説明

トナーバインダーおよびトナー

【課題】 低温定着性と耐ホットオフセット性の両立(定着温度幅)と、保存安定性に優れたトナーバインダーを提供すること。
【解決手段】 構成単位中に3価以上のモノマーを含有する非線形ポリエステル樹脂(A1)と必要により線形ポリエステル樹脂(A2)とで構成されるポリエステル樹脂(A)と、平均粒径が0.001〜1.5μmの無機フィラー(F)を含有し、ポリエステル樹脂(A)と無機フィラー(F)の20℃における熱伝導率の差が25〜350W/m・Kであり、ポリエステル樹脂(A)中に無機フィラー(F)が分散されてなるポリエステル樹脂組成物(H)を含有するトナーバインダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナーバインダーおよびトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等における画像の定着方式として一般的に採用されている熱定着方式用の電子写真用トナーバインダーは、高い定着温度でもトナーが熱ロールに融着せず(耐ホットオフセット性)、定着温度が低くてもトナーが定着できること(低温定着性)や、保存安定性が要求されている。
【0003】
カラー化・定着プロセスの高速化に伴い、低温定着性と耐ホットオフセット性を兼ね備えたトナーバインダーが求められている。低温定着性と耐ホットオフセット性の両方性能向上を狙ったものとして、耐ホットオフセット性に効果のある高弾性タイプの樹脂と、低温定着性に効果のある低粘度タイプの樹脂の、2つの分子量分布を異なるトナーバインダー樹脂を混合する技術などが提案されている(特許文献1,2)。
【0004】
耐ホットオフセット性と低温定着性のバランスに優れたトナーとして、ガラス転移温度の異なる2種類のポリエステル樹脂をトナーバインダーとして含有するトナーが開示されている(特許文献3)。
【0005】
しかしながら、上記特許文献に提案されているトナーは、耐ホットオフセット性と低温定着性のバランスにある程度優れているものの、さらなる高速化、省エネ化における耐ホットオフセット性と低温定着性の両立の点では改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−327210号公報
【特許文献2】特開2001−356527号公報
【特許文献3】特開2005−221986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立(定着温度幅)と保存安定性に優れたトナーバインダーおよびトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、これらの課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、構成単位中に3価以上のモノマーを含有する非線形ポリエステル樹脂(A1)と必要により線形ポリエステル樹脂(A2)とで構成されるポリエステル樹脂(A)と、平均粒径が0.001〜1.5μmの無機フィラー(F)を含有し、ポリエステル樹脂(A)と無機フィラー(F)の20℃における熱伝導率の差が25〜350W/m・Kであり、ポリエステル樹脂(A)中に無機フィラー(F)が分散されてなるポリエステル樹脂組成物(H)を含有するトナーバインダー;ならびにこのトナーバインダーと着色剤、並びに必要により離型剤、荷電制御剤、および流動化剤から選ばれる1種類以上の添加剤を含有するトナーである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトナーバインダーを用いた電子写真用のトナーは、低温定着性と耐ホットオフセット性のバランス(定着温度幅)に優れ、保存安定性にも優れる。また、安定した画像濃度が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳述する。
本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、例えば、1種類以上のポリオール成分(x)と、1種類以上のポリカルボン酸成分(y)を重縮合して得られ、ポリオール成分(x)としては、ジオール(x1)および/または3〜8価もしくはそれ以上のポリオール(x2)が挙げられる。ポリカルボン酸成分(y)としては、ジカルボン酸(y1)および/または3〜6価もしくはそれ以上のポリカルボン酸(y2)が挙げられる。
【0011】
ジオール(x1)としては、炭素数2〜36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、および1,6−ヘキサンジオール等);炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレンエーテルグリコール等);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび水素添加ビスフェノールA等);上記脂環式ジオールの(ポリ)オキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜4、以下のポリオキシアルキレン基も同じ)エーテル〔オキシアルキレン単位(以下AO単位と略記)の数1〜30〕;および2価フェノール〔単環2価フェノール(例えばハイドロキノン)、およびビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールS等)〕のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)等が挙げられる。
【0012】
これら(x1)のうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)およびこれらの併用である。さらに好ましいものは、ビスフェノール類(とくにビスフェノールA)のポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2および/または3、AO単位の数2〜8)、炭素数2〜12のアルキレングリコール(とくにエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール)、およびこれらの併用(重量比100:0〜20:80)である。
【0013】
