説明

トナー、トナーの製造方法

【課題】摩擦帯電を繰り返し行ってもトナー粒子より脱離しない安定した接着力を有する小径外添剤を用いたトナーを提供する。
【解決手段】トナー母体粒子表面に個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子を外添剤として含有するトナー粒子より構成されるトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に使用されるトナーに関し、外添剤に粒径分布がシャープな小径の単分散球状粒子を用いたトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成に使用されるトナーの技術では、外添剤とよばれる無機粒子や有機粒子をトナー粒子表面に添加して、流動性や帯電性、転写性、クリーニング性等の性能を向上させることの検討が行われていた(たとえば、特許文献1、2参照)。たとえば、前記特許文献1には、平均粒径8μmのトナー粒子に、粒径の比較的小さなアモルファスチタニアと粒径の比較的大きなシリカの併用することにより、トナーの帯電性と転写性を向上させる旨の記載がある。また、前記特許文献2には、9μm以下のトナー粒子に20nm〜80nmの無機または有機の球形粒子を添加することが記載されている。
【0003】
上記特許文献の技術の他にも、外添剤添加によりトナー性能を向上させる技術としては、たとえば、体積平均粒径が80〜300nmの単分散球形シリカ粒子を用いてトナー粒子に安定したスペーサ効果を付与するものがある(たとえば、特許文献3参照)。前記特許文献3には、前記体積平均粒径を有する単分散球形シリカ粒子を外添剤にすると、単分散かつ球形であるため当該シリカ粒子がトナー粒子表面に均一に分散し、安定したスペーサ効果を発現することが記載されている。また、単分散球形シリカ粒子の体積平均粒径を上記範囲、好ましくは、100〜200nmとすることで、現像装置内でのストレスによるトナー粒子への埋没やトナー粒子からの離脱が発生せず、帯電阻害や画質欠陥のない良好な画像形成を安定して行えると記載されている。
【0004】
また、上記単分散球形シリカ粒子により、トナーの潜像担持体への付着力を低減させ、潜像担持体とクリーニングブレードの当接部位付近での転がりによるトナーのブレード通過を抑制して、クリーニング性能を向上させることも記載されている。さらに、上記特許文献1には、体積平均粒径が80〜300nmの単分散球形シリカ粒子は湿式法であるゾルゲル法により作製できることが記載されている。そして、単分散球形シリカの粒径は、ゾルゲル法の加水分解、縮重合工程のアルコキシシラン、アンモニア、アルコール、水の質量比、反応温度、撹拌速度、供給速度等で制御できることが記載されている。
【0005】
ところで、トナーに良好な流動性と帯電性を付与する等により性能をさらに向上させるためには、上述した大きめの外添剤の使用に加え、たとえば、平均粒径が15〜50nmレベルの比較的小径の外添剤も併用する必要があることが知られている。そして、この様な小径の外添剤を作製する際、ゾルゲル法を適用させることも検討されていた(たとえば、特許文献4参照)。すなわち、前記特許文献4には、ゾルゲル法により作製されたシリカゾルにヘキサメチルジシラザン処理した後、乾燥、粉砕処理を行って、平均1次粒径が30nmのシリカ粒子を形成する旨の記載がある。
【0006】
上記特許文献4の技術では、ゾルゲル法で粒子を形成した後、粉砕処理を経て30nmのシリカ粒子を作製しているので、作製されたシリカ粒子は形状と粒径分布にばらつきがあるものと推測される。ところで、前述の特許文献4に記載の製造方法からも把握される様に、従来技術におかれてはトナー粒子へ適度な流動性と帯電性を付与するため、小径外添剤の粒径と形状はある程度バラツキを有するものにすることが好ましいとする傾向がみられた。すなわち、トナー母体粒子の露出部を残さぬ様に外添剤を添加する方が流動性や帯電性の付与に好ましいと考えられ、粒径や形状にある程度のバラツキを有する外添剤の方が粒径と形状の揃った外添剤よりも都合がよいものと考えられていた。
【0007】
事実、気相法により作製されたシリカやチタニア等を小径外添剤に用いたトナー粒子では、所望の帯電性と流動性が得られ、安定したプリント作成を可能にしていた。したがって、気相法に比べ経済性や生産性の面で不利とされるゾルゲル法で小径外添剤を生産し、これを積極的にトナーへ使用することは行われていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−348354号公報
【特許文献2】特開平4−337738号公報
【特許文献3】特開2003−140402号公報
【特許文献4】特許第3882508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の様に、気相法等で作製された粒径や形状にある程度のバラツキがある小径外添剤は、トナー母体粒子表面をすき間なく被覆するのには好ましいものであったが、外添剤粒子間では粒径や形状の差によりトナー母体粒子表面への接着力にバラツキが生じていた。すなわち、外添剤粒子には、トナー母体粒子に対して安定した接着力を発現する形状や粒径を有するものが存在する一方で、良好な接着力を発現することが困難な形状や粒径を有するものも存在していた。
【0010】
したがって、現像装置内でキャリアとの摩擦帯電を繰り返すうちに、弱い接着力で付着している外添剤はトナー粒子表面より脱離し、脱離した外添剤がキャリア表面に付着して帯電付与性能を低下させる等、キャリア劣化の原因になった。その結果、トナーへ所定の帯電量を付与することが困難になり、帯電量の不足したトナーでは感光体上に形成した静電潜像を正確に顕像化することができなくなった。具体的には、所定濃度を実現するだけのトナー供給が行えず、高濃度の画像形成では濃度不足が顕著に顕れた。
【0011】
また、感光体上でトナー粒子表面より脱離した小径外添剤は、クリーニングブレードのエッジ部からの押圧力により感光体上へ固着し、感光体表面にフィルミングを発生させることになった。したがって、感光体上の小径外添剤が固着した個所にはトナーを供給することができず、当該個所のみトナー画像が欠落した中抜けと呼ばれる画像不良を発生させる原因になった。特に、フルカラー画像形成を行う場合、グリーン色調の様に、色の異なるカラートナーを複数重ね合わせて形成された画像では、色ムラのある色調画像を形成することがあった。
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、トナー母体粒子に対して安定した接着力を発現する小径外添剤を用いることにより、摩擦帯電の繰り返し等のストレスを受けても小径外添剤がみだりに脱離することのないトナーを提供することを目的とする。具体的には、現像装置内でキャリアとの摩擦帯電を繰り返し行っても小径外添剤がトナー粒子より脱離せず、キャリア表面への外添剤付着によるキャリア劣化を発生させないトナーを提供することを目的とする。また、トナー粒子より脱離した小径外添剤の感光体表面への固着に起因するフィルミングによる感光体の表面汚染を起こさないトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の課題が以下に記載のいずれかの構成により解消されるものであることを見出した。すなわち、請求項1に記載の発明は、
『少なくとも樹脂と着色剤を含有するトナー母体粒子表面に外添剤を含有してなるトナー粒子より構成されるトナーであって、
前記トナー粒子は、少なくとも、個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子を外添剤として含有するものであることを特徴とするトナー。』である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、
『前記個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子は、
形状係数SF−1が、100以上120以下のものであり、かつ、
前記トナー粒子に含有されている90%以上の該単分散球状粒子が、前記個数平均1次粒径の±10%以下の範囲内の粒径を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のトナー。』というものである。請求項2に記載の発明は、請求項1でいう「個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子」を、形状係数と粒径分布の数値範囲規定するもので、本発明の好ましい形態を具体的に説明するものである。
【0015】
請求項3に記載の発明は、
『前記個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子が、ゾルゲル法で作製されるシリカ粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。』というものである。
【0016】
請求項4に記載の発明は、
『前記トナー粒子は、個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の単分散球状粒子を外添剤として含有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナー。』というものである。
【0017】
請求項5に記載の発明は、
『前記個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の単分散球状粒子は、
形状係数SF−1が100以上120以下のものであり、かつ、
前記トナー粒子に含有されている90%以上の該単分散球状粒子が、前記個数平均1次粒径の±10%以下の範囲内の粒径を有するものであることを特徴とする請求項4に記載のトナー。』というものである。
【0018】
請求項6に記載の発明は、
『前記個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の単分散球状粒子が、ゾルゲル法で作製されるシリカ粒子であることを特徴とする請求項4または5に記載のトナー。』というものである。
【0019】
請求項7に記載の発明は、
『少なくとも樹脂と着色剤を含有するトナー母体粒子表面に外添剤を添加してトナー粒子を作製する工程を有するトナーの製造方法であって、
前記トナー粒子を作製する工程では、前記トナー母体粒子表面に、少なくとも、個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子を添加することを特徴とするトナーの製造方法。』というものである。
【0020】
請求項8に記載の発明は、
『前記個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子は、
形状係数SF−1が、100以上120以下のものであり、かつ、
前記トナー粒子に含有されている90%以上の該単分散球状粒子が、前記個数平均1次粒径の±10%以下の範囲内の粒径を有するものであることを特徴とする請求項7に記載のトナーの製造方法。』というものである。
【0021】
請求項9に記載の発明は、
『前記個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子が、ゾルゲル法で作製されるシリカ粒子であることを特徴とする請求項7または8に記載のトナーの製造方法。』というものである。
【0022】
請求項10に記載の発明は、
『前記トナー粒子を作製する工程では、前記トナー母体粒子表面に、少なくとも、個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子を外添剤として添加するとともに、
個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の単分散球状粒子を外添剤として添加することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。』というものである。
【0023】
請求項11に記載の発明は、
『前記個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の単分散球状粒子は、
形状係数SF−1が100以上120以下のものであり、かつ、
前記トナー粒子に含有されている90%以上の該単分散球状粒子が、前記個数平均1次粒径の±10%以下の範囲内の粒径を有するものであることを特徴とする請求項10に記載のトナーの製造方法。』というものである。
【0024】
請求項12に記載の発明は、
『前記個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の単分散球状粒子が、ゾルゲル法で作製されるシリカ粒子であることを特徴とする請求項10または11に記載のトナーの製造方法。』というものである。
【0025】
請求項13に記載の発明は、
『前記トナー母体粒子は、
少なくとも、水系媒体中で乳化重合を行って樹脂粒子を形成する工程と、前記樹脂粒子を水系媒体中で凝集、融着させる工程を経て作製されるものであることを特徴とする請求項7〜12のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。』というものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、帯電性や流動性を付与する小径の外添剤に個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子を用いることにより、トナー母体粒子に対して安定した接着力を有する小径外添剤を用いたトナーの提供を可能にした。すなわち、添加された小径外添剤はいずれも同レベルの接着力でトナー粒子表面に接着しているので、外添剤粒子間でのトナー粒子に対する接着性のバラツキをなくすことを可能にした。
【0027】
したがって、たとえば、現像装置内で摩擦帯電を繰り返し行いトナーがストレスを受け続けていても、弱い接着力で付着していた小径外添剤がストレスに耐えきれずトナー粒子表面より脱離することの発生を防ぐことができるようになった。また、感光体上に残留したトナーをクリーニングブレードで除去する際、弱い接着力で付着していた小径外添剤がクリーニングブレードの押圧力の影響でトナー粒子表面から脱離することの発生も防ぐことができる様になった。
【0028】
その結果、現像装置内でトナー粒子表面より脱離した小径外添剤のキャリア粒子表面への付着によるキャリアの性能劣化や、クリーニングブレードの押圧力により脱離した小径外添剤の感光体表面への固着によるフィルミングに起因する感光体汚染をなくした。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るトナーの使用が可能な電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、少なくとも樹脂と着色剤を含有するトナー母体粒子表面に外添剤を添加してなるトナー粒子より構成されるトナーに関する。
【0031】
本発明は、トナー粒子の流動性と帯電性向上のために添加される平均粒径が20nmから60nm程度のいわゆる小径外添剤に、形状と粒径分布があるレベルの範囲内に揃えられた単分散球状粒子という粒子を用いることにより上記課題を解消したものである。この様に形状と粒径を揃えた小径外添剤を用いることにより、トナー母体粒子表面に外添剤を同レベルの接着強度で付着、被覆させるので、トナー粒子にストレスが加わったときに全ての外添剤が同じ様な耐久性を発現するものと考えられる。したがって、添加された外添剤の中には、他の外添剤と比べてトナー粒子との接着力が著しく低いものは存在せず、ストレスを受けたときに、接着力の弱い外添剤がトナー粒子表面のところどころから脱離することが起こらないものと考えられる。
【0032】
また、本発明では、粒径と形状を揃えた小径外添剤粒子を使用するので、トナー母体粒子表面に規則的な配置状態を形成しながら外添剤粒子を被覆し、帯電性や流動性に局所的なばらつきのない均一な性能のトナー粒子を作製するものと考えられる。
【0033】
本発明では、個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の小径外添剤と呼ばれる外添剤を、形状が球状に近く粒径分布の揃った単分散球状粒子とすることで、小径外添剤粒子のトナー粒子への接着性のばらつきをなくし上記効果を奏する様にしたものと推測される。
【0034】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明でいう「トナー母体粒子」とは、粉砕法や重合法等の公知の製造方法で作製され、外添剤を添加する前の状態にある粒子のことである。また、「トナー粒子」とは、前述した「トナー母体粒子」表面に外添剤を添加して、電子写真方式の画像形成へ使用することが可能な状態の粒子のことである。さらに、「トナー」とは、前述した「トナー粒子」の集合体(バルク)のことであり、たとえば、プリンタに装填されるカートリッジに収納され、画像形成に使用されるものである。
【0035】
最初に、本発明で外添剤に使用される単分散球状粒子について説明する。本発明に係るトナーを構成するトナー粒子は、少なくとも、個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子を外添剤として含有するものである。本発明に係るトナーを構成するトナー粒子に外添剤として使用される「単分散球状粒子」は、粒子の個数平均1次粒径に加えて、粒子の形状と粒径分布も特定されたものである。
【0036】
本発明者は、上記の様に形状と粒径分布の揃っている粒子を外添剤として使用することで、性能が均質化されたトナー粒子より構成されるトナーが得られ、個々のトナー粒子の性能が均質化したトナーによれば、安定した画像形成が行える様になるものと考えた。そして、トナーの帯電性及び流動性の向上に寄与するとされる個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の小径外添剤に形状と粒径分布を揃えたものを用いることで、個々のトナー粒子の帯電性能と流動性が揃えられ、トナー性能を揃えられると考えた。
【0037】
すなわち、形状や粒径にバラツキのある外添剤粒子が添加されたトナー粒子は、トナー粒子表面に添加された外添剤粒子の密度や付着状態に差が生じているので、これが個々のトナー粒子間で帯電性能や流動性にバラツキとなって表れるものと考えた。つまり、小径外添剤の形状と粒径を揃えることにより、個々のトナー粒子における外添剤の付着状態が統一され、個々のトナー粒子の性能を揃えられる様になるものと考えたのである。
【0038】
従来技術では、トナーの帯電性と流動性を向上させるためには、トナー母体粒子表面を小径外添剤ですき間なく被覆することが好ましく、そのため形状や粒径にある程度のバラツキを有する小径外添剤の方がこの様な被覆に都合がよいものと考えられていた。本発明者は、形状や粒径にバラツキのある小径外添剤ではトナー母体粒子表面への接着性に差が生じるため、接着力の弱い外添剤粒子はストレスを受けるとトナー粒子表面より脱離し、キャリア汚染や感光体汚染の原因になるものと考えて本発明を見出した。
【0039】
この様に、本発明では、個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の小径外添剤に形状と粒径分布の揃っている単分散球状粒子を用いることで、脱離外添剤に起因するキャリア汚染や感光体汚染の発生を防ぎ、トナーの帯電性と流動性の向上を実現させている。
【0040】
また、形状と粒径が揃っている外添剤粒子の使用により、個々のトナー粒子に付着させる外添剤粒子個数も同レベルに揃えられ、粒径分布の広い外添剤を使用するときに比べ、外添剤添加量の制御が行い易く、トナーの生産性向上にも寄与するものと期待される。
【0041】
本発明で使用される個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の外添剤粒子が単分散球状粒子であることは、後述する形状係数SF−1と粒径分布で規定することが可能である。個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の上記外添剤粒子として好ましいものとしては、たとえば、形状係数SF−1が100以上120以下で、粒径分布がトナー粒子に含有される上記外添剤粒子の90%以上が個数平均1次粒径の±10%以下の粒径であるものが挙げられる。なお、外添剤粒子の形状係数SF−1と粒径分布の算出方法については後で詳細に説明する。
【0042】
また、本発明に係るトナーの好ましい形態として、上記個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子に加え、個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の単分散球状粒子をいわゆる大径外添剤と呼ばれる外添剤粒子を使用したものがある。
【0043】
本発明では、個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の外添剤粒子に単分散球状粒子を用いることにより、当該外添剤粒子がトナー粒子表面に均一分散して安定したスペーサ効果を発現するものと期待される。当該大径単分散球状外添剤粒子によるスペーサ効果により、たとえば、現像装置内でトナーを長期にわたり撹拌しても、トナー粒子同士の表面接触が回避され、トナー粒子表面に付着させた小径単分散球状外添剤粒子の埋没や脱離の発生を防ぐことができる。その結果、衝撃に強いトナー粒子表面が実現され、たとえば、現像装置内でのトナー撹拌を長期間行っていても、トナー粒子表面から小径外添剤が脱離するおそれがなく、キャリア汚染や感光体汚染のない帯電性と流動性にすぐれたトナーをより確実に実現できる。
【0044】
そして、本発明で好ましく使用される個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の外添剤粒子が単分散球状粒子であることは、後述する形状係数SF−1と粒径分布で規定することが可能である。個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の上記外添剤粒子として好ましいものとしては、たとえば、形状係数SF−1が100以上120以下で、粒径分布がトナー粒子に含有される上記外添剤粒子の90%以上が個数平均1次粒径の±10%以下の粒径であるものが挙げられる。なお、外添剤粒子の形状係数SF−1と粒径分布の算出方法については後で詳細に説明する。
【0045】
この様に、個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の小径単分散球状粒子に加え、個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の大径単分散球状粒子を併用することが好ましく、両粒子の個数平均1次粒径差が20nm以上であることがより好ましい。両単分散球状粒子の個数平均1次粒径差を20nm以上とすることにより、外添剤添加工程で双方の単分散球状粒子は各々が求められている性能をトナー粒子上で安定して発現できる様、トナー母体粒子表面に添加されるものと考えられる。すなわち、個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の小径の単分散球状粒子はトナー粒子に強固に固定され、トナーの帯電性と流動性の向上に寄与する様に作用するものと考えられる。一方、個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の大径の単分散球状粒子はトナー母体粒子に十分に静電付着して、スペーサ効果を安定して発現するものと考えられる。この様に、1回の外添剤添加操作で求められる機能が異なる両単分散球状粒子を、各々の機能を安定して発現させる様に機能分離させた形でトナー母体粒子表面へ付着させることができる。
【0046】
次に、本発明で使用される前記単分散球状粒子が「球状粒子」であることを規定するために用いられる「形状係数SF−1」について説明する。本発明で使用される個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の外添剤粒子、あるいは、本発明で好ましく使用される個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の外添剤粒子は、形状係数SF−1の値が好ましくは100以上120以下、より好ましくは100以上110以下となるものである。
【0047】
ここで、「形状係数SF−1」は、本発明でいう「球状」、すなわち、当該外添剤粒子の「丸さの度合」を示す指数であり、下記式で定義されるものである。形状係数SF−1は、その値が100のとき当該外添剤粒子の形状が真球であることを意味するものであり、値が100よりも大きな値になるにしたがって丸みを帯びた形状から不定形な形状になっていくことを意味する。
【0048】
SF−1=〔{(粒子の最大径)/(粒子の投影面積)}×(π/4)〕×100
なお、式中の「最大径」とは、粒子の平面上への投影像を2本の平行線で挟んだときに、当該平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいうものである。
【0049】
粒子の形状係数SF−1は、後述する上記粒子の個数平均粒径の測定と同様、走査型電子顕微鏡と画像解析処理装置を用いて算出することが可能である。すなわち、走査型電子顕微鏡により30,000倍の倍率でトナーを写真撮影し、得られた写真画像をスキャナにより取り込み、画像解析処理装置「LUZEX AP(ニレコ社製)」で解析を行って算出する。画像解析処理装置による解析では、写真画像上のトナー表面に存在する外添剤粒子を2値化処理し、100個の外添剤粒子についてSF−1を算出して、その平均値を外添剤粒子の形状係数SF−1としている。また、具体的な走査型電子顕微鏡としては、たとえば、日立製作所(株)製のフィールドエミッション走査型電子顕微鏡「S−4500」等が挙げられる。
【0050】
次に、本発明で使用される外添剤粒子が「単分散の粒子」であることを説明するための手段の1つである「外添剤の粒径分布」について説明する。本発明で使用される個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の外添剤粒子、あるいは、本発明で好ましく使用される個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の外添剤粒子は、トナー粒子に含有されている90%以上の当該外添剤粒子の粒径が上記個数平均1次粒径の値の±10%以下の範囲内であることが好ましいものである。
【0051】
ここで、外添剤粒子の「単分散性」、すなわち、「外添剤粒子の粒径分布がシャープであること」は、トナー粒子に添加されている外添剤粒子の粒径を公知の方法で測定したとき、測定した外添剤粒子のうちの一定比率以上の粒子が上記個数平均1次粒径をピーク値としてこのピーク値を中心に特定範囲内の粒径を有するものであることに基づくものである。
【0052】
本発明で使用される外添剤粒子の好ましい粒径分布としては、たとえば、トナー粒子に添加されている外添剤粒子の粒径を測定したとき、上記個数平均1次粒径の値をピーク値として、測定した外添剤粒子の90%以上の粒子が上記ピーク値の±10%以下の範囲内の粒径を有するものであることが挙げられる。
【0053】
ここで、「測定した外添剤粒子の90%以上の粒子の粒径が、ピーク値である個数平均1次粒径の±10%以下の範囲内の値である」とは、具体的には以下の様な意味である。すなわち、「外添剤の個数平均1次粒径がたとえば50nmのとき、粒径分布の測定に用いた外添剤粒子の90%以上の粒子が、45nm以上55nm以下の範囲にある粒径を有するもの」であることを意味する。この様に、本発明で使用される外添剤粒子の「単分散性」を具体的に表す方法としては、上記の様に定義される「粒径分布」により規定が可能である。
【0054】
なお、本発明に係るトナーに使用可能な外添剤粒子の粒径分布の測定は、前述する上記外添剤粒子の形状係数SF−1の測定と同様、市販の走査型電子顕微鏡と画像解析処理装置を用いて行うことができる。具体的には、走査型電子顕微鏡により30,000倍の倍率でトナーを写真撮影し、得られた写真画像をスキャナで取り込み、取り込んだ写真画像を市販の画像解析処理装置「LUZEX AP(ニレコ社製)」で解析する。画像解析処理装置による解析では、写真画像上のトナー表面に存在する外添剤粒子を2値化処理し、100個の外添剤粒子の粒径を算出する。この様に算出した各外添剤粒子の粒径値より個数平均1次粒径を算出し、得られた個数平均1次粒径と各外添剤粒子粒径を比較することにより、外添剤粒子の粒径分布を算出する。この様な手順により、トナーに使用されている外添剤粒子の個数平均1次粒径と粒径分布を測定することができる。なお、走査型電子顕微鏡の具体例としては、たとえば、日立製作所(株)製のフィールドエミッション走査型電子顕微鏡「S−4500」等がある。
【0055】
本発明に係るトナーに外添剤として使用される単分散球状粒子の個数平均1次粒径は、外添剤粒子を作製するときの反応条件や原料比率等により制御が可能である。たとえば、外添剤粒子の1つであるシリカ粒子をゾルゲル法で作製する場合、加水分解時や縮重合時に、アルコキシシラン、アンモニア、アルコール、水等の原料の添加量や、反応温度、撹拌速度、供給速度等を制御して所望の粒径を有する粒子の作製が可能である。
【0056】
本発明に係るトナーに外添剤として使用される単分散球状粒子は、球状粒子の形成に有利な水ガラス法やゾルゲル法等の湿式法で作製することが好ましく、その中でも、ゾルゲル法は粒径分布のシャープな外添剤粒子を作製する上で特に好ましい。
【0057】
また、本発明に係るトナーに外添剤として使用される単分散球状粒子の材質は、特に限定されるものではなく、たとえば、シリカ、チタニア、アルミナ及びこれらの複合酸化物等の無機粒子が好ましく用いられる。その中でもシリカ粒子が特に好ましい。
【0058】
本発明で好ましく使用される外添剤の1つである単分散球状のシリカ粒子は、湿式法の1つであるゾルゲル法により以下の手順で作製することができる。すなわち、
(1)アンモニア水を触媒に用い、テトラメトキシシランあるいはテトラエトキシシランを、温度をかけながら水とアルコールの混合溶媒中に滴下し撹拌を行うことで反応させる。この様にしてシリカゾル懸濁液を形成する。
(2)反応により形成されたシリカゾル懸濁液を遠心分離し、湿潤シリカゲルとアルコール、アンモニア水に分離する。
(3)湿潤シリカゲルに溶剤を添加して再度シリカゾルの状態にし、疎水化処理剤を添加することによりシリカ表面の疎水化処理を行う。
(4)疎水化処理を行ったシリカゾルから溶媒を除去し、乾燥、シーブを行うことにより、目的のシリカ粒子が得られる。
【0059】
次に、ゾルゲル法によるシリカ粒子作製の具体例として、個数平均1次粒径が30nmのシリカ粒子をゾルゲル法で作製する手順を以下に示す。
【0060】
撹拌装置、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、
メタノール 625質量部
水 40質量部
28質量%アンモニア水 50質量部
を投入してアンモニア水を含有したメタノール−水混合溶媒を作製する。
【0061】
当該混合溶媒の温度を35℃に調整して、撹拌を行いながら、
テトラメトキシシラン 800質量部
5.4質量%アンモニア水 420質量部
をそれぞれ前記混合溶媒中に滴下する。これら化合物の滴下開始は同時に行い、テトラメトキシシランを6時間で滴下し、5.4質量%アンモニア水を5時間で滴下する。
【0062】
テトラメトキシシランの滴下終了後も撹拌を0.5時間継続させ、35℃の温度下で加水分解反応を進行させた後、遠心分離処理等の前記(2)の操作を経て、メタノール−水混合溶媒中にシリカ微粒子が分散してなるシリカ微粒子分散液を作製する。
【0063】
次に、上記シリカ微粒子分散液中に、ヘキサメチルジシラザンをシリカ微粒子(SiO)1モルに対して3モル添加した後、60℃に加熱して3時間の反応処理を行うことによりシリカ微粒子の疎水化処理を行う。3時間の反応処理を行った後、メタノール−水混合溶媒を減圧下で分散液より留去することにより個数平均1次粒径が30nmの疎水性シリカ粒子が得られる。
【0064】
また、上記個数平均1次粒径が30nmの疎水性シリカ粒子の作製例で、前記混合溶媒の温度を30℃とし、テトラメトキシシランの滴下時間を3.5時間に変更した他は、同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径が50nmの疎水性シリカ粒子が得られる。
【0065】
また、上記個数平均1次粒径が30nmの疎水性シリカ粒子の作製例で、前記テトラメトキシシランの添加量を1160質量部に変更した他は、同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径が100nmの疎水性シリカ粒子が得られる。
【0066】
さらに、上記個数平均1次粒径が30nmの疎水性シリカ粒子の作製例で、前記混合溶媒の温度を40℃、テトラメトキシシランの添加量を1260質量部、テトラメトキシシランの滴下時間を7時間に変更した。その他は同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径が120nmの疎水性シリカ粒子が得られる。
【0067】
なお、本発明に使用可能な外添剤は、カップリング剤等の公知の処理剤による表面処理が施されているものが好ましく、表面処理剤の具体例としては、たとえば、以下のものがある。すなわち、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーン系オイル、シリコーンワニス、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイルアミノ基及び第4級アンモニウム塩の少なくともいずれか一方を含有するカップリング剤、変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0068】
本発明に係るトナーに上記外添剤として使用可能な単分散球状シリカ粒子についてさらに説明する。本発明に係るトナーに外添剤として使用可能な単分散球状シリカ粒子は炭素を含有するものが好ましく、これはシリカ粒子中に炭素が適度に存在することでトナーの帯電性能は一定レベルに維持されることによるものと考えられる。シリカ粒子の平均炭素量は、シリカの質量に対して好ましくは1.0質量%〜3.0質量%であり、より好ましくは、1.5質量%〜2.5質量%の範囲である。平均炭素量が1.0質量%より少なくなると該単分散球形シリカを着色粒子に外添した場合、高温高湿環境下での帯電特性においてトナー帯電量が低くなり、過剰に現像し画質の悪化を招くばかりでなく、現像器からトナーが吹き出し現像器を汚すことがある。一方、3.0質量%より多くなると低温低湿環境下での帯電維持性において、トナーの帯電量が高くなり、現像性が低下することはもとより、転写時にも静電荷像担持体とトナーの静電的な付着力が強くなり転写性を悪化させる。
【0069】
シリカ粒子中の平均炭素量を制御する方法としては、たとえば、ゾルゲル法でシリカ粒子を作製する際、メタノール等のアルコール溶媒を除去する工程で溶媒除去量を観測し、これに基づいて反応を調整する方法がある。すなわち、アルコール除去工程の時間を長くすることでシリカ粒子表面のアルコキシ基をなくすことができ、アルコール除去工程の時間を短縮することでシリカ粒子表面に特定量のアルコキシ基を存在させることができる。また、シリカ粒子表面にアルコキシ基を形成しないカップリング剤を用いて処理する方法もある。
【0070】
また、シリカ粒子中の平均炭素量は、たとえば、市販の固体中炭素分析装置「EMIA−110(堀場製作所製)により測定が可能で、具体的には、シリカ0.1gを磁性ボートに精秤後、約1200℃で燃焼させ、そのときのCO発生量より炭素量を換算する。
【0071】
次に、本発明で用いられるトナー母体粒子の製造方法について説明する。
【0072】
本発明で用いられるトナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂と着色剤を含有してなる粒子で、電子写真方式の画像形成に使用されるトナー粒子の母体を構成するもので、一般に、母体粒子あるいは着色粒子と呼ばれるものである。本発明で用いられるトナー母体粒子は、特に限定されるものではなく、従来のトナー母体粒子製造方法により作製することが可能である。具体的には、混練、粉砕、分級工程を経てトナー母体粒子を作製するいわゆる粉砕法によるトナー母体粒子製造方法や、重合性単量体を重合させ、同時に形状や粒径を制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合法によるトナー母体粒子の製造方法がある。
【0073】
なお、粉砕法によりトナー母体粒子を製造する場合、混練物の温度を130℃以下に維持した状態で作製を行うことが好ましい。これは、混練物に加える温度が130℃を超えると、混練物に加えられた熱の作用で混練物中における着色剤の凝集状態に変動を来し均一な凝集状態を維持できなくなるおそれがあるためである。仮に、凝集状態にバラツキが発生すると、作製されたトナーの色調にバラツキが生じることになり、色濁りの原因となるおそれがある。
【0074】
また、重合法によるトナー母体粒子の製造方法では、たとえば、乳化重合法、懸濁重合法、ポリエステル伸長法、乳化重合凝集法等の製造方法がある。これらの中でも乳化重合により作製した樹脂粒子を凝集、会合させる工程を経てトナー母体粒子を作製することが可能な乳化重合凝集法は重合法の中でも形状や粒径の揃ったトナー母体粒子を作製する上で有利であり、トナー母体粒子の円形度の制御性も良好なことから好ましい。
【0075】
以下、乳化重合凝集法によるトナー母体粒子作製の中で樹脂粒子を凝集、融着させる工程である凝集工程について説明する。
【0076】
凝集工程では、樹脂粒子の水分散液と着色剤粒子や必要に応じてワックス粒子、荷電制御剤粒子、その他トナー構成成分の粒子の水系媒体よりなる分散液を混合して凝集用分散液を調製する。そして、調製した凝集用分散液中で樹脂粒子及び着色剤粒子等を凝集、融着させてトナー母体粒子の分散液を形成する。
【0077】
詳細には、凝集用分散液に臨界凝集濃度以上の凝集剤を加えて塩析を行うと同時に撹拌翼を有する反応装置で撹拌を行い、樹脂組成物のガラス転移点以上で加熱融着させて凝集粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させる。そして、目的の粒径となったところで粒径成長を停止させ、さらに加熱、撹拌を継続して粒子表面を平滑にして形状を制御してトナー母体粒子を形成するものである。
【0078】
凝集剤としては特に限定されるものではないが、金属の塩から選択されるものが好適に使用される。たとえば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩等の1価の金属の塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の塩等がある。具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、これらの中で特に好ましくは2価の金属の塩である。2価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
凝集工程においては、凝集剤を添加した後に放置する放置時間(加熱を開始するまでの時間)をできるだけ短くすることが好ましい。すなわち、凝集剤を添加した後、凝集用分散液の加熱をできるだけ速やかに開始し、樹脂組成物のガラス転移点以上とすることが好ましい。この理由は明確ではないが、放置時間の経過によって粒子の凝集状態が変動して、得られるトナー母体粒子の粒径分布が不安定になったり、表面性が変動したりする問題が発生するおそれがあるからである。放置時間は、通常30分以内とされ、好ましくは10分以内である。
【0080】
また、凝集工程においては、加熱により速やかに昇温させることが好ましく、昇温速度は1℃/分以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は、特に限定されないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、凝集用分散液がガラス転移点温度以上の温度に到達した後、当該凝集用分散液の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させることが肝要である。これにより、トナー母体粒子の成長と融着とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナー母体粒子の耐久性を向上させることができる。
【0081】
使用される着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料等を任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等を使用することができる。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイト等の強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理により強磁性を示す合金等がある。強磁性金属を含まないが熱処理により強磁性を示す合金としては、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−錫等のホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロム等がある。
【0082】
染料としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等がある。また、これら染料の混合物を使用することも可能である。
【0083】
また、顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60等がある。また、これらの混合物を使用することも可能である。顔料の数平均一次粒子径は種類により多様であるが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
【0084】
ワックスとしては、たとえば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等の炭化水素系ワックス類、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、クエン酸ベヘニル等のエステルワックス類等がある。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
ワックスの含有割合は、樹脂粒子全質量の2〜20質量%、好ましくは3〜18%、さらに好ましくは4〜15質量%である。
【0086】
また、ワックスの融点としては、電子写真におけるトナーの低温定着性と離型性との観点から、50〜95℃であることが好ましい。
【0087】
荷電制御剤粒子を構成する荷電制御剤としては種々の公知のもので、かつ水系媒体中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体などが挙げられる。
【0088】
この荷電制御剤粒子は、分散した状態で平均1次粒径が10〜500nm程度とすることが好ましい。
【0089】
着色剤粒子の分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理においては、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機は公知の分散機を用いることができる。また、使用することのできる界面活性剤としては、公知のものを用いることができる。
【0090】
本発明に係るトナーは、キャリアとトナーより構成される二成分現像剤として、また、トナーのみから構成される非磁性一成分現像剤として使用することが可能である。
【0091】
二成分現像剤として使用する際に使用されるキャリアは、たとえば、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の公知の磁性粒子を使用することが可能であり、これらの中ではフェライトが好ましい。また、前述の磁性粒子表面を樹脂等で被覆した構造のコートキャリアや、バインダ樹脂中に磁性体微粉末を分散させた樹脂分散型キャリア等の樹脂を用いたキャリアを使用することも可能である。キャリアの体積粒径は15〜100μmのものが好ましく、25〜80μmのものがより好ましい。
【0092】
次に、本発明に係るトナーにより画像形成可能な画像形成装置について説明する。図1は、本発明に係るトナーの使用が可能な電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【0093】
図1において、1Y、1M、1C、1Bkは感光体、4Y、4M、4C、4Bkは現像手段、5Y、5M、5C、5Bkは1次転写手段としての1次転写ロール、5bは2次転写手段としての2次転写ロール、6Y、6M、6C、6Bkは感光体用のクリーニング手段、7は中間転写体ユニット、24は熱ロール式定着装置、70は中間転写体、6bは中間転写体用のクリーニング手段を示す。
【0094】
この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、転写部としての無端ベルト状中間転写体ユニット7と、記録部材Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としての熱ロール式定着装置24とを有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0095】
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1Y、該感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、1次転写手段としての1次転写ロール5Y、クリーニング手段6Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1M、該感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、1次転写手段としての1次転写ロール5M、クリーニング手段6Mを有する。
【0096】
また、さらに別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1C、該感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、1次転写手段としての1次転写ロール5C、クリーニング手段6Cを有する。また、さらに他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1Bk、該感光体1Bkの周囲に配置された帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、1次転写手段としての1次転写ロール5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0097】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間転写エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0098】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkで形成された各色の画像は、1次転写ロール5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材として用紙等の記録部材Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ロール22A、22B、22C、22D、レジストロール23を経て、2次転写手段としての2次転写ロール5bに搬送され、記録部材P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された記録部材Pは、熱ロール式定着装置24により定着処理され、排紙ロール25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0099】
一方、2次転写ロール5bにより記録部材Pにカラー画像を転写した後、記録部材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0100】
画像形成処理中、1次転写ロール5Bkは常時、感光体1Bkに圧接している。他の1次転写ロール5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
【0101】
2次転写ロール5bは、ここを記録部材Pが通過して2次転写が行われるときにのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
【0102】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0103】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とを有する。
【0104】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ロール71、72、73、74、76を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、1次転写ロール5Y、5M、5C、5Bk及びクリーニング手段6bとから構成される。
【0105】
筐体8の引き出し操作により、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
【0106】
このように感光体1Y、1M、1C、1Bk上に帯電、露光、現像によりトナー像を形成し、無端ベルト状中間転写体70上に各色トナー像を重ね合わせ、一括して記録部材Pに転写し、熱ロール式定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。トナー像を記録部材Pに転写させた後、感光体1Y、1M、1C、1Bkはクリーニング装置6Y、6M、6C、6Bkにより残留トナーの除去がなされ、その後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0108】
1.「外添剤粒子1〜18」の作製
先ず、前述の「ゾルゲル法によるシリカ粒子作製の具体例」の項に示した個数平均1次粒径が30、50、100、120nmの疎水性シリカ粒子を、それぞれ「外添剤粒子1、2、3、4」とする。
【0109】
(1)「外添剤粒子5〜8」の作製
前述の個数平均1次粒径が30nmの疎水性シリカ粒子の作製例で、前記混合溶媒の温度を30℃、テトラメトキシシランの添加量を650質量部、滴下時間を4時間に変更した他は同じ手順をとり、個数平均1次粒径が20nmの疎水性シリカ粒子を作製した。これを「外添剤粒子5」とする。
【0110】
また、前記個数平均1次粒径が30nmの疎水性シリカ粒子の作製例で、前記混合溶媒の温度を30℃とし、テトラメトキシシランの添加量を850質量部、滴下時間を7時間に変更した他は同じ手順をとり、個数平均1次粒径が60nmの疎水性シリカ粒子を作製した。これを「外添剤粒子6」とする。
【0111】
また、前記個数平均1次粒径が30nmの疎水性シリカ粒子の作製例で、テトラメトキシシランの添加量を980質量部、滴下時間を8時間に変更した他は同じ手順をとり、個数平均1次粒径が80nmの疎水性シリカ粒子を作製した。これを「外添剤粒子7」とする。
【0112】
さらに、前記個数平均1次粒径が30nmの疎水性シリカ粒子の作製例で、前記混合溶媒の温度を45℃、テトラメトキシシランの添加量を1460質量部、滴下時間を7.5時間に変更した。その他は同じ手順をとり、個数平均1次粒径が150nmの疎水性シリカ粒子を作製した。これを「外添剤粒子8」とする。
【0113】
(2)「外添剤粒子9」の用意
市販のゾルゲル法シリカ粒子である扶桑化学工業社製のPL−20(個数平均1次粒径220nm)を用意し、これを「外添剤粒子9」とした。
【0114】
(3)「外添剤粒子10〜12」の作製
気相法によるシリカ粒子製造方法で、個数平均1次粒径が20、40、60nmのシリカ粒子をそれぞれ作製し、これらを「外添剤粒子10〜12」とした。これら外添剤粒子は、原料であるSiClガスの噴射量や噴射時間、製造環境の温湿度等の粒子成長条件を公知の知見に基づき制御することにより、気相法で前記個数平均1次粒径を有するシリカ粒子を作製したものである。
【0115】
(4)「外添剤粒子15」の作製
前述のゾルゲル法による個数平均1次粒径が50nmの疎水性シリカ粒子である「外添剤粒子2」の作製で、テトラメトキシシラン滴下終了後に行う撹拌を1.5時間に変更した。その他は同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径が50nm、形状係数SF−1が100の疎水性シリカ粒子を作製し、これを「外添剤粒子15」とした。
【0116】
(5)「外添剤粒子16」の作製
また、前記ゾルゲル法で行う「外添剤粒子2」の作製で、テトラメトキシシラン滴下終了後に行う撹拌を15分に変更し、その他は同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径が50nm、形状係数SF−1が120の疎水性シリカ粒子を作製した。これを「外添剤粒子16」とした。
【0117】
(6)「外添剤粒子17」の作製
前述のゾルゲル法による個数平均1次粒径が50nmの疎水性シリカ粒子である「外添剤粒子2」の作製で、テトラメトキシシラン滴下時間を4.5時間に変更した。その他は同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径が50nm、粒径分布が「外添剤粒子2」よりもはるかにシャープな疎水性シリカ粒子を作製し、これを「外添剤粒子17」とした。
【0118】
(7)「外添剤粒子18」の作製
前述のゾルゲル法による個数平均1次粒径が50nmの疎水性シリカ粒子である「外添剤粒子2」の作製で、テトラメトキシシラン滴下時間を4.5時間に変更し、かつ、テトラメトキシシラン滴下終了後に行う撹拌を1.5時間に変更した。その他は同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径が50nmで、形状係数SF−1が100、しかも粒径分布が「外添剤粒子2」よりもはるかにシャープな疎水性シリカ粒子を作製し、これを「外添剤粒子18」とした。
【0119】
以上の手順で作製した「外添剤粒子1〜18」の個数平均1次粒径、形状係数SF−1、粒径分布、製造方法を表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
2.「トナー1C〜25C」と「トナー1Y〜25Y」の作製
以下に示す様に、乳化会合法によりシアン色の「トナー母体粒子C」とイエロー色の「トナー母体粒子Y」を作製した。そして、「トナー母体粒子C」と「トナー母体粒子Y」に上述した各外添剤粒子を添加することにより、シアン色の「トナー1C〜25C」とイエロー色の「トナー1Y〜25Y」を作製した。
【0122】
2−1.「トナー母体粒子C」と「トナー母体粒子Y」の作製
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら内温を80℃に昇温させた。昇温後、上記界面活性剤溶液に、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃とした後、下記化合物を含有する重合性単量体混合液を1時間かけて滴下した。
【0123】
スチレン 480質量部
n−ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチル−3−メルカププトプロピオネート 16質量部
滴下後、この系を80℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い「樹脂粒子1h」を含有する「樹脂粒子分散液1h」を作製した。
【0124】
(2)第2段重合
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、を添加し、90℃に加温して溶解させて単量体溶液を調製した。
【0125】
一方、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水800質量部に溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱した。この界面活性剤溶液に、前記「樹脂粒子1h」を固形分換算で260質量部と下記化合物を含有する重合性単量体混合液を添加した。すなわち、
スチレン 245質量部
n−ブチルアクリレート 120質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 1.5質量部
ワックス「HNP−11(日本精鑞社製)」 67質量部
添加後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて1時間混合分散処理を行うことにより乳化粒子を含む分散液を調製した。
【0126】
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、この系を82℃で1時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第2段重合)を行い、「樹脂粒子1HM」を含有する「樹脂粒子分散液1HM」を作製した。
【0127】
(3)第3段重合
上記「樹脂粒子分散液AHM」に、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、液温を80℃にした後、下記化合物を含有する重合性単量体混合液を1時間かけて滴下した。すなわち、
スチレン 435質量部
n−ブチルアクリレート 130質量部
メタクリル酸 33質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8質量部
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第3段重合)を行った後、28℃まで冷却し、「樹脂粒子a」を含有する「樹脂粒子分散液A」を作製した。上記「樹脂粒子分散液A」に含有される「樹脂粒子A」の粒子径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800(大塚電子社製)」を用いて測定したところ、体積基準メディアン径で150nmであった。また、公知の方法でガラス転移温度を測定したところ45℃であった。
【0128】
(4)「着色剤粒子分散液C」と「着色剤粒子分散液Y」の調製
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に溶解させた溶液を撹拌しながら、
C.I.ピグメントブルー15:3(東洋インキ工業(株)製)」
420質量部
を徐々に添加した。次いで、撹拌装置「クレアミックス(エム・テクニック社製)」を用いて分散処理を行うことにより、「着色剤粒子分散液C」を調製した。
【0129】
また、上記「着色剤粒子分散液C」を調製する際に使用したC.I.ピグメントブルー15:3に代えてC.I.ピグメントイエロー74(大日精化工業社製)を用いた他は同じ手順で「着色剤粒子分散液Y」を調製した。
【0130】
(5)「トナー母体粒子C」と「トナー母体粒子Y」の作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
「樹脂粒子分散液A」 300質量部(固形分換算)
イオン交換水 1400質量部
「着色剤粒子分散液C」 120質量部(固形分換算)
を投入した。さらに、ポリオキシエチレン−2−ドデシル硫酸ナトリウム3質量部をイオン交換水120質量部に溶解した溶液を添加し、液温を30℃にした後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
【0131】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物35質量部をイオン交換水35質量部に溶解した水溶液を、撹拌状態の下で30℃にて10分間かけて添加して3分間保持してから昇温を開始した。昇温は60分かけて90℃まで行い、90℃に保持した状態で上記粒子の凝集、融着を行った。この状態で「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」を用いて反応容器内で成長する粒子の粒径測定を行い、体積基準メディアン径が6.5μmになったときに塩化ナトリウム150質量部をイオン交換水600質量部に溶解した水溶液を添加して粒子の成長を停止させた。さらに、熟成処理として液温を98℃にして加熱撹拌を行い、「FPIA−2100(シスメックス社製)」による測定で平均円形度が0.965になるまで粒子の融着を進行させた。
【0132】
その後、液温を30℃まで冷却し、塩酸を使用して液のpHを2に調整して撹拌を停止した。この様にして「トナー母体粒子分散液C」を作製した。
【0133】
上記工程を経て作製した「トナー母体粒子分散液C」をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40(松本機械(株)製)」で固液分離し、「トナー母体粒子C」のウェットケーキを形成した。
【0134】
このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機でろ液の電気伝導度が5μS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤ(セイシン企業(株)製)」に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥処理を行うことによりシアン色の「トナー母体粒子C」を作製した。
【0135】
また、「トナー母体粒子C」を作製する際に使用した「着色剤粒子分散液C」に代えて「着色剤粒子分散液Y」を用いた他は同じ手順を採ることにより、イエロー色の「トナー母体粒子Y」を作製した。
【0136】
2−2.「トナー粒子1C〜13C」と「トナー粒子1Y〜13Y」の作製
(1)「トナー粒子1C」と「トナー粒子1Y」の作製
上記「トナー母体粒子C」100質量部に対して、前記「外添剤粒子1」を2.0質量部添加し、ヘンシェルミキサ「FM10B(三井三池化工(株))」の撹拌羽根周速を30m/秒、処理温度30℃、処理時間30分に設定して外添処理を行った。外添処理実施後、目開き90μmのふるいを用いて粗大粒子を除去することにより、「トナー粒子1C」を作製した。そして、「トナー母体粒子C」に代えて「トナー母体粒子Y」100質量部を用いた他は同じ手順で「トナー粒子1Y」を作製した。
【0137】
(2)「トナー粒子2C〜4C」と「トナー粒子2Y〜4Y」の作製
上記「トナー粒子1C」と「トナー粒子1Y」の作製で使用した「外添剤粒子1」に代えて、「外添剤粒子2」1.7質量部を用いた他は同じ手順を採ることにより「トナー粒子2C」と「トナー粒子2Y」を作製した。また、上記「トナー粒子1C」と「トナー粒子1Y」の作製で使用した「外添剤粒子1」に代えて、「外添剤粒子5」2.3質量部を用いた他は同じ手順を採ることにより「トナー粒子3C」と「トナー粒子3Y」を作製した。また、上記「トナー粒子1C」と「トナー粒子1Y」の作製で使用した「外添剤粒子1」に代えて、「外添剤粒子6」1.5質量部を用いた他は同じ手順を採ることにより「トナー粒子4C」と「トナー粒子4Y」を作製した。
【0138】
(3)「トナー粒子5C〜9C」と「トナー粒子5Y〜9Y」の作製
前記「トナー粒子3C」と「トナー粒子3Y」の作製で使用した「外添剤粒子5」に代えて、気相法で作製した個数平均1次粒径が20nmの「外添剤粒子10」2.3質量部を用いた他は同じ手順を採ることにより「トナー粒子5Cと5Y」を作製した。また、前記「トナー粒子2C」と「トナー粒子2Y」の作製で使用した「外添剤粒子2」に代えて、気相法で作製した個数平均1次粒径が50nmの「外添剤粒子11」1.7質量部を用いた他は同じ手順を採ることにより「トナー粒子6Cと6Y」を作製した。さらに、前記「トナー粒子4C」と「トナー粒子4Y」の作製で使用した「外添剤粒子6」に代えて、気相法で作製した個数平均1次粒径が60nmの「外添剤粒子12」1.5質量部を用いた他は同じ手順を採ることにより「トナー粒子7Cと7Y」を作製した。
【0139】
また、上記「トナー粒子5Cと5Y」を作製する際に使用した「外添剤粒子10」の添加量を3.0質量部に、処理時間を45分に変更した他は同じ手順を採ることにより「トナー粒子8Cと8Y」を作製した。また、上記「トナー粒子6Cと6Y」を作製する際に使用した「外添剤粒子11」の添加量を2.6質量部に、処理時間を45分に変更した他は同じ手順を採ることにより「トナー粒子9Cと9Y」を作製した。
【0140】
(4)「トナー粒子10C〜13C」と「トナー粒子10Y〜13Y」の作製
前記「トナー粒子2C」と「トナー粒子2Y」の作製で、「外添剤粒子2」に代えてゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が50nmの「外添剤粒子15」1.7質量部を用いた。その他は同じ手順を採ることにより「トナー粒子10C」と「トナー粒子10Y」を作製した。
【0141】
また、「トナー粒子10Cと10Y」の作製で用いた「外添剤粒子15」に代えて「外添剤粒子16」を用いて「トナー粒子11Cと11Y」を、「外添剤粒子17」を用いて「トナー粒子12Cと12Y」をそれぞれ作製した。さらに、「外添剤粒子15」に代えて「外添剤粒子18」を用いて「トナー粒子13Cと13Y」を作製した。
【0142】
以上の手順で作製した「トナー粒子1C〜13C」と「トナー粒子1Y〜13Y」で使用した外添剤を表2に示す。なお、表2では「トナー粒子1C〜13C」と「トナー粒子1Y〜13Y」を合わせて「トナー1〜13」と示している。
【0143】
【表2】

【0144】
2−3.「トナー粒子14C〜25C」と「トナー粒子14Y〜25Y」の作製
(1)「トナー粒子14C」と「トナー粒子14Y」の作製
前記「トナー母体粒子C」100質量部に対し、ゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が30nmの「外添剤粒子1」1.5質量部とゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が60nmの「外添剤粒子6」1.0質量部を添加した。ヘンシェルミキサ「FM10B(三井三池化工(株))」の撹拌羽根周速を30m/秒、処理温度30℃、処理時間45分に設定して外添処理を行った。外添処理実施後、目開き90μmのふるいを用いて粗大粒子を除去することにより、「トナー粒子14C」を作製した。そして、「トナー母体粒子C」に代えて「トナー母体粒子Y」100質量部を用いた他は同じ手順で「トナー粒子14Y」を作製した。
【0145】
(2)「トナー粒子15C〜19C」と「トナー粒子15Y〜19Y」の作製
前記「トナー粒子14Cと14Y」の作製で使用した「外添剤粒子6」に代えてゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が80nmの「外添剤粒子7」1.0質量部を用いた他は同じ手順で「トナー粒子15Cと15Y」を作製した。また、「外添剤粒子6」に代えてゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が100nmの「外添剤粒子3」を用いた他は同じ手順で「トナー粒子16Cと16Y」を作製した。さらに、「外添剤粒子6」に代えてゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が120nmの「外添剤粒子4」を用いた他は同じ手順で「トナー粒子17Cと17Y」を作製した。
【0146】
また、「外添剤粒子6」に代えてゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が150nmの「外添剤粒子8」を用いた他は同じ手順で「トナー粒子18Cと18Y」を作製した。さらに、「外添剤粒子6」に代えてゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が220nmの「外添剤粒子9」を用いた他は同じ手順で「トナー粒子19Cと19Y」を作製した。なお、これらトナー粒子の作製で用いた「外添剤粒子7、3、4、8、9」の添加量はいずれも1.0質量部とした。
【0147】
(3)「トナー粒子20C〜22C」と「トナー粒子20Y〜22Y」の作製
前記「トナー粒子14Cと14Y」の作製で、「外添剤粒子1」をゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が20nmの「外添剤粒子5」1.7質量部に、「外添剤粒子6」をゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が150nmの「外添剤粒子8」1.0質量部に変更した。その他は同じ手順で「トナー粒子20Cと20Y」を作製した。また、前記「トナー粒子14Cと14Y」の作製で、「外添剤粒子1」をゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が50nmの「外添剤粒子2」1.3質量部に変更した他は同じ手順で「トナー粒子21Cと21Y」を作製した。さらに、前記「トナー粒子14Cと14Y」の作製で、「外添剤粒子1」をゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が60nmの「外添剤粒子6」1.3質量部に、「外添剤粒子6」をゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が80nmの「外添剤粒子7」1.1質量部に変更した。その他は同じ手順で「トナー粒子22Cと22Y」を作製した。
【0148】
(4)「トナー粒子23C〜25C」と「トナー粒子23Y〜25Y」の作製
前記「トナー粒子14Cと14Y」の作製で、「外添剤粒子1」を気相法で作製した個数平均1次粒径が20nmの「外添剤粒子10」1.7質量部に、「外添剤粒子6」をゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が100nmの「外添剤粒子10」1.0質量部に変更した。その他は同じ手順で「トナー粒子23Cと23Y」を作製した。また、前記「トナー粒子14Cと14Y」の作製で、「外添剤粒子1」を気相法で作製した個数平均1次粒径が50nmの「外添剤粒子11」1.3質量部に、「外添剤粒子6」をゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が120nmの「外添剤粒子4」1.0質量部に変更した。その他は同じ手順で「トナー粒子24Cと24Y」を作製した。さらに、前記「トナー粒子14Cと14Y」の作製で、「外添剤粒子1」を気相法で作製した個数平均1次粒径が60nmの「外添剤粒子12」1.3質量部に、「外添剤粒子6」をゾルゲル法で作製した個数平均1次粒径が150nmの「外添剤粒子8」1.0質量部に変更した。その他は同じ手順で「トナー粒子25Cと25Y」を作製した。
【0149】
以上の手順で作製した「トナー粒子14C〜25C」と「トナー粒子14Y〜25Y」で使用した外添剤を下記表3に示す。なお、表3では「トナー粒子14C〜25C」と「トナー粒子14Y〜25Y」を合わせて「トナー14〜25」と示している。
【0150】
【表3】

【0151】
3.評価実験
3−3.評価実験その1
(1)「現像剤1〜13」の調製
前記表2に示す「トナー粒子1C〜13Cと1Y〜13Y」より構成される「トナー1C〜13Cとトナー1Y〜13Y」に、体積平均粒径が50μmのフェライト芯材粒子表面にシリコーン樹脂を被覆した樹脂コートキャリアを混合して、トナー濃度6%の現像剤を調製した。調製した現像剤は、シアントナーとイエロートナーをセットにして「現像剤1〜13」とした。
【0152】
(2)評価条件
図1に示す二成分系現像方式の画像形成装置に対応する市販の複合機「bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」に、上記手順で作製した「現像剤1〜13」を各々装填して下記評価を行った。評価は、温度10℃、相対湿度15%RHの環境下で、前記「現像剤1〜13」1種類につき1万枚の連続プリントを行い、現像装置内での撹拌により生ずるとされる外添剤粒子のトナー粒子表面からの脱離に起因する影響を評価した。
【0153】
連続プリントで作成する画像は、A4サイズの画像支持体上に、人物顔写真画像、相対反射濃度0.4のシアン色のハーフトーン画像、シアントナーとイエロートナーの重ね画像、相対反射濃度1.3のシアン色のベタ画像を4等分に出力させたものにした。上記シアン色のハーフトーン画像及びシアン色のベタ画像の相対反射濃度はマクベス濃度計によるものである。また、上記シアントナーとイエロートナーの重ね画像は、シアントナー及びイエロートナーの画像支持体上への付着量をそれぞれ5g/m、合計10g/mにとなる様に設定したグリーン色調画像である。
【0154】
そして、「現像剤1〜4、10〜13」を用いて評価したものを「実施例1〜8」、「現像剤5〜9」を用いて評価したものを「比較例1〜5」とした。
【0155】
(3)評価項目
〈フィルミング発生〉
1万枚の連続プリント実施後、感光体上及び中間転写体上におけるフィルミングの発生状況を目視観察した。感光体上及び中間転写体上の両方にフィルミング発生がみられないものを合格とした。
【0156】
〈重ね画像仕上がり〉
1万枚の連続プリントで作成された最終10枚のプリントのシアントナーとイエロートナーの重ね画像を目視観察し、トナーフィルミングに起因すると考えられる重ね画像上における画像欠陥(白抜け、色調不良)の発生の有無を評価した。すなわち、シアントナーとイエロートナーの両トナーが欠落した個所では画像欠陥として白抜けが発生し、シアントナーとイエロートナーのいずれか片方のトナーが欠落した個所では画像欠陥として色調不良(中抜け)が発生するものと想定して評価を行った。わずかな白抜けや色調不良(中抜け)が不連続で発生したものが10枚中3枚以下のものを合格とし、白抜けや色調不良(中抜け)が1枚も発生しなかったものを特に優れているものとした。
【0157】
〈ハーフトーン画像濃度ムラと人物画像仕上がり〉
上記連続プリント開始時及び終了時に作成した各々10枚のプリントのハーフトーン画像上における濃度ムラの発生状況と人物画像の仕上がり状況(画像ムラの発生)を目視観察により評価した。ハーフトーン画像上における濃度ムラの発生が不連続で3枚以下であり、かつ、人物画像は肉眼で検出可能なレベルの画像ムラが発生しなかったものを合格とし、ハーフトーン画像上で濃度ムラ発生が1枚もなかったものを特に優れたものとした。
【0158】
〈ベタ画像濃度〉
上記連続プリント開始時及び終了時に作成した各々10枚のプリントのベタ画像濃度を測定して平均値を算出し、開始時と終了時の平均濃度の差が0.10未満となるものを合格とした。
【0159】
以上の結果を表4に示す。
【0160】
【表4】

【0161】
表4に示す様に、本発明の構成を有するトナーを用いた「実施例1〜8」は、1万枚の連続プリント実施後もフィルミング発生やイエロートナーとシアントナーの重ね画像で白抜けや色調不良の様な画像欠陥がみられなかった。また、ハーフトーン画像上の濃度ムラの発生はほとんどみられず、良好な仕上がりの人物写真が安定して得られることや、連続プリント実施前後でベタ画像濃度がほとんど変化しないことも確認された。一方、本発明の構成を有さないトナーを用いた「比較例1〜5」は、「実施例1〜8」で得られた様な結果にはならず、連続プリントによりは開始時に得られた品質が得られなくなることが確認された。
【0162】
2−4.評価実験その2
(1)「現像剤14〜25」の調製
前記表3に示す「トナー粒子14C〜25Cと14Y〜25Y」より構成される「トナー14C〜25Cとトナー14Y〜25Y」に、体積平均粒径が50μmのフェライト芯材粒子表面にシリコーン樹脂を被覆した樹脂コートキャリアを混合して、トナー濃度6%の現像剤を調製した。調製した現像剤は、シアントナーとイエロートナーをセットにして「現像剤14〜25」とした。
【0163】
(2)評価条件
前述の評価実験その1と同様、図1に示す二成分系現像方式の画像形成装置に対応する市販の複合機「bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」に、前記「現像剤14〜25」を各々装填して評価を行った。評価は、温度10℃、相対湿度15%RHの環境下で、前記「現像剤14〜25」1種類につき3万枚の連続プリントを行い、5000枚目付近、1万枚目付近、3万枚目付近で作成されたプリント物を用いて評価を行った。
【0164】
連続プリントで作成する画像は、評価実験その1と同様、A4サイズ画像支持体上に人物顔写真画像、シアン色のハーフトーン画像、シアントナーとイエロートナーの重ね画像、シアン色のベタ画像を4等分に出力したものである。また、シアントナーとイエロートナーの重ね画像を形成する際のシアントナーとイエロートナーの画像支持体上への付着量も評価実験その1と同じである。
【0165】
評価は、上記各枚数目付近でのフィルミング発生、重ね画像仕上がり、ハーフトーン画像濃度ムラを前述した方法で評価した。フィルミング発生は3万枚の連続プリント終了後の感光体表面を目視観察して発生が見られないものを合格とした。
【0166】
また、重ね画像仕上がりは、3万枚の連続プリント終了までにわずかな白抜けや色調不良(中抜け)が不連続で10枚中5枚以下の発生までのものを合格とし、その中でも2枚以下を優れたもの、1枚も発生しなかったものを特に優れたものとした。さらに、ハーフトーン画像濃度ムラは、3万枚の連続プリント終了までにハーフトーン画像上にわずかな濃度ムラが不連続で10枚中に5枚以下の発生までのものを合格とし、その中でも2枚以下を優れたもの、1枚もなかったものを特に優れたものとした。
【0167】
ここで、「現像剤14〜22」を用いて評価したものを「実施例9〜17」、「現像剤23〜25」を用いて評価したものを「比較例6〜8」とした。これら「実施例9〜17」及び「比較例6〜8」の結果を下記表5に示す。
【0168】
【表5】

【0169】
表5に示す様に、本発明の構成を有するトナーを用いた「実施例9〜17」は、3万枚の連続プリント中に上記評価項目に変動がみられず、安定したプリント作成が行えることが確認された。一方、本発明の構成を有さないトナーを用いた「比較例6〜8」は、プリント枚数の増加に伴いフィルミングが発生し、重ね画像仕上がりやハーフトーン画像ムラが発生する傾向がみられた。
【0170】
これは、気相法で作製した小径の外添剤粒子では接着力にバラツキが存在するため、プリント枚数が増加して現像装置内で長期にわたり撹拌が行われると、接着力の弱い外添剤粒子が脱離してこれらの結果になったものと考えられた。この様に、「比較例6〜8」では、単分散球状大径外添剤自体はスペーサ効果を発現しているものの接着力の弱い小径外添剤が脱離して画像欠陥を発生させる結果になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂と着色剤を含有するトナー母体粒子表面に外添剤を含有してなるトナー粒子より構成されるトナーであって、
前記トナー粒子は、少なくとも、個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子を外添剤として含有するものであることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子は、
形状係数SF−1が、100以上120以下のものであり、かつ、
前記トナー粒子に含有されている90%以上の該単分散球状粒子が、前記個数平均1次粒径の±10%以下の範囲内の粒径を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子が、ゾルゲル法で作製されるシリカ粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記トナー粒子は、個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の単分散球状粒子を外添剤として含有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項5】
前記個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の単分散球状粒子は、
形状係数SF−1が100以上120以下のものであり、かつ、
前記トナー粒子に含有されている90%以上の該単分散球状粒子が、前記個数平均1次粒径の±10%以下の範囲内の粒径を有するものであることを特徴とする請求項4に記載のトナー。
【請求項6】
前記個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の単分散球状粒子が、ゾルゲル法で作製されるシリカ粒子であることを特徴とする請求項4または5に記載のトナー。
【請求項7】
少なくとも樹脂と着色剤を含有するトナー母体粒子表面に外添剤を添加してトナー粒子を作製する工程を有するトナーの製造方法であって、
前記トナー粒子を作製する工程では、前記トナー母体粒子表面に、少なくとも、個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子を添加することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項8】
前記個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子は、
形状係数SF−1が、100以上120以下のものであり、かつ、
前記トナー粒子に含有されている90%以上の該単分散球状粒子が、前記個数平均1次粒径の±10%以下の範囲内の粒径を有するものであることを特徴とする請求項7に記載のトナーの製造方法。
【請求項9】
前記個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子が、ゾルゲル法で作製されるシリカ粒子であることを特徴とする請求項7または8に記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
前記トナー粒子を作製する工程では、前記トナー母体粒子表面に、少なくとも、個数平均1次粒径が20nm以上60nm以下の単分散球状粒子を外添剤として添加するとともに、
個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の単分散球状粒子を外添剤として添加することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
【請求項11】
前記個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の単分散球状粒子は、
形状係数SF−1が100以上120以下のものであり、かつ、
前記トナー粒子に含有されている90%以上の該単分散球状粒子が、前記個数平均1次粒径の±10%以下の範囲内の粒径を有するものであることを特徴とする請求項10に記載のトナーの製造方法。
【請求項12】
前記個数平均1次粒径が60nm以上150nm以下の単分散球状粒子が、ゾルゲル法で作製されるシリカ粒子であることを特徴とする請求項10または11に記載のトナーの製造方法。
【請求項13】
前記トナー母体粒子は、
少なくとも、水系媒体中で乳化重合を行って樹脂粒子を形成する工程と、前記樹脂粒子を水系媒体中で凝集、融着させる工程を経て作製されるものであることを特徴とする請求項7〜12のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。

【図1】
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