説明

トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類の製造方法

【課題】トランス:シスの生成比を向上させて高収率で安価に工業的に製造しうるトランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類の製造方法を提供すること。
【解決手段】 以下の工程による式4のトランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類又はその塩の製造方法。


[式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はアミノ基の保護基を表す。]
[工程1] 式1の4−アミノシクロヘキサノン類にジメチルスルホニウムメチリドを反応させて式2の化合物を製造する工程。
[工程2] 式2の化合物を還元することで式3の化合物を製造する工程。
[工程3] 式3の化合物又はその塩においてトランス体を分離して、式4の化合物を取得する工程。
[工程A] 必要に応じて工程1〜3のいずれかの工程に続いて式2、式3又は式4の化合物においてアミノ基の保護基を脱保護する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類は、種々の医薬品等の中間体として有用である(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4等)。その製造方法に関しては、特許文献1には、4−ジベンジルアミノシクロヘキサノンにメチルマグネシウムブロミドを反応させることで、4−ジベンジルアミノ−1−メチルシクロヘキサノールをトランス:シス=2:3の混合物として得て、トランス体を酸化アルミニウムカラムで分離し、続いて水素添加反応を施すことで製造したことが記載されている。

【0003】
【特許文献1】特表平10-505078
【特許文献2】WO 99/38867
【特許文献3】WO 2001/030745
【特許文献4】WO 2005/009966
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、トランス:シスの生成比を向上させて高収率で安価に工業的に製造しうるトランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明者等は鋭意研究の結果、4−アミノシクロヘキサノン類にジメチルスルホニウムメチリドを反応させ、還元することで、4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類のトランス:シスの比が大幅に向上することを見出して、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の通りである。
[1] 以下の工程による式4のトランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類又はその塩の製造方法。

[式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はアミノ基の保護基を表す。]
[工程1] 式1の4−アミノシクロヘキサノン類にジメチルスルホニウムメチリドを反応させて式2の化合物を製造する工程。
[工程2] 式2の化合物を還元することで式3の化合物を製造する工程。
[工程3] 式3の化合物又はその塩においてトランス体を分離して、式4の化合物を取得する工程。
[工程A] 必要に応じて工程1〜3のいずれかの工程に続いて式2、式3又は式4の化合物においてアミノ基の保護基を脱保護する工程。
【0007】
[2] 工程Aが必要に応じて工程3に続いて式4の化合物においてアミノ基の保護基を脱保護する工程である[1]記載の製造方法。
[3] Rが水素原子又はベンジルであり、Rがベンジルである[1]又は[2]記載の製造方法。
[4] 工程Aが工程2に続いて式3の化合物においてアミノ基の保護基のすべてを脱保護する工程であり、工程3が4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール塩酸塩においてトランス体を分離してトランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール塩酸塩を取得する工程である[1]記載の製造方法。
[5] 式:

