説明

トラックおよびトラック用の荷台スライド傾斜装置

【課題】荷台長が3300mm以下のトラックに好適な荷台スライド傾斜装置およびその荷台スライド傾斜装置を搭載したトラックを提供する。
【解決手段】トラックの荷台の下面には、1対のラックギヤ49が車幅方向に互いに間隔を空けて固定されている。各ラックギヤ49には、ピニオンギヤ50が噛合している。ピニオンギヤ50は、シャシ2の後端部に設けられる回転軸43により連結されている。回転軸43には、プーリ42、チェーン45およびスプロケット44を介して、電動モータ41の駆動力が伝達される。また、シャシ2には、1対の第2ガイドレール30が車幅方向に間隔を空けて設けられている。荷台4には、各第2ガイドレール30に対応して、前後方向に延びる嵌合部材34が設けられている。嵌合部材34は、荷台4のスライドに伴って、第2ガイドレール30の内側壁部31および外側壁部32の間に嵌合して移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックおよびそのトラック用の荷台スライド傾斜装置に関し、とくに軽自動車規格のトラック(軽トラック)およびその軽トラックに好適な荷台スライド傾斜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軽トラックや最大積載量が1000kg以下の小型トラック(以下、単に「小型トラック」という。)は、たとえば、田植機などの農耕機の運搬に広く使用されている。
【0003】
軽トラックおよび小型トラックでは、荷台がシャシ(フレーム)に固定されている。そのため、荷台への農耕機の積み降ろしは、荷台の後端と地面との間に歩み板を架設して、農耕機を歩み板上を移動させることにより行われる。
【0004】
歩み板の長さが大きいほど、歩み板が荷台と地面との間に架設されたときに、その歩み板の傾斜角度が小さくなり、農耕機を安全かつ容易に積み降ろしすることができる。その一方で、歩み板の長さが大きいほど、歩み板の重量が増し、歩み板の取り扱いが困難になる。したがって、歩み板には、ある程度楽に取り扱うことができながら、農耕機の積み降ろしに必要最低限の安全性が確保される長さの木板または金属が用いられる。
【0005】
しかしながら、とくに高齢の農作業者にとっては、歩み板の取り扱いは決して楽ではない。また、荷台と地面との間に架設された歩み板の傾斜角度が大きく、農耕機の積み降ろしには、歩み板上からの農耕機の転落などの危険が伴う。
【0006】
そこで、規模の大きい農家の中には、農耕機の運搬用に、荷台上に小型乗用車などを積載して運搬可能なキャリアカーを購入している農家もある。キャリアカーは、荷台をシャシの後方にスライドさせて傾斜させるための装置(機構)を搭載している。この荷台スライド傾斜装置は、たとえば、荷台のスライドを案内するためのガイドレールと、荷台をスライドさせるための動力源である油圧シリンダとを備えている。油圧シリンダは、本体がシャシに対して揺動可能に取り付けられ、ロッドの先端部が荷台の後端部に枢着されている。油圧シリンダのロッドが伸長(進出)されると、荷台がガイドレールに沿って後方にスライドしつつ、その後端部が下がるように傾斜する。そして、ロッドが最も伸長した状態になると、荷台の後端部が接地し、農耕機などの被運搬物を荷台に積み降ろしすることができる。
【0007】
このようなキャリアカーを農耕機の運搬に使用すれば、荷台を降ろした状態で、荷台の傾斜角度は約30°以下となり、農耕機を荷台に安全かつ容易に積み降ろしすることができる。
【0008】
ところが、キャリアカーの荷台長は、4000mmを超えるため、荷台を降ろすには、キャリアカーの後方に十分なスペースが必要となる。また、キャリアカーは、軽トラックおよび小型トラックと比べると、その車幅も大きい。しかし、農道には、キャリアカーの荷台を降ろすのに十分なスペースがなかったり、車幅の大きいキャリアカーを停車させるスペースさえもなかったりし、農耕機の運搬用として、キャリアカーは必ずしも好適ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−6708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明者は、このような背景の下、キャリアカーに搭載されている荷台スライド傾斜装置を軽トラックや小型トラックに転用し、軽トラックや小型トラックの荷台をシャシの後方にスライドさせて傾斜させることを考えたが、その転用は、次の理由1〜3から不可能であることが判明した。
【0011】
1.軽トラックや小型トラックの荷台を約30°以下の小さい傾斜角度で降ろすことができるストロークを有し、かつ、その全長が荷台長以内に収まるような油圧シリンダが実在しない。
【0012】
2.油圧シリンダや油圧ポンプを含む荷台スライド傾斜装置が大型であり、軽トラックなどには、それを収容するスペースがなく、そのスペースを確保するためには、シャシと荷台との間の間隔を大きくしなければならない。その結果、荷台の位置が高くなり、荷台をその前端部がシャシの後端部上に位置するまでスライドさせたとしても、荷台の傾斜角度が大きくなりすぎて、農耕機を荷台に安全かつ容易に積み降ろしすることができない。
【0013】
3.油圧シリンダを備える荷台スライド傾斜装置は、油圧ポンプなども含み、その重量が大きいため、これを軽トラックなどに搭載すると、最大積載量が減り、軽トラックなどの実用性が著しく損なわれる。
【0014】
