説明

トップコート組成物及び床構造体

【課題】ベースコート被膜に対する被覆作業を簡便に実施することができて、さらに樹脂ワックスの完全再生を含めたメンテナンスが可能であり、尚且つ、光沢低下が生じ難いトップコート組成物を提供すること。
【解決手段】アルキルオキシシラン、アルキルポリシリケート、有機ポリマー、有機溶剤、及びアルカリ可溶性樹脂を含むトップコート組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルや諸施設等の床に施された樹脂ワックスの上に塗布されるトップコート組成物と、該トップコート組成物を用いた床構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂ワックスを施した床のメンテナンスは、数ヶ月に1回の頻度で行われる定期作業と、およそ1年〜2年に1回の頻度で行われる樹脂ワックスのはく離作業によって実施される。
【0003】
定期作業は、樹脂ワックスの表面を洗剤で洗浄した後、新たな樹脂ワックスを数回塗布するという比較的簡易な作業である。
【0004】
樹脂ワックスのはく離作業は、定期作業では除去しきれない汚れが樹脂ワックスに蓄積した場合に、はく離剤と呼ばれる専用の洗剤を使用して古い樹脂ワックスの層を床面から完全に除去した後、新たに樹脂ワックスを塗布する作業であり、汚れの蓄積度合いと床面の光沢の低下などに応じて行われる。
【0005】
上述の定期作業やはく離作業による床のメンテナンスには、作業者の人件費、洗剤やバフィング装置等の清掃用具費用、さらには水道代や電気代等といった種々のコストが嵩むため、できるだけ作業を簡便化して、コストダウンを図ることが望まれる。
【0006】
そこで、そのようなコストダウンを図る方法の1つとして、樹脂ワックスの上に、塗り床塗料、UVコート剤、又はシリコーン系シール剤等のトップコート組成物を塗布することにより、樹脂ワックスに汚れが付着するのを防止して、メンテナンス作業を簡便化することが行われている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6040049号明細書
【特許文献2】特開2002−336759号公報
【特許文献3】特開2001−149854号公報
【特許文献4】特開2004−218386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これまでのトップコート組成物は、作業者にとって簡便に実施できるものではなかった。例えば、トップコート組成物としてUVコート剤を使用する場合、UVコート剤を塗布した後、さらに紫外線照射を行う必要があり、多くの手間と時間を要する。また、トップコート組成物は、一旦施してしまうとはく離することが困難であるため、樹脂ワックスの完全再生を含めたメンテナンスを行うことが困難であった。さらに、すり傷などの部分的な光沢低下が生じた際に、修復が困難であるという問題もあった。
【0009】
従って本発明の目的は、ベースコート被膜に対する被覆作業を簡便に実施することができて、さらに樹脂ワックスの完全再生を含めたメンテナンスが可能であり、尚且つ、光沢低下が生じ難いトップコート組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るトップコート組成物の第1特徴構成は、アルキルオキシシラン、アルキルポリシリケート、有機ポリマー、有機溶剤、及びアルカリ可溶性樹脂を含む点にある。
【0011】
〔作用及び効果〕
本構成のトップコート組成物は、床に施された樹脂ワックスの上に塗布するだけで良く、なんら他の作業を必要としないため、ベースコート被膜に対する被覆作業を簡便に実施することができる。
さらに、本構成のトップコート組成物を樹脂ワックスに塗布してトップコート被膜を形成したとしても、はく離剤によって樹脂ワックスを容易に除去することが可能であり、樹脂ワックスの完全再生を含めた床のメンテナンスを実施することができる。これは、本構成のトップコート組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂が、はく離剤によるトップコート被膜の膨潤と弱体化を促すためである。
その上、本構成のトップコート組成物を塗布して形成されたトップコート被膜は、光沢持続性に優れ、高度の美観度を長期間にわたり維持することができる。
【0012】
本発明に係るトップコート組成物の第2特徴構成は、前記アルカリ可溶性樹脂が、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ロジン変性マレイン酸、テルペン変性フェノール樹脂、及びシェラックからなる群より選択される点にある。
【0013】
〔作用及び効果〕
本構成のトップコート組成物によれば、光沢持続性に優れ、且つはく離性の良いトップコート被膜をより確実に形成することができる。
【0014】
本発明に係るトップコート組成物の第3特徴構成は、組成物中の固形分に占める前記アルカリ可溶性樹脂の割合が5重量%〜10重量%である点にある。
【0015】
〔作用及び効果〕
本構成のトップコート組成物により形成されるトップコート被膜は、その光沢度、耐久性、及びはく離性においてより一層優れた効果を備える。
【0016】
本発明に係る床構造体の第1特徴構成は、上記第1〜第3特徴構成のいずれか1項に記載のトップコート組成物によって形成されるトップコート被膜と、床材と、樹脂ワックスのベースコート被膜とを備え、前記床材の上に前記ベースコート被膜が形成されており、該ベースコート被膜の上に前記トップコート被膜が形成されている点にある。
【0017】
〔作用及び効果〕
本構成の床構造体において、ベースコート被膜に汚れが付き難く、尚且つ光沢持続性に優れており、高度の美観度を長期間にわたり維持することができるため、定期作業の軽減化が図れる。
さらに、トップコート被膜がアルカリ可溶性樹脂を含むため、はく離作業の際に該トップコート被膜にはく離剤を使用すると、トップコート被膜の膨潤と弱体化が促される。その結果、ベースコート被膜(樹脂ワックス)を容易に除去することができるようになるため、樹脂ワックスの完全再生を含めた床のメンテナンスを実施することができる。
【0018】
本発明に係る床構造体の第2特徴構成は、前記ベースコート被膜に対する前記トップコート被膜の厚み比が、0.10〜0.33である点にある。
【0019】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、ベースコート被膜に対するトップコート被膜の厚みが薄いため、はく離作業を実施する際、ベースコート被膜において歩行などの物理的な力によって形成されたキズからはく離剤が侵入して、ベースコート被膜に浸透し易い。そのため、本構成の床構造体では、はく離作業時においてベースコート被膜をはく離させ易く、はく離作業をより簡便に実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
(トップコート組成物)
