説明

トナー及びトナー粒子の製造方法

【課題】 より高温の環境においても耐保存性を満足し、さらに高温使用時においても高い耐久性を保ちながら、高現像性・高転写性・低温定着性を同時に満たすトナーを提供する。
【解決手段】 結着樹脂、着色剤、極性樹脂Hおよび極性樹脂Lの2種類の極性樹脂を少なくとも含有し、水系媒体中で造粒することによって得られるトナー粒子を含有するトナーであって、結着樹脂、極性樹脂Hおよび極性樹脂Lの溶解度パラメータ、ガラス転移点、重量平均分子量および樹脂の添加部数が特定の関係を満たすことを特徴とするトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法の如き記録方法に用いられるトナーおよびトナー粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いたレーザープリンターや複写機においては急速に高速化が進んでおり、より現像性・転写性・低温定着性に優れたトナーが求められている。特に、低温定着性に関しては消費電力の低減にもつながることから、環境対応が強く求められる近年のトナー開発においては必須の要件となってきている。
【0003】
一方で、レーザープリンター・複写機市場の拡大に伴い、高温高湿環境下での保管時や使用時においても、トナーが安定してその性能を発揮することが求められている。また、機器の小型化や静音化に伴う機器内部のファンレス化などにより機器内の昇温も大きくなる傾向にある。そのため、トナーにはより高い耐熱性が求められてきている。
【0004】
上記した高現像性・高転写性・低温定着性と高耐熱性という目的を同時に達成するために、従来からトナー表層が耐熱性、耐久性を保つよう設計され、かつ、トナー粒子内層が低温定着性を持つよう設計された、所謂コアシェル構造を持つトナーが検討されている。
【0005】
特許文献1においては、低温定着時においても光沢度の高い画像を実現でき、過酷な使用状況下であっても高い耐久性を有するトナーを提供することを目的として、コアとシェルの間に酸価を有する低分子量のビニル系極性樹脂を存在させたトナーが開示されている。特許文献2においては、懸濁重合法でトナーを製造するにあたり、SP値が9.0〜15.0(cal/cm1/2でありガラス転移点が結着樹脂のガラス転移点より高い樹脂を添加する懸濁重合トナーの製造方法が開示されている。特許文献3においては、コアを1層以上のシェルで被覆したコアシェル構造をとるトナーにおいて、ワックスを含有するシェル層が存在し、シェル層を構成する樹脂の中で最大のSP値を示す樹脂のSP値と結着樹脂のSP値との差が0.20〜0.70((cal/cm1/2)以下であるトナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−268366号公報
【特許文献2】特開平05−150549号公報
【特許文献3】特開2008−064837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、現在ではより高い基準でのトナーの耐熱性が求められており、上記従来例においてその基準を満足する程の耐久性を備えたトナーを得ることは難しかった。さらに、高い耐久性を有しつつ、高現像性・高転写性・低温定着性を同時に満たすトナーを得ることは困難である。本発明の課題は、より高温の環境においても耐保存性を満足し、さらに高温使用時においても高い耐久性を保ちながら、高現像性・高転写性・低温定着性を同時に満たすトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、結着樹脂、着色剤、極性樹脂H及び極性樹脂Lを含有するトナー粒子を有するトナーであって、該トナー粒子は、水系媒体中で造粒することによって得られ、該極性樹脂H及び該極性樹脂Lがともにカルボキシル基を有する酸価3.0(mgKOH/g)以上の極性樹脂であり、該結着樹脂のSP値をδB((cal/cm1/2)、該極性樹脂HのSP値をδH((cal/cm1/2)、該極性樹脂LのSP値をδL((cal/cm1/2)とした時、
8.70≦δB≦9.50
1.00≦δH−δB≦3.00
|δL−δB|≦0.70
を満たし、該極性樹脂Hのガラス転移点をTgH(℃)、該極性樹脂Lのガラス転移点をTgL(℃)とした時、
65.0≦TgH≦85.0
75.0≦TgL≦105.0
TgH<TgL
を満たし、該極性樹脂Hの重量平均分子量をMwH、該極性樹脂Lの重量平均分子量をMwLとした時、MwHが5.0×10以上1.5×10以下であり、MwLが1.0×10以上3.0×10以下であり、結着樹脂100.0質量部に対する極性樹脂Hの含有量が1.0質量部以上10.0質量部以下であり、結着樹脂100.0質量部に対する極性樹脂Lの含有量が5.0質量部以上25.0質量部以下であることを特徴とするトナーに関する。
【0009】
また、本発明は、上記トナーに用いられるトナー粒子を得る為のトナー粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より高温の環境においても耐保存性を満足し、さらに高温使用時においても高い耐久性を保ちながら、高現像性・高転写性・低温定着性を同時に満たすトナーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】撹拌羽根を有する撹拌装置の説明図である。
【図2】固定子及び回転子を有する撹拌装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従来より、低温定着性を保ちながらトナーの耐熱性を高めるために、トナー粒子表層部に高ガラス転移点(以下Tgとも言う)の樹脂を用い、トナー粒子内層部に低Tgの樹脂を用い、トナー粒子の構造をコアシェル構造とする検討が行われてきた。このとき、用いる樹脂の性質等によって、トナー粒子の内層と表層の相溶状態が二つのタイプに分かれる。一方は、トナー粒子の内層と表層とが相分離しており、トナー粒子の内層と表層がはっきりと分かれているタイプである。そして他方は、トナー粒子の内層と表層とが比較的相溶しており、トナー粒子の内層と表層との間にはっきりとした境界を有さないタイプである。トナー粒子の内層と表層との相溶状態は、トナー粒子表層に用いる樹脂とトナー粒子内層に用いる樹脂との溶解度パラメーター(以下SP値とも言う)の差を調整することによって制御することが可能である。この様に、2つの成分の混ざり易さを判断する指標として、2つの成分の溶解度パラメーターの差を用いることは当業者に慣用されているものである(例えば、特開平10−090947や特開2000−112186等参照)。
【0013】
トナー粒子表層に用いる樹脂とトナー粒子内層に用いる樹脂のSP値の差が大きくなる程、2つの樹脂は相分離する傾向にある。このようなタイプのコアシェル構造の場合には、トナー粒子の内層と表層との間に明確な界面が存在すると考えられる。そのため、トナー粒子内層の低Tgの樹脂がトナー粒子表層に影響を及ぼしにくく、高温時の保存性を満足しやすい。しかしながら、トナー粒子内層のTgとトナー粒子表層のTgが大きく異なるため、トナーがトナー粒子内層のTgを超える温度に加熱された場合には、トナー粒子の内層と表層の熱膨張率の差が大きくなりやすい。その結果、トナー粒子表層の剥がれや割れ等が発生し、トナーの高温使用時の耐久性低下につながる場合がある。また、一度、トナー粒子表層の剥がれや割れ等が発生した場合には、トナーの保存安定性も低下してしまう。
【0014】
一方、トナー粒子表層に用いる樹脂とトナー粒子内層に用いる樹脂のSP値の差が小さくなる程、2つの樹脂は相溶する傾向にある。この場合、トナー粒子の内層と表層との間には明確な界面が存在しないと考えられる。そのため、トナーが樹脂BのTg以上の温度に加熱された場合においても内層と表層との界面における歪が小さいため、内層と表層との間の力学的な強度は高いと考えられる。その結果、上記構成のトナーは高温での使用時および保管時において耐久性の低下は小さいと考えられる。反面、内層と表層が連続的に存在することからトナー粒子表層によるトナー粒子内層の遮蔽性が低いため、結着樹脂のTgが充分に高い場合においても保存安定性が高まりにくい。すなわち、ブロッキング等が発生しやすいことが考えられる。
【0015】
本発明のトナーは、トナー粒子に含有させる極性樹脂の溶解度パラメータ、ガラス転移点、分子量、およびその含有量を一定の範囲内とし、さらに極性樹脂と結着樹脂の溶解度パラメーターの関係を規定し、水系媒体中でトナー粒子を造粒することで、より高温の環境においても保存性を満足しながら、高現像性・高転写性・低温定着性を同時に満たすことができる。以下、詳細に説明する。
【0016】
本発明のトナーには、カルボキシル基を有し、且つ酸価3.0(mgKOH/g)以上の極性樹脂H及び極性樹脂Lが用いられる。さらに、結着樹脂のSP値(δB)と極性樹脂HのSP値(δH)が1.00≦δH−δB≦3.00の関係を満たし、δBと極性樹脂LのSP値(δL)が|δL−δB|≦0.70の関係を満たす。この様な材料を用いて水系媒体中での造粒によってトナー粒子を得た場合、SP値の序列と極性樹脂が持つ酸価により、トナー粒子は内側から、結着樹脂からなる内層、結着樹脂と極性樹脂Lが相溶した中間層、そして極性樹脂Hからなる表層の3層構造をとると考えられる。
【0017】
ここで、本発明のトナーにおけるトナー粒子内層からトナー粒子表層にかけての物性値のプロファイルを考える。まず、各樹脂のSP値の観点から考えると、内層を形成する結着樹脂と中間層を形成する極性樹脂Lとの間のSP値差は小さく、逆に、表層を形成する極性樹脂Hと中間層を形成する極性樹脂Lとの間のSP値差は大きい。このことから、内層と中間層との間にははっきりとした界面が存在せず、中間層と表層との間には界面が存在すると考えられる。このような構造を有するトナー粒子のTgのプロファイルについて考えると、中間層においては結着樹脂と極性樹脂Lが相溶していることから、内層近傍の中間層のTgは結着樹脂のTgに近い。一方、表層近傍における中間層のTgでは極性樹脂LのTgの影響が強くなるが、極性樹脂Lの含有量は結着樹脂の含有量と比較して少ないことから、表層との界面付近においても極性樹脂Lと結着樹脂のTgの間になると考えられる。即ち、Tgのプロファイルはトナー粒子内層においては結着樹脂のTgとほぼ等しい。トナー粒子中間層のTgにおいては、内層近傍では結着樹脂のTgに近く、トナー粒子表層近傍では極性樹脂LのTgに近づく。さらに、トナー粒子表層のTgは、極性樹脂HのTgとほぼ等しいプロファイルとなる。
【0018】
このような構成により、本発明のトナーは、前述した相分離型コアシェル構造トナーおよび相溶型コアシェル構造トナーの各々の課題を解決することが可能となると考えられる。即ち、本発明のトナーにおいては、トナーが結着樹脂のTg以上の温度に加熱された場合においても、トナー粒子における中間層と表層の界面の歪みが小さく、中間層と表層の間の力学的な強度は高い。その結果、本発明のトナーは高温での使用時および保管時における耐久性の低下は小さい。また、トナー粒子中間層と表層との間にSP値差の大きな界面が存在することから、トナー粒子表層によるトナー粒子内層の遮蔽性を高くすることができる。さらに、上記構成をとることにより、極性樹脂Hおよび極性樹脂LのTgを低く設計したり、極性樹脂Hおよび極性樹脂Lの分子量を低く設計したり、極性樹脂Hおよび極性樹脂Lの含有量を少なくした場合にも従来のトナーと同様の耐久性を持たせることが可能となる。よって、従来のトナーと比較して、トナーの耐久性と低温定着性を高いレベルで両立することが可能となる。
