉砕して汚物流動体とする粉砕装置2と、粉砕装置2から汚物流動体が流下されると共にコンプレッサから圧縮空気が充填される圧送タンク3と、圧送タンク3に取り付けられた安全弁50とを備える。圧送タンク3内が汚物流動体の詰まり等により予め設定された第3の圧力値P3を超える場合、安全弁50が自動的に作動して圧送タンク3内の残圧を外部に逃して圧送タンク3内を正常な圧力に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄された汚物を粉砕して圧縮空気により既設トイレに圧送するトイレ装置に関する。詳しくは、圧縮空気を充填するタンク部に安全弁を設けることで、タンク部の内部の圧力が規定値を超えた場合に安全弁を機械的に作動させてタンク部の内部を減圧するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、寝たきり状態などの介護を必要とする人のために、介護用のポータブルトイレ装置が広く利用されている。一般的なポータブルトイレ装置は、例えば介護者が滞在(生活)する住宅や病院の各部屋に設置され、予め設置されている既設トイレに排出管を介して接続された構成となっている。このポータブルトイレ装置は、汚物が排泄される便器本体と、便器本体から排出される汚物を粉砕する粉砕機構とを備えている。利用者によって汚物が便器本体に排出されると粉砕機構により汚物が細かく粉砕され、粉砕された汚物がコンプレッサから供給される圧縮空気(空気圧)によって排水管を介して既設トイレに圧送される(例えば、特許文献1および2参照)。既設トイレの便器本体内に圧送された汚物は、ポータブルトイレ装置から送信されるトイレ装置の使用の終了を知らせる終了情報に基づいて洗浄水と共に流れる仕組みとなっている。
【0003】
近年においては、粉砕機構が配置される粉砕機構部と、コンプレッサからの圧縮空気が供給されるタンク部とを別々に備えたポータブルトイレ装置も開発されている。粉砕機構部は圧送タンクの上方に設けられ、粉砕機構部と圧送タンクと間にはこれらの間の流路を仕切る開閉可能な排出弁が設けられ、排出弁を開くと粉砕機構部の汚物が圧送タンク内に流下するようになっている。このポータブルトイレ装置によれば、粉砕処理と圧送処理に特化できるので、粉砕機構と圧送機構を単純化できると共に、精度良く汚物を排出することができる。
【0004】
このように構成されたポータブルトイレ装置においては、粉砕機構により細かく汚物を粉砕して流動化させた後に既設トイレに排出される構成となっているが、汚物を流動化させた場合でも便器本体の排出口やタンク部の排出口、トイレ装置と既設トイレとの間を接続する排水管が汚物で詰まってしまう場合があった。汚物が管路中に詰まってしまうと、汚物の既設トイレへの排水を円滑に行うことができなくなるので、汚物が逆流してしまう等の問題が発生する。
【0005】
そのため、上記ポータブルトイレ装置では、便器本体やタンク部の内部の圧力を検知するための圧力センサを設けることで、便器本体やタンク部の内部における汚物の詰まりを防止している。これによれば、汚物の詰まりが生じると、便器本体やタンク部の内部の圧力が高圧となるので、圧力センサにより便器本体等の汚物の詰まりを把握することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3985344号
【特許文献2】特開2008−86880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示されるポータブルトイレ装置等では以下のような問題がある。すなわち、汚物の詰まりによる圧力異常を圧力センサにより検知してトイレ装置の動作を停止させた場合、便器本体やタンク部の内部はコンプレッサから供給される圧縮空気により高圧状態となっている。そのため、高圧が残った状態で修理を開始すると、便器本体やタンク部の開放時に、その内部に収容された汚物が周辺に飛び散ってしまう等の問題がある。この場合には、飛び散った汚物により室内が不衛生な状態となってしまい、利用者を不快な気分にさせてしまうという問題が発生する。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、タンク内部で汚物等の詰まりによる圧力異常が発生した場合に、タンク部の内部を自動的に減圧することが可能なトイレ装置に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るトイレ装置は、洗浄水が流入可能に設けられて排泄された汚物を受容する便器本体部と、便器本体部の下部に設けられて洗浄水と共に汚物を粉砕して汚物流動体と成す粉砕機構部と、粉砕機構部により粉砕された汚物流動体が流入する開閉可能な流入口と汚物流動体を廃棄場所まで導く排出管部材が接続された排出口とを有して圧縮空気を充填可能に設けられたタンク部と、タンク部に連通して設けられて当該タンク部の内部の圧力値が予め設定された弁作動圧力値を超える場合にタンク部の内部を減圧する圧力調整部材とを備えるものである。
【0010】
トイレ装置においては、便器本体部に汚物が排泄されると、所定量の洗浄水が便器本体部に流入され、この洗浄水と共に汚物やトイレットペーパー等が粉砕機構部に排出される。粉砕機構部では、破砕刃により汚物等が細かく粉砕されて汚物流動体となってタンク部に流入する。タンク部に汚物流動体が流入すると、タンク部内にはコンプレッサから圧縮空気が供給され、タンク部内に収容された汚物流動体が圧縮空気によって排出管を経由して既設トイレに圧送される。
【0011】
このような一連の汚物の圧送処理においては、例えば、タンク部の排出口や排出管の途中で汚物流動体が詰まってしまう場合がある。この場合には、タンク部の内部には圧縮空気が充填されるので、汚物流動体の詰まりにより圧縮空気が外部に排出されず、タンク部の内部の圧力が設定圧力値よりも高くなってしまう。
【0012】