本発明に係るトップコート組成物は、アルキルオキシシラン、アルキルポリシリケート、有機ポリマー、有機溶剤、及びアルカリ可溶性樹脂を含む。そして、後述する樹脂ワックスからなるベースコート被膜の表面に、汚れが付き難い硬く薄い被膜を形成させる。
【0021】
アルキルオキシシランとしては、例えば、テトラエトキシシランなどが挙げられる。
アルキルポリシリケートとしては、例えば、エチルポリシリケートなどが挙げられる。
有機ポリマーとしては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタンなどが挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコールや、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどが挙げられる。
【0022】
尚、これらアルキルオキシシラン、アルキルポリシリケート、有機ポリマー及び有機溶剤を含む組成物を特に「ハイブリッド組成物」と称する。ハイブリッド組成物とは、後述する「ハイブリッド樹脂」を形成し得るものである。ハイブリッド組成物は市販のものを使用しても良い。
【0023】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ロジン変性マレイン酸、テルペン変性フェノール樹脂、及びシェラックなどが挙げられる。尚、アルカリ可溶性樹脂は、通常アルカリ性の水溶液として用いられるが、トップコート組成物としてゾル−ゲル法によるガラス硬化システムを用いる場合は水が入ると硬化を起こしてしまうため添加できない。そのため、このような場合には、アルカリ可溶性樹脂を予め有機溶剤に溶かした後に添加すると良い。
【0024】
トップコート組成物中の固形分(不揮発成分)に占めるアルカリ可溶性樹脂の割合は、およそ5重量%〜10重量%であることが望ましい。この配合割合であれば、トップコート組成物により形成されるトップコート被膜の光沢度が良好であり、また耐久性も維持され、尚且つはく離性も良い。
【0025】
尚、トップコート組成物には、必要に応じて、変性シリコーンなどを配合することができる。また、硬化性を向上させるために、ホウ素化合物を添加することもできる。
【0026】
トップコート組成物は、例えば、有機溶剤に、アルキルオキシシラン、アルキルポリシリケート、有機ポリマー、及びアルカリ可溶性樹脂等を混合することにより、好適に製造することができる。ただし、混合の順序は適宜変更できるものであり、上記順序に限定されるものではない。
【0027】
トップコート組成物の物性としては、例えば、外観が無色半透明の液体であり、固形分(不揮発成分)をおよそ5重量%〜20重量%含むものが望ましい。
【0028】
(床構造体)
本発明に係る床構造体は、上記トップコート組成物により形成されるトップコート被膜を備えるものであり、床材と、樹脂ワックスのベースコート被膜と、トップコート被膜とを備える。当該床構造体においては、床材の上にベースコート被膜が形成されており、該ベースコート被膜の上にトップコート被膜が形成されている。
【0029】
床材としては、例えば、ビニル系、合成樹脂塗り床等のプラスチック系床、石床、セメント系床、フローリング床(木床)等、各種の床を構成する床材があげられるが、特に限定されるものではない。
樹脂ワックスとしては、例えば、アクリル樹脂エマルションなどが挙げられる。
【0030】
(床構造体の形成)
床材の上(床面)に、モップやアプリケーターなどを用いて、樹脂ワックスを塗布する。塗布量は、およそ15mL/m2に設定すると良い。樹脂ワックスを塗布して常温で乾燥させることにより、床面にベースコート被膜が形成される。ベースコート被膜は単層であっても2以上の複数層であってもよいが、3層で形成されることが望ましい。
【0031】
次いで、形成されたベースコート被膜の上に、モップやアプリケーターなどを用いてトップコート組成物を塗布する。塗布量は、およそ18mL/m2に設定すると良い。トップコート組成物を塗布して常温で乾燥させることにより、ベースコート被膜の上にトップコート被膜が形成される。
【0032】
詳細には、トップコート組成物を塗布すると、トップコート組成物中のアルキルオキシシラン及びアルキルポリシリケートが、空気中の水分と反応して高分子化して硬化し始める。このとき、アルキルオキシシラン及びアルキルポリシリケートの高分子化によって、アモルファス構造(3次元立体構造)が形成される。
【0033】
そして、トップコート組成物中の有機ポリマーが、当該アモルファス構造と結合してハイブリット化する。アモルファス構造と有機ポリマーとが結合することによって、アモルファス構造の強度が向上すると共に、ベースコート被膜(樹脂ワックス)との親和性も向上する。以下、このようにアモルファス構造と有機ポリマーとが結合したものを「ハイブリッド樹脂」と称する。
【0034】
即ち、トップコート被膜は、主成分となる上記ハイブリッド樹脂と、アルカリ可溶性樹脂とを含んで構成されるものである。トップコート被膜は単層であっても2以上の複数層であってもよい。
【0035】
ベースコート被膜に対するトップコート被膜の厚み比は、0.10〜0.33であることが望ましい。例えば、ベースコート被膜の厚みを15μmとした場合、トップコート被膜の厚みは1.5μm〜7.5μmであることが望ましい。
【0036】
(床構造体のメンテナンス)
(1)定期作業
上記床構造体について、およそ1〜2ヶ月に1回の頻度で定期作業を実施する。定期作業では、床構造体のトップコート被膜の表面を洗剤で洗浄した後、汚れ度合いに応じて新たにトップコート組成物を塗布してトップコート被膜を再形成(補修)する。
ただし、本発明に係る床構造体は、光沢持続性に優れ、高度の美観度を長期にわたって維持することができる。そのため、定期作業については洗浄だけで美観度を回復できることが多く、定期作業の軽減化が図れる。
【0037】
(2)はく離作業
はく離作業は、はく離剤を使用して古いトップコート被膜層とベースコート被膜層とを床面から完全に除去した後、上述の床構造体の形成のときと同様に、床面に新たにベースコート被膜とトップコート被膜とを積層する。
【0038】
はく離作業は、上記定期作業では除去しきれない汚れがベースコート被膜に蓄積した場合に、その汚れの蓄積度合いと床面の光沢の低下などに応じて行われるが、本発明に係る床構造体では、およそ1年〜5年に1回の頻度で実施すれば良い。
【実施例】
【0039】
〔性能比較試験〕
本発明に係るトップコート組成物(実施例)を、以下の表1に示す組成内容で調製した。構成材料は、ハイブリッド組成物(日東紡社製、HB21BN(固形分27%))、アルカリ可溶性樹脂(サートマー社製、SMA2625(10%ソルフィット溶液))、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(クラレ社製、ソルフィット)、及び変性シリコーン(ビッグケミージャパン社製、BYK−302)である。尚、表中の数値の単位は重量%である。
【0040】
【表1】

