説明

トナーの製造方法

【課題】低温定着性、耐熱保存性及び耐ホットオフセット性に優れ、光沢度が高い画像を形成することが可能なトナーの製造方法を提供する。
【解決手段】トナーの製造方法であって、結晶性ポリエステル、特定の非晶性ポリエステル、プレポリマー、アミノ基を有する化合物、離型剤及び着色剤を含む組成物を、有機溶媒を利用して水系媒体中で粒子を含む液を熟成して調製する工程を有し、プレポリマーは、イソシアネート基数の平均値が1.8以上2.2以下であり、熟成前粒子の示差走査熱量分析の1回目の昇温時におけるガラス転移点及び粒子の単位質量当たりの結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークの高さを、それぞれTg[℃]及びH[μW/mg]とし、熟成後の粒子のガラス転移点及び吸熱ピーク高さを、それぞれTg[℃]及びH[μW/mg]とすると、次の2つの式を満たす。1.3≦H/H≦1.6、0≦Tg−Tg≦1.0。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置では、感光体上に静電潜像を形成した後、静電潜像をトナーで現像して、トナー像を形成する。トナー像は、紙等の記録媒体上に転写された後、加熱溶融して定着される。
【0003】
また、近年、トナーには、出力画像の高品質化のための小粒径化や、省エネルギー化のための低温定着性の向上が要求されている。
【0004】
粉砕法により製造されるトナーは、小粒径化が困難であり、形状が不定形であり、粒度分布がブロードである。また、高温の定着温度が必要とされ、省エネルギー化が困難である。さらに、粉砕する際に、ワックスの界面で割れるため、トナーの表面にワックスが多く存在する。このため、キャリア、感光体、ブレード等にトナーが付着しやすくなる。
【0005】
一方、重合法により製造されるトナーは、小粒径化が容易であり、粒度分布もシャープであり、ワックスを内包することもできるため、省エネルギー化のための低温定着性を改良することが望まれている。さらに、低温定着性の改良に伴って、トナーの耐熱保存性及び耐ホットオフセット性を阻害しないことが望まれている。
【0006】
特許文献1には、(a)結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒中で加熱し溶解液とする工程;(b)溶解液を冷却し、結晶性ポリエステル樹脂を析出させ粗分散液とする工程;(c)粗分散液をさらに機械的粉砕装置で粉砕し、体積平均粒径が0.2μm〜1μmの分散液とする工程から順次なる結晶性ポリエステル樹脂分散液の製造方法が開示されている。また、有機溶媒中に、活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体、着色剤、離型剤、および結晶性ポリエステル分散液を溶解または分散させた溶液または分散液を水系媒体中で分散させ、活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体を反応させた後、もしくは反応させながら、有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥する画像形成用トナーの製造方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、画像形成用トナーを用いて画像を形成すると、画像の光沢度が低いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、低温定着性、耐熱保存性及び耐ホットオフセット性に優れ、光沢度が高い画像を形成することが可能なトナーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、結晶性ポリエステル、非晶性ポリエステル、ウレア変性ポリエステル、離型剤及び着色剤を含むトナーを製造する方法であって、水酸基を有する非晶性ポリエステルとポリイソシアネートを付加させてプレポリマーを合成する工程と、前記結晶性ポリエステル、前記非晶性ポリエステル、前記プレポリマー、アミノ基を有する化合物、前記離型剤及び前記着色剤を含む組成物を有機溶媒中に溶解又は分散させて第一の液を調製する工程と、該第一の液を、樹脂粒子を含む水系媒体中に乳化又は分散させて第二の液を調製する工程と、該第二の液から前記有機溶媒を除去して第一の粒子を含む液を調製する工程と、該第一の粒子を含む液を熟成して第二の粒子を含む液を調製する工程を有し、前記水酸基を有する非晶性ポリエステルは、炭素環を有するポリオールとポリカルボン酸の重縮合物であり、分子量の最大ピークが1.2×10以上2.4×10以下であり、前記プレポリマーは、イソシアネート基数の平均値が1.8以上2.2以下であり、前記第一の粒子の示差走査熱量分析の1回目の昇温時におけるガラス転移点及び前記第一の粒子の単位質量当たりの前記結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークの高さを、それぞれTg[℃]及びH[μW/mg]とし、前記第二の粒子の示差走査熱量分析の1回目の昇温時におけるガラス転移点及び前記第二の粒子の単位質量当たりの前記結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークの高さを、それぞれTg[℃]及びH[μW/mg]とすると、式
1.3≦H/H≦1.6
0≦Tg−Tg≦1.0
を満たすことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のトナーの製造方法において、前記水酸基を有する非晶性ポリエステルは、重量平均分子量が1.2×10以上2.4×10以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のトナーの製造方法において、前記プレポリマーは、イソシアネート価が0.4mol%以上0.7mol%以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法において、前記結晶性ポリエステルは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール又は1,12−ドデカンジオールと、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1,8−オクタン二酸、1,10−デカン二酸又は1,12−ドデカン二酸の重縮合物であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナーの製造方法において、前記結晶性ポリエステルは、融点が60℃以上80℃以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低温定着性、耐熱保存性及び耐ホットオフセット性に優れ、光沢度が高い画像を形成することが可能なトナーの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0016】
本発明のトナーの製造方法は、結晶性ポリエステル、非晶性ポリエステル、ウレア変性ポリエステル、離型剤及び着色剤を含むトナーを製造する方法である。具体的には、本発明のトナーの製造方法は、水酸基を有する非晶性ポリエステルとポリイソシアネートを付加させてプレポリマーを合成する工程と、結晶性ポリエステル、非晶性ポリエステル、プレポリマー、アミノ基を有する化合物、離型剤及び着色剤を含むトナー組成物を有機溶媒中に溶解又は分散させて第一の液を調製する工程と、第一の液を、樹脂粒子を含む水系媒体中に乳化又は分散させて第二の液を調製する工程と、第二の液から有機溶媒を除去して第一の粒子を含む液を調製する工程と、第一の粒子を含む液を熟成して第二の粒子を含む液を調製する工程を有する。
【0017】
このとき、水酸基を有する非晶性ポリエステルは、炭素環を有するポリオールとポリカルボン酸の重縮合物であるため、立体障害により分子同士の凝集を抑制し、定着時の加熱によりトナーの粘弾性を低下させることができる。
【0018】
水酸基を有する非晶性ポリエステルは、分子量の最大ピークが1.2×10〜2.4×10であり、1.4×10〜2.1×10が好ましい。また、プレポリマーは、イソシアネート基数の平均値が1.8〜2.2であり、1.9〜2.1が好ましい。水酸基を有する非晶性ポリエステルの分子量の最大ピークが1.2×10未満である場合又はプレポリマーが有するイソシアネート基数の平均値が1.8未満である場合は、ウレア変性ポリエステルの分子量が小さくなって、トナーの耐ホットオフセット性が低下する。一方、水酸基を有する非晶性ポリエステルの分子量の最大ピークが2.4×10を超える場合又はプレポリマーが有するイソシアネート基数の平均値が2.2を超える場合は、ウレア変性ポリエステルの分子量が大きくなって、トナーの低温定着性及び画像の光沢度が低下する。