本発明においては、例えば、タンク部やタンク部とコンプレッサとの間に、タンク部に連通した圧力調整部材が設けられている。これにより、タンク部の内部が汚物流動体の詰まりにより予め設定された弁作動圧力値を超えると、圧力調整部材が機械的に作動してタンク部の内部が自動的に減圧される構成となっている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タンク部の内部圧力が予め設定された弁作動圧力値を超えた場合に、圧力調整部材の作動によりタンク部の圧力を自動的に減圧することができる。その結果、圧力エラー発生時の修理において、タンク部開放時の汚物流動体の飛び散り等を回避することができ、衛生面の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るトイレ装置の概略構成例を示す図である。
【図2】トイレ装置の構成例を示す断面図である。
【図3】安全弁の取り付け例を示す図である。
【図4】安全弁の通常時の状態の構成例を示す断面図である。
【図5】安全弁の作動時の構成例を示断面図である。
【図6】安全弁の構成例を示す分解斜視図である。
【図7】トイレ装置のブロック構成例を示す図である。
【図8】トイレ装置の動作例を示すタイミングチャートである(その1)。
【図9】トイレ装置の動作例を示すタイミングチャートである(その2)。
【図10】圧送動作時の圧力変化を説明するための図である。
【図11】トイレ装置の圧送動作時の動作例を示すフローチャートである。
【図12】配管詰まりエラー時の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。
[圧送式トイレシステムの構成例]
図1は、本発明に係る圧送式トイレシステムTSの概略構成の一例を示す図である。図2は、トイレ装置100の構成例を示す断面図である。圧送式トイレシステムTSは、図1に示すように、介護者の居室等に設置される持ち運び可能なトイレ装置100と、予め住宅等に設置されている既設トイレ装置200とを備えている。トイレ装置100と既設トイレ装置とは排出管3fを介して連通されており、トイレ装置100側で排泄されて粉砕された汚物が、圧縮空気により排出管3fを経由して既設トイレ装置200に圧送される構成となっている。
【0016】
[トイレ装置の構成例]
トイレ装置100は、便器本体10と給水タンク4と粉砕装置2と圧送タンク3と圧力センサ12と連通管14とエア抜き電磁弁18と安全弁50とを備えている。便器本体10は、便蓋1aと便座1bと便器1cとを有している。便蓋1aは、便器1cの後部上端縁に図示しない取付部材を介して開閉可能に取り付けられている。便座1bは、便蓋1aと便器1cとの間に介設され、図示しない取付部材を介して便器1cの後部上端縁に開閉可能に取り付けられる。便器1cは、合成樹脂や陶器等からなる上端が開口されたボウル状をなし、汚物や洗浄水、トイレットペーパー等を受容する。便器1cの内側後部であってその上端部よりも若干低い位置には、便器1c内が満水となっているかを検出するための満水センサ1dが設けられている。
【0017】
給水タンク4は、例えば少なくとも1.7リットルの水が貯えられるような大きさのタンクにより構成され、便器本体10の後部に取り付けられている。給水タンク4には、既設トイレ装置200の給水口から分岐した給水管40の一端が接続されており、既設トイレ装置200側から水(洗浄水)が供給されるようになっている。
【0018】
給水管40の経路中には、タンク電磁弁4aと流量センサ(大)4bとが設けられている。タンク電磁弁4aは、便蓋1aの開閉に応じて給水管40の流路を開閉することで、給水タンク4への給水量や給水タイミングを調整する。流量センサ(大)4bは、タンク電磁弁4aよりも下流側に設けられて給水管40を流れる給水量(流量)を検出し、予め設定された給水量に達したときにタンク電磁弁4aを閉状態とさせ、給水タンク4に規定量の水が溜められるようにする。
【0019】
この給水管40は、タンク電磁弁4aの上流側で分岐しており、分岐した分岐管42の一端が人体局部を洗浄する洗浄便座の貯水タンク1eに接続されている。これにより、例えば、1リットルの人体局部洗浄用の水が給水管40および分岐管42を経由して貯水タンク1eに供給される。
【0020】
分岐管42の経路中には、便座電磁弁4cと流量センサ(小)4dとが設けられている。便座電磁弁4cは、利用者の人体局部洗浄開始ボタンの操作に基づいて分岐管42の流路を開閉し、貯水タンク1eへの給水量や給水タイミングを調整する。流量センサ(小)4dは、便座電磁弁4cの下流側に設けられて分岐管42を流れる給水量(流量)を検出し、予め設定された給水量となったときに便座電磁弁4cを閉状態とさせ、人体局部洗浄用に使用できる水量の上限を規定している。
【0021】
給水タンク4の内部には、洗浄水弁モータ4eとオーバーフロー検知スイッチ4fと洗浄水弁4gとが設けられている。洗浄水弁モータ4eは、洗浄水弁4gにチェーン等を介して接続されており、ユーザにより洗浄ボタンが操作(押下)されると駆動して洗浄水弁4gを開き、給水タンク4に溜められている水を便器1cに流入させる。
【0022】
オーバーフロー検知スイッチ4fは、給水タンク4内のオーバーフローを検出するためのスイッチであり、給水タンク4内の水量が所定の規定量を超えたときにオンされる。オーバーフロー検知スイッチ4fがオンされると、タンク電磁弁4aを閉状態として給水タンク4に水が流入しないようになっている。
【0023】
給水タンク4の前面部には、便蓋1aの開閉を検出する便蓋開閉検知センサ13が設置されている。便蓋開閉検知センサ13は、便蓋1aが開いたときにオンされ、このオンに応じた開閉検知信号S13(図2参照)に基づいてトイレ装置100の準備動作や便器洗浄等の各種処理が開始される。
【0024】
便器本体10と粉砕装置2との間に設けられた投入口1fには、仕切り弁2dが設けられている。仕切り弁2dは、便器1cの前部下方に設置された投入口モータ2cに接続され、投入口モータ2cの駆動により水平移動することで投入口1fを開閉して便器本体10と粉砕装置2との間の流路を連通状態または非連通状態とする。仕切り弁2dの移動経路中には、投入口開位置検出スイッチ90と投入口閉位置検出スイッチ92とが設けられている。
【0025】
粉砕装置2は、粉砕機構部の一例であり、便器1cの下方に設置された収容容器22nと粉砕機構2jとを備えている。収容容器22nは、その上面部に便器本体10からの汚物が流下する図示しない流入口を有しており、この流入口が便器1cの投入口1fに接続されている。粉砕機構2jは、収容容器22nの内部に配置されており、トイレットペーパーや汚物を細かく擂り潰しながら粉砕する。粉砕機構2jは、上下に対向して配置された一対の固定臼2hおよび回転臼2iから構成されている。
