説明

トナー製造方法

【課題】粒度分布が狭く、高画像濃度の凝集トナーを、低環境負荷型製造方法で提供すること。
【解決方法】DPB吸油量が65ml/100g以上のカーボンブラック(CB)、酸基を含有する結着樹脂、界面活性剤を具有した着色樹脂粒子分散液、離型剤分散液の凝集によるトナー製造方法に関し、該界面活性剤量が該CBと該樹脂の和に対し、1.6質量%以下で、該着色樹脂粒子が下記各工程で製造される事を特徴とする。
(A)該界面活性剤を含有した水系媒体で、該CBを湿潤させ、CB湿潤体を得る工程
(B)該CB湿潤体、該樹脂、塩基性物質を混合する事で樹脂/CB混合物を得る工程
(C)該樹脂/CB混合物を、該樹脂の軟化温度より10℃以上高い温度で剪断力を加える事で、樹脂/CB乳化物を得る工程
(D)該樹脂/CB乳化物を、剪断力を加えながら該樹脂のガラス転移温度以下まで、0.5℃/分以上10℃/分以下の速度で冷却する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用した電子写真装置に利用し得る電子写真用トナー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケミカルトナーは、粒径制御や形状制御が比較的容易であり、印字品質の高い要求に答えられることから、電子写真の高画質化への要求に伴い近年市場に普及され始めており、その製造法についての検討も数多く行われている(非特許文献1)。
【0003】
ケミカルトナーの製造方法の一例としては、樹脂微粒子と着色剤粒子等の凝集/会合により凝集トナーを製造する、凝集法が挙げられる(特許文献1乃至4)。一般的に凝集法は、原理的に有機溶剤を使用すること無くトナーを製造でき、特に、凝集に用いる分散体の作製に有機溶剤を使用しない場合には、低環境負荷でトナー製造が実現できるとして、市場からだけでなく環境配慮の面からも注目されている。
【0004】
しかしながら、低環境負荷型の製造が可能な凝集トナーであるが、着色剤としてカーボンブラックを用いたブラックトナーの場合、画像形成を行った際に所望の画像濃度が得られ難いという問題が生じていた。これは、使用されるカーボンブラックが、一般に粒子表面の細孔が比較的少ない、DBP吸油量65ml/100g未満のものが使用されるため、トナー粒子中においてカーボンブラックが結着樹脂に対して絡み難くなり、カーボンブラックが集まり易くなって分散性が低下することに起因するものと考えられる。従って、所望の画像濃度を得るために、高いDBP吸油量、すなわち65ml/100g以上のカーボンブラックを含有したトナーが期待されている。
【0005】
しかしながら、カーボンブラックのDBP吸油量を大きくした場合、カーボンブラック表面の界面活性剤吸着サイトが増加し、乳化分散に必要な界面活性剤量が増加する傾向にある。従って、界面活性剤量を一定量とした状態でDBP吸油量を大きくすることで、水中での分散性は悪化する傾向にあり、特にDBP吸油量が120ml/100g以上の場合、画像濃度の低下が報告されている(特許文献5)。
【0006】
さらに、DBP吸油量が120ml/100g以上の場合であっても、通常使用される程度の界面活性剤量(カーボンブラックに対して10質量%以上)でカーボンブラック分散体を作製し、凝集トナーを作製した場合、凝集トナー作製の過程で、色抜けが発生やトナー粒度分布のブロード化が発生する場合があることが、我々の鋭意検討の結果判明した。
【0007】
従って、本発明の所望の画像濃度を得るためには、DBP吸油量の大きなカーボンブラックを、色抜けが発生やトナー粒度分布のブロード化を発生させない条件で、凝集トナーを作製させることが求められているが、困難なことが現在の実情である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日本画像学会誌、43(2004)、26−59
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特登録02537503公報
【特許文献2】特登録03107062公報
【特許文献3】特登録03247999公報
【特許文献4】特登録03326703公報
【特許文献5】特開2005−221836公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記状況を鑑み、高い黒色度を示すDBP吸油量の大きなカーボンブラックを含有した、シャープな粒度分布を有する凝集トナーを低環境負荷型の製造方法で提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
該従来技術および課題について鋭意検討した結果、下記に示す本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の第一は、界面活性剤、カーボンブラック、酸基を有する結着樹脂、水系媒体を含有する着色樹脂粒子分散液中の界面活性剤量が、酸基を有する結着樹脂量とカーボンブラック量の和に対して、1.6質量%以下であり、
少なくとも、
(A)界面活性剤を含有する水系媒体でDBP吸油量が65ml/100g以上のカーボンブラックを湿潤させ、カーボンブラック湿潤体を得る、カーボンブラック湿潤工程
(B)前記カーボンブラック湿潤体、前記結着樹脂、塩基性物質を、少なくとも混合する事で樹脂/カーボンブラック混合物を得る、樹脂/カーボンブラック混合工程
(C)該樹脂/カーボンブラック混合物を、該樹脂の軟化温度(Tm)より10℃以上の温度に加温しながら剪断力を加えることで、樹脂/カーボンブラック乳化物を得る、乳化工程
(D)該樹脂/カーボンブラック乳化物を、剪断力を加えながら該樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度まで、0.5℃/分以上10℃/分以下の冷却速度で冷却し、90%累積粒径が1.0μm以下の前記着色樹脂粒子分散液を得る、冷却工程
(E)前記着色樹脂粒子を水系媒体中で凝集剤により、凝集させて凝集粒子を形成する凝集工程、及び、
(F)前記凝集粒子を前記酸基を有する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度まで加熱し融合してトナー粒子を得る、融合工程
を有することを特徴とするトナーの製造方法である。
【0013】
本発明の第二は、前記(B)工程における混合工程において、界面活性剤を投入することを特徴とする前記トナー製造方法である。
【0014】
本発明の第三は、前記界面活性剤量が、酸基を有する樹脂の0.01乃至0.50質量%であることを特徴とする前記トナー製造方法である。
【0015】
本発明の第四は、前記カーボンブラック湿潤工程に使用される界面活性剤濃度が、カーボンブラック量に対して、10.0質量%以下であることを特徴とする前記のトナー製造方法である。
【0016】
本発明の第五は、前記の界面活性剤が、アニオン性界面活性剤であることを特徴とする前記トナー製造方法である。
【0017】
本発明の第六は、前記樹脂100質量部に対して、カーボンブラック量が15.0質量部以下であることを特徴とする前記トナー製造方法である。
【0018】
本発明の第七は、前記酸基を含有する樹脂の酸価が5乃至30mgKOH/gの範囲であることを特徴とするトナー製造方法である。
【0019】
本発明の第八は、前記樹脂が、少なくともポリエステルを含有する樹脂であることを特徴とするトナー製造方法である。
【0020】
本発明の第九は、前記塩基性物質が、アミン系物質であることを特徴とするトナー製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来困難であった、低環境負荷型の製造方法でシャープな粒度分布を有する、高い画像濃度の得られる凝集トナーを提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の最良の形態について説明する。
【0023】
本発明は、界面活性剤、カーボンブラック、酸基を有する結着樹脂、水系媒体を含有する着色樹脂粒子分散液中の界面活性剤量が、酸基を有する結着樹脂量とカーボンブラック量の和に対して、1.6質量%以下であり、
少なくとも、
(A)界面活性剤を含有する水系媒体でDBP吸油量が65ml/100g以上のカーボンブラックを湿潤させ、カーボンブラック湿潤体を得る、カーボンブラック湿潤工程
(B)前記カーボンブラック湿潤体、前記結着樹脂、塩基性物質を、少なくとも混合する事で樹脂/カーボンブラック混合物を得る、樹脂/カーボンブラック混合工程
(C)該樹脂/カーボンブラック混合物を、該樹脂の軟化温度(Tm)より10℃以上の温度に加温しながら剪断力を加えることで、樹脂/カーボンブラック乳化物を得る、乳化工程
(D)該樹脂/カーボンブラック乳化物を、剪断力を加えながら該樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度まで、0.5℃/分以上10℃/分以下の冷却速度で冷却し、90%累積粒径が1.0μm以下の前記着色樹脂粒子分散液を得る、冷却工程
(E)前記着色樹脂粒子を水系媒体中で凝集剤により、凝集させて凝集粒子を形成する凝集工程、及び、
(F)前記凝集粒子を前記酸基を有する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度まで加熱し融合してトナー粒子を得る、融合工程
を有することを特徴とするトナーの製造方法である。
【0024】
前記(B)工程における混合工程においては、追加で界面活性剤を投入することが好ましく、その量は酸基を有する樹脂に対して、0.01乃至0.50質量%の範囲であることが好ましい。すなわち前記(B)工程において、投入する界面活性剤が0.01質量%未満で高速せん断を掛けた場合は、せん断機に過剰に負荷がかかる場合があり、0.5質量%超である場合は、トナーの粒度分布が広くなってしまうことがある為である。
【0025】
本明細書におけるDBP吸油量とは、カーボンブラック100gあたりのDBP(フタル酸ジブチル)の吸収量であり、JIS K6217に準拠して測定されるものである。
【0026】
本発明で用いられるカーボンブラックは、DBP吸油量が65ml/100g以上の条件を満たせば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等何れであってもよい。画像形成上より好ましい範囲としては、120乃至500ml/100gの範囲である。
