説明

トランスポンダ車上子及びトランスポンダ車上装置

【課題】簡単な構成で車上子の整合部とその接続ケーブル部を冗長化してシステム全体の冗長化を図る。
【解決手段】トランスポンダ地上子との間の伝送用のトランスポンダ車上子1のアンテナを構成する情報波送受信コイル11及び電力波送信コイル12と外部接続ケーブルとのインピーダンス整合をとる整合部を1系の情報波整合部13aと1系の電力波整合部14a及び2系の情報波整合部13bと2系の電力波整合部14bの2重系にして、トランスポンダ車上子1の整合部の内部回路の故障に起因するシステムダウンの発生率を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の情報伝送用のアンテナとして使用するトランスポンダ車上子及びそれを使用したトランスポンダ車上装置、特に装置故障の低減に関するものである。
【背景技術】
【0002】
列車制御システムを高度化するためには、地上と列車間における情報伝送を高密度に行う必要がある。この地上と列車との間で高密度に情報を伝送するため、地上に設けられた送受信コイルと車両に取り付けられた送受信コイルとの間で情報伝送を双方向で行うデジタル通信装置であるトランスポンダが利用されている。
【0003】
このトランスポンダを利用した情報伝送装置の車両に搭載された従来のトランスポンダ車上装置は、図3のブロック図に示すように、トランスポンダ車上子(以下、車上子という)1aと、1系の制御装置2aと2系の制御装置2bを有する制御装置と、切換制御部3a及び車上子1aと切換制御部3aとの間を接続する接続ケーブル部4aを有する。車上子1aはトランスポンダ地上子(以下、地上子という)との間の情報波伝送用の情報波送受信コイル11と無電源地上子への電力波伝送用の電力波送信コイル12と情報波整合部13及び電力波整合部14を有する。
【0004】
1系の制御装置2aは地上子に送信する情報波を発生する情報波送信部21aと、地上子から送信された情報波を受信する情報波受信部22aと、地上子に送信する電力波を発生する電力波送信部23aと、電力波送信部23aで発生した電力波が電力波送信コイル12から正常に送信されているか否を確認する電力波受信部24a及び1系が正常に動作しているか否を示す1系正常信号出力部25aを有する。
【0005】
2系の制御装置2bも地上子に送信する情報波を発生する情報波送信部21bと、地上子から送信された情報波を受信する情報波受信部22bと、地上子に送信する電力波を発生する電力波送信部23b及び電力波送信部23bで発生した電力波が電力波送信コイル12から正常に送信されているか否を確認する電力波受信部24bを有する。
【0006】
切換制御部3aは1系の制御装置2aの1系正常信号出力部25aから1系正常信号が出力されているときコイルが励磁し、1系正常信号が出力されていないときコイルが非励磁となる1系正常検知リレーCHRを有し、1系正常検知リレーCHRのコイルが励磁されて動作接点が閉成されているとき、1系の制御装置2aの情報波送信部21aを接続ケーブル部4aを介して車上子1aの情報波整合部13に接続し、1系の制御装置2aの電力波送信部23aを接続ケーブル部4aを介して車上子1aの電力波整合部14に接続し、1系正常検知リレーCHRのコイルが非励磁となって復旧接点が閉成されているとき、2系の制御装置2bの情報波送信部21bを接続ケーブル部4aを介して車上子1aの情報波整合部13に接続し、2系の制御装置2bの電力波送信部23bを接続ケーブル部4aを介して車上子1aの電力波整合部14に接続する。また、切換制御部3aは1系の制御装置2aと2系の制御装置2bの情報波受信部22a,22bを接続ケーブル部4aを介して車上子1aの情報波整合部13に接続し、1系の制御装置2aと2系の制御装置2bの電力波受信部24a,24bを接続ケーブル部4aを介して車上子1aの電力波整合部14に接続している。
【0007】
このように制御装置を1系の制御装置2aと2系の制御装置2bの2重系にし、切換制御部3aの送信系は待機2重系にし、受信系は並列2重系にして、通常は1系の制御装置2aを主系として機能して情報波と電力波を出力し、1系の制御装置2aが故障したときに2系の制御装置2bから情報波と電力波を出力してシステムとして機能する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のように制御装置から出力される情報波や地上子からの情報波を受信する情報波送受信コイル11と電力波を送信する電力波送信コイル12を有する車上子1aは各コイルと内部回路が単1系で構成されているとともに接続ケーブル部4aも単一系で構成されているため、車上子1aの内部回路や接続ケーブル部4aに異常が発生した場合、システムとして機能しなくなる。