【0026】
下側に配置された固定臼2hは、略円盤状を成して収容容器22nの底面部に固定され、回転臼2iとの対向面に凹凸形状の粉砕歯を有している。上側の回転臼2iは、略円盤状を成して図示しないシャフトを介して粉砕モータ2sに接続され、粉砕モータ2sの駆動により正回転または逆回転する。また、回転臼2iは、固定臼2hとの対向面に凹凸形状の粉砕歯を有しており、固定臼2hと若干の隙間を隔てて配置されている。回転臼2iの中央部には、図示しない複数の流入口が設けられており、便器本体10の投入口1fから排出された汚物が流入口から流れ込み、流れ込んだ汚物が洗浄水と共に固定臼2hと回転臼2iの隙間に入り込むようになっている。固定臼2hと回転臼2iの間隙に入り込んだ汚物は、それぞれの粉砕歯により細かく擂り潰されて洗浄水と混合され、流動性の高い状態となる。以下では、汚物やトイレットペーパーが洗浄水と混合して擂り潰されたものを汚物流動体と称する。
【0027】
圧送タンク3は、タンク部の一例であり、連結管3gを介して粉砕装置2に接続されると共にエア管3iを介してコンプレッサ6に接続され、粉砕装置2で粉砕された汚物流動体を収容すると共に内部にコンプレッサ6から供給される圧縮空気を充填する。圧送タンク3は、所定の径を有する円筒管であって、例えばコの字状に折り曲げられて粉砕装置2の下方に配置され、その上流側に汚物流動体が流入する図示しない流入口を有すると共に下流側に汚物流動体を排出する図示しない排出口を有している。排出口には排出管3fの一端が接続され、圧送タンク3の排出口から排出された汚物流動体が流入される。また、圧送タンク3は、上流側から下流側に向かって緩やかに傾斜して設置され、内部に収容した汚物流動体を効率的に排出管3fに排出できるように構成されている。
【0028】
圧送タンク3と粉砕装置2との間の流路には、排出弁3bが設けられている。排出弁3bは、排出弁モータ2kに接続され、排出弁モータ2kの駆動により水平移動して圧送タンク3と粉砕装置2との間の流路を開閉することでその流路を連通状態または非連通状態とする。
【0029】
排出弁3bの移動経路中には、排出弁開位置検出スイッチ94と排出弁閉位置検出スイッチ96とが設けられている。排出弁開位置検出スイッチ94は、排出弁3bが開状態となるとオンとなり、排出弁3bが閉状態となるとオフとなる。排出弁閉位置検出スイッチ96は、排出弁3bが閉じたときにオンとなり、排出弁3bが閉じたときにオフとなる。
【0030】
コンプレッサ6は、圧送タンク3の後部に設置されており、エア管3iを介して圧送タンク3に連通している。このコンプレッサ6は、圧縮した空気を作り出し、作り出した圧縮空気を圧送タンク3に供給して圧送タンク3内を圧縮空気で充填し、圧送タンク3内に収容されている汚物流動体を空気圧で圧送する。圧力センサ12は、圧力検出手段の一例であり、エア管3iに取り付けられて圧送タンク3内の圧力を検知する。
【0031】
連通管14は、一端が粉砕装置2の収容容器22nの上面部に接続されると共に他端が圧送タンク3の上面部に接続され、粉砕装置2と圧送タンク3との間を連通している。この連通管14は、粉砕装置2から圧送タンク3に流下する汚物流動体の経路とは異なる経路を形成するものであって、粉砕装置2から圧送タンク3への汚物流動体の流下時に汚物流動体とは別経路で圧送タンク3内の空気を粉砕装置2内に導く。本例では、連通管14が、エア管3iの経路途中に接続されて圧送タンク3までの管路を共有した構成となっているが、連通管14とエア管3iとはそれぞれ独立した構成としても良い。なお、連通管14は、連通管部材の一例を構成している。
【0032】
エア抜き電磁弁18は、連通管14の経路途中に設けられ、制御ユニット8の制御により排出弁3bの開閉操作に連動して開閉し、連通管14の経路を連通状態と非連通状態とに切り替える。例えば、排出弁3bが開くとこれに連動してエア抜き電磁弁18が開き、排出弁3bが閉じるとこれに連動してエア抜き電磁弁18が閉じるように制御される。これにより、粉砕装置2から圧送タンク3への汚物流動体の流下時に、圧送タンク3内の空気を別経路の連通管14から逃すことができる。
【0033】
また、エア抜き電磁弁18は、圧送動作において、圧送タンク3内が異常圧力となったときに開いて、圧送タンク3内の空気を粉砕装置2の収容容器22n内に逃す機能を有している。これにより、圧送タンク3内の残圧が抜けて、圧送タンク3内を高圧状態から正常な圧力状態に戻すことができる。なお、エア抜き電磁弁18は、切替弁部材の一例を構成している。
【0034】
安全弁50は、圧力調整部材の一例であり、圧送タンク3とコンプレッサ6との間を接続するエア管3iに連通して取り付けられている。この安全弁50は、圧送タンク3内の圧力が異常となった場合に、圧送タンク3内の空気を自動的に外部に逃して圧送タンク3の内部を減圧することで、圧送タンク3内を正常な圧力に戻すものである。なお、安全弁50は、圧送タンク3に直接取り付けるような構成としても良い。安全弁50の詳細については後述する。
【0035】
圧送タンク3の下面には、便器1cや圧送タンク3から漏れ出た水を受け止めて外部への漏水を防止するためのドレンパン16が設けられている。ドレンパン16の底面部には、漏水を検出するための漏水センサ24が設置されている。
【0036】
[既設トイレの構成例]
既設トイレ装置200は、一般の家庭で使用されているタンク式の洗浄トイレ装置であって、便器本体202と既設トイレ洗浄モータ204と排出お知らせ装置206とを備えている。便器本体202には、排出管3fの一端が取り付けられており、トイレ装置100側から圧送される汚物流動体が流入されるようになっている。
【0037】
既設トイレ洗浄モータ204は、トイレ装置100で汚物流動体の圧送が終了したときにトイレ装置100の制御ユニット8から出力される圧送終了信号に基づいて駆動して、洗浄水を便器本体202内に流す。排出お知らせ装置206は、トイレ装置100側で便器洗浄や粉砕動作、搬送動作、圧送動作が行われていることを既設トイレ装置200側のユーザに報知するための装置であり、例えば、点灯により排出を報知するLEDやブザー音や警告音声等を出力するスピーカ等で構成されている。
【0038】
[安全弁の構成例]
