説明

トリアゾール金属錯体を含有する組成物、液晶性ゲル及びそれらを用いた表示デバイス

【課題】一次元性を失わずにゲル状態を安定に維持することができる組成物、液晶性ゲル、および、それらを用いた表示デバイスを提供する。
【解決手段】トリアゾール金属錯体一般式(1)と置換されてもよい5員環又は置換されてもよい6員環を有し、好ましくは、フェニルシクロヘキサン構造を有する化合物の一又は複数の液晶性化合物とを含有する組成物、該組成物がゲル状となった液晶性ゲル、そしてこれらを用いて作製される光学素子及び表示デバイスを提供する。


(式中、Mは金属であり、Xはアニオンである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアゾール金属錯体を含有する組成物、液晶性ゲル、それらを用いた表示デバイスなどに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子の高性能化は、情報化社会の進展に伴い不可欠となっている。また、液晶ディスプレイは、その用途範囲が広いため、様々なニーズに対応させて、液晶素子のスイッチングモードや駆動方式などデバイス面から、液晶材料そのものや液晶表示素子を構成する部材などの材料面まで膨大な研究開発、改良がなされてきている。例えば、表示材料においては、よりすぐれた表示材料とするため、液晶性化合物と他の物質とを組み合わせた様々な組成物が提案、開発されている。
【0003】
液晶性化合物と他の物質とを組み合わせた組成物としては、たとえば、液晶性化合物と高分子樹脂との複合系、液晶性化合物と高分子前駆体との混合系からの複合系の作製(H.Kikuchi et al, Nature Mat.,2002,1,64)、および、液晶性化合物とゲル化物質との複合系(T.Kato et al, Adv.Mater.1999,11,392)などがあげられる。なかでも、ゲル化剤と液晶性化合物との複合系(液晶性ゲル)は、非固定性や柔軟性等を有するといった特徴を備え、液晶性材料を用いた新しい複合系材料として注目されている。
【0004】
この液晶性ゲルという概念は、1990年代始めから報告されている(例えばLiq.Cryst.,10,5,733(1991))が、これらの報告では、液晶中にポリマーが分散し、このポリマーに液晶分子が取りこまれることにより材料全体として流動性を失ったゲルとなることが示されている。しかしながら、最近では、ポリマーではなく、低分子のゲル化剤を用いた液晶性ゲル(特開平11−52341号公報、特開2000−239663号公報)が提案されている。
【0005】
このような液晶性ゲルは、ゲル化剤の添加量が、ポリマー分散型液晶のポリマー含有量と比べると極めて少ないため、微細なサイズの繊維会合体が形成できることや、少量で液晶性化合物の流動性を消失させることができるのが特徴である。このような特徴を生かして、液晶性ゲルをスイッチング素子に利用し、応答速度などのスイッチング特性を制御、改良する技術が報告されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−52341号公報
【特許文献2】特開2000−239663号公報
【非特許文献1】H.Kikuchi et al, Nature Mat., 1,64(2002)
【非特許文献2】T.Kato et al, Adv.Mater. 11,392(1999)
【非特許文献3】Liq.Cryst.,10,5,733(1991)
【非特許文献4】J.Am.Chem.Soc., 126,2016-2021(2004)
【非特許文献5】N.Kimizuka et al, CSJ national meeting, 1999
【非特許文献6】君塚信夫、科学と工業,74(10),483-488(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、一次元遷移金属からなる錯体、例えば、トリアゾール系の金属錯体は、「自己組織性を有する分子ワイヤー」として知られている(J.Am.Chem.Soc., 126,2016(2004);N.Kimizuka et al, CSJ national meeting, 1999;君塚信夫、科学と工業,74(10),483-488(2000))。この金属錯体は、サーモクロミズムを有することや、例えばクロロホルムなどの溶媒中においてもその一次元性を失わないことなどが、知られている。しかしながら、この金属錯体を液晶性化合物と混合して、組成物を得ることは知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、下記一般式(1)で表されるトリアゾール金属錯体と一又は複数の液晶性化合物とを含有する組成物が、光学素子用の液晶構成材料として優れた特性を有することを見出した。すなわち本発明は、以下のようなトリアゾール金属錯体を含有する組成物、液晶性ゲル及びそれらを用いた表示を提供する。
【0009】
[1] 下記一般式(1)で表されるトリアゾール金属錯体と、一又は複数の液晶性化合物とを含有する組成物。
【化4】

(式中、
Rは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいアルコキシアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいアリールアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアルキルチオ、置換されていてもよいアリールチオ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいボリル、置換されていてもよいシリル、ハロゲン、シアノ、ニトロまたはヒドロキシルであり、
Mは金属であり、Xはアニオンであり、そして、nはXが2価のアニオンの場合には1であり、1価のアニオンの場合には2である。)
