説明

トナーを調製するための方法およびそのトナー

本発明は、メタリックな、好ましくは金または銀の色調を特に電子写真用の印刷工程により再現するためのトナーおよびトナーを調製するための方法に関する。同種の方法および/またはそのメタリックな色調に関して同種のトナーが保護され、同時に、トナーが用いられる印刷工程に欠くことのできないトナーの特性は損なわれない。少なくとも1つのメタリック顔料にケイ酸塩の塗膜が施され、続いて帯電制御剤および所望により着色剤を含有する有機層が施され、このようにして得られた粒子がトナー材料と混合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
同時係属の同一出願人による、2004年1月30日出願の米国特許仮出願第60/540,529号、標題「PREPARATION OF A TONER FOR REPRODUCING A METALLIC HUE AND THE TONER」、米国特許出願第60/540,529号、標題「PREPARATION OF A TONER FOR REPRODUCING A METALLIC HUE AND THE TONER」ならびに国際特許出願第PCT/US05/03459号、標題「METALLIC HUE TONER AND ITS PREPARATION」が参照される。その全ての開示は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、特に電子写真用の印刷工程によりメタリックな(好ましくは、金または銀の)色調を再現するためのトナーおよびトナーを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
印刷工程は、目的情報を再現し、伝達するだけでなく、例えばコーヒーテーブルブックが印刷される場合あるいは絵入り広告において、美的印象も伝える役目も果たす。ここで、特にメタリックな色調の再現による大きな問題が提示される。メタリックな色調は、原色、特に、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラック(CMYK)の色から生成される色の混合によっては不完全にしか再現することができない。金色の色調はそのような色の混合による再現が特に難しい。従って、メタリック色を直接的にもたらすために、印刷用インク中にメタリック顔料または粒子を組み込むことが既に提案されている。しかし、磁気および/または電気ならびに特に静電特性が決定的に重要なトナーの場合には、これは特に問題がある。それというのも、金属成分がこれらの特性に逆の作用を有する可能性があるためである。それにもかかわらず、既にトナーに金属成分を染み込ませる提案がなされている。例えば、1993年1月19日公開の米国特許第5,180,650号は、薄く色のついた金属成分(例えば銅、銀または金など)を塗膜中に含み、次にそれに金属ハロゲン化物からなる上塗膜が施されているトナー組成物の提供を開示している。
【0004】
しかし、特に印刷物の外見は、例えば成分の酸化を促進し得るハロゲン化物による金属成分の化学反応により、逆の影響をうける可能性がある。例えば、変色は、誰もが銅または銀の物体に生じることで馴染みがあるが、金属の品質を損なうか、または完全に消失させる。さらに、これらのトナーは金属によってごく薄く着色されているので、金の色調を印刷物に再現するには不十分である。さらに、従来の製造方法を用いて金属成分をトナーに組み込む場合、これらの金属粉は、トナー粒子全体にわたってランダムに配向されている。このランダムな配向がメタリックな色調の損失を引き起こし、加熱ローラーを用いて、そのようなトナーをレシーバーシートに定着させる場合、外観が暗くなる。
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/076086号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、そのメタリックな色調に関して同種の方法および/または同種のトナーを保護すると同時に、トナーが用いられる印刷工程に、特に電子写真またはエレクトログラフィーに欠くことのできないトナー特性を損なわないことである。トナーを、接触しない方法で、特にマイクロ波の助けを借りて、トナー中の金属成分により分断されることなく、印刷された素材と融合させることが当然可能であることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、いくつかの方法により本発明に従って達成することができる。