【0019】
なお、水酸基を有する非晶性ポリエステルの分子量は、展開溶媒として、THFを用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の分子量である。
【0020】
また、第一の粒子の示差走査熱量分析の1回目の昇温時におけるガラス転移点及び第一の粒子の単位質量当たりの結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークの高さを、それぞれTg[℃]及びH[μW/mg]とし、第二の粒子の示差走査熱量分析の1回目の昇温時におけるガラス転移点及び第二の粒子の単位質量当たりの結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークの高さを、それぞれTg[℃]及びH[μW/mg]とすると、式
1.3≦H/H≦1.6
0≦Tg−Tg≦1.0
を満たす。H/Hが1.3未満であると、結晶性ポリエステルの再結晶化が不十分であるため、定着時の加熱によるトナーの粘弾性の低下が不十分となって、トナーの低温定着性が低下し、H/Hが1.6を超えるトナーを製造することは困難である。また、Tg−Tgが1.0℃を超えると、結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルが相溶して、トナーの耐熱保存性が低下し、Tg−Tgが0℃未満であるトナーを製造することは困難である。
【0021】
なお、粒子の示差走査熱量分析の1回目の昇温時におけるガラス転移点Tg、Tg及び粒子の単位質量当たりの結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークの高さH、Hは、示差走査熱量計Q−200(TAインスツルメンツ社製)を用いて測定することができる。このとき、ガラス転移点は、1回目の昇温時における最初の吸熱ショルダーのオンセット温度であり、結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークの高さは、吸熱ピークとベースラインの距離である。
【0022】
なお、第一の粒子を含む液を、結晶性ポリエステルの融点付近の温度に加熱して熟成すると、結晶性ポリエステルの結晶化が進行し、より安定な結晶状態に変化する。
【0023】
本発明においては、水酸基を有する非晶性ポリエステルの分子量の最大ピーク、プレポリマーが有するイソシアネート基数の平均値、H、H、Tg及びTgを上記の範囲とすることにより、低温定着性、耐熱保存性及び耐ホットオフセット性に優れ、光沢度が高い画像を形成することが可能なトナーを製造することができる。
【0024】
プレポリマーとアミノ基を有する化合物の付加物であるウレア変性ポリエステルは、高分子量成分の分子量を調節しやすく、乾式トナー、特に、オイルレス低温定着特性(定着用加熱媒体へのオイル塗布機構のない広範な離型性及び定着性)を確保できる。中でも、ポリエステルの定着温度域での高流動性及び透明性を維持したまま、オイルレス低温定着特性を確保することができることから、末端が変性されたウレア変性ポリエステルが好ましい。
【0025】
なお、ウレア変性ポリエステルは、ウレア結合と共にウレタン結合を有していてもよい。ウレア結合に対するウレタン結合のモル比は、通常、0〜9であり、0.25〜4が好ましく、2/3〜7/3がさらに好ましい。このモル比が9を超えると、トナーの耐ホットオフセット性が低下することがある。
【0026】
プレポリマーは、水酸基を有する非晶性ポリエステルとポリイソシアネートの付加物である。このとき、非晶性ポリエステルが有する水酸基は、アルコール性水素基又はフェノール性水酸基であるが、アルコール性水酸基が好ましい。
【0027】
水酸基を有する非晶性ポリエステルは、重量平均分子量が1.2×10〜2.4×10であることが好ましい。水酸基を有する非晶性ポリエステルの重量平均分子量が1.2×10未満であると、ウレア変性ポリエステルの分子量が小さくなって、トナーの耐ホットオフセット性が低下することがあり、2.4×10を超えると、ウレア変性ポリエステルの分子量が大きくなって、トナーの低温定着性及び画像の光沢度が低下することがある。
【0028】
水酸基を有する非晶性ポリエステルは、炭素環を有するポリオールとポリカルボン酸の重縮合物である。
【0029】
炭素環を有するポリオールとしては、特に限定されないが、炭素環を有するジオール又は炭素環を有するジオールと炭素環を有する3価以上のポリオールの併用が好ましい。
【0030】
炭素環を有するジオールとしては、脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等);脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物;ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、炭素数が2〜12のビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物又はビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数が2〜12のアルキレングリコールの併用が特に好ましい。
【0031】
炭素環を有する3価以上のポリオールとしては、3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等);3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0032】
ポリカルボン酸としては、特に限定されないが、ジカルボン酸又はジカルボン酸と3価以上のポリカルボン酸の併用が好ましい。
【0033】
ジカルボン酸としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸等);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、炭素数が4〜20のアルケニレンジカルボン酸又は炭素数が8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0034】
3価以上のポリカルボン酸としては、炭素数が9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸等)等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0035】
なお、ポリカルボン酸の代わりに、ポリカルボン酸の無水物又は低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)を用いてもよい。
【0036】
炭素環を有するポリオールとポリカルボン酸を重縮合させる際には、テトラブトキシチタネート、ジブチルスズオキサイド等、公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要に応じて、減圧しながら生成する水を留去することが好ましい。このとき、ポリカルボン酸が有するカルボキシル基に対する炭素環を有するポリオールが有する水酸基のモル比は、通常、1〜2であり、1〜1.5が好ましく、1.02〜1.3がさらに好ましい。
【0037】
ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等);イソシアヌレート類;これらをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0038】
水酸基を有する非晶性ポリエステルとポリイソシアネートを付加させる際には、40〜140℃に加熱することが好ましい。このとき、非晶性ポリエステルが有する水酸基に対するポリイソシアネートが有するイソシアネート基のモル比は、通常、1〜5であり、1.2〜4が好ましく、1.5〜2.5がさらに好ましい。このモル比が1未満であると、ウレア変性ポリエステル中のウレア結合の含有量が少なくなって、耐ホットオフセット性が低下することがあり、5を超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0039】
また、水酸基を有する非晶性ポリエステルとポリイソシアネートを付加させる際に、必要に応じて、溶媒を添加してもよい。