【0027】
カーボンブラックの一次粒子径は、発色性の面から小粒径のものが好ましい。具体的には値としては30nm以下、更に好ましい値は20nm以下であるが、本発明で使用するカーボンブラックの一次粒径は前記条件に限定されるものではない。
【0028】
また、乳化工程を考えた際に、カーボンブラック表面に極性置換基が表面に無いものが好ましいが、本発明で使用するカーボンブラックは前記条件に限定されるものではない。
【0029】
本発明に用いられるカーボンブラックの具体例を以下に示すが、本発明に使用するカーボンブラックは例示物質に限定されるものではない。
【0030】
NIPEX 70(DBP吸油量114ml/100g:デグサ社)、NIPEX 70(DBP吸油量123ml/100g:デグサ社)、NIPEX 90(DBP吸油量95ml/100g:デグサ社)、Printex P(DBP吸油量102ml/100g:デグサ社)、Printex L(DBP吸油量115ml/100g:デグサ社)、Printex L6(DBP吸油量123ml/100g:デグサ社)、Printex XE2B(DBP吸油量420ml/100g:デグサ社)、Nerox−500(DBP吸油量110ml/100g:デグサ社)、Nerox−600(DBP吸油量100ml/100g:デグサ社)、Color Black S170(DBP吸油量760ml/100g:デグサ社)、Color Black FW18(DBP吸油量140ml/100g:デグサ社)、Color Black FW18PS(DBP吸油量160ml/100g:デグサ社)、M120(DBP吸油量75ml/100g:キャボット社)、R330R(DBP吸油量150ml/100g:キャボット社)、M880(DBP吸油量105ml/100g:キャボット社)、M700(DBP吸油量117ml/100g:キャボット社)、M1400(DBP吸油量82ml/100g:キャボット社)、Vulcan XC72R(DBP吸油量174ml/100g:キャボット社)、Vulcan XC305(DBP吸油量130ml/100g:キャボット社)、Vulcan P(DBP吸油量115ml/100g:キャボット社)、Vulcan 605(DBP吸油量145ml/100g:キャボット社)、Vulcan XC72R(DBP吸油量174ml/100g:キャボット社)、BP−2000(DBP吸油量330ml/100g:キャボット社)、BP−130(DBP吸油量70ml/100g:キャボット社)、#2600(DBP吸油量77ml/100g:三菱化学社)、#2650(DBP吸油量73ml/100g:三菱化学社)、#3030(DBP吸油量130ml/100g:三菱化学社)、#3032(DBP吸油量180ml/100g:三菱化学社)、#3040(DBP吸油量140ml/100g:三菱化学社)、#3350(DBP吸油量164ml/100g:三菱化学社)、Raven UV ULTRA(DBP吸油量114ml/100g:コロンビア社)、Conductex 7055(DBP吸油量170ml/100g:コロンビア社)、Conductex 7054(DBP吸油量122ml/100g:コロンビア社)、Conductex SC(DBP吸油量115ml/100g:コロンビア社)、トーカブラック#3855(DBP吸油量155ml/100g:トーカイカーボン社)、トーカブラック#5500(DBP吸油量155ml/100g:トーカイカーボン社)、トーカブラック#8500(DBP吸油量98ml/100g:トーカイカーボン社)、トーカブラック#4500(DBP吸油量168ml/100g:トーカイカーボン社)、トーカブラック#4400(DBP吸油量135ml/100g:トーカイカーボン社)、トーカブラック#4300(DBP吸油量142ml/100g:トーカイカーボン社)、トーカブラック#7360SB(DBP吸油量87ml/100g:トーカイカーボン社)、トーカブラック#7350(DBP吸油量100ml/100g:トーカイカーボン社)、Ketchen Black EC(DBP吸油量360ml/100g:KBI社)、Ketchen Black EC600JD(DBP吸油量495ml/100g:KBI社)
【0031】
なお、カーボンブラックの好ましい含有量は前記樹脂100質量部に対して15.0質量部以下あり、より好ましい範囲は0.1乃至10.0質量部の範囲である。0.1質量部以下の場合、必要とする画像濃度が得られない場合があり、カーボンブラック量が多い場合は、均一なトナーが出来ない場合がある為である。
【0032】
本発明における酸基を有する樹脂とは、分子の末端及び側鎖の少なくともいずれか一方に、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、セレン酸基、チオ酸基、テルロ酸基を有する樹脂である。分散性の面からカルボン酸基、または、スルホン酸基が好ましく、トナー特性の面からより好ましくはカルボン酸基であるが、本発明に使用する酸基を有する樹脂は上記色材に特に限定されるものではない。
【0033】
なお、本発明における含有する樹脂の酸価は、5乃至30mgKOH/gの範囲が好ましい。5mgKOH/g未満の場合、分散が不十分で均一な着色樹脂粒子が得られないことがある。30mgKOH/g超の場合、製造されたトナーの親水性が高すぎる結果、外環境、特に湿度の影響を受けやすくなり、十分なトナー特性が得られないことがある。
【0034】
なお、樹脂の酸価は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。酸価は試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数をいう。
(1)試薬
(a)溶剤:エチルエーテル−エチルアルコール混液(1+1または2+1)またはベンゼン−エチルアルコール混液(1+1または2+1)を使用直前にフェノールフタレインを指示薬としてN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液で中和しておく。
(b)フェノールフタレイン溶液:フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。
(c)N/10水酸化カリウム−エチルアルコール溶液:水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしエチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2〜3日放置後濾過する。標定はJIS K 8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行う。
(2)操作
樹脂(試料)1乃至20gを正しくはかりとり、これに溶剤100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後これをN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いたときを中和の終点とする。
(3)計算式
次の式によって酸価を算出する。
A=B×f×5.611/S
A:酸価
B:N/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:N/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
【0035】
本発明における樹脂は酸基を有している以外、構造上特に制限されないが、電子写真装置における定着温度以下でガラス転移点を有する熱可塑性結着樹脂が好ましく使用される。具体例としては、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル基系モノマー、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系モノマー、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系モノマー、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのポリオレフィン系モノマーなどの重合体またはこれらを2種以上組み合せて得られる共重合体またはこれらの混合物、さらにはエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等、非ビニル縮合系樹脂、あるいはこれらと該ビニル系樹脂との混合物やこれらの共存下でビニル系単量体を重合する際に得られるグラフト重合体等を挙げることができる。特にトナーとしての定着性と帯電性能の面からポリスチレン樹脂またはポリエステル樹脂が特に好ましく用いられる。これらの樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
なお、ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものである。本発明において、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。
【0037】
−酸由来構成成分−
該酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が望ましく特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。
【0038】
該酸由来構成成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分のほか、2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれているのが好ましい。
【0039】
−アルコール由来構成成分−
アルコール構成成分としては脂肪族ジカルボン酸が望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられるが、この限りではない。
【0040】