【0009】
この車上子1aの内部回路や接続ケーブル部4aに異常が発生してシステムとして機能しなくなることを防ぐために、特許文献1や特許文献2に示すように、車両に所定距離を隔てて車上子を2台搭載し、地上には2台の車上子と同時に対向できる位置にそれぞれ地上子をもうけて、車上子と接続ケーブル部を2重系にしたトランスポンダ車上装置が開示されている。
【0010】
しかしながら車両に2台の車上子を搭載して、2台の車上子により同時に情報波や電力波を送受信するためには、地上を追加設置する必要があり、多くの費用を要して現実的でないという問題がある。
【0011】
この発明は、このような問題を解消し、簡単な構成で車上子の整合部とその接続ケーブル部を冗長化してシステム全体の冗長化を図ることができるトランスポンダ車上子及びトランスポンダ車上装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明のトランスポンダ車上子は、トランスポンダ地上子との間の伝送用のアンテナを構成するコイルと、該コイルと外部接続ケーブルとのインピーダンス整合をとる1系の整合部と2系の整合部及び系切換手段を有し、前記系切換手段は、前記コイルに対する前記1系の整合部と2系の整合部の接続を切り換えることを特徴とする。
【0013】
この発明のトランスポンダ車上装置は、前記トランスポンダ車上子と、送信は待機2重系、受信は並列2重系で構成される1系の制御装置と2系の制御装置と、前記1系の制御装置と2系の制御装置の動作条件によって前記1系の制御装置の入出力と2系の制御装置の入出力を切り換える切換制御部及び接続ケーブル部を有するトランスポンダ車上装置であって、前記接続ケーブル部は、前記トランスポンダ車上子の1系の整合部と前記切換制御部との間を接続する1系の接続ケーブル部と、前記トランスポンダ車上子の2系の整合部と前記切換制御部との間を接続する2系の接続ケーブル部を有し、前記トランスポンダ車上子の系切換手段は、前記1系の制御装置と2系の制御装置の動作条件によって前記コイルに対する前記1系の整合部と2系の整合部の接続を切り換えることを特徴とする。
【0014】
前記1系の制御装置と2系の制御装置ともに正常に動作しているとき、前記切換制御部は、前記1系の制御装置を前記接続ケーブル部の前記1系の接続ケーブル部に接続し、前記トランスポンダ車上子の系切換手段は、前記コイルに対して前記1系の整合部を接続し、前記コイルと前記2系の整合部との接続を遮断し、前記1系の制御装置に故障が生じ、2系の制御装置が正常に動作しているとき、前記切換制御部は、前記2系の制御装置を前記接続ケーブル部の前記2系の接続ケーブル部に接続し、前記トランスポンダ車上子の系切換手段は、前記コイルに対して前記2系の整合部を接続し、前記コイルと前記1系の整合部との接続を遮断することを特徴とする。
【0015】
また、前記トランスポンダ車上子の系切換手段は、1系選択手段と2系選択手段を有し、前記1系の制御装置と2系の制御装置ともに正常に動作しているとき、前記切換制御部は、前記1系の制御装置を前記接続ケーブル部の前記1系の接続ケーブル部に接続し、前記トランスポンダ車上子の系切換手段の1系選択手段は前記コイルに対して前記1系の整合部を接続し、前記トランスポンダ車上子の系切換手段の2系選択手段は前記コイルと前記2系の整合部との接続を遮断し、前記1系の制御装置に故障が生じ、2系の制御装置が正常に動作しているとき、前記切換制御部は、前記2系の制御装置を前記接続ケーブル部の前記2系の接続ケーブル部に接続し、前記トランスポンダ車上子の系切換手段の1系選択手段は前記コイルと前記1系の整合部との接続を遮断し、前記トランスポンダ車上子の系切換手段の2系選択手段は前記コイルに対して前記2系の整合部を接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、トランスポンダ地上子との間の伝送用のトランスポンダ車上子のアンテナを構成するコイルと外部接続ケーブルとのインピーダンス整合をとる整合部を2重系にすることにより、トランスポンダ車上子の整合部の内部回路の故障に起因するシステムダウンの発生率を低減することができる。
【0017】
また、トランスポンダ車上子と2重系の制御装置との接続を切り換える切換制御部とトランスポンダ車上子を接続する接続ケーブル部も2重系にすることにより、接続ケーブル部に故障が生じた場合におけるシステムダウンの発生率を低減することができる。