3価〜8価もしくはそれ以上のポリオール(x2)としては、炭素数3〜36の3価〜8価もしくはそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオールおよびその分子内もしくは分子間脱水物、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、およびジペンタエリスリトール;糖類およびその誘導体、例えばショ糖およびメチルグルコシド);上記脂肪族多価アルコールの(ポリ)オキシアルキレンエーテル(AO単位の数1〜30);トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラックおよびクレゾールノボラック等、平均重合度3〜60)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)等が挙げられる。
【0014】
これら(x2)のうち好ましいものは、3〜8価もしくはそれ以上の脂肪族多価アルコールおよびノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)であり、とくに好ましいものはノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)である。
【0015】
ジカルボン酸(y1)としては、炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸(例えばコハク酸、アジピン酸、およびセバシン酸);炭素数6〜40の脂環式ジカルボン酸〔例えばダイマー酸(2量化リノール酸)〕;炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸(例えばドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、およびメサコン酸);炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸等);およびこれらのエステル形成性誘導体〔例えば、無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)、以下のエステル形成性誘導体も同様〕;等が挙げられる。これら(y1)のうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、並びにこれらのエステル形成性誘導体である。
【0016】
3〜6価もしくはそれ以上のポリカルボン酸(y2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット、およびピロメリット酸等)、炭素数6〜36の脂肪族(脂環式を含む)ポリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸、およびデカントリカルボン酸等)、およびこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
これら(y2)のうち好ましいものはトリメリット酸およびピロメリット酸、並びにこれらのエステル形成性誘導体である。
【0017】
本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、通常のポリエステル製造法と同様にして製造することができる。例えば、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150〜280℃、さらに好ましくは160〜250℃、とくに好ましくは170〜235℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、とくに2〜40時間である。反応末期の反応速度を向上させるために減圧することも有効である。
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、特開2006−243715号公報に記載の触媒〔チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、およびそれらの分子内重縮合物等〕、および特開2007−11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート、およびチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)、および酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。
【0018】
本発明に用いるポリエステル樹脂(A)は、低温定着性と耐オフセット性を両立させる点から、非線形ポリエステル樹脂(A1)と、必要により線形ポリエステル樹脂(A2)とで構成される。
【0019】
本発明に用いる非線形ポリエステル樹脂(A1)は、通常前記のジカルボン酸(y1)およびジオール(x1)と共に、3価以上のモノマー、すなわち前記の3〜6価もしくはそれ以上のポリカルボン酸(y2)および/または3価〜8価もしくはそれ以上のポリオール(x2)を反応させて得られる。ポリオール成分とポリカルボン酸成分との反応比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/2、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.3、とくに好ましくは1.3/1〜1/1.2である。
【0020】
(A1)を得る場合の(y2)と(x2)の比率は、これらのモル数の和が、全ポリオール成分(x)とポリカルボン酸成分(y)のモル数の合計に対して、好ましくは0.1〜40モル%、さらに好ましくは1〜25モル%、とくに好ましくは3〜20モル%である。
【0021】
(A1)のガラス転移温度〔Tg〕は、好ましくは45℃〜75℃であり、さらに好ましくは50℃〜70℃である。〔Tg〕が75℃以下であると低温定着性が向上する。また〔Tg〕が45℃以上であると耐ブロッキング性が良好である。
【0022】
また、上記および以下において、ガラス転移温度〔Tg〕はセイコー電子工業(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
【0023】
(A1)のフロー軟化点〔Tm〕は、とくに制限されないが、好ましくは100℃〜180℃であり、さらに好ましくは120℃〜170℃である。〔Tm〕が、100℃以上であると耐ホットオフセット性が良好であり、また、180℃以下であると定着性が良好である。
【0024】
なお、上記および以下において、フロー軟化点〔Tm〕は、フローテスターを用いて、下記条件で等速昇温し、その流出量が1/2になる温度のことである。
装置 : 島津(株)製 フローテスター CFT−500D
荷重 : 20kg
ダイ : 1mmΦ−1mm
昇温速度 : 6℃/min.
