説明

トランスファバー

【課題】連結部分の剛性向上および軽量化を実現できるトランスファバーを提供すること。
【解決手段】トランスファバーの残留バー26および移動バー28を連結する連結装置1を、残留側クランプ3と移動側クランプ4とで構成し、各クランプ3,4には連結方向周りに沿って互いに嵌合し合う雄嵌合部K1、雌嵌合部K2を設けて第1連結部R1とし、各クランプ3,4の内部には雄係合部44、雌係合部33とを収容して第2連結部(R2)とし、第2連結部の雌係合部33を、連結方向に対して直交する方向に移動する移動部材としての球体36を備えて構成し、この球体36の移動により雄係合部44に対して係脱するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファバーに係り、具体的には、プレス機械のワーク搬送装置に設けられるトランスファバーの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス本体内に複数の加工ステーションを備えたタイプのプレス機械であるトランスファプレスには、各加工ステーション間でワークを順次搬送するワーク搬送装置が設けられている。このワーク搬送装置は、ワーク搬送方向に平行に設けられた一対のトランスファバーを有しており、各トランスファバーには、それぞれの加工ステーションに配設されている金型に対応してワークを保持したり、離したりできるワーク保持具が着脱可能に装備されている。
【0003】
上記の金型は、ワークの種類(製品の種類)に応じて交換する必要がある。金型の下金型は通常、ムービングボルスタ上に装着されており、スライドから外された上金型と共にムービングボルスタごとプレス本体から外部に搬出される。つまり、金型交換に際しては、外段取りによって所望の金型と交換したり、あるいは、既に所定の金型を予め装着した状態の他のムービングボルスタと入れ替えたりする。
【0004】
その一方、金型と同様にワークの種類毎に交換する必要のある前述のワーク保持具は、ムービングボルスタとは独立した装置であるワーク搬送装置のトランスファバーに装着されているため、過去においてはこのワーク保持具はプレス機械内において交換する必要があった。その交換中はプレス機械を稼働させることはできず、プレス機械の稼働率向上の障害になっていた。そこでトランスファバーをその中央側の移動バーと、両端側の2つの固定バーとに分割し、ワーク保持具が装着されている移動バーごとムービングボルスタに載せて金型と共に外部に搬出したり、搬入したりしている。
【0005】
着脱自在に設けられた移動バーと固定バー(以下、本願では残留バーと称する)との連結構造としては、下記特許文献1に開示のように、残留バーに設けられた板状係合部材を、移動バーの係合体に係止させる構造が多かった。その他、特許文献2では、残留バーの板状連結部材と移動バーの板状連結部材とを、各バーの長手方向に直交する上下方向指向のピン部材で連結するとともに、2枚の板状連結部材の上下方向に関しては、残留バーに設けられたクランパーの挟持手段で挟み、これにより、2枚の板状連結部材を3次元の各方向に拘束して連結する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平06−054429号公報
【特許文献2】特開2006−289478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1,2に開示の連結構造は、残留バーに設けられる板状係合部材やクランパーが上下に揺動する構造であり、移動バー側の被係合部分に対して上下方向から係脱するため、トランスファバー自身の自重あるいは上下に移動させた際の加速度により生じる垂直方向の負荷に対しては十分に耐え得るが、水平方向の負荷に対しては剛性が低いという問題がある。従って、プレス機械での生産性を向上させるために、トランスファバーをより高速で駆動しようとすると、各バーの連結部分には垂直方向の負荷のみならず、水平方向からの負荷が大きな曲げモーメントとして作用することになるため、このような曲げモーメントに対抗できないという問題が生じる。また、水平方向からの負荷に対抗できるように装置を大型化すると重量が増え、トランスファバーの高速駆動化の障害となる。
【0008】