【0010】
[2] Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキル、炭素数2〜20の置換されていてもよいアルケニル、炭素数2〜20の置換されていてもよいアルキニル、炭素数2〜30の置換されていてもよいアルコキシアルキル、炭素数1〜30の置換されていてもよいアルコキシ、炭素数5〜30の置換されていてもよいアリール、炭素数7〜20の置換されていてもよいアラルキル、炭素数6〜30の置換されていてもよいアリールアルキル、炭素数2〜30の置換されていてもよいヘテロアリール、炭素数3〜10の置換されていてもよいシクロアルキル、炭素数6〜20の置換されていてもよいアリールオキシ、炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキルチオ、炭素数6〜30の置換されていてもよいアリールチオ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいボリル、置換されていてもよいシリル、ハロゲン、シアノ、ニトロまたはヒドロキシルであり、
Mは金属であり、そして、XはF,Cl,Br,I,At,BF,NO,ClO,CHCOO,HCOO,HPO,HSO,HSO,OH,CN,SCN,CO2−,SO2−,SO2−,S2−,C2−,CrO2−又はHPO2−である、
上記[1]に記載する組成物。
【0011】
[3] Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数2〜20のアルキニル、炭素数2〜30のアルコキシアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、炭素数5〜30のアリール、炭素数7〜20のアラルキル、炭素数6〜30のアリールアルキル、炭素数2〜30のヘテロアリール、炭素数3〜10のシクロアルキル、炭素数6〜20のアリールオキシ、炭素数1〜20のアルキルチオ、炭素数6〜30のアリールチオ、アミノ、ボリル、シリル、ハロゲン、シアノ、ニトロまたはヒドロキシルであり、
Mは金属であり、そして、XはF,Cl,Br,I,BF,NO,ClO,CN,SCN又はSO2−である、
上記[1]に記載する組成物。
【0012】
[4] Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数2〜20のアルキニル、炭素数2〜30のアルコキシアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、または、炭素数1〜20のアルキルチオであり、
Mは遷移金属であり、そして、XはF,Cl,Br,I,BF,NO又はClOである、
上記[1]に記載する組成物。
【0013】
[5] Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数2〜12のアルキニル、炭素数5〜25のアルコキシアルキル、炭素数5〜25のアルコキシ、炭素数7〜15のアラルキル、または、炭素数1〜15のアルキルチオであり、
Mは遷移金属であり、そして、XはF,Cl,Br,I,BF,NO又はClOである、
上記[1]に記載する組成物。
【0014】
[6] Rは、炭素数5〜25のアルコキシアルキルであり、
MはFe,Co,Cu,Ni又はRuであり、そして、XはCl又はBrである、
上記[1]に記載する組成物。
【0015】
[7] Rは、エーテル結合を1個有する炭素数5〜25のアルコキシアルキルであり、
MはFe,Co,Cu,Ni又はRuであり、そして、XはCl又はBrである、
上記[1]に記載する組成物。
【0016】
[8] Rは、−C−O−C1225であり、
MはFe又はCoであり、そして、XはClである、
上記[1]に記載する組成物。
【0017】
[9] 前記液晶性化合物は、下記一般式(2)で表される化合物である、上記[1]ないし[8]のいずれかに記載する組成物。
【化5】

(式中、
は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシであり、
は、それぞれ独立して、ハロゲン、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルコキシ又は置換されていてもよいアルコキシアルキルであり、
環構造A又はAは、それぞれ独立して、置換されてもよい5員環又は置換されてもよい6員環であり、
pは1又は2であり、そして、qは1,2,3,4又は5である。)
【0018】
[10] Rは、水素、炭素数1〜9のアルキル、炭素数1〜9のアルケニル、炭素数1〜9のアルキニル又は炭素数1〜9のアルコキシであり、
は、それぞれ独立して、F,Cl,Br,I、炭素数1〜9のアルキル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数1〜9のアルコキシアルキル、ハロゲン化された炭素数1〜9のアルキル、ハロゲン化された炭素数1〜9のアルコキシ又はハロゲン化された炭素数1〜9のアルコキシアルキルであり、
環構造A又はAは、それぞれ独立して、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環又はピリダジン環であり、それらは一個または複数個のハロゲンで置換されていてもよく、
pは1又は2であり、そして、qは1,2又は3である、
上記[9]に記載する組成物。
【0019】
[11] Rは、水素、炭素数1〜7のアルキル、炭素数1〜7のアルケニル又は炭素数1〜7のアルキニルであり、
は、それぞれ独立して、F,Cl、炭素数1〜9のアルキル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数1〜9のアルコキシアルキル、ハロゲン化された炭素数1〜9のアルキル、ハロゲン化された炭素数1〜9のアルコキシ又はハロゲン化された炭素数1〜9のアルコキシアルキルであり、