【0025】
非線形ポリエステル樹脂(A1)のテトラヒドロフラン(THF)可溶分の数平均分子量(以下Mnと記載)は、好ましくは2000〜9500であり、さらに好ましくは2500〜9000である。Mnが2000以上であると定着に必要な樹脂強度が発現し、9500以下であると低温定着性、および樹脂の粉砕性が良好である。
また、(A1)のTHF可溶分のピークトップ分子量(以下Mpと記載)は、樹脂強度と、低温定着性、および樹脂の粉砕性のバランスの観点から、好ましくは2000〜50000、さらに好ましくは2500〜30000である。
【0026】
なお、上記および以下においてトナー用樹脂のTHF可溶分のMpは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定される。
装置(一例) : 東ソー(株)製 HLC−8120
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
得られたクロマトグラム上最大のピーク高さを示す分子量をピークトップ分子量(Mp)と称する。
上記および以下において、%はとくに断りの無い限り重量%を意味する。
【0027】
非線形ポリエステル樹脂(A1)中のTHF不溶解分は、画像の光沢性の観点と無機フィラー(F)の分散性の観点から、3〜50%が好ましい。さらに好ましくは5〜40%、とくに好ましくは10〜35%である。THF不溶解分が50%以下であると、画像の光沢度(グロス)、無機フィラー(F)の分散状態が良好である。
本発明におけるTHF不溶解分は、以下の方法で求めたものである。
試料0.5gに50mlのTHFを加え、3時間撹拌還流させる。冷却後、グラスフィルターにて不溶解分をろ別し、グラスフィルター上の樹脂分を80℃で3時間減圧乾燥する。グラスフィルター上の乾燥した樹脂分の重量と試料の重量比から、不溶解分を算出する。なお、このろ液をTHF可溶分としてGPC測定に使用する。
【0028】
非線形ポリエステル樹脂(A1)の酸価は、好ましくは10〜70(mgKOH/g、以下同じ)、さらに好ましくは13〜60、とくに好ましくは15〜50である。酸価が70以下であると帯電特性が良好である。
また、(A1)の水酸基価(mgKOH/g、以下同じ)は、好ましくは0〜50、さらに好ましくは0〜45、とくに好ましくは、0〜40である。水酸基価が50以下であると耐ホットオフセット性がより良好となる。
本発明における酸価および水酸基価は、JIS K0070に規定の方法で測定される。
【0029】
本発明のトナーバインダー中に用いるポリエステル樹脂(A)は、非線形ポリエステル樹脂(A1)に加えて、線形ポリエステル樹脂(A2)を含有してもよい。(A2)を含有すると、低温定着性がより良好となる。
【0030】
本発明に必要により用いる線形ポリエステル樹脂(A2)は、例えば、前記ジオール(x1)とジカルボン酸(y1)を重縮合させることにより得られるが、さらに、分子末端を前記ポリカルボン酸成分(y)(3価以上のものでもよい)の無水物等で変性してもよい。これらの中では、分子末端を(y)の無水物で変性したものが好ましい。ポリオール成分とポリカルボン酸成分との反応比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは3/1〜1/3、さらに好ましくは2.5/1〜1/2.5、とくに好ましくは2/1〜1/2である。
【0031】
(A2)のガラス転移温度〔Tg〕は、好ましくは45℃〜75℃であり、さらに好ましくは50℃〜70℃である。〔Tg〕が75℃以下であると低温定着性が向上する。また〔Tg〕が45℃以上であると耐ブロッキング性が良好である。
【0032】
(A2)のフロー軟化点〔Tm〕は、とくに制限されないが、好ましくは70℃〜120℃であり、さらに好ましくは75℃〜110℃である。〔Tm〕が、70℃以上であると耐ホットオフセット性が良好であり、また、120℃以下であると定着性が良好である。
【0033】
線形ポリエステル樹脂(A2)のTHF可溶分のMnは、好ましくは1000〜4000であり、さらに好ましくは1100〜3000である。Mnが1000以上であると定着に必要な樹脂強度が発現し、4000以下であると低温定着性が良好である。
また、(A2)のTHF可溶分のMpは、樹脂強度と、低温定着性、および樹脂の粉砕性のバランスの観点から、好ましくは1600〜8000、さらに好ましくは1700〜7000である。
【0034】
線形ポリエステル樹脂(A2)中のTHF不溶解分は、低温定着性の点から、5%以下が好ましい。さらに好ましくは4%以下、とくに好ましくは3%以下である。
【0035】
線形ポリエステル樹脂(A2)の酸価は、5〜100であるのが好ましい。酸価は、さらに好ましくは10〜80、とくに好ましくは25〜60である。酸価が5以上であると低温定着性がより良好であり、100以下であると帯電特性が良好である。
【0036】