【0040】
溶媒としては、特に限定されないが、芳香族溶媒(トルエン、キシレン等);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等);エステル類(酢酸エチル等);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、エーテル類(テトラヒドロフラン等)等のイソシアネート基に対して不活性な溶媒が挙げられる。
【0041】
プレポリマーは、イソシアネート価が0.4〜0.7mol%であることが好ましい。プレポリマーのイソシアネート価が0.4mol%未満であると、トナーの耐ホットオフセット性が低下すると共に、トナーの耐熱保存性と低温定着性が両立できなくなることがあり、0.7mol%を超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0042】
アミノ基を有する化合物としては、特に限定されないが、ジアミン、3価以上のポリアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸等が挙げられる。中でも、ジアミン又はジアミン3価以上のポリアミンの併用が好ましい。
【0043】
ジアミンとしては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン等);脂環式ジアミン(4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等);脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0044】
3価以上のポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0045】
アミノアルコールとしては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0046】
アミノメルカプタンとしては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0047】
アミノ酸としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0048】
なお、アミノ基を有する化合物の代わりに、アミノ基を有する化合物のアミノ基をケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)でブロックしたケチミン、アルデヒドでブロックしたオキサゾリジン等を用いてもよい。
【0049】
トナー組成物は、必要に応じて、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート等の公知の触媒をさらに含んでいてもよい。
【0050】
アミノ基を有する化合物が有するアミノ基に対するプレポリマーが有するイソシアネート基のモル比は、通常、0.5〜2であり、2/3〜1.5が好ましく、5/6〜1.2がさらに好ましい。この当量比が2を超える場合又は0.5未満である場合は、ウレア変性ポリエステルの分子量が小さくなって、トナーの耐ホットオフセット性が低下することがある。
【0051】
また、トナー組成物は、必要に応じて、停止剤をさらに含んでいてもよい。これにより、ウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。
【0052】
停止剤としては、特に限定されないが、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)等が挙げられる。
【0053】
なお、モノアミンの代わりに、モノアミンのアミノ基をブロックしたケチミン等用いてもよい。
【0054】
結晶性ポリエステルとしては、特に限定されないが、炭素数が2〜12の飽和脂肪族ジオール(1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等)と、炭素数が2〜12の不飽和脂肪族ジカルボン酸(フマル酸等)、又は、炭素数が2〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸(1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1,8−オクタン二酸、1,10−デカン二酸、1,12−ドデカン二酸等)の重縮合物が挙げられる。中でも、結晶性ポリエステルの結晶性が高く、融点付近における粘度変化が大きいことから、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール又は1,12−ドデカンジオールと、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1,8−オクタン二酸、1,10−デカン二酸又は1,12−ドデカン二酸の重縮合物が好ましい。
【0055】
結晶性ポリエステルは、融点が60〜80℃であることが好ましい。結晶性ポリエステルの融点が60℃未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、80℃を超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0056】
なお、結晶性ポリエステルの融点とは、示差走査熱量計を用いて測定されるDSC曲線における最大吸熱ピークの温度を意味する。
【0057】
トナー組成物は、非晶性ポリエステルとして、無変性ポリエステルを含むが、無変性ポリエステルは、ポリオールとポリカルボン酸の重縮合物である。
【0058】
ポリオールとしては、特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)付加物等のジオールが挙げられる。
【0059】
なお、無変性ポリエステルを架橋させるためには、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等の3価以上のポリオールを併用することが好ましい。
【0060】
ポリカルボン酸としては、特に限定されないが、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラキス(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸等が挙げられる。
【0061】
なお、ポリカルボン酸の代わりに、ポリカルボン酸の無水物又は低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)を用いてもよい。
【0062】
無変性ポリエステルは、トナーの定着性、耐オフセット性の点で、分子量が3×10〜5×10の領域にピークを有することが好ましく、分子量が5×10〜2×10の領域にピークを有することがさらに好ましい。
【0063】
無変性ポリエステルは、分子量が1×10以下である成分の含有量が60〜100質量%であることが好ましい。
【0064】
なお、無変性ポリエステル樹脂の分子量は、展開溶媒として、THFを用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の分子量である。
【0065】
無変性ポリエステルは、酸価が1〜50mgKOH/gであることが好ましい。無変性ポリエステルの酸価が1mgKOH/g未満であると、第一の液を調製する際に、無変性ポリエステルを添加する場合に、プレポリマーとアミノ基を有する化合物の付加反応が進行しやすくなって、製造安定性が低下することがある。一方、無変性ポリエステルの酸価が50mgKOH/gを超えると、第一の液を調製する際に、無変性ポリエステルを添加する場合に、プレポリマーとアミノ基を有する化合物との付加反応が十分に進行せず、トナーの耐ホットオフセット性が低下することがある。
【0066】
なお、酸価は、JIS K0070−1992に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0067】
無変性ポリエステルは、ガラス転移点が35〜65℃であることが好ましい。無変性ポリエステルのガラス転移点が35℃未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、65℃を超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0068】