[式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はアミノ基の保護基を表す。]
で表される化合物又はその塩。
[6] Rが水素原子又はベンジルであり、Rがベンジルである[5]記載の化合物又はその塩。
【0008】
及びRにおけるアミノ基の保護基としては、通常有機化学の分野で使用されるアミノ基の保護基が挙げられる。具体的には、Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis” 3rd.ed., John Wiley & Sons, Inc., 1999に記載の保護基が挙げられ、例えば、メチルカーバメート類、エチルカーバメート類、置換エチルカーバメート類(t−ブチルカーバメート、ベンジルカーバメート等)、ウレア型誘導体類、アミド類(ホルミル、アセチル等)、環状イミド類(フタロイル等)、アルキル類(ベンジル等)、イミン誘導体類、エナミン誘導体類、スルフェニル類、スルホニル類等が挙げられる。なお、4−アミノシクロヘキサノン類(1)においてR及びRは共に水素原子であっても良いが、少なくとも一方はアミノ基の保護基であることが好ましい。4−アミノシクロヘキサノン類(1)が自己縮合を起こしやすいからである。当該保護基の保護及び脱保護は、通常有機化学の分野で知られている条件で行うことができる。
特に好ましいアミノ基の保護基としては、ベンジルが挙げられる。例えば、Rが水素原子又はベンジルであり、Rがベンジルである4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類は、シス/トランス混合物から当該トランス体のみを収率良く優先して結晶化させることができる。
【0009】
4−アミノシクロヘキサノン類(1)とジメチルスルホニウムメチリドとの反応は、例えば、J. Am. Chem. Soc., 87, 1353 (1965)等を参考にして実施することができる。具体的には、有機溶媒中、トリメチルスルホニウムハライドを塩基で処理して予めジメチルスルホニウムメチリドを生成させ、続いて4−アミノシクロヘキサノン類(1)と反応させるか、あるいは、有機溶媒中、4−アミノシクロヘキサノン類(1)とトリメチルスルホニウムハライドの混合物に塩基を加えて反応系中でジメチルスルホニウムメチリドを生成させながら反応させる。トリメチルスルホニウムハライドのハライドとしては、ヨージド、ブロミド、クロライド等が使用できる。塩基としては、ジメチルスルホニウムメチリドを生成させうるものはいかなるものも使用できるが、例えば、アルコキシアルカリ(t−ブトキシナトリウム、t−ブトキシカリウム等)、水素化アルカリ(水素化ナトリウム等)、アルカリアミド(カリウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド等)、アルキルアルカリ(n−ブチルリチウム等)、水酸化アルカリ(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム等)、炭酸アルカリ(炭酸セシウム等)等が挙げられる。
有機溶媒としては、例えばエーテル系溶媒(ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等)、スルホキシド系溶媒(ジメチルスルホキシド等)、アミド系溶媒(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等)、炭化水素系溶媒(トルエン、ベンゼン等)、エステル系溶媒(酢酸イソプロピル等)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル等)等またはこれらの混合溶媒が挙げられる。反応温度としては、塩基の種類によって変わるが、例えば−78℃〜有機溶媒の沸点が挙げられ、室温であっても良い。
この反応によって、トランス:シスの生成比が向上したシス/トランス混合物である化合物(2)が得られる。
4−アミノシクロヘキサノン類(1)は、それ自体公知であるか、あるいは市販のトランス−4−アミノシクロヘキサノールのアミノ基を必要に応じて保護し、続いて常法に従って水酸基をカルボニルに酸化することで製造することができる。
【0010】
化合物(2)の還元は、オキシランを開環できる還元剤を用いて実施できる。還元剤としては、水素化アルミニウムリチウム(J. Am. Chem. Soc., 87, 1353 (1965))、水素化ホウ素ナトリウム、ボランTHF錯体、ボラン・トリフルオロボレート等の水素化物等が挙げられる。
有機溶媒は還元剤ごとに異なるが、例えば、水素化アルミニウムリチウム、ボランTHF錯体、ボラン・トリフルオロボレート等の場合はエーテル系溶媒(ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキエタン、THF、1,4−ジオキサン等)等が用いられ、水素化ホウ素ナトリウムの場合はアルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)等が用いられる。反応温度は還元剤ごとに異なるが、通常は−78℃〜有機溶媒の沸点までが挙げられる。
【0011】
4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類(3)におけるトランス体の分離は、通常、有機化学で使用される分離精製手段により実施することができ、例えば、結晶化、クロマトグラフィー等により、精製することができる。なお、酸との塩にした後、結晶化して分離することもできる。
4−ジベンジルアミノ−1−メチルシクロヘキサノールのシス/トランス混合物、4−ベンジルアミノ−1−メチルシクロヘキサノールのシス/トランス混合物又は4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール塩酸塩のシス/トランス混合物から、対応するトランス体のみを結晶化させるには、一定の温度で結晶化溶媒に溶解させた後、温度をゆっくりと下げながら、必要に応じてトランス体の種晶を添加して撹拌することで実施することができる。結晶化溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶媒(ヘキサン、ヘプタン等)、芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエン、アニソール等)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキエタン、THF、1,4−ジオキサン等)、ハロゲン系溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等)、スルホキシド系溶媒(ジメチルスルホキシド等)、アミド系溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、エステル系溶媒(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アミン系溶媒(ピリジン等)等もしくはこれらの混合溶媒、または水とこれらの溶媒との混合溶媒が挙げられる。具体的には、トルエン/ヘプタン、トルエン/ヘキサン、アニソール、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル/ヘプタン、t−ブチルメチルエーテル/ヘキサン、ジメトキシエタン/ヘプタン、ジメトキシエタン/水、イソプロパノール/酢酸イソプロピル、ブタノール/ヘプタン、ブタノール/水、ジメチルホルムアミド/水、ジメチルアセトアミド/水、N−メチルピロリドン/水、酢酸イソプロピル、酢酸エチル/ヘプタン、酢酸イソブチル/ヘプタン、アセトニトリル、アセトン/水、メチルエチルケトン/ヘプタン、メチルイソブチルケトン/ヘプタン、ピリジン/水等が挙げられる。より好ましくは、脂肪族炭化水素系溶媒と芳香族炭化水素系溶媒の混合溶媒、エーテル系溶媒と脂肪族炭化水素系溶媒の混合溶媒、アルコール系溶媒と脂肪族炭化水素系溶媒の混合溶媒等が挙げられ、例えばトルエン/ヘプタン、t−ブチルメチルエーテル/ヘプタン、イソプロパノール/酢酸イソプロピル等が挙げられる。
【0012】
トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類(4)の塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、及びp−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。塩は、常法に従って対応する酸と処理することで製造することができる。
【実施例】
【0013】
以下に、実施例、参考例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノールの製造