次に、安全弁50の構成について説明する。図3は安全弁50の取り付け状態を示しており、図4は安全弁50の通常時の状態における断面構成例を示しており、図5は安全弁50の作動時の状態における断面構成例を示している。図6は、安全弁50の分解斜視図を示している。
【0039】
安全弁50は、圧送タンク3内が予め設定された圧力値を超える場合に、圧送タンク内の圧力を外部に自動的に逃して圧送タンク3内の圧力を正常値とするための部材であり、コンプレッサ6と圧送タンク3との間に設けられた連結管70の安全弁接続部72に取り付けられている。連結管70には、その他の接続部として、コンプレッサ6に接続されるコンプレッサ接続部74とエア管3iに接続される圧送タンク接続部76とが設けられている。
【0040】
安全弁50は、図3〜図6に示すように、弁本体52とバルブ54とスプリングガイド56とスプリング58とスプリング受け部60とピン62とを備えている。弁本体52は、平面的に見て六角形状をなす筒状部材であって、その筒内がスプリングガイド56およびスプリング58等を収容するための空間部52aとなっている。空間部52aの連結管70側の一端には、空間部52aに連通したバルブ54を収容するためのバルブ収容部52bが設けられている。弁本体52の下方側の壁面部には、一端が空間部52aに連通すると共に他端が外部に連通した貫通孔52cが穿設されている。圧送タンク3の内部が異常圧力となった場合に、この貫通孔52cから圧送タンク3内の空気が排出されて減圧される。
【0041】
弁本体52の連結管70側の端面には、弁本体52を連結管70に装着するための取付部53が設けられている。取付部53の内部には、一端が連結管70に連通すると共に他端が弁本体52のバルブ収容部52bに連通する連通孔53aが設けられている。この連通孔53aは、圧送タンク3内の空気が流れ込む流入口として機能する。
【0042】
バルブ54は、開閉弁部材の一例であり、弁本体52に設けられたバルブ収容部52bに配置され、圧送タンク3と外部との間の流路を圧送タンク3内の圧力に応じて開閉移動する。スプリングガイド56は、移動部材の一例であり、バルブ54の外径よりも小さい径を有する棒状部材であって、一端がバルブ54に一体形成され、他端がスプリング受け部60の軸孔60cに軸方向に沿ってスライド可能に挿通されている。
【0043】
スプリングガイド56の他端は、スプリング受け部60の外側端面から若干延出しており、その延出した部位にピン62を取り付けるための取付孔56aが穿設されている。ピン62は、操作部材の一例であり、スプリングガイド56の取付孔56aに取り付けられ、バルブ54を手動で開くための把持部として機能する。
【0044】
スプリング58は、弾性部材の一例であり、スプリングガイド56の外周部に外装されている。スプリング58は、一端がバルブ54の外端面に当接されると共に他端がスプリング受け部60の凹み部60dに当接され、バルブ54とスプリング受け部60との間に圧縮された状態で配置されている。これにより、バルブ54がスプリング58により連結管70側に付勢され、安全弁50と圧送タンク3との間の流路がバルブ54により密閉される。
【0045】
スプリング受け部60は、六角形状の頂面部60aとこの頂面部60aに連なる円柱状の本体60bとから構成され、その軸芯にはスプリングガイド56を挿通するための軸孔60cが穿設されている。本体60bの底面部には、スプリング58の一端を支持するための凹み部60dが設けられている。スプリング受け部60は、軸孔60cにスプリングガイド56を挿通させると共にその凹み部60dにスプリング58を収容した状態で、弁本体52の空間部52aに嵌め込まれ、本体60bの外周面に設けられた図示しない固定手段により弁本体52に取り付け、固定される。
【0046】
このように構成された安全弁50において、圧送タンク3内の圧力が予め設定された圧力値(図10に示す第3の圧力値P3)に到達すると、圧送タンク3側からの圧力による付勢力がスプリング58の弾性力よりも大きくなるので、図5に示すように、バルブ54がスプリング58の弾性力に抗してスプリング58を圧縮する側に移動する。これにより、バルブ54が開き、圧送タンク3内の空気が連結管70、弁本体52の連通孔53a、バルブ収容部52bおよび空間部52aを経由して貫通孔52cから排出される。その結果、圧送タンク3内が減圧されて正常な圧力に戻る。
【0047】
一方、圧送タンク3内の空気(残圧)が逃げて内部が正常な圧力に戻ると、圧送タンク3側からの付勢力がスプリング58の弾性力よりも小さくなるので、図4に示すように、バルブ54が元のバルブ収容部52bに戻り、圧送タンク3と外部との流路が再び密閉された状態となる。
【0048】
[圧送式トイレシステムのブロック構成例]
次に、本発明に係る圧送式トイレシステムTSのブロック構成の一例について説明する。図7は、圧送式トイレシステムTSの制御系のブロック構成例を示している。
【0049】
図7に示すように、圧送式トイレシステムTSは、制御ユニット8と便蓋開閉検知センサ13と圧力センサ12と排出弁開位置検出スイッチ94と排出弁閉位置検出スイッチ96と操作表示部80とタンク電磁弁4aとモータ駆動部9a,9b,9c,9d,8bとモータ2c,2s,2k,4eとエア抜き電磁弁18とコンプレッサ6と既設トイレ洗浄モータ204と排出お知らせ装置206とを備えている。
【0050】
まず、トイレ装置100側の制御系について説明する。制御ユニット8は、トイレ装置100の全体の動作を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)8aとROM(Read Only Memory)8bとRAM(Random Access Memory)8cとを有している。CPU8aは、ROM8bに格納されているプログラムをRAM8cに展開して実行することにより、便器洗浄動作や粉砕動作、搬送動作、圧送動作を実行する。ROM8bには、圧送動作時に圧送タンク3内が異常圧力となっていないかを判断する際に用いられる第1〜第4の圧力値P4が記憶されている。なお、制御ユニット8は制御手段の一例を構成している。
【0051】
便蓋開閉検知センサ13は、例えば透過型のセンサにより構成されており、図1に示した便蓋1aの開閉動作を検出して、便蓋1aの開閉を示す開閉検知信号S13を制御ユニット8に出力する。圧力センサ12は、圧送タンク3内の圧力を検出して圧力検知信号(データ)S12を制御ユニット8に出力する。