その一つは、最初にメタリック顔料にケイ酸塩、チタン酸塩、またはアルミン酸塩の塗膜を施すこと、その後に帯電制御剤および任意選択の着色剤を含有する有機層を施し、このようにして得られた粒子と、トナー材料(例えば、ポリマー、帯電制御剤、任意選択の着色剤、およびシリカ、チタニア、またはアルミナ(aluminia)のような疎水性に表面被覆されたヒュームド金属酸化物を含む)を混合することを含むものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本実施形態では、最初にメタリック顔料にケイ酸塩、チタン酸塩、またはアルミン酸塩の塗膜を施すこと、その後に帯電制御剤および任意選択の着色剤を含有する有機層を施し、このようにして得られた粒子と、トナー材料(例えば、ポリマー、帯電制御剤、任意選択の着色剤、およびシリカ、チタニア、またはアルミナ(aluminia)のような疎水性に表面被覆されたヒュームド金属酸化物を含む)を混合することを含む。別のアプローチは、帯電制御剤および任意選択の着色剤を含有する有機層の塗膜をメタリック顔料全体に施すこと、ならびに、結果として生じる粒子を、ポリマー樹脂、任意選択の帯電制御剤、および、シリカ、チタニア、またはアルミナなどの塗膜で疎水化されている任意選択のヒュームド金属酸化物粒子からなるトナー材料と混合することを含む。
【0009】
本発明のさらなる発展形態において、有機層は少なくとも1種類の脂肪酸、ステアリン酸、少なくとも1種類の酸の少なくとも1種類のアミド、少なくとも1種類の酸の少なくとも1種類の塩、少なくとも1種類のオレフィン系材料および/または少なくとも1種類の天然もしくは合成蝋を利用する。しかし、ステアリン酸の使用は、ステアリン酸がトナー材料を可塑化するという問題を生じ得るので、特別の注意をもって行う必要がある。有機層には、ケイ酸塩、チタン酸塩、またはアルミン酸塩層の全体を覆う、少なくとも1種類のポリマー有機層(ポリエステルなど)が含まれてよい。また、有機層には、下文により詳細に記載される、一般にトナー樹脂として用いられる任意のポリマーが含まれてよい。さらに、メタリック顔料は、少なくとも1種類のポリマー(ポリエステルなど)を含みうる塗膜として唯一の有機層を有してよい。
【0010】
有機層は、被覆工程で用いられる有機塗膜材料に添加される帯電制御剤を含む。異なる実施形態において、帯電制御剤は、有機塗膜の表面に適用される。トナーにおいて用いられる帯電制御剤は、例えばHandbook of Imaging Materials, Second Edition, Marcel Dekker, Inc., New York, Basel, ISBN: 0−8247−8903−2, p.180ffおよびその中の参照文献に記載されている。
【0011】
有機層は、所望により着色剤も含んでよい。塗膜が固有の色を有する場合、印刷物のメタリックな色調を伴って色が変化する興味深い効果をもたらすか、または全体としてメタリックな色調を変えることができる。所望により、結合剤は、顔料フラッシュ(当技術分野に周知の、顔料プレスケーキと樹脂の特別な混合物)または顔料−樹脂マスターバッチのいずれかの形で、着色剤(すなわち染料または顔料)ならびに当技術分野に公知のその他の任意の所望の付加物と合成することができる。顔料の元の色を修正せずに現像した画像を望む場合、着色剤を添加する必要はない。しかし、通常は着色剤が含められ、それは、原則として、Colour Index, VoIs. I and II, 2nd Edition (1987)に言及されているいずれかの材料、またはPantone(登録商標) Color Formula Guide, First Edition 2000−2001に記載されているものであってよい。着色剤の選択も同様に、例えば、IS&T NIP 20: International Conference on Digital Printing Technologies, IS&T: The Society for Imaging Science and Technology, 7003 Kilworth Lane, Springfield, Virginia 22151 USA ISBN: 0−89208−253−4, p. 135の議事録に記載されている。カーボンブラックが特に有用であり得るが、その他の着色剤としては、ピグメントブルー、ピグメントレッド、およびピグメントイエローが挙げられる。具体的な着色剤には、銅フタロシアニン、およびLUPRETON BLUE SE1163の商品名で販売されているピグメントブルーが含まれ得る。用いる場合、着色剤の量は、広い範囲、例えば、トナー成分の約1〜約25重量パーセント、好ましくは約3〜約20重量パーセントで変動し得る。着色剤の組合せも用いてよい。
【0012】
着色剤は、帯電制御剤およびその逆の機能を有する。
【0013】
そうでなければ、本発明の方法は、顔料がトナーコア中に便宜に組み込まれている乾燥トナーを調製するための任意の周知の方法(すなわち、例えば配合、分類および/または粉砕することによる方法)に従ってよい。トナーコアに顔料を埋め込む代わりに、例えば、顔料が、所望により単独でまたは他の成分(例えばポリマー、蝋、または帯電制御剤)と混合して、特に塗膜の一部として、トナー本体の表面に塗布されている、シェル構造を利用することも可能である。実例となる参照文献は、1994年3月29日公開の米国特許第5,298,356号および/または2000年8月29日公開の米国特許第6,110,633号であり、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0014】