【0018】
さらに、トランスポンダ車上子のアンテナを構成するコイルと外部接続ケーブルとのインピーダンス整合をとる整合部と接続ケーブル部を2重系にすることにより、2重系の制御装置を有するトランスポンダ車上装置を比較的小規模な改修工事により、トランスポンダ車上装置全体の冗長化を図ることができ、トランスポンダ車上装置の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明のトランスポンダ車上装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の他のトランスポンダ車上装置の構成を示すブロック図である。
【図3】従来のトランスポンダ車上装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、この発明のトランスポンダ車上装置の構成を示すブロック図である。図に示すように、トランスポンダ車上装置は、トランスポンダ車上子(以下、車上子という)1と、1系の制御装置2aと2系の制御装置2bを有する制御装置と、切換制御部3及び車上子1と切換制御部3との間を接続する接続ケーブル部4を有する。車上子1はトランスポンダ地上子(以下、地上子という)との間の情報波伝送用の情報波送受信コイル11と無電源地上子への電力波伝送用の電力波送信コイル12と1系の情報波整合部13aと1系の電力波整合部14a及び2系の情報波整合部13bと2系の電力波整合部14bを有し、情報波送受信コイル11と電力波送信コイル12は故障実績がないことから単一構成とした。また、情報波整合部13a,13bと電力波整合部14a,14bを待機2重系としている。
【0021】
1系の制御装置2aは、地上子に送信する情報波を発生する情報波送信部21aと、情報波送信部21aで発生した情報波が車上子1の1系の情報波整合部13aから情報波送受信コイル11に正常に出力されているか否を確認するとともに地上子から送信された情報波を受信する情報波受信部22aと、地上子に送信する電力波を発生する電力波送信部23aと、電力波送信部23aで発生した電力波が車上子1の1系の電力波整合部14aから電力波送信コイル12に正常に出力されているか否を確認する電力波受信部24a及び1系が正常に動作しているか否を示す1系正常信号出力部25aを有する。2系の制御装置2bは、地上子に送信する情報波を発生する情報波送信部21bと、情報波送信部21bで発生した情報波が車上子1の2系の情報波整合部13bから情報波送受信コイル11に正常に出力されているか否を確認するとともに地上子から送信された情報波を受信する情報波受信部22bと、地上子に送信する電力波を発生する電力波送信部23bと、電力波送信部23bで発生した電力波が車上子1の2系の電力波整合部14bから電力波送信コイル12に正常に出力されているか否を確認する電力波受信部24b及び2系が正常に動作しているか否を示す2系正常信号出力部25bを有する。
【0022】
切換制御部3は、1系の制御装置2aの1系正常信号出力部25aから1系が正常に動作していることを示す1系正常信号が出力されているときコイルが励磁して動作接点が閉成され、1系正常信号が出力されていないときコイルが非励磁となる1系正常検知リレーCHRと、2系の制御装置2bの2系正常信号出力部25bから2系が正常に動作していることを示す2系正常信号が出力され、1系正常検知リレーCHRのコイルが非励磁となり復旧接点が閉成されているときコイルが励磁して動作接点が閉成し、2系正常信号が出力されていないとき又は1系正常検知リレーCHRのコイルが励磁されているとコイルが非励磁となる2系正常検知リレーSKRを有する。
【0023】
接続ケーブル部4は、切換制御部3を車上子1の1系の情報波整合部13aと1系の電力波整合部14aに接続する1系の接続ケーブル部41aと、切換制御部3を車上子1の2系の情報波整合部13bと2系の電力波整合部14bに接続する2系の接続ケーブル部41bを有する。
【0024】