[工程1]
窒素気流下、4−ジベンジルアミノシクロヘキサノン(a)(特表平10-505078) 10.0g、トリメチルスルホニウムヨージド 14.6g及びジメチルスルホキシド 30mlの混合物に、t−ブトキシナトリウム 6.6gを少量ずつ加え、室温で3時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸イソプロピルで抽出した。抽出液を水と飽和食塩水の順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮して、6−ジベンジルアミノ−1−オキサスピロ[2,5]オクタン(b)10.5gをトランス:シス=61:39(1H NMRの積分値による分析)の混合物として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 3.67 (s, 1.55H, cis) and 3.64 (s, 2.45H, trans)
[工程2]
化合物(b)10.5gをイソプロパノール 50mlに溶かし、水素化ホウ素ナトリウム 3.22gを加え、45〜50℃で終夜撹拌した。冷却後、反応液に塩化アンモニウム水溶液を加え、トルエンで抽出した。抽出液を水と飽和食塩水の順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮後、残渣にt−ブチルメチルエーテルを加え減圧濃縮した。残渣にt−ブチルメチルエーテル 30mlとn−ヘプタン 90mlを加えて70℃で溶かした後、室温まで徐々に冷却し、さらに15℃以下に冷却した。析出晶をろ取し、t−ブチルメチルエーテルとn−ヘプタンの混液で洗浄後、乾燥して、トランス−4−ジベンジルアミノ−1−メチルシクロヘキサノール(c)4.6gを得た。
[工程3]
化合物(c)171.5gをメタノール 4.4Lに溶かし、52.9%の水分を含む10%パラジウム炭素 60gを加え、水素雰囲気下、室温にて撹拌した。触媒をろ別後、減圧濃縮し、トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール(d)71.6gを結晶として得た。
【0014】
実施例2
トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール塩酸塩の製造
トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール10.0gをエタノール30mlに溶かし、4N塩化水素酢酸エチル溶液19.5mlを少量ずつ加えた後、析出固体をろ取し、トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール塩酸塩9.3gを得た。
融点:217.4℃(Dec.)
【0015】
実施例3
トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール塩酸塩の製造

[工程1]
実施例1[工程1]で得られた6−ジベンジルアミノ−1−オキサスピロ[2,5]オクタン(b)のトランス:シス混合物 30gをイソプロパノール 150mlに溶かし、水素化ホウ素ナトリウム 9.67gを加え、45〜50℃で終夜撹拌した。冷却後、反応液に塩化アンモニウム水溶液を加え、トルエンで抽出した。抽出液を水と飽和食塩水の順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮後、残渣にイソプロパノールを加え減圧濃縮した。残渣にn−ヘプタン 150mlを加えて65℃で溶かした後、室温まで徐々に冷却し、さらに0℃に冷却した。析出晶をろ取し、n−ヘプタンで洗浄後、乾燥して、4−ジベンジルアミノ−1−メチルシクロヘキサノール(e)28.41gをトランス:シス=63:37(HPLCによる分析)の混合物として得た。
HPLC条件
Column : L-column-ODS φ4.6 x 150mm
Mobile phase : TFA/H2O/CH3CN=0.5/200/800
Wave length : 210 nm
Column temp. : 40℃
Flow rate : 1.0 ml/min.
・トランス体:RT 13.0 min.
・シス体 :RT 16.7 min.
[工程2]
工程1で得られた4−ジベンジルアミノ−1−メチルヘキサノール 10gをエタノール 50mlに溶かし、57%の水分を含む5%パラジウム炭素 4.8gを加え、水素雰囲気下、室温にて撹拌した。触媒をろ別後、減圧濃縮した。残査にイソプロパノール 20ml及び35%塩酸 3.4gを加えて45℃に加熱して溶かし、45〜50℃にて酢酸イソプロピル 40mlを温度を保ちながら徐々に加えた後、室温まで徐々に冷却した。析出した結晶様固体をろ取し、イソプロパノールと酢酸イソプロピルの混液で洗浄後、乾燥して、トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール塩酸塩(f)3.01gを得た。
【0016】
下記の式IIIで表されるトランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類又はその塩は、以下のようにしても製造することができる。

[式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はアミノ基の保護基(アルキル類)を表す。]
市販あるいは通常容易に製造することのできる1,4−シクロヘキサンジオン モノエチレンアセタール(I)をメチル化剤と反応させ、続いて酸で処理することで、4−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキサノン(II)を製造することができる。メチル化剤としては、メチルマグネシウムハライド(クロリド、ブロミド、ヨージド等)、メチルリチウム等が挙げられ、反応溶媒としては、通常、炭化水素系溶媒(ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキエタン、THF、1,4−ジオキサン等)等が挙げられる。酸処理における酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸が使用できる。
続いて、4−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキサノン(II)をHNRと共に、常法に従って還元的アミノ化反応を行い、トランス体を分離し、必要に応じてアミノ基の保護基を脱保護することで、トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類(III)を製造することができる。R又はRにおけるアルキル類であるアミノ基の保護基としては、ベンジル等が挙げられ、好ましいHNRとしては、アンモニア、ベンジルアミン、ジベンジルアミン等が挙げられる。トランス体の分離及び塩の製造は、前記のトランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類(4)におけるトランス体の分離及び塩の製造と同様にして実施できる。
【0017】
参考例1
トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノールの製造

