説明

トランドラプリル合成中間体の製造方法

本発明は、(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸及び(2R,3aS,7aR)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸からなるラセミ体、ベンジルアルコール並びに光学活性10−カンファースルホン酸を非水溶媒中で加熱して前記ラセミ体をベンジルエステル化し、同一反応系内で生成したベンジルエステル体と光学活性10−カンファースルホン酸とのジアステレオ異性体塩を、有機溶媒への溶解度差を利用して光学分割し、さらに塩基で処理することを特徴とする(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステルの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、抗高血圧薬として有用なトランドラプリルの合成中間体、すなわち下式(IIa)

で表される(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロ−2−インドリンカルボン酸ベンジルエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
前記式(IIa)の化合物は既に知られており、製造方法も開示されている。例えば、式(Ia)

で表される(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロ−2−インドリンカルボン酸及び式(Ib)

で表される(2R,3aS,7aR)−ヘキサヒドロ−2−インドリンカルボン酸からなるラセミ体とベンジルアルコールとを、塩化チオニルの存在下で反応させて前記ラセミ体のベンジルエステル塩酸塩を得(第1工程)、塩基で処理して遊離塩基とし(第2工程)、これを無水エタノール中で光学活性0,0−ジベンゾイル−L−酒石酸と反応させて2種類のジアステレオ異性体塩を形成させ、析出して来る一方の塩、すなわち(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロ−2−インドリンカルボン酸ベンジルエステルのジアステレオ異性体塩の結晶を濾取し(第3工程)、これを遊離塩基に変え(第4工程)、さらに塩酸塩とする方法が開示されている(ミケル ビンセント(Michel Vincennt)ら,ドラッグ デザイン アンド ディスカバリ(Drug Design and Discovery),(イギリス),1992,第9巻,P.11−28参照。)。
また、光学活性10−カンファースルホン酸は有力な光学分割剤の一つとして利用されている。たとえば、アンジオテンシン変換酵素阻害剤の製造過程において、10−d−カンファースルホン酸を用いてオクタヒドロインドール−2−カルボン酸エチルエステルの8種類のジアステレオマー混合物からシス体の1ジアステレオマーの塩、すなわち2−(S)−カルボエトキシ−cis,syn−オクタヒドロインドールと10−d−カンファースルホン酸とのジアステレオ塩を得る方法が開示されている(米国特許第4556655号明細書の調製4のB項、米国特許第4634689号明細書の調製3のB項及び米国特許第4783444号明細書の実施例3調製1のB項参照。)。
【発明の開示】
本発明の課題は、トランドラプリルの合成中間体である前記化合物(IIa)を、できるだけ少ない工程数で、しかも高収率で得る方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、延いてはトランドラプリルを工業的有利に得る方法を見出すため、鋭意研究した。その課程において、ともにトランス体である前記化合物(Ia)及び(Ib)からなるラセミ体のベンジルエステル化反応に光学活性10−カンファースルホン酸を用いると、光学活性10−カンファースルホン酸が、同一反応系内でエステル化(脱水)反応の酸触媒の役割と光学分割剤としての役割とを見事に果たし、その結果、前記化合物(IIa)が従来法より2工程少ない方法で簡便且つ高収率で得られた。その知見に基き、さらに検討を加えて、本発明を完成することができた。
すなわち、本発明は、
(1)(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸及び(2R,3aS,7aR)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸からなるラセミ体、ベンジルアルコール並びに光学活性10−カンファースルホン酸を非水溶媒中で加熱して前記ラセミ体をベンジルエステル化し、同一反応系内で生成したベンジルエステル体と光学活性10−カンファースルホン酸とのジアステレオ異性体塩を、有機溶媒への溶解度差を利用して光学分割し、さらに塩基で処理することを特徴とする(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステルの製造方法、
(2)光学活性10−カンファースルホン酸が(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸である(1)記載の方法、
(3)光学活性10−カンファースルホン酸が(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸である(1)記載の方法、
(4)非水溶媒がトルエンである(1)〜(3)のいずれかに記載の方法、
(5)溶解度差を利用する有機溶媒がトルエン又はトルエンとt−ブチルメチルエーテルとの混合溶媒である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法、
〈6〉(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステルと(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸とのジアステレオ異性体塩及び、
(7)(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステルと(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸とのジアステレオ異性体塩、である。