【0052】
排出弁開位置検出スイッチ94は、粉砕装置2と圧送タンク3との間に設けられた排出弁3bが開いたことを検出して開検知信号S94を制御ユニット8に出力する。排出弁閉位置検出スイッチ96は、粉砕装置2と圧送タンク3との間に設けられた排出弁3bが閉じたことを検出して開検知信号S96を制御ユニット8に出力する。
【0053】
操作表示部80は、例えば便器1cの側面部に設けられ、各種操作を行う操作部と警告を行う表示部とを有している。操作部は、例えば、洗浄水を流す洗浄ボタンや便器1c内を清掃する時に運転を一時停止する清掃ボタン、第1〜第4の圧力値P4を設定する操作ボタン等から構成されている。表示部は、例えば、トイレ装置100内の圧力異常等を警告表示する異常LEDや清掃ボタンを押下したことを示す清掃LED等から構成されている。タンク電磁弁4aは、制御ユニット8から出力される制御信号S4aに基づいて開閉することで、給水タンク4に供給する給水量を制御する。
【0054】
モータ駆動部9dは、制御ユニット8から供給されるモータ駆動データD4eをデコードしてモータ制御信号S4eを生成し、このモータ制御信号S4eを洗浄水弁モータ4eに出力する。洗浄水弁モータ4eは、モータ駆動部9dから供給されるモータ制御信号S4eに基づいて回転駆動して洗浄水弁4gを開閉し、給水タンク4から便器1cに洗浄水を供給または停止する。
【0055】
モータ駆動部9aは、制御ユニット8から供給される開閉検知信号S13に応じたモータ駆動データD2cをデコードしてモータ制御信号S2cを生成し、このモータ制御信号S2cを投入口モータ2cに出力する。投入口モータ2cは、モータ駆動部9aから供給されるモータ制御信号S2cに基づいて回転駆動して仕切り弁2dを開閉し、便器1cから粉砕装置2に流れるトイレットペーパーや汚物、洗浄水を通過または停止する。
【0056】
モータ駆動部9bは、制御ユニット8から供給される開閉検知信号S13に応じたモータ駆動データD2sをデコードしてモータ制御信号S2sを生成し、生成したモータ制御信号S2sを粉砕モータ2sに出力する。粉砕モータ2sは、モータ駆動部9bから供給されるモータ制御信号S2sに基づいて回転駆動し、回転臼2iを回転させて汚物を粉砕する。
【0057】
モータ駆動部9cは、制御ユニット8から供給されるモータ駆動データD2kをデコードしてモータ制御信号S2kを生成し、生成したモータ制御信号S2kを排出弁モータ2kに出力する。排出弁モータ2kは、モータ駆動部9cから供給されるモータ制御信号S2kに基づいて回転駆動して排出弁3bを開閉し、粉砕装置2で粉砕された汚物(汚物流動体)を圧送タンク3内に流入させる。
【0058】
エア抜き電磁弁18は、制御ユニット8から供給される制御信号S18に基づいてエア抜き電磁弁18を開閉する。制御信号S18は、排出弁3bを開閉するモータ駆動データD2kの出力や排出弁開位置検出スイッチ94からの開検知信号S94の入力に同期(連動)して制御ユニット8から出力される信号である。これにより、排出弁3bの開動作と同時にエア抜き電磁弁18が開くので、粉砕装置2から圧送タンク3内に汚物流動体が流入されるのと同時に、圧送タンク3内の空気を別経路の連通管14を経由して粉砕装置2に排出できる。
【0059】
コンプレッサ6は、制御ユニット8から供給される制御信号S6に基づいて作動して圧縮空気を作り出し、排出弁3bが閉じた後に圧送タンク3内に圧縮空気を供給する。これにより、圧送タンク3内に流入した汚物流動体が圧縮空気によって排出管3fを経由して既設トイレ装置200に圧送される。
【0060】
続けて、既設トイレ装置200側の制御系について説明する。排出お知らせ装置206は、トイレ装置100側で洗浄動作等が開始されたことを報知するお知らせLEDやブザー音で報知するスピーカ等を備え、制御ユニット8の指示に基づいてLEDの点灯やブザー音を出力する。
【0061】
モータ駆動部210は、制御ユニット8から供給されるモータ駆動データD2lをデコードしてモータ制御信号S04を生成して既設トイレ洗浄モータ204に出力する。既設トイレ洗浄モータ204は、モータ駆動部210から供給されるモータ制御信号S04に基づいて回転駆動して洗浄水弁を開き、トイレ装置100側から圧送された汚物流動体を洗浄水により流す。
【0062】
[圧送式トイレシステムの動作例]
次に、本発明に係るトイレ装置100の動作の一例について説明する。図8および図9は、トイレ装置100の動作例を示すタイミングチャートである。トイレ装置100の処理工程は、準備動作、便器洗浄動作、粉砕動作、搬送動作および圧送動作の5つの工程で構成されている。本例では、各工程を1回行う例について説明するが、もちろん各工程を2回行っても良いし、複数の工程を同時に並列処理しても良い。
【0063】
ユーザによりトイレ装置100の使用が開始されると、まず、トイレ装置100では準備動作が行われる。時刻t1で、ユーザによりトイレ装置100の便蓋1aが開けられると、便蓋開閉検知センサ13がオンとなり、開閉検知信号S13がローレベル(以下Lレベルという)からハイレベル(以下Hレベルという)に立ち上がる(図8(A),図8(B))。
【0064】
便蓋開閉検知センサ13により便蓋1aの開きが検出されると、時刻t2においてタンク電磁弁4aが開き、給水タンク4に給水が開始される。時刻t3でタンク電磁弁4aが閉じて給水タンク4への給水が停止される(図8(C))。これにより、給水タンク4には例えば1.7リットルの水が溜められる。
【0065】
便座電磁弁4c(タンク電磁弁4a)が開いて貯水タンク1eに水が給水され始めると、時刻t4で、モータ制御信号S2cがLレベルからHレベルに立ち上がり投入口モータ2cが駆動する。そして、時刻t5で、モータ制御信号S2cがHレベルからLレベルに立ち下がり投入口モータ2cが停止する(図8(F))。これにより、仕切り弁2dが少しだけ開口した状態となり、次工程の便器洗浄動作の洗浄水や人体局部洗浄水が便器1cに溜められる前に、予め仕切り弁2dの上部に溜められていた少量の溜水が粉砕装置2に排出される。
【0066】
時刻t6において、ユーザの排泄が終了して便蓋1aが閉じられると、便蓋開閉検知センサ13がオフとなり、開閉検知信号S13がHレベルからLレベルに立ち下がる(図8(A),図8(B))。