また、(A2)の水酸基価は、好ましくは5〜125、さらに好ましくは10〜100である。水酸基価が5以上であると(A1)との相溶性が良好であり、定着後の光沢度(グロス)が良好である。また、水酸基価が125以下であると保存性がより良好となる。
【0037】
非線形ポリエステル樹脂(A1)および/または線形ポリエステル樹脂(A2)は、保存性と帯電性の観点から、非結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
本発明において、「非結晶性ポリエステル樹脂」とは、25℃以上の融点〔Tmp〕を有さないポリエステルのことをいう。Tmpは以下の方法で測定される。
<融点〔Tmp〕>
示差走査熱量計{たとえば、セイコー電子工業社製、DSC210}を用いて、測定試料を200℃まで昇温してから、降温速度10℃/分で0℃まで冷却した後、昇温速度10℃/分で昇温して吸発熱変化を測定して、「吸発熱量」と「温度」とのグラフを描き、吸熱量の最大ピークに対応する温度を融点〔Tmp〕とする。
【0038】
ポリエステル樹脂(A)中の非線形ポリエステル樹脂(A1)と線形ポリエステル樹脂(A2)の重量比〔(A1)/(A2)〕は、低温定着性と耐ホットオフセット性および粉砕性との両立の点で、好ましくは100/0〜20/80、さらに好ましくは90/10〜25/75、とくに好ましくは85/15〜30/70である。
【0039】
本発明において、ポリエステル樹脂(A1)と(A2)の混合方法は特に限定されず、通常行われる公知の方法でよく、粉体混合、溶融混合のいずれでもよい。また、トナー化時に混合してもよい。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置、および連続式混合装置が挙げられる。適正な温度にて短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続混合装置としては、エクストルーダー、コンティニアスニーダー、3本ロール等が挙げられる。
粉体混合する場合の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、およびバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
【0040】
ポリエステル樹脂組成物(H)中に含有される無機フィラー(F)としては、特に限定されないが、金属の酸化物、炭化物、および窒化物等を例示でき、2種以上を併用してもよい。これらの中で、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、または酸化マグネシウムであることが好ましい。
また、無機フィラー(F)の形状としては、特に限定されないが、例えば粉状、繊維状、鱗片状等などがあげられ、好ましくは繊維状のものである。長軸と短軸の平均値としての計算される平均粒径として、好ましくは0.001〜1.5μm、さらに好ましくは0.01〜0.5μmである。0.001μm未満であるとトナーに用いたときの低温定着性に悪影響があり、1.5μmを越えると、耐ホットオフセット性に対する優れた効果が現れにくい。
【0041】
本発明において、無機フィラー(F)の平均粒径は、平均短径及び平均長径の平均値によって計算される。平均短径及び平均長径は、たとえば透過型電子顕微鏡により、直接粒子を観察することにより測定する。無差別に50個の粒子をサンプリングして、短径及び長径を個々にカウントし、その平均値を平均短径及び平均長径とする。
【0042】
無機フィラー(F)は、低温定着性の観点から、ポリエステル樹脂(A)より熱伝導率が高いものが選ばれ、(F)と(A)の20℃における熱伝導率の差は、25〜350W/m・Kであり、好ましくは、30〜300W/m・Kである。(F)と(A)の熱伝導率の差が25W/m・K未満では低温定着性能への寄与が乏しく、350W/m・Kを越えると、保存性に悪影響を及ぼす。
また、無機フィラー(F)の熱伝導性が高いものであっても、体積固有抵抗が低いと、トナーの帯電挙動に悪影響を及ぼし、画像濃度の低下を招くことがあるため、20℃におけるJIS C2141による体積固有抵抗は1012〜1018Ω/cmであることが好ましく、さらに好ましくは1013〜1017Ω/cmである。
ポリエステル樹脂組成物(H)中の無機フィラー(F)の含有量は、0.5〜20%が好ましく、さらに好ましくは1〜18%である。含有量が0.5%以上では、熱伝導性の向上の効果が十分現れ、低温定着性が向上し、20%以下では、無機フィラー(F)による増粘が小さく低温定着性に悪影響しない。
【0043】
ポリエステル樹脂組成物(H)を調製する際の、ポリエステル樹脂(A)中への無機フィラー(F)の分散方法としては、通常行われる公知の方法でよくたとえば溶融混合などが挙げられる。装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置、および連続式混合装置が挙げられる。適正な温度にて短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続混合装置としては、エクストルーダー、コンティニアスニーダー、3本ロール等が挙げられる。