最終的に、本発明のトナーは、約0.1%〜約3%の濃度のシリカ、アルミナ、またはチタニアのような疎水性のヒュームド金属酸化物からなる表面を付加的成分で被覆してよい。
【0015】
トナーは、あるいは、「化学的に調製されたトナー」、「重合トナー」または「インサイチュートナー」とも呼ばれるいわゆる化学的トナー工程で製造されてよい。トナーは粉砕によって製造されるのではなく、成長の制御によって製造される。用いてよい化学的工程は、数ある中でも、懸濁重合(例えば、DE 4202461号、DE 4202462号);乳化凝集(例えば、1997年2月18日公開の米国特許第5,604,076号);マイクロカプセル封入(例えば、DE 10011299号);分散(例えば、2003年5月8日公開の米国特許出願公開第2003/0087176 A1号);またはケミカルミリング(例えば、IS&T NIP 17: International Conference on Digital Printing Technologies, IS&T: The Society for Imaging Science and Technology, 7003 Kilworth Lane, Springfield, Virginia 22151 USA ISBN: 0−89208−234−8, p. 345の議事録)である。上記の参照文献の全開示は参照により本明細書に援用される。
【0016】
本発明のさらなる発展形態では、顔料はプレートレットの形に作られる。これは、(より大きな)トナー材料粒子の表面へ付加するために特に有利である。
【0017】
メタリック顔料は、いわゆるゾルゲル法を用いてケイ酸塩で被覆できることが好ましい。これにより、特に薄い塗膜が得られる。この目的のため、ステアリン酸を滑沢剤として使用すること、および/または顔料をエタノール、水およびシリカ、チタニア、もしくはアルミナ前駆体の混合物中に分散させることが想定できる。シリカ前駆体は、テトラエトキシシランであってよい。シランの量は、当然顔料の粒径に依存する。触媒をさらに用いることが好ましい。
【0018】
さらなる実施形態では、混合物を加熱して、シリカ、チタニア、もしくはアルミナ前駆体を加水分解し、反応させて、顔料に薄い膜として付着するケイ酸塩、チタン酸塩、またはアルミン酸塩を形成させる反応を加速させる。次に、濾過を行って望ましくない副生成物、例えば、触媒、金属化合物、またはステアリン酸を取り除いてよい。
【0019】
溶媒残渣の乾燥および蒸発を行って、ケイ酸塩で被覆された顔料を含む物質として微粉残渣を得ることも可能である。
【0020】
好ましくは、ケイ酸塩、チタン酸塩、またはアルミン酸塩は、メタリック顔料の約2重量%〜約10重量%を占める。
【0021】
トナー材料は、透明/無色またはトランスペアレントであるか、あるいは、固有の色を有してよい。トナー材料が固有の色を有する場合、それにより印刷物にメタリックな色調を伴って色が変化する興味深い効果をもたらすか、または全体としてメタリックな色調を変えることができる。
【0022】
本発明、ならびにその目的および利点は、下に提示する好ましい実施形態の詳細な説明でさらに明らかとなるであろう。
【0023】
本発明の方法の好ましい実施形態では、顔料は約7μmのサイズであり、トナー材料のトナー粒子は約6〜12μmのサイズである。既に述べたように、顔料はそれぞれトナー材料のトナー粒子の表面に配置される。
【0024】
有機層にはポリマーが含まれるか、または有機層はポリマーからなる。有用なポリマーとしては、ビニルポリマー類、例えばスチレンのホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。スチレンポリマー類としては、40〜100重量%のスチレン、またはスチレン同族体、および0〜40重量%の1種類以上の低級アクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルを含むものが挙げられる。その他の例としては、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物と共有結合的に軽く架橋している可融性のスチレン−アクリルコポリマーが挙げられる。この種類の結合剤は、例えば、参照によりその全文が本明細書に援用される米国再発行特許第31,072号に記載されている。好ましい結合剤は、スチレンならびにアクリル酸アルキルおよび/もしくはメタクリル酸アルキルを含み、結合剤のスチレン含量は、少なくとも約60重量%であることが好ましい。
【0025】
スチレンブチルアクリレートおよびスチレンブタジエンなどのスチレンに富むコポリマーも、ポリマーのブレンドとして、結合剤として有用である。そのようなブレンドにおいて、スチレンブチルアクリレート対スチレンブタジエンの比は、10:1〜1:10であってよい。5:1〜1:5および7:3の比が特に有用である。スチレンブチルアクリレートおよび/またはブチルメタクリレート(スチレン30〜80%)ならびにスチレンブタジエン(スチレン30〜80%)のポリマーも有用な結合剤である。
