説明

トグルロックストラットを有するステント

チューブ状ステントは、互いに隣接して配置され、複数の長手方向セグメントにより互いに連結された円筒状リングを有する。それぞれの円筒状リングは、円周に方向付けられたトグルロックストラットを有する。トグルロックストラットは、ひじ部で一緒に連結された第1のアームおよび第2のアームを有する。ステントが送達のため圧縮された形態にあるとき、第1のアームが第2のアームに対して180度未満の角度で配置されるよう、トグルロックストラットはひじ部で屈曲される。ステントが半径方向に拡張すると、第1のアームおよび第2のアーム間の角度が180度未満から180度を超える状態に変化するよう、トグルロックストラットは屈曲から解放されて直線状形態となり、直線状形態をわずかに越えてロックされた形態に弛緩することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概略的には、一般的にチューブ状医療ステントに関し、特に、トグルロックストラットを有するステントに関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、医療業界で、弱体化したまたは閉塞を起こしやすい血管のような身体の内腔を支持することが可能な装置として受け入れられた。通常は、ステントは、血管形成処置が実行されて閉塞した/狭窄した血管を部分的に広げ、よってステントの送達および配置のためのアクセスを可能にした後、患者の血管内へ挿入される。血管形成の実行に使用されたカテーテルが患者から取り除かれた後、送達カテーテルの遠位端部において、直径が小さい送達形態で保持されたチューブ状ステントを、血管を通して狭窄領域の箇所へ操縦する。狭窄箇所で位置決められると、ステントは送達カテーテルから放出されて半径方向に拡張させられ、血管の内面に接触する。拡張させられたステントは足場のような支持構造を提供してステントによりつながった血管領域の開通性を保持し、それによって血流を促進する。内科医は、前拡張処置を実行するより、むしろ疾患部位に直接ステントを配置することを選ぶかもしれない。このアプローチは、高送達性、すなわち薄型で柔軟性が高いステントを必要とする。
【0003】
これらの非外科的介入措置は、しばしば大がかりな外科手術の必要を回避する。しかし、これらの処置に関連する1つの共通の問題は、遠位の脈管を閉塞し患者が重要な健康問題を引き起こしうる塞栓片が、血流内に流出する可能性があることである。例えば、ステントの配置の間、ステントの金属ストラットが狭窄内に切り込んでプラーク片を切り離し、これが塞栓片となって、流れて患者の血管系のどこかで止まる可能性がある。さらにプラーク物質片は、バルーン血管形成処置の間、ときどき狭窄から移動し、血流内に流出する状態になる可能性がある。
【0004】
再狭窄を防ぐ手段として、種々のタイプの血管内ステントが提案され使用されてきた。一般的なステントは、動脈の内腔を開いた状態に保持することが可能なチューブ状の装置である。1つの例は、動脈血管内用に設計され永続的に埋め込まれた金属ステントを含む。金属ステントは、高い強度を有するとともに、薄型である。しかし、一部のケースで、金属ステントがあるにもかかわらず再狭窄の発生が見られた。また、埋め込まれたステントのいくつかが望まない局所の血栓形成を引き起こしたケースが見られた。これに対処するため、ある患者は局所の血栓形成または再狭窄を防ぐため抗凝固薬および抗血小板薬を服用するが、これは血管形成治療を長引かせコストを増加させる。
【0005】
永続的に埋め込まれた金属ステントの使用に関する懸念に対処するため、多数の非金属ステントが設計された。Ryan他の米国特許第5,984,963号明細書は、患者の体内で徐々に分解する再吸収性のポリマーから製造されたポリマーステントを開示している。Wolff他の米国特許第5,545,208号明細書は、再狭窄を限定する、内腔内に挿入するポリマー補綴具を開示している。補綴具は、再狭窄を限定する薬剤を運搬し、薬剤は補綴具が吸収されるにつれて放出される。しかし、吸収性ポリマーの使用は欠点があり、それがバルーン血管形成に関する外科処置後の問題を解決する際のポリマーステントの有効性を限定していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリマーステントは、通常、生体吸収性ポリマーから製造される。吸収性ステントを生産するのに通常使用される素材およびプロセスは、同様の寸法の金属ステントと比較して、低引張強度と低弾性率のステントをもたらす。吸収性ステントの機械的強度の制限は、ステントが挿入された後のはね返りをもたらすことがある。これは内腔領域の減少につながり、血流量を減少させる可能性がある。深刻なケースでは、血管は完全に再閉塞することもある。はね返りを防ぐため、(より厚いプロファイルとなる)厚いストラットを持つ、または機械的特性を向上する複合物としてポリマーステントが設計された。比較的厚いストラットの使用でポリマーステントはより硬くなり、はね返る傾向が弱くなるが、動脈の内腔のかなりの部分がステントにより占有される可能性がある。これはステントの送達をより困難にし、内腔の流域の減少を引き起こす可能性がある。ストラット領域がより大きくなると血管壁を損傷するレベルも大きくなり、これは再狭窄、すなわち血管の再閉塞の比率が高まることにつながる可能性がある。よって、機械的強度が向上された生体吸収性ステントのニーズが存在する。同様に、機械的強度が向上されたステントの設計は、ステントのプロファイルをさらに減少させるよう、金属ステントに使用することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、互いに隣接して配置され、複数の長手方向セグメントにより互いに連結された複数の円筒状リングを有するチューブ状のステントに関する。それぞれの円筒状リングは、円周に方向付けられたトグルロックストラットを有する。トグルロックストラットは、ひじ部で一緒に連結された第1のアームおよび第2のアームを有する。ステントが送達のため圧縮された形態にあるとき、トグルロックストラットは第1のアームが第2のアームに対して180度未満の角度で配置されるよう、ひじ部で屈曲される。ステントが半径方向に拡張すると、トグルロックストラットは直線状の形態に延びる。半径方向に拡張する力が緩和されるとき、トグルロックストラットは、第1のアームが第2のアームに対して180度を超える角度で配置されるまで、血管壁の圧迫力で弛緩する。トグルロックストラットはこの位置でロックする。
【0008】
本開示の前述および他の特徴および利点は、添付の図に示されるように本開示の後述の記載から明らかになる。本明細書に含まれ本明細書の部分を形成する添付の図は、さらに本開示の原理を説明し、当業者に本発明の製造および使用を可能にする。図は縮尺を示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来のステントの側面図である。
【図2】本発明の1つの実施形態によるステントの概略斜視図である。