【0019】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂のSP値δB((cal/cm1/2)は8.70以上9.50以下である。より好ましくは、8.90以上9.30以下であり、さらに好ましくは9.00以上9.20以下である。δBを上記の範囲内とすることで、前述した様な内層、中間層及びトナー粒子表層からなるトナー粒子を得ることができる。δBは、高温保管時および高温使用時におけるトナーの耐久性、保存安定性を高めることに対する影響が大きい。δBは、8.90以上9.30以下であることが好ましく、9.00以上9.20以下であることがさらに好ましい。δBが8.70より小さい場合、トナー全体の親水性が低くなりすぎるため、水系媒体中での造粒中に粒子が不安定になり、適切な粒度分布が得られなくなるなどの弊害が生じる。また、δBが9.50より大きい場合、トナー全体の親水性が高まりすぎるため、水系媒体中での造粒中に小粒径粒子が発生しやすくなる、帯電性の湿度依存性が高まるなどの弊害が生じる。
【0020】
本発明のトナーにおいて、極性樹脂HのSP値δH((cal/cm1/2)と結着樹脂のSP値δB((cal/cm1/2)との差δH−δB((cal/cm1/2)は1.00以上3.00以下である。より好ましくは1.30以上2.50以下である。さらに好ましくは1.30以上2.00以下である。δH−δBが上記の範囲内であれば、トナー粒子における表層と中間層の間の界面形成に寄与し、高温保管時の保存安定性を高めることができる。δH−δBは、1.30以上2.50以下であることが好ましく、1.30以上2.00以下であることがさらに好ましい。δH−δBが1.00未満の場合、表層と中間層の間に界面が形成されないため、表層によって内層が効果的に遮蔽されず、高温保管時の保存安定性に弊害を生じる。δH−δBが3.00を超える場合、極性樹脂Hの親水性が高すぎるため、水系媒体中で造粒を行った場合には小粒径粒子が生成しやすくなるなどの弊害が生じる。
【0021】
本発明のトナーにおいて、極性樹脂LのSP値(δL)と結着樹脂のSP値(δB)との差の絶対値|δL−δB|((cal/cm1/2)が0.70以下である。より好ましくはδL−δBが−0.20以上0.50以下であり、さらに好ましくはδL−δBが−0.20以上0.30以下である。極性樹脂Lは、酸価が3.0以上であるため、水系媒体中でトナー粒子を造粒する場合には、δLがδBより小さくても、中間層を形成し得る。従って、|δL−δB|が0.70以下であれば、トナー粒子における内層と中間層の間の密着性に寄与し、高温使用時におけるトナーの耐久性を高めることができる。|δL−δB|が0.70を超える場合、内層と中間層の間の相溶性が低いため、内層と中間層の間での加熱による歪が大きくなり、高温使用時における耐久性に弊害を生じる。
【0022】
なお、各樹脂のSP値はそのモノマー組成を変化させることにより、制御することが可能である。具体的には、SP値を高める場合にはより親水性のモノマーを用い、SP値を低める場合にはより疎水性のモノマーを用いることでSP値の制御が可能である。
【0023】
また、本発明のトナーにおいて、極性樹脂Hのガラス転移点TgH(℃)は65.0以上85.0以下である。TgHは65.0以上80.0以下であることが好ましく、65.0以上75.0以下であることがさらに好ましい。TgHが65.0以上85.0以下である場合、TgHはトナー粒子表層のTgに関連することから、高温保管時におけるトナーの保存安定性およびトナーの低温定着性を高めることができる。TgHが65.0未満である場合、トナー粒子表層のTgが低くなりすぎるため、高温保管時の保存安定性に弊害を生じる。TgHが85.0を超える場合、トナー粒子表層のTgが高くなりすぎるため、低温定着性に弊害を生じる。
【0024】
本発明のトナーにおいて、極性樹脂Lのガラス転移点TgL(℃)は75.0以上105.0以下である。TgLは80.0以上95.0以下であることが好ましく、85.0以上95.0以下であることがさらに好ましい。TgLが上記の範囲内であれば、高温使用時におけるトナーの耐久性およびトナーの低温定着性を高めることができる。TgLが75.0未満である場合、トナー粒子中間層のTgが低くなりすぎるため、トナー粒子表層とのTg差が大きくなり、高温使用時の耐久性および保存安定性に弊害を生じる。TgLが105.0を超える場合、トナー粒子中間層のTgが高くなりすぎるため、トナー粒子表層とのTg差が大きくなり、高温使用時の耐久性および低温定着性に弊害を生じる。
【0025】
本発明においてはさらにTgL−TgHが30以下であることが好ましい。TgL−TgHが上記の範囲内であれば、トナー粒子中間層とトナー粒子表層の間のTg差を小さく設計しやすいため、高温使用時のトナーの耐久性および保存安定性をさらに向上させることができる。
【0026】
なお、各樹脂のTgはそのモノマー組成や分子量を変化させることによって制御することが可能である。
【0027】
本発明のトナーにおいて、極性樹脂Hの重量平均分子量MwHは5.0×10以上1.5×10以下である。MwHは、5.0×10以上1.0×10以下であることが好ましく、6.0×10以上9.0×10以下であることがさらに好ましい。MwHが上記の範囲内であれば、高温保管時におけるトナーの保存安定性、高温使用時におけるトナーの耐久性およびトナーの低温定着性を高めることができる。MwHが5.0×10未満の場合、トナー粒子表層の分子量が低くなりすぎるため、高温使用時におけるトナーの耐久性および高温保管時におけるトナーの保存安定性に弊害を生じる。MwHが1.5×10を超える場合、トナー粒子表層の分子量が高くなりすぎるため、トナーの低温定着性に弊害を生じる。また、水系媒体中での造粒中に粒子の粘度が高くなることにより、粒度分布に弊害を生じる。
【0028】
本発明のトナーにおいて、極性樹脂Lの重量平均分子量MwLは1.0×10以上3.0×10以下である。MwLは、1.2×10以上2.0×10以下であることが好ましく、1.2×10以上1.8×10以下であることがより好ましい。MwLが上記の範囲内であれば、高温保管時におけるトナーの保存安定性、高温使用時におけるトナーの耐久性およびトナーの低温定着性を高めることができる。MwLが1.0×10未満の場合、トナー粒子中間層の分子量が低くなりすぎるため、高温使用時におけるトナーの耐久性および高温保管時におけるトナーの保存安定性に弊害を生じる。MwLが3.0×10を超える場合、トナー粒子中間層の分子量が高くなりすぎるため、トナーの低温定着性に弊害を生じる。また、水系媒体中での造粒中に粒子の粘度が高くなることにより、粒度分布に弊害を生じる。
なお、各樹脂の分子量は重合条件を変化させることにより制御することが可能である。
【0029】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂100.0質量部に対する極性樹脂Hの含有量(質量部)は1.0質量部以上10.0質量部以下である。また、極性樹脂Hの含有量は2.0質量部以上8.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以上6.0質量部以下であることがさらに好ましい。極性樹脂Hの含有量が上記の範囲内であれば、水系媒体中でトナー粒子を造粒する場合において、トナー粒子表層を適度な厚みにすることができ、高温保管時におけるトナーの保存安定性、高温使用時におけるトナーの耐久性およびトナーの低温定着性を高めることができる。極性樹脂Hの含有量が1.0質量部未満の場合、トナー粒子表層の厚みが薄くなりすぎるため、高温使用時におけるトナーの耐久性および高温保管時におけるトナーの保存安定性に弊害を生じる。極性樹脂Hの含有量が10.0質量部を超える場合、トナー粒子表層の厚みが厚くなりすぎるため、トナーの低温定着性に弊害を生じる。また、水系媒体中での造粒中に粒子の粘度が高くなることにより、粒度分布に弊害を生じる。
【0030】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂100.0質量部に対する極性樹脂Lの含有量(質量部)は5.0質量部以上25.0質量部以下である。また、極性樹脂Lの含有量は5.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、10.0質量部以上17.0質量部以下であることがより好ましい。極性樹脂Lの含有量が上記の範囲内であれば、トナー粒子中間層を適度な厚みにすることができ、高温保管時におけるトナーの保存安定性、高温使用時におけるトナーの耐久性およびトナーの低温定着性を高めることができる。極性樹脂Lの含有量が5.0質量部未満の場合、トナー粒子中間層の厚みが薄くなりすぎるため、高温使用時におけるトナーの耐久性および高温保管時におけるトナーの保存安定性に弊害を生じる。極性樹脂Lの含有量が25.0質量部を超える場合、トナー粒子中間層の厚みが厚くなりすぎるため、トナーの低温定着性に弊害を生じる。また、水系媒体中での造粒中に粒子の粘度が高くなることにより、粒度分布に弊害を生じる。
【0031】
本発明においては、δHが10.00以上12.00以下であることが好ましい。より好ましくは10.20以上11.00以下である。δHが10.00以上12.00以下である場合、トナー粒子表層によるトナー粒子内層の遮蔽性がより高まることにより、高温保管時におけるトナーの保存安定性がさらに高まる。また、トナー粒子表層の親水性が最適となるために、トナー粒子表層の吸水による可塑化によるトナーの凝集が抑制され、高湿環境下における保存安定性を高めることができる。
【0032】
本発明においては、δLが8.80以上10.00以下であることが好ましい。より好ましくは8.90以上9.30以下である。δLが8.80以上10.00以下である場合、トナー粒子内層とトナー粒子中間層の密着性がより高まることにより、高温使用時におけるトナーの耐久性をさらに高めることができる。
【0033】
本発明においては、さらにδH−δLが1.00以上3.00以下であることが好ましい。より好ましくは1.20以上2.00以下である。δH−δLが上記の範囲内であれば、トナー粒子における表層と中間層の間の界面形成に寄与し、高温保管時の保存安定性をさらに高めることができる。
【0034】
本発明においては、結着樹脂の酸価AvB(mgKOH/g)が0.0以上2.0以下であり、極性樹脂Hの酸価AvH(mgKOH/g)が5.0以上20.0以下であり、極性樹脂Lの酸価AvL(mgKOH/g)が8.0以上25.0以下であり、AvH<AvLであることが好ましい。より好ましくは、AvBは0.0以上1.0以下、AvHは5.0以上10.0以下、AvLは15.0以上25.0以下である。AvB、AvHおよびAvLが上記数値範囲にあり、上記関係性を満たす場合、トナー粒子内層のトナー粒子表層による遮蔽性が高まる。これにより、高温保管時の保存安定性がさらに向上する。また、AvHとAvLの関係から、トナー粒子中間層とトナー粒子表層の界面の酸価の差が小さくなり、さらに、トナー粒子中間層とトナー粒子表層の密着性が向上する。これにより、帯電性が安定化するとともに高温使用時の耐久性がさらに向上する。
【0035】
本発明においては、極性樹脂H及び極性樹脂Lがヒドロキシル基を有し、極性樹脂Hの水酸基価OHvH(mgKOH/g)が15.0以上30.0以下であり、極性樹脂Lの水酸基化OHvL(mgKOH/g)が8.0以上25.0以下であることが好ましい。より好ましくは、OHvHは20.0以上30.0以下であり、OHvLは8.0以上15.0以下である。OHvHおよびOHvLが上記数値範囲にある場合、高温/高湿環境下での使用時におけるトナーの帯電安定性がさらに向上する。