また、本発明における界面活性剤とは、イオン性または非イオン性の界面活性剤を意味する。なお、分散性の問題から分散性が高いイオン性、特にアニオン性界面活性剤が好ましく使われる。また、洗浄性の観点から、分子量の上限は10,000、より好ましい値は5,000である。一方、界面活性能の観点から下限値は100、より好ましくは200である。該界面活性剤の具体例としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、の等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤;ラウリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機化合物等、またはこれらを2種以上組み合せて使用することができる。
【0041】
本発明に使用される界面活性剤の量は、カーボンブラック量と酸基を有する結着樹脂量の和に対して、1.6質量%以下であり、好ましくは1.1乃至1.3質量%の範囲である。すなわち、界面活性剤が多すぎる場合は、トナー製造過程において「色抜け」が大きくなってしまうだけでなく、粒度分布も広がることで、目的とするトナーが得られない場合がある。一方で、界面活性剤量が少なすぎる場合、着色樹脂粒子の粒径が1μmよりも大きくなってしまうため、目的とする粒径のトナーが得られない場合がある。
【0042】
なお、着色樹脂粒子の平均粒径は、例えば、動的光散乱(DLS)やレーザー散乱、遠心沈降法、field−flow fractionation法、電気的検知体法等を用いて測定することができる。本発明における平均粒径とは特に断りが無ければ20℃、0.01質量%固形分濃度で、DLS、特にマイクロトラック法で測定した50%累積粒径値(d50)及び90%累積粒径値(d90)のことを意味する。
【0043】
該着色樹脂粒子分散液中に含有する界面活性剤量は、カーボンブラック量と酸基を有する結着樹脂量の和に対して、1.6質量%以下であり、好ましい範囲は0.5乃至1.3質量%である。界面活性剤が少なすぎる場合は、着色樹脂粒子の粒径が大きくなる傾向にあり、大きすぎる着色樹脂粒子を凝集した結果、トナーの粒度分布が広くなってしまう場合がある。一方、界面活性剤が多すぎる場合には、トナー作製時の色抜けや、粒度分布が広くなってしまう場合がある。
【0044】
なお、本発明における色抜けとは、凝集工程、あるいは融合工程において、凝集したはずの着色樹脂粒子またはカーボンブラックが、トナーより脱離する現象を意味する。この現象は、融合化工程の後工程として行う、濾過/洗浄工程の際に観測される場合が多い。色抜けが発生した場合、洗浄と共にカーボンブラックまたは着色樹脂粒子が脱離する為、洗浄が困難になるだけでなく、結果としてカーボンブラック量が不足し設計値として予想される画像濃度が得られない点や、詳細な理由はわかっていないが、特に色抜けの多い場合に粒度分布のブロード化する場合がある。
【0045】
また、カーボンブラック湿潤工程に使用される界面活性剤濃度は、色抜けを抑制する観点から、カーボンブラック量に対して、10.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5.0質量%以下である。また、界面活性剤が少なすぎる場合、カーボンブラックを十分に湿潤することが出来ず、更には凝集トナー作製に必要な十分小さな粒径(d90が1.0μm以下)の着色樹脂粒子分散体が得られない場合もある。なお、d90が1.0μm以上の場合、3.0μm乃至7.5μmのトナーを作製した場合に、着色樹脂粒子が大きすぎる為、トナーの粒度分布がブロード化する場合がある。
【0046】
本発明における離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックスなどが挙げられる。これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いても良い。
【0047】
離型剤の融点は40乃至120℃が好ましく、結着樹脂の融点以下であることがより好ましい。離型剤の融点が40℃未満では離型剤の変化温度が低すぎ、耐ブロッキング性が劣ったり、複写機内温度が高まった時に現像性が悪化したりする。一方、120℃を超える場合には、離型剤の変化温度が高過ぎ、樹脂の低温定着性を損ねてしまう。
【0048】
離型剤の含有量として好ましい範囲は、トナー原料100質量部に対し1乃至20質量部、より好ましくは2乃至15質量部の範囲である。1質量部未満であると離型剤添加の効果がない。20質量部超であると、帯電性への悪影響が現れやすくなり、また現像機内部においてトナーが破壊されやすくなるため離型剤やトナー樹脂のキャリアへのスペント化が生じ、帯電が低下しやすくなる等の影響が現れる。その上、例えばカラートナーを用いた場合、定着時の画像表面への染み出しが不十分になり易く、画像中に離型剤が在留しやすくなってしまうため、透明性が悪化し好ましくない。
【0049】
本発明における離型剤分散体は、離型剤と界面活性剤を含有する水系媒体を離型剤の融点以上の温度で分散する高温分散方法、または、有機溶剤を利用した転相乳化方法により得ることが出来るが、環境負荷の低減を考えた場合、高温分散方法が好ましい。また、分散方法の具体例としては、高速せん断分散、超音波分散、高圧分散、メディア分散等が挙げられるが、好ましくは高速せん断分散が挙げられる。本発明における高速せん断とは、2種類の物体を300乃至10000m/分の範囲で平行移動した際に発生する応力を意味し、このせん断量を用いて分散することを、本発明では高速せん断分散と定義する。一般的にこのせん断とは回転運動で得られる場合が多いが、本発明におけるせん断は回転運動によって得られるもののみを意味するものではない。
【0050】
なお、本発明における超音波分散とは発振周波数が20乃至200kHzの範囲で分散することを意味し、特に好ましくは20乃至50kHzの範囲で分散するほうが良好に分散することができる。本発明における高圧分散とは10乃至250MPaの高圧で細孔を通過させることにより分散させる方式で分散することを意味し、特に好ましくは100乃至250MPaで分散される。本発明におけるメディア分散とは0.03mm乃至1mmの範囲のガラス、ジルコニア、酸化アルミ等の球状メディアによる分散を意味する。高比重で小粒径メディアを使用した際に良好な分散体を得ることができることから、0.03乃至0.2mmジルコニアビーズが好ましく利用できる。また該分散方法を単独もしくは組み合せて用いてもよい。
【0051】
上記離型剤は、結着樹脂100質量部に対して1乃至20質量部使用することが好ましい。
【0052】
次に、本発明の凝集トナーの製造方法に関して説明する。
【0053】
本発明のトナーの製造方法は、該着色樹脂粒子と離型剤粒子を水系媒体中で凝集させ凝集体を形成する凝集工程と、前記凝集体を加熱し融合する工程とを含むトナーの製造方法であることを特徴とする。
【0054】
また、本発明のトナーの製造方法においては、トナーの構成材料として更に荷電制御剤を用いることも可能である。
【0055】
上記帯電制御剤としては、例えば、4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロム、亜鉛、ジルコニウム等の錯体からなる化合物等が挙げられる。なお、上記帯電制御剤としては、凝集時や融合時の安定性に影響するイオン強度の制御と廃水再利用の観点から、水に溶解しにくい素材のものが好ましい。
【0056】
上記荷電制御剤は、帯電性のさらなる向上の観点から結着樹脂100質量部に対して0.1乃至5質量部使用することが好ましい。
【0057】
本発明のトナーの製造方法は、樹脂微粒子の水系分散体と着色剤、必要により帯電制御剤を混合し、水系媒体中で、所望のトナー径にまで凝集させ凝集体を形成する凝集工程と、該凝集体を加熱し融合する加熱・融合工程を含むことを特徴とする。トナーの製造方法を更に詳細に説明するが、本発明は下記の製造方法に限定されるものではない。
【0058】
(凝集工程)
凝集工程では、本発明の樹脂微粒子の水系分散体と着色剤、離型剤等のトナー成分を混合し混合液を調製する。ついで該混合液中に、凝集粒子を形成させ、凝集粒子分散液を調製する。前記凝集粒子は、例えばpH調整剤、凝集剤、安定剤を上記混合液中に添加し混合し、温度、機械的動力等を適宜加えることにより該混合液中に形成することができる。
【0059】
上記pH調整剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ、硝酸、クエン酸等の酸があげられる。上記凝集剤としては、ナトリウム、カリウム等の1価の金属塩;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属塩;鉄、アルミニウム等の3価の金属塩等;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類があげられる。上記安定剤としては、主に界面活性剤そのものまたはそれを含有する水系媒体などがあげられる。
【0060】
上記凝集剤等の添加・混合は、混合液中に含まれる樹脂微粒子のガラス転移点(Tg)以下の温度で行うことが好ましい。この温度条件下で上記混合を行うと、凝集が安定した状態で進行する。上記混合は、公知の混合装置、ホモジナイザー、ミキサー等を用いて行うことができる。
【0061】
ここで形成される凝集粒子の平均粒径としては、特に制限はないが、通常、得ようとするトナーの平均粒径と同じ程度になるように制御するとよい。制御は、例えば、温度と上記撹拌混合の条件とを適宜設定・変更することにより容易に行うことができる。以上の凝集工程において、トナーの平均粒径とほぼ同じ平均粒径を有する凝集粒子が形成され、凝集粒子を分散させてなる凝集粒子分散液が調製される。
【0062】
(加熱・融合工程)
加熱・融合工程は、上記凝集粒子を加熱して融合する工程である。加熱・融合工程に入る前に、トナー粒子間の融着を防ぐため、前記pH調整剤、前記界面活性剤、凝集停止剤等を適宜投入することができる。トナー粒度分布を狭くする為には、凝集停止剤を添加することが好ましい。
【0063】
上記凝集停止剤としては、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸三リチウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸三ナトリウム、トリニトロ三酢酸三ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム、トリエチレンテトラアミン六酢酸六ナトリウム等のカルボン酸塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等のキレート樹脂が挙げられる。
【0064】