【図3】ステントが半径方向に圧縮された形態にあるときに現れるような、図2のトグルラックストラットの概略図である。
【図4】ステントがロックする形態にあるときに現れるような、図3のトグルラックストラットの概略図である。
【図5】ステントが送達のため半径方向に圧縮された形態にある、本開示の1つの実施形態によるステントの概略側面図である。
【図6】ステントが半径方向に圧縮された形態にあるときに現れるような、図5のステントのトグルロックストラットの概略側面図である。
【図7】ステントがロックされた形態にあるときに現れるような、図6のトグルロックストラットの概略側面図である。
【図8】本発明の他の実施形態による、ステントが半径方向に圧縮された形態にあるときに現れるようなトグルロックストラットの概略側面図である。
【図9】ステントがロックされた形態にあるときに現れるような、図8のトグルロックストラットの概略側面図である。
【図10】本発明の他の実施形態による、ステントが半径方向に圧縮された形態にあるときに現れるような図8のトグルロックストラットの概略側面図である。
【図11】ステントがロックされた形態にあるときに現れるような、図10のトグルロックストラットの概略側面図である。
【図12】長手方向ステントセグメントへの可撓性接続具を有する、図10のトグルロックストラットの概略側面図である。
【図13】他の実施形態による、トグルロックストラットの概略側面図である。
【図14】本開示のトグルロックストラットの1つの実施形態の斜視図である。
【図15】図14のトグルロックストラットの正面図である。
【図16】本開示のトグルロックストラットの他の実施形態の斜視図である。
【図17】図16のトグルロックストラットの正面図である。
【図18】本開示のトグルロックストラットの他の実施形態の斜視図である。
【図19】図18のトグルロックストラットの正面図である。
【図20】ステントが送達のため圧縮された形態にある、本開示のステントの他の実施形態の側面図である。
【図21】ステントが送達のため圧縮された形態にある、本開示のステントの他の実施形態のステントの側面図である。
【図22】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図22A】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図23】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図23A】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図24】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図24A】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図25】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図25A】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図26】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図26A】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図27】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図27A】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図28】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図28A】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図29】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【図29A】圧縮された形態からロックされた形態のステントを示す、本開示によるステントを配置する方法の1つの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の具体的な実施形態を、図を参照して説明する。ここでは同一の参照番号は同一または機能的に類似した構成要素を示す。図1は、当業界で公知の従来のステント100の側面図である。ステント100は、互いに隣接して配置された複数の円筒状リング110a、110b、110c、110d、110e、110f、110g、および110hを有する。それぞれの円筒状リングは、屈曲部114、116により互いに連結された、複数の実質的に直線状のセグメント112を有する。例えば、円筒状リング110aは、屈曲部114aおよび116bにより連結された直線状セグメント112aを有する。同様に、円筒状リング110bは、屈曲部114bおよび116bにより一緒に連結された直線状セグメント112bを有する。屈曲部114および116は、それぞれの円筒状リング110の山と谷である。円筒状リング110は、山の屈曲部114および116において一緒に連結される。示された特定の例では、円筒状リング110aの山の屈曲部114aは、隣接した円筒状リング110bの谷の屈曲部116bと整列される。屈曲部114aおよび116bは、当業者に公知の他の方法で、溶接または連結成分の使用により互いに連結されてもよい。例えば、ステント100がチューブからレーザまたは科学的にエッチングされていれば、チューブ、屈曲部114aおよび116bは一体型部品として形成してもよい。さらに、ポリマーステントにおいて、屈曲部114aおよび116bは円筒状リング110aおよび110bを一緒に連結する一体型部品として成形してもよい。当業者に理解されるように、円筒状リング110の全ての山の屈曲部114が、隣接した円筒状構成要素110の隣接した谷の屈曲部116に連結されてもよく、または、山の屈曲部114のいくつかのみが隣接した円筒状構成要素110の谷の屈曲部116に連結されてもよい。
【0011】
図2〜図4は、本発明の実施形態によるステント200を示す。図2は、ステント200の概略斜視図を示す。ステント200は、円筒状の構成要素210を有する。それぞれの円筒状構成要素210は、略ハート型のひじ部234により連結される一連の周方向構成要素またはアーム230を有する。円筒状構成要素210の円周方向に隣接したひじ部234は、長手方向反対側に面する。よって、円筒状構成要素210の1つのひじ部234は、ステント200の第1の端部206に面してもよく、そのひじ部に隣接したひじ部234はステント200の第2の端部208に面する。さらに、長手方向結合部250が、それぞれのひじ部234からひじ部が面する方向に延びる。ひじ部から円筒状構成要素210内を延びる結合部は、隣接した円筒状構成要素のひじ部から反対方向に延びる結合部に連結される(または一体となる)。よって、ステント200は、ひじ部234により互いに連結されて円筒状構成要素210を形成する一連の円周アーム230、および結合部250により互いに連結されて隣接したひじ部234に互いに連結する一連の円筒状構成要素210により形成される。