本発明の目的は、トラック、とくに軽トラックに好適な荷台スライド傾斜装置およびその荷台スライド傾斜装置を搭載したトラックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成するため、第1の発明に係る荷台スライド傾斜装置は、トラックの荷台を前記トラックのシャシに対して後方にスライドさせ、前記荷台の後端部を接地させて、前記荷台を傾斜した状態にするための荷台スライド傾斜装置であって、前記シャシに保持されるモータと、複数のプーリと、前記モータからの駆動力によって回転され、前記複数のプーリが取り付けられるプーリ取付軸と、車幅方向に延び、前記シャシの後端部に回転可能に設けられる回転軸と、前記回転軸に取り付けられた複数のスプロケットと、前記各プーリと前記各スプロケットとの間に巻回されたチェーンと、前記荷台の下面に車幅方向に互いに間隔を空けて設けられ、それぞれ前後方向に前記荷台の全長にわたって延びる1対のラックギヤと、前記回転軸に取り付けられ、各ラックギヤと噛合する1対のピニオンギヤと、前記シャシに車幅方向に互いに間隔を空けて設けられ、それぞれ前後方向に延び、上下方向に互いに対向する上壁部および下壁部を有する1対の第1ガイドレールと、各第1ガイドレールに対応して設けられ、前記荷台の前端部に回転可能に支持されて、前記上壁部および前記下壁部の間に転動可能に収容されるガイドローラとを備えている。
【0016】
この荷台スライド傾斜装置が搭載されたトラックでは、荷台の下面に、1対のラックギヤが車幅方向に互いに間隔を空けて固定されている。各ラックギヤは、前後方向に荷台の全長にわたって延びている。各ラックギヤには、ピニオンギヤが噛合している。ピニオンギヤは、シャシの後端部に回動自在に設けられる回転軸により連結されている。回転軸には、複数のスプロケットが取り付けられている。また、モータの駆動力によって回転されるプーリ取付軸には、複数のプーリが取り付けられている。そして、各スプロケットと各プーリとの間には、チェーンが巻回されている。
【0017】
シャシには、1対の第1ガイドレールが車幅方向に間隔を空けて設けられている。各第1ガイドレールは、前後方向に延び、上下方向に互いに対向する上壁部および下壁部を有している。そして、各第1ガイドレールの上壁部および下壁部の間には、荷台の前端部に回転可能に支持されたガイドローラが転動可能に収容されている。
【0018】
モータが所定方向に回転駆動されると、その駆動力がプーリ、チェーンおよびスプロケットを介して回転軸に伝達され、回転軸が回転する。回転軸の回転は、ピニオンギヤを介してラックギヤに伝達される。これにより、荷台は、シャシ上に収納された状態から、ラックギヤとともに後方へスライド(移動)する。
【0019】
荷台のスライドに伴って、ガイドローラが第1ガイドレール内を後方へ転動する。ガイドローラに対してその上下から第1ガイドレールの上壁部および下壁部が対向しているので、ガイドローラの位置により荷台の前端部の位置が決まる。そのため、荷台の後方へのスライドに伴って、荷台の姿勢を良好に変化させることができる。ラックギヤの前端部がピニオンギヤと噛合する位置に達した時点で、モータの回転駆動が停止されて、荷台は、シャシの後端部と地面との間に傾斜して架設された状態(荷台の前端部がシャシの後端部上に残り、荷台の後端部が接地した状態)となる。
【0020】
また、荷台から被運搬物が積み降ろしされた後、モータが所定方向と逆方向に回転駆動されると、その駆動力がプーリ、チェーン、スプロケット、回転軸およびピニオンギヤを介してラックギヤに伝達され、荷台がラックギヤとともに前方へスライドする。
【0021】
荷台のスライドに伴って、ガイドローラが第1ガイドレール内を前方へ転動する。ガイドローラに対してその上下から第1ガイドレールの上壁部および下壁部が対向しているので、荷台の前方への移動時にも、ガイドローラの位置により荷台の前端部の位置が決まる。そのため、荷台の前方へのスライドに伴って、荷台の姿勢を良好に変化させることができる。ラックギヤの後端部がピニオンギヤと噛合する位置に達した時点で、モータの回転駆動が停止されて、荷台がシャシ上に収納された状態(荷台が水平姿勢をなす状態)に戻る。
【0022】
モータ、プーリ、スプロケットおよびチェーンは、シャシの間やガイドレールの間などに配置することができる。そのため、モータ、プーリ、スプロケットおよびチェーンをトラックに搭載しても、シャシと荷台との間に大きな間隔を必要とせず、メーカから市販されている改造等されていないノーマルのトラックから荷台の地上高を変更する必要がない。
【0023】
したがって、荷台がシャシの後端部と地面との間に傾斜して架設された状態で、地面に対する荷台の傾斜角度が約30°以下となる。たとえば、軽トラックの場合、荷台長が1900mm程度であり、荷台の床面の地上高が650mm程度であるので、荷台がシャシの後端部と地面との間に傾斜して架設された状態で、地面に対する荷台の傾斜角度が30°以下となる。よって、農耕機などの被運搬物を荷台に安全かつ容易に積み降ろしすることができる。
【0024】
また、この荷台スライド傾斜装置は、駆動源としてモータを採用した簡素かつ軽量な構成であり、軽トラックや最大積載量が1000kg以下の小型トラックに荷台スライド傾斜装置が搭載されても、最大積載量が減ることがなく、軽トラックや小型トラックの実用性が損なわれることがない。
【0025】
さらに、1対のラックギヤおよびこれに噛合するピニオンギヤ(ラック&ピニオン機構)が車幅方向に間隔を空けて設けられているので、荷台の左右一方が先行して移動することを防止でき、荷台を左右バランスよくスライドさせることができる。また、荷台の昇降(スライド)の繰り返しに伴って、たとえチェーンが伸びたとしても、1対のラック&ピニオン機構間で位相(ピニオンギヤの位置)のずれを生じるおそれがないので、荷台のスムーズなスライドを確保することができる。
【0026】
また、複数のプーリと複数のスプロケットとが設けられ、それらの間に複数のチェーンが巻回されているので、1本のチェーンが切れたとしても、荷台がシャシ上から滑落するおそれがない。
【0027】
荷台スライド傾斜装置は、モータおよびプーリ取付軸の位置をチェーンが延びる前後方向に調節するための位置調節機構をさらに備えることが好ましい。
【0028】
位置調節機構により、モータおよびプーリ取付軸の前後方向の位置を調節することができ、その位置調節により、チェーンのテンションを調節することができる。
【0029】