【0067】
準備動作が終了すると、続けて便器洗浄動作が開始される。便蓋開閉検知センサ13がオフとなってから数秒経過すると、ユーザの排泄が終了したものと判断して、時刻t7〜t8においてモータ制御信号S4eがLレベルからHレベルに立ち上がり、洗浄水弁モータ4eが駆動して洗浄水弁4gが開く(図8(D),図8(E))。これにより、給水タンク4から便器1cに洗浄水が流入される。なお、洗浄水の流しの開始は、洗浄開始の操作ボタンがユーザにより操作されたときに行うようにしても良い。時刻t11〜t12で再度洗浄水弁モータ4eが駆動して洗浄水弁4gが閉じる(図8(D),図8(E))。
【0068】
洗浄水の便器1cへの流入に同期して(同時に)、時刻t7〜t8で投入口モータ2cが正回転することで仕切り弁2dが開く(図8(F))。これにより、汚物が載っている仕切り弁2dの上面を洗浄水によって洗浄しつつ、仕切り弁2dの開き動作に伴って汚物を粉砕装置2内に流入させることができる。汚物の粉砕装置2内への流入が終了する時刻t9〜t10で、投入口モータ2cが逆回転し、仕切り弁2dが閉じる(図8(F))。
【0069】
便器洗浄動作が終了すると、続けて粉砕動作が開始される。便蓋開閉検知センサ13がオフとなってからさらに数秒経過すると(便洗浄動作が終了すると)、時刻t11において、モータ制御信号S2sがLレベルからHレベルに立ち上がり、粉砕モータ2sが正回転する(図8(G))。これにより、粉砕動作が開始されて、便器1cから排出された汚物が粉砕機構2jにより細かく粉砕される。時刻t13でモータ制御信号S4sがHレベルからLレベルに立ち下がって粉砕モータ2sが停止する。粉砕モータ2sが停止することで、回転臼2iの回転が停止して粉砕動作が終了する。
【0070】
粉砕動作が終了したら、続けて汚物を粉砕装置2から圧送タンク3に移動させる搬送動作が開始される。粉砕動作が終了してから数秒経過したら、時刻t14〜t15の間、排出弁モータ2kが正回転する(図9(H))。これにより、排出弁3bが閉位置から開位置に移動して開き、粉砕装置2内の汚物流動体が圧送タンク3に流れ込む。排出弁3bの開動作に伴って、時刻t14で排出弁閉位置検出スイッチ96がオフとなり、時刻t15で排出弁開位置検出スイッチ94がオンとなる(図9(I),図9(J))。
【0071】
続けて、汚物流動体の圧送タンク3内への搬送が終了したら、時刻t16において排出弁モータ2kが逆回転する(図9(H))。これにより、排出弁3bが開位置から閉位置に移動して閉じて、粉砕装置2と圧送タンク3とを結ぶ流路が非連通状態となる。排出弁3bの閉動作に伴って、時刻t16で排出弁開位置検出スイッチ94がオフとなり、時刻t17で排出弁閉位置検出スイッチ96がオンとなる(図9(I),図9(J))。
【0072】
また、時刻t15で、排出弁開位置検出スイッチ94がオンとなると、排出弁3bの開動作に同期(連動)してエア抜き電磁弁18が開き、連通管14が連通状態となる(図9(K))。これにより、粉砕装置2から圧送タンク3への汚物流動体の流入に伴って、汚物流入経路とは別経路の連通管14を経由して圧送タンク3内の空気が粉砕装置2に排出される。時刻t16で排出弁開位置検出スイッチ94がオフになると、排出弁3bの閉動作に同期してエア抜き電磁弁18が閉じて、連通管14が非連通状態に切り替わる(図9(K))。これにより、圧送タンク3から粉砕装置2への空気の流入が停止する。
【0073】
排出弁3bが閉じて数秒経過したら(搬送動作が終了したら)、時刻t18において、コンプレッサ6が作動して圧縮空気を作り出して圧送タンク3に充填(送出)し、時刻t19においてコンプレッサ6が停止する(図9(L))。圧力センサ12は、圧送タンク3内の圧力の変化を検知する(図9(M))。圧送動作時の圧送タンク3内の圧力変化については後述する。
【0074】
既設トイレ装置200側では、時刻t6において、便蓋1aが閉じられて便蓋開閉検知センサ13がオフとなると、既設トイレ室の壁面部に設けられた排出お知らせ装置206のLEDが点灯する。さらに、トイレ装置100が便器洗浄、粉砕動作、搬送動作、圧送動作中であることを排出お知らせ装置206がブザー音で警告する(図9(N))。
【0075】
時刻t20〜t21および時刻t22〜t23において、既設トイレ洗浄モータ32がオンすることで洗浄水弁が開く(図9(O))。これにより、洗浄水が便器本体30内に流れて、トイレ装置100から圧送された汚物流動体が排出される。
【0076】
[圧送動作時の圧力検知例]
次に、汚物流動体の圧送開始から圧送終了までの圧送タンク3内の圧力状態について説明する。図10は、圧力センサ12により検知された汚物圧送開始から圧送終了までの圧送タンク3内の圧力変化を示しており、図10中実線は正常動作時の圧送タンク3の圧力変化を示し、図10中点線は異常動作時の圧送タンク3の圧力変化を示している。
【0077】
通常動作時においては、図10の実線で示すように、コンプレッサ6から圧送タンク3に圧縮空気の供給が開始されると、圧送タンク3内の汚物流動体に圧縮空気が作用して汚物流動体が排出管3fへ進入することで圧送タンク3の内部圧力が上昇する。汚物流動体の圧送中においては略一定の圧力値で推移する。汚物流動体の圧送が終了すると、排出管3f内の汚物流動体が既設トイレ装置200に排出されるので、これに伴い圧送タンク3内の圧力も下降する。
【0078】
一方、異常動作時には、圧送タンク3の排出口や排出管3f等での汚物の詰まり等により汚物流動体が既設トイレ装置200に圧送されないので、図10の点線で示すように、圧送タンク3内の圧力がコンプレッサ6から供給される圧縮空気により上昇し続ける。本例では、この異常圧力を検知するために、制御ユニット8では、圧送開始時と圧送中と圧送終了時における正常動作時における圧力値を予めメモリに記憶し、圧送動作時の実際の圧送タンク3内の圧力値とメモリの圧力値とを比較することで、トイレ装置100が正常に動作しているかを監視している。
【0079】
[圧送時のトイレ装置の動作例]
次に、汚物圧送動作時のトイレ装置100の動作の一例について説明する。図11は、汚物圧送動作時のトイレ装置100における動作例を示すフローチャートである。図11に示すように、ステップS10で圧力センサ12は、トイレ装置100の電源がオンされると、圧送タンク3内の圧力を検出する。圧力センサ12により検出された検知データは制御ユニット8に供給される。
