説明

トナー及びその製造方法、並びに現像剤、トナー入り容器、プロセスカートリッジ、画像形成方法及び画像形成装置

【課題】低温定着システムに対応し、耐オフセット性が良好で、定着装置及び画像を汚染することがなく、狭粒度分布かつ小粒径であり、帯電量分布がシャープで、鮮鋭性の良好な可視画像を長期にわたり形成することができるトナー及びその製造方法、並びに現像剤、トナー入り容器、プロセスカートリッジ、画像形成方法及び画像形成装置の提供。
【解決手段】トナー材料の溶解乃至分散液を、樹脂微粒子を含む水系媒体中に乳化乃至分散させて、造粒してなり、前記トナー材料及び前記水系媒体の少なくともいずれかが、前記樹脂微粒子と相溶性を有する質量平均分子量が2,000以上のポリアルキレングリコールエステル化合物を含有するトナーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電潜像を顕像化するためのトナー及び該トナーの製造方法、並びに該トナーを用いた現像剤、トナー入り容器、プロセスカートリッジ、画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真装置や静電記録装置等において、電気的又は磁気的潜像は、トナーによって顕像化されている。例えば、電子写真法では、感光体上に静電荷像(潜像)を形成し、次いで、該潜像をトナーを用いて現像して、トナー画像を形成している。トナー画像は、通常、紙等の記録媒体上に転写され、次いで、加熱等の方法で定着されている。静電荷像現像に使用されるトナーは、一般に、結着樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、その他の添加剤を含有させた着色粒子であり、その製造方法には、大別して粉砕法と懸濁重合法とがある。
【0003】
前記粉砕法では、熱可塑性樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、オフセット防止剤などを溶融混合して均一に分散させ、得られた組成物を粉砕、分級することによりトナーを製造している。粉砕法によれば、ある程度優れた特性を有するトナーを製造することができるが、トナー用材料の選択に制限がある。例えば、溶融混合により得られる組成物は、経済的に使用可能な装置により粉砕し、分級できるものでなければならない。この要請から、溶融混合した組成物は、充分に脆くせざるを得ない。このため、実際に上記組成物を粉砕して粒子にする際に、高範囲の粒径分布が形成され易く、良好な解像度と階調性のある複写画像を得ようとすると、例えば、粒径5μm以下の微粉と20μm以上の粗粉を分級により除去しなければならず、トナー収率が非常に低くなるという欠点がある。また、前記粉砕法では、着色剤や帯電制御剤などを熱可塑性樹脂中に均一に分散することが困難である。配合剤の不均一な分散は、トナーの流動性、現像性、耐久性、画像品質などに悪影響を及ぼす。
【0004】
近年、これらの粉砕法における問題点を克服するため、懸濁重合法によるトナーの製造方法が提案され、実施されている。静電潜像現像用のトナーを重合法によって製造する技術は公知であり、例えば懸濁重合法によってトナー粒子を得ることが行われている。しかし、懸濁重合法で得られるトナー粒子は球形であり、クリーニング性に劣るという欠点がある。画像面積率の低い現像及び転写では転写残トナーが少なく、クリーニング不良が問題となることはないが、写真画像など画像面積率の高いもの、更には、給紙不良等で未転写の画像形成したトナーが感光体上に転写残トナーとして発生することがあり、蓄積すると画像の地汚れを発生してしまう。
また、感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまう。このため、乳化重合法により得られる樹脂微粒子を会合させて不定形のトナー粒子を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、乳化重合法で得られるトナー粒子は、水洗浄工程を経ても、界面活性剤が、表面だけでなく、粒子内部にも多量に残存し、トナーの帯電の環境安定性を損ない、かつ帯電量分布を広げ、得られた画像の地汚れが不良となる。また、残存する界面活性剤により、感光体や帯電ローラ、現像ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまう。
【0005】
また、電子写真法における定着方式としては、熱効率に優れかつダウンサイジングの点から加熱ローラを直接記録媒体上のトナー像に圧接することにより定着する方法、即ち熱ローラ定着方式がそのエネルギー効率の良さから広く用いられている。省エネルギーという環境への配慮から、定着に用いる熱ローラの消費電力の削減が望まれている。
【0006】
前記問題を解決する方法として、定着装置の改良が進み、熱エネルギー効率を更に高めるために、トナー像支持面と接触する側のローラの厚みを薄くすることによって熱エネルギー効率を高められ、立ち上げ時間の大幅な短縮が可能となった。しかし、比熱容量が小さくなったため、記録媒体が通った部分と通らなかった部分の温度差が大きくなり、定着ローラへの溶融トナーの付着が発生し、この定着ローラが1周したのち、記録媒体上の非画像部に定着する、いわゆるホットオフセット現象が発生するため、耐ホットオフセットに対するトナーへの要求はますます厳しくなっている。
【0007】
また、近年、省エネルギー化のための低温定着や高速複写のように、定着時にトナーに与えられる熱エネルギーは小さくなる傾向にある。このような低温定着に使用されるトナーは、一般に低軟化点の樹脂やワックスを用いることにより、低温定着性を改良することが試みられている。しかし、このような低温定着トナーは、熱的に弱いため使用している機械の熱や保存時の熱により固まる、いわゆるブロッキングを起すことが知られている。また、充分な定着温度範囲を確保することも難しく、低温定着性がよい割に比較的熱保存性がよいといわれているポリエステル樹脂を使用しても、未だ前記課題を解決するトナーは得られていない。
【0008】
このような相反する性能を満足させるため、トナーを多層構造とし、粒子の内側と外側とで異なる組成の樹脂を用いた形のトナーの製造方法が提案されている。この製造方法は、粒子の内側にガラス転移温度が低い樹脂を用いることにより、低温定着性を促進させる一方で、粒子の表面には、粒子の内側よりも、ガラス転移温度が高い樹脂を用いることにより、必要な耐熱保存性を確保しながら、定着性に優れたトナーを提供するものである。
【0009】
多層構造を有するトナーの製造方法として、例えば、in situ重合法、界面重合法、コアセルベーション法、スプレー・ドライ法、転相乳化法による製造方法などが提案されている。また、転相乳化法によるトナーの製造方法において、耐熱保存性を向上させるために、高いガラス転移温度を持つ微粒子をトナー表面に固着させた多層構造を有するトナーの製造方法が提案されている(特許文献2参照)。この技術により、多層構造トナーにおける耐熱保存性を向上させることができるが、これらの製造方法であっても、必ずしも定着温度幅が十分に満足したトナーが得られなかった。特に、定着開始温度を低く保ちながら耐オフセット性を確保することができなかった。
【0010】
また、トナーを多層構造とする提案の中で、粒子の内側と外側とで異なる分子量の樹脂を用いた形のトナーの製造方法が提案されている(特許文献3参照)。この製造方法では、粒子の内側に分子量の低い樹脂を用い、粒子の表面に該粒子の内側よりも分子量が高い樹脂を用いることにより、耐久性に優れたトナーを提供するものである。しかし、このトナーでは、耐久性は伸びるものの、表面層を均一な高分子量体が覆うため、定着温度幅が十分に満足したトナーが得られなかった。特に、定着開始温度を低くすることと、耐オフセット性を両立することができなかった。
【0011】
また、有機溶媒中に活性水素と反応可能な変性ポリエステル系樹脂からなるトナーバインダーを含むトナー組成分を溶解又は分散させて形成した溶解又は分散物を、水性分散体を形成し得る樹脂微粒子を含む水系媒体中で架橋乃至伸長剤と反応させ、得られた分散液から溶媒を除去し、かつトナー表面に付着した該樹脂微粒子を洗浄し、脱離して得られ、熱分解ガスクロマトグラフ(質量分析)計によって測定される該トナー粒子表面上に残留する該樹脂微粒子のトナー粒子に対する残存率が、トナー粒子に対して2.5質量%以下である静電荷像現像用トナーが提案されている(特許文献4参照)。
【0012】
このような低温定着性に優れたポリエステル樹脂で作製したトナーの表面を樹脂微粒子で被覆することにより、優れた低温定着性及び耐熱保存性を有し、また造粒時に樹脂微粒子が分散安定剤として作用するため、狭粒度分布を持つ粒子が得られるため、優れた画像品質が得られるトナーを得ることができる。しかし、このトナーも高分子量体の樹脂微粒子がトナー表層に付着することで、本来ポリエステル樹脂が持つ低温定着性を充分に発揮することができず、また、樹脂微粒子の量を低下させると、トナーの粒度分布が悪化してしまうという問題がある。
【0013】
【特許文献1】特許2537503号公報
【特許文献2】特開2001−022117号公報
【特許文献3】特許第2794770号公報
【特許文献4】特許第3640918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、低温定着システムに対応し、耐オフセット性が良好で、定着装置及び画像を汚染することがなく、狭粒度分布かつ小粒径であり、帯電量分布がシャープで、鮮鋭性の良好な可視画像を長期にわたり形成することができるトナー及び該トナーの製造方法、並びに該トナーを用いた現像剤、トナー入り容器、プロセスカートリッジ、画像形成方法及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、トナー材料の溶解乃至分散液を、樹脂微粒子を含む水系媒体中に乳化乃至分散させて、造粒してなり、前記トナー材料及び前記水系媒体の少なくともいずれかが、前記樹脂微粒子と相溶性を有する質量平均分子量が2,000以上のポリアルキレングリコールエステル化合物を含有しており、前記樹脂微粒子をポリアルキレングリコールエステルエステル化合物が膨潤させることによって、トナー表面に前記樹脂微粒子が付着した際にも、定着特性に対する悪影響を低減できることを知見した。また同時に、前記樹脂微粒子が分散安定剤として充分な作用を果たすことができるため、小粒径かつ狭粒度分布を持つ粒子を得ることができるため、鮮鋭性の良好な画像を長期間に亘って形成可能なトナーが得られることを知見した。
【0016】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> トナー材料の溶解乃至分散液を、樹脂微粒子を含む水系媒体中に乳化乃至分散させて、造粒してなり、
前記トナー材料及び前記水系媒体の少なくともいずれかが、前記樹脂微粒子と相溶性を有する質量平均分子量が2,000以上のポリアルキレングリコールエステル化合物を含有することを特徴とするトナーである。
<2> 水系媒体中に、樹脂微粒子と相溶性を有する質量平均分子量が2,000以上のポリアルキレングリコールエステル化合物を含有する前記<1>に記載のトナーの製造方法である。
<3> トナー材料の溶解乃至分散液が有機溶剤を含み、造粒時乃至造粒後に前記有機溶剤を除去する前記<1>から<2>のいずれかに記載のトナーである。
<4> トナー材料が、活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を含み、
造粒が、前記水系媒体中で、前記活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを反応させて接着性基材を生成しつつ該接着性基材による粒子を得ることにより行われる前記<1>から<3>のいずれかに記載のトナーである。
<5> ポリアルキレングリコールエステル化合物が、下記一般式(1)で表されるカルボン酸と、下記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコールとのエステル化物である前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナーである。
<一般式(1)>
R−COOH
ただし、前記一般式(1)中、Rは、炭素数10以上のアルキル基を表す。
<一般式(2)>
HO−〔(CH−O〕−OH
ただし、前記一般式(2)中、n及びmは、それぞれ2以上の整数を表す。
<6> ポリアルキレングリコールエステル化合物の添加量が、トナー組成物全質量に対し5質量%以上である前記<1>から<5>のいずれかに記載のトナーである。
<7> ポリアルキレングリコールエステル化合物の融点が、40℃以上である前記<1>から<6>のいずれかに記載のトナーである。
<8> 樹脂微粒子の体積平均粒径が5〜500nmである前記<1>から<7>のいずれかに記載のトナーである。
<9> 樹脂微粒子のトナーにおける含有量が、0.5質量%以上である前記<1>から<8>のいずれかに記載のトナーである。
<10> トナー材料がワックス類を含み、該ワックス類が、融点が50℃以上の炭化水素系ワックスを含有する前記<1>から<9>のいずれかに記載のトナーである。
<11> トナーのガラス転移温度(Tg)が50〜80℃である前記<1>から<10>のいずれかに記載のトナーである。
<12> 体積平均粒径(Dv)が3〜8μmであり、かつ該体積平均粒径(Dv)と数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が1.00〜1.25である前記<1>から<11>のいずれかに記載のトナーである。
<13> トナー材料を溶解乃至分散させた溶解乃至分散液を、樹脂微粒子を含む水系媒体中に乳化乃至分散させて、造粒し、
前記トナー材料及び前記水系媒体の少なくともいずれかが、前記樹脂微粒子と相溶性を有する質量平均分子量が2,000以上のポリアルキレングリコールエステル化合物を含有することを特徴とするトナーの製造方法である。
<14> トナー材料の溶解乃至分散液が有機溶剤を含み、造粒時乃至造粒後に前記有機溶剤を除去する前記<13>に記載のトナーの製造方法である。
<15> トナー材料が、活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を含み、
造粒が、前記水系媒体中で、前記活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを反応させて接着性基材を生成しつつ該接着性基材による粒子を得ることにより行われる前記<13>から<14>のいずれかに記載のトナーの製造方法である。
<16> 前記<1>から<12>のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤である。
<17> 前記<1>から<12>のいずれかに記載のトナーが容器に収容されていることを特徴とするトナー入り容器である。
<18> 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に前記<1>から<12>のいずれかに記載のトナーで静電潜像を現像して可視像を形成する現像手段を少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
<19> 静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を前記<1>から<12>のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含むことを特徴とする画像形成方法である。
<20> 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を前記<1>から<12>のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有することを特徴とする画像形成装置である。
【0017】
本発明のトナーは、トナー材料の溶解乃至分散液を、樹脂微粒子を含む水系媒体中に乳化乃至分散させて、造粒してなり、
前記トナー材料及び前記水系媒体の少なくともいずれかが、前記樹脂微粒子と相溶性を有する質量平均分子量が2,000以上のポリアルキレングリコールエステル化合物を含有する。
本発明のトナーにおいては、前記樹脂微粒子をポリアルキレングリコールエステル化合物が膨潤させることで、トナー表面に前記樹脂微粒子が付着した際にも、樹脂微粒子による定着特性、特に定着下限に対しての悪影響を低減できる。また同時に樹脂微粒子が分散安定剤として充分な作用を果たすことができるため、小粒径、かつ狭粒度分布を持つ粒子を得ることができるため、鮮鋭性の良好な高画質画像を長期に亘って形成可能である。
【0018】
本発明のトナーの製造方法は、トナー材料を溶解乃至分散させた溶解乃至分散液を、樹脂微粒子を含む水系媒体中に乳化乃至分散させて、造粒し、
前記トナー材料及び前記水系媒体の少なくともいずれかが、前記樹脂微粒子と相溶性を有する質量平均分子量が2,000以上のポリアルキレングリコールエステル化合物を含有する。本発明のトナーにおいては、前記樹脂微粒子をポリアルキレングリコールエステル化合物が膨潤させることで、トナー表面に前記樹脂微粒子が付着した際にも、樹脂微粒子による定着特性、特に定着下限に対しての悪影響を低減できる。
【0019】
本発明の現像剤は、本発明の前記トナーを含む。このため、該現像剤を用いて電子写真法により画像形成を行うと、鮮鋭性の良好な高画質画像を長期に亘って形成可能である。
【0020】
本発明のトナー入り容器は、本発明の前記トナーを容器中に収容してなる。このため、該トナー入り容器に収容されたトナーを用いて電子写真法により画像形成を行うと、鮮鋭性の良好な高画質画像を長期に亘って形成可能である。
【0021】
本発明のプロセスカートリッジは、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に形成した静電潜像を本発明の前記トナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有する。該プロセスカートリッジは、画像形成装置に着脱可能であり、利便性に優れ、また、本発明の前記トナーを用いているので、その結果、鮮鋭性の良好な高画質画像を長期に亘って形成可能である。
【0022】
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を本発明の前記トナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含む。該本発明の画像形成方法においては、前記静電潜像形成工程において、静電潜像担持体上に静電潜像が形成される。前記現像工程において、前記静電潜像が本発明の前記トナーを用いて現像され、可視像が形成される。前記転写工程において、前記可視像が記録媒体に転写される。前記定着工程において、前記記録媒体に転写された転写像が定着される。その結果、高画像濃度で高鮮鋭な高品質画像が得られる。
【0023】