この接続ケーブル部4を介して車上子1に接続される切換制御部3は、1系正常検知リレーCHRのコイルが励磁されて動作接点が閉成されているとき、1系の制御装置2aの情報波送信部21aを接続ケーブル部41aを介して車上子1の1系の情報波整合部13aに接続し、1系の制御装置2aの電力波送信部23aを接続ケーブル部41aを介して車上子1の1系の電力波整合部14aに接続し、1系の制御装置2aの情報波受信部22aと2系の制御装置2bの情報波受信部22bとを接続ケーブル部41aを介して車上子1の1系の情報波整合部13aに接続し、1系の制御装置2aの電力波受信部24aと2系の制御装置2bの電力波受信部24bとを接続ケーブル部41aを介して車上子1の1系の電力波整合部14aに接続する。また、切換制御部3は、1系の制御装置2aが故障して1系正常検知リレーCHRが非励磁となり、2系正常検知リレーSKRのコイルが励磁されて動作接点が閉成されているとき、2系の制御装置2bの情報波送信部21bを接続ケーブル部41bを介して車上子1の2系の情報波整合部13bに接続し、2系の制御装置2bの電力波送信部23bを接続ケーブル部41bを介して車上子1の2系の電力波整合部14bに接続し、1系の制御装置2aの情報波受信部22aと2系の制御装置2bの情報波受信部22bとを接続ケーブル部41bを介して車上子1の2系の情報波整合部13bに接続し、1系の制御装置2aの電力波受信部24aと2系の制御装置2bの電力波受信部24bとを接続ケーブル部41bを介して車上子1の2系の電力波整合部14bに接続する。
【0025】
また、車上子1にも1系の制御装置2aの1系正常信号出力部25aから1系が正常に動作していることを示す1系正常信号が出力されているときコイルが励磁して動作接点が閉成され、1系正常信号が出力されていないときコイルが非励磁となり復旧接点を閉成する1系正常検知リレーCORが設けられ、1系正常信号が出力されて1系正常検知リレーCORの動作接点が閉成されているとき、情報波送受信コイル11を1系の情報波整合部13aに接続し、電力波送信コイル12を1系の電力波整合部14aに接続し、1系正常信号が出力されなくて1系正常検知リレーCORの復旧接点が閉成されているとき、情報波送受信コイル11を2系の情報波整合部13bに接続し、電力波送信コイル12を2系の電力波整合部14bに接続する。
【0026】
このトランスポンダ車上装置の1系の制御装置2aと2系の制御装置2bが正常で1系正常信号出力部25aから1系が正常に動作していることを示す1系正常信号が出力されるとともに2系正常信号出力部25bから2系が正常に動作していることを示す2系正常信号が出力されて切換制御部3に有する1系正常検知リレーCHR及び車上子1に有する1系正常検知リレーCORの動作接点が閉成され復旧接点が開放している通常の状態は、1系の制御装置2aが主系として機能し、2系の制御装置2bを従系として機能する。このとき車上子1は情報波送受信コイル11を1系正常検知リレーCORの動作接点で1系の情報波整合部13aに接続し、電力波送信コイル12を1系正常検知リレーCORの動作接点で1系の電力波整合部14aに接続して車上子1の1系の情報波整合部13aと電力波整合部14aと接続ケーブル部41aを主系側とし、情報波送受信コイル11と2系の情報波整合部13bの接続と、電力波送信コイル12と2系の電力波整合部14bの接続を1系正常検知リレーCORの復旧接点で切り離して車上子1の2系の情報波整合部13bと電力波整合部14bと接続ケーブル部41bを従系側にする。
【0027】
そして1系の制御装置2aの情報波送信部21aと電力波送信部23aから情報波と電力波を切換制御部3と1系の接続ケーブル部41aを介して車上子1の1系の情報波整合部13aと電力波整合部14aに出力して情報波送受信コイル11と電力波送信コイル12から地上子に送信する。また、地上子から送信されて車上子1の1系の情報波送受信コイル11で受信した情報波を1系の情報波整合部13aから1系の接続ケーブル部41aと切換制御部3を介して1系の制御装置2aの情報波受信部22aと2系の制御装置2bの情報波受信部22bで受信し、車上子1の1系の電力波整合部14aから電力波が電力波送信コイル12に正常に出力されていることを示す信号を1系の接続ケーブル部41aと切換制御部3を介して1系の制御装置2aの電力波受信部24aと2系の制御装置2bの電力波受信部24bで受信する。
【0028】
この1系の制御装置2aに故障が生じて1系正常信号出力部25aから1系が正常に動作していることを示す1系正常信号が出力されなくなって切換制御部3に有する1系正常検知リレーCHR及び車上子1に有する1系正常検知リレーCORのコイルが非励磁となり動作接点が開放され復旧接点が閉成されると、切換制御部3に有する2系正常検知リレーSKRのコイルが励磁されて動作接点を閉成する。車上子1に有する1系正常検知リレーCORのコイルが非励磁となり動作接点が開放され復旧接点が閉成すると車上子1は情報波送受信コイル11と1系の情報波整合部13aの接続と、電力波送信コイル12と1系の電力波整合部14aの接続を切り離し、情報波送受信コイル11を1系正常検知リレーCORの復旧接点で2系の情報波整合部13bに接続し、電力波送信コイル12を1系正常検知リレーCORの復旧接点で2系の電力波整合部14bに接続して車上子1の従系側の2系の情報波整合部13bと電力波整合部14bと2系の接続ケーブル部41bを有効にする。