加熱の温度としては、凝集粒子に含まれる樹脂のガラス転移点(Tg)の温度から樹脂の分解温度の間であればよい。
【0065】
加熱・融合の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。即ち、前記融合の時間は、前記加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には30分乃至10時間である。
【0066】
本発明においては、加熱・融合工程の終了後に得られたトナーを、適切な条件で洗浄、濾過、乾燥等することにより、トナーを得る。更に、得られたトナーの表面に、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム等の無機粒体や、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂粒子を、乾燥状態で剪断力を印加して添加してもよい。これらの無機粒体や樹脂粒子は、流動性助剤やクリーニング助剤等の外添剤として機能する。
【0067】
本発明におけるカーボンブラックの湿潤とは、メカニカルスタラー、マグネティックスタラー、シェーカー、ローテーター、ローター、遊星式分散機等を用いて撹拌等を行うことでカーボンブラック表面を水系媒体で湿潤させることを意味する。湿潤するまでの時間を考慮した場合、遊星式分散機等を用いることが好ましい。
【0068】
また、塩基性化合物の存在無しに酸基を有する樹脂を水系媒体中で微粒化させるとpHが3乃至4と、酸性側に偏りすぎることがある。例えば、樹脂が、ポリエステル樹脂の場合などは加水分解によりポリエステル樹脂の分子量低下を招いてしまうことがある。しかし、塩基性物質を存在させることにより、乳化時に水系分散体が酸性側に移行しにくくさせることができるため、水系媒体中で酸基を有する樹脂を微粒化させた場合であっても、該樹脂の加水分解を伴わずに樹脂微粒子の水系分散体が得られる。
【0069】
上記塩基性物質としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基類、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等の有機塩基類が挙げられる。この中でも、加水分解を生じさせないという観点から、弱塩基である、ジメチルアミン、トリエチルアン等のアミン系物質が好ましい。
【0070】
次に、着色樹脂粒子の水系分散体の製造方法について説明する。
【0071】
本発明の方法は、水系媒体、カーボンブラック、酸基を有する樹脂、塩基性物質及び界面活性剤を混合して混合物を得る混合工程、前記混合物を、前記酸基を有する樹脂の軟化温度(Tm)より10℃以上高い温度に加温しながら剪断力を加えて乳化物を得る乳化工程、前記乳化物を冷却して、樹脂微粒子の水系分散体を得る冷却工程を含む。具体的には、まず、密閉加圧可能な容器内に、界面活性剤と塩基性物質を有する水系媒体中に酸基を有する樹脂を投入混合する。次に、該樹脂の軟化温度(Tm)より10℃以上高い温度に加熱しながら、密閉加圧下で、剪断力を加え、溶融した樹脂を分散させて乳化物を得る。さらに、得られた乳化物を該樹脂のガラス転移温度以下の温度まで剪断力を加えながら、0.5℃/分以上10℃/分以下の冷却速度で冷却し、樹脂微粒子の水系分散体を得る。
【0072】
上記乳化工程において、酸基を有する樹脂の軟化温度(Tm)より10乃至100℃(より好ましくは15乃至50℃)高い温度に加温しながら剪断力を加えることが好ましい。
【0073】
上記乳化工程における加熱温度と酸基を有する樹脂の軟化温度(Tm)の差が10℃未満の場合は、樹脂の軟化が不十分であり乳化物を得ることができない。したがって、上記乳化工程における加熱温度は酸基を有する樹脂の軟化温度(Tm)より10℃以上高い温度とした。また、安定した乳化物を得るためには、上記乳化工程において酸基を有する樹脂の軟化温度(Tm)より15℃以上高い温度に加温しながら剪断力を加えることが好ましい。
【0074】
一方、樹脂の熱的分解を防ぐために、上記乳化工程における加熱温度は酸基を有す樹脂の軟化温度(Tm)より100℃を超えない温度に加温しながら剪断力を加えることが好ましく、50℃を超えないことがより好ましい。
【0075】
前記のように、本発明においては、酸基を有する樹脂の軟化温度は90℃以上が好ましいので、加熱温度は100℃以上になる。従って、密閉加圧できる容器内で、加圧条件下(より好ましくは0.11MPa以上4.00MPa以下、特に好ましくは0.11MPa以上1.60MPa以下)で分散することが好ましい。
【0076】
上記加温加圧時間が短すぎると各乳化物の大きさがまちまちとなってシャープな粒径分布が得られにくいため、10分以上であることが好ましく、より好ましくは20分以上である。
【0077】
得られた乳化物を、酸基を有する樹脂のガラス転移温度(Tg)以下の温度まで、剪断力を加えながら冷却する際の冷却速度は、0.5℃/分以上10℃/分以下である。
【0078】
該冷却速度は、0.5℃/分以上5℃/分以下であることがより好ましい。10℃/分を越える冷却速度で冷却すると、粗大粒子が生成し、樹脂微粒子の粒度分布がブロードになる。樹脂微粒子の粒度分布がブロードであると、凝集法によってトナーを製造した場合、トナー中の着色剤が不均一になり、印字したときの濃度が低下するなどの弊害を生じ易い。なお、上記ガラス転移温度(Tg)以下の温度から室温までの冷却速度は特に制限されない。
【0079】
本発明の着色樹脂粒子分散体の製造方法に用いられる装置としては、高温高圧に耐えうる容器中で、高速剪断力をかけることができる装置であれば特に限定はされない。高速剪断力をかける装置としては、クレアミックス、ホモミキサー、及び、ホモジナイザー等を挙げることができる。
【0080】
なお、本発明の樹脂微粒子の水系分散体をトナー材料として用いる場合、混合工程において、混合物中に着色剤、離型剤及び荷電制御剤のうち少なくとも一つを含有させてもよい。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下における「部」は「質量部」を意味する。
【0082】
まず、本発明に用いた、樹脂及び作製した着色樹脂粒子、離型剤粒子の測定方法について示す。
【0083】
[平均粒径と分布幅]
着色樹脂粒子、カーボンブラック分散体の粒径は、0.1質量%の濃度で、UPA−EX150(日機装社製)にて、測定した値を用いた。なお、本発明における粒径とは、50%または90%累積粒径値(それぞれd50またはda90)を意味する。
【0084】
トナー粒径及び粒度分布は、1質量%塩化ナトリウム水溶液100乃至150ml中に、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1乃至5ml加え、さらに測定試料を0.5乃至50mg加え、この試料分散液を、超音波分散機で約1乃至3分間分散処理し、100μmアパチャーを用いたコールターマルチサイザーIII(ベックマンコールター社製)により、100μmのアパーチャーを用いて体積を基準として2乃至40μmの粒度分布を測定した。
【0085】
[樹脂の軟化点(Tm)]
樹脂の軟化温度(Tm)は、フローテスター(CFT−500D:島津製作所社製)を用いて測定した。具体的には、測定する試料1.0gを秤量し、高さが1.0mmで直径1.0mmのダイを使用し、昇温速度4.0℃/min、予熱時間300秒、荷重5kg、測定温度範囲60乃至200℃の条件で測定を行った。上記の試料が1/2流出したときの温度を軟化温度(Tm)とした。
【0086】
[樹脂の酸価]
樹脂の酸価は以下の要領で測定した。尚、基本操作は、JIS−K0070に準ずる。
(1)試薬
(a)溶剤:エチルエーテル−エチルアルコール混液(1+1または2+1)またはベンゼン−エチルアルコール混液(1+1または2+1)を使用直前にフェノールフタレインを指示薬としてN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液で中和しておく。
(b)フェノールフタレイン溶液:フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。
(c)N/10水酸化カリウム−エチルアルコール溶液:水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしエチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2乃至3日放置後ろ過する。標定はJIS K 8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行う。
(2)操作
樹脂微粒子(試料)1乃至20gを正しくはかりとり、これに溶剤100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後これをN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いたときを中和の終点とする。
(3)計算式
次の式によって酸価を算出する。
A=B×f×5.611/S
A:酸価
B:N/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:N/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
【0087】
[樹脂の重量平均分子量(Mn)]
樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、以下に示す条件で重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0088】
40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
【0089】
<樹脂1の製造>
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物180部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物505部、テレフタル酸320部、ジブチルスズオキシド0.1部をガラス製2リットルの4つ口フラスコに入れた。さらに、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー、及び窒素導入管を取り付け、マントルヒーター中で、窒素気流下にて220℃にて40時間反応せしめた。得られたポリエステル樹脂のMwは16000、酸価は0.8mgKOH/g、軟化点は118℃であった。