【0012】
図2は概略図であり、よって、互いに略同一線上にあるか、互いに対しておよそ180度の角度にある円筒状構成要素210内の隣接したアーム230を示す。しかし、さらに詳細を後述するように、ステント200は半径方向に圧縮された形態で目標位置に送達され、そこでは隣接したアーム間の角度αは180度未満である。ステント200が拡張するにつれ、ステントは図2に示された隣接したアーム間の角度が実質的に180度である半径方向に拡張した形態を経て、隣接したアーム230間の角度βが180度より大きいロック形態に至る。
【0013】
図3および図4は、ステント200の円筒状構成要素210のトグルロックストラット220の部分を示す。図3はステント200が半径方向に圧縮された形態のときの部分を示し、図4はステント200がロックされた形態のときのトグルロックストラット220を示す。トグルロックストラット220は、略ハート型のひじ部234により一緒に連結された2つのアーム230a、230bを有する。長手方向結合部250は、ひじ部234から延びる。図3に示された半径方向に圧縮された形態において、アーム230aおよび230bの間の角度αが180度未満になるよう、ギャップ236があけられる。いくつかの実施形態では、アーム230aおよび230bが互いに平行(すなわち角度αが0度)になってもよいように、または互いに同一の角度になるように(すなわち角度αがマイナス)、ギャップ236があいてもよい。ステント200が半径方向に圧縮された形態にあるとき、角度αは約−45度から90度の範囲であってもよい。図4は、アーム230aおよび230bの間の角度βが180度より大きくなるよう、ステント200がロックされた形態にあるときのトグルロックストラット220を示す。半径方向に拡張した形態において、図4に示されるように、アーム230aおよび230bの端面240、242が結合部250に対して圧迫するように、ギャップ236は閉じられる。可撓性があるひじ部234によって円周方向の負荷による屈曲に対し抵抗するようトグルロックストラット220のロックが外されるステント形態と比較して、トグルロックストラット220が垂直にロックするこのロックされた形態により、ステント200に対してはたらく半径方向の圧縮力への抵抗が増す。そのような半径方向の圧縮力は、円筒状構成要素210内の円周方向の負荷に伝達される図2〜図4の実施形態を略ハート型のひじ部で示したが、本明細書の他の実施形態に関連して示され記載されるもののような他のひじ部をそこから延びる長手方向セグメントと一緒に使用してもよいことは、当業者に理解される。
【0014】
図5は、本開示の他の実施形態によるステント300の側面図である。身体の内腔を通る送達のためステント300は圧縮された形態で示されているが、ステント300の種々の特徴が縮尺通りでないことは当業者に理解される。ステント300はチューブ状であり、長手方向の軸302を有する。ステント300は、複数の円筒状リング310を有する。それぞれの円筒状リング310は、トグルロックストラット320により互いに連結された複数の長手方向セグメント312を有する。トグルロックストラット320は、長手方向セグメント312の実質的に長手方向の中心において長手方向セグメント312に連結してもよい。図5の実施形態において、長手方向セグメント312は実質的に直線状であり、実質的に長手方向軸302に平行である。図5に示されたステント300の圧縮された形態において、円筒状リング内の隣接した長手方向セグメント312が互いに接近しているよう、トグルロックストラット320は屈曲される。そのような状況で、例えば脈管の蛇行路を通って送達するため、ステント300は直径をより小さくする。
【0015】
円筒状リング310は、コネクタ318を用いて互いに連結してもよい。コネクタ318は、示されるように、隣接した円筒状リング310の長手方向セグメント312と一体型部品であってもよい。代わりに、隣接した円筒状リング310の選択された長手方向セグメント312が互いに溶接または接着されるよう、コネクタ318は溶接物または他の接着物であってもよい。図5に示された実施形態において、円筒状リング310の交互の長手方向セグメント312が隣接した円筒状リング310の対応する長手方向セグメント312に連結される。そのような配置で、全ての長手方向セグメント312が隣接した円筒状リング310の長手方向セグメント312に連結される類似のステントの柔軟性が向上する。しかし、当業者は種々の連結パターンを使用してもよいことを認識する。例えば、長手方向セグメントのうち2つのみ、または直線状セグメントの3つ毎などを隣接した円筒状リングに連結してもよい。図5に示された実施形態において、円筒状リング310の間の連結された長手方向セグメント312が、次の隣接した円筒状リング310の間の長手方向セグメント312で円周方向の連結からオフセットするよう、連結された長手方向セグメント312は互い違いである。
【0016】
図6は、図5のステント300の円筒状構成要素310の部分を示し、目標箇所への送達のため、ステント300が半径方向に圧縮された形態にあるときのトグルロックストラット320を示す。半径方向に圧縮された形態において、スリット336と反対側の第1のアーム330および第2のアーム332の間の角度αが180度未満となるよう、スリット336があけられる。角度αは、約0度から約120度の範囲であってもよい。図7は、第1のアーム330および第2のアーム332の間の角度βが180度より大きくなるよう、ステント300がロックされた形態にあるときの図6のトグルロックストラット320を示す。ロックされた形態において、ひじ部334のスリット336を画定する表面340および342が互いに接触し、よってトグルロックストラット320をロックしてひじ部334がさらに屈曲することを防ぐよう、スリット336は閉じられる。ストラット320の端部に印加されたあらゆる圧縮負荷は、ロックされた形態でステント300に印加される内向きの半径方向力によるものとして、そのストラットのロック状況をさらに強めるだけであるので、トグルロックストラット320が垂直またはオーバセンタである状況は、圧縮された形態でひじ部334が屈曲した形状に戻るのを防ぐ、トグルタイプのロックでもある。ストラット320のロック機能は、ひじ部334が両長手方向に屈曲するのを防ぐ。ロック円周ストラットがない従来のステント設計と比較されるように、トグルロックストラット320が垂直にロックするこのロックされた形態は、ステント300に対して内向きにはたらく半径方向力に抵抗する円筒状構成要素310内のフープ強度を増す。ステント300が血管壁を支持する十分な半径方向力を提供すると予想される一方で、ステント300の構成要素は、異なる設計のステントの構成要素、すなわち同一の素材から製造されたトグルロックストラットなしの構成要素より薄くてもよい。