[工程1]
窒素気流下、1,4−シクロヘキサンジオン モノエチレンアセタール(x)20.0gをTHF 40mlに溶かし、メチルマグネシウムクロリドのTHF2モル溶液 92.3gに滴下後、室温にて30分撹拌した。反応液に35%塩酸 20.0gと水 40mlの溶液を滴下後、THFを減圧留去した。得られた水溶液に35%塩酸を加えてpH 0〜0.7に調整し、室温にて1時間撹拌した。反応液に食塩を加えた後、イソプロパノール 40mlとトルエン 40mlの混液で3回抽出した。抽出液を減圧濃縮し、残渣にトルエンを加えて減圧濃縮した。残渣をトルエン 40mlに溶かし、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮して、4−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキサノン(y)15.9gを得た。
[工程2]
化合物(y)15.9gを塩化メチレン 33mlに溶かし、ベンジルアミン 13.7gを滴下した。次いで、酢酸 15.4gと塩化メチレン 16mlの溶液を20℃以下で滴下した。反応液をトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム 40.7gと塩化メチレン 115mlの懸濁液に20℃以下で滴下し、室温にて30分撹拌した。反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性とした。水層を塩化メチレンで抽出後、有機層を合わせ、水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮して、4−ベンジルアミノ−1−メチルシクロヘキサノールをトランス:シス=1:1(HPLCによる分析)の混合物として得た。
HPLC条件
Column : L-column-ODS φ4.6 x 150mm
Mobile phase : 0.0625%TFA:CH3CN=90:10
Wave length : 210 nm
Column temp. : 40℃
Flow rate : 1.0 ml/min.
・トランス体:RT 6.6 min.
・シス体 :RT 17.9 min.
残渣にジイソプロピルエーテルを加えて減圧濃縮した。残渣にトルエン 36mlを加えて50〜60℃で溶かした後、ジイソプロピルエーテル 54mlを45℃以上で滴下した。少量のトランス−4−ベンジルアミノ−1−メチルシクロヘキサノールで接種後、10〜15℃に冷却し、1時間撹拌した。析出晶をろ取し、ジイソプロピルエーテルで洗浄後、乾燥して、トランス−4−ベンジルアミノ−1−メチルシクロヘキサノール(z)9.4gを結晶として得た。
融点:103.6℃
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 7.40-7.28 (m, 4H), 7.25 (m, 1H), 3.79 (s, 2H), 2.63 (tt, J=9.0, 4.5, 1H), 1.87 (m, 2H), 1.73 (m, 2H), 1.47 (m, 2H), 1.40-1.15 (m, 2H) and 1.26 (s, 3H)
[工程3]
化合物(z)733.8gをエタノール 3670mlに溶かし、56.7%の水分を含む5%パラジウム炭素 493.3gを加えて、水素雰囲気下、室温、0.3MPaにて7.5時間撹拌した。触媒をろ別後、減圧濃縮し、トランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール(d)432.3gを得た。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明により、トランス:シスの生成比を向上させて高収率で安価に工業的に製造しうるトランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類の製造方法を提供することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程による式4のトランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール類又はその塩の製造方法。

[式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はアミノ基の保護基を表す。]
[工程1] 式1の4−アミノシクロヘキサノン類にジメチルスルホニウムメチリドを反応させて式2の化合物を製造する工程。
[工程2] 式2の化合物を還元することで式3の化合物を製造する工程。
[工程3] 式3の化合物又はその塩においてトランス体を分離して、式4の化合物を取得する工程。
[工程A] 必要に応じて工程1〜3のいずれかの工程に続いて式2、式3又は式4の化合物においてアミノ基の保護基を脱保護する工程。
【請求項2】
工程Aが必要に応じて工程3に続いて式4の化合物においてアミノ基の保護基を脱保護する工程である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
が水素原子又はベンジルであり、Rがベンジルである請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
工程Aが工程2に続いて式3の化合物においてアミノ基の保護基のすべてを脱保護する工程であり、工程3が4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール塩酸塩においてトランス体を分離してトランス−4−アミノ−1−メチルシクロヘキサノール塩酸塩を取得する工程である請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
式:

[式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はアミノ基の保護基を表す。]
で表される化合物又はその塩。
【請求項6】
が水素原子又はベンジルであり、Rがベンジルである請求項5記載の化合物又はその塩。

【公開番号】特開2007−277224(P2007−277224A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62718(P2007−62718)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000002956)田辺製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】