【0041】
(1)光沢度
ホモジニアス系ビニルタイルの床に、樹脂ワックス(ペンギンワックス社製、ジェネシス)を15mL/m2の塗布量の割合で3回塗布・硬化してベースコート被膜を形成した後、上記実施例に係るトップコート組成物を18mL/m2の塗布量の割合で2回塗布・硬化してトップコート被膜を形成して床構造体を構成した。
【0042】
また、比較例として、ホモジニアス系ビニルタイルの床に、樹脂ワックス(ペンギンワックス社製、ジェネシス)を15mL/m2の塗布量の割合で2回塗布・硬化してベースコート被膜を形成した後、市販のトップコート剤(ペンギンワックス社製、ディメンション)を15mL/m2の塗布量の割合で2回塗布・硬化してトップコート被膜を形成して床構造体を構成した。
【0043】
上記床構造体を構成する際、樹脂ワックス及びトップコート組成物(又は市販のトップコート剤)を塗布する毎に、JISK3920(フロアーポリッシュ試験方法)の光沢度の測定方法に準じて試験した。結果を以下の表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表2に示すように、ベースコート被膜及びトップコート被膜の形成直後における光沢度は、実施例と比較例との間にはほとんど差がなく同等であった。
【0046】
(2)耐久性
重歩行の床(ホモジニアス系ビニルタイル)において、上記(1)光沢度の場合と同様に実施例及び比較例に係る床構造体を形成し、一ヶ月毎にJISK3920(フロアーポリッシュ試験方法)の光沢度の測定方法に準じて光沢度の測定を行うと共に、汚れの付着状況を観察して以下の判定基準に従って判定した。結果を以下の表3に示す。
〔判定基準〕
◎:被膜形成直後と大差なし
○:良好な状態
△:軽度の表面洗浄後、トップコート被膜の補修塗りが必要な状態
×:重度の表面洗浄後、トップコート被膜の補修塗りが必要な状態
【0047】
【表3】