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像を本発明の前記トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、該可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する。該画像形成装置においては、前記静電潜像形成手段が、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する。前記現像手段が静電潜像を本発明の前記トナーを用いて現像して可視像を形成する。前記転写手段が、前記可視像を記録媒体に転写される。前記定着手段が、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる。その結果、高画質な電子写真画像が形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(トナー及びトナーの製造方法)
本発明のトナーは、トナー材料の溶解乃至分散液を、樹脂微粒子を含む水系媒体中に乳化乃至分散させて、造粒してなり、
前記トナー材料及び前記水系媒体の少なくともいずれかが、前記樹脂微粒子と相溶性を有する質量平均分子量が2,000以上のポリアルキレングリコールエステル化合物(以下、「PAGエステル」と称することもある)を含有する。
本発明のトナーの製造方法は、トナー材料を溶解乃至分散させた溶解乃至分散液を、樹脂微粒子を含む水系媒体中に乳化乃至分散させて、造粒し、
前記トナー材料及び前記水系媒体の少なくともいずれかが、前記樹脂微粒子と相溶性を有する質量平均分子量が2,000以上のポリアルキレングリコールエステル化合物を含有する。
以下、本発明のトナー及びトナーの製造方法について詳細に説明する。
【0025】
−ポリアルキレングリコールエステル化合物−
前記ポリアルキレングリコールエステル化合物としては、前記樹脂微粒子と相溶性を有し、質量平均分子量が2,000以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)で表される少なくとも1種のカルボン酸と、下記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコールとのエステル化物が好適である。
<一般式(1)>
R−COOH
ただし、前記一般式(1)中、Rは炭素数10以上のアルキル基を表し、炭素数は10〜24が好ましく、16〜24がより好ましい。
前記Rのアルキル基の炭素数が10以上であることで、ポリアルキレングリコールエステル化合物が適切な界面活性を有し、トナー表面に存在する樹脂微粒子に対して作用することができる。
【0026】
前記一般式(1)で表されるカルボン酸としては、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族飽和カルボン酸が好適であり、例えばラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。
【0027】
<一般式(2)>
HO−〔(CH−O〕−OH
ただし、前記一般式(2)中、n及びmは、それぞれ2以上の整数を表す。
前記nは、2以上が好ましく、2又は3がより好ましく、2が更に好ましい。n=2のポリエチレングリコール(PEG)は、界面に存在する樹脂微粒子に対して作用するために適切な極性を有し、他のポリアルキレングリコールに比べて高融点のPAGエステルを得やすい。
前記mは、ポリアルキレングリコールエステル化合物の質量平均分子量に応じて選定され、2以上の整数が好ましく、10以上がより好ましく、30〜100が更に好ましい。
【0028】
前記ポリアルキレングリコールエステル化合物は、質量平均分子量が2,000以上であることが必要であり、3,000以上が好ましく、4,000〜40,000がより好ましい。前記質量平均分子量が2,000以上であると、界面活性剤がトナー表面に作用するのに適切であるため、トナー表面に付着している樹脂微粒子を効果的に膨潤させることができ、充分な低温定着性を発揮させることができる。
ここで、前記質量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)により、測定することができる。
【0029】
前記ポリアルキレングリコールエステル化合物の融点は、40℃以上が好ましく、50〜80℃がより好ましい。前記融点が40℃未満であると、耐熱保存性が劣ることがあり、80℃を超えると、低温定着性が得られないことがある。
ここで、前記ポリアルキレングリコールエステル化合物の融点は、例えばDSCシステム(示差走査熱量計)により測定することができる。
【0030】
前記一般式(1)で表されるカルボン酸と、前記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコールとをエステル化して得られるポリアルキレングリコールエステル化合物は、従来公知の酸触媒或いはアルカリ触媒を用い、溶媒の存在下或いは非存在下で脱水縮合することにより得ることができる。
前記ポリアルキレングリコールエステル化合物の添加量は、トナー組成物全質量に対し5質量%以上が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、7〜15質量%が更に好ましい。前記添加量が5質量%未満であると、ポリエステル樹脂と定着時に相溶するポリアルキレングリコールエステル化合物の量が少量であるため低温定着性に劣ることがあり、20質量%を超えると、トナーの生産性が劣ることがある。
前記トナー組成物全質量とは、トナーの製造工程における固形分の合計量を意味し、トナー材料、樹脂微粒子、ポリアルキレングリコールエステル化合物、及びその他の成分を合計した固形分量を意味する。
【0031】
−樹脂微粒子−
前記樹脂微粒子としては、水系媒体中で水性分散液を形成し、かつ前記ポリアルキレングリコールエステル化合物と相溶性を有するものであれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂でもよく、例えばビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細な球状の樹脂粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されているのが好ましい。
なお、前記ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであり、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、などが挙げられる。
また、前記樹脂微粒子としては、少なくとも2つの不飽和基を有する単量体を含んでなる共重合体を用いることもできる。
前記少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS−30」、三洋化成工業株式会社製)、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールアクリレートなどが挙げられる。
【0032】
前記樹脂微粒子は、目的に応じて適宜選択した公知の方法に従って重合させることにより得ることができるが、該樹脂微粒子の水性分散液として得るのが好ましい。該樹脂微粒子の水性分散液の調製方法としては、例えば、(1)前記ビニル樹脂の場合、ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法から選択されるいずれかの重合反応により、直接、樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法、(2)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子の水性分散体を製造する方法、(3)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法、(4)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、(5)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、該樹脂微粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、(6)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂粒子を得た後、該樹脂粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、(7)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法、(8)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法、などが好適に挙げられる。
【0033】
前記樹脂微粒子の体積平均粒径は、5〜500nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。前記体積平均粒径が5nm未満であると、樹脂の分子量が小さくなり、耐熱保存性に劣ることがあり、500nmを超えると、トナー表面に付着せず、分散安定粒子としての効果が得られないことがある。
ここで、前記樹脂微粒子の体積平均粒径は、例えばレーザー散乱装置(例えば、堀場製作所製のLA−920)、動的光散乱装置(例えば、日機装株式会社製のMicrotrac UPA)、電界放出型走査型電子顕微鏡(例えば、日立製作所製のS−4200)などにより測定することができる。
【0034】
前記樹脂微粒子の前記トナーにおける含有量は、0.5質量%以上が好ましく、1.0〜5.0質量%がより好ましい。前記樹脂微粒子の含有量が上記範囲にあることで、造粒時に樹脂微粒子の分散安定効果が充分に得られ、良好な粒度分布を得られる。前記含有量が0.5質量%未満であると、分散安定剤としての含有量が不足することにより、樹脂微粒子による充分な分散安定性が得られず、トナーの粒度分布が悪化することがある。
ここで、前記トナー中に含まれる樹脂微粒子の含有量の測定は、例えばトナー粒子に起因せず、樹脂微粒子に起因する物質を熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計で分析し、そのピーク面積から算出し測定することができる。その検出器としては、質量分析計が好ましい。
【0035】
前記樹脂微粒子は、水系媒体中でトナー組成分の分散又は溶解液を分散させる際に、分散安定剤として作用するため、粒子を小粒径化、狭粒度分布化する際に有利に作用する。
【0036】
−PAGエステルと樹脂微粒子との相溶性の判別−
前記樹脂微粒子と前記PAGエステルが相溶性を有するとは、双方を混合し、加熱した場合において、双方、あるいは片方のガラス転移温度、融点、フローテスター特性を行った際の軟化点、T1/2法温度、溶融粘度等の熱特性が単一物質での測定に比べて低下することを意味する。したがって上記物性のいずれかの測定値が低下する場合には、PAGエステルと、樹脂微粒子とが相溶性を有すると判断することができる。
【0037】
前記相溶性の有無の判別方法としては、前記特性値のいずれを用いても可能であり、例えば、以下の(1)及び(2)の方法などが挙げられる。
(1)前記樹脂微粒子と前記PAGエステルをそれぞれ1:1の質量比になるように混合し、乳鉢で擂り潰した後に、目開き100μmのメッシュを通し、PAGエステル/樹脂微粒子混合物を調製する。
得られたPAGエステル/樹脂微粒子混合物、及びPAGエステル単体をDSCシステム(示差走査熱量計)(「DSC−60」、島津製作所製)を用いて、以下の方法により測定する。
まず、PAGエステル単体約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、20℃から昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱した後、降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。その後、再び昇温速度10℃/minで150℃まで加熱し、DSC曲線を計測する。得られた2回目の昇温のDSC曲線から、DSC−60システム中の解析プログラムを用いて、PAGエステルに由来するピークの値から、前記PAGエステルの融点Tm1を求める。次に、PAGエステル/樹脂微粒子の混合物に対して同等の測定を行い、混合物中の昇温2回目のPAGエステル由来のピークをTm2とする。Tm1―Tm2>1(℃)である場合には、PAGエステルは樹脂微粒子との1回目の昇温時に互いに相溶することで融点の降下を生じているため、互いに相溶性を有すると判断することができる。
【0038】
(2)PAGエステルを添加した際の樹脂微粒子のガラス転移温度の変化から、相溶性を判断することができる。
まず、樹脂微粒子単体約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、20℃から昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱した後、降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。その後、再び昇温速度10℃/minで150℃まで加熱し、DSC曲線を計測する。得られた2回目の昇温のDSC曲線から、DSC−60システム中の解析プログラムを用いて、樹脂微粒子に由来する吸熱カーブよりガラス転移温度Tg1を算出する。
次に、PAGエステル/樹脂微粒子の混合物に対して同等の測定を行い、混合物中の昇温2回目の樹脂微粒子由来の吸熱カーブをTg2とする。Tg1―Tg2>5(℃)である場合、PAGエステルは樹脂微粒子との1回目の昇温時に互いに相溶することで融点の降下を生じているため、互いに相溶性を有すると判断することができる。
【0039】
本発明のトナーは、上述したように、トナー材料の溶解乃至分散液を、樹脂微粒子を含む水系媒体中に乳化乃至分散させて、造粒してなる。
【0040】
前記トナー材料の溶解液は、前記トナー材料を溶媒中に溶解させてなり、前記トナー材料の分散液は、前記トナー材料を溶媒中に分散させてなる。
前記トナー材料としては、トナーを形成可能である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単量体、重合体、活性水素基含有化合物、及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体のいずれかを少なくとも含み、更に必要に応じて、着色剤、離型剤(ワックス類)、帯電制御剤などのその他の成分を含んでなる。
前記PAGエステルは、前記トナー材料及び前記水系媒体の少なくともいずれかに含有させることができるが、水系媒体中に含有させることが、PAGエステルの作用が油相中に含まれる材料(離型剤、着色剤(顔料)、帯電制御剤等)の影響を受けず、樹脂微粒子に対する効果が得られることから好ましい。
【0041】
前記トナー材料の溶解乃至分散液は、有機溶剤を含むのが好ましい。即ち、前記トナー材料を前記有機溶剤に溶解乃至分散させて前記溶解乃至分散液を調製するのが好ましい。
また、前記有機溶剤を含む場合には、該有機溶剤はトナーの造粒時乃至造粒後に除去するのが好ましい。
前記有機溶剤としては、前記トナー材料を溶解乃至分散可能な溶媒であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除去の容易性の点で沸点が150℃未満の揮発性のものが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、等が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記有機溶剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記トナー材料100質量部に対し40〜300質量部が好ましく、60〜140質量部がより好ましく、80〜120質量部が更に好ましい。
【0042】
−水系媒体−
前記水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、該水と混和可能な溶剤、これらの混合物、などが挙げられるが、これらの中でも、水が特に好ましい。
前記水と混和可能な溶剤としては、前記水と混和可能であれば特に制限はなく、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類、などが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。前記低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
−乳化乃至分散−
前記トナー材料の溶解乃至分散液の前記水系媒体中への乳化乃至分散は、前記溶解乃至分散液を前記水系媒体中で攪拌しながら分散させるのが好ましい。
前記分散の方法としては特に制限はなく、公知の分散機等を用いて適宜選択することができ、該分散機としては、例えば、低速せん断式分散機、高速剪断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、などが挙げられる。これらの中でも、前記分散体(油滴)の粒径を2〜20μmに制御することができる点で、高速剪断式分散機が好ましい。
前記高速剪断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度などの条件については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記回転数としては、1,000〜30,000rpmが好ましく、5,000〜20,000rpmがより好ましい。前記分散時間としては、バッチ方式の場合は、0.1〜5分間が好ましい。前記分散温度としては、加圧下において0〜150℃が好ましく、40〜98℃がより好ましい。なお、前記分散温度は高温である方が一般に分散が容易である。
【0044】
−造粒−
前記造粒は、その方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法等を用いてトナーを造粒する方法、後述する接着性基材を生成しつつ該接着性基材による粒子を得ることによりトナーを造粒する方法などが挙げられるが、これらの中でも、前記接着性基材を生成しつつトナーを造粒する方法が好ましい。
【0045】
前記接着性基材を生成しつつトナーを造粒する方法は、前記トナー材料が活性水素基含有化合物と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を含み、
造粒が、水系媒体中で、前記活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを反応させて接着性基材を生成しつつ該接着性基材による粒子を得ることにより行われる。
このような造粒方法を用いて形成されるトナーは、接着性基材を含み、更に必要に応じて適宜選択した、着色剤、離型剤、帯電制御剤等のその他の成分を含んでなる。
【0046】
−−接着性基材−−
前記接着性基材は、紙等の記録媒体に対し接着性を示し、前記活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を前記水系媒体中で反応させてなる接着性ポリマーを少なくとも含み、更に公知の結着樹脂から適宜選択した結着樹脂を含んでいてもよい。
【0047】
前記接着性基材の質量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、3,000以上が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましく、7,000〜500,000が更に好ましい。前記質量平均分子量が、3,000未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0048】