【0090】
<樹脂2の製造>
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物180部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物505部、テレフタル酸320部、ジブチルスズオキシド0.1部をガラス製2リットルの4つ口フラスコに入れた。さらに、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー、及び窒素導入管を取り付け、マントルヒーター中で、窒素気流下にて220℃にて23時間反応せしめた。得られたポリエステル樹脂のMwは9800、酸価は2.0mgKOH/g、軟化点は118℃であった。
【0091】
<樹脂3の製造>
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物550部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物180部、テレフタル酸337部、無水トリメリット酸8.0部、ジブチルスズオキシド0.1部をガラス製2リットルの4つ口フラスコに入れた。さらに、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー、及び窒素導入管を取り付け、マントルヒーター中で、窒素気流下にて220℃にて、25時間反応せしめた。得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)を測定した所、12400であり、酸価は8.0mgKOH/g、軟化点は119℃であった。
【0092】
<樹脂4の製造>
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物390部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物320部、テレフタル酸270部、無水トリメリット酸80部、ジブチルスズオキシド0.1部をガラス製2リットルの4つ口フラスコに入れた。さらに、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー、及び窒素導入管を取り付け、マントルヒーター中で、窒素気流下にて220℃にて25時間反応せしめた。得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)を測定した所、130000であり、酸価は16.0mgKOH/g、軟化点は120℃であった。
【0093】
<樹脂5の製造>
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物390部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物320部、テレフタル酸270部、無水トリメリット酸150部、ジブチルスズオキシド0.1部をガラス製2リットルの4つ口フラスコに入れた。さらに、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー、及び窒素導入管を取り付け、マントルヒーター中で、窒素気流下にて220℃にて25時間反応せしめた。得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)を測定した所、170000であり、酸価は32.0mgKOH/g、軟化点は120℃であった。
【0094】
<樹脂6の製造>
スチレン79.4部、アクリル酸n−ブチル19.8部、アクリル酸1.0部、2,2−ビス(44−ジ−t−ブチルパーオキシシクロへキシル)プロパン1.0部を、脱水した100部のプロピレングリコールモノメチルエーテル中で5時間加熱還流することで重合を行った。得られた樹脂のMwを測定した所12500、酸価が9.0mgKOH/g、軟化点が115℃であった。
【0095】
<製造例1;着色樹脂粒子1の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)5部を溶解させた895部のイオン交換水に、DBP吸油量が114ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)100部を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラック湿潤体を得た。
【0096】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、5部のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、229部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂粒子1を得た。着色樹脂粒子1の乳化剤量、50%累積粒径(d50)、90累積粒径(d90)は表1に示した。なお、本発明における乳化剤量とは、着色樹脂粒子中のカーボンブラック量と樹脂量の和に対する、乳化剤量の質量比を意味する。
【0097】
<製造例2;着色樹脂粒子2の製造>
冷却速度を0.5℃/minとした以外は、製造例1と同様の方法で、着色樹脂粒子2を得た。着色樹脂粒子2の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0098】
<製造例3;着色樹脂粒子3の製造>
冷却速度を、9.5℃/minとした以外は、製造例1と同様の方法で、着色樹脂粒子3を得た。着色樹脂粒子3の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0099】
<製造例4;着色樹脂粒子4の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)0.1部を溶解させた899.9部のイオン交換水に、DBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)100部を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0100】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、5部のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、229部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂粒子4を得た。着色樹脂粒子4の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0101】
<製造例5;着色樹脂粒子5の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)10部を溶解させた890部のイオン交換水に、DBP吸油量が123ml/100gであるカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)100部を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0102】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、5部のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、229部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂粒子5を得た。着色樹脂粒子5の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0103】
<製造例6;着色樹脂粒子6の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)12部を溶解させた888部のイオン交換水に、DBP吸油量が123ml/100gであるカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)100部を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0104】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、5部のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、229部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂粒子6を得た。着色樹脂粒子6の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0105】
<製造例7;着色樹脂粒子7の製造>
DBP吸油量が114ml/100gのカーボンブラックから、DBP吸油量が115ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 60:デグサ社製)に代えた以外は、製造例1と同様な方法で着色樹脂分散液7を得た。着色樹脂粒子7の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0106】
<製造例8;着色樹脂粒子8の製造>
DBP吸油量が114ml/100gのカーボンブラックからDBP吸油量が95ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 90:デグサ社製)に代えた以外は、製造例1と同様な方法で着色樹脂液8を得た。着色樹脂粒子8の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0107】
<製造例9;着色樹脂粒子9の製造>
DBP吸油量が114ml/100gのカーボンブラックから、DBP吸油量が70ml/100gのカーボンブラック(BP130:キャボット社製)に代えた以外は、製造例1と同様な方法で着色樹脂粒子9を得た。着色樹脂粒子9の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0108】
<製造例10;着色樹脂粒子10の製造>
DBP吸油量が114ml/100gのカーボンブラックからDBP吸油量が112ml/100gのカーボンブラック(M880:キャボット社製)に代えた以外は、製造例1と同様な方法で着色樹脂粒子10を得た。着色樹脂粒子10の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0109】
<製造例11;着色樹脂粒子11の製造>
DBP吸油量が114ml/100gのカーボンブラックからDBP吸油量が420ml/100gのカーボンブラック(Printex XE2B:デグサ社製)に代えた以外は、製造例1と同様な方法で着色樹脂粒子11を得た。着色樹脂粒子11の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0110】
<製造例12;着色樹脂粒子12の製造>
DBP吸油量が114ml/100gのカーボンブラックから、DBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(Printex L6:デグサ社製)に代えた以外は、製造例1と同様な方法で着色樹脂粒子12を得た。着色樹脂粒子12の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0111】
<製造例13;着色樹脂粒子13の製造>
DBP吸油量が114ml/100gのカーボンブラックから、DBP吸油量が142ml/100gのカーボンブラック(トーカブラック#4300:トーカイカーボン社製)に代えた以外は、製造例1と同様な方法で着色樹脂粒子13を得た。着色樹脂粒子13の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0112】
<製造例14;着色樹脂粒子14の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)0.1部を溶解させた899.9部のイオン交換水に、100部のDBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0113】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、6部のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、232部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂粒子14を得た。着色樹脂粒子14の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0114】
<製造例15;着色樹脂粒子15の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)5部を溶解させた895部のイオン交換水に、100部のDBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0115】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、6部のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、232部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂粒子15を得た。着色樹脂粒子15の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0116】
<製造例16;着色樹脂粒子16の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)10部を溶解させた890部のイオン交換水に、100部のDBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0117】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、6部のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、232部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂粒子16を得た。着色樹脂粒子16の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0118】
<製造例17;着色樹脂粒子17の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)12部を溶解させた888部のイオン交換水に、100部のDBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0119】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、6部のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、232部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂粒子17を得た。着色樹脂粒子17の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0120】
<製造例18;着色樹脂粒子18の製造>
アニオン界面活性剤をノニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ノイゲンEA137)に代えた以外は製造例1と同様な方法で、着色樹脂分散液18を得た。着色樹脂粒子18の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0121】
<製造例19;着色樹脂粒子19の製造>
アニオン界面活性剤をノニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ノイゲンEA137)に代えた以外は製造例6と同様な方法で、着色樹脂分散液19を得た。着色樹脂粒子19の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0122】
<製造例20;着色樹脂粒子20の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)10部を溶解させた790部のイオン交換水に、200部のDBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0123】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、1部のアニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、233部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂分散液20を得た。着色樹脂粒子20の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0124】
<製造例21;着色樹脂粒子21の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)15部を溶解させた685部のイオン交換水に、300部のDBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0125】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、1部のアニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、233部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、d50が216nm、d90が437nmの着色樹脂分散液21を得た。着色樹脂粒子21の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0126】
<製造例22;着色樹脂粒子22の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)17.5部を溶解させた632.5部のイオン交換水に、350部のDBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0127】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、1部のアニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、233部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂分散液22を得た。着色樹脂粒子22の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0128】
<製造例23;着色樹脂粒子23の製造>
樹脂4を樹脂1に代え、塩基量を0.8部とした以外は、製造例1と同様な方法で、着色樹脂分散液23を得た。着色樹脂粒子23の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0129】
<製造例24;着色樹脂粒子24の製造>
樹脂4を樹脂2に代え、塩基量を2.0部とした以外は、製造例1と同様な方法で、着色樹脂分散液24を得た。着色樹脂粒子24の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0130】
<製造例25;着色樹脂粒子25の製造>
樹脂4を樹脂3に代え、塩基量を8.0部とした以外は、製造例1と同様な方法で、着色樹脂分散液25を得た。着色樹脂粒子25の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0131】
<製造例26;着色樹脂粒子26の製造>
樹脂4を樹脂5に代え、塩基量を32.0部とした以外は、製造例1と同様な方法で、着色樹脂分散液22を得た。着色樹脂粒子22の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0132】
<製造例27;着色樹脂粒子27の製造>