なお、各樹脂の酸価および水酸基価はそのモノマー組成を変えることにより制御可能である。
【0036】
本発明のトナーに用いられる極性樹脂Hおよび極性樹脂Lに関しては、カルボキシル基を有するものであればその種類は特段限定されない。極性樹脂Hや極性樹脂Lとして用いられる樹脂には、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸とスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の不飽和カルボン酸エステル、マレイン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸無水物、アクリロニトリル等のニトリル系ビニル単量体、塩化ビニル等の含ハロゲン系ビニル単量体、ニトロスチレン等のニトロ系ビニル単量体などとの共重合体などのカルボキシル基含有ビニル系樹脂;カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂;カルボキシル基含有ポリウレタン系樹脂;カルボキシル基含有ポリアミド系樹脂;が挙げられる。中でも高温放置時の帯電安定性、トナー粒子内層とトナー粒子中間層の密着性およびトナー粒子表層によるトナー粒子内層の遮蔽性の観点から、極性樹脂Lとしてカルボキシル基含有ビニル系樹脂を、極性樹脂Hとしてカルボキシル基含有ポリエステル系樹脂をそれぞれ用いることが好ましい。ビニル系極性樹脂とポリエステル系極性樹脂を併用することにより高温使用時の耐久性、帯電安定性および高温保管時の保存安定性がさらに向上する。
【0037】
本発明においては、極性樹脂Lがカルボキシル基含有ビニル系樹脂であり、さらに極性樹脂Lがヒドロキシル基を有していることが好ましい。また、極性樹脂LのAvL及びOHvLが上記の範囲内であることが特に好ましい。このような極性樹脂Lをトナーに用いると、|δL−δB|を好適に制御することができ、トナー粒子内層からトナー粒子表層にかけてのプロファイルを上述したような状態に近づけることができる。
【0038】
本発明においてはさらに極性樹脂Lのピーク分子量(以下Mpとも言う)が1.0×10以上3.0×10以下であり、極性樹脂Lの低分子量成分(分子量がMp未満の領域)の酸価をα(mgKOH/g)、高分子量成分(分子量がMp以上の領域)の酸価をβ(mgKOH/g)としたとき、0.8≦α/β≦1.2を満たすことが好ましい。Mp、αおよびβが上記関係を満たす場合、中間層における酸価の分布が均等となることで、高温使用時におけるトナーの帯電安定性がさらに向上する。なお、極性樹脂LのMp、αおよびβは重合反応時の反応条件を変化させることにより制御可能である。
【0039】
トナーに用いられる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。ビニル系樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は混合して使用できる。なお、ビニル系樹脂としてはスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等に代表されるスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等に代表される不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸等に代表される不飽和カルボン酸;マレイン酸等に代表される不飽和ジカルボン酸;マレイン酸無水物等に代表される不飽和ジカルボン酸無水物;アクリロニトリル等に代表されるニトリル系ビニル単量体;塩化ビニル等に代表される含ハロゲン系ビニル単量体;ニトロスチレン等に代表されるニトロ系ビニル単量体;等の単量体の単重合体または共重合体を用いることができる。
【0040】
トナーに用いられる着色剤としては、従来公知の黒/イエロー/マゼンタ/シアンの各色および他の色の顔料および染料、磁性体等を用いることができる。黒色着色剤としては、具体的にはカーボンブラック等に代表される黒色顔料等が用いられる。イエロー着色剤としては、モノアゾ化合物;ジスアゾ化合物;縮合アゾ化合物;イソインドリノン化合物;ベンズイミダゾロン化合物;アンスラキノン化合物;アゾ金属錯体;メチン化合物;アリルアミド化合物等に代表されるイエロー顔料およびイエロー染料等が用いられる。マゼンタ着色剤としては、モノアゾ化合物;縮合アゾ化合物;ジケトピロロピロール化合物;アントラキノン化合物;キナクリドン化合物;塩基染料レーキ化合物;ナフトール化合物:ベンズイミダゾロン化合物;チオインジゴ化合物;ペリレン化合物等に代表されるマゼンタ顔料およびマゼンタ染料等が挙げられる。シアン着色剤としては、具体的には以下の銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物;塩基染料レ−キ化合物等に代表されるシアン顔料およびシアン染料等が挙げられる。
【0041】
さらに、着色剤として磁性材料を含有させ磁性トナーとすることも可能である。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもできる。磁性材料としては、以下の、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等に代表される酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケル等に代表される金属あるいはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金及びその混合物等が挙げられる。
【0042】
本発明のトナーには、スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体(以下スルホン酸基等を有する重合体とも言う)を含有することが好ましい。スルホン酸基等を有する重合体を含有する場合、高温使用時の帯電安定性がさらに高まる。トナー中に含有させる量としては、結着樹脂100.0質量部に対し0.1乃至3.0質量部が好ましい。上記重合体を製造するためのスルホン酸基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸が挙げられる。上記重合体は、上記単量体の単重合体であってもよいが、上記単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。上記単量体と共重合体をなす単量体としては、結着樹脂の項に示したビニル系単量体が挙げられる。
【0043】
本発明のトナーは、荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等に代表される芳香族カルボン酸の金属化合物;アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体;ホウ素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。また、正帯電制御剤として以下の、四級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;ニグロシン系化合物;イミダゾール化合物が挙げられる。帯電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではない。内部添加する場合は、好ましくは結着樹脂100.0質量部に対して0.1乃至10質量部、より好ましくは0.1乃至5質量部の範囲で用いられる。また、外部添加する場合、トナー粒子100.0質量部に対し、好ましくは0.005乃至1.0質量部、より好ましくは0.01乃至0.3質量部である。
【0044】
本発明のトナーは、離型剤としてワックスを含有してもよい。ワックスの種類としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス及びその誘導体;高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸;酸アミドワックス;エステルワックス;硬化ヒマシ油及びその誘導体;植物系ワックス;動物性ワックスが挙げられる。この中で特に、離型性に優れるという観点からパラフィンワックス、エステルワックス及び炭化水素ワックスが好ましい。ワックスは結着樹脂100.0質量部に対し1.0乃至40.0質量部を含有させることが好ましい。より好ましくは、3.0乃至25.0質量部であることがよい。ワックスの含有量が1.0乃至40.0質量部の場合には、トナーの加熱加圧時に適度なワックスのブリード性を持てることにより、高温時の耐巻きつき性が向上する。さらに、現像時や転写時のトナーへのストレスを受けてもトナー表面へのワックスの露出が少なく、トナー個々の均一な帯電性を得ることができる。
【0045】
本発明のトナーには、流動性を向上させる目的で、流動性向上剤を添加してもよい。流動性向上剤の種類としては、フッ化ビニリデン微粉未、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛等の脂肪酸金属塩;酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末等の金属酸化物または、上記金属酸化物を疎水化処理した粉末;及び湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等のシリカ微粉末または、それらシリカにシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルの如き処理剤により表面処理を施した表面処理シリカ微粉末が挙げられる。流動性向上剤は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.01乃至5質量部を使用することが好ましい。
【0046】
本発明に用いられるトナー粒子は、水系媒体中において造粒する工程を含む製造方法によって製造される。具体的には;有機溶媒中にトナー構成成分を溶解あるいは分散させた後、水系媒体中で造粒後有機溶媒を揮発させる懸濁造粒法;トナー構成成分を溶解あるいは分散させた重合性単量体組成物を直接水系媒体中で造粒、重合する懸濁重合法;その後シード重合を利用しトナーに表層を設ける方法;界面重縮合や液中乾燥に代表されるマイクロカプセル法;が挙げられる。これらの中で、特に懸濁重合法が好ましい。懸濁重合法においては、重合性単量体に着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、ワックス、帯電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解または分散して重合性単量体組成物とする。その後、この重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する水系媒体中に適当な撹拌器を用いて分散し、重合性単量体組成物中の重合性単量体を重合し、所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。上記トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、必要により流動性向上剤を混合し表面に付着させることで、トナーを得ることができる。
【0047】