前記接着性基材のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、30〜70℃が好ましく、40〜65℃がより好ましい。前記トナーでは、架橋反応、伸長反応したポリエステル樹脂が共存していることにより、従来のポリエステル系トナーと比較してガラス転移温度が低くても良好な保存性を示すものである。
前記ガラス転移温度(Tg)が30℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると、低温定着性が十分でないことがある。
【0049】
前記ガラス転移温度は、例えば、TG−DSCシステムTAS−100(理学電機株式会社製)を用いて、以下の方法により測定することができる。まず、トナー約10mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットにのせ、電気炉中にセットする。室温から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱した後、150℃で10min間放置し、室温まで試料を冷却して10min放置する。その後、窒素雰囲気下、150℃まで昇温速度10℃/minで加熱して示差走査熱量計(DSC)によりDSC曲線を計測する。得られたDSC曲線から、TG−DSCシステムTAS−100システム中の解析システムを用いて、ガラス転移温度(Tg)近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点からガラス転移温度(Tg)を算出することができる。
【0050】
前記接着性基材の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエステル系樹脂、などが特に好適に挙げられる。
前記ポリエステル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ウレア変性ポリエステル系樹脂、などが特に好適に挙げられる。
前記ウレア変性ポリエステル系樹脂は、前記活性水素基含有化合物としてのアミン類(B)と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体としてのイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)とを前記水系媒体中で反応させて得られる。
前記ウレア変性ポリエステル系樹脂は、ウレア結合のほかに、ウレタン結合を含んでいてもよく、この場合、該ウレア結合と該ウレタン結合との含有モル比(ウレア結合/ウレタン結合)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100/0〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が特に好ましい。前記ウレア結合が10未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0051】
前記ウレア変性ポリエステル樹脂の好ましい具体例としては、以下(1)から(10)、即ち、(1)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物、(2)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(3)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(4)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(5)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーを、ヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(6)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(7)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをエチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(8)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物、(9)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸/ドデセニルコハク酸無水物の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物、(10)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をトルエンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物、などが好適に挙げられる。
【0052】
−−−活性水素基含有化合物−−−
前記活性水素基含有化合物は、前記水系媒体中で、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体が伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。
前記活性水素基含有化合物としては、活性水素基を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体が前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)である場合には、該イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)と伸長反応、架橋反応等の反応により高分子量化可能な点で、前記アミン類(B)が好適である。
前記活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基又はフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルコール性水酸基が特に好ましい。
【0053】
前記アミン類(B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、前記B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)等、が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン(B1)、ジアミン(B1)と少量の3価以上のポリアミン(B2)との混合物、が特に好ましい。
【0054】
前記ジアミン(B1)としては、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン、等が挙げられる。該芳香族ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。該脂環式ジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。該脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
前記3価以上のポリアミン(B2)としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、等が挙げられる。
前記アミノアルコール(B3)としては、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン、等が挙げられる。
前記アミノメルカプタン(B4)としては、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン、等が挙げられる。
前記アミノ酸(B5)としては、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸、等が挙げられる。
前記B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、例えば、前記(B1)から(B5)のいずれかのアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物、等が挙げられる。
【0055】
なお、前記活性水素基含有化合物と前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体との伸長反応、架橋反応等を停止させるには、反応停止剤を用いることができる。該反応停止剤を用いると、前記接着性基材の分子量等を所望の範囲に制御することができる点で好ましい。該反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、又はこれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)、などが挙げられる。
【0056】
前記アミン類(B)と、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)との混合比率としては、前記イソシアネート基含有プレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、前記アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3〜3/1であるのが好ましく、1/2〜2/1であるのがより好ましく、1/1.5〜1.5/1であるのが特に好ましい。
前記混合当量比([NCO]/[NHx])が1/3未満であると、低温定着性が低下することがあり、3/1を超えると、前記ウレア変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0057】
−−−活性水素基含有化合物と反応可能な重合体−−−
前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(以下「プレポリマー」と称することがある)としては、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を少なくとも有しているものであれば特に制限はなく、公知の樹脂等の中から適宜選択することができ、例えば、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、これらの誘導体樹脂、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶融時の高流動性、透明性の点で、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0058】
前記プレポリマーにおける前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、特に制限はなく、公知の置換基等の中から適宜選択することができるが、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基、等が挙げられる。
これらは、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これらの中でも、イソシアネート基が特に好ましい。
【0059】
前記プレポリマーの中でも、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構のない場合でも良好な離型性及び定着性を確保できる点で、ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)であるのが特に好ましい。
前記ウレア結合生成基としては、例えば、イソシアネート基、等が挙げられる。前記ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)における該ウレア結合生成基が該イソシアネート基である場合、該ポリエステル樹脂(RMPE)としては、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)等が特に好適に挙げられる。
【0060】
前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物であり、かつ前記活性水素基含有ポリエステル樹脂をポリイソシアネート(PIC)と反応させてなるもの、等が挙げられる。
【0061】
前記ポリオール(PO)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール(DIO)、3価以上のポリオール(TO)、ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ジオール(DIO)単独、又は前記ジオール(DIO)と少量の前記3価以上のポリオール(TO)との混合物、等が好ましい。
【0062】
前記ジオール(DIO)としては、例えば、アルキレングリコール、アルキレンエーテルグリコール、脂環式ジオール、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
前記アルキレングリコールとしては、炭素数2〜12のものが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。前記アルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。前記脂環式ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記脂環式ジオールに対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記ビスフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数2〜12のアルキレングリコールとの混合物が特に好ましい。
【0063】
前記3価以上のポリオール(TO)としては、3〜8価又はそれ以上のものが好ましく、例えば、3価以上の多価脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
前記3価以上の多価脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。前記3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、前記3価以上のポリフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。
【0064】
前記ジオール(DIO)と前記3価以上のポリオール(TO)との混合物における、前記ジオール(DIO)と前記3価以上のポリオール(TO)との混合質量比(DIO:TO)としては、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。
【0065】
前記ポリカルボン酸(PC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジカルボン酸(DIC)単独、又はDICと少量の3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物が好ましい。
前記ジカルボン酸としては、例えば、アルキレンジカルボン酸、アルケニレンジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、等が挙げられる。
前記アルキレンジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。前記アルケニレンジカルボン酸としては、炭素数4〜20のものが好ましく、例えば、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。前記芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜20のものが好ましく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0066】
前記3価以上のポリカルボン酸(TO)としては、3〜8価又はそれ以上のものが好ましく、例えば、芳香族ポリカルボン酸、等が挙げられる。
前記芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜20のものが好ましく、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0067】
前記ポリカルボン酸(PC)としては、前記ジカルボン酸(DIC)、前記3価以上のポリカルボン酸(TC)、及び、前記ジカルボン酸(DIC)と前記3価以上のポリカルボン酸との混合物、から選択されるいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステル物を用いることもできる。前記低級アルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0068】
前記ジカルボン酸(DIC)と前記3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物における前記ジカルボン酸(DIC)と前記3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合質量比(DIC:TC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。
【0069】
前記ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)とを重縮合反応させる際の混合比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ポリオール(PO)における水酸基[OH]と、前記ポリカルボン酸(PC)におけるカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])が、通常、2/1〜1/1であるのが好ましく、1.5/1〜1/1であるのがより好ましく、1.3/1〜1.02/1であるのが特に好ましい。
【0070】
前記ポリオール(PO)の前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、トナーの耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0071】
前記ポリイソシアネート(PIC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらのフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの、などが挙げられる。
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。前記脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。前記イソシアヌレート類としては、例えば、トリス−イソシアナトアルキル−イソシアヌレート、トリイソシアナトシクロアルキル−イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、1種単独でも使用することができ、2種以上を併用してもよい。