本発明の目的は、連結部分の剛性向上および軽量化を実現できるトランスファバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑みて第1発明のトランスファバーは、プレス本体内に残留する残留バーと、プレス本体に対して搬出入自在な移動バーと、これらの残留バーおよび移動バーを着脱自在に連結する連結装置とを備えたトランスファバーであって、前記連結装置は、前記残留バーに取り付けられる残留側クランプと、前記移動バーに取り付けられる移動側クランプとを備え、前記残留側クランプおよび前記移動側クランプには、連結方向周りに沿って互いに嵌合し合う雄嵌合部、雌嵌合部が設けられているとともに、これら雄雌嵌合部により第1連結部が形成され、前記残留側クランプおよび前記移動側クランプの前記雄雌嵌合部の内部には、一方のクランプに設けられて他方のクランプ側に延出した雄係合部と、他方のクランプに設けられて一方のクランプの前記雄係合部の外周に対して連結方向に係合する雌係合部とが収容されているとともに、これら雄雌係合部により第2連結部が形成され、前記第2連結部の雌係合部は、前記連結方向に対して直交する方向に移動する移動部材を備えて構成され、この移動部材の移動により前記雄係合部に対して係脱することを特徴とする。
【0010】
第2発明のトランスファバーでは、前記移動部材は、転動することで移動自在に設けられていることを特徴とする。
【0011】
第3発明のトランスファバーでは、前記移動部材は、前記連結方向周りに複数設けられていることを特徴とする。
【0012】
第4発明のトランスファバーでは、前記第2連結部の雌係合部は、前記連結方向の進退するプランジャを備えて構成され、前記プランジャの先端には、当該プランジャの進出により前記移動部材と摺接して当該移動部材を内方に移動させる傾斜面が設けられていることを特徴とする。
【0013】
第5発明のトランスファバーでは、前記移動体は、前記傾斜面により前記雄係合部に押圧された状態で係合することを特徴とする。
【0014】
第6発明のトランスファバーでは、前記雄嵌合部は、連結方向の先端側に向かうに従って縮径した円錐台状の外周面で形成され、前記雌嵌合部は、連結方向の先端側に向かうに従って拡径した円錐台状の内周面で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、連結装置の残留側クランプおよび移動側クランプにおいて、第1連結部を形成する雄雌嵌合部は、内部に雄雌係合部を収容した所定の大きさを有し、かつ連結方向周りの大きな嵌合面を有して互いに嵌合するため、このような連結装置を用いて残留バーと移動バーとを連結した場合の連結部分の剛性を大幅に向上させることができる。従って、連結部分に対して連結方向とは直交する方向から大きな負荷が作用しても、連結部分に生じる曲げモーメントに確実に対抗でき、トランスファバーの一層の高速駆動を実現できる。
【0016】
また、連結部分にはもともと、両バーを長手方向に離間させるような負荷は曲げモーメントに比べると小さいので、第2連結部を形成する雄雌係合部では、両バーが長手方向に離間して外れないよう係合状態が維持されればよく、簡易な構造の雄雌係合部にて十分に対応できる。このため、第2連結部が簡素なことで連結装置、ひいてはトランスファバー全体の軽量化を図ることができ、この点でもトランスファバーの高速駆動を確実に促進できる。
【0017】
第2発明によれば、移動部材が転動可能であることから、移動部材の移動をスムースに行って第2連結部での雄雌係合を迅速に行えるうえ、摩耗も少なく、潤滑も簡易でよいから、メンテナンスを容易にできる。
【0018】
第3発明によれば、移動部材を連結方向周りに複数設けるので、雄雌係合部による係合をもバランスよく行え、係合状態をも良好に維持できる。
【0019】
第4発明によれば、プランジャを進出させることで、そのプランジャに設けられた傾斜面にて移動部材が移動するから、連結方向に沿ったプランジャの動きを連結方向とは直交する方向に変換でき、移動部材を雄係合部側に確実に移動させることができる。
【0020】
第5発明によれば、傾斜面が移動部材を雄係合部側に押圧するので、雄雌係合部の係合中に移動部材ががたついたりせず、両バーの連結状態をさらに良好に維持できる。
【0021】
第6発明によれば、円錐台状とされた雄雌嵌合部が嵌合し合うので、互いの嵌合面を密着させることができ、剛性を一層大きくできて、より大きな曲げモーメントにも確実に対抗できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係るトランスファバーが用いられたプレス機械の正面図。
【図2】トランスファバーの動きの説明図。
【図3】トランスファバーを分割した際の連結部分の縦断面図。
【図4】分割状態から連結操作を進める途中過程の縦断面図。
【図5】連結操作の途中過程からさらに進み、連結完了時の縦断面図。
【図6】本発明の第2実施形態に係るトランスファバーの連結部分を示す縦断面図。
【図7】本発明の第3実施形態に係るトランスファバーの連結部分を示す縦断面図。