【0044】
ポリエステル樹脂組成物(H)の20℃における熱伝導率は、低温定着性と保存性の両立の観点から、0.17〜0.3W/m・Kが好ましく、さらに好ましくは0.19〜0.26W/m・Kである。
【0045】
本発明において、無機フィラー(F)の熱伝導率の値は、市販の熱伝導率測定器で測定したものを用い(アルバック社製TC7000)、レーザーフラッシュ法によって測定する。
サンプルは、直径10mm×厚さ2mmの円盤状の試験片を用い、20℃に温調された条件にて測定を行う。
また、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂組成物(H)の熱伝導率は、JIS A1412−2の熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法−第2部:熱流統計法(HFM法)による。
【0046】
本発明のトナーバインダーは、ポリエステル樹脂組成物(H)〔ポリエステル樹脂(A)および無機フィラー(F)〕以外に、その特性を損なわない範囲で、トナーバインダーとして通常用いられる他の樹脂を含有してもよい。他の樹脂としては、例えば、Mnが1000〜100万のスチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂にビニル樹脂がグラフトした構造を有する樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂が挙げられる。他の樹脂は、ポリエステル樹脂(A)〔非線形ポリエステル樹脂(A1)および必要により線形ポリエステル樹脂(A2)〕とブレンドしてもよいし、一部反応させてもよい。トナーバインダー中の他の樹脂の含有量は、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0047】
本発明のトナーは、本発明のトナーバインダーと、着色剤、および必要により、離型剤、荷電制御剤、流動化剤等から選ばれる1種以上の添加剤を含有する。
【0048】
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンBおよびオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100部に対して、好ましくは1〜40部、さらに好ましくは3〜10部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150部、さらに好ましくは40〜120部である。上記および以下において、部は重量部を意味する。
【0049】
離型剤としては、フロー軟化点〔Tm〕が50〜170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、天然ワックス、炭素数30〜50の脂肪族アルコール、炭素数30〜50の脂肪酸およびこれらの混合物等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセンおよびこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるものおよび熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素および/またはオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸およびその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸および無水マレイン酸等]および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステルおよびマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体、およびサゾールワックス等が挙げられる。
【0050】
天然ワックスとしては、例えばカルナウバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックスおよびライスワックスが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪族アルコールとしては、例えばトリアコンタノールが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪酸としては、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
【0051】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
【0052】
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末等が挙げられる。
【0053】