樹脂4を樹脂6に代え、塩基量を9.0部とした以外は、製造例1と同様な方法で、着色樹脂分散液27を得た。着色樹脂粒子27の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0133】
<製造例28;着色樹脂粒子28の製造>
ジエチルアミノエタノールをジメチルアミノエタノールとし、使用量を12部とした以外は、製造例1と同様な方法で、着色樹脂粒子28を得た。着色樹脂粒子28の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0134】
<製造例29;着色樹脂粒子29の製造>
ジエチルアミノエタノールを水酸化ナトリウムとし、使用量を5.4部とした以外は、製造例1と同様な方法で、着色樹脂粒子29を得た。着色樹脂粒子29の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0135】
<製造例30;着色樹脂粒子30の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)25部を溶解させた875部のイオン交換水に、DBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)を投入した後、撹拌脱泡装置(松尾産業社製:SNB−350N)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0136】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、234部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その際、乳化分散不良の影響と思われる、過剰な負荷がクレアミックスにかかったものの、作業を続行した結果、最終的には装置にかかる負荷は通常程度となった。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂粒子30を得た。着色樹脂粒子30の乳化剤量、50%累積粒径(d50)、90累積粒径(d90)は表1に示した。
【0137】
<製造例31;着色樹脂粒子31の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)23部を溶解させた877部のイオン交換水に、100部のDBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0138】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、0.5部のアニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、233部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その際、乳化分散不良の影響と思われる、過剰な負荷がクレアミックスにかかったものの、作業を続行した結果、最終的には装置にかかる負荷は通常程度となった。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂粒子31を得た。着色樹脂粒子31の乳化剤量、50%累積粒径(d50)、90累積粒径(d90)は表1に示した。
【0139】
<製造例32;着色樹脂粒子32の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)5部を溶解させた895部のイオン交換水に、100部のDBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)、64部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0140】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、5部のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、245部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂粒子32を得た。着色樹脂粒子32の乳化剤量、50%累積粒径(d50)、90累積粒径(d90)は表1に示した。
【0141】
<比較製造例1>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)5部を85部のイオン交換水に溶解した後、DBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)10部を添加、24,000r/minの撹拌式高速せん断型のホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックス)で分散したが、高粘度のスライムとなってしまった。
【0142】
<比較製造例2>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)10部を80部のイオン交換水に溶解した後、DBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)10部を添加、24,000r/minの撹拌式高速せん断型のホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックス)で分散したが、高粘度のスライムとなってしまった。
【0143】
<比較製造例3;着色粒子1の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)20部を30部のイオン交換水に溶解した後、DBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)10部を添加、24,000r/minの撹拌式高速せん断型のホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックス)で分散する事で、d50が274nm、d90が857nmの着色粒子1を得た。
【0144】
<比較製造例4;着色粒子2の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)20部を30部のイオン交換水に溶解した後、DBP吸油量が115ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 60:デグサ社製)10部を添加、24,000r/minの撹拌式高速せん断型のホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックス)で分散することで、d50が274nm、d90が857nmの着色粒子2を得た。
【0145】
<比較製造例5>
冷却速度を11.0℃/minとした以外は、製造例1と同様の操作を行ったところ、液体とはならず、プラスチック様の固形となってしまった。
【0146】
<比較製造例6;着色樹脂粒子33の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)15部を溶解させた885部のイオン交換水に、100部のDBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0147】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、5部のアニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、229部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂分散液33を得た。着色樹脂粒子33の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0148】
<比較製造例7;着色樹脂粒子34の製造>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)5部を溶解させた895部のイオン交換水に、100部のDBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)を投入した後、撹拌脱泡装置SNB−350N(松尾産業社製)を用いて、カーボンブラックの湿潤体を得た。
【0149】
得られたカーボンブラック湿潤体の250部と、500部の樹脂4、7.5部のアニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、229部のイオン交換水を、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。次に高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行い、着色樹脂分散液34を得た。着色樹脂粒子34の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0150】
<比較製造例8;着色樹脂粒子35の製造>
着色樹脂粒子1に2.5部のアニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)を溶解することで、着色樹脂粒子35を得た。着色樹脂粒子35の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0151】
<比較製造例9>
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)6.25部を溶解させた452.75部のイオン交換水、25部のDBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)、500部の樹脂4、16部のN,N−ジメチルアミノエタノール(塩基性物質)、1100mlの耐圧丸底ステンレス容器に入れた。高速剪断乳化装置クレアミックス(エム・テクニック社製:CLM−2.2S)を上記耐圧丸底ステンレス容器に密閉接続した。容器内の混合物を、130℃に加温加圧しながら、クレアミックスのローター回転数を20,000r/minとし30分間剪断分散した。その後、50℃になるまで、20,000r/minの回転を維持しながら、0.8℃/分の冷却速度で冷却を行ったところ、カーボンブラックがダマとなり、均一な分散体は得られなかった。
【0152】
<比較製造例10;着色樹脂分散液36の製造>
DBP吸油量が123ml/100gのカーボンブラック(NIPEX 70:デグサ社製)から、DBP吸油量が45ml/100gのカーボンブラック(Specia1 Black350:トーカイカーボン社)に代えた以外は、製造例1と同様な方法で着色樹脂粒子36を得た。着色樹脂粒子36の乳化剤量、d50、d90を表1に示した。
【0153】
−離型剤分散液の調製−
パラフィンワックス 100部
(日本精蝋社製:HNP0190、融点90℃)
アニオン界面活性剤 10部
(ネオゲンRK、第一工業製薬社製)
イオン交換水 890部
上記成分を、ジャケット付混合容器中で混合し、次いで液温を90℃とした。90℃の混合液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社製:CLM−2.2/3.7W)で循環運転を行った。なお、運転条件はローター回転数19,000r/min、スクリーン回転数19,000r/minの条件とした。60分間分散処理した後、ローター回転数1,000r/min、スクリーン回転数0r/min、冷却速度10℃/minの冷却処理条件にて40℃まで冷却することで、平均粒径が190nmである離型剤粒子分散液を得た。
【0154】
−樹脂分散液の調製−
樹脂製造例4で製造した樹脂 200部
テトラヒドロフラン(和光純薬製) 400部
塩基性物質 6.4部(N,N−ジメチルアミノエタノール)
アニオン性界面活性剤 10部(ネオゲンRK、第一工業製薬社製)
上記成分を混合して溶解したものを溶解した後、イオン交換水 1790部を添加後、超音波洗浄機(本田電子社製、W−113)28kHzで60分間分散、次いで高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製、HJP30006)を用いて200MPaで分散を行った。分散終了後、エバポレータにてテトラヒドロフランを除去した後、イオン交換水を添加することで固形分濃度が10.5質量%である、平均粒径が250nmの樹脂粒子分散液を調製した。
【0155】
<実施例1>
・着色樹脂分散液1 200部
・離型剤分散液 100部
・イオン交換水 600部
以上をステンレス製フラスコ中においてホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて、十分に混合・分散した。次いで、100部の硫酸マグネシウムの1質量%水溶液を滴下、滴下後もホモジナイザーで分散操作を継続した。加熱用オイルバスで撹拌しながら昇温した。43.5℃で昇温を停止し、その温度で60分間保持する事で、凝集工程を行った。次いで、600部のクエン酸三ナトリウムの5質量%水溶液を添加した後、撹拌を継続しながら85℃まで昇温して3時間保持する事で、融着工程を行った。
【0156】
次いで、冷却し、濾過、イオン交換水で十分洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行う事で、トナー1を得た。
【0157】
得られたトナーの粒径、粒度分布及び、濾過洗浄時におけるカーボンブラックの脱離度合いは、表2に示した。
【0158】
<実施例2乃至32>
混合液調製工程において、着色樹脂分散液1を、各々着色樹脂分散液2乃至24、26乃至28に変更する以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。得られたトナーの粒径、粒度分布及び、濾過洗浄時におけるカーボンブラック脱離の度合いは、表2に示した。
【0159】
<比較例1乃至4>
混合液調製工程において、着色樹脂分散液1を、各々着色樹脂分散液33乃至36に変更する以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。得られたトナーの粒径、粒度分布及び、濾過洗浄時におけるカーボンブラック脱離の度合いは、表2に示した。
【0160】
<比較例5>
・樹脂乳化分散液 200部
・着色粒子分散液1 50部
・離型剤分散液 100部
・イオン交換水 550部
以上をステンレス製フラスコ中においてホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて、十分に混合・分散した。次いで、100部の硫酸マグネシウムの1質量%水溶液を滴下、滴下後もホモジナイザーで分散操作を継続した。加熱用オイルバスで撹拌しながら昇温した。43.5℃で昇温を停止し、その温度で60分間保持する事で、凝集工程を行った。次いで、600部のクエン酸3Naの5質量%水溶液を添加した後、撹拌を継続しながら85℃まで昇温して3時間保持する事で、融着工程を行った。
【0161】
次いで、冷却し、濾過、イオン交換水で十分洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行うことで、トナー29を得た。得られたトナーの粒径、粒度分布及び、濾過洗浄時におけるカーボンブラック脱離の度合いは、表2に示した。
【0162】
<比較例6>
着色粒子1を着色粒子2に代える以外は、比較例6と同様の方法で、トナー30を得た。
【0163】
得られたトナーの粒径、粒度分布及び、濾過洗浄時におけるカーボンブラック脱離の度合いは、表2に示した。
【0164】
なお、表2記載の、カーボンブラック脱離度合いの基準は、以下の従って評価した。
○:濾液が透明であり、目視上、カーボンブラックの脱離は観測されない。
△:濾液に若干のカーボンブラックが観測されるものの、十分な透明度を保ち、トナーとしての使用上問題のないレベルであった。
×:濾液が黒ずんでおり、目視上、カーボンブラックが観測された。
【0165】
・画像濃度
(画像濃度の評価)
得られたトナー100部に対し、BET法による比表面積が200m2/gである疎水性シリカ2.5部を外添してトナーとした。このトナーを、LBP−2040(キヤノン社製)に装填し、30℃/80%RHの環境にて画出しを行った。画出しは、複写機用普通紙(75g/m2)にベタ画像を画出しする方法にて実施した。画像濃度は、上記ベタ画像の反射濃度を「マクベス反射濃度計RD918」(マクベス社製)SPIフィルターを使用により計測して評価した。
【0166】
評価基準としては、マクベス濃度値が1.2以上であると良好な画像濃度を示し、1.0以上1.2未満では若干画像に問題があるものの実用上問題がない画像濃度、1.0未満では画像に与える影響がかなり激しく製品上好ましくない画像濃度を示す。
濃度値:1.2以上 ・・・・A良
:1.0以上1.2未満・・・・B若干劣る(製品上問題無し)
:1.0未満 ・・・・C悪い
【0167】
実施例1、7乃至13、比較例4乃至6の結果を表3に示す。
【0168】
【表1】

【0169】
【表2】

【0170】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明は、電子印刷の如き画像形成方法において、静電荷像を現像するためのトナー、または、トナージェット方式の画像形成方法におけるトナー定着画像を形成するためのトナーに利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤、カーボンブラック、酸基を有する結着樹脂、水系媒体を含有する着色樹脂粒子分散液中の界面活性剤量が、酸基を有する結着樹脂量とカーボンブラック量の和に対して、1.6質量%以下であり、
少なくとも、
(A)界面活性剤を含有する水系媒体でDBP吸油量が65ml/100g以上のカーボンブラックを湿潤させ、カーボンブラック湿潤体を得る、カーボンブラック湿潤工程
(B)前記カーボンブラック湿潤体、前記結着樹脂、塩基性物質を、少なくとも混合する事で樹脂/カーボンブラック混合物を得る、樹脂/カーボンブラック混合工程
(C)該樹脂/カーボンブラック混合物を、該樹脂の軟化温度(Tm)より10℃以上の温度に加温しながら剪断力を加えることで、樹脂/カーボンブラック乳化物を得る、乳化工程
(D)該樹脂/カーボンブラック乳化物を、剪断力を加えながら該樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度まで、0.5℃/分以上10℃/分以下の冷却速度で冷却し、90%累積粒径が1.0μm以下の前記着色樹脂粒子分散液を得る、冷却工程
(E)前記着色樹脂粒子を水系媒体中で凝集剤により、凝集させて凝集粒子を形成する凝集工程、及び、
(F)前記凝集粒子を前記酸基を有する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度まで加熱し融合してトナー粒子を得る、融合工程
を有することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
前記(B)工程における混合工程において、少なくとも、前記カーボンブラック湿潤体、前記結着樹脂、塩基性物質、及び界面活性剤を、混合することを特徴とする請求項1に記載のトナー製造方法。
【請求項3】
前記界面活性剤量が、酸基を有する樹脂の0.01乃至0.50質量%であることを特徴とする請求項2に記載のトナー製造方法。
【請求項4】
前記カーボンブラック湿潤工程に使用される界面活性剤濃度が、カーボンブラック量の10.0質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー製造方法。
【請求項5】
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー製造方法。
【請求項6】
カーボンブラック量が、前記樹脂100質量部に対して15.0質量部以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のトナー製造方法。
【請求項7】
前記酸基を含有する樹脂の酸価が、5乃至30mgKOH/gの範囲であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のトナー製造方法。
【請求項8】
前記酸基を含有する樹脂が、少なくともポリエステルを含有する樹脂であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のトナー製造方法。
【請求項9】
前記塩基性物質が、アミン系物質であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のトナー製造方法。