【図8】本発明の第4実施形態に係るトランスファバーの連結部分を示す縦断面図。
【図9】第4実施形態での構成部材を示す側面図。
【図10】第4実施形態の要部を示す分解斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。プレス機械であるトランスファプレス10を図1に正面視で示しており、フロアーFLの下に、平面視が矩形状のベッド12が埋設されている。このベッド12の平面視四隅には柱状のアプライト14が立設されている。これら4本のアプライトの上にはクラウン16が支持されている。クラウン16にはスライド20が垂設され、クラウン16内の適宜な駆動機構によりスライド20を上下に駆動することができる。これらによってトランスファプレス10のプレス本体が形成されている。
【0024】
前記ベッド12の上には、ムービングボルスタ18が配設されている。ムービングボルスタ18は、レール等の適宜なガイド手段に沿って円滑にプレス本体からその外部に搬出、あるいは外部から搬入できるように構成されている。このムービングボルスタ18の上面には、ワークWを加工するための金型22の内の下金型22Bが着脱可能に装着されている。一方、スライド20の下面には、金型22の内の上金型22Aが着脱可能に装着させている。こうして、これらの金型22に対応する所定のワークWを下金型22Bに位置させ、上金型22Aをスライド20と共に降下させてプレス加工する。
【0025】
以上のトランスファプレス10には、前記のようなプレス加工する対象のワークWを新しく供給したり、順次、次の加工ステーションに供給したりするワーク搬送装置24が設けられている。ワーク搬送装置24は、ワークWの搬送方向に沿って平行に延伸した長尺な一対のトランスファバー30を備えている。図1において、ワークWは左から右の方向に搬送され、この搬送方向に直交する図1の紙面に垂直な方向(後述のクランプ方向)において、奥側と手前側とにそれぞれ1つのトランスファバー30が配設され、対を成している。各トランスファバー30には、ワークWの種類に対応したワーク保持具35が着脱可能に装着されている。
【0026】
ここで、図2に示すように、前記ワーク搬送方向に沿ったフィード方向とその逆のリターン方向をも含んでフィード方向Fと称し、この方向に直交したリフト方向とその逆のダウン方向を含む上下方向をリフト方向Lで表し、これら2つの方向に対して直交する方向であって、前記2つのトランスファバー30が互いに近づくクランプ方向とその逆のアンクランプ方向をも含んでクランプ方向Cで表すことにする。ワーク保持具35を装着したトランスファバー30は、一般にこうした3次元の各方向F,L,Cに駆動されるが、フィード方向Fおよびリフト方向Lに駆動される垂直2次元の場合や、フィード方向Fおよびクランプ方向Cに駆動される水平2次元の場合もある。
【0027】
トランスファバー30を構成要素に含むワーク搬送装置24は、バー駆動機構として、例えば、リニアモータを使用したフィード駆動機構31を有し、これによってトランスファバー30をフィード方向Fに駆動し、さらに、リフト・クランプ駆動機構37を有し、これによってトランスファバー30をリフト方向Lとクランプ方向Cとの各方向に駆動する。
【0028】
トランスファプレス10がワークWの種類を変えてプレス加工をするには、ワークの種類に応じた所定の金型22と所定のワーク保持具35とに交換する必要がある。このため、各トランスファバー30を、ワーク保持具35を装着している中央の移動バー28と、端部側の2つの残留バー26とに分割可能に連結しておく。そのうえで、上金型22Aをも含んで使用済み金型22をムービングボルスタ18に載置し、さらには、使用済みワーク保持具35を装着した移動バー28をもムービングボルスタ18上に載せる。このムービングボルスタ18をプレス本体の外に搬出し、外段取りにて交換すると効率的に交換できる。あるいは、所定の金型22の他、所定のワーク保持具35を装着した他の移動バー28を搭載した別のムービングボルスタ18を予め準備しておき、これと交換することで、より短時間で効率的な交換が可能となる。
【0029】
プレス加工中、トランスファバー30は前述の各駆動機構31,37によって図2に示す方向の動きを強いられる。例えば、フィード方向Fにおける位置であって、ワークWをストックしているワーク搬入位置から、板金等の1枚のワークWをワーク保持具35によって把持すべくクランプ方向Cに駆動する(ステップ1:クランプ)。次に、ワークWを把持して持ち上げ(ステップ2:リフト)、所定の高さ位置を保持しつつ最初の加工ステーションの位置に移動する(ステップ3:フィード)。その位置でワークWの高さ位置を下げるべく下降させる(ステップ4:ダウン)。さらに、ワーク保持具35からワークWを離して下金型22Bの上に位置させ、その後、クランプ方向Cに沿って退避させ(ステップ5:アンクランプ)、再びフィード方向Fに沿って先ほどのワーク搬入位置に戻す(ステップ6:リターン)。このような動きは、ワークWを所定の加工ステーションからより下流の加工ステーションに搬送する時も同じである。