本発明のトナーの組成比は、トナー重量に基づき、本発明のトナーバインダーが、好ましくは30〜97%、さらに好ましくは40〜95%、とくに好ましくは45〜92%;着色剤が、好ましくは0.05〜60%、さらに好ましくは0.1〜55%、とくに好ましくは0.5〜50%;添加剤のうち、離型剤が、好ましくは0〜30%、さらに好ましくは0.5〜20%、とくに好ましくは1〜10%;荷電制御剤が、好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0.1〜10%、とくに好ましくは0.5〜7.5%;流動化剤が、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0〜5%、とくに好ましくは0.1〜4%である。また、添加剤の合計含有量は、好ましくは3〜70%、さらに好ましくは4〜58%、とくに好ましくは5〜50%である。トナーの組成比が上記の範囲であることで帯電性が良好なものを容易に得ることができる。
【0054】
本発明のトナーは、混練粉砕法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒化して、さらに分級することにより、体積平均粒径(D50)が好ましくは5〜20μmの微粒とした後、流動化剤を混合して製造することができる。なお、粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定される。
また、乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解または分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
【0055】
本発明のトナーは、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト、および樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリアー粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。トナーとキャリアー粒子との重量比は、通常1/99〜100/0である。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
【0056】
本発明のトナーは、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法、フラッシュ定着方法等が適用できる
【実施例】
【0057】
以下実施例、比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
製造例1
[ポリエステル樹脂(A1−1)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽(以下の製造例で用いる反応槽も同様)中に、テレフタル酸360部、ビスフェノールA・プロピレンオキサイド3モル付加物570部、フェノールノボラックのオキシアルキレンエーテル(AO単位の数8)を50部および縮合触媒としてテトラブトキシチタネート5部を入れ、230℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで5〜20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が1以下になった時点で、180℃まで冷却を行った。次いで、無水トリメリット酸65部を加え、常圧下で1時間反応させた後、20〜40mmHgの減圧下で反応させ、Tmが140℃になる粘度で取り出した。回収された結合水は50部であった。取り出した樹脂は室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A1−1)とする。
ポリエステル樹脂(A1−1)は非結晶性であり、Tgは60℃、Tmは140℃、Mpは8000、酸価は28、水酸基価は7、THF不溶解分は20%であった。
【0059】
製造例2
[ポリエステル樹脂(A1−2)の合成]
反応槽中に、テレフタル酸381部、イソフタル酸381部、エチレングリコール448部、重合触媒としてテトラブトキシチタネート2部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら5時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下で反応させ、1000Paになる温度が83℃となるように粘度になった後、180℃まで冷却を行った。次いで、無水トリメリット酸40部を加え、常圧下で1時間反応させた後、20〜40mmHgの減圧下で反応させ所定のTmで取り出した。回収されたエチレングリコールおよび結合水の混合物は252部であった。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A1−2)とする。
ポリエステル樹脂(A1−2)は非結晶性であり、Tgは60℃、Tmは150℃、Mpは12600、酸価は17、水酸基価は8、THF不溶解分は5%であった。