ウレア変性ポリエステルは、低温定着性及び耐ホットオフセット性の点で、無変性ポリエステルの少なくとも一部と相溶することが好ましい。このため、ウレア変性ポリエステルのポリエステル成分は、無変性ポリエステルと組成が類似していることが好ましい。
【0069】
無変性ポリエステルに対するウレア変性ポリエステルの質量比は、通常、5/95〜80/20であり、5/95〜30/70が好ましく、5/95〜25/75がさらに好ましく、7/93〜20/80が特に好ましい。この質量比が5/95未満であると、トナーの耐ホットオフセット性が低下すると共に、トナーの耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になることがあり、80/20を超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0070】
なお、ウレア変性ポリエステルと、ウレタン変性ポリエステルを併用してもよい。
【0071】
トナー組成物は、ポリエステル以外の結着樹脂をさらに含んでいてもよい。ポリエステル以外の結着樹脂としては、特に限定されないが、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等の単独重合体又は共重合体、ポリオール、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート、石油系樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0072】
結着樹脂中のポリエステルの含有量は、50〜100質量%であることが好ましい。結着樹脂中のポリエステルの含有量が50質量%未満であると、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立が困難になることがある。
【0073】
離型剤としては、特に限定されないが、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックス等);カルボニル基を有するワックス等が挙げられる。中でも、カルボニル基を有するワックスが好ましい。
【0074】
カルボニル基を有するワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート等);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミド等);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミド等);ジアルキルケトン(ジステアリルケトン等)等が挙げられる。中でも、ポリアルカン酸エステルが好ましい。
【0075】
離型剤の融点は、通常、40〜160℃であり、50〜120℃が好ましく、60〜90℃がさらに好ましい。離型剤の融点が40℃未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、160℃を超えると、コールドオフセットが発生することがある。
【0076】
離型剤の融点よりも20℃高い温度における溶融粘度は、5〜1000cpsであることが好ましく、10〜100cpsがさらに好ましい。離型剤の融点よりも20℃高い温度における溶融粘度が5cps未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、1000cpsを超えると、トナーの耐ホットオフセット性及び低温定着性を向上させる効果が低下することがある。
【0077】
トナー組成物中の離型剤の含有量は、通常、1〜40重量%であり、3〜30重量%が好ましい。
【0078】
着色剤としては、特に限定されないが、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロロオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロムバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0079】
トナー組成物中の着色剤の含有量は、通常、1〜15重量%であり、3〜10重量%が好ましい。
【0080】
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
【0081】
樹脂としては、特に限定されないが、前述のウレア変性ポリエステル、ウレタン変性ポリエステル、無変性ポリエステル等のポリエステル;ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン系単独重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0082】
マスターバッチは、樹脂と着色剤を混合混練することにより作製することができる。樹脂と着色剤を混合混練する際に、着色剤と樹脂の相互作用を向上させるために、有機溶媒を用いることができる。また、着色剤の水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶媒と共に混合混練して、着色剤を樹脂側に移行させた後、水と有機溶媒を除去するフラッシング法も用いることができる。フラッシング法は、着色剤のウエットケーキを用いることができるため、着色剤のウエットケーキを乾燥する必要がない。
【0083】
樹脂と着色剤を混合混練する際には、3本ロールミル等の高せん断分散装置を用いることができる。
【0084】
トナー組成物は、必要に応じて、帯電制御剤をさらに含んでいてもよい。
【0085】
帯電制御剤としては、特に限定されないが、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩基等を有する高分子化合物等が挙げられる。
【0086】
帯電制御剤の市販品としては、ニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSYVP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージNEGVP2036、コピーチャージNXVP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)等が挙げられる。
【0087】
帯電制御剤の添加量は、トナー組成物に含まれる結着樹脂に対して、通常、0〜10質量%であり、0.2〜5質量%が好ましい。帯電制御剤の添加量が、トナー組成物に含まれる結着樹脂に対して、10質量%を超えると、トナーの帯電性が大きすぎて、現像ローラとの静電的引力が増大し、現像剤の流動性が低下したり、画像濃度が低下したりすることがある。
【0088】
帯電制御剤は、マスターバッチ又は樹脂と共に混合混練した後、有機溶媒中に溶解又は分散させてもよいし、有機溶媒中に直接溶解又は分散させてもよいし、第二の粒子の表面に固定化させてもよい。
【0089】
第一の液を調製する際に用いられる有機溶媒は、除去が容易である点から、沸点が100℃未満であることが好ましい。
【0090】
有機溶媒としては、特に限定されないが、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒又は塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。
【0091】
有機溶媒の使用量は、トナー組成物100質量部に対して、通常、3〜300質量部であり、10〜100質量部が好ましく、25〜70質量部がさらに好ましい。
【0092】
第一の液を、樹脂粒子を含む水系媒体中に乳化又は分散させる際に用いられる分散機としては、特に限定されないが、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機等が挙げられる。中でも、分散体の粒径を2〜20μmにするためには、高速せん断式分散機が好ましい。
【0093】
高速せん断式分散機を用いる場合、回転数は、通常、1000〜30000rpmであり、5000〜20000rpmが好ましい。
【0094】
分散時間は、バッチ方式の場合、通常、0.1〜5分間である。
【0095】
分散温度は、通常、0〜150℃(加圧下)であり、40〜98℃が好ましい。
【0096】
樹脂粒子は、ガラス転移点が50〜70℃であることが好ましい。樹脂粒子のガラス転移点が50℃未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、70℃を超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0097】