【0080】
ステップS20で制御ユニット8は、粉砕装置2から圧送タンク3への汚物流動体の排出が終了したと判断すると、コンプレッサ6をオンして圧送タンク3内に圧縮空気の充填を開始する。
【0081】
ステップS30で制御ユニット8は、圧力センサ12により検知された圧力を監視し、圧送タンク3内の圧送開始時の圧力が第1の圧力値P1以上となったか否かを判断する。これは、通常動作時は、コンプレッサ6の作動により圧縮空気が圧送タンク3内に供給され、汚物流動体が排出管3fに侵入することで圧力が上昇するからである。第1の圧力値P1は、例えば圧送開始時において圧送が正常に開始されたかを判断するために用いられる閾値である(図10参照)。制御ユニット8は、圧送タンク3内の圧力が第1の圧力値P1以上であると判断した場合にはステップS40に進み、圧送タンク3内の圧力が第1の圧力値P1未満であると判断した場合にはステップS50に進む。
【0082】
圧送タンク3内の圧送開始時の圧力が第1の圧力値P1未満である場合、ステップS50で制御ユニット8は、圧送タンク3において第1の圧力値P1未満の状態が予め設定したタイマ時間(圧力上昇タイマ)を経過したか否かを判断する。制御ユニット8は、タイマ時間を経過したと判断した場合にはステップS60に進み、ステップS60では圧送タンク3内の圧力が上昇しないのでコンプレッサ6で故障が発生したものと判断してエラー警告を行う。一方、タイマ時間内に圧送タンク3内の圧力が第1の圧力値P1以上となった場合にはステップS30に戻り、再度圧送タンク3内の圧力が第1の圧力値P1以上であるか否かが判断される。
【0083】
圧送タンク3内の圧送開始時の圧力が第1の圧力値P1以上である場合、ステップS40で制御ユニット8は、圧送タンク3内の圧力が予め設定された第2の圧力値P2以下であるか否かを判断する。第2の圧力値P2は、汚物の詰まり等により圧送タンク3内で圧力異常が発生したことをユーザに警告するために設定される閾値であり、通常動作時の最大圧力値よりもある程度の余裕を持たせた値であって、かつ、後述する安全弁50が作動する第3の圧力値P3よりも低い値に設定される(図10参照)。制御ユニット8は、圧送タンク3内の圧力が第2の圧力値P2以下であると判断した場合には正常圧力であるとしてステップS70に進み、圧送タンク3内の圧力が第2の圧力値P2を超える値であると判断した場合には異常圧力であるとしてステップS80に進む。
【0084】
ステップS80で制御ユニット8は、圧送タンク3において第2の圧力値P2を超える状態が予め設定したタイマ時間(配管詰まりタイマ)を経過したか否かを判断する。制御ユニット8は、タイマ時間を経過したと判断した場合にはステップS90に進み、タイマ時間内に圧送タンク3内の圧力が第2の圧力値P2以下となった場合にはステップS40に戻り、再度圧送タンク3内の圧力が第2の圧力値P2以下であるか否かが判断される。
【0085】
ステップS90では、図12に示すサブルーチンに移行し、配管詰まりのエラー処理が行われる。図12は、配管詰まりエラー時の処理の一例を示すフローチャートである。図12に示すように、ステップS900で制御ユニット8は、圧送タンク3内の圧力が第2の圧力値P2を超える場合には、トイレ装置100の動作を停止させる。具体的には、タンク電磁弁4aや便座電磁弁4cを閉じたり、コンプレッサ6を停止して圧送タンク3への圧縮空気の供給を停止する。トイレ装置100の動作を停止させることで漏水を防止する。
【0086】
ステップS910で制御ユニット8は、トイレ装置100の動作を停止させたら、配管詰まりを警報するためのエラー表示を行う。例えば、操作表示部80に設けられたLEDを点灯させたり、音声やブザー音を発生させて、ユーザに圧送タンク3内で異常が発生したことを警告する。なお、エラー表示は、ステップS900のトイレ装置100を停止させる前に行っても良い。
【0087】
ステップS920では、エラー表示を確認した作業員やユーザが、圧送タンク3に設けられた安全弁50のピン62を引っ張る操作を行うことで安全弁50を作動させて、圧送タンク3内の残圧を逃す作業が行われる。安全弁50が手動操作された場合には、圧送タンク3内が正常な圧力に戻ったものとしてステップS930に進む。ステップS930では、作業員等によりトイレ装置100の修理が開始される。一方、エラー表示を行ったにも係らず、安全弁50の手動操作が行われない場合にはステップS940に進む。
【0088】
ステップS940,S950では、圧送タンク3内の圧力が第2の圧力値P2を超えてさらに予め設定された第3の圧力値P3を越えた場合に、安全弁50が機械的に作動する。例えば、コンプレッサ6が故障したり、制御ユニット8のソフトウェアが正常に動作しない場合に、コンプレッサ6が停止せずに圧縮空気が圧送タンク3に供給され続け、圧送タンク3内の圧力が上昇し続けてしまう場合である。本発明によれば、圧送タンク3内の圧力が第3の圧力値P3に達した時点で安全弁50が機械的に作動するので、圧送タンク3内の気体が自動的に外部に排出され、圧送タンク3内が正常な圧力に減圧される。第3の圧力値P3は、第2の圧力値P2よりも高い値であって、かつ、圧力上昇により圧送タンク3等が破損してしまう圧力値よりも余裕を持った低い値に設定される。安全弁50が正常に作動して圧送タンク3内が正常な圧力に戻ったら、ステップS930に進む。ステップS930では、作業員等によりトイレ装置100の修理が行われる。
【0089】
圧送タンク3内の圧力が第3の圧力値P3を超えない場合でも、圧送タンク3内の圧力は依然として第2の圧力値P2よりも高い状態なので、この場合にはステップS920に戻る。そして、作業員等により安全弁50が手動操作されて、圧送タンク3内の残圧が抜かれた後に、ステップS930でトイレ装置100の修理が行われる。このようにして配管詰まりエラーの一連の処理が行われる。
【0090】
図11に戻り、ステップS70で制御ユニット8は、圧送タンク3内の圧送終了時の圧力が第4の圧力値P4以下となったか否かを判断する。第4の圧力値P4は、例えば圧送終了時において圧送の圧力が正常に下がって終了したか否かを判断するために用いられる閾値である(図10参照)。制御ユニット8は、圧送タンク3内の圧力が第4の圧力値P4以下であると判断した場合にはステップS120に進み、圧送タンク3内の圧力が第4の圧力値P4よりも大きい値であると判断した場合にはステップS100に進む。