環構造A又はAは、それぞれ独立して、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環又はピリダジン環であり、それらは一個または複数個のハロゲンで置換されていてもよく、
pは2であり、そして、qは1,2又は3である、
上記[9]に記載する組成物。
【0020】
[12] 前記液晶性化合物は、下記式(2−1)、(2−2)又は(2−3)で表される化合物のうち少なくとも1種である、上記[9]に記載する組成物。
【化6】

【0021】
[13] 前記液晶性化合物は、上記式(2−1)で表される化合物を25重量%、上記(2−2)で表される化合物を25重量%及び上記(2−3)で表される化合物を50重量%混合してなる混合物である、上記[12]に記載する組成物。
【0022】
[14] 上記[1]ないし[13]のいずれかに記載する組成物がゲル状となった液晶性ゲル。
【0023】
[15] 更に、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、ミスチルアルコールから選ばれる溶媒の少なくとも一種を含有する、上記[1]ないし[14]のいずれかに記載する組成物又は液晶性ゲル。
【0024】
[16] 上記[1]ないし[15]のいずれかに記載する組成物又は液晶性ゲルを含有する層を有する、光学素子。
【0025】
[17] 上記[16]に記載する光学素子を複数個有する、表示デバイス。
【発明の効果】
【0026】
本発明の好ましい態様によれば、従来の高分子又はゲル化剤と液晶性化合物との組成物に対する比較では、精密なナノファイバー構造を構築することができるという利点、金属錯体のクロロホルム溶液に対する比較では、温度を変化させても液晶性ゲルを安定に維持することができるという利点を有する。ナノファイバー構造の構築については、液晶性化合物の配向性を利用することにより、該ナノファイバーの配列制御を行い、例えば導電性フィルムの作製に応用することができる可能性がある。また、本発明の好ましい態様に係る液晶性ゲルは、それ自体がサーモクロミズムを発現するため、これを温度可変の表示デバイスやセンサーなどとして応用することができる可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明にかかるトリアゾール金属錯体を含有する組成物、液晶性ゲル及びそれらを用いた表示デバイスについて詳細に説明する。
【0028】
1.組成物
まず、本発明の組成物について説明する。
本発明に係る組成物は、前記一般式(1)で表されるトリアゾール金属錯体と、一又は複数の液晶性化合物とを含有する組成物である。
【0029】
1−1.一般式(1)で表されるトリアゾール金属錯体
本発明で用いられるトリアゾール金属錯体は、前記一般式(1)で表される。
【0030】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいアルキル」の「アルキル」としては、直鎖、分枝鎖、環状のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキルまたは環状のアルキルがあげられる。好ましい「アルキル」は、炭素数1〜12のアルキルである。より好ましい「アルキル」は、炭素数1〜6のアルキルである。特に好ましい「アルキル」は、炭素数1〜4のアルキルである。具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、シクロヘプチル、オクチル、シクロオクチルなどがあげられる。
【0031】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいアルケニル」の「アルケニル」としては、直鎖でも分枝鎖でもよく、例えば、炭素数2〜20の直鎖もしくは分枝鎖状のアルケニルがあげられる。好ましい「アルケニル」は、炭素数2〜12のアルケニルである。より好ましい「アルケニル」は、炭素数2〜6のアルケニルである。特に好ましい「アルケニル」は、炭素数2〜4のアルケニルである。具体的には、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ゲラニル、ファルネシルなどがあげられる。
【0032】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいアルキニル」の「アルキニル」としては、直鎖でも分枝鎖でもよく、例えば、炭素数2〜20の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキニルがあげられる。好ましい「アルキニル」は、炭素数2〜12のアルキニルである。より好ましい「アルキニル」は、炭素数2〜6のアルキニルである。特に好ましい「アルキニル」は、炭素数2〜4のアルキニルである。具体的には、エチニル、プロピニル、ブチニルなどがあげられる。
【0033】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいアルコキシアルキル」の「アルコキシアルキル」としては、直鎖、分枝鎖、環状のいずれでもよく、例えば、炭素数2〜30の直鎖もしくは分枝鎖状のアルコキシアルキルまたは環状のアルコキシアルキルがあげられる。好ましい「アルコキシアルキル」は、炭素数5〜25のアルコキシアルキルである。より好ましい「アルコキシアルキル」は、炭素数10〜20のアルコキシアルキルである。特に好ましい「アルコキシアルキル」は、炭素数13〜17のアルコキシアルキルである。また、鎖の途中で炭素をつなぐ酸素は1〜4個、好ましくは1〜2個、より好ましくは1個である。具体的な「アルコキシアルキル」としては、−COC17、−COC19、−COC1021、−COC1123、−COC1225、−COC1327、−COC1429、−COC1531、−COC1633や、−COC17、−COC19、−COC1021、−COC1123、−COC1225、−COC1327、−COC1429、−COC1531、−COC1633や、−COC17、−COC19、−COC1021、−COC1123、−COC1225、−COC1327、−COC1429、−COC1531、−COC1633などがあげられる。