【0029】
そして2系の制御装置2bの情報波送信部21bと電力波送信部23bから情報波と電力波を切換制御部3と2系の接続ケーブル部41bを介して車上子1の2系の情報波整合部13bと電力波整合部14bに出力して情報波送受信コイル11と電力波送信コイル12から地上子に送信する。また、地上子から送信されて車上子1の情報波送受信コイル11で受信した情報波を2系の情報波整合部13bから2系の接続ケーブル部41bと切換制御部3を介して1系の制御装置2aの情報波受信部22aと2系の制御装置2bの情報波受信部22bで受信し、車上子1の2系の電力波整合部14bから電力波が電力波送信コイル12に正常に出力されていることを示す信号を2系の接続ケーブル部41bと切換制御部3を介して1系の制御装置2aの電力波受信部24aと2系の制御装置2bの電力波受信部24bで受信する。
【0030】
このように制御装置を1系の制御装置2aと2系の制御装置2bとの2重系にし、切換制御部3の送信系は待機2重系にし、受信系は並列2重系にするとともに、接続ケーブル部4も1系の接続ケーブル部41aと2系の接続ケーブル部41bと待機2重系とし、車上子1の整合部も1系の情報波整合部13aと電力波整合部14a及び2系の情報波整合部13bと電力波整合部14bの2重系とすることにより、簡単な構成でトランスポンダ車上装置全体を冗長系化することができ、システムダウンの発生率を低減することができる。
【0031】
また、1系の制御装置2aが主系として動作しているときに、情報波送信部21aで発生した情報波を車上子1の1系の情報波整合部13aを経由して情報波送受信コイル11に出力し、情報波送受信コイル11に出力された情報波は再び情報波整合部13aを経由して情報波受信部22aで受信することにより、情報波整合部13aや情報波送受信コイル11や車上子1の内部配線や1系の接続ケーブル部41aの故障や断線を確認することができる。
【0032】
この1系の制御装置2aが主系として動作しているときに、車上子1の情報波整合部13aあるいは1系の接続ケーブル41aに故障が発生した場合、1系の制御装置2aの情報波受信部22aには情報波送信部21aから出力する情報波が情報波コイル11に正常に出力されていることを示す信号の入力がなく、また、車上子1の1系の電力波整合部14aあるいは1系の接続ケーブル41aに故障が発生した場合、1系の制御装置2aの電力波受信部24aには電力波送信部23aから出力する電力波が電力波コイル12に正常に出力されていることを示す信号の入力がないため、1系正常信号出力部25aから1系が正常に動作していることを示す1系正常信号が出力されなくなって、切換制御部3に有する1系正常検知リレーCHR及び車上子1に有する1系正常検知リレーCORのコイルが非励磁となり動作接点が開放され復旧接点が閉成されるから、車上子1の整合部を1系の情報波整合部13aと電力波整合部14a及び接続ケーブル41aから2系の情報波整合部13bと電力波整合部14b及び接続ケーブル41bに切り換えることができ、車上子1を安定して使用することができる。
【0033】
さらに、車上子1の情報波送受信コイル11と電力波送信コイル12を単一構成とすることにより2重系にした場合の相互干渉を防ぐことができる。
【0034】
前記説明では、車上子1に1系の制御装置2aの1系正常信号出力部25aから1系正常信号が出力されているとき動作接点が閉成され、1系正常信号が出力されていないとき復旧接点を閉成する1系正常検知リレーCORを設けた場合について説明したが、図2のブロック図に示すように、2系正常信号出力部25aから2系が正常に動作していることを示す2系正常信号が出力されているときコイルが励磁して動作接点が閉成され、2系正常信号が出力されていないときコイルが非励磁となり復旧接点を閉成する2系正常検知リレーSORを設けても良い。
【0035】