樹脂粒子の重量平均分子量は、通常、1×10以下であり、4×10〜5×10以下が好ましい。樹脂粒子の重量平均分子量が1×10を超えると、トナーの低温定着性が低下することがある。
【0098】
樹脂粒子を構成する樹脂としては、水性分散体を形成することが可能であれば、特に限定されないが、ビニル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、微細な球状の樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂又はポリエステルが好ましい。
【0099】
ビニル系樹脂としては、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0100】
樹脂粒子の平均粒径は、通常、5〜200nmであり、20〜150nmが好ましい。
【0101】
水系媒体としては、水を用いることができるが、水と混和可能な溶媒を併用することもできる。
【0102】
水と混和可能な溶媒としては、特に限定されないが、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類(メチルセロソルブ等)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)等が挙げられる。
【0103】
水系媒体の使用量は、トナー組成物100質量部に対して、通常、50〜2000質量部であり、100〜1000質量部が好ましい。水系媒体の使用量が、トナー組成物100質量部に対して、50質量部未満であると、トナー組成物の分散状態が悪くなることがあり、2000質量部を超えると、経済的でない。
【0104】
水系媒体は、分散剤をさらに含んでもよい。これにより、分散体の粒度分布がシャープになると共に、分散が安定でなる。
【0105】
分散剤としては、特に限定されないが、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等のアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型のカチオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤;脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などのノニオン性界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ビス(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。中でも、添加量を少量とすることができるため、フルオロアルキル基を有する界面活性剤が好ましい。
【0106】
フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数が2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及びその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
【0107】
フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤の市販品としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(以上、旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(以上、住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102、(以上、ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(以上、DIC社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(以上、トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F−150(以上、ネオス社製)等が挙げられる。
【0108】
フルオロアルキル基を有するカチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級又は3級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0109】
フルオロアルキル基を有するカチオン性界面活性剤の市販品としては、サーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキン工業社製)、メガファックF−150、F−824(以上、DIC社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
【0110】
水系媒体は、水に難溶の分散剤をさらに含んでもよい。
【0111】
水に難溶の分散剤としては、特に限定されないが、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。
【0112】
分散剤を用いる場合は、分散剤が残存した状態で、トナーとして用いることもできるが、トナーの帯電面から、第二の粒子を含む液を調製した後、分散剤を除去することが好ましい。
【0113】
なお、水に難溶の分散剤として、リン酸カルシウム等の酸、アルカリに可溶な物質を用いる場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウムを溶解した後、水洗する方法等により、第二の粒子からリン酸カルシウムを除去することができる。その他、酵素を用いて分解させる方法等により分散剤を除去することができる。
【0114】
第二の液から有機溶媒を除去する方法としては、特に限定されないが、加熱及び/又は減圧して有機溶媒を蒸発させる方法を用いることができる。
【0115】
なお、プレポリマーとアミノ基を有する化合物を付加させながら、及び/又は、プレポリマーとアミノ基を有する化合物を付加させた後に、第二の液から有機溶媒を除去することができる。
【0116】
プレポリマーとアミノ基を有する化合物を付加させる時間は、通常、10分〜40時間であり、2〜24時間が好ましい。
【0117】
プレポリマーとアミノ基を有する化合物を付加させる温度は、通常、0〜150℃であり、40〜98℃が好ましい。
【0118】
第一の粒子を含む液を熟成する方法としては、特に限定されないが、結晶性ポリエステルの融点付近の温度に加熱する方法を用いることができる。
【0119】
本発明のトナーの製造方法は、第二の粒子を含む液を濾過する工程、濾過された第二の粒子を洗浄する工程及び洗浄された第二の粒子を乾燥させて母体粒子を作製する工程をさらに有することが好ましい。
【0120】
なお、本発明のトナーの製造方法は、第二の粒子を分級する工程を有していてもよい。
【0121】
第二の粒子を分級する方法としては、特に限定されないが、サイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子を除去する方法を用いることができる。このとき、分散剤も除去することができる。
【0122】
なお、第二の粒子を乾燥させた後、乾燥した第二の粒子を分級してもよい。
【0123】
本発明のトナーの製造方法は、母体粒子と外添剤を混合する工程をさらに有することが好ましい。
【0124】
外添剤としては、特に限定されないが、無機粒子を用いることができる。
【0125】
無機粒子の一次粒径は、5〜100nmであることが好ましく、10〜50nmがさらに好ましい。
【0126】
無機粒子は、BET比表面積が20〜500m/gであることが好ましい。
【0127】
トナー中の無機粒子の含有量は、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%がさらに好ましい。
【0128】
無機粒子を構成する材料としては、特に限定されないが、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0129】
無機粒子は、表面処理剤を用いて疎水化処理されていることが好ましい。これにより、高湿度下においても、トナーの流動性や帯電性の低下を抑制することができる。
【0130】
表面処理剤としては、特に限定されないが、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0131】
外添剤として、クリーニング性向上剤を用いてもよい。
【0132】