【0026】
スチレンポリマーには、スチレン、α−メチルスチレン、パラ−クロロスチレン、およびビニルトルエンが含まれる。アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、フェニルアクリレート、メチルアクリル酸、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸オクチルから選択される二重結合を有するアクリル酸アルキルまたはメチルアクリレートまたはモノカルボン酸も有用な結合剤である。
【0027】
1以上の脂肪族ジオールと芳香族ジカルボン酸のポリエステルおよびコポリエステルなど(例えばエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、およびビスフェノールなどのジオールとイソフタル酸もしくはテレフタル酸のポリエステルなど)の縮合ポリマーも有用である。その他の有用な樹脂としては、ポリエステル樹脂、例えば、ジオール成分としてビスフェノール誘導体またはその置換化合物を用いて、2以上の原子価数を有するカルボン酸を含むカルボン酸成分、その酸無水物またはその低級アルキルエステル(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、またはピロメリット酸)を共重縮合することより得ることのできる樹脂が挙げられる。具体的な例が、参照により全て本明細書に援用される米国特許第5,120,631号;同第4,430,408号;および5,714,295号に記載されており、プロポキシ化ビスフェノールAフマラート、例えばReichold Chemicals製のFinetone(登録商標)382 ES(ICI Americas Inc製の旧Atlac(登録商標)382 ES)などが含まれる。
【0028】
有用な結合剤は、共役ジエンモノマーまたはアクリレートモノマー(アクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルなど)のいずれかから選択される第2のモノマーとビニル芳香族モノマーの共重合体から形成することもできる。
【0029】
着色剤、および必要であれば、剥離剤、流動性向上剤、帯電制御剤、磁性体、および架橋剤を、この高分子結合剤に添加してよい。
【0030】
着色剤には、カーボンブラック、例えば、ニグロシン染料、アニリンブルー、弁柄、アセチレンブラック、モノアゾ染料、ジアゾ染料、キナクリドン、アントラキノン染料、カルコオイルブルー、銅フタロシアニン、インダンスレンブルー、ベンゼンイエロー(benzene yellow)、クロムイエロー顔料、ウルトラマリンイエロー、デュポンオイルレッド、インダンスレンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントスカーレット、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、ピグメントグリーンB、ローダミンB、およびソルベント35などの顔料または染料が含まれる。
【0031】
本発明で用いられる着色剤は、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、ウルトラマリンブルー、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Gレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン色素、モノアゾおよびジスアゾ染料をはじめとする、既知の染料または顔料のうちの1種類またはその混合物であってよい。
【0032】
上述の着色剤としては、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料(C.I.番号50415B)、アニリンブルー(C.I.番号50405)、カルコオイルブルー(Charco Oil Blue)(C.I.番号 アゾイックブルー3)、クロムイエロー(C.I.番号14090)、ウルトラマリンブルー(C.I.番号77103)、デュポンオイルレッド(C.I.番号26105)、キノリンイエロー(C.I.番号47005)、メチレンブルークロリド(C.I.番号52015)、フタロシアニンブルー(C.I.番号74160)、マラカイトグリーンオキサレート(C.I.番号42000)、ランプブラック(C.I.番号77266)、ローズベンガル(C.I.番号45435)、それらの混合物が挙げられる。着色剤の添加率は、結合剤樹脂100重量部あたり1〜20重量部であることが好ましい。
【0033】