【0017】
図8および図9は、長手方向ステントセグメント412がトグルロックストラット420により連結される他の実施形態を示す。図8および図9に示されたトグルロックストラット420は、当業者に明らかなように、本明細書に記載された実施形態のステントまたは他のステントで使用が可能である。図8はステントが半径方向に圧縮された形態にあるときのトグルロックストラット420を示し、図9はステントがロックされた形態にあるときのトグルロックストラット420を示す。トグルロックストラット420は、ひじ部434により一緒に連結された第1のアームまたは部分430および第2のアームまたは部分432を有する。ひじ部434は図6および図7で示されたひじ部334と類似しているが、ひじ部434は通常第1のアーム430および第2のアーム432を連結する薄い帯板であり、よって、通常、ひじ部334より可撓性がある。ひじ部434は、アームの第1の側に沿って第1および第2のアーム430、432を連結し、第1のアーム430の端面440と第2のアーム432の端面442の間のギャップ436が、ひじ部334の反対側に配置される。図8に示された半径方向に圧縮された形態において、アームの第1の側に沿って測定された第1のアーム430および第2のアーム432の間の角度αが180度未満となるよう、ギャップ436があけられる。半径方向に圧縮された形態のステントとの角度αは、約0度から約120度の範囲であってもよい。図9は、これもアームの第1の側に沿って測定された第1のアーム430および第2のアーム432の間の角度βが180度より大きくなるよう、ステントがロックされた形態にあるときのトグルロックストラット420を示す。図9に示されるように、ロックされた形態において、第1および第2のアーム430、432の端面440、442が互いに接触するよう、ギャップ436は閉じられる。トグルロックストラット1020が垂直にロックするこのロックされた形態は、チューブ状ステントに対してはたらく圧縮力に対する抵抗を増す。
【0018】
図10および図11は、トグルロックストラット520の他の実施形態を示す。図10および図11に示されたトグルロックストラット520は、当業者に明らかなように、本明細書に記載された実施形態のステントまたは他のステントで使用が可能である。図10および図11に示されたトグルロックストラット520は、トグルロックストラット520が二重のヒンジ、二重の屈曲部または二重のひじ部を有する、またはステントがロックされた形態にあるとき略ハート型と述べてもよいひじ部534を有することを除いて、図8および図9で示されたトグルロックストラット420と同様である。図10はステントが半径方向に圧縮された形態にあるときのトグルロックストラット520を示し、図11はトグルロックストラット520が垂直にロックされた、ステントがロックされた形態にあるときのトグルロックストラット520を示す。トグルロックストラット520は、ひじ部434の単一の帯板にそれぞれ類似した一対の薄い帯板を有する二重にヒンジ留めされたひじ部534により、一緒に連結された第1のアームまたは部分530および第2のアームまたは部分532を有する。第1のアーム530の端面540と第2のアーム532の端面542の間に、ギャップ536が配置される。図10に示された半径方向に圧縮されたステント形態において、ギャップ536の反対側で測定された第1のアーム530および第2のアーム532の間の角度αが180度未満となるよう、ギャップ536があけられる。図3に関連して前述したように、角度αは約−45度から90度の範囲であってもよい。図11は、これもギャップ536の反対側で測定された第1のアーム530および第2のアーム532の間の角度βが180度より大きくなるよう、ステントがロックされた形態にあるときのトグルロックストラット520を示す。図11に示されるように、ロックされた形態において、第1および第2のアーム530、532の端面540、542が互いに接触するよう、ギャップ536は閉じられる。トグルロックストラット520が垂直にロックするこのロックされた形態は、円筒状ステントに対して内向きにはたらく半径方向力に対する抵抗を増す。
【0019】
図12はトグルロックストラット520の変形を示し、第1のアーム530と第1のアーム530に隣接した長手方向ステントセグメント512の間に、可撓性接続具550が設けられる。示されるように、可撓性接続具550は、第2のアーム532と第2のアーム532に隣接した長手方向ステントセグメント512の間にも設けられる。可撓性接続具550を本明細書に記載されたいずれの実施形態に設けてもよいことが、当業者に理解される。可撓性接続具550は、ステントが半径方向に圧縮されるまたは拡張する間、ひじ部534において、アーム部分530、532またはセグメント512の変形なしに、ストラット520が屈曲することを可能にする。
【0020】
図13は、トグルロックストラット1220の他の実施形態を示す。図13は、ステントの円筒状構成要素1210の部分を示す。トグルロックストラット1220は長手方向ステントセグメント1212の間に配置され、トグルロックストラット520と類似している。トグルロックストラット1220は、略ハート型のひじ部1234により一緒に連結された第1のアーム1230および第2のアーム1232を有する。しかし、トグルロックストラット1220はさらに、第2の略ハート型のひじ部1238により第2のアーム1232に連結された第3のアーム1237を有する。図13に示されるように、ひじ部1234および1238は反対方向に面し、ひじ部1234のギャップ1236が、ひじ部1238のギャップ1239からトグルロックストラット1220の長手方向側の反対側にある。図13は長手方向セグメント1212の間の2つの略ハート型のひじ部1234、1238を示すが、本明細書に記載された他の実施形態のひじ部を使用してもよいことが当業者には解る。
【0021】
図14および図15は、トグルロックストラット620の他の実施形態を示す。示されるように、トグルロックストラット620はひじ部634で一緒に連結された2つのアーム630、632を有し、ひじ部はたわみベアリングまたはいわゆるリビングヒンジ(プラスチック)が考えられる。ひじ部634は横方向スリット636を有し、横方向スリットはストラット520の厚さ部分の減少を画定し、図3、図6、図8、および図10に示されるようにステントが半径方向に圧縮された形態にあるときひじ部634の屈曲を可能にする。図14および図15は、ロックされた形態ではなく、実質的に直線状にされた形態のトグルロックストラット620を示す。ストラット620のロックされた形態は、図7に示された実施形態と同様である。
【0022】