【0072】
前記ポリイソシアネート(PIC)と、前記活性水素基含有ポリエステル樹脂(例えば水酸基含有ポリエステル樹脂)とを反応させる際の混合比率としては、該ポリイソシアネート(PIC)におけるイソシアネート基[NCO]と、該水酸基含有ポリエステル樹脂における水酸基[OH]との混合当量比([NCO]/[OH])は、5/1〜1/1であるのが好ましく、4/1〜1.2/1であるのがより好ましく、3/1〜1.5/1であるのが特に好ましい。
前記イソシアネート基[NCO]が5を超えると、低温定着性が悪化することがあり、1未満であると、耐オフセット性が悪化することがある。
【0073】
前記ポリイソシアネート(PIC)の前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が更に好ましい。
前記含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0074】
前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)の1分子当たりに含まれるイソシアネート基の平均数としては、1以上が好ましく、1.2〜5がより好ましく、1.5〜4がより好ましい。
前記イソシアネート基の平均数が1未満であると、前記ウレア結合生成基で変性されているポリエステル樹脂(RMPE)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0075】
前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体の重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、1,000〜30,000が好ましく、1,500〜15,000がより好ましい。該重量平均分子量(Mw)が1,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあり、30,000を超えると、低温定着性が悪化することがある。
【0076】
ここで、前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分布の測定は、例えば、以下のようにして行うことができる。
まず、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させる。この温度でカラム溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度を0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のテトラヒドロフラン試料溶液を50〜200μl注入して測定する。前記試料における分子量の測定に当たっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。前記検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical Co.又は東洋ソーダ工業社製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、及び4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いることが好ましい。なお、前記検出器としてはRI(屈折率)検出器を用いることができる。
【0077】
−−−結着樹脂−−−
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特に、未変性ポリエステル樹脂(変性されていないポリエステル樹脂)が好ましい。
前記未変性ポリエステル樹脂を前記トナー中に含有させると、低温定着性及び光沢性を向上させることができる。
前記未変性ポリエステル樹脂としては、前記ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂と同様のもの、即ちポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物、等が挙げられる。該未変性ポリエステル樹脂は、その一部が前記ウレア結合生成基含有ポリエステル系樹脂(RMPE)と相溶していること、即ち、互いに相溶可能な類似の構造であるのが、低温定着性、耐ホットオフセット性の点で好ましい。
【0078】
前記未変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、1,000〜30,000が好ましく、1,500〜15,000がより好ましい。前記重量平均分子量(Mw)が、1,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあるので、上述したように前記重量平均分子量(Mw)が1,000未満である成分の含有量は、8〜28質量%であることが好ましい。一方、前重量平均分子量(Mw)が30,000を超えると、低温定着性が悪化することがある。
前記未変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度としては、30〜70℃が好ましく、35〜60℃がより好ましく、35〜50℃が更に好ましい。前記ガラス転移温度が30℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると、低温定着性が不十分となることがある。
前記未変性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、5mgKOH/g以上が好ましく、10〜120mgKOH/gがより好ましく、20〜80mgKOH/gが更に好ましい。前記水酸基価が5mgKOH/g未満であると、耐熱保存性と低温定着性とが両立し難くなることがある。
前記未変性ポリエステル樹脂の酸価としては、1.0〜50.0mgKOH/gが好ましく、1.0〜30.0mgKOH/gがより好ましい。このように前記トナーに酸価をもたせることによって、一般的に負帯電性となり易くなる。
前記未変性ポリエステル樹脂を前記トナーに含有させる場合、前記ウレア結合生成基含有ポリエステル系樹脂(RMPE)と該未変性ポリエステル樹脂(PE)との混合質量比(RMPE/PE)としては、5/95〜25/75が好ましく、10/90〜25/75がより好ましい。前記未変性ポリエステル樹脂(PE)の混合質量比が95を超えると、耐ホットオフセット性が悪化することがあり、75未満であると、低温定着性や画像の光沢性が悪化することがある。
【0079】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、着色剤、離型剤、帯電制御剤、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸、等が挙げられる。
【0080】
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、及びこれらの混合物などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、特に好適に使用することができる着色剤としては、例えば、PR122、PR269、PR184、PR57:1、PR238、PR146、PR185等のピグメントレッド;PY93、PY128、PY155、PY180、PY74等のピグメントイエロー;PB15:3等のピグメントブルーなどが挙げられる。
【0081】
前記着色剤は、着色剤のみを予め前記溶媒中に分散させて得られた着色剤の分散液として用いてもよいし、前記結着樹脂、前記接着性基材等とともに前記溶媒中に直接分散させてもよい。また、前記着色剤を予め分散させる場合であっても、顔料分散時に適度な剪断力を加えるため、前記結着樹脂、前記接着性基材等を一部添加して粘度を調整してもよい。
前記着色剤分散後の着色剤分散液における前記着色剤の粒径としては、例えば、1μm以下が好ましい。該粒径が1μmを超えると、トナーを製造した場合、前記着色剤の粒径が大きくなり、画質が低下しやすくなることがあり、特に、OHPの光透過性が低下しやすくなることがある。
前記着色剤の粒径は、例えばレーザー光散乱法を用いたレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(「LA−920」、堀場製作所製)を用いて測定することができる。
【0082】
前記着色剤の前記トナーにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。前記含有量が1質量%未満であると、トナーの着色力の低下が見られ、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下、及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0083】
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ワックス類などが好適に挙げられる。
前記ワックス類としては、例えば炭化水素系ワックス、カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらの中でも、炭化水素系ワックスが特に好ましい。炭化水素系ワックスを用いることで、PAGエステルとの極性差が充分大きくなることにより、相互作用性が低いため、PAGエステルによる低温定着化、ワックスによる離型性が阻害されず互いの機能を充分に発揮することができる。
【0084】
前記炭化水素系ワックスとしては、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどが挙げられる。
前記カルボニル基含有ワックスとしては、例えば、ポリアルカン酸エステル、ポリアルカノールエステル、ポリアルカン酸アミド、ポリアルキルアミド、ジアルキルケトン、等が挙げられる。前記ポリアルカン酸エステルとしては、例えば、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート等が挙げられる。前記ポリアルカノールエステルとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等が挙げられる。前記ポリアルカン酸アミドとしては、例えば、ジベヘニルアミド等が挙げられる。前記ポリアルキルアミドとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリルアミド等が挙げられる。前記ジアルキルケトンとしては、例えば、ジステアリルケトン等が挙げられる。
【0085】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以上が好ましく、50〜160℃がより好ましく、50〜120℃が更に好ましい。前記融点が50℃未満であると、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、160℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こし易いことがある。
前記離型剤の溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1,000cpsが好ましく、10〜100cpsがより好ましい。
前記溶融粘度が5cps未満であると、離型性が低下することがあり、1,000cpsを超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が得られなくなることがある。
【0086】
前記離型剤の前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。前記含有量が40質量%を超えると、トナーの流動性が悪化することがある。
【0087】
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができるが、有色材料を用いると色調が変化することがあるため、無色乃至白色に近い材料が好ましく、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(いずれも、オリエント化学工業社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(いずれも、保土谷化学工業社製);第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(いずれも、ヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(いずれも、日本カーリット株式会社製);キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等を有する高分子系の化合物、等が挙げられる。
前記帯電制御剤は、前記マスターバッチと共に溶融混練させた後、溶解乃至分散させてもよく、あるいは前記トナーの各成分と共に前記有機溶剤に直接、溶解乃至分散させる際に添加してもよく、あるいはトナー粒子を製造後にトナー表面に固定させてもよい。
【0088】
前記帯電制御剤の前記トナーにおける含有量としては、前記結着樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、例えば、前記結着樹脂100質量部に対し0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。該含有量が0.1質量部未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0089】
前記無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機微粒子の一次粒子径としては、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。また、前記無機微粒子のBET法による比表面積としては、20〜500m/gが好ましい。
前記無機微粒子の前記トナーにおける含有量としては、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.01〜5.0質量%がより好ましい。
【0090】
前記流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものを意味し、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、等が挙げられる。
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加され、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01〜1μmのものが好適である。
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等が挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0091】
前記トナーの製造方法の一例として、前記接着性基材を生成しつつ該接着性基材による粒子を得ることによりトナーを造粒する方法を以下に示す。
前記接着性基材を生成しつつトナーを造粒する方法においては、例えば、水系媒体相の調製、トナー材料の溶解乃至分散液の調製、乳化乃至分散、前記接着性基材の生成、有機溶剤の除去、その他(前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)の合成、前記活性水素基含有化合物の合成等)を行う。
【0092】
前記水系媒体相の調製は、例えば、前記樹脂微粒子、及び前記PAGエステルを前記水系媒体に分散させることにより行うことができる。該樹脂微粒子の該水系媒体中の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5〜10質量%が好ましい。
前記トナー材料の溶解乃至分散液の調製は、前記有機溶剤中に、前記活性水素基含有化合物、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体、前記着色剤、前記離型剤、前記帯電制御剤、前記未変性ポリエステル樹脂等のトナー材料を、溶解乃至分散させることにより行うことができる。
なお、前記トナー材料の中で、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)以外の成分は、前記水系媒体相調製において、前記樹脂微粒子を前記水系媒体に分散させる際に該水系媒体中に添加混合してもよいし、あるいは、前記溶解乃至分散液を前記水系媒体相に添加する際に、該溶解乃至分散液と共に前記水系媒体相に添加してもよい。
【0093】
前記乳化乃至分散は、先に調製した前記トナー材料の溶解乃至分散液を、先に調製した前記水系媒体相中に乳化乃至分散させることにより行うことができる。そして、該乳化乃至分散の際、前記活性水素基含有化合物と前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを伸長反応乃至架橋反応させると、前記接着性基材が生成する。
前記接着性基材(例えば、前記ウレア変性ポリエステル樹脂)は、例えば、(1)前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む前記トナー材料の溶解乃至分散液を、前記活性水素基含有化合物(例えば、前記アミン類(B))と共に、前記水系媒体相中に乳化乃至分散させ、分散体を形成し、該水系媒体相中で両者を伸長反応乃至架橋反応させることにより生成させてもよく、(2)前記トナー材料の溶解乃至分散液を、予め前記活性水素基含有化合物を添加した前記水系媒体中に乳化乃至分散させ、分散体を形成し、該水系媒体相中で両者を伸長反応乃至架橋反応させることにより生成させてもよく、あるいは(3)前記トナー材料の溶解乃至分散液を、前記水系媒体中に添加混合させた後で、前記活性水素基含有化合物を添加し、分散体を形成し、該水系媒体相中で粒子界面から両者を伸長反応乃至架橋反応させることにより生成させてもよい。なお、前記(3)の場合、生成するトナー表面に優先的に変性ポリエステル樹脂が生成され、該トナー粒子において濃度勾配を設けることもできる。
【0094】
前記乳化乃至分散により、前記接着性基材を生成させるための反応条件としては、特に制限はなく、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と前記活性水素基含有化合物との組合せに応じて適宜選択することができ、反応時間としては、10分間〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましく、反応温度としては、0〜150℃が好ましく、40〜98℃がより好ましい。
【0095】
前記水系媒体相中において、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む前記分散体を安定に形成する方法としては、例えば、前記水系媒体相中に、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))、前記着色剤、前記離型剤、前記帯電制御剤、前記未変性ポリエステル樹脂等の前記トナー材料を前記有機溶剤に溶解乃至分散させて調製した前記溶解乃至分散液を添加し、剪断力により分散させる方法、等が挙げられる。