また、第2の発明に係る荷台スライド傾斜装置は、トラックの荷台を前記トラックのシャシに対して後方にスライドさせ、前記荷台の後端部を接地させて、前記荷台を傾斜した状態にするための荷台スライド傾斜装置であって、前記シャシに保持されるモータと、プーリと、前記モータからの駆動力によって回転され、前記プーリが取り付けられるプーリ取付軸と、車幅方向に延び、前記シャシの後端部に回転可能に設けられる回転軸と、前記回転軸に取り付けられたスプロケットと、前記プーリと前記スプロケットとの間に巻回されたチェーンと、前記荷台の下面に車幅方向に互いに間隔を空けて設けられ、それぞれ前後方向に前記荷台の全長にわたって延びる1対のラックギヤと、前記回転軸に取り付けられ、各ラックギヤと噛合する1対のピニオンギヤと、前記シャシに車幅方向に互いに間隔を空けて設けられ、それぞれ前後方向に延び、上下方向に互いに対向する上壁部および下壁部を有する1対の第1ガイドレールと、各第1ガイドレールに対応して設けられ、前記荷台の前端部に回転可能に支持されて、前記上壁部および前記下壁部の間に転動可能に収容されるガイドローラと、前記モータおよび前記プーリ取付軸の位置を前記チェーンが延びる前後方向に調節するための位置調節機構とを備えている。
【0030】
この荷台スライド傾斜装置が搭載されたトラックでは、荷台の下面に、1対のラックギヤが車幅方向に互いに間隔を空けて固定されている。各ラックギヤは、前後方向に荷台の全長にわたって延びている。各ラックギヤには、ピニオンギヤが噛合している。ピニオンギヤは、シャシの後端部に回動自在に設けられる回転軸により連結されている。回転軸には、スプロケットが取り付けられている。また、モータの駆動力によって回転されるプーリ取付軸には、プーリが取り付けられている。そして、スプロケットとプーリとの間には、チェーンが巻回されている。
【0031】
シャシには、1対の第1ガイドレールが車幅方向に間隔を空けて設けられている。各第1ガイドレールは、前後方向に延び、上下方向に互いに対向する上壁部および下壁部を有している。そして、各第1ガイドレールの上壁部および下壁部の間には、荷台の前端部に回転可能に支持されたガイドローラが転動可能に収容されている。
【0032】
モータが所定方向に回転駆動されると、その駆動力がプーリ、チェーンおよびスプロケットを介して回転軸に伝達され、回転軸が回転する。回転軸の回転は、ピニオンギヤを介してラックギヤに伝達される。これにより、荷台は、シャシ上に収納された状態から、ラックギヤとともに後方へスライド(移動)する。
【0033】
荷台のスライドに伴って、ガイドローラが第1ガイドレール内を後方へ転動する。ガイドローラに対してその上下から第1ガイドレールの上壁部および下壁部が対向しているので、ガイドローラの位置により荷台の前端部の位置が決まる。そのため、荷台の後方へのスライドに伴って、荷台の姿勢を良好に変化させることができる。ラックギヤの前端部がピニオンギヤと噛合する位置に達した時点で、モータの回転駆動が停止されて、荷台は、シャシの後端部と地面との間に傾斜して架設された状態(荷台の前端部がシャシの後端部上に残り、荷台の後端部が接地した状態)となる。
【0034】
また、荷台から被運搬物が積み降ろしされた後、モータが所定方向と逆方向に回転駆動されると、その駆動力がプーリ、チェーン、スプロケット、回転軸およびピニオンギヤを介してラックギヤに伝達され、荷台がラックギヤとともに前方へスライドする。
【0035】
荷台のスライドに伴って、ガイドローラが第1ガイドレール内を前方へ転動する。ガイドローラに対してその上下から第1ガイドレールの上壁部および下壁部が対向しているので、荷台の前方への移動時にも、ガイドローラの位置により荷台の前端部の位置が決まる。そのため、荷台の前方へのスライドに伴って、荷台の姿勢を良好に変化させることができる。ラックギヤの後端部がピニオンギヤと噛合する位置に達した時点で、モータの回転駆動が停止されて、荷台がシャシ上に収納された状態(荷台が水平姿勢をなす状態)に戻る。
【0036】
モータ、プーリ、スプロケットおよびチェーンは、シャシの間やガイドレールの間などに配置することができる。そのため、モータ、プーリ、スプロケットおよびチェーンをトラックに搭載しても、シャシと荷台との間に大きな間隔を必要とせず、メーカから市販されている改造等されていないノーマルのトラックから荷台の地上高を変更する必要がない。
【0037】
したがって、荷台がシャシの後端部と地面との間に傾斜して架設された状態で、地面に対する荷台の傾斜角度が約30°以下となる。たとえば、軽トラックの場合、荷台長が1900mm程度であり、荷台の床面の地上高が650mm程度であるので、荷台がシャシの後端部と地面との間に傾斜して架設された状態で、地面に対する荷台の傾斜角度が30°以下となる。よって、農耕機などの被運搬物を荷台に安全かつ容易に積み降ろしすることができる。
【0038】
また、この荷台スライド傾斜装置は、駆動源としてモータを採用した簡素かつ軽量な構成であり、軽トラックや最大積載量が1000kg以下の小型トラックに荷台スライド傾斜装置が搭載されても、最大積載量が減ることがなく、軽トラックや小型トラックの実用性が損なわれることがない。
【0039】
さらに、1対のラックギヤおよびこれに噛合するピニオンギヤ(ラック&ピニオン機構)が車幅方向に間隔を空けて設けられているので、荷台の左右一方が先行して移動することを防止でき、荷台を左右バランスよくスライドさせることができる。また、荷台の昇降(スライド)の繰り返しに伴って、たとえチェーンが伸びたとしても、1対のラック&ピニオン機構間で位相(ピニオンギヤの位置)のずれを生じるおそれがないので、荷台のスムーズなスライドを確保することができる。
【0040】
また、モータおよびプーリ取付軸の位置をチェーンが延びる前後方向に調節するための位置調節機構が備えられている。位置調節機構により、モータおよびプーリ取付軸の前後方向の位置を調節することができ、その位置調節により、チェーンのテンションを調節することができる。
【0041】