本発明の原料として用いる式(Ia)の化合物と式(Ib)の化合物からなるラセミ体は、前記非特許文献1に記載の方法により製造することができる。
本発明で用いられる非水溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ペンタン、n−オクタン等の炭化水素系の溶媒が好ましく、中でもトルエンが好ましい。
非水溶媒中での前記ラセミ体のベンジルエステル化反応において、試薬の使用量は、ラセミ体1モルに対し、通常ベンジルアルコールを1〜6モル、好ましくは2〜4モルを使用し、光学活性10−カンファースルホン酸を1〜2モル、好ましくは1〜1.2モルである。
光学活性10−カンファースルホン酸は、(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸若しくは(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸又はそれらの水和物の何れも好適に使用できるが、より好ましくは(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸又はその水和物である。
前記ラセミ体のベンジルエステル化反応の温度は、通常、加熱して非水溶媒が還流する温度で行うが、好ましくは100℃〜150℃である。この反応は、副生する水を分離する装置を付した容器中で行うとよい。
生成したジアステレオ異性体塩を光学分割する際、溶解度差を利用するための有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ペンタン、n−オクタン等の炭化水素系の溶媒、ジェチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系の溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系の溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の溶媒、イソプロパノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系の溶媒、水、あるいはそれらの2種以上の混合溶媒が使用できる。好ましい混合溶媒としては、トルエン単独又はトルエンとt−ブチルメチルエーテルとの混合溶媒を挙げることができる。その混合溶媒の好ましい混合比率は、トルエン1容量に対しt−ブチルメチルエーテルが0.1〜3容量程度である。
本発明において、非水溶媒としてトルエン、光学活性10−カンファースルホン酸として(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸を用い、光学分割する際の溶媒としてトルエンとt−ブチルメチルエーテルを用いた例で、さらに説明すれば次ぎの如くである。
前記ラセミ体、ベンジルアルコール及び前記スルホン酸のトルエン溶液を攪拌しながら加熱還流し、理論量の水を分離したところで、トルエンをその使用量の約3分の2留去し、放冷後、留去したトルエンとほぼ同量のt−ブチルメチルエーテルを加え、攪拌すると、(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステルと(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸とのジアステレオ異性体塩が析出する。これを濾取すると、理論収率65〜85%で、光学純度90〜98%e.e.のものが得られる。さらにトルエン又は前記混合溶媒中で再結晶すれば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で測定して実質100%e.e.とすることができる。このジアステレオ異性体塩を塩基で処理、例えば炭酸ナトリウム水溶液で常法により処理すれば、遊離塩基として目的物が得られる。
エステル化反応後の光学分割は、生成したラセミ体の両ジアステレオ異性体塩を一旦取り出し、前記溶媒に溶解し晶出させる方法によっても、同様の結果が得られる。
また、光学活性10−カンファースルホン酸として(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸を使用する以外は前記と同様にしてエステル化し、光学分割の操作を行うと、最初に一方の(2R,3aS,7aR)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステルと(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸とのジアステレオ異性体塩が析出する。したがって、これを濾過して除き、その濾液から(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステルと(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸とのジアステレオ異性体塩を取り出せば、以下前記と同様に処理して、ほぼ同様の結果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に実施例、参考例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
(1)ジーン・スターク水分離器とジムロートコンデンサーを備えたフラスコにトルエン340mlを注ぎ、(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸と(2R,3aS,7aR)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸からなるラセミ体33.85g(0.2モル)、ベンジルアルコール64.9g(0.6モル)及び(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸48.8g(0.21モル)を加えた。この混合液を攪拌しながら加熱還流させ、理論量の水が分離したところで水を除去し、加熱、攪拌を継続して約240mlの溶媒を留去した。次いで放冷し、攪拌しながらt−ブチルメチルエーテル240mlを注加して室温下で放置した。析出した結晶を濾取し、トルエンとt−ブチルメチルエーテルで順次洗浄後、乾燥させて粗結晶43.9gを得た。