【0091】
圧送タンク3内の圧送終了時の圧力が第4の圧力値P4よりも大きい値である場合、ステップS100で制御ユニット8は、圧送タンク3において第1の圧力値P1以上の圧力になってから第4の圧力値P4よりも大きい値の状態が予め設定したタイマ時間(圧送時間タイマ)を経過したか否かを判断する。制御ユニット8は、タイマ時間を経過したと判断した場合にはステップS110に進み、ステップS110において配管詰まりエラーが発生したものとしてエラー警告を行う。一方、タイマ時間が経過していないと判断した場合にはステップS40に戻り、再度圧送タンク3内の圧力が第2の圧力値P2以下であるか否かが判断される。
【0092】
圧送タンク3内の圧力が第4の圧力値P4以下である場合、ステップS40からステップS120へ進み、制御ユニット8は、汚物流動体の圧送が正常に終了したものと判断してコンプレッサ6を停止する。これにより、一連の圧送動作が終了する。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態では、圧送タンク3内が汚物流動体の詰まり等により予め設定された第3の圧力値P3を超える場合に、安全弁50が機械的に作動して圧送タンク3内が自動的に減圧される構成となっている。これにより、圧送タンク3内で圧力異常が発生した場合には安全弁50が作動して圧送タンク3内が自動的に減圧されるので、修理時における汚物流動体等の室内への飛び散り等を回避することができ、衛生面の向上を図ることができる。
【0094】
また、本実施の形態では、制御ユニット8のソフトウェアによる圧力監視を行うことで圧送タンク3内の異常圧力を検知して圧力制御を行い、さらに、ソフトウェアによる圧力検知が正常に行われない場合には、ハードウェアとしての安全弁50が最終的に作動して圧送タンク3内の圧力を調整するような構成となっている。したがって、本実施の形態によれば、ソフトウェアとハードウェアとによる二重のフェールセーフとしているので、圧送タンク3内で圧力異常が発生した場合に、確実かつ安全に圧送タンク3内を正常な圧力に戻すことができる。また、安全弁50を手動でも開閉操作できるように設けられているので、修理時において圧送タンク3の内部に残圧が作用している場合でも手動操作によって残圧を除去することができるので、高圧により汚物流動体が部屋に飛び散る等の問題を回避することができる。
【0095】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、安全弁50を電磁弁により構成しても良い。また、制御ユニット8のソフトウェアを用いた場合における、圧送時に圧力異常が生じたか否かの判断を、予め設定した圧力値(第2の圧力値P2等)を超えたか否かにより判断していたが、これに限定されることはない。例えば、圧力を所定間隔で測定してその圧力変化勾配が所定の変化をしたか否かにより判断しても良いし、圧力を一定間隔で測定してその前後の圧力値を比較することで圧力異常が発生したかを判断しても良い。
【符号の説明】
【0096】
2・・・粉砕機構部(粉砕装置)、3・・・圧送タンク(タンク部)、3b・・・排出弁、8・・・制御ユニット(制御手段)、10・・・便器本体(便器本体部)、12・・・圧力センサ(圧力検出手段)、14・・・連通管(連通管部材)、18・・・エア抜き電磁弁(切替弁部材)、50・・・安全弁、52・・・弁本体(本体部)、54・・・バルブ(開閉弁部材)、56・・・スプリングガイド(移動部材)、62・・・ピン(操作部材)、100・・・トイレ装置、200・・・既設トイレ装置、TS・・・圧送式トイレシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水が流入可能に設けられて排泄された汚物を受容する便器本体部と、
前記便器本体部の下部に設けられて前記洗浄水と共に前記汚物を粉砕して汚物流動体と成す粉砕機構部と、
前記粉砕機構部により粉砕された前記汚物流動体が流入する開閉可能な流入口と前記汚物流動体を廃棄場所まで導く排出管部材が接続された排出口とを有して圧縮空気を充填可能に設けられたタンク部と、
前記タンク部に連通して設けられて当該タンク部の内部の圧力値が予め設定された弁作動圧力値を超える場合に前記タンク部の内部を減圧する圧力調整部材と
を備えることを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記タンク部の内部の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記粉砕機構と前記タンク部とを連通する連通管部材と、
前記連通管部材の経路中に設けられて当該連通管部材の連通状態と非連通状態を切り替える切替弁部材と、
少なくとも前記汚物流動体が前記粉砕機構部から前記タンク部へ流入する際に前記切替弁部材を連通状態に切り替える制御手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記圧力検出部により検出された圧力値が前記弁作動圧力値よりも低く設定された弁切替圧力値を超えると判断した場合に、前記切替弁部材を連通状態として前記タンク部の内部を減圧する
ことを特徴とする請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記圧力調整部材は、
前記タンク部に連通する流入口と外部に連通する排出口とを有する本体部と、
前記本体部の内部の前記流入口に設けられて当該流入口を開閉する開閉弁部材と、
弾性部材を有して前記開閉弁部材を閉状態に付勢して前記タンク部の圧力に応じて前記開閉弁部材を開閉移動させる移動部材と、
前記移動部材に取り付けられて当該移動部材を手動で操作するための操作部材とを備え、
前記操作部材の操作により前記移動部材を移動させて前記開閉弁部材を開状態とすることで、前記タンク部の内部の気体を前記排出口から外部に排出させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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