荷台スライド傾斜装置は、シャシに固定され、前記回転軸の両端部を回転可能に保持する台座をさらに備えることが好ましい。
【0042】
台座が設けられていることにより、回転軸は、2つの台座と2つのピニオンギヤとの4点で支持された状態となる。そのため、回転軸に加わる重量によって回転軸が折れることを防止できる。
【0043】
モータは、電動モータであってもよいし、油圧モータであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る荷台スライド傾斜装置が搭載されたトラックの側面図であり、荷台がシャシ上に収納され、アウトリガーが支持姿勢をなす状態を示す。
【図2】図2は、図1に示されるトラックと同じトラックの側面図であり、荷台がシャシ上から降ろされ、アウトリガーが支持姿勢をなす状態を示す。
【図3】図3は、図1,2に示されるトラックの背面図である。
【図4】図4は、荷台の前端部を示す斜視図である。
【図5】図5は、荷台スライド傾斜装置の平面図であり、シャシに保持されている各部材を示す。
【図6】図6は、図5に示されるガイドレールの側面図である。
【図7】図7は、図5に示される第2ガイドレールの一部および第2ガイドレールに嵌合される嵌合部材の斜視図である。
【図8】図8は、荷台スライド傾斜装置の平面図であり、その機械的構成とともに電気的構成を図解的に示す。
【図9】図9は、荷台スライド傾斜装置の駆動機構の斜視図である。
【図10A】図10Aは、手動固定機構の図解図であり、固定ピンが固定穴から離脱された状態を示す。
【図10B】図10Bは、手動固定機構の図解図であり、固定ピンが固定穴に挿入された状態を示す。
【図10C】図10Cは、手動固定機構の図解図であり、固定ピンが固定穴に対して固定された状態を示す。
【図11】図11は、操作パネルの正面図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施形態に係る荷台スライド傾斜装置の平面図であり、シャシに保持されている各部材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0046】
図1は、本発明の一実施形態に係る荷台スライド傾斜装置が搭載されたトラックの側面図であり、荷台がシャシ上に収納され、アウトリガーが支持姿勢をなす状態を示す。図2は、図1に示されるトラックと同じトラックの側面図であり、荷台がシャシ上から降ろされ、アウトリガーが支持姿勢をなす状態を示す。図3は、図1,2に示されるトラックの背面図である。図4は、荷台の前端部を示す斜視図である。
【0047】
トラック1は、平ボディの軽トラックであり、図1,2に示されるように、シャシ(フレーム)2と、シャシ2の前端部に設けられたキャビン3と、キャビン3の後方において、シャシ2上に設けられた荷台4と、シャシ2と荷台4との間に設けられた荷台スライド傾斜装置5とを備えている。すなわち、トラック1は、一般に市販されている軽トラックを改造して、シャシ2と荷台4との間に荷台スライド傾斜装置5を搭載したものである。
【0048】
荷台4の車幅方向の両側縁部には、側あおり6が設けられている。各側あおり6は、前後方向に荷台4の全長にわたって延び、その下端縁が複数のヒンジ7を介して荷台4の底板に連結されている。これにより、各側あおり6は、荷台4の車幅方向の縁部上で荷台4の底板に対して垂直に起立した状態と、その状態からヒンジ7を支点に外側に展開(回動)して、荷台4の外側下方に垂れ下がった状態とに変位可能となっている。また、各側あおり6の前端部には、掛金8が設けられており、側あおり6を起立させた状態で掛金8を荷台4の前端部に係止させることにより、その側あおり6が起立した状態を保持することができるようになっている。
【0049】
図3に示されるように、荷台4の後縁部には、後あおり9が設けられている。後あおり9は、車幅方向に荷台4の全幅にわたって延び、その下端縁が複数のヒンジ10を介して荷台4の底板に連結されている。これにより、後あおり9は、荷台4の後縁部上で荷台4の底板に対して垂直に起立した状態と、その状態からヒンジ7を支点に外側に展開(回動)して、荷台4の外側下方に垂れ下がった状態とに変位可能となっている。そして、後あおり9は、側あおり6よりも高く形成されており、後述するように荷台4をシャシ2の後方に降ろして傾斜させた状態で、ヒンジ7を支点に外側に展開(傾倒)させると、荷台4と地面との間に架設されて、その上面が荷台4の底板の上面とほぼ面一をなして延びるようなあおり高さを有している。また、後あおり9の車幅方向の両側の上端部には、掛金11が設けられており、後あおり9を起立させた状態で両方の掛金11をそれぞれ側あおり6の後上端部に係止させることにより、その後あおりが起立した状態を保持することができるようになっている。
【0050】
荷台4の下面の後端部には、2つの接地ローラ支持部材12が車幅方向に間隔を空けて取り付けられている。各接地ローラ支持部材12は、荷台4の底板に対して垂直に延び、その先端部(下端部)に接地ローラ13を回動自在に保持している。
【0051】
各接地ローラ支持部材12に対して車幅方向の内側には、アウトリガー14が設けられている。アウトリガー14は、シャシ2の後端部に保持されており、丸棒状(細長い円柱状)の脚部15と、脚部15の先端に形成された四角形板状の接地部16とを一体的に備えている。そして、アウトリガー14は、図3に示されるように、接地部16がシャシ2の後端部に配置されて、脚部15が接地部16から前方に延びる収容姿勢と、図1,2に示されるように、脚部15がシャシ2の後端部から下方に延び、その下端に接地部16が配置される支持姿勢とに変位可能に設けられている。収容姿勢のアウトリガー14を手前に引き出し、脚部15の接地部16側と反対側の端部を支点として、トラック1の左側から見て反時計回りにアウトリガー14を回動させることにより、アウトリガー14の姿勢を支持姿勢に変更することができる。また、その逆の動作により、アウトリガー14の姿勢を支持姿勢から収容姿勢に変更することができる。