前記分散は、その方法としては特に制限はなく、公知の分散機等を用いて適宜選択することができ、該分散機としては、例えば、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、などが挙げられる。これらの中でも、前記分散体の粒径を2〜20μmに制御することができる点で、高速せん断式分散機が好ましい。
前記高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度などの条件については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記回転数としては、1,000〜30,000rpmが好ましく、5,000〜20,000rpmがより好ましい。前記分散時間としては、バッチ方式の場合は、0.1〜5分が好ましく、前記分散温度としては、加圧下において0〜150℃が好ましく、40〜98℃がより好ましい。なお、前記分散温度は高温である方が一般に分散が容易である。
【0096】
前記乳化乃至分散において、前記水系媒体の使用量としては、前記トナー材料100質量部に対し、50〜2,000質量部が好ましく、100〜1,000質量部がより好ましい。前記使用量が、50質量部未満であると、前記トナー材料の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
【0097】
前記乳化乃至分散においては、必要に応じて、前記分散体(前記トナー材料の溶解乃至分散液からなる油滴)を安定化させ、所望の形状を得つつ粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0098】
前記界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、等が挙げられる。
前記陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、フルオロアルキル基を有するものが好適に挙げられる。該フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。該フルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113(いずれも、旭硝子株式会社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(いずれも、住友3M株式会社製);ユニダインDS−101、DS−102(いずれも、ダイキン工業株式会社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(いずれも、トーケムプロダクツ株式会社製);フタージェントF100、F150(いずれも、ネオス株式会社製)などが挙げられる。
【0099】
前記陽イオン界面活性剤としては、例えば、アミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。前記アミン塩型界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等が挙げられる。前記四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。該陽イオン界面活性剤の中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、などが挙げられる。該カチオン界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−121(旭硝子株式会社製);フロラードFC−135(住友3M株式会社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業株式会社製)、メガファックF−150、F−824(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);エクトップEF−132(トーケムプロダクツ株式会社製);フタージェントF−300(ネオス株式会社製)等が挙げられる。
【0100】
前記非イオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
【0101】
前記難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト、等が挙げられる。
前記高分子系保護コロイドとしては、例えば、酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物、クロライド類、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類、等が挙げられる。
前記酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。前記水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。前記ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。前記ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。前記アミド化合物又はこれらのメチロール化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、又はこれらのメチロール化合物、などが挙げられる。前記クロライド類としては、例えば、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等が挙げられる。前記窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体としては、例えば、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。前記ポリオキシエチレン系としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。前記セルロース類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0102】
前記乳化乃至分散においては、必要に応じて分散安定剤を用いることができる。
該分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能なもの等が挙げられる。
該分散安定剤を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する方法、酵素により分解する方法等によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去することができる。
【0103】
前記乳化乃至分散においては、前記伸長反応乃至前記架橋反応の触媒を用いることができる。該触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、などが挙げられる。
【0104】
得られた分散液(乳化スラリー)から、有機溶剤を除去する。該有機溶剤の除去は、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、前記油滴中の前記有機溶剤を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の非水溶性有機溶剤を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法、等が挙げられる。
【0105】
前記有機溶剤の除去が行われると、トナー粒子が形成される。該トナー粒子に対し、洗浄、乾燥等を行うことができ、更にその後、所望により分級等を行うことができる。該分級は、例えば、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができ、乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよい。
【0106】
こうして、得られたトナー粒子を、前記着色剤、前記離型剤、前記帯電制御剤等の粒子と共に混合したり、更に機械的衝撃力を印加することにより、該トナー粒子の表面から該離型剤等の粒子が脱離するのを防止することができる。
前記機械的衝撃力を印加する方法としては、例えば、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法、等が挙げられる。この方法に用いる装置としては、例えば、オングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、I式ミル(日本ニューマチック株式会社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、自動乳鉢、等が挙げられる。
【0107】
前記トナーは、以下のような、体積平均粒径(Dv)、体積平均粒径(Dv)/個数平均粒径(Dn)、針入度、低温定着性、オフセット未発生温度、ガラス転移温度(Tg)などを有していることが好ましい。
【0108】
前記トナーの体積平均粒径(Dv)は、3〜8μmが好ましく、4〜6μmがより好ましい。
前記体積平均粒径が3μm未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、8μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0109】
前記トナーにおける体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)としては、1.00〜1.25が好ましく、1.05〜1.20がより好ましい。
前記体積平均粒径と個数平均粒径との比(Dv/Dn)が、1.00未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させたり、クリーニング性を悪化させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、1.25を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
前記体積平均粒径と個数平均粒径との比(Dv/Dn)が、1.00〜1.25であると、保存安定性、低温定着性、及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れ、特に、フルカラー複写機に使用した場合に画像の光沢性に優れる。二成分現像剤では長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性が得られ、一成分現像剤ではトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なくなるとともに、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するブレード等への部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期使用(攪拌)においても、良好で安定した現像性が得られるため、高画質の画像を得ることができる。
【0110】
ここで、トナーの体積平均粒径(Dv)及び比(Dv/Dn)は、例えば、コールターカウンター法により測定することができ、該コールターカウンター法によるトナー粒子の粒径、粒度分布の測定装置としては、コールターマルチサイザーIII(ベックマンコールター社製)が挙げられる。
【0111】
前記針入度としては、例えば、針入度試験(JIS K2235−1991)で測定した針入度が、15mm以上であることが好ましく、20〜30mmがより好ましい。前記針入度が、15mm未満であると、耐熱保存性が悪化することがある。
前記針入度は、例えばJIS K2235−1991に従って測定することができ、具体的には、50mlのガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽に20時間放置する。このトナーを室温まで冷却し、針入度試験を行うことにより針入度を測定することができる。なお、前記針入度の値が大きい程、前記耐熱保存性が優れることを示している。
【0112】
前記低温定着性としては、定着温度低下とオフセット未発生とを両立させる観点からは、定着下限温度が低くなるほど好ましく、また、オフセット未発生温度が高くなるほど好ましく、定着温度低下とオフセット未発生とを両立させ得る温度領域としては、前記定着下限温度が140℃未満であり、前記オフセット未発生温度が200℃以上である。
なお、前記定着下限温度は、例えば、画像形成装置を用い、転写紙をセットし、複写テストを行い、得られた定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着部材温度を定着下限温度としたものである。
前記オフセット未発生温度は、例えば、画像形成装置を用いて、評価するトナーが所定量で現像されるように調整し、定着部材の温度が可変となるように調整して、オフセットの発生しない温度を測定することによって求めることができる。
【0113】
前記トナーのガラス転移温度(Tg)は、50〜80℃が好ましく、50〜65℃がより好ましい。前記ガラス転移温度が上記範囲であることにより、より優れた耐熱保存性と低温定着性を発揮することができる。前記ガラス転移温度(Tg)が、50℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、80℃を超えると、低温定着性が十分でないことがある。
ここで、前記ガラス転移温度は、例えば、TG−DSCシステムTAS−100(理学電機社製)を用いて、以下の方法により測定することができる。まず、トナー約10mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットにのせ、電気炉中にセットする。室温から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱した後、150℃で10min間放置し、室温まで試料を冷却して10min放置する。その後、窒素雰囲気下、150℃まで昇温速度10℃/minで加熱して示差走査熱量計(DSC)によりDSC曲線を計測する。得られたDSC曲線から、TG−DSCシステムTAS−100システム中の解析システムを用いて、ガラス転移温度(Tg)近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点からガラス転移温度(Tg)を算出することができる。
【0114】
(現像剤)
本発明の現像剤は、本発明の前記トナーを少なくとも含有してなり、キャリアなどの適宜選択したその他の成分を含有してなる。該現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で前記二成分現像剤が好ましい。
本発明の前記トナーを用いた前記一成分現像剤の場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。また、本発明の前記トナーを用いた前記二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0115】
−キャリア−
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
【0116】
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料などが好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている感光体への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0117】
前記芯材の粒径としては、体積平均粒径で、10〜150μmが好ましく、40〜100μmがより好ましい。前記平均粒径(体積平均粒径(D50))が、10μm未満であると、キャリア粒子の分布において、微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがあり、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0118】
前記樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0119】
前記アミノ系樹脂としては、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる前記ポリビニル系樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。前記ポリスチレン系樹脂としては、例えばポリスチレン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂等が挙げられる。前記ハロゲン化オレフィン樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル等が挙げられる。前記ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0120】
前記樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、該導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、などが挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。前記平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0121】
前記樹脂層は、例えば、前記シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、該塗布溶液を前記芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。前記塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、などが挙げられる。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブ、ブチルアセテート、などが挙げられる。
前記焼付としては、特に制限はなく、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法、などが挙げられる。
【0122】
前記樹脂層の前記キャリアにおける量としては、0.01〜5.0質量%が好ましい。前記量が0.01質量%未満であると、前記芯材の表面に均一な前記樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、前記樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
【0123】
前記現像剤が前記二成分現像剤である場合、前記キャリアの該二成分現像剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90〜98質量%が好ましく、93〜97質量%がより好ましい。
【0124】