本発明において、懸濁重合法を用いてトナーを製造する場合、トナー粒子の内層、中間層及び表層からなる3層構造がより均一に近い状態で得られるようになるため、高温保管時の保存安定性や、高温使用時の耐久性がさらに向上する。また、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、帯電量の分布も比較的均一となり現像特性が満足できるトナーが得られやすい。また外添剤への依存度が少ない高い転写性を維持するトナーが得られやすい。懸濁重合法によるトナーを製造する際の重合性単量体としては上述したビニル重合性単量体が挙げられる。
【0048】
重合開始剤としては、油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤が用いられる。好ましくは、重合反応時の反応温度における半減期が0.5乃至30時間のものがよい。また重合性単量体100.0質量部に対し0.5乃至20.0質量部の添加量で重合反応を行うと、通常、ピーク分子量10000乃至100000の重合体が得られ、適当な強度と溶融特性を有するトナーを得ることができる。
【0049】
重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレ−ト、t−ブチルパーオキシイソブチレ−ト、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。また、重合性単量体の重合度を制御する為に、公知の連鎖移動剤、重合禁止剤等を更に添加し用いることも可能である。
【0050】
上記水系媒体には、無機または有機の分散安定剤を添加することがよい。分散安定剤として使用する無機化合物の種類としては、ヒドロキシアパタイト、第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。分散安定剤として使用する有機化合物の種類としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプンが挙げられる。これらの分散安定剤は、重合性単量体100.0質量部に対して、0.2乃至20.0質量部を使用することが好ましい。また、これら分散安定剤の微細な分散のために、界面活性剤を使用してもよい。分散安定剤の所期の作用を促進するためのものである。界面活性剤の種類としては、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが挙げられる。分散安定剤として、無機化合物を用いる場合、市販のものをそのまま用いてもよいが、より細かい粒子を得るために、水系媒体中にて上記無機化合物を生成させて用いてもよい。例えば、ヒドロキシアパタイトや第三リン酸カルシウムなどのリン酸カルシウム類の場合、高撹拌下において、リン酸塩水溶液とカルシウム塩水溶液を混合するとよい。
【0051】
懸濁重合法でトナー粒子を得る場合において、水系媒体中での造粒工程の前に、以下に挙げる撹拌装置を用いて重合性単量体組成物を処理する工程を有することが好ましい。すなわち、重合性単量体組成物を高速回転する撹拌羽根と撹拌羽根の周囲に撹拌羽根と逆方向に高速回転するスクリーンとを具備した撹拌装置、あるいは、複数のスリットを具備するリング状の突起が同心円上に多段に形成された回転子と、同様の形状の固定子が一定間隔を保ち、相互に噛み合うように同軸上に設置された撹拌装置を用いることが好ましい。上記した撹拌装置による処理を行うことで、極性樹脂Hおよび極性樹脂Lが重合性単量体組成物中でより均一に分散するため、トナー粒子の内層、中間層及び表層からなる3層構造がさらに均一に構成される。よって、高温保管時の保存安定性および高温使用時の耐久性がさらに向上する。また、トナー中におけるカルボキシル基等の極性基の分布も均一となるため、高温環境下における帯電安定性も向上する。
【0052】
上記した高速回転する撹拌羽根と前記撹拌羽根の周囲に前記撹拌羽根と逆方向に高速回転するスクリーンとを具備した撹拌装置の例として、撹拌装置の全体図を図1(a)に、撹拌部の断面図を図1(b)および図1(c)にそれぞれ示す。分散容器104内に投入された重合性単量体組成物は、撹拌羽根101が、撹拌室103の内部にて高速回転することにより、スクリーン102の内壁と羽根先との間の微小な間隙においてせん断力を受け、重合性単量体組成物中の極性樹脂が分散される。そして、撹拌室103が撹拌羽根101の回転方向と逆方向に回転するものである為、両者の相対的な回転数を上げることができ、再凝集した顔料へかかるせん断力を高めることができる。これにより、従来の撹拌装置よりも、極性樹脂を高度に分散することが可能である。
【0053】
更に、撹拌室103における吐出口105が、撹拌羽根101の回転方向と逆方向に回転するものである為、その回転に伴い流体の吐出位置が変化し、分散容器104内で重合性単量体組成物が、良好に循環する。また、この流れが、吐出口105と微小隙間を置いて回転する撹拌羽根101の回転による吐出流に加わる為、更に早い吐出流が得られるものであり、より一層、全体の循環が促進される。
【0054】
更に、撹拌室103内部の撹拌羽根101上部に導入口110を設けることにより、重合性単量体組成物が、導入口110より分散容器104内に排出された直後、互いに高速で逆方向に回転する撹拌羽根101とスクリーン102により高速せん断を受け、撹拌室103の内側から吐出口105を通過することが可能となる。すなわち、重合性単量体組成物が、高速せん断処理を受けずに吐出口105を通過することなく、調整タンクに戻ること(ショートパス)を抑制することができ、分散時間の短縮が可能となる。
【0055】
また、分散容器104は、ジャケット構造になっており、ジャケット内に冷却媒体を流すことにより、分散容器内部のせん断により上昇した重合性単量体組成物の温度を低下させることが可能となる。
【0056】
図1(a)は、図1(b)及び図1(c)の撹拌部を循環ラインに組み入れた装置の全体図である。調整タンク107に重合性単量体と樹脂を投入後、調整タンク107に敷設された撹拌翼108により混合された重合性単量体組成物は、循環ポンプ109を介して、導入口110より供給され、吸入口111へと導入される。次いで、吸入口111より導入された重合性単量体組成物は、前述の微小間隙を通過し、吐出口105より吐出される。吐出された重合性単量体組成物は、分散容器104内を循環した後に、排出口112より排出され、熱交換器113を経由して調製タンク107へ戻る。調製タンク107へ戻った重合性単量体組成物を再度、導入口110へ供給するという循環が繰り返される。分散機と調整タンク107との間の循環を繰り返すことで、均一且つ効率よく重合性単量体組成物中の極性樹脂の分散が行われる。高速せん断処理された重合成単量体組成物が、再び調整タンク内部へ排出される部分は、調整タンク内の重合成単量体組成物に位置することが好ましい。調整タンク内の重合成単量体組成物中に高速せん断処理された重合成単量体組成物を戻すため、気体の巻込みを防止することができる。重合成単量体組成物への気体の巻込みは、撹拌室103における高速せん断処理時にキャビテーションの発生を促進し、分散効率が低下するため好ましくない。
【0057】
熱交換器113は、循環ライン上に必ずしも設ける必要はなく、分散容器104内にコイル式の熱交換ラインを設置しても良い。また、処理流量は、循環経路中に設置された流量計114にて測定される。更に、圧力調整弁115により、背圧をかけることが可能である。背圧をかけることで、撹拌羽根101及びスクリーン102の回転によるキャビテーションの発生を抑制することが可能となり、一層、処理液に対してせん断力を付与することができる。これにより重合性単量体組成物中の極性樹脂の分散が効率良くできる為、本発明においては、好適に背圧をかけることもできる。特に好ましい背圧は、50kPa以上150kPa以下の範囲である。上述の分散機としては、例えば、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社製)を好適に用いることができる。
【0058】
続いて、複数のスリットを具備するリング状の突起が同心円上に多段に形成された回転子と、同様の形状の固定子が一定間隔を保ち、相互に噛み合うように同軸上に設置された撹拌装置の例を挙げる。上記撹拌装置の全体図を図2(a)に、撹拌装置の側面図を図2(b)に、撹拌部の図2(a)におけるA−A’断面図を図2(c)に、撹拌部の図2(b)におけるB−B’断面図を図2(d)に、回転子の斜視図を図2(e)に、固定子の斜視図を図2(f)にそれぞれ示す。ホールディングタンク158に、分散工程より重合性単量体に少なくとも着色剤が分散している着色剤含有単量体と溶解工程より重合性単量体に少なくとも極性樹脂が溶解している樹脂含有単量体を投入し調製液とする。投入された該調製液は、循環ポンプ160を介して、混合装置入口より供給され、混合装置においては、ケーシング152の内部に具備された、回転子175と固定子171のスリットを通過し、遠心方向に排出される。混合装置内を調製液が通過する際、回転子、固定子のスリットのずれにより生じる遠心方向への圧縮、吐出による衝撃と回転子、固定子間のせん断による衝撃により調製液は混合される。回転子と固定子の形状は、複数のスリットを具備するリング状の突起が同心円上に多段に形成された形状であり、一定の間隔を保ち、相互に噛み合うように同軸上に設置されていることが好ましい。
【0059】
回転子及び固定子が相互に噛み合うように設置された形状であることにより、ショートパスが軽減され、調製液の分散が十分に行える。また、回転子と固定子が同心円方向に交互に多段に存在することにより、調製液が遠心方向に進行する際に、多くのせん断・衝撃を受ける為、一層、極性樹脂の分散レベルを高めることができる。ホールディングタンク158は、ジャケット構造であるため、処理物の冷却・加熱が可能である。上述の混合装置としては、例えば、キャビトロン(ユーロテック社製)を好適に用いることができる。
【0060】
本発明のトナーは特段の制限なく従来公知の画像形成方法に対して用いることが可能である。具体的には非磁性1成分接触現像方式、磁性1成分ジャンピング現像方式、2成分ジャンピング現像方式等が挙げられる。
以下に本発明に係る物性値の測定方法について説明する。
【0061】
(極性樹脂および結着樹脂のSP値)
極性樹脂および結着樹脂の溶解度パラメータ(SP値)は、濁度滴定法により以下のように求める。まず、樹脂約0.5gを100mlビーカー中に秤量する。続いて樹脂の良溶媒としてアセトン(SP値 δg=9.77(cal/cm1/2)を10mlホールピペットで加え、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、樹脂を溶解させてサンプルとする。続いてSP値の低い貧溶媒としてヘキサン(SP値 δpl=7.24(cal/cm1/2)を50mlのビュレットを用いてサンプルに滴下し、濁りが生じた点のヘキサンの滴下量からその時のヘキサンの体積分率φplを求める。次にSP値の高い貧溶媒としてメタノール(SP値 δph=14.50(cal/cm1/2)を50mlのビュレットを用いてサンプルに滴下し、濁りが生じた点のメタノールの滴下量からその時のメタノールの体積分率φphを求める。ヘキサンを滴下して生じた濁点における樹脂のSP値δml、およびメタノールを滴下して生じた濁点における樹脂のSP値δmhは、それぞれ、以下の式(1)および式(2)から求めることができる。また、δmlおよびδmhの平均値が樹脂のSP値δであり、以下の式(3)から求めることができる。
δml=φpl×δpl+(1−φpl)δg 式(1)
δmh=φph×δph+(1−φph)δg 式(2)
δ=(δml+δmh)/2 式(3)
なお、今回は良溶媒としてアセトン、低SP値の貧溶媒としてヘキサン、高SP値の貧溶媒としてメタノールをそれぞれ用いたが、樹脂が溶解しにくい場合や、濁りが生じにくい場合には適宜SP値が既知の他種の溶媒を用いてもよい。
【0062】
(極性樹脂のガラス転移温度Tg)
極性樹脂のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0063】
具体的には、極性樹脂約10mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。この昇温過程で、温度40〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、極性樹脂のガラス転移温度Tgとする。
【0064】
(極性樹脂の分子量)
極性樹脂の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。まず、室温で24時間かけて、極性樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
【0065】
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0066】
(極性樹脂および結着樹脂の酸価)
極性樹脂および結着樹脂の酸価は以下の方法により測定する。酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。極性樹脂の酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
【0067】
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
【0068】
(2)操作
(A)本試験
粉砕した極性樹脂および結着樹脂の試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
【0069】
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
【0070】
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
【0071】
(極性樹脂の水酸基価)
水酸基価とは,試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。極性樹脂の水酸基価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
【0072】
(1)試薬の準備
特級無水酢酸25gをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜてアセチル化試薬を得る。得られたアセチル化試薬は、湿気、炭酸ガス等に触れないように、褐色びんにて保存する。フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
【0073】
特級水酸化カリウム35gを20mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.5モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.5モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
【0074】
(2)操作
(A)本試験
粉砕した極性樹脂の試料1.0gを200ml丸底フラスコに精秤し、これに前記のアセチル化試薬5.0mlをホールピペットを用いて正確に加える。この際、試料がアセチル化試薬に溶解しにくいときは、特級トルエンを少量加えて溶解する。フラスコの口に小さな漏斗をのせ、約97℃のグリセリン浴中にフラスコ底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首の温度が浴の熱を受けて上昇するのを防ぐため、丸い穴をあけた厚紙をフラスコの首の付根にかぶせることが好ましい。1時間後、グリセリン浴からフラスコを取り出して放冷する。放冷後、漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を加水分解する。さらに完全に加水分解するため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱する。放冷後、エチルアルコール5mlで漏斗およびフラスコの壁を洗う。
【0075】
指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
【0076】
(B)空試験
極性樹脂の試料を用いない以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
【0077】
(3)得られた結果を下記式に代入して、水酸基価を算出する。
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
ここで、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)、D:結着樹脂の酸価(mgKOH/g)である。
【0078】
(極性樹脂の分子量による分取と酸価測定)
極性樹脂の分子量による分取は以下の通り行う。
【0079】
[装置構成]
LC−908(日本分析工業株式会社製)
JRS−86(同社;リピートインジェクタ)
JAR−2(同社;オートサンプラー)
FC−201(ギルソン社;フラクッションコレクタ)
【0080】
[カラム構成]
JAIGEL−1H〜5H(20φ×600mm:分取カラム)
[測定条件]
温度:40℃
溶媒:THF
流量:5ml/min.
検出器:RI
【0081】
極性樹脂のピーク分子量Mpとなる溶出時間をあらかじめ測定し、その前後で低分子量成分及び高分子量成分を分取する。分取したサンプルから溶剤を除去し酸価測定用試料とする。酸価の測定は上述した酸価測定の方法に従い行う。
【0082】
(トナー粒子およびトナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1))
トナー粒子およびトナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、D4及びD1を算出する。測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0083】
尚、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
【0084】
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
【0085】
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
【0086】
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
【0087】
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
【0088】
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
【0089】
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
【0090】
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、分析/個数統計値(算術平均)画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0091】
(トナー及びトナー粒子の4μm以下粒子率)
トナー中の4μm以下粒子率(個数%)は、前記のMultisizer 3の測定を行なった後、データを解析することにより算出する。
【0092】
トナー中の4.0μm以下の粒子の個数%は、以下の手順で算出する。まず、前記専用ソフトでグラフ/個数%に設定して測定結果のチャートを個数%表示とする。そして、「書式/粒径/粒径統計」画面における粒径設定部分の「<」にチェックし、その下の粒径入力部に「4」を入力する。「分析/個数統計値(算術平均)」画面を表示したときの「<4μm」表示部の数値が、トナー中の4.0μm以下の粒子の個数%である。
【実施例】
【0093】
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。実施例中及び比較例中の部および%は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0094】
〔極性樹脂の製造例〕
<極性樹脂A1>
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、撹拌装置を備えたオートクレーブ中にキシレン(沸点144℃)300質量部を投入し、撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換した後、昇温して還流させた。この還流下で、
・スチレン 91.7質量部
・メタクリル酸メチル 2.5質量部
・メタクリル酸 3.3質量部
・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 2.5質量部
・開始剤 ジ−tert−ブチルパーオキサイド 2.0質量部
の混合液を添加した後、重合温度を170℃、反応時の圧力を0.150MPaとして、5時間かけて重合を行った。その後、減圧下にて脱溶剤工程を3時間行い、キシレンを除去して、粉砕することで極性樹脂A1を得た。極性樹脂A1の物性を表2に示す。
【0095】
<極性樹脂A2〜A33>
モノマー組成、開始剤量、反応時圧力および反応温度を表1に記載のものに変更する以外は極性樹脂A1の製造例と同様にして極性樹脂A2〜A33を合成した。極性樹脂A2〜A33の物性を表2に示す。なお、反応時圧力に関して、大気圧と表示してある場合、還流下において反応系を開放して合成を行った。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
<極性樹脂B1>
・テレフタル酸 24.0質量部
・イソフタル酸 24.0質量部
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物 115.2質量部
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド3モル付加物 12.8質量部
・触媒 シュウ酸チタンカリウム 0.035質量部
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、撹拌装置を備えたオートクレーブ中に上記材料を仕込んだ。そして、窒素雰囲気下、常圧下で220℃で20時間反応を行い、更に10〜20mmHgの減圧下で1時間反応させた。その後、170℃に降温し、無水トリメリット酸を0.15質量部添加して、170℃で1.0時間反応させ、降温後粉砕し、極性樹脂B1を得た。極性樹脂B1の物性を表4に示す。
【0099】
<極性樹脂B2〜B23>
モノマー成分および触媒を表3に示す様に変更し、それ以外は極性樹脂B1の製造例と同様にして極性樹脂B2〜B23を合成した。なお、表3において各成分比はモル比である。
【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

【0102】
〔着色剤分散液の製造例〕
下記材料を混合し、アトライター(三井鉱山社製)にてジルコニアビーズ(3/16in)とともに200rpmで3時間撹拌し、ビーズを分離して着色剤分散液を得た。
・スチレン 39.0質量部
・着色剤 C.I.Pigment Blue 15:3 6.5質量部
〔トナーの製造例〕
<トナー1>
・スチレン 31.0質量部
・アクリル酸n−ブチル 30.0質量部
・極性樹脂L:極性樹脂A1 15.0質量部
・極性樹脂H:極性樹脂B1 4.0質量部
・スルホン酸基含有共重合体 FCA−1001−NS(藤倉化成社製) 0.3質量部
・帯電制御剤 ボントロンE−88(オリエント化学社製) 0.5質量部
上記材料を混合し、2時間撹拌して極性樹脂を溶解させ、極性樹脂含有単量体組成物を得た。
・極性樹脂含有単量体組成物 80.8質量部
・着色剤分散液 45.5質量部
上記材料を混合し、導入口内における流速を5m/s、分散容器内部の圧力を100kPa、回転子周速を32(m/s)にそれぞれ設定し、循環ラインに組み入れたキャビトロン(ユーロテック社製)にて30分間撹拌処理を行った。続いて混合物を60℃に加温し、9.0質量部のワックス HNP−51(日本精鑞社製)を加えた。次いで、重合開始剤 1,1,3,3−テトラメチルブチルパ−オキシ2−エチルヘキサノエート10.0質量部(50%トルエン溶液)を添加し、5分間撹拌した。
【0103】
一方、高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.1mol/L−NaPO水溶液850部および10%塩酸8.0質量部を添加し、回転数を80rpsに調整し、60℃に加温した。ここに1.0mol/LのCaCl水溶液68部を添加し、微少な難水溶性分散剤Ca(POを含む水系媒体を調製した。重合性単量体組成物に重合開始剤投入後、5分たった後に、60℃の重合成単量体組成物を温度60℃に加温した水系媒体に投入し、クレアミックスを80rpsで回転させながら15分間造粒した。その後高速撹拌機からプロペラ撹拌翼に撹拌機を変え、還流しながら70℃で5時間反応させた後、液温80℃とし、さらに2時間反応させた。重合終了後、液温を約20℃に降温し、希塩酸を加えて水系媒体のpHを3.0以下として難水溶性分散剤を溶解した。さらに洗浄、乾燥を行ってトナー粒子を得た。得られたトナー粒子に関して、重量平均粒径(D4)(μm)、個数平均粒径(D1)(μm)および4μm以下粒子率(個数%)を測定した。その結果を表7に示す。その後、トナー粒子100.0質量部に対して、流動性向上剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に摩擦帯電する疎水性シリカ微粉体(1次粒子径:10nm、BET比表面積:170m/g)2.0質量部を加えてヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で3000rpmで15分間混合してトナー1を得た。また、スラリーをろ過したろ液中の重合性単量体量を測定した結果、添加した重合性単量体の100.0質量%が結着樹脂となっていることが確認された。さらに、上記トナー製造時と同様の単量体組成にて、着色剤、極性樹脂H、極性樹脂L、帯電制御剤、スルホン酸基含有共重合体、ワックスおよび流動性向上剤を含有しない系において同様に重合反応を行い、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子のSP値を結着樹脂のSP値δB(cal/cm1/2とした。
【0104】
<トナー2〜トナー49>
トナー1の製造例において、結着樹脂の単量体組成および極性樹脂の種類、添加量を表5、6に記載のものに変える以外はトナー1の製造例と同様にしてトナー2〜トナー49を得た。トナー2〜トナー49においても、添加した重合性単量体の100.0質量%が結着樹脂となっていることが確認された。
【0105】
<トナー50>
トナー1の製造例において、スルホン酸基含有共重合体 FCA−1001−NSを含有しない以外はトナー1の製造例と同様にしてトナー50を得た。トナー50においても添加した重合性単量体の100.0質量%が結着樹脂となっていることが確認された。
【0106】
<トナー51>
トナー1の製造例において、循環ラインに組み入れる撹拌装置をキャビトロン(ユーロテック社製)からクレアミックスWモーション(エム・テクニック社製)に替え、撹拌羽根周速を33m/s、スクリーン周速を33m/sに設定する以外はトナー1の製造例と同様にしてトナー51を得た。トナー51においても添加した重合性単量体の100.0質量%が結着樹脂となっていることが確認された。
【0107】
<トナー52>
トナー1の製造例において、極性樹脂含有単量体組成物と着色剤分散液を混合した後、キャビトロンによる処理を行わない以外はトナー1の製造例と同様にしてトナー52を製造した。トナー52においても添加した重合性単量体の100.0質量%が結着樹脂となっていることが確認された。
【0108】
<トナー53>
下記の方法により、溶解懸濁トナーを製造した。
【0109】
(ワックス分散剤の製造)
・キシレン 300.0質量部
・ワックス HNP−51(日本精鑞社製) 100.0質量部
を温度計及び撹拌機の付いたオートクレーブ中に入れ、窒素雰囲気下、150℃に昇温した。
・スチレン 100.0質量部
・アクリロニトリル 84.0質量部
・マレイン酸モノブチル 120.0質量部
・ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート 5.0質量部
・キシレン 200.0質量部
の混合溶液を3時間かけて滴下し、さらに150℃で60分間保持して重合を行った。これをメタノール2000質量部に投入した後、ろ過、乾燥して、ワックス分散剤を得た。
【0110】
(ワックス分散液の製造)
平均粒子径20μmに解砕したワックス HNP−51:100.0質量部を、メタノール:100.0質量部に入れ、回転数150rpmで10分間撹拌して洗浄した後、濾別した。これを3回繰り返した後、濾別し、乾燥してワックスを回収した。得られたワックス:90.0質量部、前記ワックス分散剤10.0質量部、酢酸エチル:100.0質量部を、直径20mmのジルコニアビーズを入れたアトライター(三井鉱山社製)に入れ、150rpmで2時間分散させた。ジルコニアビーズを分離して、ワックス分散液を得た。
【0111】
(着色剤分散液の製造例)
直径20mmのジルコニアビーズを入れたアトライター(三井金属社製)に、着色剤 C.I.Pigment Blue:20.0質量部、酢酸エチル:80.0質量部を入れ、回転数300回転/分で8時間回転させた。ジルコニアビーズを分離して顔料分散液を得た。
【0112】
(トナーの製造)
・結着樹脂 スチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体 100.0質量部
(スチレン−アクリル酸n−ブチル共重合比=70:30、Mp=22000、Mw=35000、Mw/Mn=2.4、Tg=45℃)
・極性樹脂L:極性樹脂A26 15.0質量部
・極性樹脂H:極性樹脂B1 4.0質量部
・ワックス分散液 24.0質量部
・着色剤分散液 30.0質量部
・帯電制御剤 ボントロンE−88(オリエント化学社製) 0.5質量部
・スルホン酸基含有共重合体 FCA−1001−NS(藤倉化成社製) 0.3質量部
を均一に混合してトナー組成物を形成した。
【0113】
一方、高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.1mol/L−NaPO水溶液850質量部および10%塩酸8.0質量部を添加し、回転数を80rpsに調整し、60℃に加温した。ここに1.0mol/L−CaCl水溶液68質量部を添加し、微少な難水溶性分散剤Ca(POを含む水系媒体を調製した。水系媒体を30乃至35℃に保持し、回転数80rpsを維持しつつ、上記トナー組成物を水系媒体に投入し、2分間造粒した。その後、イオン交換水500質量部を投入した。通常のプロペラ撹拌装置に変更し、水系媒体を30乃至35℃に保持し、撹拌装置の回転数を150rpmとして、容器内を52kPaに減圧して酢酸エチルの残留量が200ppmになるまで留去した。
【0114】
次いで、水系媒体を70℃に昇温し、70℃で30分間加熱処理した。これを冷却速度0.15℃/分で25℃まで冷却した。内温を20.0乃至25.0℃に保持しつつ、水系分散媒体中に希塩酸を添加し、難水溶性分散剤を溶解した。さらに洗浄、乾燥を行ってトナー粒子を得た。得られたトナー粒子に関して、重量平均粒径(D4)(μm)、個数平均粒径(D1)(μm)および4μm以下粒子率(個数%)を測定した。その結果を表8に示す。その後、トナー粒子100.0質量部に対して、流動性向上剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に摩擦帯電する疎水性シリカ微粉体(1次粒子径:10nm、BET比表面積:170m/g)2.0質量部を加えて、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)で3000rpmにて15分間混合してトナー53を得た。なお、スチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体のSP値を結着樹脂のSP値δB(cal/cm1/2とした。
【0115】
<トナー54〜トナー74>
トナー52の製造例において、結着樹脂の単量体組成および極性樹脂の種類、添加量を表6に記載のものに変える以外はトナー1の製造例と同様にしてトナー54〜トナー74を得た。トナー54〜トナー74においても、添加した重合性単量体の100.0質量%が結着樹脂となっていることが確認された。トナー54〜トナー74の物性を表8に示す。
【0116】
<トナー75>
下記の方法により、乳化凝集トナーを製造した。
【0117】
(樹脂微粒子分散液の調製)
フラスコ中で下記の材料を混合し、水系媒体を調製した。
・イオン交換水 500.0質量部
・非イオン性界面活性剤 ノニポール400(花王製) 6.0質量部
・アニオン性界面活性剤 ネオゲンSC(第一工業製薬製) 10.0質量部
また、下記の材料を混合し、混合溶液を得た。
・スチレン 70.0質量部
・アクリル酸n−ブチル 30.0質量部
・スルホン酸基含有共重合体 FCA−1001−NS(藤倉化成社製) 0.3質量部
・帯電制御剤 ボントロンE−88(オリエント化学社製) 0.5質量部
【0118】
上記の混合溶液を上記水系媒体中に分散・乳化して、10分間ゆっくりと撹拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム4質量部を溶解したイオン交換水溶液50質量部を投入した。次いで、系内を十分に窒素で置換した後、フラスコを撹拌しながらオイルバスで系内が温度70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。これによりアニオン性樹脂微粒子分散液を得た。
【0119】
(着色剤粒子分散液の調製)
・イオン交換水 100.0質量部
・着色剤 C.I.Pigment Blue15:3 6.5質量部
・非イオン性界面活性剤 ノニポール400(花王製) 1.0質量部
上記成分を混合溶解し、ウルトラタラックスT50(IKA社製)により10分間分散し、着色剤粒子分散液を得た。
【0120】
(離型剤粒子分散液の調製)
・イオン交換水 100.0質量部
・ワックス HNP−51(日本精蝋社製) 9.0質量部
・カチオン性界面活性剤 サニゾールB50(花王製) 5.0質量部
上記成分を温度95℃に加熱して、ウルトラタラックスT50で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤粒子分散液を得た。
【0121】
(シェル形成用微粒子分散液1の調製)
・イオン交換水 100.0質量部
・酢酸エチル 50.0質量部
・極性樹脂L:極性樹脂A26 15.0質量部
上記成分を混合撹拌した。その溶解液をウルトラタラックスT50で乳化させながら、温度80℃で加熱して6時間保持することで脱溶剤を行い、シェル形成用微粒子分散液1を得た。
【0122】
(シェル形成用微粒子分散液2の調製)
・イオン交換水 100.0質量部
・酢酸エチル 50.0質量部
・極性樹脂H:極性樹脂B1 4.0質量部
上記成分を混合撹拌した。その溶解液をウルトラタラックスT50で乳化させながら、温度80℃で加熱して6時間保持することで脱溶剤を行い、シェル形成用微粒子分散液2を得た。
【0123】
(トナーの製造)
上記樹脂微粒子分散液、上記着色剤粒子分散液、上記離型剤粒子分散液、及びポリ塩化アルミニウム1.2質量部を混合して、丸型ステンレス製フラスコ中でウルトラタラックスT50を用い十分に混合・分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら温度51℃まで加熱した。温度51℃で60分保持した後、ここに上記シェル形成用微粒子分散液1およびシェル形成用微粒子分散液2を添加した。その後、濃度0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを6.5に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、撹拌軸のシールを磁力シールして撹拌を継続しながら温度97℃まで加熱して3時間保持した。
【0124】
反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引ろ過により固液分離を行った。これをさらに温度40℃のイオン交換水3Lを用いて再分散し、15分間300rpmで撹拌・洗浄した。この洗浄操作をさらに5回繰り返した後、ヌッチェ式吸引ろ過によりNo.5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続してトナー粒子を得た。得られたトナー粒子に関して、重量平均粒径(D4)(μm)、個数平均粒径(D1)(μm)および4μm以下粒子率(個数%)を測定した。その結果を表8に示す。その後、トナー粒子100.0質量部に対して、流動性向上剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に摩擦帯電する疎水性シリカ微粉体(1次粒子径:10nm、BET比表面積:170m/g)2.0質量部を加え、ヘンシェルミキサー(三井三池製)で3,000r/minにて15分間混合してトナー75を得た。
【0125】
<トナー76>
下記の方法により粉砕トナーを製造した。
・結着樹脂 スチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体 100.0質量部
(スチレン−アクリル酸n−ブチル共重合比=70:30、Mp=22000、Mw=35000、Mw/Mn=2.4、Tg=45℃)
・スルホン酸基含有共重合体 FCA−1001−NS(藤倉化成社製) 0.3質量部
・着色剤 C.I.Pigment Blue15:3 6.5質量部
・帯電制御剤 ボントロンE−88(オリエント化学社製) 0.5質量部
・ワックス HNP−51(日本精蝋社製) 9.0質量部
【0126】
上記材料を溶解混練して粉砕した。さらに、極性樹脂A26の樹脂微粒子(個数平均粒子径:300nm)15.0質量部を添加して、ハイブリダイゼーション・システム(奈良機械製)で処理した。さらに、極性樹脂B1の樹脂微粒子(個数平均粒子径:300nm)4.0質量部を添加して、ハイブリダイゼーション・システムで処理することでトナー粒子を得た。上記トナー粒子100質量部に対して、流動性向上剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に摩擦帯電する疎水性シリカ微粉体(個数平均1次粒子径:10nm、BET比表面積:170m/g)2.0質量部を加え、ヘンシェルミキサー(三井三池製)で3000rpmにて15分間混合してトナー76を得た。
トナー1〜76の物性を表7、8に示す。
【0127】
【表5】

【0128】
【表6】

【0129】
【表7】

【0130】
【表8】

【0131】
<実施例1〜54、比較例1〜22>
トナー1〜トナー76を以下の様にして評価した。評価結果を表9〜12に示す。なお、画像形成装置としては市販のレーザープリンターであるLBP−5400(キヤノン製)の改造機を用いた。この評価機の改造点は以下のとおりである。
【0132】
(1)評価機本体のギアおよびソフトウエアを変更することにより、プロセススピードが190mm/secとなるようにした。
【0133】
(2)評価に用いるカートリッジはシアンカートリッジを用いた。すなわち、市販のシアンカートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、本発明によるトナーを200g充填して評価を行った。なお、イエロー、マゼンタ、ブラックの各ステーションにはそれぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたイエロー、マゼンタ、およびブラックカートリッジを挿入して評価を行った。
【0134】
(3)定着器は、加熱温度を150℃±20℃に制御できるようにソフトウエアを変更した。
【0135】
〔1〕耐久安定性
常温常湿環境(23℃/50%RH)下、および高温高湿環境(32℃/83%RH)下に、トナーを充填したプロセスカートリッジおよびキヤノンカラーレーザーコピア用紙(81.4g/m)を48時間放置した。その後、両環境において濃度検知補正をした。最初にベタ全域画像(トナー載り量0.45mg/cm)を20枚連続で出力した。そこで帯電の立ち上がりを評価した。続いて1%の印字比率の画像を100枚まで出力した。そこで、トナーコート均一性/転写均一性の評価を行った。その後さらに連続して総出力枚数6000枚まで出力した。出力には前述したキャノンカラーレーザーコピア用紙(81.4g/m)を用いた。なお、高温高湿環境下においては、さらに冷却ファンを停止状態に制御できるようソフトウエアを変更し、冷却ファンを停止した状態で出力を行った。6000枚出力後に、現像効率/周方向のスジ/トナー飛散/トナーコート均一性/転写均一性/画像カブリ/画像濃度安定性の評価を行った。
【0136】
〔1−1〕現像効率
6000枚出力後に、ベタ全域画像(トナー載り量0.45mg/cm)を1枚出力し、その出力中に強制的に本体電源を切った。その時、トナー担持体上に担持された現像される前のトナーの単位面積あたりの重量W(mg)と感光ドラム上に現像されたトナーの単位面積当たりの重量W(mg)を測定し、下記式にて現像効率を決定した。
現像効率(%)=(W/W)×100
【0137】
評価基準を以下に示す。
A:現像効率が95%以上である。
B:現像効率が88%以上95%未満である。
C:現像効率が80%以上88%未満である。
D:現像効率が80%未満である。
【0138】
〔1−2〕周方向のスジ
6000枚出力後、現像容器を分解しトナー担持体の表面及び端部を目視で評価した。以下に判定基準を示す。
A:トナー規制部材とトナー担持体間への異物の挟み込みは観察されず、トナー担持体に周方向のスジが無い。
B:トナー担持体とトナー端部シール間への異物挟み込みが若干見受けられる。
C:トナー担持体端部で周方向のスジが発生しており、スジが1乃至4本見られる。
D:トナー担持体表面の全域で周方向のスジが発生しており、スジが5本以上見られる。
【0139】
〔1−3〕トナーコート均一性
100枚出力後および6000枚出力後、ハーフトーン全域画像(トナー乗り量0.20mg/cm)を出力し、その出力中に強制的に本体電源を切った。その時、現像された感光ドラム上のドット再現性を確認し、トナーコート均一性の指標とした。光学顕微鏡で100倍に拡大したものを目視して、トナーコート均一性の評価を行った。以下に判定基準を示す。
A:6000枚出力後のサンプルであっても、ドット再現性は良好である。
B:6000枚出力後のサンプルにおいて、ドット再現性に若干の乱れが生じている。
C:100枚出力後および6000枚出力後のサンプルにおいて、ドット再現性に若干の乱れが生じている。
D:100枚出力後および6000枚出力後のサンプルにおいて、ドット再現性が大きな乱れが生じている。
【0140】
〔1−4〕転写均一性
100枚及び6000枚印字後にハーフトーン全域画像(トナー載り量0.20mg/cm)を、キヤノンカラーレーザーコピア用紙(81.4g/m)及びFox River Bond(90g/m)に転写して評価した。以下に判定基準を示す。
A:6000枚出力後であっても、キヤノンカラーレーザーコピア用紙及びFox River Bondともに良好な転写均一性を示す。
B:6000枚出力後のサンプルに、Fox River Bondにて転写均一性の若干劣るものが認められる。
C:100枚出力後、6000枚出力後のサンプルに、Fox River Bondにて転写均一性の若干劣るものが認められる。
D:100枚出力後、6000枚出力後のサンプルに、Fox River Bondにて転写均一性の劣るものが認められる。
【0141】
〔1−5〕トナー飛散
6000枚出力後のカートリッジ、本体内カートリッジ周辺のトナーによる汚れ具合を観察した。
A:カートリッジ、本体内カートリッジ周辺のトナーによる汚れが観察されない。
B:カートリッジに微量のトナーによる汚れが観察されるが、画像・カートリッジの着脱には影響しない。
C:カートリッジ、本体内カートリッジ周辺のトナーによる汚れが観察されるが、画像・カートリッジの着脱には影響しない。
D:カートリッジ、本体内カートリッジ周辺がトナーによって著しく汚れ、画像・カートリッジの着脱にも悪影響が見られる。
【0142】
〔1−6〕画像濃度安定性
6000枚出力後にベタ全域画像(トナー載り量0.45mg/cm)をキヤノンカラーレーザーコピア用紙(81.4g/m)に出力し、その濃度を初期に20枚連続して出力したベタ全域画像の20枚目の画像の濃度と比較することにより評価した。尚、画像濃度はマクベス反射濃度計 RD918(マクベス社製)を用いて付属の取扱説明書に沿って、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。判断基準を以下に示す。
A:濃度低下率が5%以下である。
B:濃度低下率が5%より大きく、10%以下である。
C:濃度低下率が10%より大きく、20%以下である。
D:濃度低下率が20%より大きい。
【0143】
〔1−7〕画像カブリ
6000枚出力後、グロス紙モード(95mm/sec)で、LetterサイズのHP Color Laser Photo Paper, glossy(220g/m)に1%の印字比率の画像をプリントアウトした。「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)を用い、測定した印字プリントアウト画像の白地部分の白色度と転写紙の白色度の差から、カブリ濃度(%)を算出し、6000枚印字後の画像カブリを評価した。フィルターは、アンバーフィルターを用いた。判断基準を以下に示す。
A:カブリ濃度が0.5%未満である。
B:カブリ濃度が0.5%以上1.0%未満である。
C:カブリ濃度が1.0%以上1.5%未満である。
D:カブリ濃度が1.5%以上である。
【0144】
〔1−8〕帯電の立ち上がり
トナーの帯電立ち上がりは、プリントの1枚目から20枚目までのベタ全域画像(トナー載り量0.45mg/cm)を出力し、画像濃度が1.40に至るまでに要したプリント枚数で評価した。なお、画像濃度の測定には、マクベス反射濃度計 RD918(マクベス社製)を用いた。
【0145】
A:画像濃度が1.40に至るまでに要した枚数が5枚以下である。
B:画像濃度が1.40に至るまでに要した枚数が6乃至10枚である。
C:画像濃度が1.40に至るまでに要した枚数が11乃至20枚である。
D:20枚出力時においても画像濃度が1.40に至らない。
【0146】
〔2〕環境保存安定性
高温環境(55℃/10%RH)、高温高湿環境(40℃/95%RH)および周期高温環境(25℃から55℃まで11時間で昇温、55℃で1時間保持、25℃まで11時間で降温、25℃で1時間保持を繰り返す。湿度は55℃時に10%RHになるよう調節。)にトナーを充填したプロセスカートリッジおよび50mlポリカップに秤量したトナー(5g)を入れ、高温環境では5日間、高温高湿環境では60日間、周期高温環境では10日間それぞれ放置した。
【0147】
〔2−1〕耐ブロッキング性
上記環境における放置後に、ポリカップに秤量したトナーの凝集状態を観察し、保存安定性を評価した。判断基準を以下に示す。
A:トナーの凝集は見られない。
B:トナーがやや凝集している。
C:トナーの凝集がやや目立つ。
D:トナーの凝集が顕著に発生している。
【0148】
〔2−2〕保存後耐久性
上記プロセスカートリッジを、さらに常温常湿環境(23℃/50%RH)に48時間放置した。その後、両環境において濃度検知補正をした。続いて1%の印字比率の画像を6000枚まで出力した。出力にはキヤノンカラーレーザーコピア用紙(81.4g/m)を用いた。6000枚出力後に高温環境、周期高温環境にて放置したサンプルに関しては現像効率/周方向のスジの評価を、高温高湿環境下にて放置したサンプルに関してはトナー飛散/濃度安定性の評価をそれぞれ行った。評価基準は上述した耐久安定性評価時と同様である。
【0149】
〔3〕定着性
トナーの定着性に関して以下の〔3−1〕から〔3−3〕の項目を評価した。
【0150】
〔3−1〕低温定着性
トナーが充填されたプロセスカートリッジを常温常湿環境下(23℃/50%RH)にて48時間放置した。その後、10mm×10mmの四角画像が転写紙全体に均等に9ポイント配列された画像パターンの未定着画像を出力した。転写紙上のトナー乗り量は、0.35mg/cmとし、定着開始温度を評価した。尚、転写材は、Fox River Bond(90g/m)を使用した。定着器は、LBP−5400(キヤノン製)の定着器を外部へ取り外し、レーザービームプリンター外でも動作するようにした外部定着器を用いた。尚、外部定着器は、定着温度を任意に設定可能にし、プロセススピードを190mm/secの定着条件で測定した。
【0151】
また、定着開始の判断は、定着画像(低温オフセットした画像も含む)を50g/cm の荷重をかけシルボン紙〔Lenz Cleaning Paper “dasper(R)”(Ozu Paper Co.Ltd)〕で擦り、擦り前後の濃度低下率が20%未満になる温度を定着開始点と定義した。以下に判定基準を示す。
A:定着開始点が130℃以下である。
B:定着開始点が130℃より大きく、140℃以下である。
C:定着開始点が140℃より大きく、150℃以下である。
D:定着開始点が150℃より大きい。
【0152】
〔3−2〕高温時耐巻きつき性
高温時耐巻きつき性については、〔3−1〕と同様の条件で定着評価を行い、巻きつき無く通紙できた温度の最大温度を、「高温時耐巻きつき性」を評価するための温度とした。以下に判定基準を示す。
A:巻きつきなく通紙できた温度の最大温度が190℃以上である。
B:巻きつきなく通紙できた温度の最大温度が180℃以上190℃未満である。
C:巻きつきなく通紙できた温度の最大温度が170℃以上180℃未満である。
D:巻きつきなく通紙できた温度の最大温度が170℃未満である。
【0153】
〔3−3〕光沢度
転写材をLetterサイズのHP Color Laser Photo Paper, glossy(220g/m)に替え、定着温度を180℃に固定し、プロセススピードを95mm/secに変更して定着画像を作成した。作成した定着画像について光沢計PG−3D(日本電色工業社製)を用いて付属の取扱説明書に沿って光沢度を測定した。以下に判断基準を示す。
A:光沢度が70以上である。
B:光沢度が60以上70未満である。
C:光沢度が50以上60未満である。
D:光沢度が50未満である。
【0154】
【表9】

【0155】
【表10】

【0156】
【表11】

【0157】
【表12】

【符号の説明】
【0158】
101 撹拌羽根
102 スクリーン
103 撹拌室
104 分散容器
105 吐出口
107 調整タンク
108 撹拌翼
109 循環ポンプ
110 導入口
111 吸入口
112 排出口
113 熱交換器
114 流量計
115 圧力調整弁
116 下部モーター
117 上部モーター
118 蓋体
119 支持筒
120 上部回転軸
121 メカニカルシール
123 仕切板
124 下部回転軸
125 圧力計
126 温度計
151 モーター
152 本体ケーシング(分散装置)
158 ホールディングタンク
159 圧力計
160 循環ポンプ
161 冷却手段
162 温度計
163 撹拌モーター
164 冷却水投入口
165 冷却水排出口
166 冷却水投入口
167 冷却水排出口
168 冷却ジャケット
170 三方バルブ
171 固定子
172 固定子突起
173 固定子円周溝
174 固定子突起間スリット
175 回転子
176 回転子円周溝
177 回転子突起間スリット
178 回転子突起
179 処理液入口
180 駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、着色剤、極性樹脂H及び極性樹脂Lを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該トナー粒子は、水系媒体中で造粒することによって得られ、
該極性樹脂H及び該極性樹脂Lがともにカルボキシル基を有する酸価3.0(mgKOH/g)以上の極性樹脂であり、
該結着樹脂のSP値をδB((cal/cm1/2)、該極性樹脂HのSP値をδH((cal/cm1/2)、該極性樹脂LのSP値をδL((cal/cm1/2)とした時、
8.70≦δB≦9.50
1.00≦δH−δB≦3.00
|δL−δB|≦0.70
を満たし、
該極性樹脂Hのガラス転移点をTgH(℃)、該極性樹脂Lのガラス転移点をTgL(℃)とした時、
65.0≦TgH≦85.0
75.0≦TgL≦105.0
TgH<TgL
を満たし、
該極性樹脂Hの重量平均分子量をMwH、該極性樹脂Lの重量平均分子量をMwLとした時、MwHが5.0×10以上1.5×10以下であり、MwLが1.0×10以上3.0×10以下であり、結着樹脂100.0質量部に対する極性樹脂Hの含有量が1.0質量部以上10.0質量部以下であり、結着樹脂100.0質量部に対する極性樹脂Lの含有量が5.0質量部以上25.0質量部以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記δHが10.00以上12.00以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記δLが8.80以上10.00以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記結着樹脂の酸価をAvB(mgKOH/g)、前記極性樹脂Hの酸価をAvH(mgKOH/g)、前記極性樹脂Lの酸価をAvL(mgKOH/g)とした時、
0.0≦AvB≦2.0
5.0≦AvH≦20.0
8.0≦AvL≦25.0
AvH<AvL
を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項5】
前記極性樹脂Hおよび前記極性樹脂Lがヒドロキシル基を含有し、該極性樹脂Hの水酸基価をOHvH(mgKOH/g)とし、該極性樹脂Lの水酸基価をOHvL(mgKOH/g)とした時、
15.0≦OHvH≦30.0
8.0≦OHvL≦25.0
を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項6】
前記極性樹脂Lがビニル系樹脂であり、前記極性樹脂Hがポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項7】
前記極性樹脂Lのピーク分子量Mpが1.0×10以上3.0×10以下であり、低分子量成分(分子量がMp未満の領域)の酸価をα(mgKOH/g)、高分子量成分(分子量がMp以上の領域)の酸価をβ(mgKOH/g)としたとき、0.8≦α/β≦1.2を満たすことを特徴とする請求項6に記載のトナー。
【請求項8】
前記トナー粒子が、スルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体を含有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項9】
重合性単量体、着色剤、極性樹脂H及び極性樹脂Lを含有する重合性単量体組成物を水系媒体に加え、該水系媒体中で該重合性単量体組成物を造粒して該重合性単量体組成物の粒子を形成し、該重合性単量体組成物中の該重合性単量体を重合してトナー粒子を得るトナー粒子の製造方法であって、
該極性樹脂H及び該極性樹脂Lがともにカルボキシル基を有する酸価3.0(mgKOH/g)以上の極性樹脂であり、
該結着樹脂のSP値をδB((cal/cm1/2)、該極性樹脂HのSP値をδH((cal/cm1/2)、該極性樹脂LのSP値をδL((cal/cm1/2)とした時、
8.70≦δB≦9.50
1.00≦δH−δB≦3.00
|δL−δB|≦0.70
を満たし、
該極性樹脂Hのガラス転移点をTgH(℃)、該極性樹脂Lのガラス転移点をTgL(℃)とした時、
65.0≦TgH≦85.0
75.0≦TgL≦105.0
TgH<TgL
を満たし、
該極性樹脂Hの重量平均分子量をMwH、該極性樹脂Lの重量平均分子量をMwLとした時、MwHが5.0×10以上1.5×10以下であり、MwLが1.0×10以上3.0×10以下であり、結着樹脂100.0質量部に対する極性樹脂Hの含有量が1.0質量部以上10.0質量部以下であり、結着樹脂100.0質量部に対する極性樹脂Lの含有量が5.0質量部以上25.0質量部以下であることを特徴とするトナー粒子の製造方法。
【請求項10】
前記重合性単量体組成物を前記水系媒体に加える前に、高速回転する撹拌羽根と該撹拌羽根の周囲に該撹拌羽根と逆方向に高速回転するスクリーンとを具備した撹拌装置を用いて、該重合性単量体組成物を処理する工程を有することを特徴とする請求項9に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項11】
前記重合性単量体組成物を前記水系媒体に加える前に、複数のスリットを具備するリング状の突起が同心円上に多段に形成された回転子と、同様の形状の固定子が一定間隔を保ち、相互に噛み合うように同軸上に設置された撹拌装置を用いて、該重合性単量体組成物を処理する工程を有することを特徴とする請求項9に記載のトナー粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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