【0052】
なお、アウトリガー14の長さは、図1に示されるように、荷台4がシャシ2上に収納され、アウトリガー14が支持姿勢をなす状態で、接地部16と地面との間に僅かな隙間を生じるような長さにされている。
【0053】
図4に示されるように、荷台4の前縁部には、前あおり17が設けられている。前あおり17は、車幅方向に荷台4の全幅にわたって延び、その下端縁が荷台4の底板の前端縁に固定されている。
【0054】
そして、前あおり17の左端部には、荷台4上に載せられた農耕機などの被運搬物がキャビン3に衝突することを防止するためのストッパ18が取り付けられている。ストッパ18は、金属からなり、略コ字状に屈曲し、両端部が前あおり17に固定されている。
【0055】
なお、図1に示されるように、荷台4がシャシ2上に収納された状態で、前あおり17の前端部とキャビン3との間Aに25mm以上の間隔が生じるように、荷台4が設計されている。これにより、荷台4がシャシ2上に収納されるときに、キャビン3と荷台4との間に操作者の手などが挟まれることを防止できる。
【0056】
図5は、荷台スライド傾斜装置の平面図であり、シャシに保持されている各部材を示す。
【0057】
トラック1では、荷台スライド傾斜装置5が搭載されていることにより、荷台4を前後方向にスライドさせて、シャシ2上に収納された状態(図1に示される状態)とシャシ2の後方に降ろして傾斜させた状態(図2に示される状態)とに変位させることができるようになっている。
【0058】
荷台スライド傾斜装置5は、荷台4のスライドを案内するための1対の第1ガイドレール21を備えている。1対の第1ガイドレール21は、シャシ2上に車幅方向に互いに間隔を空けて取り付けられており、それぞれ前後方向に延びている。
【0059】
図6は、ガイドレールの側面図である。
【0060】
第1ガイドレール21は、図6に示されるように、車幅方向の内側が開放された断面コ字状をなしている。より具体的には、第1ガイドレール21は、上下方向に互いに間隔を空けて対向する上壁部22および下壁部23と、上壁部22および下壁部23の車幅方向の外側の各端縁を連結する連結部24とを一体的に備えている。
【0061】
そして、各第1ガイドレール21は、後上がりに傾斜する傾斜案内部25と、傾斜案内部25の後端からシャシ2上に収納された荷台4の底板と平行な方向(以下「水平方向」という。)に延びる前後案内部26とを一体的に備えている。
【0062】
前後案内部26の後端部において、下壁部23は、階段状に2段低くなっている。これにより、荷台4がシャシ2の後方に降ろされて傾斜した状態(荷台4がシャシ2の後端部と地面との間に傾斜して架設された状態)で、地面に対する荷台4の傾斜角度を小さくすることができる。また,荷台4がシャシ2の後方に降ろされるときに、後述するラックギヤ49がピニオンギヤ50から浮き上がることを防止でき、ラックギヤ49とピニオンギヤ50との噛合状態を確保することができる。
【0063】
各第1ガイドレール21の上壁部22と下壁部23との間には、ガイドローラ27が転動可能に収容されている。荷台4の前端部には、ガイドローラ支持部材28が固定されている。各ガイドローラ支持部材28の先端部(下端部)は、第1ガイドレール21に対して車幅方向の内側から対向しており、その先端部(下端部)には、第1ガイドレール21の内側に向けて延びるローラ軸29が形成されている。ガイドローラ27は、ローラ軸29に回転自在に支持されている。
【0064】
また、図5に示されるように、荷台スライド傾斜装置5は、1対の第2ガイドレール30を備えている。各第2ガイドレール30は、第1ガイドレール21に対して車幅方向の外側に配置され、第1ガイドレール21に対して間隔を空けて平行をなして前後方向に延びている。
【0065】
図7は、第2ガイドレールの一部および第2ガイドレールに嵌合される嵌合部材の斜視図である。
【0066】
第2ガイドレール30は、図7に示されるように、上方が開放された断面コ字状をなしている。より具体的には、第2ガイドレール30は、車幅方向に互いに間隔を空けて対向する内側壁部31および外側壁部32と、内側壁部31および外側壁部32の各下端縁を連結する連結部33とを一体的に備えている。
【0067】
そして、各第2ガイドレール30に対応して、荷台4の下面には、前後方向に延びる嵌合部材34が設けられている。嵌合部材34は、荷台4の前後方向の途中部と後端部との間に設けられ、上下方向に延びる鉛直部35と、鉛直部35の下端縁から車幅方向の内側に延びる延設部36とを一体的に有する断面L字状に形成されている。鉛直部35の車幅方向の厚さと延設部36の車幅方向の幅とを加えた長さは、第2ガイドレール30の内側壁部31と外側壁部32との間の間隔よりも小さく、嵌合部材34は、内側壁部31と外側壁部32との間に上方から嵌合可能とされている。
【0068】
図8は、図1に示される荷台スライド傾斜装置の平面図であり、その機械的構成とともに電気的構成を図解的に示す。図9は、図8に示される荷台スライド傾斜装置の駆動機構の斜視図である。
【0069】
荷台スライド傾斜装置5は、図8,9に示されるように、シャシ2に保持された電動モータ41と、電動モータ41の出力軸41Aに取り付けられた2つのプーリ42と、車幅方向に延び、シャシ2の後端部に回動自在に設けられた回転軸43と、回転軸43に取り付けられた2つのスプロケット44と、各スプロケット44と各プーリ42との間に巻回されたチェーン45とを備えている。スプロケット44、電動モータ41、プーリ42およびチェーン45は、1対の第1ガイドレール21の間に配置されている。
【0070】
プーリ42、スプロケット44およびチェーン45の上方には、保護カバー61が設けられており、プーリ42、スプロケット44およびチェーン45は、保護カバー61に覆い隠されている。
【0071】