本発明で用いられるトナーにおいて、着色または静電荷制御の目的で種々の材料を添加することができる。そのような材料としては、例えば、カーボンブラック、黒色酸化鉄、グラファイト、ニグロシン、モノアゾ染料の金属錯体、ウルトラマリンブルー、およびあらゆる種類のレーキ(フタロシアニンブルー、ハンザイエロー、ベンゾイエローおよびキナクリドンなど)が挙げられる。無色の帯電制御剤の例は、第4級アンモニウム塩、例えばサリチル酸と疎水性に変性された層状の金属酸化物との金属錯体である。帯電制御剤または帯電制御剤混合物の添加率は、結合剤樹脂100重量部あたり1〜20重量部であることが好ましい。
【0034】
メタリック顔料は、金の色調を有することが好ましい。これは、本物の金を用いることにより実現されうる。しかし、銅と亜鉛を含み、好ましくは、合金の形態の、従って、組成物に応じて真鍮または青銅とみなされうる顔料を用いることが好ましい。合金中の銅および亜鉛部分の比は約90:10〜約70:30で変動することが好ましい。合金中の亜鉛部分が増加するにつれて、メタリックな金の色調は、より赤みを帯びた金色からより黄みがかった金色またはさらに緑がかった金色へと変化する。金の色調の色彩は、金属の酸化を制御することによって強めることができる。
【0035】
メタリック顔料は、あるいは、例えば、数ある可能性の中でも、アルミニウムを含有する顔料から生じうる銀の色調を有してよい。
【0036】
本発明はさらに、特に電子写真のための印刷工程により、メタリックな、好ましくは金または銀の色調を再現するためのトナーを提供し、そのトナーは上記の方法により調製され、所望によりケイ酸塩の被膜が施され、その上に有機層が施されている、少なくとも1つのメタリック顔料を含む少なくとも1つの粒子により区別されることが好ましい。そのようなトナーの利点は、本発明の方法に関連して既に記載されている。単独でまたは組み合わされた特定の実施形態として具体的に意図されうる、本発明に従うトナーのさらなる発展形態は、有機層が少なくとも1種類の脂肪酸を含むこと、有機層がステアリン酸を含むこと、有機層が少なくとも1種類の酸の少なくとも1種類のアミドを含むこと、有機層が少なくとも1種類の酸の少なくとも1種類の塩を含むこと、有機層が少なくとも1種類のオレフィン系材料を含むこと、有機層が少なくとも1種類の蝋を含むこと、その蝋が天然蝋であること、その蝋が合成蝋であること、顔料がプレートレット形であること、顔料がゾルゲル法によりケイ酸塩で被覆されていること、トナーが微粉のトナーであること、ケイ酸塩、チタン酸塩、またはアルミン酸塩がメタリック顔料の約2重量%〜約10重量%を占めること、顔料が透明またはトランスペアレントであるトナー材料と混合されていること、顔料が固有の色を有するトナー材料と混合されていること、顔料のサイズが約7μmでありトナー材料のトナー粒子のサイズが約6〜12μmであること、顔料がそれぞれトナー材料のトナー粒子の表面に配置されること、有機層がポリマーを含むこと、顔料が金色であること、顔料が銅および亜鉛を含むこと、顔料が銅および亜鉛を合金の成分として含むこと、合金中の銅および亜鉛部分の比が約90:10〜約70:30で変動すること、顔料が銀色であること、ならびに/あるいは顔料がアルミニウムを含むことを想定する。
【0037】
本発明のトナーは、デジタル印刷工程、好ましくは静電印刷工程、より好ましくはL. B. Schein, Electrophotography and Development Physics,2nd Edition, Laplacian Press, Morgan Hill, California, 1996 (ISBN 1−885540−02−7)に記載される電子写真印刷工程によるか、または、コーティング工程、好ましくは静電コーティング工程、より好ましくは、その開示が参照により本明細書に援用される2002年1月29日公開の米国特許第6,342,273号に記載される電磁ブラシコーティング工程により、基体に適用されうる。トナーを基体の表面に定着させるためには、ローラー融着のような接触融着法を用いるか、あるいは、好ましくは、オーブン、熱風、輻射、フラッシュ、溶媒、またはマイクロ波融着のような非接触融着法を用いてよい。
【実施例】
【0038】
本発明の方法および本発明のトナーを、本発明のさらなる特徴を明らかにしうるいくつかの実施例に関して、これからより詳細に記載するが、本発明はその範囲に限定されない。
【0039】
<実施例1>
粒径約7μmのプレートレット形の真鍮顔料に、最初にケイ酸塩塗膜を施し、続いてサリチル酸との金属錯体に基づく3%の帯電制御剤と混合したビスフェノールA系ポリエステル樹脂の有機塗膜を施した。次に、この被覆された顔料を、高分子結合剤、帯電制御剤、およびヒュームド金属酸化物からなる平均粒径12μmの透明なトナーと、高速混合機で2分間、様々な濃度で激しく混ぜて真鍮で被覆された表面を有するトナーを得た。
【0040】
その後、これらのトナーをキャリアと混合し、現像させ、商業印刷に常用される紙に移した。最後に、それぞれのトナーをオーブンでの非接触定着(contactless fixation)により紙表面に定着させた。
【0041】