【0060】
製造例3
[ポリエステル樹脂(A2−1)の合成]
反応槽中に、テレフタル酸482部、イソフタル酸321部、エチレングリコール600部、重合触媒としてテトラブトキシチタネート2部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、20〜40mmHgの減圧下で反応させ所定の粘度で常圧とし、200℃に冷却後、無水トリメリット酸53部を加え、常圧下で1時間反応させた後取り出した。回収されたエチレングリコールおよび結合水は458部であった。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A2−1)とする。
ポリエステル樹脂(A2−1)は非結晶性であり、Tgは62℃、Mpは6300、酸価は31、水酸基価は20であった。
【0061】
製造例4
[無機フィラー(F−2)の調製]
イオン交換水790部にドデシル硫酸ナトリウムを10部加え、均一化したのち、窒化ホウ素(六方晶)微粒子[水島合金株式会社製、HP−40、直径7.0μm、熱伝導率60W/m・K、体積固有抵抗1014]を加え均一化した。この分散液をダイノミル[シンマルエンタープライゼス社製]で2.5時間分散することにより無機粒子水分散液を得た。動的光散乱粒径測定法[測定器は大塚電子社製:DLS−7000、試料は無機粒子水分散液をイオン交換水で400倍に希釈して調製した。]によって測定した無機粒子の平均粒径は0.4μmであった。この無機粒子水分散液をフィルムエバポレータで温度40℃にて脱水した後、乾燥機中にて40℃で1時間乾燥し、無機フィラー(F−2)を得た。
【0062】
製造例5
[無機フィラー(F−3)の調製]
イオン交換水790部にドデシル硫酸ナトリウムを10部加え、均一化したのち、窒化アルミニウム微粒子(徳山曹達社製、直径1.9μm、熱伝導率200W/m・K、体積固有抵抗1014)を加え均一化した。この分散液をダイノミル[シンマルエンタープライゼス社製]で15時間分散することにより無機粒子水分散液を得た。動的光散乱粒径測定法[測定器は大塚電子社製:DLS−7000、試料は無機粒子水分散液をイオン交換水で400倍に希釈して調製した。]によって測定した無機粒子の平均粒径は0.5μmであった。この無機粒子水分散液をフィルムエバポレータで温度40℃にて脱水した後、乾燥機中にて40℃で1時間乾燥し、無機フィラー(F−3)を得た。
【0063】
製造例6
[無機フィラー(F−4)の調製]
20%アンモニア水96部及びエタノール1600部の溶液に、ポリビニルピロリドン(PVP)10部を加え、平均短径が20nm、平均長径が0.8μm、アスペクト比が40のPVP繊維を形成し、これを20%アンモニア水96部及びエタノール1600部の溶液に加え、スターラーを用いて分散した。この分散液に、アルミニウムイソプロポキシド20部をイソプロパノール200部に溶解したものを24時間で滴下し、滴下終了後24時間静置した。次いで、分散液を濾過した後、60℃にて10時間乾燥させてセルロース繊維表面に熱伝導層を形成した複合熱伝導性フィラー(FA−4)を得た。複合熱伝導性フィラー(FA−4)の平均短径は23nm、平均長径が0.8μm、アスペクト比が35、熱伝導層平均厚みが3nm、密度が1.6g/cm3であった。この複合熱伝導性フィラー(FA−4)を、プロパンガス5容積%含有するアンモニアガス雰囲気中で、1400℃で1時間加熱することによりチッ化アルミニウム繊維(熱伝導率200W/m・K、体積固有抵抗1014)中空体である中空状の無機フィラー(F−4)を得た。(F−4)の平均短径は23nm、平均長径は0.8μm、平均粒径は0.4μmであった。
【0064】
無機フィラー(F)としては、製造例4〜6で作成したものに加え、以下のものを使用した。
[無機フィラー(F−1)]
酸化アルミニウム粒子[日本軽金属株式会社製、A32、平均粒径0.5μm、熱伝導率42W/m・K、体積固有抵抗1017]を無機フィラー(F−1)とした。
[無機フィラー(F−5)]
窒化ケイ素粒子[宇部興産株式会社製、平均粒径0.6μm、熱伝導率45W/m・K、体積固有抵抗1013]を無機フィラー(F−5)とした。
[無機フィラー(RF−1)]
窒化アルミニウム粒子[徳山曹達社製、平均粒径1.9μm、熱伝導率200W/m・K、体積固有抵抗1014]を無機フィラー(RF−1)とした。
[無機フィラー(RF−2)]
銅粒子[住友金属鉱山株式会社製、平均粒径0.4μm、熱伝導率375W/m・K、体積固有抵抗10−6]を無機フィラー(RF−2)とした。
[無機フィラー(RF−3)]
シリカ粒子[アモルファス型、日本触媒製、平均粒径0.5μm、熱伝導率1W/m・K、体積固有抵抗1014]を無機フィラー(RF−3)とした。
【0065】
実施例1〜8、比較例1〜4