同様に、図16および図17は、ひじ部734で一緒に連結された2つのアーム730、732を有するトグルロックストラット720の他の実施形態を示す。ひじ部734は、ひじ部734の屈曲を可能にする横方向スリット736を有する。図18および図19は、ひじ部834で一緒に連結された2つのアーム830、832を有するトグルロックストラット820の他の実施形態を示す。ひじ部834は、ひじ部834の屈曲を可能にする横方向スリット836を有する。トグルロックストラット620、720、および820は、ひじ部634、734、および834のサイズおよび/または形状が変わることを除いて同様である。当業者が理解するように、トグルロックストラットに種々の形状、サイズ、および構造を使用することが可能である。
【0023】
図20は、本開示によるステント900の別の実施形態を示す。ステント900は、円筒状リング910a、910b、910c、および910dの長手方向セグメント912a、912b、912c、および912dがセグメントの長さに沿って屈曲または波形であることを除いて、図5のステント300と同様である。この実施形態では、長手方向セグメント912の1つを通る軸906は、ステント900の長手方向軸902と平行である。図5のように、トグルロックストラット920a、920b、920c、および920dは長手方向セグメント912a、912b、912c、および912dとそれぞれ連結し、またそれぞれの長手方向セグメントの略長手方向の中心に連結してもよい。図20は、圧縮された形態のステント900を示す。図14〜図19に示されるように、拡張すると、ステント900のトグルロックストラット920は、ストラット620、720および820と同様に直線状になる。さらに、ステント900のトグルロックストラット920は、直線状形態からオーバセンタまたは垂直を変形し、図7に示されるようにトグルロックストラット320と同様にロックが可能である。
【0024】
図21は、本開示によるステント1000の別の実施形態を示す。ステント1000は、円筒状リング1010a、1010b、1010c、および1010dの長手方向セグメント1012a、1012b、1012c、および1012dがステント1000の長手方向軸1002に対し角度1008で配置されていることを除いて、図5のステント300と同様である。図5〜図7のように、トグルロックストラット1020a、1020b、1020c、および1020dは長手方向セグメント1012a、1012b、1012c、および1012dとそれぞれ連結し、またそれぞれの長手方向セグメントの略長手方向の中心に連結してもよい。図21は、圧縮された形態のステント1000を示す。図7に示されるように、拡張すると、ステント1000のトグルロックストラット1020は直線状にされた形態をへて、トグルロックストラット320と同様のロックされたオーバセンタ形態に変形する。
【0025】
当業者が理解するように、長手方向セグメントのいくつかの変形が使用可能であり、図5、図20、および図21は単にいくつかの例を提供するにすぎない。さらに、同一のステント内で異なるセグメントの変形を用いてもよい。
【0026】
本明細書に記載されたステントは、ステンレス鋼、MP35N(登録商標)およびMP20NおよびL605コバルト合金、ニチノールのようなニッケルチタン合金、タンタル、プラチナ−イリジウム合金、金、マグネシウム、またはこれらの組み合わせのような、ステントに一般的に使用される素材で製造してもよい。MP35Nは、コバルト、ニッケル、クロムおよびモリブデンの合金の、ペンシルベニア州JenkintownのSPS Technologies,Inc.の登録された商標である。MP35Nは、コバルト35%、ニッケル35%、クロム20%、およびモリブデン10%で形態される。MP20Nは、SPS Technologies,Inc.の商標名であり、コバルト50%、ニッケル20%、クロム20%、およびモリブデン10%で形態される。本明細書に記載された金属素材で製造されたステントを、当業者に公知のプロセスで製造してもよい。例えば、限定するものではないが、レーザカットまたは化学的エッチングのような方法を用いて、壁部が薄く直径が小さい金属チューブを切断して所望のステントパターンを生産する。切断されたステントは、それから、サビ落とし、研磨、洗浄およびリンスしてもよい。ステントの形成方法およびステントの構造のいくつかの例は、Palmazの米国特許第4,733,665号明細書、Gianturcoの米国特許第4,800,882号明細書、Wiktorの米国特許第4,886,062号明細書、Wiktorの米国特許第5,133,732号明細書、Boneauの米国特許第5,292,331号明細書、Lauの米国特許第5,421,955号明細書、Dangの米国特許第5,935,162号明細書、Globermanの米国特許第6,090,127号明細書、およびWolinsky他の米国特許第6,730,116号明細書に示されており、これらの特許のそれぞれは全体を参照により本明細書に組み込んだものとする。
【0027】
さらに、本明細書に記載されたステントは、人体内での使用に適切なポリマー素材で製造してもよい。ポリマーの例は、限定するものではないが、ポリ乳酸(PLLAまたはDLPLA)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−コ(co)−グリコール酸(PLGA)、ポリ乳酸−コ−カプロラクトンのようなポリ−a−ヒドロキシ酸エステル、ポリ(ブロック−エチレンオキシド−ブロック−ラクチド−コ−グリコリド)ポリマー(PEO−ブロック−PLGAおよびPEO−ブロック−PLGA−ブロック−PEO)、ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキシド、ポリ(ブロック−エチレンオキシド−ブロック−プロピレンオキシド−ブロック−エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン、ポリオルトエステル、ポリサッカライド、およびポリヒアルロン酸のようなポリサッカライド誘導体、ポリ(グルコース)、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、キトサン誘導体、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、シクロデキストリンおよびベータ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルのような置換シクロデキストリン、ポリリジン、ポリグルタミン酸、アルブミンのようなポリペプチドおよびプロテイン、ポリ無水物、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレートのようなポリヒドロキシアルカノエートなどを含む。本明細書に記載されたポリマー素材で製造されるステントは、注入成形、吹付または注型、または当業者に公知のいずれの他の方法で形成してもよい。
【0028】