<実施例2>
硬質なロール面とKaptonフィルムからなる、加熱した接触定着装置でトナーを定着させたことを除いて実施例1を繰り返した。
【0042】
<実施例3>
例えば、2002年8月22日公開の米国特許出願公開第2002/0115010 A1号から公知の、シャープな融点を有するトナーを用いて実施例1を繰り返した。その120℃溶融粘度は12.4Pa・sであった。
【0043】
<実施例4>
透明なトナーの代わりに黄色のトナーを用いたことを除いて、実施例3を繰り返した。
【0044】
<実施例5>
マゼンタ色のトナーを用いたことを除いて実施例4を繰り返した。
【0045】
<実施例6>
シアン色のトナーを用いたことを除いて実施例5を繰り返した。
【0046】
<実施例7>(比較例)
金色の印刷をトナーに基づく4色の印刷でシミュレートした。合わせた結果は悪かった。どちらかといえば典型的なメタリックの輝きを欠いた、濁った黄色が得られた。
【0047】
<実施例8>
粒径約7μmのプレートレット形の真鍮顔料に、最初にケイ酸塩塗膜を施し、続いてサリチル酸との金属錯体に基づく3%の帯電制御剤と混合したビスフェノールA系ポリエステルからなる10重量%の有機塗膜を施したことを除いて実施例1を繰り返した。次に、この被覆された顔料を、高分子結合剤、帯電制御剤、およびヒュームド金属酸化物からなる平均粒径12μmの透明なトナーと、高速混合機で2分間、様々な濃度で激しく混ぜて真鍮で被覆された表面を有するトナーを得た。真鍮顔料の濃度は2%から24%まで2%の段階で変動した。
【0048】
その後、これらのトナーをキャリアと混合し、現像させ、商業印刷に常用される紙に移した。最後に、それぞれのトナーをオーブンでの非接触定着により紙表面に定着させた。
【0049】
<実施例9>
硬質なロール面とKaptonフィルムからなる、加熱した接触定着装置でトナーを定着させたことを除いて、実施例8を繰り返した。
【0050】
<実施例10>
粒径約7μmのプレートレット形の真鍮顔料に、直接サリチル酸との金属錯体に基づく3%の帯電制御剤と混合したビスフェノールA系ポリエステルからなる有機塗膜を施したことを除いて実施例9を繰り返した。オーブンでの非接触定着によりトナーを紙表面に定着させた。
【0051】
<実施例11>
ビスフェノールA系ポリエステル樹脂の有機塗膜を、サリチル酸との金属錯体に基づく3%の帯電制御剤と混合し、LUPRETON BLUE SE1163による3%のピグメントブルー15:3を添加したことを除いて実施例1を繰り返した。
【0052】
<実施例12>
ビスフェノールA系ポリエステル樹脂の有機塗膜を、サリチル酸との金属錯体に基づく3%の帯電制御剤と混合し、3%のピグメントレッド57:1を添加したことを除いて実施例1を繰り返した。
【0053】
<実施例13>
ビスフェノールA系ポリエステル樹脂の有機塗膜を、サリチル酸との金属錯体に基づく3%の帯電制御剤と混合し、3%のピグメントイエロー185を添加したことを除いて実施例1を繰り返した。
【0054】
<実施例14>
ビスフェノールA系ポリエステル樹脂の有機塗膜を、サリチル酸との金属錯体に基づく3%の帯電制御剤と混合し、3%のピグメントイエロー185を添加したことを除いて実施例4を繰り返した。
【0055】
<実施例15>
ビスフェノールA系ポリエステル樹脂の有機塗膜を、サリチル酸との金属錯体に基づく3%の帯電制御剤と混合し、3%のピグメントイエロー185を添加したことを除いて実施例5を繰り返した。
【0056】
<実施例16>
ビスフェノールA系ポリエステル樹脂の有機塗膜を、サリチル酸との金属錯体に基づく3%の帯電制御剤と混合し、3%のピグメントイエロー185を添加したことを除いて実施例6を繰り返した。
【0057】
<実施例17>
ビスフェノールA系ポリエステル樹脂の有機塗膜を、サリチル酸との金属錯体に基づく3%の帯電制御剤と混合し、LUPRETON BLUE SE1163による3%のピグメントブルー15:3を添加したことを除いて実施例6を繰り返した。
【0058】
<実施例18>
ビスフェノールA系ポリエステル樹脂の有機塗膜を、3%の着色されたニグロシン系の帯電制御剤と混合したことを除いて実施例1を繰り返した。
【0059】
本発明を、その特定の好ましい実施形態を特に参照して詳細に記載してきたが、変形形態および変更形態が本発明の精神および範囲の中でもたらすことができることは当然理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタリックな色調を有し、メタリック顔料を含むトナーであって、前記メタリック顔料が、
a)脂肪酸、少なくとも1種類の酸のアミド、少なくとも1種類の酸の塩、オレフィン系材料、天然蝋、合成蝋、ポリマー、およびそれらの組合せから選択される有機層(その有機層は帯電制御剤と所望により着色剤を含む)、
b)所望により、ケイ酸塩、チタン酸塩、またはアルミン酸塩の塗膜、を含み、