上記製造例で得られたポリエステル樹脂(A1−1)、(A1−2)、(A2−1)、無機フィラー(F−1)〜(F−5)、(RF−1)〜(RF−3)、有彩色顔料(銅フタロシアニン顔料)「ECB−301」[大日精化社製]、カルナバワックス、および荷電制御剤「T−77」[保土谷化学製]を表1の配合比(部)で用いて、以下の方法でポリエステル樹脂組成物(H)からなる本発明のトナーバインダー(P−1)〜(P−8)、および比較のトナーバインダー(RP−1)〜(RP−4)を作成すると共に、トナー化した。
まず、ヘンシェルミキサー[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で140℃にて混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS−I]で分級し、平均粒径D50が8μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部にコロイダルシリカ(アエロジルR972:日本アエロジル製)0.5部をサンプルミルにて混合して、本発明のトナー(T−1)〜(T−8)、および比較用のトナー(RT−1)〜(RT−4)を得た。
【0066】
上記トナー(T−1)〜(T−8)、および比較用のトナー(RT−1)〜(RT−4)のそれぞれを用いて、下記の方法で評価した結果を表1に示す。
【0067】
〔1〕最低定着温度(MFT)
市販複写機(AR5030;シャープ製)を用いて現像した未定着画像を、市販複写機(AR5030;シャープ製)の定着機を用いて評価した。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる下限温度を最低定着温度とした。
〔2〕ホットオフセット発生温度(HOT)
上記MFTと同様に定着評価し、定着画像へのホットオフセットの有無を目視評価した。定着ロール通過後ホットオフセットが発生しない上限温度をホットオフセット発生温度とした。
〔3〕トナー保存性試験
上記トナーを、50℃・85%R.H.の高温高湿環境下で、48時間調湿した。同環境下において該現像剤のブロッキング状態を目視判定し、さらに市販複写機(AR5030:シャープ製)でコピーした時の画質を観察した。
判定基準
◎:トナーのブロッキングがなく、3000枚複写後の画質も良好。
○:トナーのブロッキングはないが、3000枚複写後の画質に僅かに乱れが観察さ
れる。
×:トナーのブロッキングが目視でき、3000枚までに画像が出なくなる
〔4〕熱伝導率
前記の方法による。
〔5〕画像濃度
市販モノクロ複写機(AR5030、シャープ(株)製)を用いて現像した未定着のべた画像を、市販モノクロ複写機(SF8400A、シャープ(株)製)の定着ユニットを改造し、熱ローラー温度を可変、プロセススピードを可変にした定着機で、熱ローラー温度180℃、プロセススピード213mm/secで定着した。定着画像の画像濃度をマクベス反射濃度計RD−191(マクベス社製)を用いて測定した。
○:ID1.4以上
△:ID1.3以上1.4未満
×:ID1.3未満
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のトナーおよびトナーバインダーは、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立(定着温度幅)、保存安定性(耐ブロッキング性)に優れる、電子写真、静電記録、静電印刷等に用いる静電荷像現像用トナーおよびトナーバインダーとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単位中に3価以上のモノマーを含有する非線形ポリエステル樹脂(A1)と必要により線形ポリエステル樹脂(A2)とで構成されるポリエステル樹脂(A)と、平均粒径が0.001〜1.5μmの無機フィラー(F)を含有し、ポリエステル樹脂(A)と無機フィラー(F)の20℃における熱伝導率の差が25〜350W/m・Kであり、ポリエステル樹脂(A)中に無機フィラー(F)が分散されてなるポリエステル樹脂組成物(H)を含有するトナーバインダー。
【請求項2】
ポリエステル樹脂組成物(H)中の無機フィラー(F)の含有量が0.5〜20重量%である請求項1に記載のトナーバインダー。
【請求項3】
無機フィラー(F)の20℃における体積固有抵抗が1×1012〜1×1018である請求項1または2に記載のトナーバインダー
【請求項4】
ポリエステル樹脂組成物(H)の20℃における熱伝導率が0.17〜0.3W/m・Kである請求項1〜3のいずれかに記載のトナーバインダー。
【請求項5】
無機フィラー(F)が、金属の酸化物、炭化物、および窒化物から選ばれる1種以上である請求項1〜4のいずれかに記載のトナーバインダー。
【請求項6】
非線形ポリエステル樹脂(A1)および/または線形ポリエステル樹脂(A2)が非結晶性ポリエステル樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載のトナーバインダー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のトナーバインダーと着色剤、並びに必要により離型剤、荷電制御剤、および流動化剤から選ばれる1種類以上の添加剤を含有するトナー。