(2)前記粗結晶43.8gをトルエン450mlに加熱溶解させ、攪拌しながら放冷し、析出した結晶を濾取、乾燥させて白色結晶の(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステルと(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸とのジアステレオ異性体塩40.8gを得た。融点173.3℃
(3)前記白色結晶40g(0.0814モル)をt−ブチルメチルエーテル200mlと水40mlとの混液に加え、攪拌しながら10.6%の炭酸ナトリウム水溶液82ml(炭酸ナトリウムとして0.082モル)を滴下した。滴下終了後約10分後に攪拌を止め、分離した有機層を分取した。その有機層を水洗、乾燥後、溶媒を減圧留去し、白色結晶の(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステル21.0g(0.0811モル:原料のラセミ体からの理論収率82.9%)を得た。HPLC法による光学純度100%e.e. 融点56.7℃
IRv max cm−1(nujol):3278(NH);1736(C=0)
NMR(DMSO−d)δ(ppm):0.9〜1.2(5H,m),1.5〜1.7(3H,m),1.7〜2.0(3H,m),2.0〜2.3(1H,m),2.53(1H,bs),3.70〜3.75(1H,dd),5.0〜5.15(2H,dd,O−CH−Ar),7.2〜7.4(5H,m,Ar−H)
MASS m/z:259(M
【実施例2】
(1)ジーン・スターク水分離器とジムロートコンデンサーを備えたフラスコにトルエン680mlを注ぎ、(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸と(2R,3aS,7aR)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸からなるラセミ体67.69g(0.4モル)、ベンジルアルコール129.77g(1.2モル)及び(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸97.57g(0.42モル)を加えた。この混合液を攪拌しながら加熱還流させ、理論量の水が分離したところで水を除去し、加熱・攪拌を継続して減圧下に約650mlの溶媒を留去した。次いで約60℃で攪拌しながらt−ブチルメチルエーテル800mlを注加して室温下で攪拌した。析出した結晶を濾取し、トルエンとt−ブチルメチルエーテルで順次洗浄後、乾燥させて粗結晶189.5gを得た。融点132.1℃
(2)前記粗結晶189.5gをトルエン5670mlに加熱溶解させた。この溶液を約25℃まで冷却して攪拌を継続し、析出した結晶を濾取した。次いで、t−ブチルメチルエーテルで洗浄して得られた結晶77gをトルエン800mlに加熱溶解させた。その後約25℃まで冷却して攪拌を継続し、析出した結晶を濾取・乾燥させて白色結晶の(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステルと(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸とのジアステレオ異性体塩63.5gを得た。融点173.3℃
(3)前記白色結晶63.5g(0.129モル)をt−ブチルメチルエーテル315mlと水63mlとの混液に加え、攪拌しながら10.6%の炭酸ナトリウム水溶液130ml(炭酸ナトリウムとして0.13モル)を滴下した。滴下終了後約10分後に攪拌を止め、分離した有機層を分取した。その有機層を水洗、乾燥後、溶媒を減圧留去し、白色結晶の(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステル33.2g(0.128モル:原料のラセミ体からの理論収率64.0%)を得た。HPLC法による光学純度99.9%e.e. 融点56.7℃
本品のIR、NMR及びMASSのデータは実施例1(3)の各データと一致した。
【実施例3】
(1)ジーン・スターク水分離器とジムロートコンデンサーを備えたフラスコにトルエン30mlを注ぎ、(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸及び(2R,3aS,7aR)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸からなるラセミ体3.4g(0.02モル)、ベンジルアルコール5.0g(0.046モル)及び(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸4.9g(0.021モル)を加えた。この混合液を攪拌しながら加熱還流させ、理論量の水が分離したところで水を除去し、加熱・攪拌を継続して約20mlの溶媒を留去した。
次いで放冷し、攪拌しながらt−ブチルメチルエーテル20mlを注加して室温下で放置した。析出した結晶を濾取し、粗結晶3.8gを除いた。濾液を減圧濃縮し、残留物にトルエンとt−ブチルメチルエーテルの混液(容量比:トルエン1、t−ブチルメチルエーテル 4)を20ml加え、均一溶液とし室温で放置した。析出した結晶を濾取し、トルエンとt−ブチルメチルエーテルで洗浄して粗結晶3.4gを得た。
(2)前記粗結晶3.4gをトルエン15mlに加熱溶解させ、t−ブチルメチルエーテル10mlを加えて攪拌しながら放冷し、析出した結晶を濾取、乾燥させて白色結晶の(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステルと(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸とのジアステレオ異性体塩3.2gを得た。融点142.5℃
(3)前記塩3.2g(0.0651モル)を遊離塩基とするため実施例1(3)と同様に操作して、(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステル1.68g(0.00648モル:原料のラセミ体からの理論収率64.8%)を得た。HPLC法による光学純度100%e.e.融点56.7℃