この場合、1系正常信号出力部25aから1系正常信号が出力されて1系正常検知リレーCORの動作接点が閉成されているとき、情報波送受信コイル11を1系の情報波整合部13aに接続し、電力波送信コイル12を1系の電力波整合部14aに接続し、1系正常信号が出力されなくて1系正常検知リレーCORの復旧接点が閉成され、2系正常信号出力部25bから2系正常信号が車上子1の2系正常検知リレーSORに出力されて2系正常検知リレーSORの動作接点が閉成されると情報波送受信コイル11を2系の情報波整合部13bに接続し、電力波送信コイル12を2系の電力波整合部14bに接続する。このようにして車上子1の整合部を1系の情報波整合部13aと電力波整合部14aから2系の情報波整合部13bと電力波整合部14bに切り換えることができ、車上子1を安定して使用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1;車上子、2a;1系の制御装置、2b;2系の制御装置、3;切換制御部、
4;接続ケーブル部、11;情報波送受信コイル、12;電力波送信コイル、
13a;1系の情報波整合部、13b;2系の情報波整合部、
14a;1系の電力波整合部、14b;2系の電力波整合部、
21a;1系の情報波送信部、21b;2系の情報波送信部、
22a;1系の情報波受信部、22b;2系の情報波受信部、
23a;1系の電力波送信部、23b;2系の電力波送信部、
24a;1系の電力波受信部、24b;2系の電力波受信部、
25a;1系正常信号出力部、25b;2系正常信号出力部、
41a;1系の接続ケーブル部、41b;2系の接続ケーブル部、
CHR;1系正常検知リレー、SKR;2系正常検知リレー、
COR;1系正常検知リレー、SOR;2系正常検知リレー。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】特開平6−6902号公報
【特許文献2】特開平6−90190号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスポンダ地上子との間の伝送用のアンテナを構成するコイルと、該コイルと外部接続ケーブルとのインピーダンス整合をとる1系の整合部と2系の整合部及び系切換手段を有し、
前記系切換手段は、前記コイルに対する前記1系の整合部と2系の整合部の接続を切り換えることを特徴とするトランスポンダ車上子。
【請求項2】
請求項1記載のトランスポンダ車上子と、送信は待機2重系、受信は並列2重系で構成される1系の制御装置と2系の制御装置と、前記1系の制御装置と2系の制御装置の動作条件によって前記1系の制御装置の入出力と2系の制御装置の入出力を切り換える切換制御部及び接続ケーブル部を有するトランスポンダ車上装置であって、
前記接続ケーブル部は、前記トランスポンダ車上子の1系の整合部と前記切換制御部との間を接続する1系の接続ケーブル部と、前記トランスポンダ車上子の2系の整合部と前記切換制御部との間を接続する2系の接続ケーブル部を有し、
前記トランスポンダ車上子の系切換手段は、前記1系の制御装置と2系の制御装置の動作条件によって前記コイルに対する前記1系の整合部と2系の整合部の接続を切り換えることを特徴とするトランスポンダ車上装置。
【請求項3】
前記1系の制御装置と2系の制御装置ともに正常に動作しているとき、前記切換制御部は、前記1系の制御装置を前記接続ケーブル部の前記1系の接続ケーブル部に接続し、前記トランスポンダ車上子の系切換手段は、前記コイルに対して前記1系の整合部を接続し、前記コイルと前記2系の整合部の接続を遮断し、
前記1系の制御装置に故障が生じ、2系の制御装置が正常に動作しているとき、前記切換制御部は、前記2系の制御装置を前記接続ケーブル部の前記2系の接続ケーブル部に接続し、前記トランスポンダ車上子の系切換手段は、前記コイルに対して前記2系の整合部を接続し、前記コイルと前記1系の整合部の接続を遮断することを特徴とする請求項2記載のトランスポンダ車上装置。
【請求項4】
前記トランスポンダ車上子の系切換手段は、1系選択手段と2系選択手段を有し、
前記1系の制御装置と2系の制御装置ともに正常に動作しているとき、前記切換制御部は、前記1系の制御装置を前記接続ケーブル部の前記1系の接続ケーブル部に接続し、前記トランスポンダ車上子の系切換手段の1系選択手段は前記コイルに対して前記1系の整合部を接続し、前記トランスポンダ車上子の系切換手段の2系選択手段は前記コイルと前記2系の整合部との接続を遮断し、
前記1系の制御装置に故障が生じ、2系の制御装置が正常に動作しているとき、前記切換制御部は、前記2系の制御装置を前記接続ケーブル部の前記2系の接続ケーブル部に接続し、前記トランスポンダ車上子の系切換手段の1系選択手段は前記コイルと前記1系の整合部との接続を遮断し、前記トランスポンダ車上子の系切換手段の2系選択手段は前記コイルに対して前記2系の整合部を接続することを特徴とする請求項2記載のトランスポンダ車上装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate