説明

トナーの製造方法及びトナーの製造装置、並びにトナー

【課題】小粒径で粒度分布が非常に狭いトナーを非常に効率よく生産することができ、トナー組成液中に含有する離型剤微粒子に起因する吐出孔の詰まりや感光体等へのフィルミング現象を抑制でき、オフセット防止性に優れるトナーの製造方法の提供。
【解決手段】トナー組成液が少なくとも樹脂、着色剤、及び離型剤を含有するトナー組成物を有機溶剤に溶解乃至分散させた組成液であり、前記離型剤の体積基準メジアン径が0.1μm〜0.7μmであり、前記トナー組成液における離型剤の含有量が前記離型剤の体積基準メジアン径の逆数の1倍(質量%)〜5倍(質量%)であり、前記離型剤の最大粒径が吐出孔の開口径の1/4以下であり、前記吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動を付与して液柱共鳴により圧力定在波を形成し、該圧力定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から前記トナー組成液を液滴状に吐出する工程を含むトナーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーの製造方法及びトナーの製造装置、並びにトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナーの製造方法の一般的な方法として粉砕法が知られている。この粉砕法では、先ずトナー組成物を二本のロールや二軸の押出機などにより溶融混練して冷却した後、粗粉砕処理、微粉砕処理、分級処理が行われる。必要に応じて、ヘンシェルミキサーなどで流動化剤などの外添剤の混合処理が行われる。前記粗粉砕処理では、ロートプレックス、パルペライザーなどが用いられ、前記微粉砕処理では、ジェットミル、ターボミルなどが使用される。また、前記分級処理では、エルボジェット、各種の風力分級装置などの公知の製造装置が用いられる。
【0003】
粉砕法以外の他のトナー製造方法として、噴霧法が知られている。前記噴霧法は、多流体スプレー吐出孔噴霧機、回転円盤型噴霧機などを用いてトナー組成液を気相中で液滴化する方法である。前記多流体スプレー吐出孔噴霧機は、液体を加圧して吐出孔から噴霧する一流体吐出孔(加圧吐出孔)噴霧機に比べて、液体と圧縮気体を混合して噴霧するためより微細な液滴を形成できる装置であり、二流体や四流体スプレー噴霧機が一般的に用いられる。前記回転円盤型噴霧機は、回転する円盤を用いて液体を遠心力により液滴化する装置である。そして、このような噴霧法では、噴霧と乾燥を同時に行うスプレードライシステムという市販の装置を用いることができる。このスプレードライシステムを用いても十分な乾燥ができない場合は、流動床乾燥等の二次乾燥を行い、必要に応じてヘンシェルミキサーなどで流動化剤などの外添剤の混合を行う。
【0004】
しかしながら、前記粉砕法や前記噴霧法で小粒径のトナーを製造すると微粉含有量が非常に多くなるという欠点がある。微粉は、キャリアや現像装置を汚染しやすいため分級工程で除去せねばならないが、多くの微粉を除去するため、生産性の低下や製造コストが高くなるという問題がある。
【0005】
また、さらなる他のトナー製造方法として、噴射造粒法が知られている。この噴射造粒法は、前記噴霧法のように液体を滴化して固化させる部分は同一であるが、振動発生手段を用いてトナーと同程度の直径を持つ吐出孔から液滴を吐出する部分で異なる。この噴射造粒法の一つとして、加圧室を一方向に加圧してノズルから液柱を発生させ、微弱な超音波振動によって液柱を分断して液滴化し、これを乾燥固化してトナー化するトナー製造方法及びその装置が提案されている(特許文献1)。このトナー製造装置では、トナー組成液収容器から供給された液滴噴射ユニットの加圧室内のトナー組成液に対して一方向に加圧して貫通孔より液柱を形成する。そして、形成された液柱に振動発生手段によって微小な振動を与えてレイリー分裂を誘起させて均一な液滴を形成している。そして、その液滴を固化させてトナー母体粒子を製造する。このようなレイリー分裂方式は、液を加圧して吐出させるため、振動発生手段による微弱な振動を発生させるだけでよく、低い電圧で粒子化することが可能であるというメリットがある。
【0006】
さらに、前記噴射造粒法を用いた他の従来例として、ヘッド部ではトナー原料を貯留する原料貯留部に貯留されている原料全体を均一に加圧して吐出させる加圧パルス動作が行われ、吐出孔からトナー原料が吐出される液滴吐出方法が知られている(特許文献2)。以下、この文献に開示されている液滴吐出の原理について図12を用いて概説する。図12中には原料貯留部内の圧力値も併記してある。この液滴吐出方法は、原料貯留部内で以下に示す3つの状態を繰り返す動作を行い、間欠的に液滴を形成する方法である。ヘッド部は第一の状態として、吐出信号が入力されていない、すなわち、図12の(a)に示すように、圧電体に変形が生じず、原料貯留部には容積変化が生じず、吐出孔から原料液は吐出されない状態にある。次に、第二の状態として、吐出信号が入力され、図12の(b)、(c)に示すように、圧電体が原料貯留部内部側に変位し、原料貯留部の体積が減少する。このとき、原料貯留部全体内の圧力が均一に瞬間的に高まり、吐出孔から液滴が吐出される。このとき、原料貯留部と連通し、かつ原料液を収容するフィーダーと呼ばれる原料収容部(図示せず)側にも原料が流れている。次に、第三の状態として、1液滴の原料の吐出が終了した後、図12の(d)、(e)に示すように、電圧の印加を停止し、圧電素子はほぼ元の形状に戻る。このとき、原料貯留部内の原料液には負圧力が作用し、吐出量に見合った量の原料液が原料収容部から原料貯留部へ流れて供給される。
【0007】
しかしながら、前記液滴吐出方法は、原料貯留部内で三つの状態を繰り返す動作を行って原料液を間欠的に吐出する方法であり、この動作において吐出により減少した原料液を原料貯留部内に供給した後、原料液が吐出されない第一の状態を経る必要がある。そのため、前記液滴吐出方法では、この第一の状態の時間に相当する分のトナー生産量が減少し、生産性が低下するという問題がある。
【0008】
一方、電子写真式複写機においては、乾式のトナー像が転写された紙などの媒体に加熱用のローラ、ベルトなどが接触して媒体上のトナー像を加熱溶融し、これによりトナー像を媒体上に定着する方法が知られている。このような定着方法は、熱効率が良いため一般的によく行われている。この定着方法において加熱用のローラやベルトの温度が高すぎると、トナーが過剰に溶融して加熱用のローラ乃至ベルトに融着する現象であるホットオフセットが発生する。このホットオフセットの発生を防止する方法として、トナーが過剰に溶融しても加熱用のローラ乃至ベルトに融着しないように、加熱用のローラ乃至ベルトにシリコーンオイルなどの離型オイルを塗布する方法が、従来より知られている。
【0009】
しかしながら、前記離型オイルを塗布する方法では、オイルタンク、オイル塗布装置などが必要となるため、装置が複雑になり、かつ大型となる。また、コピー用紙、OHP用フィルムなどにオイルが付着することが不可避となる。そのため、オイルが付着したコピー用紙に水性インクで筆記しても水性インクを弾いて加筆性が悪くなり、OHPを用いて投影した場合OHP用フィルムに付着したオイルによって映像の色調が悪くなるという問題がある。
【0010】
そこで、加熱用のローラ乃至ベルトにオイル塗布しないでトナーの融着を防ぐ方法として、トナー自体にワックスなどの離型剤を添加する方法がいくつか提案されている。その中の一例として、特定の示差走査熱量(DSC:Differential scanning calorimetry)の吸熱ピークを有するワックスを含有するトナーが提案されている(特許文献3)。また、他の例として、離型剤として、キャンデリラワックス、高級脂肪酸系ワックス、高級アルコール系ワックス、植物系天然ワックス(カルナバワックス、ライスワックス)、モンタン系エステルワックスなどを用いることが提案されている(特許文献4)。
【0011】
しかしながら、前記方法に用いられるワックスなどの離型剤は樹脂に比べて柔らかく付着性が高いため、このような付着性が高い離型剤を含有するトナーを用いた現像工程において感光体にトナー像を形成して記録媒体に転写した後の感光体上に、添加された上記離型剤が付着して残存するという問題がある。そして、付着した離型剤が感光体の表面を汚染するという感光体フィルミング現象が起こりやすくなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、小粒径で粒度分布が非常に狭いトナーを非常に効率よく生産することができ、トナー組成液中に含有する離型剤微粒子に起因する吐出孔の詰まりや感光体等へのフィルミング現象を抑制でき、オフセット防止性に優れ、高精細な画像を長期にわたって形成することが可能なトナーの製造方法及びトナーの製造装置、並びにトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも1つの吐出孔からトナー組成液を液滴状に吐出する液滴吐出工程と、前記液滴を固化する液滴固化工程とを含むトナーの製造方法であって、
前記トナー組成液が、少なくとも樹脂、着色剤、及び離型剤を含有するトナー組成物を有機溶剤に溶解乃至分散させた組成液であり、
前記離型剤の体積基準メジアン径が、0.1μm〜0.7μmであり、
前記トナー組成液における離型剤の含有量が、前記離型剤の体積基準メジアン径の逆数の1倍(質量%)〜5倍(質量%)であり、
前記離型剤の最大粒径が、前記吐出孔の開口径の1/4以下であり、
前記液滴吐出工程において、前記吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動を付与して液柱共鳴により圧力定在波を形成し、該圧力定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から前記トナー組成液を液滴状に吐出することを特徴とするトナーの製造方法である。
<2> 吐出孔が、圧力定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、複数形成された前記<1>に記載のトナーの製造方法である。
<3> 吐出孔が、1つの液柱共鳴液室に、複数形成された前記<1>から<2>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<4> 液柱共鳴液室の長手方向の両端における、少なくとも一部に反射壁面が設けられている前記<1>から<3>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<5> トナー組成液に対して、下記式(1)が成立する周波数fの振動を付与する前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
f=N×c/(4L) ・・・式(1)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、c:トナー組成液の音波の速度、N:整数)
<6>
トナー組成液に対して、下記式(2)が成立する周波数fの振動を付与する前記<1>から<5>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・式(2)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:液供給路側の端部と、該端部に最も近い吐出孔の中心部との距離、c:トナー組成液の音波の速度、N:整数)
<7> トナー組成液に対して、下記式(3)が成立する周波数fの振動を付与する前記<1>から<6>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・式(3)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:液供給路側の端部と、該端部に最も近い吐出孔の中心部との距離、c:トナー組成液の音波の速度、N:整数)
<8> Le/L>0.6である前記<6>から<7>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<9> 振動の周波数が、300kHz以上の高周波振動である前記<1>から<8>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<10> 離型剤の融点が、60℃〜120℃である前記<1>から<9>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<11> 前記<1>から<10>のいずれかに記載のトナーの製造方法によって製造されたことを特徴とするトナーである。
<12> トナーの粒度分布(重量平均粒径/個数平均粒径)が、1.00〜1.15である前記<11>に記載のトナーである。
<13> トナーの重量平均粒径が、1μm〜8μmである前記<11>から<12>のいずれかに記載のトナーである。
<14> 少なくとも1つの吐出孔からトナー組成液を液滴状に吐出する液滴吐出手段と、前記液滴を固化する液滴固化手段とを有するトナーの製造装置であって、
前記トナー組成液が、少なくとも樹脂、着色剤、及び離型剤を含有するトナー組成物を有機溶剤に溶解乃至分散させた組成液であり、
前記離型剤の体積基準メジアン径が、0.1μm〜0.7μmであり、
前記トナー組成液における離型剤の含有量が、前記離型剤の体積基準メジアン径の逆数の1倍(質量%)〜5倍(質量%)であり、
前記離型剤の最大粒径が、前記吐出孔の開口径の1/4以下であり、
前記液滴固化手段が、前記吐出孔が形成された液柱共鳴液室と、
該液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動を付与する振動発生部とを有し、
該振動発生部によって前記液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動を付与して液柱共鳴により圧力定在波を形成し、該圧力定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から前記トナー組成液を液滴状に吐出することを特徴とするトナーの製造装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、小粒径で粒度分布が非常に狭いトナーを非常に効率よく生産することができ、トナー組成液中に含有する離型剤微粒子に起因する吐出孔の詰まりや感光体等へのフィルミング現象を抑制でき、オフセット防止性に優れ、高精細な画像を長期にわたって形成することが可能なトナーの製造方法及びトナーの製造装置、並びにトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係るトナーの製造装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】図2は、図1の液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
【図3】図3は、図1の液滴形成ユニットの構成を示すA−A’線断面図である。
【図4】図4は、N=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。
【図5】図5は、N=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。
【図6】図6は、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図7】図7は、実際の液滴吐出の様子を示す図である。
【図8】図8は、駆動周波数と液滴吐出速度周波数特性を示す特性図である。
【図9】図9は、各ノズルにおける印加電圧と吐出速度の関係を示す特性図である。
【図10】図10は、各ノズルにおける印加電圧と液滴直径の関係を示す特性図である。
【図11】図11は、液滴吐出ヘッドの実施例を示す図である。
【図12】図12は、従来のトナー製造装置におけるトナー液滴ヘッドにおける液滴動作の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(トナーの製造方法及びトナーの製造装置)
本発明のトナーの製造方法は、液滴吐出工程と、液滴固化工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明のトナーの製造装置は、液滴吐出手段と、液滴固化手段とを少なくとも有し、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
【0017】
<液滴吐出工程及び液滴吐出手段>
前記液滴吐出工程は、少なくとも1つの吐出孔からトナー組成液を液滴状に吐出する工程であり、液滴吐出手段により実施することができる。本発明においては、前記液滴吐出工程において、前記吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動を付与して液柱共鳴により圧力定在波を形成し、該圧力定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から前記トナー組成液を液滴状に吐出することを必須とし、該液滴吐出工程は、前記液滴吐出手段により実施することができる。
【0018】
前記液滴吐出手段は、前記吐出孔が形成された液柱共鳴液室と、該液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動を付与する振動発生部とを有し、該振動発生部によって前記液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動を付与して液柱共鳴により圧力定在波を形成し、該圧力定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から前記トナー組成液を液滴状に吐出することを必須とする。
【0019】
前記吐出孔としては、前記圧力定在波の腹となる領域に形成されたものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記圧力定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、複数形成されたことが好ましく、また、1つの液柱共鳴液室に、複数形成されたことが好ましい。
【0020】
前記圧力定在波の腹となる領域とは、液柱共鳴定在波の圧力波において振幅が大きく、圧力変動が大きい領域であり、かつ液滴を吐出するのに十分な大きさの圧力変動を有する領域である。そのような圧力定在波の腹となる領域としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記圧力定在波の振幅が極大となる位置(速度定在波としての節)から極小となる位置に向かって±1/3波長が好ましく、±1/4波長がより好ましい。前記吐出孔が、前記圧力定在波の腹となる領域に形成されていると、複数の吐出孔が開口されていても、それぞれの吐出孔からほぼ均一な液滴を形成することができ、更には効率的に液滴の吐出を行うことができ、吐出孔の詰まりも生じ難くなる点で好ましい。
【0021】
前記圧力定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、形成された吐出孔の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1個〜20個が好ましく、4個〜15個がより好ましく、4個〜10個が特に好ましい。前記吐出孔の個数は多いほど生産性が高くなるが、20個を超えると、吐出孔が密集しすぎ、飛翔液滴が合体して粗大な粒子となって画質に悪影響を及ぼすことがある。
【0022】
前記1つの液柱共鳴液室に形成された吐出孔の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1つでも構わないが、複数個配置することが生産性の観点から好ましく、2個〜100個が好ましく、4個〜60個がより好ましく、4個〜20個が特に好ましい。前記吐出孔の個数が、100個を超えると、100個の吐出孔から所望のトナー組成液の液滴を形成させる場合に、前記振動発生部に与える電圧を高く設定する必要が生じ、前記振動発生部の挙動が不安定となることがある。また、4個〜20個の場合、定在波が安定し、かつ生産性が保たれる。
【0023】
前記吐出孔の開口径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜40μmが好ましく、2μm〜15μmがより好ましく、6μm〜12μmが特に好ましい。前記開口径が、1μm未満であると、形成される液滴が非常に小さくなるためトナーを得ることができない場合がある。また、トナー組成液の成分として顔料などの固形微粒子が含有された場合、前記吐出孔の閉塞が頻繁に発生して生産性が低下する恐れがある。また、40μmを超えると、トナー液滴の直径が大きく、これを乾燥固化させて所望のトナー粒子径1μm〜8μmを得る場合、有機溶媒でトナー組成を非常に希薄な液に希釈する必要がある場合があり、一定量のトナーを得るために乾燥エネルギーが大量に必要となってしまい、不都合となる。一方、前記開口径が、6μm〜12μmであると、吐出孔が開口する部材を製造する際に、多数の吐出孔の孔径ばらつきを小さく保つことができ、吐出孔を密集させて生産性を高く保つことができるため有利である。
なお、前記吐出孔の開口径とは、吐出孔の液滴が吐出される側に位置する開口部の直径であり、真円であれば直径を意味し、楕円、若しくは四角形、六角形、八角形等の多角形乃至正多角形であれば平均径を意味する。
【0024】
前記複数の吐出孔の形状としては、互いに異なる形状のものを含み、前記複数の吐出孔の間でトナー組成液を均一に吐出できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
このような吐出孔の形状としては、例えば、前記吐出孔の開口径が液滴(トナー組成液)の吐出方向に向かって小さくなるテーパ角を有するテーパ形状が好ましい。
ここで、前記テーパ角とは、吐出孔の開口面(吐出孔の形成面の厚み方向に対して垂直な面)に対する垂線(開口軸)と、前記吐出孔の形成面の厚み方向の断面における、前記吐出孔の断面形状の側面とのなす角度をいう。
【0025】
また、複数の吐出孔が形成された場合、圧力定在波の腹となる領域の1つにおける前記吐出孔間のピッチ(隣接する吐出孔の中心部間の最短間隔)は、20μm〜200μmが好ましく、40μm〜135μmがより好ましく、40μm〜80μmが特に好ましい。前記吐出孔間のピッチが20μm未満であると、隣合う吐出孔より放出された液滴同士が衝突して大きな滴となってしまう確率が高くなり、トナーの粒径分布悪化につながる。
前記吐出孔間のピッチは、複数の吐出孔間において、全て等間隔であってもよく、少なくとも1つのピッチが異なっていてもよいが、等間隔であることが、均一な粒径のトナーを得ることができる点で好ましい。
【0026】
前記液柱共鳴液室とは、後述する液柱共鳴現象の原理に従い、前記振動発生部によって付与される振動により圧力定常波を形成することができる液室であり、該圧力定在波の腹となる領域に吐出孔が形成され、液柱共鳴液室の長手方向の端部にトナー組成液供給のための連通口を有してなり、必要に応じて、液柱共鳴液室の長手方向の片端乃至両端における、少なくとも一部に該長手方向の軸と垂直な反射壁面を有する。前記液柱共鳴液室としては、液柱共鳴液室の長手方向と平行な壁の1つに配置された振動発生部を有することが好ましく、また、振動発生部が配置された壁と対面する壁に吐出孔が形成されたことが好ましい。
前記液柱共鳴液室の形状としては、前記振動により圧力定常波を形成することができれば特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、四角柱(長方体)、円柱、円すい台などが挙げられる。
前記液柱共鳴液室の長手方向の両端における、少なくとも一部に反射壁面が設けられることが好ましい。ここで、「反射壁面」とは、液体の音波を反射させる程度に硬質な部材、例えば、アルミ、ステンレス等の金属部材、シリコーン等の部材などにより形成された壁面をいう。
また、図2に示すように、前記液柱共鳴液室の長手方向の両端の壁面間の長さLは、後述するような液柱共鳴原理に基づいて決定される。また、図3に示すように、前記液柱共鳴液室の幅Wとしては、液柱共鳴に余分な周波数を与えないように、前記液柱共鳴液室の長さLの2分の1より小さいことが好ましい。
【0027】
また、前記液柱共鳴液室としては、前記振動の駆動周波数においてトナー組成液の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されたフレームがそれぞれ接合されて形成されたことが好ましく、そのような材質としては、金属、セラミックス、シリコーンなどが挙げられる。
【0028】
更に、前記液柱共鳴液室は、生産性を飛躍的に向上させるために1つの液滴吐出手段に対して複数配置されることが好ましい。1つの液滴吐出手段に対して設置される液柱共鳴液室の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、操作性と生産性が両立できる点において、100個〜2,000個が好ましく、100個〜1,000個がより好ましく、100個〜400個が特に好ましい。
【0029】
前記振動発生部としては、所定の周波数で駆動でき、液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動を付与するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧電体、超音波振動発生体などが挙げられる。
前記圧電体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックス、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO等の単結晶などの材質から形成された圧電体などが挙げられる。前記超音波振動発生体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁歪素子などが挙げられる。
前記振動発生部は、弾性板に貼りあわせた形態であることが好ましく、該弾性板は、振動発生部が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を形成することが好ましい。
更に、前記振動発生部は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されることが好ましい。また、液柱共鳴液室の配置にあわせて、弾性板を介してブロック状の圧電体などの振動発生部を配置することが、それぞれの液柱共鳴液室を個別制御できる観点から好ましい。
【0030】
先ず、本発明のトナーの製造装置における液滴吐出手段による液滴形成のメカニズムについて説明する。
前記液柱共鳴液室(例えば、図1及び2の液滴吐出ヘッド11内の液柱共鳴液室18)において生じる液柱共鳴現象の原理について説明すると、前記液柱共鳴液室内の前記トナー組成液の音速をcとし、前記振動発生部(例えば、図2の振動発生部20)から媒質である前記トナー組成液に与えられた駆動周波数をfとした場合、前記トナー組成液の共鳴が発生する波長λは、
λ=c/f ・・・式(A)
の関係にある。
【0031】
ここで、前記液柱共鳴液室が、両側固定端の場合、乃至両側固定端と等価である場合、前記液柱共鳴液室の長手方向の両端における反射壁面間の長さを、液柱共鳴液室の長手方向の長さLとする。この場合、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、下記式(B)で表される。
L=(N/4)λ ・・・式(B)
(但し、Nは偶数)
なお、固定端と等価である場合とは、ある端において圧力の逃げ部がないとみなすことができる場合であり、例えば、ある端において反射壁面の高さが、トナー組成液供給のための連通口の高さの2倍以上である場合、及びある端において反射壁面の面積が、トナー組成液供給のための連通口の開口部の面積の2倍以上である場合などを指す。
図2において、液柱共鳴液室18の固定端側のフレームの端部から液共通供給路17側の端部までの長さが、長さLに相当する。また、液共通供給路17側のフレームの端部の高さh1(=約80μm)は連通口の高さh2(=約40μm)の約2倍あり当該端部が閉じている両側固定端と等価であるとみなすことができる。
【0032】
また、両端が完全に開いている両側開放端の場合、乃至両側開放端と等価である場合にも上記式(B)が成り立つ。
同様にして、片方側が圧力の逃げ部がある開放端と等価で、他方側が閉じている(固定端)の場合、つまり片側固定端の場合、乃至片側開放端の場合には、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、上記式(B)のNが奇数で表される場合に相当する。なお、両側開放端の場合は、Lが波長の4分の1の偶数倍、片側固定端の場合は、Lが波長の4分の1の奇数倍に相当する。
【0033】
最も効率の高い駆動周波数fは、上記式(A)及び上記式(B)より、
f=N×c/(4L) ・・・式(1)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、c:トナー組成液の音波の速度、N:整数)
と導かれる。
したがって、本発明のトナーの製造方法及び製造装置において、前記トナー組成液に対して、上記式(1)が成立する周波数fの振動を付与することが好ましい。しかし、実際には、トナー組成液は共鳴を減衰させる粘性を持つために無限に振動が増幅されるわけではなく、Q値を持ち、後述する式(2)、式(3)に示すように、式(1)に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴は発生する。
【0034】
図4にN=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示し、かつ図5にN=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す。定在波は、疎密波(縦波)であるが、図4及び図5のように表記することが一般的である。実線が速度定在波、点線が圧力定在波を示す。例えば、N=1の片側固定端の場合を示す図4の(a)からわかるように、閉口端で速度分布の振幅がゼロとなり、開口端で速度分布の振幅が最大となる。液柱共鳴液室の長手方向の両端の間の長さをLとし、トナー組成液が液柱共鳴する波長をλとしたとき、整数Nが1〜5の場合に定在波が最も効率よく発生する。また、両端の開閉状態によっても定在波パターンは異なるため、それらも併記した。後述するが、吐出孔の開口や供給側の開口の状態によって、端部の条件が決まる。なお、音響学において、開口端とは長手方向の媒質(液)の移動速度が極大となる端であり、逆に圧力はゼロとなる。閉口端においては、逆に媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。閉口端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。理想的に完全に閉口、もしくは開口している場合は、波の重ね合わせによって図4及び図5のような形態の共鳴定在波を生じる。しかし、吐出孔数、吐出孔の開口位置によっても定在波パターンは変動する。上記式(1)より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れるが、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。例えば、トナー組成液の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmで、両端に壁面が存在し、両側固定端と完全に等価のN=2の共鳴モードを用いた場合、上記式(B)より、最も効率の高い共鳴周波数は324kHzと導かれる。他の例では、トナー組成液の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmで、両端に壁面が存在し、両側固定端と等価のN=4の共鳴モードを用いた場合、上記式(B)より、最も効率の高い共鳴周波数は648kHzと導かれる。したがって、同じ形状の液柱共鳴液室においても、駆動周波数を調整することによって、より高次の共鳴を利用することができる。
前記振動の周波数としては、液柱共鳴液室の形状などに応じて適宜設定することができ、一義的に選択できるものではないが、300kHz以上の高周波振動であることが好ましく、300kHz〜1,000kHzがより好ましい。
【0035】
なお、図1及び図2に示す本実施の形態の液滴形成ユニットの液滴吐出ヘッドにおける液柱共鳴液室は、両端が閉口端状態と等価であるか、吐出孔の開口の影響で、音響的に軟らかい壁として説明できるような端部であることが周波数を高めるためには好ましいが、それに限らず開放端であってもよい。ここでの吐出孔の開口の影響とは、音響インピーダンスが小さくなり、特にコンプライアンス成分が大きくなることを意味する。よって、図4の(b)及び図5の(a)のような液柱共鳴液室の長手方向の両端に壁面を形成する構成は、両側固定端の共鳴モード、そして吐出孔側が開口とみなす片側開放端の全ての共鳴モードが利用できるために、好ましい。
【0036】
また、吐出孔の開口数、開口配置位置、吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。例えば、吐出孔の数を多くすると、徐々に固定端であった液柱共鳴液室の先端の拘束が緩くなり、ほぼ開口端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。更に、最も液供給路側に存在する吐出孔の開口配置位置を起点に緩い拘束条件となる。また、吐出孔の断面形状がラウンド形状となったりフレームの厚さによる吐出孔の体積が変動したり、実際上の定在波は短波長となり、駆動周波数よりも高くなる。このように決定された駆動周波数で振動発生部に電圧を与えたとき、振動発生部が変形し、駆動周波数にて最も効率よく共鳴定在波を発生する。また、共鳴定在波が最も効率よく発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。つまり、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さをL、液供給路側の端部と、該端部に最も近い吐出孔の中心部との距離をLeとしたとき、L及びLeの両方の長さを用いて下記式(2)及び式(3)で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生部を振動させる。そして、液柱共鳴を誘起して液滴を吐出孔から吐出することが可能である。
したがって、本発明のトナーの製造方法及び製造装置において、前記トナー組成液に対して、下記式(2)及び式(3)のいずれかが成立する周波数fの振動を付与することが好ましい。
【0037】
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・式(2)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・式(3)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:液供給路側の端部と、該端部に最も近い吐出孔の中心部との距離、c:トナー組成液の音波の速度、N:整数)
【0038】
なお、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さLと、液供給路側の端部と、該端部に最も近い吐出孔の中心部との距離Leの比がLe/L>0.6であることが好ましい。
【0039】
以上説明した液柱共鳴現象の原理に基づいて、前記液柱共鳴液室において圧力定在波が形成され、前記液柱共鳴液室の圧力定在波の腹となる領域に形成された吐出孔において連続的に液滴吐出が発生する。
【0040】
<固化工程及び固化手段>
前記固化工程は、前記液滴を固化する工程であり、前記固化手段により実施することができる。
前記液滴を固化する方法としては、液滴を固化させて粒子化できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の方法を選択することができ、例えば、液滴に含まれる有機溶媒を乾燥気体へ蒸発させ、乾燥による収縮固化を行う方法などが挙げられる。
【0041】
以下、本発明のトナーの製造方法を実施するトナーの製造装置の一実施形態について図1〜3の模式的構成図を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るトナーの製造装置の全体構成を示す断面図である。図2は、図1の液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図である。図3は、図1の液滴形成ユニットの構成を示すA−A’線断面図である。図1に示す本実施の形態のトナーの製造装置1は、主に、液滴形成ユニット10及び乾燥捕集ユニット30を含む。前記液滴吐出手段である液滴形成ユニット10は、前記吐出孔によって外部と連通する液滴吐出領域を有する液室であって、後述する条件下のもとで前記液柱共鳴による圧力定在波が発生する前記液柱共鳴液室内の前記トナー組成液を液滴として前記吐出孔から噴射する液滴吐出ヘッド11を複数配置する。各液滴吐出ヘッド11の両側には液滴吐出ヘッド11から吐出したトナーの液滴が乾燥捕集ユニット30側に流出されるように、図示していない気流発生部によって発生する気流が通る気流路12が設けられている。また、液滴形成ユニット10は、トナー原料であるトナー組成液14を収容する原料収容部13と、原料収容部13に収容されているトナー組成液14を液供給管16を通して液滴吐出ヘッド11内の後述する液共通供給路17に供給し、更に、液戻り管22を通って原料収容部13に戻すために液供給管16内のトナー組成液14を圧送する液循環ポンプ15とを含む。更に、液滴吐出ヘッド11は、図2に示すように、液共通供給路17及び液柱共鳴液室18を含む。液柱共鳴液室18は、長手方向の両端の壁面のうち一方の壁面に設けられた液共通供給路17と連通されている。また、液柱共鳴液室18は、両端の壁面と連結する壁面のうち一つの壁面にトナー液滴21を吐出する吐出孔19と、吐出孔19と対向する壁面に設けられ、かつ液柱共鳴定在波を形成するために高周波振動を発生する振動発生部20とを有している。なお、振動発生部20には、図示していない高周波電源が接続されている。
【0042】
また、図1に示す乾燥捕集ユニット30は、チャンバ31及びトナー捕集部32を含む。チャンバ31内では、図示していない気流発生部によって発生する気流と下降気流33が合流した大きな下降気流が形成されている。液滴形成ユニット10の液滴吐出ヘッド11から噴射されたトナー液滴21は、重力よってのみではなく、下降気流33によっても下方に向けて搬送されるため、トナー液滴21が空気抵抗によって減速されることを抑制できる。これにより、トナー液滴21を連続的に噴射したときに、前に噴射されたトナー液滴21が空気抵抗によって減速し、後に噴射されたトナー液滴21が前に噴射されたトナー液滴21に追い付くことで、トナー液滴21同士が合着して一体となり、トナー液滴21の粒径が大きくなることを防止できる。なお、気流発生部として、上流部分に送風機を設けて加圧する方法と、トナー捕集部32より吸引して減圧する方法のいずれを採用することもできる。また、トナー捕集部32には、鉛直方向に平行な軸周りに回転するような回転気流を発生させる回転気流発生装置(図示せず)が配置されている。更に、トナー捕集部32には、チャンバ31と連通するトナー捕集チューブ34を通った乾燥・固化されたトナー粒子を貯留するトナー貯留部35を有している。
【0043】
次に、本発明のトナーの製造工程について説明する。
図1に示す原料収容部13に収容されているトナー組成液14は、トナー組成液14を循環させるための液循環ポンプ15によって液供給管16を通って、図2に示す液滴形成ユニット10の液共通供給路17内に流入し、図2に示す液滴吐出ヘッド11の液柱共鳴液室18に供給される。そして、トナー組成液14が充填されている液柱共鳴液室18内には、振動発生部20によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、圧力定在波の腹となる領域に形成された吐出孔19からトナー液滴21が吐出される。
【0044】
液共通供給路17を通過したトナー組成液14は、液戻り管22を流れて原料収容部13に戻される。トナー液滴21の吐出によって液柱共鳴液室18内のトナー組成液14の量が減少すると、液柱共鳴液室18内の液柱共鳴定在波の作用による吸引力が作用し、液共通供給路17から供給されるトナー組成液14の流量が増加する。そして、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充される。また、液柱共鳴液室18内にトナー組成液14が補充されると、液共通供給路17を通過するトナー組成液14の流量が元に戻る。そして、液供給管16及び液戻り管22には装置内を循環するトナー組成液14の流れが再び形成された状態となる。一方、液滴噴射ユニット10の液滴吐出ヘッド11から噴射されたトナー液滴21は、図1に示すように、重力によってのみではなく、図示していない気流発生部によって発生する気流が気流路12を通り形成される下降気流33によって下方に向けて搬送される。次に、トナー捕集部32における図示していない回転気流発生装置が発生させる回転気流と下降気流33とによって、トナー捕集部32を形成する円錐状内壁面に沿って螺旋気流が形成される。そして、トナー粒子は、その螺旋気流にのって層流状態で乾燥、固化される。乾燥、固化されたトナー粒子は、トナー捕集チューブ34を通ってトナー貯留部35に収納される。
【0045】
また、図3からわかるように、吐出孔19を液柱共鳴液室18内の幅方向に設ける構成を採用することは、吐出孔19の開口を多数設けることができ、よって生産効率が高くなるために好ましい。また、吐出孔19の開口配置によって液柱共鳴周波数が変動するため、液柱共鳴周波数は液滴の吐出を確認して適宜決定することが望ましい。
【0046】
次に、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子について、当該様子を示す図6を用いて説明する。なお、同図において、液柱共鳴液室内に記した実線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における速度をプロットした速度分布を示す。また、液共通供給路側から液柱共鳴液室への方向を+とし、その逆方向を−とする。また、液柱共鳴液室内に記した点線は、液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示し、大気圧に対して正圧を+とし、負圧を−とする。また、正圧であれば図中の下方向に圧力が加わることになり、負圧であれば図中の上方向に圧力が加わることになる。更に、図6において、上述したように液共通供給路側が開放されているが液共通供給路17と液柱共鳴液室18とが連通する開口の高さ(図2に示す高さh2)に比して固定端となるフレームの高さ(図2に示す高さh1)が約2倍以上である。そのため、液柱共鳴液室18は、ほぼ両側固定端であるという近似的な条件のもとでの速度分布及び圧力分布の時間的なそれぞれの変化を示している。
【0047】
図6の(a)は、液滴吐出時の液柱共鳴液室18内の圧力波形と速度波形を示している。また、図6の(b)は、液滴吐出直後の液引き込みを行った時の液柱共鳴液室18内の圧力波形と速度波形を示している。これらの図6の(a)、(b)に示すように、液柱共鳴液室18における吐出孔19が設けられている流路内での圧力は極大となっている。液柱共鳴液室18内のトナー組成液の流れは、液共通供給路17側へ流れる方向となっており、速度は小さい。その後、図6の(c)に示すように、吐出孔19付近の正の圧力は、小さくなり、負圧の方向へ移行する。液柱共鳴液室18内のトナー組成液の流れは、図6の(a)、(b)と液共通供給路17側へ流れる方向で変わらないが、速度は極大となる。
【0048】
そして、図6の(d)に示すように、吐出孔19付近の圧力は、極小になる。液柱共鳴液室18内のトナー組成液の流れは、液共通供給路17側から液柱共鳴液室18へ流れる方向に変わる。速度は小さい。このときから液柱共鳴液室18へのトナー組成液14の充填が始まる。その後、図6の(e)に示すように、吐出孔19付近の負の圧力は、小さくなり、正圧の方向へ移行する。液柱共鳴液室18内のトナー組成液の流れは、図6の(d)と液共通供給路17側へ流れる方向で変わらないが、速度は極大となる。この時点で、トナー組成液14の充填が終了する。そして、再び、図6の(a)に示すように、液柱共鳴液室18の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、吐出孔19から液滴21が吐出される。このように、液柱共鳴液室内には振動発生部の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生する。また、圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹に相当する液滴吐出領域に吐出孔19が配置されている。このようなことから、当該腹の周期に応じてトナー液滴21が吐出孔19から連続的に吐出される。
【0049】
次に、実際に液柱共鳴現象によって液滴が吐出された構成の一例について説明する。この一例は、図2において液柱共鳴液室18の長手方向の両端間の長さLが1.85mm、N=2の共鳴モードである。また、第一から第四の吐出孔がN=2モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置し、駆動周波数を340kHzのサイン波で行った吐出をレーザーシャドウグラフィ法にて撮影した様子を図7に示す。同図からわかるように、非常に径の揃った、速度もほぼ揃った液滴の吐出が実現している。また、図8は、駆動周波数290kHz〜395kHzの同一振幅サイン波にて駆動した際の液滴速度周波数特性を示す特性図である。同図からわかるように、第一〜第四のノズルにおいて駆動周波数が340kHz付近では各ノズルからの吐出速度が均一となって、かつ最大吐出速度となっている。この特性結果から、液柱共鳴周波数の第二モードである340kHzにおいて、液柱共鳴定在波の腹の位置で均一吐出が実現していることがわかる。また、図8の特性結果から、第一モードである130kHzにおいての液滴吐出速度ピークと、第二モードである340kHzにおいての液滴吐出速度ピークとの間では、液滴は吐出しないという液柱共鳴の特徴的な液柱共鳴定在波の周波数特性が液柱共鳴液室内で発生していることがわかる。
【0050】
また、図9は、各ノズルにおける印加電圧と吐出速度の関係を示す特性図であり、図10は、各ノズルにおける印加電圧と液滴直径の関係を示す特性図である。両図からわかるように、印加電圧に対して吐出速度も液滴直径も単調増加の傾向にあった。よって、吐出速度及び液滴直径は、印加電圧に依存するため、印加電圧を調整することにより、所望の吐出速度、あるいは所望のトナー粒子の径に応じた液滴直径を調整することができる。
【0051】
−トナー組成液及びトナー組成物−
前記トナー組成液は、トナー組成物を有機溶剤に溶解乃至分散させた組成液であり、前記トナー組成物は、少なくとも樹脂、着色剤、離型剤を含み、さらに、必要に応じて、その他の顔料分散液、ワックス分散剤、帯電制御剤などの成分を含む。
本発明のトナーの製造方法に使用されるトナー組成液及びトナー組成物は、前記離型剤として、離型剤の体積基準メジアン径が、0.1μm〜0.7μmであり、前記トナー組成液における離型剤の含有量が、離型剤の体積基準メジアン径の逆数の1倍(質量%)〜5倍(質量%)であり、離型剤の最大粒径が、吐出孔の開口径の1/4以下のものを含むことを必須とするが、それ以外のトナー材料は、従来の電子写真用トナーと同じものが使用できる。すなわち、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂などの樹脂を各種有機溶媒に溶解し、微分散した着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等のトナー材料を前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナー(トナー母体粒子)を作製することが可能である。さらに、必要に応じて流動性向上剤やクリーニング性向上剤などを表面に添加してトナーを得てもよい。
【0052】
−−樹脂−−
前記樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができ、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。
【0053】
前記スチレン系単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体などが挙げられる。
【0054】
前記アクリル系単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸、アクリル酸のエステル類などが挙げられる。前記アクリル酸のエステル類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルなどが挙げられる。
【0055】
前記メタクリル系単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸のエステル類などが挙げられる。前記メタクリル酸のエステル類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。
【0056】
前記ビニル重合体、又は共重合体を形成する他のモノマーの例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下の(1)〜(18)が挙げられる。
(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)、ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステル等の不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸等のα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物等のα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステル等のカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレン等のヒドロキシ基を有するモノマー。
【0057】
本発明に係るトナーにおいて、結着樹脂のビニル重合体、又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等のアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの等のエーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類などが挙げられる。
【0058】
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。
また、前記架橋剤として、例えば、商品名MANDA(日本化薬社製)等のポリエステル型ジアクリレート類が挙げられる。
【0059】
また、前記架橋剤として、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート等の多官能の架橋剤が挙げられる。
【0060】
前記架橋剤の添加量は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部であることが好ましく、0.03質量部〜5質量部であることがより好ましい。
これらの架橋剤のうち、トナー用樹脂における定着性、耐オフセット性の点から、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が好ましい。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0061】
本発明のビニル重合体乃至共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2',4'−ジメチル−4'−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレートなどが挙げられる。
【0062】
前記結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在する。また、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。
また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が50%〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
【0063】
ポリエステル系重合体を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、乃至ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオールなどが挙げられる。
ポリエステル樹脂を架橋させるためには、3価以上の多価アルコールや3価以上の酸を併用することが好ましい。樹脂が有機溶剤に溶解することを妨げない範囲の少量の添加量とする必要がある。
【0064】
前記3価以上の多価アルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、例えば、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。
【0065】
ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物などが挙げられる。
また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、乃至これらの無水物、部分低級アルキルエステルなどが挙げられる。
【0066】
前記結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましい。また、THF可溶分の分子量10万以下の成分が70%〜100%となるような結着樹脂が吐出性の面から好ましい。更に、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
【0067】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましい。また、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0068】
本発明において、前記結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0069】
本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求め、基本操作は、JIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300mlのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150mlを加え溶解する。
(3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とし、以下の式(C)で算出する。ただしfはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W ・・・式(C)
【0070】
前記結着樹脂及び前記結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35℃〜80℃であるのが好ましく、40℃〜70℃であるのがより好ましい。
前記ガラス転移温度(Tg)が、35℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすくなることがある。また、ガラス転移温度(Tg)が、80℃を超えると、定着性が低下することがある。
【0071】
−−着色剤−−
前記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0072】
前記着色剤の含有量としては、トナーに対して1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。
【0073】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
前記マスターバッチとともに混練される樹脂としては、先に挙げた変性、未変性ポリエステル樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0074】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得る事ができる。
この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。
混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
【0075】
前記マスターバッチの使用量としては、前記結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましい。
【0076】
また、前記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30mgKOH/g以下、アミン価が1〜100で、前記着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20mgKOH/g以下、アミン価が10〜50で、前記着色剤を分散させて使用することがより好ましい。
前記酸価が30mgKOH/gを超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となることがある。また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不十分となることがある。
前記酸価は、例えば、JIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価は、例えば、JIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0077】
−−−顔料分散液−−−
また、前記着色剤は、顔料分散液に分散させた着色剤分散液として用いることもできる。
前記顔料分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものを適宜選択することができるが、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、そのような市販品としては、例えば、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)などが挙げられる。
【0078】
前記顔料分散剤の重量平均分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100,000が好ましく、これらの中でも、顔料分散性の観点から、3000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000が特に好ましく、5,000〜30,000が最も好ましい。前記分子量が500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、前記分子量が100,000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
【0079】
前記顔料分散剤の添加量としては、着色剤100質量部に対して、1質量部〜200質量部であることが好ましく、5〜80質量部であることがより好ましい。1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると帯電性が低下することがある。
【0080】
−−離型剤−−
前記離型剤としては、前記離型剤の体積基準メジアン径が、0.1μm〜0.7μmであり、前記トナー組成液における離型剤の含有量が、前記離型剤の体積基準メジアン径の逆数の1倍(質量%)〜5倍(質量%)であり、かつ前記離型剤の最大粒径が、前記吐出孔の開口径の1/4以下のものであれば、特に制限はなく、ワックス類として通常使用されるものを適宜選択することができ、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。
【0081】
前記離型剤のその他の例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、その他の直鎖アルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸;プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、その他の長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール;ソルビトール等の多価アルコール;リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド;メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0082】
前記離型剤のより好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒等の触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波、光等を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基等の官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸等のビニルモノマーでグラフト変性したワックスなどが挙げられる。
【0083】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも前記離型剤として好ましく用いられる。
【0084】
前記離型剤の融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、50℃〜140℃であることが好ましく、60℃〜120℃であることがより好ましい。
前記融点が、50℃未満では耐ブロッキング性が低下することがあり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
【0085】
なお、本発明では、示差走査熱量測定(DSC)において測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもって離型剤の融点とする。
前記離型剤及びトナーの融点を測定するためのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計が好ましい。測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0086】
通常、離型剤の体積基準メジアン径が小さいと離型性が低下する一方で耐フィルミングは向上する傾向にあり、その体積基準メジアン径が大きいと離型性が向上する一方で耐フィルミングは低下し吐出孔への詰りも発生しやすくなるが、本発明のトナーの製造方法において、前記離型剤の体積基準メジアン径が、0.1μm〜0.7μmであり、前記トナー組成液における離型剤の含有量が、前記離型剤の体積基準メジアン径の逆数の1倍(質量%)〜5倍(質量%)であり、かつ前記離型剤の最大粒径が、前記吐出孔の開口径の1/4以下とすることにより、良好な離型性を備えるとともに、感光体等へのフィルミング現象やトナー組成液中に含有する離型剤微粒子に起因する吐出孔の詰まりを抑制できる。
なお、前記離型剤の体積基準メジアン径、及び最大粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA920(堀場製作所)などの粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
【0087】
−−−ワックス分散剤−−−
前記離型剤を微分散し、かつその分散媒中での分散安定性を向上させるためにワックス分散剤が好ましく用いられる。
前記ワックス分散剤としては、結着樹脂と親和性の高い部位とワックスと親和性の高い部位を持ち有機溶剤(分散媒)に溶解する材料が好ましく用いられる。例えば、オレフィン類と共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられ、中でも、オレフィン系樹脂とビニル系樹脂とからなるグラフト重合体が好ましく用いられる。
【0088】
前記ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセンなどが挙げられる。前記ポリオレフィン系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オレフィン類の重合体、オレフィン類の重合体の酸化物、オレフィン類の重合体の変性物、オレフィン類と共重合可能な他の単量体との共重合物などが挙げられる。
前記オレフィン類の重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、プロピレン/1−ヘキセン共重合体などが挙げられる。前記オレフィン類の重合体の酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記オレフィン類の重合体の酸化物等が挙げられる。前記オレフィン類の重合体の変性物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記例示したオレフィン類の重合体のマレイン酸誘導体付加物などが挙げられる。前記マレイン酸誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチルなどが挙げられる。
【0089】
また、前記ポリオレフィン系樹脂として、熱減成型ポリオレフィンも好ましく用いることができる。
前記熱減成型ポリオレフィンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重量平均分子量(Mw)50,000〜5000,000のポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)を熱減成して得られるポリオレフィンなどが挙げられる。熱減成は、通常250℃〜450℃で行われる。熱減成後の、数平均分子量(Mn)から導かれる分子数に対応する1分子当たりの二重結合含有率は、30%〜70%が好ましい。
【0090】
前記オレフィン類と共重合可能な他の単量体との共重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸アルキルエステル等の単量体と、オレフィン類との共重合体などが挙げられる。前記不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などが挙げられる。前記不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素原子数1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、炭素原子数1〜18のマレイン酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0091】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリマー構造がポリオレフィンの構造を有していればよく、モノマーが必ずしもオレフィン構造を有している必要はない。例えば、ポリメチレン(サゾールワックス等)等も使用することができる。これらポリオレフィン系樹脂のうち、好ましいものは、オレフィン類の重合体、熱減成型ポリオレフィン、オレフィン類の重合体の酸化物、オレフィン類の重合体の変性物であり、さらに好ましくは、ポリエチレン、ポリメチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体及びその熱減成品、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、マレイン化ポリプロピレン等であり、特に好ましいものは、ポリエチレン及びポリプロピレンである。
【0092】
前記ポリオレフィン系樹脂の軟化点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃〜170℃が好ましく、70℃〜150℃がより好ましい。
前記ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500〜20,000が好ましく、1,000〜15,000がより好ましく、1,500〜10,000が特に好ましい。
前記ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量としては、800〜100,000が好ましく、1,500〜60,000がより好ましく、2,000〜30,000が特に好ましい。
【0093】
前記ポリオレフィン樹脂の少なくとも一部に変性部をグラフトさせるためのビニル系モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて従来公知のものを適宜選択することができ、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−アセトキシスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、フェニルスチレン、ベンジルスチレン等のスチレン系モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル;酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;塩化ビニル等のハロゲン元素含有ビニル系モノマー;ブタジエン、イソブチレン等のジエン系モノマー;(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン等の不飽和ニトリル系モノマー、及びこれらの併用が挙げられる。これらの中でも、スチレン系モノマー、不飽和カルボン酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル及びその併用が好ましく、スチレン及びスチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリルの併用がより好ましい。
【0094】
また、前記ビニル系樹脂のSP値(ソルビリティーパラメーター)としては、10.0〜11.5(cal/cm1/2が好ましい。これは、バインダー樹脂のSP値を考慮して調整する。なお、SP値は公知のFedors法で算出することができる。
【0095】
前記ビニル系樹脂の数平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,500〜100,000が好ましく、2,500〜50,000がより好ましく、2,800〜20,000が特に好ましい。
前記ビニル系樹脂の重量平均分子量としては、5,000〜200,000が好ましく、6,000〜100,000がより好ましく、7,000〜50,000が特に好ましい。
【0096】
前記ビニル系樹脂のガラス転移点(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜90℃が好ましく、45℃〜80℃がより好ましく、50℃〜70℃が特に好ましい、。前記ガラス転移点が40℃未満であると、保存性が不良となる場合があり、90℃を超えると、低温定着性が不良になる場合がある。
【0097】
前記グラフト重合体は、ポリオレフィン樹脂が少なくともビニル系樹脂でグラフトされた構造をし、従来公知の方法により製造することができる。例えば、グラフト重合体の主鎖を構成するポリオレフィン樹脂を有機溶媒に溶解させ、この溶液に、側鎖を構成するビニル樹脂用のビニルモノマーを添加し、これらのポリオレフィン樹脂とビニルモノマーを、有機溶媒中で、有機過酸化物等の重合開始剤の存在下でグラフト重合反応させる方法により前記グラフト重合体を製造することができる。前記ポリオレフィン樹脂とビニルモノマーの質量比としては、ワックス粒子の分散安定性観点から、1〜30:70〜99が好ましく、2〜27:83〜98がより好ましい。
【0098】
また、前記グラフト重合体の添加量は、離型剤の分散安定性の面から、離型剤100質量部に対し、5〜300質量部が好ましく、10〜150質量部がより好ましい。
【0099】
−−−帯電制御剤−−−
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものを適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。具体的には、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のEー82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製);第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カ一リット社製);銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物、フェノール系樹脂、フッ素系化合物などが挙げられる。
【0100】
前記帯電制御剤の使用量としては、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定され、一義的に限定されるものではないが、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記帯電制御剤の使用量が、10質量部を超える場合、トナーの帯電性が大きすぎて画像濃度の低下を招くことがある。
これらの帯電制御剤、離型剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練してもよく、もちろん有機溶剤に溶解、分散する際に加えてもよい。
【0101】
−−有機溶剤−−
前記有機溶剤としては、前記トナー組成物を溶解乃至分散できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エーテル類、ケトン類、エステル類、炭化水素類、アルコール類の溶剤が好ましく用いられ、特にテトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、トルエンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
−−トナー組成液の調製方法−−
前記トナー組成物を有機溶剤に溶解乃至分散することによりトナー組成液を得ることができる。
前記トナー組成液の調製には、ホモミキサーやビーズミルなどを用いて、着色剤や離型剤といった分散体がノズルの開口径に対して充分微細とすることが吐出孔の詰りを防止するために重要となる。
前記トナー組成液の固形分としては、3質量%〜40質量%であることが好ましい。前記固形分が3質量%未満であると、生産性が低下するだけでなく、着色剤や離型剤微粒子といった分散体が沈降や凝集を起こしやすくなりためトナー粒子ごとの組成が不均一になりやすくトナー品質が低下する場合がある。前記固形分が40質量%を超えると、小粒径のトナーが得られない場合がある。
【0103】
<トナー>
本発明のトナーは、上述した本発明のトナー製造方法によって製造されたトナーである。本発明のトナーには、他の添加剤として、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の外添剤などを必要に応じて添加することができる。
【0104】
前記トナーの粒度分布(重量平均粒径/個数平均粒径)としては、長期にわたって安定した画像を維持する観点から、1.00〜1.15が好ましい。
また、前記トナーの重量平均粒径としては、高解像度で、高精細・高品質な画像を形成する観点から、1μm〜8μmが好ましい。
【0105】
−流動性向上剤−
本発明に係るトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。該流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
【0106】
前記流動性向上剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナなどの金属酸化物の微粉末、及びそれらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ、処理酸化チタン、処理アルミナ;フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末などが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカがより好ましい。
【0107】
前記流動性向上剤の粒径としては、平均一次粒径として、0.001μm〜2μmが好ましく、0.002μm〜0.2μmがより好ましい。
【0108】
前記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
【0109】
前記ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84;Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5;Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40;D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名);Franso1(Fransi1社商品名)などが挙げられる。
【0110】
更には、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が、好ましくは30%〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
【0111】
前記有機ケイ素化合物としては、例えば、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等が挙げられる。更に、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0112】
前記流動性向上剤の個数平均粒径としては、5nm〜100nmが好ましく、5nm〜50nmがより好ましい。
【0113】
前記流動性向上剤の比表面積としては、BET法で測定した窒素吸着による比表面積で、30m/g以上が好ましく、60m/g〜400m/gがより好ましい。
前記流動性向上剤が表面処理された微粉体の場合、その比表面積としては、20m/g以上が好ましく、40m/g〜300m/gがより好ましい。
【0114】
前記流動性向上剤の適用量としては、トナー粒子100質量部に対して0.03質量部〜8質量部が好ましい。
【0115】
−クリーニング性向上剤−
記録紙等にトナーを転写した後、静電潜像担持体や一次転写媒体に残存するトナーの除去性を向上させるためのクリーニング性向上剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子などを挙げることかできる。前記ポリマー微粒子としては、比較的粒度分布が狭く、重量平均粒径が0.01μm〜1μmのものが好ましい。
【0116】
これらの流動性向上剤、クリーニング性向上剤などは、トナーの表面に付着ないし固定化させて用いられるため、外添剤とも呼ばれている。このような外添剤をトナーに外添する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各種の粉体混合機等が用いられる。前記粉体混合機としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられ、固定化も行う場合に用いる粉体混合機としては、ハイブリタイザー、メカノフュージョン、Qミキサーなどが挙げられる。
【0117】
<<現像剤>>
本発明のトナーは、キャリアと混合して2成分現像剤として使用してもよい。
【0118】
−キャリア−
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェライト、マグネタイト等のキャリア、樹脂コートキャリアなどを挙げることができる。前記樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材とからなる。前記被覆材に使用する樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂;アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂;シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂などが好適に挙げられる。この他にも、アイオモノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等のキャリアの被覆材として使用できる樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0119】
また、前記キャリアとして、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。前記樹脂コートキャリアにおいて、キャリアコアの表面を少なくとも樹脂被覆剤で被覆する方法としては、例えば、樹脂を溶剤中に溶解又は懸濁せしめて塗布したキャリアコアに付着せしめる方法、あるいは単に粉体状態で混合する方法が挙げられる。前記樹脂コートキャリアに対する樹脂被覆材の使用割合は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂コートキャリア100質量部に対して、0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.1質量%〜1質量%がより好ましい。
【0120】
2種以上の混合物の前記樹脂被覆材で前記磁性体を被覆する使用例としては、(1)酸化チタン微粉体100質量部に対してジ、メチルジクロロシランとジメチルシリコーンオイル(質量比1:5)の混合物12質量部で処理したもの、(2)シリカ微粉体100質量部に対して、ジメチルジクロロシランとジメチルシリコーンオイル(質量比1:5)の混合物20質量部で処理したものなどが挙げられる。前記樹脂被覆材としては、例えば、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物、シリコーン樹脂などが好適に使用され、これらの中でも、シリコーン樹脂が特に好ましい。
【0121】
前記含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンとスチレン−メタクリ酸メチル共重合体との混合物、ポリテトラフルオロエチレンとスチレン−メタクリル酸メチル共重合体との混合物、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合(共重合体質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体(共重合質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸メチル共重合体(共重合体質量比20〜60:5〜30:10:50)との混合物などが挙げられる。前記シリコーン樹脂としては、含窒素シリコーン樹脂及び含窒素シランカップリング剤と、シリコーン樹脂とが反応することにより生成された、変性シリコーン樹脂が挙げられる。
【0122】
前記キャリアコアの磁性材料としては、例えば、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄等の酸化物、鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又はこれらの合金などが挙げられる。また、これらの磁性材料に含まれる元素としては、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムが挙げられる。これらの磁性材料の中でも、銅、亜鉛、及び鉄成分を主成分とする銅−亜鉛−鉄系フェライト、マンガン、マグネシウム及び鉄成分を主成分とするマンガン−マグネシウム−鉄系フェライトが特に好適に挙げられる。
【0123】
前記キャリアの体積抵抗値としては、キャリアの表面の凹凸度合い、被覆する樹脂の量を適宜調整することにより設定することができ、例えば、10Ω・cm〜1010Ω・cmが好ましい。前記キャリアの粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4μm〜200μmが好ましく、10μm〜150μmがより好ましく、20μm〜100μmが特に好ましい。その中でも、樹脂コートキャリアの粒径としては、50%粒径が20μm〜70μmが最も好ましい。2成分系現像剤では、キャリア100質量部に対して、本発明のトナー1質量部〜200質量部で使用することが好ましく、キャリア100質量部に対して、トナー2質量部〜50質量部で使用するのがより好ましい。
【0124】
本発明のトナーを用いた現像方法においては、従来の電子写真法に使用する静電潜像担持体が全て使用できる。例えば、有機静電潜像担持体、非晶質シリカ静電潜像担持体、セレン静電潜像担持体、酸化亜鉛静電潜像担持体などが好適に使用可能である。
【実施例】
【0125】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0126】
(実施例1)
−着色剤分散液の調製−
先ず、着色剤として、カーボンブラック分散液を調製した。
カーボンブラック(Regal400、Cabot社製)20質量部、及び顔料分散剤(アジスパーPB821、味の素ファインテクノ社製)2質量部を、酢酸エチル78質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用して一次分散させた。得られた一次分散液を、ダイノーミルを用いて強力なせん断力により細かく分散し、凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。更に、0.45μmの細孔を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルター(フロリナートメンブレンフィルターFHLP09050、日本ミリポア株式会社)を通過させ、サブミクロン領域まで分散させたカーボンブラック分散液を調製した。
【0127】
−ワックス分散液の調製−
次に、ワックス分散液を調製した。
撹拌羽と温度計をセットした容器に、カルナウバワックス(1号)10.0質量部、及び酢酸エチル40.0質量部を仕込み、80℃に加温し20分間撹拌してカルナバワックスを溶解させた後、急冷しワックスの微粒子を析出させた。この分散液に、ワックス分散剤(スチレン(77質量部)、アクリロニトリル(9質量部)、アクリル酸ブチル(5質量部)共重合体にポリエチレン(10質量部)をグラフトした重合体)の固形分20.0質量%酢酸エチル溶液40.0質量部(ワックス100質量部に対してグラフト重合体100質量部)を加え、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミル(アシザワファインテック社製、LMZ06)を用いて強力なせん断力によりさらに細かく分散して以下に示す体積基準メジアン径及び最大粒径を有するワックスを固形分として含むワックス分散液a〜eを得た。ワックス分散液a〜eの固形分はいずれも20.0質量%に調整した。
なお、ワックスの粒径は、ビーズミルの回転数とミル時間を変えて調整し、その体積基準メジアン径、及び最大粒径を、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA920(堀場製作所)を用いて測定した。
<ワックス分散液a〜e>
ワックス分散液a:体積基準メジアン径0.08μm、最大粒径0.4μm
ワックス分散液b:体積基準メジアン径0.10μm、最大粒径0.5μm
ワックス分散液c:体積基準メジアン径0.30μm、最大粒径0.9μm
ワックス分散液d:体積基準メジアン径0.70μm、最大粒径3.0μm
ワックス分散液e:体積基準メジアン径0.80μm、最大粒径3.9μm
【0128】
−トナー組成液の調製−
結着樹脂としてポリエステル樹脂(質量平均分子量32,000)の固形分30.0質量%酢酸エチル溶液296.7質量部、前記カーボンブラック分散液50.0質量部、ワックス分散液b100.0質量部、及び酢酸エチル153.3質量部を、攪拌羽を有するミキサーを使用し混合し、トナー組成液を調製した。
【0129】
−トナーの作製−
得られたトナー組成液を、液滴吐出手段として図11に示す液滴吐出ヘッドを有する図1のトナーの製造装置を用いて以下のような条件で、液滴を吐出させた。図11(a)は、液滴吐出ヘッドの断面図であり、(b)は、吐出孔の配置を示す断面図である。図11に示す液滴吐出ヘッドは、液柱共鳴液室内のトナー組成液に振動を付与する振動発生部20として圧電素子を有する。なお、液柱共鳴液室の長手方向の長さLは1.85mmであり、振動発生部20により324kHzの振動が液柱共鳴液室内のトナー組成液に付与され、これにより、N=2の共鳴モードの液柱共鳴による圧力定在波が形成される。この条件において、圧力定在波の腹となる領域は、±1/4波長となる領域であり、液供給路側の端部から0mm〜0.46mmの領域である。この領域に、吐出孔開口部8.0μm、吐出孔間のピッチ130μmの吐出孔19が4個形成されている。液滴を吐出させた後、乾燥エアーを用いた液滴固化手段により該液滴を乾燥固化し、サイクロン捕集した後、さらに35℃にて48時間送風乾燥することにより、トナー母体粒子を作製した。
【0130】
〔トナー作製条件〕
トナー組成液比重 :ρ=1.1g/cm
吐出孔開口部 :直径8.0μm
乾燥エアー温度 :40℃
駆動周波数 :395kHz
圧電体への印加電圧 :15.0V
【0131】
このトナー母体粒子100.0質量部に対して疎水性シリカ(H2000、クラリアントジャパン社製)2.0質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて外添処理を行い、ブラックトナーを得た。
【0132】
このトナーの粒度を測定した結果を表1に示す。重量平均粒径(Dw)は、2.4μmであり、Dw/Dnは、1.01であり、非常にシャープな粒度分布であった。
なお、トナーの作製は連続して6時間行ったが、吐出孔が詰まることはなかった。
【0133】
−キャリアの作製−
シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン) 100質量部
トルエン 100質量部
γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン 5質量部
カーボンブラック 10質量部
上記混合物をホモミキサーで20分間分散し、コート層形成液を調製した。このコート層形成液を、流動床型コーティング装置を用いて、粒径50μmの球状マグネタイト1000.0質量部の表面にコーティングして磁性キャリアを得た。
【0134】
−現像剤の作製−
トナー4質量部及び上記磁性キャリア96.0質量部をボールミルで混合して二成分現像剤1を作製し、ホットオフセット性及びフィルミング性の評価を行った。評価結果を下記の表1に示す。高精細な画像を長期にわたって形成することが可能であり、ホットオフセット性及びフィルミング性ともに良好であった。
【0135】
<評価方法>
<<粒度分布>>
本発明のトナーの重量平均粒径(Dw)及び個数平均粒径(Dn)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径50μmで測定した。トナー粒子又はトナーの体積及び個数を測定後、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒径(Dw)、個数平均粒径(Dn)を求めることができる。粒度分布の指標としては、トナーの重量平均粒径(Dw)を個数平均粒径(Dn)で除したDw/Dnを用いる。完全に単分散であれば1となり、数値が大きいほど分布が広いことを意味する。
【0136】
<<ホットオフセット性>>
現像剤を、市販の複写機(イマジオネオ455、リコー社製)に入れ、リコー社製タイプ6000ペーパーを用いて定着温度を低温から高温に変化させながら画像を出力する。そして、画像の光沢度が低下した温度もしくは画像にオフセット画像が見られた場合をオフセット発生温度とした。評価結果を下記の表1に示す。オフセット発生温度が200℃以上である場合を○、200℃未満である場合を×として評価した。
【0137】
<<フィルミング性>>
現像剤を、市販の複写機(イマジオネオ455、リコー社製)に入れ、画像占有率7%の印字率でリコー社製タイプ6000ペーパーを用いて連続ランニングテストを実施した。2万枚、5万枚及び10万枚後の感光体上フィルミング、及びフィルミングに伴う異常画像(ハーフトーン濃度ムラ)の有無を評価した。フィルミングの発生はランニング枚数が多いほど不利である。以下の評価基準で評価した結果を下記の表1に示す。表中の○は10万枚でも発生せず、△は5万枚で発生、×は2万枚で発生をそれぞれ示す。
【0138】
<<吐出孔の閉塞>>
トナー作製6時間経過後の吐出孔の閉塞、及び吐出液量の減少の有無を評価した。評価結果を下記の表1に示す。吐出孔が詰まることはなく初期の吐出量を維持していた場合を○、吐出液量の減少量が20%未満であり、吐出孔の一部に閉塞が見られた場合を△、吐出液量の減少量が20%以上であり、吐出孔の一部に閉塞が見られた場合を×として評価した。
【0139】
(実施例2)
上記実施例1において、トナー組成液の調製を、ポリエステル樹脂(質量平均分子量32,000)の固形分を30質量%酢酸エチル溶液197.1質量部、前記カーボンブラック分散液42.9質量部、ワックス分散液b257.1質量部、及び酢酸エチル102.9質量部に替えた以外は、全て上記実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を作製した。実施例1と同様の評価を行った結果を下記の表1に示す。トナー組成液による吐出孔の詰まりは発生せず、非常にシャープな粒度分布であり、高精細な画像を長期にわたって形成することが可能であり、ホットオフセット性及びフィルミング性は良好であった。
【0140】
(実施例3)
上記実施例1において、トナー組成液の調製を、ポリエステル樹脂(質量平均分子量32,000)の固形分30.0質量%酢酸エチル溶液122.5質量部、前記カーボンブラック分散液37.5質量部、ワックス分散液b375.0質量部、及び酢酸エチル65.0質量部に替えた以外は、全て上記実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を作製した。実施例1と同様の評価を行った結果を下記の表1に示す。トナー組成液による吐出孔の詰まりは発生せず、非常にシャープな粒度分布であり、高精細な画像を長期にわたって形成することが可能であり、ホットオフセット性及びフィルミング性は良好であった。
【0141】
(実施例4)
上記実施例1において、トナー組成液の調製を、ポリエステル樹脂(質量平均分子量32,000)の固形分30.0質量%酢酸エチル溶液337.7質量部、前記カーボンブラック分散液52.9質量部、ワックス分散液c35.3質量部、及び酢酸エチル774.1質量部に替えたトナー組成液を調整した。
トナー組成液を用いて、吐出孔の開口径を8.0μmφに変え、印加電圧10.0Vにて実施例1と同様の装置によりトナーを作成した。
このトナー母体粒子100質量部に対して疎水性シリカ(H2000、クラリアントジャパン社製)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて外添処理を行い、ブラックトナーを得た。
このトナーを用いて実施例1と同様に現像剤を作製し、実施例1と同様の評価を行った結果を下記の表1に示す。トナー組成液による吐出孔の詰まりは発生せず、非常にシャープな粒度分布であり、高精細な画像を長期にわたって形成することが可能であり、ホットオフセット性及びフィルミング性は良好であった。
【0142】
(実施例5)
上記実施例4においてトナー組成液の調製を、ポリエステル樹脂(質量平均分子量32,000)の固形分30質量%酢酸エチル溶液296.7質量部、前記カーボンブラック分散液50.0質量部、ワックス分散液c100.0質量部、及び酢酸エチル753.3質量部に替えたトナー組成液を調整した以外は、全て上記実施例4と同様にしてトナー及び現像剤を得た。上記実施例1と同様の評価を行った結果を下記の表1に示す。トナー組成液による吐出孔の詰まりは発生せず、非常にシャープな粒度分布であり、高精細な画像を長期にわたって形成することが可能であり、ホットオフセット性及びフィルミング性は良好であった。
【0143】
(実施例6)
上記実施例4においてトナー組成液の調製を、ポリエステル樹脂(質量平均分子量32,000)の固形分30.0質量%酢酸エチル溶液259.8質量部、前記カーボンブラック分散液47.4質量部、ワックス分散液c158.2質量部、及び酢酸エチル734.6質量部に替えたトナー組成液を調整した以外は、全て上記実施例4と同様にしてトナー及び現像剤を得た。上記実施例1と同様の評価を行った結果を下記の表1に示す。トナー組成液による吐出孔の詰まりは発生せず、非常にシャープな粒度分布であり、高精細な画像を長期にわたって形成することが可能であり、ホットオフセット性及びフィルミング性は良好であった。
【0144】
(実施例7)
上記実施例1において、トナー組成液の調製を、ポリエステル樹脂(質量平均分子量32,000)の固形分30.0質量%酢酸エチル溶液350.4質量部、前記カーボンブラック分散液53.9質量部、ワックス分散液d15.1質量部、及び酢酸エチル1980.6質量部に替えたトナー組成液を調整した。
トナー組成液を用いて、吐出孔の開口径を14.0μmφに変え、印加電圧8.0Vにて実施例1と同様の装置によりトナーを作成した。
このトナー母体粒子100.0質量部に対して疎水性シリカ(H2000、クラリアントジャパン社製)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて外添処理を行い、ブラックトナーを得た。
このトナーを用いて実施例1と同様に現像剤を作製し、実施例1と同様の評価を行った結果を下記の表1に示す。トナー組成液による吐出孔の詰まりは発生せず、非常にシャープな粒度分布であり、高精細な画像を長期にわたって形成することが可能であり、ホットオフセット性及びフィルミング性は良好であった。
【0145】
(実施例8)
上記実施例7においてトナー組成液の調製を、ポリエステル樹脂(質量平均分子量32,000)の固形分30.0質量%酢酸エチル溶液331.4質量部、前記カーボンブラック分散液52.5質量部、ワックス分散液d45.1質量部、及び酢酸エチル1971.0質量部に替えたトナー組成液を調整した以外は、全て上記実施例7と同様にしてトナー及び現像剤を得た。上記実施例1と同様の評価を行った結果を下記の表1に示す。トナー組成液による吐出孔の詰まりは発生せず、非常にシャープな粒度分布であり、高精細な画像を長期にわたって形成することが可能であり、ホットオフセット性及びフィルミング性は良好であった。
【0146】
(実施例9)
上記実施例7においてトナー組成液の調製を、ポリエステル樹脂(質量平均分子量32,000)の固形分30.0質量%酢酸エチル溶液313.9質量部、前記カーボンブラック分散液51.2質量部、ワックス分散液d72.8質量部、及び酢酸エチル1962.1質量部に替えたトナー組成液を調整した以外は、全て上記実施例7と同様にしてトナー及び現像剤を得た。上記実施例1と同様の評価を行った結果を下記の表1に示す。トナー組成液による吐出孔の詰まりは発生せず、非常にシャープな粒度分布であり、高精細な画像を長期にわたって形成することが可能であり、ホットオフセット性及びフィルミング性は良好であった。
【0147】
(実施例10)
上記実施例5において、ワックスをパラフィンワックス(HNP−9、日本精蝋社製)に変えて実施例1と同様にワックス分散液fを調整し、樹脂をスチレンとアクリル酸ブチルとの共重合体(質量平均分子量51,000)に替えた以外は、全て上記実施例5と同様にしてトナー及び現像剤を作製した。
ワックス分散液fの体積基準メジアン径は0.30μm、最大粒径は0.9μmであった。
上記実施例1と同様の評価を行った結果を下記の表1に示す。トナー組成液による吐出孔の詰まりは発生せず、非常にシャープな粒度分布であり、高精細な画像を長期にわたって形成することが可能であり、ホットオフセット性及びフィルミング性は良好であった。
【0148】
(比較例1)
上記実施例4においてトナー組成液の調製を、ポリエステル樹脂(質量平均分子量32,000)の固形分30.0質量%酢酸エチル溶液348.4質量部、前記カーボンブラック分散液53.7質量部、ワックス分散液c18.3質量部、及び酢酸エチル779.6質量部に替えたトナー組成液を調整した以外は、全て上記実施例4と同様にしてトナー及び現像剤を得た。上記実施例1と同様の評価を行った結果を下記の表1に示す。トナー組成液による吐出孔の詰まりは発生せず、非常にシャープな粒度分布であり、フィルミング性は良好であったが、ホットオフセット性は不良であった。
【0149】
(比較例2)
上記実施例4においてトナー組成液の調製を、ポリエステル樹脂(質量平均分子量32,000)の固形分30.0質量%酢酸エチル溶液243.1質量部、前記カーボンブラック分散液46.2質量部、ワックス分散液c184.6質量部、及び酢酸エチル726.2質量部に替えたトナー組成液を調整した以外は、全て上記実施例4と同様にしてトナー及び現像剤を得た。上記実施例1と同様の評価を行った結果を下記の表1に示す。トナー組成液による吐出孔の詰まりは発生せず、非常にシャープな粒度分布であり、ホットオフセット性は良好であったが、フィルミング性は不良であった。
【0150】
(比較例3)
上記実施例1において作成した0.08μmのワックス分散液を用いて、ポリエステル樹脂(質量平均分子量32,000)の固形分30.0質量%酢酸エチル溶液166.8質量部、前記カーボンブラック分散液40.7質量部、ワックス分散液a305.1質量部、及び酢酸エチル87.5質量部に替えたトナー組成液を調整した以外は、全て上記実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。上記実施例1と同様の評価を行った結果を下記の表1に示す。トナーの作製は連続して6時間行ったが、6時間後は初期に比べて吐出量が10%ほど低下しており、吐出孔の一部に閉塞が認められた。トナー組成液を1日間静置保管したところワックスの凝集物の沈降が見られた。得られたトナーの粒度分布は1.07であり微粉がやや増加していたが、ホットオフセット性及びフィルミング性は良好であった。
【0151】
(比較例4)
上記実施例1において作成した体積基準メジアン径が0.8μm、最大粒径が3.9μmのワックス分散液を用いて、ポリエステル樹脂(質量平均分子量32,000)の固形分30質量%酢酸エチル溶液334.6質量部、前記カーボンブラック分散液52.7質量部、ワックス分散液e40.1質量部、及び酢酸エチル1972.6質量部に替えたトナー組成液を調整した以外は、全て上記実施例7と同様にしてトナー及び現像剤を得た。上記実施例1と同様の評価を行った結果を下記の表1に示す。トナーの作製は連続して6時間行ったが、6時間後は初期に比べて吐出量が46%ほど低下しており、吐出孔の一部に閉塞が認められた。得られたトナーの粒度分布は1.19であり微粉が増加していたが、ホットオフセット性及びフィルミング性は良好であった。しかし、長期にわたって画像を形成すると現像剤の帯電量が低下して解像度の低下が見られた。なお、トナー組成液を1日間静置保管してもワックスの凝集物の沈降は見られなかった。
【0152】
【表1】

【0153】
実施例1〜10及び比較例1〜4における条件を表2に示した。
【表2】

【符号の説明】
【0154】
1 トナーの製造装置
10 液滴形成ユニット
11 液滴吐出ヘッド
12 気流路
13 原料収容部
14 トナー組成液
15 液循環ポンプ
16 液供給管
17 液共通供給路
18 液柱共鳴液室
19 吐出孔
20 振動発生部
21 トナー液滴
22 液戻り管
30 乾燥捕集ユニット
31 チャンバ
32 トナー捕集部
33 下降気流
34 トナー捕集チューブ
35 トナー貯留部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0155】
【特許文献1】特開2007−199463号公報
【特許文献2】特許第3786034号公報
【特許文献3】特開平7−84401号公報
【特許文献4】特開平5−341577号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの吐出孔からトナー組成液を液滴状に吐出する液滴吐出工程と、前記液滴を固化する液滴固化工程とを含むトナーの製造方法であって、
前記トナー組成液が、少なくとも樹脂、着色剤、及び離型剤を含有するトナー組成物を有機溶剤に溶解乃至分散させた組成液であり、
前記離型剤の体積基準メジアン径が、0.1μm〜0.7μmであり、
前記トナー組成液における離型剤の含有量が、前記離型剤の体積基準メジアン径の逆数の1倍(質量%)〜5倍(質量%)であり、
前記離型剤の最大粒径が、前記吐出孔の開口径の1/4以下であり、
前記液滴吐出工程において、前記吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動を付与して液柱共鳴により圧力定在波を形成し、該圧力定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から前記トナー組成液を液滴状に吐出することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
吐出孔が、圧力定在波の腹となる領域の少なくとも1つに対して、複数形成された請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
吐出孔が、1つの液柱共鳴液室に、複数形成された請求項1から2のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
液柱共鳴液室の長手方向の両端における、少なくとも一部に反射壁面が設けられた請求項1から3のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
トナー組成液に対して、下記式(1)が成立する周波数fの振動を付与する請求項1から4のいずれかに記載のトナーの製造方法。
f=N×c/(4L) ・・・式(1)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、c:トナー組成液の音波の速度、N:整数)
【請求項6】
トナー組成液に対して、下記式(2)が成立する周波数fの振動を付与する請求項1から5のいずれかに記載のトナーの製造方法。
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・式(2)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:液供給路側の端部と、該端部に最も近い吐出孔の中心部との距離、c:トナー組成液の音波の速度、N:整数)
【請求項7】
トナー組成液に対して、下記式(3)が成立する周波数fの振動を付与する請求項1から6のいずれかに記載のトナーの製造方法。
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・式(3)
(L:液柱共鳴液室の長手方向の長さ、Le:液供給路側の端部と、該端部に最も近い吐出孔の中心部との距離、c:トナー組成液の音波の速度、N:整数)
【請求項8】
Le/L>0.6である請求項6から7のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項9】
振動の周波数が、300kHz以上の高周波振動である請求項1から8のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
離型剤の融点が、60℃〜120℃である請求項1から9のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のトナーの製造方法によって製造されたことを特徴とするトナー。
【請求項12】
トナーの粒度分布(重量平均粒径/個数平均粒径)が、1.00〜1.15である請求項11に記載のトナー。
【請求項13】
トナーの重量平均粒径が、1μm〜8μmである請求項11から12のいずれかに記載のトナー。
【請求項14】
少なくとも1つの吐出孔からトナー組成液を液滴状に吐出する液滴吐出手段と、前記液滴を固化する液滴固化手段とを有するトナーの製造装置であって、
前記トナー組成液が、少なくとも樹脂、着色剤、及び離型剤を含有するトナー組成物を有機溶剤に溶解乃至分散させた組成液であり、
前記離型剤の体積基準メジアン径が、0.1μm〜0.7μmであり、
前記トナー組成液における離型剤の含有量が、前記離型剤の体積基準メジアン径の逆数の1倍(質量%)〜5倍(質量%)であり、
前記離型剤の最大粒径が、前記吐出孔の開口径の1/4以下であり、
前記液滴固化手段が、前記吐出孔が形成された液柱共鳴液室と、
該液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動を付与する振動発生部とを有し、
該振動発生部によって前記液柱共鳴液室内の前記トナー組成液に振動を付与して液柱共鳴により圧力定在波を形成し、該圧力定在波の腹となる領域に形成された前記吐出孔から前記トナー組成液を液滴状に吐出することを特徴とするトナーの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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