クリーニング性向上剤としては、特に限定されないが、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸の金属塩;ポリスチレン粒子、メタクリル酸メチル粒子、メタクリル酸エステル共重合体粒子、アクリル酸エステル共重合体粒子、シリコーン樹脂粒子、ベンゾグアナミン粒子、ナイロン粒子等の樹脂粒子等が挙げられる。
【0133】
樹脂粒子は、体積平均粒径が0.01〜1μmであることが好ましい。
【0134】
本発明のトナーの製造方法を用いて製造されているトナーは、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の各種の電子写真法に適用することができる。
【0135】
二成分系現像方法にトナーを適用する場合は、トナーを磁性キャリアと混合して用いる。このとき、磁性キャリアに対するトナーの質量比は、通常、0.01〜0.10である。
【0136】
磁性キャリアとしては、特に限定されないが、粒径が20〜200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリア等が挙げられる。
【0137】
磁性キャリアは、表面が樹脂により被覆されていてもよい。
【0138】
樹脂としては、特に限定されないが、アミノ系樹脂(尿素‐ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等);ポリビニル系樹脂又はポリビニリデン系樹脂(アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリスチレン、スチレンアクリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー)、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0139】
樹脂は、必要に応じて、導電粉等を含んでいてもよい。
【0140】
導電粉を構成する材料としては、特に限定されないが、金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0141】
導電粉は、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。導電粉の平均粒径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【実施例】
【0142】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、実施例に限定されない。なお、部は、質量部を意味する。
【0143】
[無変性ポリエステル1(非晶性ポリエステル)の合成]
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイドサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加物529部、イソフタル酸100部、テレフタル酸108部、アジピン酸46部及びジブチルスズオキサイド2部を入れ、230℃で10時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で5時間反応させた後、無水トリメリット酸30部を加え、180℃で3時間反応させ、無変性ポリエステル1を得た。無変性ポリエステル1は、数平均分子量が1800、重量平均分子量が5500、ガラス転移点が50℃、酸価が20mgKOH/gであった。
【0144】
[結晶性ポリエステル1の合成]
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,12−デカンジオール2500g、1,8−オクタン二酸2330g及びハイドロキノン4.9gを入れ、180℃で20時間反応させた。次に、200℃に昇温して6時間反応させた後、8.3kPaの減圧下で10時間反応させ、結晶性ポリエステル1を得た。結晶性ポリエステル1は、融点が65℃であった。
【0145】
[結晶性ポリエステル2の合成]
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,12−デカンジオール2500g、1,8−オクタン二酸1930g、フマル酸300g及びハイドロキノン4.9gを入れ、180℃で16時間反応させた。次に、200℃に昇温して8時間反応させた後、8.3kPaの減圧下で9時間反応させ、結晶性ポリエステル2を得た。結晶性ポリエステル2は、融点が78℃であった。
【0146】
[結晶性ポリエステル3の合成]
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,12−デカンジオール2500g、1,8−オクタン二酸2330g及びハイドロキノン10.9gを入れ、180℃で6時間反応させた。次に、200℃に昇温して3時間反応させた後、8.3kPaの減圧下で4時間反応させ、結晶性ポリエステル3を得た。結晶性ポリエステル3は、融点が58℃であった。
【0147】
[水酸基を有する非晶性ポリエステル1の合成]
冷却管、撹拌機及び窒索導入管を装備した反応容器に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部及びジブチルスズオキサイド2部を入れ、230℃で8時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下で5時間反応させ、水酸基を有する非晶性ポリエステル1を得た。水酸基を有する非晶性ポリエステル1は、分子量の最大ピークが19000、数平均分子量が5900、重量平均分子量が17800、ガラス転移点が45℃、酸価が0.5mgKOH/g、水酸基価が49mgKOH/gであった。
【0148】
[水酸基を有する非晶性ポリエステル2の合成]
反応時間を5時間に変更した以外は、水酸基を有する非晶性ポリエステル1と同様にして、水酸基を有する非晶性ポリエステル2を得た。水酸基を有する非晶性ポリエステル2は、分子量の最大ピークが16000、数平均分子量が4900、重量平均分子量が14500であった。
【0149】
[水酸基を有する非晶性ポリエステル3の合成]
反応時間を12時間に変更した以外は、水酸基を有する非晶性ポリエステル1と同様にして、水酸基を有する非晶性ポリエステル3を得た。水酸基を有する非晶性ポリエステル3は、分子量の最大ピークが21800、数平均分子量が6800、重量平均分子量が20700であった。
【0150】
[水酸基を有する非晶性ポリエステル4の合成]
反応時間を15時間に変更した以外は、水酸基を有する非晶性ポリエステル1と同様にして、水酸基を有する非晶性ポリエステル4を得た。水酸基を有する非晶性ポリエステル4は、分子量の最大ピークが25000、数平均分子量が8300、重量平均分子量が24800であった。
【0151】
[水酸基を有する非晶性ポリエステル5の合成]
反応時間を3時間に変更した以外は、水酸基を有する非晶性ポリエステル1と同様にして、水酸基を有する非晶性ポリエステル5を得た。水酸基を有する非晶性ポリエステル5は、分子量の最大ピークが11000、数平均分子量が4200、重量平均分子量が11200であった。
【0152】
[プレポリマー1の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応容器に、411部の水酸基を有する非晶性ポリエステル1、イソホロンジイソシアネート89部及び酢酸エチル500部を入れ、100℃で5時間反応させ、プレポリマー1を得た。プレポリマー1は、イソシアネート基数の平均値が1.9であった。
【0153】
[プレポリマー2の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応容器に、411部の水酸基を有する非晶性ポリエステル2、イソホロンジイソシアネート115部及び酢酸エチル500部を入れ、100℃で5時間反応させ、プレポリマー2を得た。プレポリマー2は、イソシアネート基数の平均値が1.9であった。
【0154】
[プレポリマー3の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応容器に、411部の水酸基を有する非晶性ポリエステル3、イソホロンジイソシアネート77部及び酢酸エチル500部を入れ、100℃で5時間反応させ、プレポリマー3を得た。プレポリマー3は、イソシアネート基数の平均値が2.2であった。
【0155】
[プレポリマー4の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応容器に、411部の水酸基を有する非晶性ポリエステル4、イソホロンジイソシアネート65部及び酢酸エチル500部を入れ、100℃で5時間反応させ、プレポリマー4を得た。プレポリマー4は、イソシアネート基数の平均値が2.1であった。
【0156】
[プレポリマー5の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応容器に、411部の水酸基を有する非晶性ポリエステル5、イソホロンジイソシアネート158部及び酢酸エチル500部を入れ、100℃で5時間反応させ、プレポリマー5を得た。プレポリマー5は、イソシアネート基数の平均値が1.9であった。
【0157】
[マスターバッチ1の作製]
水1200部、DBP吸油量が42ml/100mg、pHが9.5のカーボンブラックPrintex35(デクサ社製)540部及び1200部の無変性ポリエステル1を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した混合物を、2本ロールを用いて、150℃で30分間混合混練した後、圧延冷却した。次に、パルペライザーを用いて粉砕し、マスターバッチ1を得た。
【0158】
[ビニル系樹脂粒子の水性分散液1の調製]
撹拌棒及び温度計を装備した反応容器に、水683部、メタクリル酸のエチレンオキサイド付加物の硫酸エステルのナトリウム塩エレミノールRS−30(三洋化成工業社製)11部、スチレン138部、メタクリル酸138部、過硫酸アンモニウム1部を入れ、400rpmで15分間撹拌した後、75℃まで昇温して、5時間反応させた。次に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で5時間熟成し、ビニル系樹脂粒子の水性分散液1を得た。レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(HORIBA社製)を用いて、ビニル系樹脂粒子の水性分散液1の体積平均粒径を測定したところ、0.14μmであった。
【0159】
[水系媒体1の調製]
水990部、83部のビニル系樹脂粒子の水性分散液1、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液エレミノールMON−7(三洋化成工業社製)37部及び酢酸エチル90部を撹拌し、水系媒体1を得た。
【0160】
[ケチミン1の合成]
撹拌棒及び温度計を装備した反応容器に、イソホロンジアミン30部及びメチルエチルケトン70部を入れ、50℃で5時間反応させ、ケチミン1を得た。ケチミン1は、アミン価が423mgKOH/gであった。
【0161】
[実施例1]
金属製の2L容器に、100gの結晶性ポリエステル1及び酢酸エチル400gを入れ、70℃で溶解させた後、氷水浴中で20℃/minの速度で冷却した。次に、100gの無変性ポリエステル1及び直径が3mmのガラスビーズ500mlを加えた後、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)を用いて、平均液温を20℃以下に保ちながら、10時間粉砕し、ポリエステル分散液を得た。レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(HORIBA社製)を用いて、ポリエステル分散液の体積平均粒径を測定したところ、0.3μmであった。
【0162】
撹拌棒及び温度計を装備した容器に、378部の無変性ポリエステル1、マイクロクリスタリンワックスHi−Mic−1090(日本精蝋社製)110部、サリチル酸系金属錯体E−84(オリエント化学工業社製)22部及び酢酸エチル947部を入れ、80℃に昇温し、5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次に、500部のマスターバッチ1及び酢酸エチル500部を加えて、1時間混合し、原料混合液を得た。
【0163】
ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度を1kg/h、ディスクの周速度を6m/sとし、直径が0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填した状態で、3パスの条件で、原料混合液1324部を分散させた。次に、無変性ポリエステル1の65質量%酢酸エチル溶液1042.3部加えた後、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度を1kg/h、ディスクの周速度を6m/sとし、直径が0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填した状態で、1パスの条件で分散させ、原料分散液を得た。原料分散液を130℃で30分間加熱して、固形分濃度を測定したところ、50質量%であった。
【0164】
原料分散液664部、109.4部のプレポリマー1、ポリエステル分散液73.9部及び4.6部のケチミン1を、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて、5000rpmで1分間混合し、第一の液を得た。次に、1200部の水系媒体1を加えた後、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて、11000rpmで5分間混合し、第二の液を得た。
【0165】
撹拌機及び温度計を装備した容器に、第二の液を入れ、30℃で8時間脱溶剤し、第一の粒子を含む液を得た後、50℃で8時間熟成し、第二の粒子を含む液を得た。
【0166】
第二の粒子を含む液100部を減圧濾過した。得られた濾過ケーキに水100部を加えた後、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて、12000rpmで10分間混合し、濾過した。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液100部を加えた後、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて、12000rpmで30分間混合し、減圧濾過した。得られた濾過ケーキに10質量%塩酸100部を加えた後、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて、12000rpmで10分間混合し、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を加えた後、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて、12000rpmで10分間混合し、濾過する操作を2回行った。
【0167】
得られた濾過ケーキを、循風乾燥機を用いて、45℃で48時間乾燥した後、目開きが75μmのメッシュで篩い、母体粒子を得た。
【0168】
母体粒子100部、疎水化処理されているシリカ0.7部及び疎水化処理されている酸化チタン0.3部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナーを得た。
【0169】
[実施例2]
プレポリマー1の代わりに、プレポリマー2を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0170】
[実施例3]
プレポリマー1の代わりに、プレポリマー3を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0171】
[実施例4]
45℃で8時間熟成した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0172】
[実施例5]
55℃で16時間熟成した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0173】
[実施例6]
結晶性ポリエステル1の代わりに、結晶性ポリエステル2を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0174】
[実施例7]
結晶性ポリエステル1の代わりに、結晶性ポリエステル3を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0175】
[比較例1]
プレポリマー1の代わりに、プレポリマー4を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0176】
[比較例2]
プレポリマー1の代わりに、プレポリマー5を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0177】
[比較例3]
40℃で4時間熟成した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0178】
[比較例4]
58℃で24時間熟成した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0179】
表1に、実施例及び比較例のトナーの製造に用いた材料の特性を示す。
【0180】
【表1】

表2に、実施例及び比較例のトナーの製造条件を示す。
【0181】
【表2】

[H、H、Tg及びTgの評価]
粒子の示差走査熱量分析の1回目の昇温時におけるガラス転移点Tg、Tg及び粒子の単位質量当たりの結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークの高さH、Hは、示差走査熱量計Q−200(TAインスツルメンツ社製)を用いて評価した。具体的には、まず、トナー約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に精秤して入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。次に、窒素雰囲気下(流量50ml/min)、昇温速度1℃/min、温度変調周期60s、温度変調振幅0.159℃で−20℃から150℃まで加熱した。さらに、150℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線から、粒子の示差走査熱量分析の1回目の昇温時におけるガラス転移点Tg、Tg及び粒子の単位質量当たりの結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークの高さH、Hを求めた。
【0182】
[現像剤の作製]
ボールミルを用いて、実施例又は比較例のトナー5部とキャリア95部を混合し、現像剤を得た。
【0183】
得られた現像剤を用いて、以下の評価を行った。
【0184】
[定着性]
imagioNeo450(リコー社製)を用いて、普通紙のタイプ6200(リコー社製)及び厚紙の複写印刷用紙<135>(NBSリコー社製)に、1.0±0.1mg/cmのトナーが現像されるように調整してベタ画像を形成した。このとき、定着ベルトの温度が可変となるように調整して、普通紙でホットオフセットの発生しない定着上限温度を評価し、厚紙で定着下限温度を評価した。なお、定着上限温度が160℃未満である場合を×、160℃以上175℃未満である場合を△、175℃以上である場合を○として、判定した。また、定着下限温度が130℃以上である場合を×、120℃以上130℃未満である場合を△、120℃未満である場合を○として、判定した。
【0185】
なお、定着下限温度は、ベタ画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ベルトの温度とした。
【0186】
[最大光沢度]
imagioNeo450(リコー社製)を用いて、坪量が128g/mのPODグロスコート紙(王子製紙社製)に、1.0±0.1mg/cmのトナーが現像されるように調整してベタ画像を形成した。ベタ画像の光沢度の極大値を、グロスメーター(日本電色工業社製)を用いて、入射角60°の条件で測定し、最大光沢度を評価した。なお、最大光沢度が25未満である場合を×、25以上35未満である場合を△、35以上である場合を○として、判定した。
【0187】
[耐熱保存性]
50mlのガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽内に24時間放置した後、24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235−1991)により、針入度を測定し、耐熱保存性を評価した。なお、針入度が25mm以上である場合を◎、15mm以上25mm未満である場合を○、5mm以上15mm未満である場合を△、5mm未満である場合を×として、判定した。
【0188】
表3に、評価結果を示す。
【0189】
【表3】

表3より、実施例1〜7のトナーは、定着性、最大光沢度及び耐熱保存性に優れることがわかる。
【0190】
一方、比較例1のトナーは、水酸基を有する非晶性ポリエステルの分子量の最大ピークが2.4×10を超えるため、ウレア変性ポリエステルの分子量が大きくなって、定着下限温度及び最大光沢度が劣る。比較例2のトナーは、水酸基を有する非晶性ポリエステルの分子量の最大ピークが1.2×10未満であるため、ウレア変性ポリエステルの分子量が小さくなって、定着上限温度及び耐熱保存性が劣る。比較例3のトナーは、H/Hが1.3未満であるため、結晶性ポリエステルの再結晶化が不十分であり、定着下限温度及び耐熱保存性が劣る。比較例4のトナーは、Tg−Tgが1.0を超えるため、結晶性ポリエステルが非晶性ポリエステルと相溶し、定着下限温度及び耐熱保存性が劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0191】
【特許文献1】特開2005−15589号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステル、非晶性ポリエステル、ウレア変性ポリエステル、離型剤及び着色剤を含むトナーを製造する方法であって、
水酸基を有する非晶性ポリエステルとポリイソシアネートを付加させてプレポリマーを合成する工程と、
前記結晶性ポリエステル、前記非晶性ポリエステル、前記プレポリマー、アミノ基を有する化合物、前記離型剤及び前記着色剤を含む組成物を有機溶媒中に溶解又は分散させて第一の液を調製する工程と、
該第一の液を、樹脂粒子を含む水系媒体中に乳化又は分散させて第二の液を調製する工程と、
該第二の液から前記有機溶媒を除去して第一の粒子を含む液を調製する工程と、
該第一の粒子を含む液を熟成して第二の粒子を含む液を調製する工程を有し、
前記水酸基を有する非晶性ポリエステルは、炭素環を有するポリオールとポリカルボン酸の重縮合物であり、分子量の最大ピークが1.2×10以上2.4×10以下であり、
前記プレポリマーは、イソシアネート基数の平均値が1.8以上2.2以下であり、
前記第一の粒子の示差走査熱量分析の1回目の昇温時におけるガラス転移点及び前記第一の粒子の単位質量当たりの前記結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークの高さを、それぞれTg[℃]及びH[μW/mg]とし、前記第二の粒子の示差走査熱量分析の1回目の昇温時におけるガラス転移点及び前記第二の粒子の単位質量当たりの前記結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークの高さを、それぞれTg[℃]及びH[μW/mg]とすると、式
1.3≦H/H≦1.6
0≦Tg−Tg≦1.0
を満たすことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
前記水酸基を有する非晶性ポリエステルは、重量平均分子量が1.2×10以上2.4×10以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
前記プレポリマーは、イソシアネート価が0.4mol%以上0.7mol%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
前記結晶性ポリエステルは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール又は1,12−ドデカンジオールと、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1,8−オクタン二酸、1,10−デカン二酸又は1,12−ドデカン二酸の重縮合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
前記結晶性ポリエステルは、融点が60℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。

【公開番号】特開2012−189967(P2012−189967A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55824(P2011−55824)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】