本明細書に記載されたステントは、治療用の物質でコートが可能である。さらに、ステントは、そのような治療用の物質を付着するためのくぼみまたは開口部を有して形成が可能である。治療用の物質の例は、限定するものではないが、抗腫瘍薬、抗有糸分裂薬、抗炎症薬、抗血小板薬、抗凝固薬、抗フィブリン剤、抗トロンビン剤、抗増殖剤、抗生剤、抗酸化剤および抗アレルギー剤ならびにこれらの組み合わせを含む。そのような抗腫瘍薬および/または抗有糸分裂薬の例は、パクリタキセル(例えばコネティカット州StamfordのBristol−Myers Squibb Co.のTAXOL(登録商標))、ドセタキセル(例えばドイツ、フランクフルトのAventis S.A.からのTAXOTERE(登録商標))メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えばニュージャージー州PeapackのPharmacia&UpjohnからのADRIAMYCIN(登録商標))、およびマイトマイシン(例えばコネティカット州StamfordのBristol−Myers Squibb Co.のMUTAMYCIN(登録商標))を含む。抗血小板薬、抗凝固薬、抗フィブリン剤、抗トロンビン剤の例は、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン誘導体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン剤)、ジピリダモール、グリコプロテインIIb/IIIa血小板細胞膜受容体拮抗抗体、組換えヒルジン、およびANGIOMAXTM(マサチューセッツ州CambridgeのBiogen,Inc.)のようなトロンビン阻害剤を含む。そのような細胞増殖抑制剤または抗増殖剤の例は、アンギオペプチン、カプトプリル(例えばコネティカット州StamfordのBristol−Myers Squibb Co.からのCAPOTEN(登録商標)およびCAPOZIDE(登録商標))、シラザプリルまたはリシノプリル(例えばニュージャージー州WhitehouseStationのMerck&Co.Inc.からのPRINIVIL(登録商標)およびPRINZIDE(登録商標))のようなアンジオテンシン転換酵素阻害剤、(ニフェジピンのような)カルシウムチャネル遮断薬、コルヒチン、線維芽細胞成長因子(FGF)拮抗薬、魚油(オメガ3−脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン(HMG−CoAレダクターゼの阻害剤、コレステロール降下剤、ニュージャージー州Whitehouse StationのMerck&Co.Inc.からのブランド名MEVACOR(登録商標))、(血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特定したもののような)モノクローナル抗体、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗薬),および酸化窒素を含む。抗アレルギー剤の例は、ペミロラスト(permirolast)カリウムである。使用してもよい他の治療用の物質または薬剤には、アルファ−インターフェロン、遺伝子操作上皮細胞、およびデキサメタゾンが含まれる。他の例では、治療用の物質は、放射線療法処置で埋め込み可能な装置を使用するための放射性同位元素である。放射性同位元素の例は、限定されないが、リン酸(H3324)、パラジウム(Pd103)、セシウム(Cs131)、およびヨウ素(I125)を含む。前述の治療用の物質または薬剤の予防および治療特性が当業者に公知である一方、物質または薬剤は例示の目的で提供したものであり、限定されることを意味しない。他の治療用の物質は、開示された方法および組成物での使用に同等に適用可能である。
【0029】
本発明の実施形態によるステントの配置を、ステントが目標血管内に位置付けられるまで患者の脈管を通るカテーテルを使用した送達システムを追跡することにより、遂行してもよい。カテーテルを使用した送達システムは、遠位端部で据え付けられたステント、および、送達システムが血管を通り送達箇所へ追跡される一方で半径方向に圧縮された形態にあるとき、ステントを覆い拘束する伸縮自在の外側シースを備える内側シャフトを有してもよい。例えば、カテーテルを使用した送達システムは、Wright他の米国特許第7,264,632号明細書に記載されたシステムであってもよく(この特許は全体を参照により本明細書に組み込んだものとする)、または当業界で公知の他のそのような類似の送達システムであってもよい。カテーテルを使用した送達システムは、代わりにバルーンカテーテルシステムであってもよく、ここでは当業者に公知のようにステントがバルーンの上方に据え付けられる。この例で、送達システムが送達箇所に到達するとき、バルーンは拡張してステントを半径方向に圧縮された形態から半径方向に拡張した形態に拡張する。ステントは、代わりに、部分的に自己拡張し、それからさらにバルーンにより拡張されて、前述のようにトグルロックストラットが垂直形を越えて拡張されトグルロックストラットをロックするのを確実にしてもよい。
【0030】
図22〜図25Aは、圧縮された形態からロックされた形態へステントを配置する方法の実施形態を示す。図22〜図25Aの実施形態は、図2〜図4のステント200を示す。本明細書に記載された他のステントが使用可能であることが、当業者に理解される。この実施形態では、ステント200はバルーンカテーテル1305のバルーン1310に据え付けられ、冠動脈のような血管1300内の目標位置に送達される。バルーンカテーテルおよび目標位置へのそれらの送達は、当業者に公知である。送達の間、ステント200は半径方向に圧縮された形態にある。半径方向に圧縮された形態では、図22Aに見られるように、アーム230a、230bが互いに対して180度未満の角度αで配置されるよう、それぞれのトグルロックストラット220のギャップ236があいている。図22Aは、図3に関して記載された半径方向に圧縮された形態のステント200の部分を示す。バルーンカテーテル1305の他の特徴が図示または記載されていないことが当業者に理解される。非限定の例では、シース(図示せず)をステント200の上方に設けることが可能である。
【0031】
バルーンカテーテル1305が目標位置に到着した後、図23に概略的に示されるように、バルーン1310を膨らませてもよい。バルーン1310が膨らむにつれ、バルーンはステント200を半径方向に拡張させる。ステント200が拡張するにつれ、ギャップ236が閉じ始め、およびアーム230a、230bが互いに整列し始め、それによって、図23Aに示されるように角度α1が180度に近づくようトグルロックストラット220を直線状にする。角度α1が180度に近づくにつれ、ステント200は血管壁1300に接触する。バルーン1310は拡張を続け、図24の1330に示されるようにわずかに血管壁1300を拡張する。図24は、図24Aに示されるように角度α2が約180度であるよう直線状にされたアーム230a、230bで、最大半径に拡張したステント200を示す。拡張のこの時期において、トグルロックストラット220のギャップ236はほぼ閉じられる。
【0032】
バルーン1310はそれから収縮され、図25に示されるようにステント200がロックされた形態に弛緩する。図25A(および図4)に示されるように、ギャップ236は閉じられ、アーム230a、230bは結合部250に対して圧迫される。さらに、角度βは180度より大きい。
【0033】
図26〜図29Aは、本開示の他の実施形態による、ステントを圧縮された形態からロックされた形態に配置する方法を概略的に示す。図26〜図29Aの実施形態では、ステントは自己拡張する。当業者に公知のように、自己拡張ステントは通常配置された形態に事前に設定され、送達のため半径方向に圧縮されて捕捉され、それから放出されて事前設定の形態に戻る。本実施形態では、ステント400と図6〜7に示されるようなトグルロックストラット420が示されるが、トグルロックストラットを含むいずれのステントの設計も使用が可能である。この実施形態では、ステント400は図29に示されたロックされた形態に事前に設定される。ステント400を血管1300内の目標位置に送達するため、ステント400は半径方向に圧縮され、図26に示されるように、送達カテーテル1350のシース1360または類似の装置内に配置される。圧縮された形態では、図26Aに示されるように、アーム430、432が互いに対して180度未満の角度αで配置されるよう、トグルロックストラット420のギャップ436はあいている。
【0034】
送達カテーテル1350が目標位置に到達した後、シース1360が近位に引き抜かれてステント400を放出する。ステント400が放出されるにつれ、ステント400は事前に設定された形態に戻ろうとし、これはこの実施形態ではロックされた形態である。ステント400がロックされた形態へ変形するにつれ、血管壁1300はステントが半径方向に完全に拡張するのを妨げる。ステント400は、よって図27および図27Aに示された形態であり、ここで角度α1がなお180度未満であるが180度に近づくようにアーム430、432が互いに離れて移動したよう、ステント400が拡張した。
【0035】
バルーン1370はそれから膨らまされ、チューブ状ステント400を拡張させて、図28および図28Aに示されるように、ステント400を半径方向に最大に拡張できるよう、血管壁から半径方向の圧縮力を解放する。バルーン1370はカテーテル1350と一緒に設置してもよく、またはシース1360が引き抜かれた後に別途挿入してもよい。バルーン1370が拡張するにつれ、図28に示されるように、バルーンは血管壁を拡張する。図28は、半径方向に最大に拡張したステント400を示し、図28Aに示されるように、トグルロックストラット420が直線状になり、角度α2が約180度となるよう、アーム430、432が互いに整列される。この拡張期には、トグルロックストラット420のギャップ436はほぼ閉じている。
【0036】
バルーン1370が収縮されるにつれ、ステント400は事前に設定した形態になろうとし、これは図29に示されたロックされた形態である。図29A(および図7)に示されるように、ステント400がロックされた形態にあるとき、ギャップ436は閉じられ、アーム430、432の端面440、442は互いに対して圧迫する。さらに、角度βが180度より大きくなるよう、トグルロックストラット420はトグル留めし、またはオーバセンタに変形した。
本開示の種々の実施形態を前述したが、これらは説明および例示の目的のみで提示され、限定ではないことを理解するべきである。形態における種々の変更および詳細は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくその中でなしうることが、当業者に明らかになる。よって、本開示の幅および範囲は前述の例示的な実施形態のいずれにも限定されるべきでなく、添付の請求項およびそれらの等価物によってのみ定義されるべきである。本明細書で述べたそれぞれの実施形態のそれぞれの特徴および本明細書が引用したそれぞれの文献のそれぞれの特徴は、あらゆる他の実施形態の特徴と組み合わせて使用することが可能であることを理解するべきである。本明細書で記述した全ての特許および公開は、その全体を参照により本明細書に組み込んだものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントであって、
一緒に連結されて長手方向軸および円周を有するチューブを形成する複数の円筒状リングであって、前記チューブは第1の直径を有する半径方向に圧縮された形態、および第1の直径より大きい第2の直径を有するロックされた形態を有し、それぞれの前記円筒状リングは、
前記チューブがロックされて拡張した形態にあるとき略円周方向に延びる第1のアームと、
前記チューブがロックされた形態にあるとき略円周方向に延びる第2のアームと、
前記第1のアームおよび前記第2のアームを連結するひじ部と、を有するリングを備え、
ステントが前記半径方向に圧縮された形態にあるとき、前記第1のアームおよび前記第2のアームの間の角度が180度未満であり、ステントが前記ロックされた形態にあるとき前記角度が180度より大きい、
ことを特徴とするステント。
【請求項2】
前記円筒状リングを互いに連結する長手方向セグメントを備える、
請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記長手方向セグメントが前記ひじ部から延びる、
請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記ひじ部が実質的にハート型である、
請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記第1のアーム、前記第2のアーム、および前記ひじ部が、ポリマー素材から製造される、
請求項1に記載のステント。
【請求項6】
前記第1のアーム、前記第2のアーム、前記ひじ部、および前記長手方向セグメントが、ポリマー素材から製造される、
請求項2に記載のステント。
【請求項7】
前記第1のアーム、前記第2のアーム、前記ひじ部、および前記長手方向セグメントが、金属素材から製造される、
請求項2に記載のステント。
【請求項8】
ステントがロックされた形態にあるとき略円周方向に延び、第1の複数のひじ部により一緒に連結される第1の複数のアームを持つ第1の円筒状リングと、
前記第1の円筒状リングに連結されて長手方向軸を有するチューブを形成し、前記ステントが前記ロックされた形態にあるとき略円周方向に延びて第2の複数のひじ部により一緒に連結される第2の複数のアームを持つ第2の円筒状リングと、を有し、
前記ステントが半径方向に圧縮された形態にあるとき、前記第1の複数のアーム内の隣接したアームが180度未満の角度を形成し、かつ前記ステントが前記ロックされた形態にあるとき、前記第1の複数のアーム内の前記隣接したアームが180度より大きい角度を形成する、
ことを特徴とする半径方向に圧縮された形態およびロックされた形態を有するステント。
【請求項9】