【0030】
以上のように、トランスファバー30には、3次元の各方向(F,L,C)に沿った移動動作が与えられる。そして、トランスファプレス10での生産性を向上させるためには、トランスファバー30の各方向の駆動速度をより高速に行う必要がある。しかし、駆動速度をより高速にすると、長尺で重量体であるトランスファバー30には大きな加速度が生じ、大きな負荷が作用する。従って、トランスファバー30を残留バー26と移動バー28とに分割し、それらを連結して使用する構造の本実施形態では、その連結部分に互いをこじ開けるような負荷、すなわち、曲げモーメントが発生するのであり、連結部分をこうした曲げモーメントに耐え得る高剛性の構造にする必要がある。
【0031】
なお、トランスファバー30には、フィード方向Fの駆動によって長手方向の加速度を受けるが、この場合、残留バー26と移動バー28との連結部分には曲げモーメントは発生せず、この方向Fの加速度に対しては、クランプ方向Cやリフト方向Lの加速度発生時のように曲げモーメントが発生する場合と比較して強度上の問題は小さい。
【0032】
以下では主に図3から図5を参照する。本実施形態において、残留バー26および移動バー28は、連結装置1によって互いに着脱自在に構成されている。連結装置1は、図中左側の残留バー26の先端から、その中心軸線CLに沿って外方向に突設された残留側クランプ3と、図中右側の移動バー28の先端から、中心軸線CLに沿って外方向に突設された移動側クランプ4とを備えて構成されている。
【0033】
残留側クランプ3は、残留バー26の端部にボルト止めされる断面凸状の残留側外郭部材32を有している。残留側外郭部材32の先端側部分は、円筒状の外側円筒部32Aとなっている。外側円筒部32Aの外周面は、その母線が中心軸線CLと平行な雄嵌合部K1を形成している。また、外側円筒部32Aの内周面には、該外側円筒部32Aの開口端から内方(図3の左方向)に向かって延伸した保持部材34が、例えば螺合によって装着されている。保持部材34の先端側部分は、同一の中心軸線CLを有した円筒状の内側円筒部34Aとなっている。内側円筒部34Aの長さ方向の適宜位置である中間部には、円周方向に沿って複数個の貫通孔34Hが等周間隔で形成されている。
【0034】
各貫通孔34Hに対しては、移動部材としての球体36が内側円筒部34Aの外周側から配設されている。この際、各貫通孔34Hは、中心軸線CL側に向かって小さくなる円錐台形状になっており、貫通孔34H内の球体36が内側円筒部34Aの内部に抜け出ることはない。この構成により、球体36は、両バー26,28の連結方向周りに複数配置されることになる。球体36は、表面が円滑に処理された鋼球等である。
【0035】
また、残留側外郭部材32の内部には、前記保持部材34とは中心軸線CLの方向に対向するプランジャ38が配置されている。プランジャ38は、中心軸線CLに沿って進退自在に構成されている。プランジャ38には、保持部材34側に向かって進出した際に外側円筒部32Aと内側円筒部34Aとの間に介装される中間円筒部38Aが設けられている。
【0036】
中間円筒部38Aは、プランジャ38の進退時に外側円筒部32Aの内面32Nに案内される。中間円筒部38Aの先端部内面側は、概ね断面球面状の凹部38Kとして形成されている。凹部38Kは、保持部材34に保持された球体36に近接しており、球体36が保持部材34の貫通孔34Hから外方に外れ出るのを防止している。ただし、凹部38Kは球面状でなく、中間円筒部38Aの先端側が小径となる単純な傾斜面であってもよい。
【0037】
プランジャ38の背面(図3における左側面)と、残留側外郭部材32の背面側に設けられた閉塞部材39との間には空間S1が形成されている。空間S1は、外部の適宜な空気圧装置から内部に所定圧の圧縮空気を導入したり、内部から圧縮空気を排出したりできるように構成されている。また、プランジャ38の鍔部38Bの前面と外側円筒部32Aの内方端面との間には空間S2が形成され、この空間S2も外部の適宜な空気圧装置から内部に所定圧の圧縮空気を導入したり、内部から圧縮空気を排出したりできるように構成されている。つまり、空間S1,S2により、プランジャ38を進退させるためのシリンダ空間が形成されているのである。
【0038】
そして、球体36、保持部材34、プランジャ38を具備して雌係合部33を構成している。また、残留側外郭部材32の適宜位置には、残留バー26へ固定する際の位置決めピン32I、および複数個のガイドピン32Gが取り付けられている。
【0039】
一方、移動側クランプ4は、移動バー28の端部にボルト止めされるとともに、残留側クランプ3の残留側外郭部材32と嵌合する有底筒状の移動側外郭部材42を有している。移動側外郭部材42には、残留バー26側に向かって突出した円筒部42Aが設けられている。円筒部42Aの内周面は、残留側外郭部材32の雄嵌合部K1と嵌合し合う雌嵌合部K2を形成している。移動側外郭部材42の内部において、底面42Sの中央には、中心軸線CLに沿って残留側外郭部材32側に突出した円柱状の雄係合部44がボルト45により固定されている。
【0040】
雄係合部44の先端部外周は、基端側よりも外径寸法の大きい環状の係合凸部44Tになっており、その係合凸部44Tの図3における(縦)断面形状は概ね半円状または円弧状であり、その輪郭は滑らかに形成されている。係合凸部44Tに隣接して、その内方側(図3の右側)の部位は、該係合凸部44Tの存在によって形成された凹部44Kになっている。後述するが、この凹部44Kには球体36が係合する。
【0041】
移動側外郭部材42の円筒部42Aにおいて、その適宜位置には、移動バー28へ固定する際の位置決めピン42Iが設けられ、また、前記残留側外郭部材32のガイドピン32Gに対応する位置には、中心軸線CLに平行なガイド孔42Hが設けられている。前述したガイドピン32Gとガイド孔42Hとの協働作用により、残留バー26と移動バー28とを連結させる作業が容易になる。こうして両バー26,28の端部を中心軸線CLの方向に押しつけて連結させた状態が図4に示されている。
【0042】
この状態の連結装置1では、残留側クランプ3の雄嵌合部K1と移動側クランプ4の雌嵌合部K2との嵌合部分により、本発明に係る第1連結部R1が形成されている。第1連結部R1は、以下で説明する第2連結部R2(図5)に比べて、より外側(大きな径)の位置に存在しているうえ、各嵌合部K1,K2同士が周方向に連続した大きな嵌合幅Wi(図5)にて嵌合しているので、それだけ大きな嵌合面を確保できて剛性を大きくでき、より大きな曲げモーメントに耐え得ることが可能である。
【0043】
また、図4や図5に示すように、残留側クランプ3の残留側外郭部材32と移動側クランプ4の移動側外郭部材42とが嵌合している状態では、ガイドピン32Gやガイド孔42Hが設けられた互いの対向面32T、42Tが当接しており、また、移動側外郭部材42の底面42Sに対して、残留側外郭部材32の先端が非常に近い位置まで入り込む寸法設定になっている。このことも、両バー26,28の連結部分に作用する曲げモーメントに対抗するためには好ましい。
【0044】
移動バー28を残留バー26に対して図3の状態から図4の状態にまで挿入する途中過程において、保持部材34に保持されている球体36は、雄係合部44の係合凸部44Tによって外側に押しやられことになり、雄係合部44は球体36に邪魔されることなく保持部材34内に挿入される。
【0045】
図4の状態から、既述の空間S1に所定圧の圧縮空気を導入すると、プランジャ38が進出し、その移動の途中でプランジャ38の中間円筒部38Aは、先端の凹部38Kによって貫通孔34H内の球体36を保持部材34の内側円筒部34Aの中心側に転動させて押しやり、やがて図5に示すように、中間円筒部38Aの内部側に緩やかに傾斜して設けられた傾斜面38Nによって球体36を外側から覆って摺接し、球体36を雄係合部44の凹部44Kに押しやって押圧する。
【0046】
以上によって雄係合部44と雌係合部33とが球体36を介して係合し、残留バー26と移動バー28との連結が完了する。そして、雄係合部44と雌係合部33との係合部分により、本発明に係る第2連結部R2が形成されている。
【0047】
このような第2連結部R2では、既述のように、トランスファバー30に作用する負荷の中で、その長手方向に作用する負荷を受けることになり、曲げモーメントが生じない。このため、第2連結部R2としては、適宜数の複数個の球体36によって受け止めるだけの本実施形態のような構造でも、長手方向に作用する負荷に十分に対抗できる。
【0048】
トランスファバー30を再び分離させるには、図5に示す既述の空間S2に外部の適宜な空気圧装置から適宜圧の圧縮空気を導入するとともに、プランジャ38の背側の空間S1の圧縮空気を排気させればよい。これによりプランジャは図4の状態に戻る。その後は、両バー26,28を長手方向に沿って相対的に離間させれば分離させることができる。
【0049】
以上説明した本実施形態によれば、残留バー26と移動バー28とを高速で稼動させた場合に生じる連結部分の曲げモーメントに対しては、連結装置1での互いの嵌合面が大きく、高剛性とされた第1連結部R1にて良好に対抗でき、曲げモーメントが生じない長手方向の負荷、つまり各バー26,28が分離する方向の負荷に対しては、高剛性が要求されない第2連結部R2であっても、十分に対抗できる。
【0050】
〔第2実施形態〕
図6には、本発明の第2実施形態が示されている。前記第1実施形態では、第1連結部R1の雄嵌合部K1および雌嵌合部K2が中心軸線CLと平行な面で形成されていたが、本実施形態では、それぞれ円錐台状のテーパ面により形成されている。すなわち、雄嵌合部K1は、嵌合方向(連結方向と同じ)の先端に向かうに従って縮径した円錐台状の外州側のテーパ面とされ、雌嵌合部K2は、嵌合方向の先端に向かうに従って拡径した円錐台状の内周側のテーパ面とされている。
【0051】
このような第2実施形態によれば、各嵌合部K1,K2同士を全周にわたって確実に面接触させることができ、各バー26,28の連結状態での剛性をより大きくできるという効果がある。
【0052】
〔第3実施形態〕
図7には、本発明の第3実施形態が示されている。前記第1実施形態では、本発明に係る移動部材として球体36が用いられていたが、本実施形態では、所定長さを有した円柱状のコロ51が用いられている。このため、保持部材34には、第1実施形態で説明した内側円筒部34Aの代わりに四角筒状の内側角筒部34Cが設けられ、内側角筒部34Cを形成する各片部分のそれぞれに四角形状に開口した貫通孔34Hが設けられ、各貫通孔34Hにコロ51が収容されている。
【0053】
一方、プランジャ38において、中間円筒部38Aの先端側は中間角筒部38Cとなっている。また、残留側外郭部材32では、外側円筒部32Aの内周形状は、プランジャ38の中間円筒部38Aの外周面が接触する円形開口部分と、中間角筒部38Cの外周面が接触する角形開口部分とで段差状に形成され、プランジャ38の進出により、外側円筒部32Aの角形開口部分および保持部材34の内側角筒部34C間に中間角筒部38Cが入り込む。
【0054】
他方、移動側クランプ4においては、雄係合部44の形状が円柱状ではなく、次説する第4実施形態同様(図9参照)角柱状とされ、四周に設けられた凹部44Kにコロ51が転動して係合する。
その他の形状や各部の動きについては、第1実施形態と略同じであり、このような第3実施形態でも、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0055】
〔第4実施形態〕
図8〜図10には、本発明の第4実施形態が示されている。本実施形態では、本発明に係る移動部材として角柱部材52を用いたことが特徴である。また、プランジャ38としては、コロ51を用いた第3実施形態のものに近く、第3実施形態での中間角筒部38Cの代わりに、四角形の開口部分の各辺縁に対応した楔状部38Dを有する形状になっている。
【0056】
ここで、楔状部38Dの内側部分には、先端に向かうに従って拡開するように中心軸線CLに対して傾斜した傾斜面38Eが設けられている。また、残留側外郭部材32には、楔状部38Dの先端に対向した壁面32Cが設けられている。傾斜面38Eおよび壁面32Cで区画される部分には角柱部材52が収容されている。なお、壁面32Cは、中心軸線CLに対して直交する面状に形成されている。
【0057】
角柱部材52には、楔状部38Dでの傾斜面38Eと接触する摺接面52A、角柱状とされた雄係合部44の凹部44Kと係合する傾斜した係合面52B、および壁面32Cに当接される当接面52Cがそれぞれ長手方向に沿って設けられている。
【0058】
本実施形態では、移動側クランプ4の雄係合部44が残留側クランプ3側に入り込んだ状態でプランジャ38を進出させると、プランジャ38先端の楔状部38Dが角柱部材52の摺接面52Aと接触しながら進むことになるため、角柱部材52はその当接面52Cが壁面32Cに当接した状態で中心軸線CL側に移動する。この結果、角柱部材52の係合面52Bが雄係合部44側の傾斜面として形成された凹部44Kと係合し、各クランプ3,4の第2連結部R2による連結が完了する。
【0059】
反対に、プランジャ38を後退させると、その後の雄係合部44の離間側への移動により、凹部44Kの傾斜面が角柱部材52の係合面52Bを押圧することになり、角柱部材52を中心軸線CLに対して外方に押しやる。このことによって角柱部材52がもとの位置に戻る。ただし、もとの位置に戻った角柱部材52を、何らかの保持手段により保持する必要があるが、ここではその保持手段の詳細な説明および図示を省略する。
【0060】
以上の第4実施形態でも、第2連結部R2により、各バーン26、28の連結部分に作用する長手方向に沿った負荷に十分に対抗でき、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0061】
なお、本発明は前記各実施形態説明した構成に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、変更等は本発明に含まれる。
例えば、前記各実施形態では、第1連結部R1に関し、雄嵌合部K1を残留バー側に設け、雌嵌合部K2を移動バー側に設けたが、それぞれを互いに逆側のバーに設けてもよい。また、第2連結部R2に関し、雌係合部33を残留バー側に設け、雄係合部44を移動バー側に設けたが、それぞれを互いに逆側のバーに設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、複数の加工ステーションを有するプレス機械に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1…連結装置、3…残留側クランプ、4…移動側クランプ、26…残留バー、28…移動バー、30…トランスファバー、33…雌係合部、36…移動部材である球体、38…プランジャ、38E,38N…傾斜面、44…雄係合部、51…移動部材であるコロ、52…移動部材である角柱部材、K1…雄嵌合部、K2…雌嵌合部、R1…第1連結部、R2…第2連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス本体内に残留する残留バーと、プレス本体に対して搬出入自在な移動バーと、これらの残留バーおよび移動バーを着脱自在に連結する連結装置とを備えたトランスファバーであって、
前記連結装置は、前記残留バーに取り付けられる残留側クランプと、前記移動バーに取り付けられる移動側クランプとを備え、
前記残留側クランプおよび前記移動側クランプには、連結方向周りに沿って互いに嵌合し合う雄嵌合部、雌嵌合部が設けられているとともに、これら雄雌嵌合部により第1連結部が形成され、
前記残留側クランプおよび前記移動側クランプの前記雄雌嵌合部の内部には、一方のクランプに設けられて他方のクランプ側に延出した雄係合部と、他方のクランプに設けられて一方のクランプの前記雄係合部の外周に対して連結方向に係合する雌係合部とが収容されているとともに、これら雄雌係合部により第2連結部が形成され、
前記第2連結部の雌係合部は、前記連結方向に対して直交する方向に移動する移動部材を備えて構成され、この移動部材の移動により前記雄係合部に対して係脱する
ことを特徴とするトランスファバー。
【請求項2】
請求項1に記載のトランスファバーにおいて、
前記移動部材は、転動することで移動自在に設けられている
ことを特徴とするトランスファバー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のトランスファバーにおいて、
前記移動部材は、前記連結方向周りに複数設けられている
ことを特徴とするトランスファバー。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のトランスファバーにおいて、
前記第2連結部の雌係合部は、前記連結方向の進退するプランジャを備えて構成され、
前記プランジャの先端には、当該プランジャの進出により前記移動部材と摺接して当該移動部材を内方に移動させる傾斜面が設けられている
ことを特徴とするトランスファバー。
【請求項5】
請求項4に記載のトランスファバーにおいて、
前記移動体は、前記傾斜面により前記雄係合部に押圧された状態で係合する
ことを特徴とするトランスファバー。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のトランスファバーにおいて、
前記雄嵌合部は、連結方向の先端側に向かうに従って縮径した円錐台状の外周面で形成され、
前記雌嵌合部は、連結方向の先端側に向かうに従って拡径した円錐台状の内周面で形成されている
ことを特徴とするトランスファバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−152559(P2011−152559A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15292(P2010−15292)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(394019082)コマツ産機株式会社 (103)
【出願人】(000102452)エスアールエンジニアリング株式会社 (17)