本品のIR、NMR及びMASSのデータは実施例1(3)の各データと一致した。
参考例(トランドラプリルの合成)
(1)前記実施例1で得た(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロ−2−インドリンカルボン酸ベンジルエステル5.19g(0.02モル)をトルエン25mlに溶解後、室温下で攪拌しながら、N−[1−(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル]−L−アラニル・N−カルボキシ無水物6.11g(0.02モル)をトルエン15mlに溶解した液を滴下した。攪拌継続中にガスが発生した。ガス発生が止んでさらに1時間室温下で攪拌後、5重量%の炭酸水素ナトリウム水溶液35mlを滴下した。その滴下後さらに1時間攪拌を継続した後、有機層を分離し、水洗後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、加温下で溶媒を減圧留去して(2S,3aR,7aS)−1−[(S)−N−[(S)−1−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル]アラニル]ヘキサヒドロ−2−インドリンカルボン酸ベンジルエステルを淡黄色の油状物として10.5g得た(HPLC法による面積百分率92.8%;換算収率93.6%)。
IRv max cm−1(film):3318(NH);2932,2856(CH);1742,1648(C=0)
NMR(DMSO−d)δ(ppm):1.03(3H,d,C−CH),1.16(3H,q,O−CHCH),2.52(2H,q,Ar−CHCH−),3.80〜4.15(2H,m,O−CHCH),4.53(1H,dd),5.00〜5.15(2H,m,O−CH−Ar),7.11〜7.27(5H,m,Ar−H),7.27〜7.40(5H,m,Ar−H)
MASS m/z:520(M
(2)前記淡黄色の油状物10.0g(0.0178モル)を、エタノール中、5%バラジウム炭素触媒(約50%含水)の存在下に接触還元して(2S,3aR,7a)−1−[(S)−N−[(S)−1−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル]アラニル]ヘキサヒドロ−2−インドリンカルボン酸、すなわちトランドラプリルの白色結晶6.67g(収率87%)を得た。融点124.2℃
旋光度[α]20:−18.6°[乾燥後、0.15g、エタノール(99.5)、15ml、100mm]
IRv max cm−1(nujol):3278(NH);1736、1654(C=0)
NMR(DMSO−d)δ(ppm):1.0〜2.05(18H,m),2.15〜3.6(6H,m),3.95〜4.2(2H,m),4.25〜4.4(1H,m),7.0〜7.4(5H,m,Ar−H)
MASS m/z:430(M
【産業上の利用可能性】
本発明は、トランドラプリルの合成中間体である前記化合物(IIa)を、(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロ−2−インドリンカルボン酸及び(2R,3aS,7aR)−ヘキサヒドロ−2−インドリンカルボン酸からなるラセミ体のベンジルエステル化とジアステレオ異性体塩の生成、光学分割工程を、実質1工程で操作できるため、従来方法と比べ2工程少ない方法で、しかも高収率で得ることができるので、工業的に極めて有利な方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸及び(2R,3aS,7aR)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸からなるラセミ体、ベンジルアルコール並びに光学活性10−カンファースルホン酸を非水溶媒中で加熱して前記ラセミ体をベンジルエステル化し、同一反応系内で生成したベンジルエステル体と光学活性10−カンファースルホン酸とのジアステレオ異性体塩を、有機溶媒への溶解度差を利用して光学分割し、さらに塩基で処理することを特徴とする(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステルの製造方法。
【請求項2】
光学活性10−カンファースルホン酸が(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸である請求の範囲1記載の方法。
【請求項3】
光学活性10−カンファースルホン酸が(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸である請求の範囲1記載の方法。
【請求項4】
非水溶媒がトルエンである請求の範囲1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
溶解度差を利用する有機溶媒がトルエン又はトルエンとt−ブチルメチルエーテルとの混合溶媒である請求の範囲1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステルと(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸とのジアステレオ異性体塩。
【請求項7】
(2S,3aR,7aS)−ヘキサヒドロインドリン−2−カルボン酸ベンジルエステルと(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸とのジアステレオ異性体塩。

【国際公開番号】WO2004/065368
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508072(P2005−508072)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000374
【国際出願日】平成16年1月19日(2004.1.19)
【出願人】(593030071)大原薬品工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】