【0048】
表3に示すとおり、実施例では6ヶ月後においても、その光沢が維持され、床面状況もほぼ良好な状態が保たれていた。一方、比較例では、光沢度の減少速度が速く、3ヶ月後にはトップコート被膜の補修塗りが必要な状態となっていた。
【0049】
(3)はく離性
ホモジニアス系ビニルタイルの床において、上記(1)光沢度の場合と同様に実施例及び比較例に係る床構造体を形成し、JISK3920(フロアーポリッシュ試験方法)のはく離性の試験方法に準じてはく離性試験を行った。尚、はく離剤として、JIS標準はく離剤、及び市販のはく離剤(ペンギンワックス社製ドクター30の10倍希釈液)を使用した。結果を以下の表4に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
表4に示すように、実施例に係る床構造体のベースコート被膜は、比較例と比べてはく離させ難いものの、75サイクルまでに完全にはく離させることができた。
【0052】
以上より、本発明に係るトップコート組成物を施した床構造体においては、ベースコート被膜に汚れが付き難く、尚且つ光沢持続性に優れており、高度の美観度を長期間にわたり維持することができるため、定期作業の軽減化が図れる。その結果、作業者の人件費、洗剤やバフィング装置等の清掃用具費用、水道代、電気代等といった種々のメンテナンスコストを大幅に削減することができる。しかも、はく離が困難な高耐久コート剤(ウレタンコート剤、UVコート剤など)を床面に直接塗布する場合とは異なり、薄いトップコート被膜のため、ベースコート被膜を含む完全なはく離を比較的容易に実施できる。
【0053】
〔アルカリ可溶性樹脂の配合割合の検討〕
種々のアルカリ可溶性樹脂の配合割合を設定し、以下の表5に示す組成内容でトップコート組成物(試料1〜5)を調製した。構成材料は、ハイブリッド組成物(日東紡社製、HB21BN(固形分27%))、アルカリ可溶性樹脂(サートマー社製、SMA2625(10%ソルフィット溶液))、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(クラレ社製、ソルフィット)、及び変性シリコーン(ビッグケミージャパン社製、BYK−302)である。尚、表中の数値の単位は重量%である。
【0054】
【表5】

【0055】
上記試料1〜5における固形分(ハイブリッド組成物で形成されるハイブリッド樹脂、及びアルカリ可溶性樹脂)を5重量%とした。そして、以下の表6に示すように、該固形分に占めるアルカリ可溶性樹脂の配合割合を0重量%〜20重量%に設定した。
【0056】
【表6】

【0057】
ホモジニアス系ビニルタイルの床において、上記性能比較試験の場合と同様にして試料1〜5に係る床構造体を形成し、光沢度、耐久性、及びはく離性に関する試験を行った。結果を以下の表7に示す。
【0058】
【表7】

【0059】
表7に示されるように、トップコート組成物中の固形分に占めるアルカリ可溶性樹脂の配合割合が5重量%〜10重量%(試料2、3)である場合、当該トップコート組成物により形成されるトップコート被膜は、他の配合割合と比べてその光沢度、耐久性、及びはく離性においてより一層優れた効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、樹脂ワックスを施した床面のメンテナンスを簡便化する技術として有用であり、床面の美観度を維持するトップコート組成物の製造分野に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルオキシシラン、アルキルポリシリケート、有機ポリマー、有機溶剤、及びアルカリ可溶性樹脂を含むトップコート組成物。
【請求項2】
前記アルカリ可溶性樹脂が、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−α-メチルスチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ロジン変性マレイン酸、テルペン変性フェノール樹脂、及びシェラックからなる群より選択される請求項1に記載のトップコート組成物。
【請求項3】
組成物中の固形分に占める前記アルカリ可溶性樹脂の配合割合が5重量%〜10重量%である請求項1又は2に記載のトップコート組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のトップコート組成物によって形成されるトップコート被膜と、床材と、樹脂ワックスのベースコート被膜とを備え、
前記床材の上に前記ベースコート被膜が形成されており、該ベースコート被膜の上に前記トップコート被膜が形成されている床構造体。
【請求項5】
前記ベースコート被膜に対する前記トップコート被膜の厚み比が、0.10〜0.33である請求項4に記載の床構造体。