モータ41は、モータ支持板62上に支持されている。モータ支持板62は、シャシ2に対して前後方向にその位置を調節可能に設けられている。具体的には、モータ支持板62とシャシ2との間には、たとえば、ねじ軸、このねじ軸に螺合したボルトおよびボルトとモータ支持板62との間に介在されたスプリングを有する位置調節機構63が設けられている。この位置調節機構63により、モータ支持板62の前後方向の位置を調節することができる。
【0072】
図8に示されるように、電動モータ41には、トランスなどを含む電源回路46が電気的に接続されている。電源回路46には、トラック1に搭載されている車載12Vバッテリ47が電気的に接続されている。電源回路46には、電動モータ41の正転、逆転および停止を切り替えるための手動スイッチ48が付随されている。電源回路46および手動スイッチ48は、たとえば、キャビン3と荷台4との間に設けられている鳥居(図示せず)に取り付けられている。
【0073】
さらに、荷台スライド傾斜装置5は、荷台4の下面に車幅方向に互いに間隔を空けて固定され、それぞれ前後方向に荷台4のほぼ全長にわたって延びる1対のラックギヤ49と、回転軸43に取り付けられ、各ラックギヤ49と噛合するピニオンギヤ50とを備えている。
【0074】
図8に示されるように、回転軸43の両端部は、ピニオンギヤ50から左右方向の外側に突出している。そして、その回転軸43におけるピニオンギヤ50から突出した部分は、シャシ2に固定された台座64に回転可能に保持されている。台座64は、回転軸43を挿通可能な挿通孔を単に有する金属部品であってもよいし、ベアリングを備えていてもよい。
【0075】
荷台4がシャシ2上から降ろされるときには、まず、アウトリガー14の姿勢が収容姿勢から支持姿勢に変更される。その後、手動スイッチ48が操作されて、電動モータ41が正転駆動される。電動モータ41の駆動力は、プーリ42、チェーン45およびスプロケット44を介して回転軸43に伝達される。これにより、回転軸43が回転し、この回転軸43の回転がピニオンギヤ50を介してラックギヤ49に伝達される。その結果、荷台4がラックギヤ49とともに後方へ移動する。
【0076】
荷台4の移動は、第1ガイドレール21に案内され、これにより荷台4の姿勢が変えられる。すなわち、荷台4の移動に伴って、第1ガイドレール21内をガイドローラ27が後方に向かって転動する。第1ガイドレール21の傾斜案内部25が後上がりに傾斜しているので、傾斜案内部25内をガイドローラ27が後方に向かって転動することにより、ピニオンギヤ50を支点として、荷台4の前端部が徐々に持ち上げられていく。そして、ガイドローラ27が第1ガイドレール21の前後案内部26に達すると、その後は、ガイドローラ27が前後案内部26内を後方に向かって転動し、これに伴って、荷台4が後斜め下方に向けてスライドする。
【0077】
また、荷台4がシャシ2上に収納された状態では、嵌合部材34(図7参照)が第2ガイドレール30の内側壁部31と外側壁部32との間に嵌合している。荷台4の前端部が持ち上げられることにより、嵌合部材34は、内側壁部31と外側壁部32との間から上方に抜け、第2ガイドレール30の後端部においてのみ、内側壁部31と外側壁部32との間に嵌合した状態となる。そして、荷台4が後斜め下方に向けてスライドすると、これに伴って、嵌合部材34は、第2ガイドレール30の後端部で内側壁部31と外側壁部32との間に嵌合した状態を保ちつつ、後斜め下方に向けて移動する。
【0078】
ガイドローラ27が第1ガイドレール21の後端部に達すると、その後端部に設けられたリミットスイッチ(図示せず)にガイドローラ27が当接し、電動モータ41が停止される。この時点で、ラックギヤ49の前端部がピニオンギヤ50と噛合する位置に達し、荷台4は、図2に示すように、最後方までスライドされて、その前端部がシャシ2の後端部上に残り、後端部の接地ローラ13が接地して、シャシ2の後端部と地面との間に水平方向に対して約30°以下の傾斜角度で傾斜した姿勢で架設された状態(荷台4がシャシ2上から降りた状態)となる。
【0079】
この状態で、掛金11を外して、後あおり9をヒンジ7を支点に外側に展開(傾倒)させると、後あおり9が荷台4と地面との間に架設されて、その上面が荷台4の底板の上面とほぼ面一をなして延びる。したがって、後あおり9を歩み板として利用することができ、農耕機などの被運搬物を、後あおり9上を移動させて、荷台4に安全かつ容易に積み降ろしすることができる。
【0080】
また、荷台4がシャシ2上から降りた状態では、シャシ2の後端部に荷台4の重量による大きな下向きの力が加わる。アウトリガー14が支持姿勢をなしているので、シャシ2の後端部に加わる力によりその後端部が沈むと、アウトリガー14の接地部16が地面に当接して、その力がアウトリガー14に受けられ、シャシ2の後端部のそれ以上の沈みが阻止される。これにより、トラック1(シャシ2)の姿勢を安定に保つことができ、トラック1の姿勢が不安定な状態で被運搬物が荷台4に積み降ろしされることを防止できる。その結果、被運搬物を荷台4に一層安全に積み降ろしすることができる。
【0081】
荷台4から被運搬物が積み降ろしされた後、手動スイッチ48が操作されて、電動モータ41が逆転駆動されると、電動モータ41の駆動力がプーリ42、チェーン45、スプロケット44、回転軸43およびピニオンギヤ50を介してラックギヤ49に伝達され、荷台4がラックギヤ49とともに前方へ移動する。
【0082】
荷台4の移動は、第1ガイドレール21に案内され、これにより荷台4の姿勢が変えられる。すなわち、荷台4の移動に伴って、第1ガイドレール21内をガイドローラ27が前方に向かって転動する。第1ガイドレール21の前後案内部26が水平方向に延びているので、前後案内部26内をガイドローラ27が前方に向かって転動することにより、荷台4が前斜め上方に向けてスライドする。また、荷台4の移動に伴って、嵌合部材34は、第2ガイドレール30の後端部で内側壁部31と外側壁部32との間に嵌合した状態を保ちつつ、前斜め上方に向けて移動する。ガイドローラ27が第1ガイドレール21の傾斜案内部25に達すると、傾斜案内部25が前下がりに傾斜しているので、傾斜案内部25内をガイドローラ27が前方に向かって転動することにより、ピニオンギヤ50を支点として、荷台4の前端部が徐々に下げられていく。これにより、内側壁部31と外側壁部32との間に、その後端部側から徐々に嵌合部材34が嵌合していく。