前記現像剤は、本発明の前記トナーを含有しているので、画像形成時において、帯電性能に優れ、高画質な画像を安定に形成することができる。
前記現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができ、以下の本発明の前記トナー入り容器、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に特に好適に用いることができる。
【0125】
(トナー入り容器)
本発明のトナー入り容器は、本発明の前記トナー乃至前記現像剤を容器中に収容してなる。
前記容器としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、トナー入り容器本体とキャップとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
前記トナー入り容器本体としては、その大きさ、形状、構造、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、円筒状などが好ましく、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより内容物であるトナーが排出口側に移行可能であり、かつ該スパイラル部の一部又は全部が蛇腹機能を有しているもの、などが特に好ましい。
前記トナー入り容器本体の材質としては、特に制限はなく、寸法精度がよいものが好ましく、例えば、樹脂が好適に挙げられ、その中でも、例えば、ポリエステル樹脂,ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、などが好適に挙げられる。
前記トナー入り容器は、保存、搬送等が容易であり、取扱性に優れ、後述するプロセスカートリッジ、画像形成装置等に、着脱可能に取り付けてトナーの補給に好適に使用することができる。
【0126】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を、現像剤を用いて現像し可視像を形成する現像手段とを、少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してなる。
前記現像手段としては、本発明の前記トナー乃至前記現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容されたトナー乃至現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有してなり、更に、担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。
本発明のプロセスカートリッジは、各種電子写真方式の画像形成装置に着脱可能に備えさせることができ、後述する本発明の画像形成装置に着脱可能に備えさせるのが好ましい。
【0127】
ここで、前記プロセスカートリッジは、例えば、図1に示すように、静電潜像担持体101を内蔵し、帯電手段102、現像手段104、転写手段108、クリーニング手段107を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図1中、103は露光手段による露光、105は記録媒体をそれぞれ示す。
次に、図1に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、静電潜像担持体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段104で現像され、得られた可視像は転写手段108により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の静電潜像担持体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【0128】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
【0129】
前記静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
前記静電潜像担持体(以下、「電子写真感光体」、「感光体」、「像担持体」と称することがある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
【0130】
前記静電潜像の形成は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。前記静電潜像形成手段は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0131】
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
【0132】
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0133】
−現像工程及び現像手段−
前記現像工程は、前記静電潜像を、本発明の前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を本発明の前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、本発明の前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、本発明の前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられ、前記トナー入り容器を備えた現像器などがより好ましい。
【0134】
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0135】
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該静電潜像担持体(感光体)の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0136】
前記現像器に収容させる現像剤は、本発明の前記トナーを含む現像剤であるが、該現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。該現像剤に含まれるトナーは、本発明の前記トナーである。
【0137】
−転写工程及び転写手段−
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0138】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記静電潜像担持体(感光体)上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、前記記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0139】
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ、などが挙げられる。
前記加熱加圧手段における加熱は、80〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0140】
前記除電工程は、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0141】
前記クリーニング工程は、前記静電潜像担持体上に残留する前記トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0142】
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0143】
前記制御手段は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0144】
前記画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する一の態様について、図2を参照しながら説明する。図2に示す画像形成装置100は、前記静電潜像担持体としての感光体ドラム10と、前記帯電手段としての帯電ローラ20と、前記露光手段としての露光装置30と、前記現像手段としての現像装置40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有する前記クリーニング手段としてのクリーニング装置60と、前記除電手段としての除電ランプ70とを備える。
【0145】
中間転写体50は無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、図中矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50には、その近傍に中間転写体用クリーニングブレード90が配置されており、また、記録媒体95に可視像(トナー像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な前記転写手段としての転写ローラ80が対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、この中間転写体50上の可視像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、該中間転写体50の回転方向において、静電潜像担持体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と記録媒体95との接触部との間に配置されている。
【0146】
現像装置40は、現像剤担持体としての現像ベルト41と、この現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M、及びシアン現像ユニット45Cとから構成されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えている。イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えている。マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えている。シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラにより回転可能に張架され、一部が静電潜像担持体10と接触している。
【0147】
図2に示す画像形成装置100において、例えば、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置30が感光ドラム10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光ドラム10上に形成された静電潜像を、現像装置40からトナーを供給して現像して可視像(トナー像)を形成する。該可視像(トナー像)が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、感光体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
【0148】
前記画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する他の態様について、図3を参照しながら説明する。図3に示す画像形成装置100は、図2に示す画像形成装置100において、現像ベルト41を備えてなく、感光体10の周囲に、ブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cが直接対向して配置されていること以外は、図2に示す画像形成装置100と同様の構成を有し、同様の作用効果を示す。なお、図3においては、図2におけるものと同じものは同符号で示した。
【0149】
前記画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する他の態様について、図4を参照しながら説明する。図4に示すタンデム画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置である。タンデム画像形成装置は、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、図4中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍には、露光装置21が配置されている。中間転写体50における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される転写紙と中間転写体50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27とを備えている。
なお、タンデム画像形成装置においては、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙の両面に画像形成を行うために該転写紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
【0150】
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
【0151】
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動し、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
【0152】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達され、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。即ち、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、図5に示すように、それぞれ、静電潜像担持体10(ブラック用静電潜像担持体10K、イエロー用静電潜像担持体10Y、マゼンタ用静電潜像担持体10M、及びシアン用静電潜像担持体10C)と、該静電潜像担持体10を一様に帯電させる帯電装置160と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に前記静電潜像担持体を露光(図5中、L)し、該静電潜像担持体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する現像装置61と、該トナー画像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置63と、除電器64とを備えており、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成された該ブラック画像、該イエロー画像、該マゼンタ画像及び該シアン画像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用静電潜像担持体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用静電潜像担持体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用静電潜像担持体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用静電潜像担持体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0153】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して複写機本体150内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。そして、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により該合成カラー画像(カラー転写像)を該シート(記録紙)上に転写(二次転写)することにより、該シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
【0154】
カラー画像が転写され形成された前記シート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が該シート(記録紙)上に定着される。その後、該シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされ、あるいは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【0155】
本発明の画像形成装置及び画像形成方法では、流動性、定着性等の諸特性が良好であり、優れた低温定着性と耐熱保存性とを両立する本発明の前記トナーを用いるので、高画質が効率よく得られる。
【実施例】
【0156】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0157】
(実施例1)
<接着性基材生成工程>
以下のようにしてトナーを製造した。
−トナー材料の溶解乃至分散液の調製−
−−未変性ポリエステル(低分子ポリエステル)の合成−−
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽内に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物67質量部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物84質量部、テレフタル酸274質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を投入し、常圧下、230℃にて8時間反応させた。次いで、該反応液を10〜15mmHgの減圧下、5時間反応させて、未変性ポリエステルを合成した。
得られた未変性ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、質量平均分子量が5,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃であった。
【0158】
−−マスターバッチ(MB)の調製−−
水1,000質量部、及びカーボンブラック(「Printex35」、デグサ社製、DBP吸油量=42ml/100g、pH=9.5)540質量部、及び前記未変性ポリエステル1,200質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて混合した。該混合物を二本ロールで150℃にて30分間混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕して、マスターバッチを調製した。
【0159】
−−ウレア変性ポリエステルの合成−−
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を仕込み、常圧下、230℃にて8時間反応させた。次いで、10〜15mHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。
得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、質量平均分子量が9,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5mgKOH/g、水酸基価が49mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、前記中間体ポリエステル411質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、ウレア変性ポリエステル(前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)を合成した。
得られたウレア変性ポリエステルの遊離イソシアネート含有量は、1.60質量%であり、ウレア変性ポリエステルの固形分濃度(150℃、45分間放置後)は50質量%であった。
【0160】
−−ケチミン(前記活性水素基含有化合物)の合成−−
撹拌棒、及び温度計をセットした反応容器内に、イソホロンジアミン30質量部、及びメチルエチルケトン70質量部を仕込み、50℃にて5時間反応を行い、ケチミン化合物(前記活性水素基含有化合物)を合成した。
得られたケチミン化合物(前記活性水素機含有化合物)のアミン価は423であった。
【0161】
−−トナー材料の溶解乃至分散液の調製−−
ビーカー内に、前記ウレア変性ポリエステル15質量部、前記未変性ポリエステル60質量部、及び酢酸エチル100質量部を入れ、攪拌し溶解させた。次いで、カルナウバワックス(分子量=1,800、酸価=2.5mgKOH/g、針入度=1.5mm(40℃)、融点86℃)10質量部、及び前記マスターバッチ10質量部を仕込み、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、及び直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製し、前記ケチミン2.7質量部を加えて溶解させ、トナー材料の溶解乃至分散液を調製した。
【0162】
−樹脂微粒子エマルションの調製−
撹拌棒、及び温度計をセットした反応容器内に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業株式会社製)11質量部、スチレン79質量部、メタクリル酸79質量部、アクリル酸ブチル105質量部、ジビニルベンゼン13質量部、及び過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌し、白色の乳濁液を得た。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。更に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液]を得た。
得られた[微粒子分散液]をレーザー回折式粒度分布測定器(LA−920、堀場製作所製)で測定したところ、体積平均粒径が105nmであった。[微粒子分散液]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。樹脂分のガラス転移温度(Tg)は95℃、数平均分子量140,000、質量平均分子量980,000であった。
【0163】
−水系媒体相の調製−
イオン交換水306質量部、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1(質量平均分子量20,000、融点66℃、脂肪酸の炭素数(R)=22)30質量部、樹脂微粒子分散液60質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4質量部を混合撹拌し、均一に溶解させて水系媒体相を調製した。
このとき、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1の添加量は、トナー組成物全体に対し10.0質量%であった。また、樹脂微粒子のトナーにおける含有量は2.0質量%であった。該樹脂微粒子の含有量は、トナー粒子に起因せず、樹脂微粒子に起因する物質〔樹脂微粒子を構成する単量体(モノマー)の中で、トナーの他の構成成分に含まれない物質、例えば樹脂微粒子がスチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体の場合には、スチレン、メタクリル酸、アクリル酸ブチル、及びエチレンオキサイドのいずれかである〕を熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計で分析し、そのピーク面積から算出して、求めた。検出器としては、質量分析計を用いた(以下の実施例及び比較例においても同様に測定した)。
【0164】
−乳化乃至分散液の調製−
前記水系媒体相150質量部を容器内に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用い、回転数12,000rpmで攪拌し、これに前記トナー材料の溶解乃至分散液100質量部を添加し、10分間混合して乳化乃至分散液(乳化スラリー)を調製した。
【0165】
−有機溶剤の除去−
攪拌機、及び温度計をセットしたコルベン内に、前記乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間脱溶剤した。
【0166】
−洗浄及び乾燥−
前記分散スラリー100質量部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)で混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて30分間)した後減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。更に得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行い、最終濾過ケーキを得た。
得られた最終濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、実施例1のトナー母体粒子を得た。
【0167】
(実施例2)
実施例1の「水系媒体相の調製」において、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1を、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.2(質量平均分子量2,500、融点52℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のトナー母体粒子を作製した。
【0168】
(実施例3)
実施例1の「水系媒体相の調製」において、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1を、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.3(質量平均分子量8,000、融点60℃)に変更し、樹脂微粒子分散液の添加量を倍量の120質量部にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3のトナー母体粒子を作製した。
【0169】
(実施例4)
実施例1の「水系媒体相の調製」において、樹脂微粒子分散液の添加量を倍量の120質量部にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4のトナー母体粒子を作製した。
【0170】
(実施例5)
実施例1の「水系媒体相の調製」において、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1を、ポリエチレングリコールジラウリン酸エステル(質量平均分子量20,000、融点64℃、脂肪酸の炭素鎖数(R)=12)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5のトナー母体粒子を作製した。
【0171】
(実施例6)
実施例1の「水系媒体相の調製」において、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1を、ポリエチレングリコールジカプリル酸エステル(質量平均分子量20,000、融点62℃、脂肪酸の炭素鎖数(R)=8)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6のトナー母体粒子を作製した。
【0172】
(実施例7)
実施例1の「水系媒体相の調製」において、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1の添加量を9質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例7のトナー母体粒子を作製した。
【0173】
(実施例8)
実施例1の「水系媒体相の調製」において、樹脂微粒子分散液の添加量を倍量の1.8質量部に変え、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1の添加量を15質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例8のトナー母体粒子を作製した。
【0174】
(実施例9)
実施例1の「トナー材料の溶解乃至分散液の調製」において、カルナウバワックスの代わりにパラフィンワックス(融点=77℃、酸価=0mgKOH/g)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例9のトナー母体粒子を作製した。
【0175】
(実施例10)
以下のようにして、懸濁重合法によりトナーを製造した。
−トナー材料の溶解乃至分散液(単量体組成物)の調製−
スチレン80.5質量部、及びn−ブチルアクリレート19.5質量部からなる重合性単量体100質量部、カーボンブラック(「Printex35」、デグサ社製、DBP吸油量=42ml/100g、pH=9.5)6質量部、帯電制御剤(「スピロンブラックTRH」、保土ヶ谷化学株式会社製)1質量部、ジビニルベンゼン0.4質量部、t−ドデシルメルカプタン1.0質量部、カルナウバワックス10質量部、及びポリメタクリル酸エステルマクロモノマー0.5質量部を、攪拌装置を用い、室温にて攪拌及び混合した後、メディア型分散機により均一分散させ、単量体組成物を調製した。
【0176】
−水系媒体相の調製−
実施例1で作製した「微粒子分散液」10質量部と、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1(質量平均分子量20,000、融点66℃、脂肪酸の炭素数(R)=22)10質量部と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの2質量%水溶液80質量部を攪拌し、水系媒体相を調製した。
【0177】
−造粒−
得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、室温下、前記単量体組成物を投入し、液滴が安定するまで攪拌して分散させた後、油溶性重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5質量部を添加した。次いで、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)で15,000rpmで10分間高剪断攪拌を行い、単量体組成物からなる微細な液滴を造粒した。
【0178】
−−重合−−
造粒した前記単量体組成物の水系分散媒体(懸濁液)を、攪拌翼を装着した反応器に投入し、90℃に加熱して重合反応を開始した。重合反応を10時間継続させた後、水冷して重合反応を終了させた。
次いで、実施例1と同様にして濾過、洗浄、及び乾燥を行い、実施例10のトナー母体粒子を製造した。
【0179】
(実施例11)
特開平11−52619号公報の実施例1に基づき、溶解懸濁法(乳化分散法)によりトナーを製造した。
テレフタル酸1,243質量部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物1830質量部、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物840質量部を180℃で加熱混合した後、ジブチル錫オキサイド3質量部を加え220℃で加熱しながら水を留去し、ポリエステルを得た。これにシクロヘキサノン1,500質量部を加えて溶解し、無水酢酸250質量部を加えて130℃で加熱した。次いで、加熱減圧して溶媒、及び未反応酸を除去し、ポリエステル樹脂を得た。
得られたポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は60℃、酸価は3mgKOH/g、水酸基価は1mgKOH/gであった。
【0180】
上記ポリエステル樹脂100質量部、C.I.ピグメントブルー15:3を4質量部、及び酢酸エチル110質量部をボールミルで48時間分散した(この液をA液とした)。
一方、実施例1で作製した「微粒子分散液」10質量部と、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1(質量平均分子量20,000、融点66℃、脂肪酸の炭素数(R)=22)10質量部と、カルボキシメチルセルロース(商品名「セロゲンBS−H」、第一工業製薬株式会社製)の2質量%水溶液100質量部を攪拌した(この液をB液とした)。
次に、乳化機(商品名「オートホモミキサー」、特殊機化工業株式会社製)で、上記B液100質量部を攪拌し、その中に、上記A液50質量部をゆっくり投入して混合液を懸濁した。その後、減圧下で溶媒を除去し、次いで、6N塩酸を100質量部加えて炭酸カルシウムを除去し、更に水洗し、乾燥させた。以上により、実施例11のトナー母体粒子を作製した。
【0181】
(実施例12)
実施例1のポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1を「水系媒体相の調製」においてではなく、「トナー材料の溶解乃至分散液の調製」時に10質量部添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例12のトナー母体粒子を作製した。
【0182】
(実施例13)
実施例1の「樹脂微粒子エマルジョンの調製」において、反応時の攪拌の回転数を100回転/分に変更して樹脂微粒子分散液を作製し、得られた樹脂微粒子分散液を「水系媒体相の調製」において代わりに用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例13のトナー母体粒子を作製した。この実施例13の樹脂微粒子について、実施例1と同様の測定方法により測定した体積平均粒径は520nmであった。
【0183】
(比較例1)
実施例1の「水系媒体相の調製」において、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1を未添加とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1のトナー母体粒子を作製した。
【0184】
(比較例2)
実施例1の「水系媒体相の調製」において、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1を未添加とし、樹脂微粒子分散液の添加量を倍量の120質量部にした以外は、実施例1と同様にして、比較例2のトナー母体粒子を作製した。
【0185】
(比較例3)
実施例1の「水系媒体相の調製」において、樹脂微粒子分散液を未添加とした以外は、実施例1と同様にして、比較例3のトナー母体粒子を作製した。
【0186】
(比較例4)
実施例1の「水系媒体相の調製」において、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1を、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.4(質量平均分子量1,700、融点48℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例4のトナー母体粒子を作製した。
【0187】
(比較例5)
実施例1の「水系媒体相の調製」において、ポリエチレングリコールジベヘニン酸エステルNo.1を、エステル化していないポリエチレングリコール(PEG、質量平均分子量20,000)に変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例5のトナー母体粒子を作製した。
【0188】
−外添剤処理−
得られた実施例1〜13及び比較例1〜5のトナー母体粒子100質量部に対し、外添剤としての疎水性シリカ(「H2000」、クラリアントジャパン株式会社製)1.0質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用い、周速30m/sとして30秒間混合し1分間休止する処理を5サイクル行い、目開き35μmメッシュで篩い、実施例1〜13及び比較例1〜5の各トナーを作製した。
【0189】
次に、得られた実施例1〜13及び比較例1〜5の各トナーの樹脂微粒子とPAGエステルの組成、添加量を表1にまとめて示す。また、樹脂微粒子とPAGエステルとの相溶性の指標であるΔT、PAGエステルの質量平均分子量、PAGエステルの融点について、以下のようにして測定した。結果を表1に示す。
【0190】
<PAGエステルと樹脂微粒子の相溶性の判別法>
前記樹脂微粒子と前記PAGエステル(比較例5はPEG)の相溶状態の判別を以下のようにして測定した。まず、前記樹脂微粒子と前記PAGエステルをそれぞれ1:1の質量比になるように混合し、乳鉢で擂り潰した後に、目開き100μmのメッシュを通し、PAGエステル/樹脂微粒子の混合物を作製した。
得られたPAGエステル/樹脂微粒子の混合物、及びPAGエステル単体をDSCシステム(示差走査熱量計)(「DSC−60」、島津製作所製)を用いて、以下の方法により測定した。
まず、PAGエステル単体5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。次いで、窒素雰囲気下、20℃から昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱した後、降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。その後、再び昇温速度10℃/minで150℃まで加熱し、DSC曲線を計測した。得られた2回目の昇温のDSC曲線から、DSC−60システム中の解析プログラムを用いて、PAGエステルに由来するピークの値から、前記PAGエステルの融点Tm1を求めた。次に、PAGエステル/樹脂微粒子の混合物に対して同様の測定を行い、混合物中の昇温2回目のPAGエステル由来のピークの値から、融点Tm2を求めた。Tm1−Tm2をΔTとし、ΔTが1℃以上である場合、PAGエステルは樹脂微粒子との1回目の昇温時に互いに相溶することで融点の降下が生じた。
【0191】
<PAGエステルの質量平均分子量の測定>
前記質量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)により、以下のようにして測定した。