前記トナーが所望により疎水性のヒュームド金属酸化物で被覆されていることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記メタリック顔料が、銅と亜鉛の組合せか、またはアルミニウムのいずれかを含む請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記メタリック顔料が約90:10〜約70:30の比の銅と亜鉛の合金を含む請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記メタリック顔料がプレートレットの形状である請求項1に記載のトナー。
【請求項5】
前記ケイ酸塩、チタン酸塩、またはアルミン酸塩が、前記メタリック顔料の約2重量%〜約10重量%を占める請求項1に記載のトナー。
【請求項6】
前記メタリック顔料が約5%〜約25%の濃度で存在する請求項1に記載のトナー。
【請求項7】
前記メタリック顔料が前記トナーの一表面に配置される請求項1に記載のトナー。
【請求項8】
前記メタリック顔料が約7ミクロンのサイズである請求項1に記載のトナー。
【請求項9】
前記トナーが約6〜約12ミクロンの大きさである請求項8に記載のトナー粒子。
【請求項10】
前記トナーが、約0.1%〜約3%の濃度のシリカ、チタニア、またはアルミナで表面を被覆されている請求項1に記載のトナー。
【請求項11】
トナーに用いるメタリック顔料であって、
a)脂肪酸、少なくとも1種類の酸のアミド、少なくとも1種類の酸の塩、オレフィン系材料、天然蝋、合成蝋、ポリマー、およびそれらの組合せから選択される有機層(その有機層は帯電制御剤と所望により着色剤を含む)、
b)所望により、前記メタリック顔料の2重量%〜約10重量%の量のケイ酸塩、チタン酸塩、またはアルミン酸塩の塗膜、を含むことを特徴とするメタリック顔料。
【請求項12】
メタリックな色調を有するトナーの調製方法であって、
a)i)脂肪酸、少なくとも1種類の酸のアミド、少なくとも1種類の酸の塩、オレフィン系材料、天然蝋、合成蝋、ポリマー、およびそれらの組合せから選択される有機層(その有機層は帯電制御剤と所望により着色剤を含む)、ならびにii)所望により、ケイ酸塩、チタン酸塩、またはアルミン酸塩の塗膜(それにより被覆されたメタリック顔料が得られる)、を含むメタリック顔料を準備する段階と、
b)前記被覆されたメタリック顔料とトナー材料とを混合する段階と、
c)所望により、結果として生じるトナー材料を疎水性のヒュームド金属酸化物で表面被覆する段階と、を含むメタリックな色調を有するトナーの調製方法。
【請求項13】
前記表面被覆が、結果として生じるトナー材料を、約0.1%〜約3%の濃度のシリカ、チタニア、またはアルミナで被覆する段階を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
段階a)ii)の塗膜がケイ酸塩であり、ゾルゲル法を用いてもたらされる請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記メタリック顔料が、銅と亜鉛の組合せか、またはアルミニウムのいずれかを含む請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記メタリック顔料が約90:10〜約70:30の比の銅と亜鉛の合金を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記メタリック顔料がプレートレットの形である請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記ケイ酸塩、チタン酸塩、またはアルミン酸塩が、前記メタリック顔料の約2重量%〜約10重量%を占める請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記メタリック顔料が約5%〜約25%の濃度で存在する請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記メタリック顔料が前記トナーの一表面に配置される請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記メタリック顔料が約7ミクロンのサイズである請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記トナーが約6〜約12ミクロンの粒径である請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2009−501349(P2009−501349A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520761(P2008−520761)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006604
【国際公開番号】WO2007/006481
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】