【0083】
そして、ガイドローラ27が第1ガイドレール21の前端部に達すると、その前端部に設けられたリミットスイッチ65(図8参照)にガイドローラ27が当接し、リミットスイッチ65から出力される信号の変化に応答して、電動モータ41が停止される。この時点で、ラックギヤ49の後端部がピニオンギヤ50と噛合する位置に達し、荷台4は、図1に示すように、最前方までスライドされて、シャシ2上に水平方向に延びる姿勢で収納された状態に戻る。
【0084】
その後、アウトリガー14は、支持姿勢から収容姿勢に戻される。これにより、アウトリガー14がトラック1の走行に支障を及ぼすことを防止できる。
【0085】
図10A,10B,10Cは、手動固定機構を図解的に示す平面図である。
【0086】
トラック1には、図10A〜10Cに示されるように、荷台4をシャシ2に対して固定する手動固定機構71が備えられている。手動固定機構71は、シャシ2に固定された取付具72と、取付具72によって車幅方向に移動可能に保持された固定ピン73と、固定ピン73を車幅方向の外側に向けて付勢するスプリング74と、固定ピン73の状態を検出するためのセンサ(たとえば、リミットスイッチ)75とを備えている。荷台4には、固定ピン73に対応して、固定穴76が形成されている。荷台4がシャシ2上に収納された後、スプリング74の付勢力に抗して、図10A,10Bに示されるように、固定ピン73が車幅方向の内側に移動される。そして、図10Bに示されるように、固定ピン73の先端部が固定穴76に嵌合されて、図10Cに示されるように、固定ピン73が回動されると、固定ピン73の位置が車幅方向に固定され、荷台4がシャシ2に対して固定される。この状態で、固定ピン73によってセンサ75がオフにされる。
【0087】
図11は、操作パネルの正面図である。
【0088】
キャビン3内には、操作パネル81が設けられている。操作パネル81には、荷台スライド傾斜装置5の電源をオン/オフする電源スイッチ82と、電源がオンされていることを報知するパイロットランプ83と、シャシ2上への荷台4の収納が完了していないことを報知する警告ランプ84とが配置されている。
【0089】
電源スイッチ82は、電源回路46と電気的に接続されている。
【0090】
パイロットランプ83は、緑色のランプからなり、電源がオンされている状態で点灯する。
【0091】
警告ランプ84は、赤色のランプからなり、センサ75(図10A〜10C参照)がオン状態で点灯する。固定ピン73によってセンサ75がオフされると、警告ランプ84が消灯する。これにより、トラック1の運転者は、キャビン3内から荷台4の状態を確認することができる。その結果、荷台4がシャシ2に固定されていない状態でのトラック1の走行を防止することができる。
【0092】
荷台スライド傾斜装置5では、スプロケット44、電動モータ41、プーリ42およびチェーン45は、1対の第1ガイドレール21の間に配置されているので、シャシ2と荷台4との間に大きな間隔を必要とせず、メーカから市販されている改造等されていないノーマルの軽トラックから荷台の地上高を変更する必要がない。
【0093】
したがって、荷台4がシャシ2の後端部と地面との間に傾斜して架設された状態で、地面に対する荷台の傾斜角度が約30°以下となる。よって、農耕機などの被運搬物を荷台4に安全かつ容易に積み降ろしすることができる。
【0094】
また、荷台スライド傾斜装置5は、駆動源として電動モータ41を採用した簡素かつ軽量な構成であり、軽トラックに荷台スライド傾斜装置5が搭載されても、最大積載量が減ることがなく、軽トラックの実用性が損なわれることがない。
【0095】
さらに、1対のラックギヤ49およびこれに噛合するピニオンギヤ50(ラック&ピニオン機構)が車幅方向に間隔を空けて設けられているので、荷台4の左右一方が先行して移動することを防止でき、荷台4を左右バランスよくスライドさせることができる。また、荷台4の昇降(スライド)の繰り返しに伴って、たとえチェーン45が伸びたとしても、1対のラック&ピニオン機構間で位相(ピニオンギヤ50の位置)のずれを生じるおそれがないので、荷台4のスムーズなスライドを確保することができる。
【0096】
また、複数のプーリ42と複数のスプロケット44とが設けられ、それらの間に複数のチェーン45が巻回されているので、1本のチェーン45が切れたとしても、荷台4がシャシ2上から滑落するおそれがない。
【0097】
さらに、電動モータ41の位置をチェーンが延びる前後方向に調節するための位置調節機構63が備えられている。位置調節機構63により、電動モータ41およびプーリ42の前後方向の位置を調節することができ、その位置調節により、チェーン45のテンションを調節することができる。
【0098】
また、台座64により、回転軸43の両端部が回転可能に保持されている。これにより、回転軸43は、2つの台座64と2つのピニオンギヤとの4点で支持された状態となる。そのため、回転軸43に加わる重量によって回転軸が折れることを防止できる。
【0099】
そのうえで、この荷台スライド傾斜装置5が搭載されたトラック1では、シャシ2に、1対の第2ガイドレール30が車幅方向に間隔を空けて設けられている。各第2ガイドレール30は、前後方向に延び、車幅方向に互いに対向する内側壁部31および外側壁部32を有している。一方、荷台4には、各第2ガイドレール30に対応して、前後方向に延びる嵌合部材34が設けられている。嵌合部材34は、荷台4のスライドに伴って、第2ガイドレール30の内側壁部31および外側壁部32の間に嵌合して移動する。これにより、荷台4の姿勢が第2ガイドレール30に対して平行な姿勢(荷台4の左右両端縁が第2ガイドレール30と平行をなす姿勢)に保持される。そのため、たとえラックギヤ49の歯が摩耗し、ラックギヤ49の歯のピッチが変化しても、荷台4の左右一方が先行して移動することを防止でき、荷台4を左右バランスよくスムーズにスライドさせることができる。