前記ステントが前記半径方向に前記圧縮された形態にあるとき、前記第2の複数のアーム内の前記隣接したアームが180度未満の角度を形成し、かつ、前記ステントが前記ロックされた形態にあるとき、前記第2の複数のアーム内の前記隣接したアームが180度より大きい角度を形成する、
請求項8に記載のステント。
【請求項10】
さらに、前記第1の円筒状リングと前記第2の円筒状リングを連結する長手方向セグメントを備える、
請求項8に記載のステント。
【請求項11】
前記長手方向セグメントが、前記第1の複数のひじ部の中のひじ部から前記第2の複数のひじ部の中のひじ部へ延びる、
請求項10に記載のステント。
【請求項12】
前記ひじ部が実質的にハート型である、
請求項10に記載のステント。
【請求項13】
前記ステントが付加的な円筒状リングを有する、
請求項8に記載のステント。
【請求項14】
前記ステントが10個の前記円筒状リングを有する、
請求項13に記載のステント。
【請求項15】
それぞれの前記円筒状リングが、8個の前記アームおよび8個の前記ひじ部を有する、
請求項8に記載のステント。
【請求項16】
一緒に連結されて長手方向軸を持つチューブを形成する複数の略円周方向リングを有するステントを配置し、前記略円周方向リングのそれぞれが複数のひじ部により一緒に連結された複数のアームを有する方法であって、
カテーテル上の前記ステントを目標位置に送達し、前記ステントが、前記ひじ部のそれぞれでギャップがあいており、かつ前記円周方向リング内の隣接した前記アームが180度未満の角度で配置されるよう、半径方向に圧縮された形態で送達されるステップと、
前記ひじ部のそれぞれの前記ギャップが閉じ始め、かつ前記円周方向リング内の前記隣接したアームの間の前記角度が約180度になるよう、バルーンを膨らませて前記ステントを半径方向に拡張させるステップと、
前記ステントを、前記ひじ部のそれぞれの前記ギャップが閉じられ、かつ前記円周方向リング内の前記隣接したアーム間の前記角度が180度より大きいロックされた形態に弛緩するよう、前記バルーンを収縮させるステップと、を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記ステントが、さらに前記円周方向リングを互いに連結する複数の長手方向セグメントを有する、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記長手方向セグメントが、複数の前記円周方向リングの1つの前記円周方向リングの前記ひじ部の少なくとも1つから、隣接した前記円周方向リングの少なくとも1つの前記ひじ部へ延びる、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
一緒に連結されて長手方向軸を持つチューブを形成する複数の略円周方向リングを有する自己拡張ステントを配置し、前記略円周方向リングのそれぞれが複数のひじ部により一緒に連結された複数のアームを有する方法であって、
カテーテル上のシース内の前記ステントを目標位置に送達し、前記ステントが、前記ひじ部のそれぞれでスリットがあいており、かつ前記円周方向リング内の隣接した前記アームが180度未満の角度で配置されるよう、半径方向に圧縮された形態で送達されるステップと、
前記ひじ部のそれぞれの前記スリットが閉じ始め、かつ前記円周方向リング内の隣接した前記アーム間の前記角度が180度に近づくが180度未満にとどまるように、前記ステントが拡張するようシースを引き抜くステップと、
前記ひじ部のそれぞれの前記スリットがさらに閉じ、かつ前記円周方向リング内の隣接した前記アーム間の前記角度が約180度になるよう、バルーンを膨らませて前記ステントをさらに半径方向に拡張させるステップと、
前記ステントを、前記ひじ部のそれぞれの前記スリットが閉じられ、かつ前記円周方向リング内の前記隣接したアーム間の前記角度が180度より大きいロックされた形態に弛緩するよう、前記バルーンを収縮させるステップと、を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記ステントが、さらに前記円周方向リングを互いに連結する複数の長手方向セグメントを有する、
請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図22A】
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【図23】
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【図23A】
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【図24】
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【図24A】
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【図25】
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【図25A】
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【図26】
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【図26A】
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【図27】
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【図27A】
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【図28】
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【図28A】
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【図29】
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【図29A】
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【公表番号】特表2013−505776(P2013−505776A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530936(P2012−530936)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/048978
【国際公開番号】WO2011/037801
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(502129357)メドトロニック ヴァスキュラー インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】