まず、トナー中に含まれるポリアルキレングリコールエステル化合物を単離するには、例えば、ポリアルキレングリコールエステル化合物が溶解し、トナー樹脂、ワックスが溶解しない溶媒、例えば水、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトンなどの極性の高い溶媒を用いて、トナーを60℃程度の温度で加熱攪拌する。その後、ろ過等の作業により、液成分を分離し、得られたPAGエステル抽出液を乾燥させ、トナー中に含まれるポリアルキレングリコールエステル化合物を得た。
次に、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラム溶媒を毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整したポリアルキレングリコールエステル化合物のカラム溶媒溶液を50〜200μl注入して測定操作を行った。
試料の分子量測定に当たっては、試料の有する分子量を数種のポリエチレングリコールにより作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリエチレングリコールとしては、三洋化成工業株式会社製の分子量が400、600、1,000、2,000、4,000、6,000、10,000、200,000のものを用いた。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
【0192】
【表1】

【0193】
<トナーの体積平均粒径及び粒度分布の測定>
トナーの体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径(Dn)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer 3 Version3.51)にて解析を行った。
具体的には、ガラス製100mlビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩ネオゲンSC−A、第一工業製薬株式会社製)を0.5ml添加し、各トナー0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いで、イオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II、本多電子株式会社製)で10分間分散処理した。前記分散液を前記マルチサイザーIIIを用い、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定を行った。測定は装置が示す濃度が8±2%になるように前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は粒径の測定再現性の点から前記濃度を8±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
【0194】
<トナーのガラス転移温度の測定>
トナーのガラス転移温度は、TG−DSCシステムTAS−100(理学電機株式会社製)を用いて、以下の方法により測定した。
まず、トナー10mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットにのせ、電気炉中にセットした。室温から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱した後、150℃で10min間放置し、室温まで試料を冷却して10分間放置した。その後、窒素雰囲気下、150℃まで昇温速度10℃/minで加熱して示差走査熱量計(DSC)によりDSC曲線を計測した。得られたDSC曲線から、TG−DSCシステムTAS−100システム中の解析システムを用いて、ガラス転移温度(Tg)近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点からガラス転移温度(Tg)を算出した。
【0195】
−キャリアの作製−
トルエン100質量部に、シリコーン樹脂(「オルガノストレートシリコーン」)100質量部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部、及びカーボンブラック10質量部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、コート層形成液を調製した。得られたコート層形成液を流動床型コーティング装置を用いて、粒径50μmの球状マグネタイト1,000質量部の表面にコーティングして磁性キャリアを作製した。
【0196】
−現像剤の作製−
外添剤処理済の実施例1〜13及び比較例1〜5の各トナー5質量部と前記キャリア95質量部とをボールミルで混合し、実施例1〜13及び比較例1〜5の各二成分現像剤を製造した。
得られた各現像剤を用いて、以下のようにして、定着性(オフセット発生温度及び定着下限温度)、及び耐熱保存性を評価した。結果を表2に示す。
【0197】
<定着性(オフセット発生温度及び定着下限温度)>
タンデム型カラー画像形成装置(「Imagio Neo C350」、株式会社リコー製)の定着ユニットから、シリコーンオイル塗布機構を取り去り、オイルレス定着方式に改造して、温度及び線速を調整可能にチューニングした装置と、普通紙(「タイプTYPE 6000<70W>Y目」、株式会社リコー製)とを用い、定着性(オフセット未発生温度及び定着下限温度)を評価した。
なお、前記タンデム型カラー画像形成装置は、A4サイズの用紙を、毎分35枚連続印刷することができる。このとき、定着ローラの線速を125mm/sとし、ローラ温度を変化させて評価を行った。
【0198】
−オフセット発生温度−
画像形成は、前記タンデム型カラー電子写真装置を用いて、前記普通紙に、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各単色のベタ画像を各単色で、0.85±0.3mg/cmのトナーが現像されるように調整した。得られた画像を加熱ローラの温度を変えて定着し、ホットオフセットの発生する定着温度(オフセット発生温度)を測定し、下記基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:210℃以上
○:210℃未満190℃以上
△:190℃未満170℃以上
×:170℃未満
【0199】
−定着下限温度−
画像は、前記タンデム型カラー電子写真装置を用いて、前記普通紙をセットし、複写テストを行った。得られた定着画像を専用の布パットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって定着下限温度とし、下記基準に基づき評価した。
〔評価基準〕
◎:110℃未満
○:130℃未満110℃以上
△:150℃未満130℃以上
×:150℃以上
【0200】
<耐熱保存性(針入度)>
50mlのガラス容器に各トナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した。このトナーを24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235−1991)により針入度(mm)を測定し、下記基準に基づいて評価した。なお、前記針入度の値が大きいほど耐熱保存性が優れていることを示し、針入度が5mm以下の場合には、使用上問題が発生する可能性が高い。
〔評価基準〕
○:針入度25mm以上
△:針入度15mm以上25mm未満
×:針入度15mm未満
【0201】
【表2】

【0202】
表1及び表2の結果から、実施例1〜9は、樹脂微粒子と相溶性を有する質量平均分子量が2,000以上のPAGエステルを用いたことにより、定着特性、及び耐熱保存性いずれにも優れた結果が得られた。また、懸濁重合法による実施例10、及び溶解懸濁法による実施例11でも、同様の優れた結果が得られた。
また、実施例1〜7、及び9では、樹脂微粒子を添加する量が適切であったため、トナー造粒時のトナー粒子安定性を高めることができ、良好な粒径、粒度分布を示すトナーを得ることができた。今回評価は行ってはいないが、これらのトナーを用いることで良好な画像品質を得ることができると容易に類推できる。
また、実施例8は、樹脂微粒子の添加量が少量であったため、定着特性は良好であるが、粒度分布が若干悪化する傾向となった。
また、樹脂微粒子の添加量がより多い実施例3及び4では、トナー造粒時においてトナー粒子安定性が充分であったため、より均一な粒度分布が得られた。
特に樹脂微粒子との相溶性が大きい実施例1、実施例2、実施例5、及びPAGエステルの添加量が適切である実施例4では、良好な定着特性が得られた。
また、実施例9では、ワックスに炭化水素系ワックスのパラフィンワックスを用いることにより、良好な定着特性が得られると共に、ホットオフセット性の向上が得られた。
また、実施例6では、脂肪酸の炭素鎖数が8と短いため、PAGエステルと樹脂微粒子との相溶性が低下し、界面活性が低下するため、低温定着性の改善効果はやや小さくなった。
また、実施例7では、PAGエステルの添加量が3質量%と少量であったため、低温定着性の改善効果はやや小さくなった。
また、実施例12では、水系媒体相ではなく、トナー材料の溶解乃至分散液中にPAGエステルを添加したため、PAGエステルの樹脂微粒子に対する作用が、トナー材料の溶解乃至分散液中に存在する他の構成材料の影響を受けてしまうため、低温定着性の改善効果はやや小さくなった。
また、実施例13では、樹脂微粒子の体積平均粒径がやや粗大(520nm)であるため、定着性は良好であるが、粒度分布が若干悪化する傾向となった。
【0203】
これに対し、比較例1のトナーは、PAGエステルを添加していないため、高分子量の樹脂微粒子がトナー表面に付着することで本来、本発明のポリエステル樹脂を用いることで得られるはずである良好な定着特性を得ることができなかった。
また、比較例2でも、同様に充分な定着特性が得られず、樹脂微粒子の添加量が増加したことにより、更に定着性が悪化する傾向となった。
また、比較例3では、樹脂微粒子を添加していないため、本発明のトナーの造粒法において、造粒に対して粒子安定性を高める作用を持つ樹脂微粒子が含まれないため、粗大かつ不均一な粒子が得られた。これらのトナーを用いることは画質の面で良好な品質が得られないことは容易に類推できる。
また、比較例4では、添加したPAGエステルの質量平均分子量が低いため、トナー表面に存在する樹脂微粒子に作用するための界面活性が適切でなかったため、充分な低温定着性を発揮することができなかった。また、粒径も若干粗大化し、粒度分布も悪化する傾向となった。
また、比較例5では、PAGエステルの代わりに、エステル化していないPEGを添加したため、樹脂微粒子との相溶性を有さず、良好な低温定着性を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明のトナーは、流動性、定着性等の諸特性が良好であり、優れた低温定着性と耐熱保存性とを両立できるため、高品質な画像形成に好適に使用される。本発明のトナーを用いた本発明の現像剤、トナー入り容器、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法は、高品質な画像形成に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】図1は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する一の例を示す概略説明図である。
【図3】図3は、本発明の画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する他の例を示す概略説明図である。
【図4】図4は、本発明の画像形成装置(タンデム型カラー画像形成装置)により本発明の画像形成方法を実施する一例を示す概略説明図である。
【図5】図5は、図4に示す画像形成装置における一部拡大概略説明図である。
【符号の説明】
【0206】
10 静電潜像担持体(感光体ドラム)
10K ブラック用静電潜像担持体
10Y イエロー用静電潜像担持体
10M マゼンタ用静電潜像担持体
10C シアン用静電潜像担持体
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写クリーニング装置
18 画像形成手段
20 帯電ローラ
21 露光装置
22 二次転写装置
23 ローラ
24 二次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ベルト
28 シート反転装置
30 露光装置
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
40 現像装置
41 現像ベルト
42K 現像剤収容部
42Y 現像剤収容部
42M 現像剤収容部
42C 現像剤収容部
43K 現像剤供給ローラ
43Y 現像剤供給ローラ
43M 現像剤供給ローラ
43C 現像剤供給ローラ
44K 現像ローラ
44Y 現像ローラ
44M 現像ローラ
44C 現像ローラ
45K ブラック用現像器
45Y イエロー用現像器
45M マゼンタ用現像器
45C シアン用現像器
49 レジストローラ
50 中間転写体
51 ローラ
52 分離ローラ
53 手差し給紙路
54 手差しトレイ
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排出トレイ
58 コロナ帯電器
60 クリーニング装置
61 現像器
62 転写帯電器
63 感光体クリーニング装置
64 除電器
70 除電ランプ
80 転写ローラ
90 クリーニング装置
95 転写紙
100 画像形成装置
101 感光体
102 帯電手段
103 露光
104 現像手段
105 記録媒体
107 クリーニング手段
108 転写手段
120 タンデム型現像器
121 加熱ローラ
122 定着ローラ
123 定着ベルト
124 加圧ローラ
125 加熱源
126 クリーニングローラ
127 温度センサ
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
150 複写装置本体
160 帯電装置
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー材料の溶解乃至分散液を、樹脂微粒子を含む水系媒体中に乳化乃至分散させて、造粒してなり、
前記トナー材料及び前記水系媒体の少なくともいずれかが、前記樹脂微粒子と相溶性を有する質量平均分子量が2,000以上のポリアルキレングリコールエステル化合物を含有することを特徴とするトナー。
【請求項2】
水系媒体中に、樹脂微粒子と相溶性を有する質量平均分子量が2,000以上のポリアルキレングリコールエステル化合物を含有する請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
トナー材料の溶解乃至分散液が有機溶剤を含み、造粒時乃至造粒後に前記有機溶剤を除去する請求項1から2のいずれかに記載のトナー。
【請求項4】
トナー材料が、活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を含み、
造粒が、前記水系媒体中で、前記活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを反応させて接着性基材を生成しつつ該接着性基材による粒子を得ることにより行われる請求項1から3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
ポリアルキレングリコールエステル化合物が、下記一般式(1)で表されるカルボン酸と、下記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコールとのエステル化物である請求項1から4のいずれかに記載のトナー。
<一般式(1)>
R−COOH
ただし、前記一般式(1)中、Rは、炭素数10以上のアルキル基を表す。
<一般式(2)>
HO−〔(CH−O〕−OH
ただし、前記一般式(2)中、n及びmは、それぞれ2以上の整数を表す。
【請求項6】
ポリアルキレングリコールエステル化合物の添加量が、トナー組成物全質量に対し5質量%以上である請求項1から5のいずれかに記載のトナー。
【請求項7】
ポリアルキレングリコールエステル化合物の融点が、40℃以上である請求項1から6のいずれかに記載のトナー。
【請求項8】
樹脂微粒子の体積平均粒径が5〜500nmである請求項1から7のいずれかに記載のトナー。
【請求項9】
樹脂微粒子のトナーにおける含有量が、0.5質量%以上である請求項1から8のいずれかに記載のトナー。
【請求項10】
トナー材料がワックス類を含み、該ワックス類が、融点が50℃以上の炭化水素系ワックスを含有する請求項1から9のいずれかに記載のトナー。
【請求項11】
トナーのガラス転移温度(Tg)が50〜80℃である請求項1から10のいずれかに記載のトナー。
【請求項12】
体積平均粒径(Dv)が3〜8μmであり、かつ該体積平均粒径(Dv)と数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が1.00〜1.25である請求項1から11のいずれかに記載のトナー。
【請求項13】
トナー材料を溶解乃至分散させた溶解乃至分散液を、樹脂微粒子を含む水系媒体中に乳化乃至分散させて、造粒し、
前記トナー材料及び前記水系媒体の少なくともいずれかが、前記樹脂微粒子と相溶性を有する質量平均分子量が2,000以上のポリアルキレングリコールエステル化合物を含有することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項14】
トナー材料の溶解乃至分散液が有機溶剤を含み、造粒時乃至造粒後に前記有機溶剤を除去する請求項13に記載のトナーの製造方法。
【請求項15】
トナー材料が、活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を含み、
造粒が、前記水系媒体中で、前記活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを反応させて接着性基材を生成しつつ該接着性基材による粒子を得ることにより行われる請求項13から14のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項16】
請求項1から12のいずれかに記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤。
【請求項17】
請求項1から12のいずれかに記載のトナーが容器に収容されていることを特徴とするトナー入り容器。
【請求項18】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に請求項1から12のいずれかに記載のトナーで静電潜像を現像して可視像を形成する現像手段を少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項19】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を請求項1から12のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項20】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を請求項1から12のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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