【0100】
また、プーリ42、スプロケット44およびチェーン45は、保護カバー61によりその上方から覆い隠されているので、荷台4がシャシ2上から降ろされた状態で、プーリ42、スプロケット44およびチェーン45が使用者に触られることを防止できる。
【0101】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0102】
たとえば、荷台スライド傾斜装置5の駆動源として、電動モータ41を採用しているが、油圧モータが採用されてもよい。
【0103】
また、図5に示される構成では、電動モータ41の出力軸41Aが車幅方向に延びるように、電動モータ41が配置されているが、図12に示されるように、電動モータ41の出力軸41Aが前後方向に延びるように、電動モータ41が配置されてもよい。この場合、電動モータ41の出力軸41Aが車幅方向に延びるプーリ取付軸92を有する減速機91に接続されて、そのプーリ取付軸92に2つのプーリ42が取り付けられる。電動モータ41の出力軸41Aの回転は、減速機91により、減速されて、プーリ取付軸92の回転に変換される。減速により、プーリ42(プーリ取付軸92)を回転させるトルクが増す。また、減速機91が採用されることにより、荷台4を昇降させるときの作動音を小さくすることができる。
【0104】
トラック1の被運搬物として、農耕機を例示したが、農耕機以外に、セニアカー、二輪車などの運搬に、トラック1を使用することができる。
【0105】
また、平ボディの軽トラックに荷台スライド傾斜装置5を搭載した例を取り上げたが、荷台スライド傾斜装置5は、平ボディの軽トラックに限らず、荷台長が3300mm以下で最大積載量が1000kg以下の小型トラックなどに搭載することもできる。
【0106】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 トラック
2 シャシ
4 荷台
5 荷台スライド傾斜装置
21 第1ガイドレール
27 ガイドローラ
30 第2ガイドレール
34 嵌合部材
41 電動モータ
41A モータ出力軸
42 プーリ
43 回転軸
44 スプロケット
45 チェーン
49 ラックギヤ
50 ピニオンギヤ
63 位置調節機構
64 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックの荷台を前記トラックのシャシに対して後方にスライドさせ、前記荷台の後端部を接地させて、前記荷台を傾斜した状態にするための荷台スライド傾斜装置であって、
前記シャシに保持されるモータと、
複数のプーリと、
前記モータからの駆動力によって回転され、前記複数のプーリが取り付けられるプーリ取付軸と、
車幅方向に延び、前記シャシの後端部に回転可能に設けられる回転軸と、
前記回転軸に取り付けられた複数のスプロケットと、
前記各プーリと前記各スプロケットとの間に巻回されたチェーンと、
前記荷台の下面に車幅方向に互いに間隔を空けて設けられ、それぞれ前後方向に前記荷台の全長にわたって延びる1対のラックギヤと、
前記回転軸に取り付けられ、各ラックギヤと噛合する1対のピニオンギヤと、
前記シャシに車幅方向に互いに間隔を空けて設けられ、それぞれ前後方向に延び、上下方向に互いに対向する上壁部および下壁部を有する1対の第1ガイドレールと、
各第1ガイドレールに対応して設けられ、前記荷台の前端部に回転可能に支持されて、前記上壁部および前記下壁部の間に転動可能に収容されるガイドローラとを含む、荷台スライド傾斜装置。
【請求項2】
前記モータおよび前記プーリ取付軸の位置を前記チェーンが延びる前後方向に調節するための位置調節機構をさらに含む、請求項1に記載の荷台スライド傾斜装置。
【請求項3】
トラックの荷台を前記トラックのシャシに対して後方にスライドさせ、前記荷台の後端部を接地させて、前記荷台を傾斜した状態にするための荷台スライド傾斜装置であって、
前記シャシに保持されるモータと、
プーリと、
前記モータからの駆動力によって回転され、前記プーリが取り付けられるプーリ取付軸と、
車幅方向に延び、前記シャシの後端部に回転可能に設けられる回転軸と、
前記回転軸に取り付けられたスプロケットと、
前記プーリと前記スプロケットとの間に巻回されたチェーンと、
前記荷台の下面に車幅方向に互いに間隔を空けて設けられ、それぞれ前後方向に前記荷台の全長にわたって延びる1対のラックギヤと、
前記回転軸に取り付けられ、各ラックギヤと噛合する1対のピニオンギヤと、
前記シャシに車幅方向に互いに間隔を空けて設けられ、それぞれ前後方向に延び、上下方向に互いに対向する上壁部および下壁部を有する1対の第1ガイドレールと、
各第1ガイドレールに対応して設けられ、前記荷台の前端部に回転可能に支持されて、前記上壁部および前記下壁部の間に転動可能に収容されるガイドローラと、
前記モータおよび前記プーリ取付軸の位置を前記チェーンが延びる前後方向に調節するための位置調節機構とを含む、荷台スライド傾斜装置。
【請求項4】
前記シャシに固定され、前記回転軸の両端部を回転可能に保持する台座をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の荷台スライド傾斜装置。
【請求項5】
シャシと、
前記シャシ上に設けられる荷台と、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の荷台スライド傾斜装置とを備えている、トラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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