【0034】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいアルコキシ」の「アルコキシ」としては、例えば、炭素数1〜30のアルコキシがあげられる。好ましい「アルコキシ」は、炭素数5〜25のアルコキシである。さらに好ましい「アルコキシ」は、炭素数10〜20のアルコキシである。具体的な「アルコキシ」としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、シクロペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、シクロヘプチルオキシ、オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、フェノキシなどがあげられる。
【0035】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数5〜30のアリールがあげられる。好ましい「アリール」は、炭素数5〜25のアリールである。さらに好ましい「アリール」は、炭素数5〜20のアリールである。特に好ましい「アリール」は、フェニルまたはナフチルである。具体的な「アリール」としては、フェニル、トリル、キシリル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ターフェニリル、フルオレニル、ピレニルなどがあげられる。
【0036】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいアラルキル」の「アラルキル」としては、炭素数7〜20の置換されていてもよいアラルキルがあげられる。好ましい「アラルキル」は、炭素数7〜15のアラルキルである。さらに好ましい「アラルキル」は、炭素数7〜10のアラルキルである。具体的な「アラルキル」としては、ベンジル、フェニルエチル、メチルベンジル(トルベンジル)、ノフチルメチル(メナフチル)などがあげられる。
【0037】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいアリールアルキル」の「アリールアルキル」としては、炭素数6〜30のアリールアルキルがあげられる。好ましい「アリールアルキル」は、炭素数6〜25のアリールアルキルである。さらに好ましい「アリールアルキル」は、炭素数6〜20のアリールアルキルである。具体的な「アリールアルキル」としては、アリールメチル、アリールエチルなどがあげられ、ここで「アリール」とは上述するアリールと同様のものを適用することができる。
【0038】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環基などがあげられる。ヘテロ原子以外の構成原子である炭素原子に着目すれば、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリール、好ましくは、炭素数2〜25のヘテロアリール、さらに好ましくは、炭素数2〜20のヘテロアリールがあげられる。ここで「アリール」とは上述するアリールと同様のものを適用することができる。
【0039】
「複素環基」としては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどがあげられ、例えばフリル、チエニル、ピロリルなどが好ましい。
【0040】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいシクロアルキル」の「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3〜10のシクロアルキルがあげられる。好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜8のシクロアルキルである。さらに好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜5のシクロアルキルである。具体的な「シクロアルキル」として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチルなどがあげられる。
【0041】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいアリールオキシ」の「アリールオキシ」としては、炭素数6〜20のアリールオキシがあげられる。好ましい「アリールオキシ」は、炭素数6〜16のアリールオキシである。さらに好ましい「アリールオキシ」は、炭素数6〜13のアリールオキシである。ここで「アリール」とは上述するアリールと同様のものを適用することができる。具体的な「アリールオキシ」としては、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、アントラセニルオキシ、フェナントリルオキシなどがあげられる。
【0042】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいアルキルチオ」の「アルキルチオ」としては、炭素数1〜20のアルキルチオがあげられる。好ましい「アルキルチオ」は、炭素数1〜15のアルキルチオである。さらに好ましい「アルキルチオ」は、炭素数1〜10のアルキルチオである。具体的な「アルキルチオ」としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、s−ブチルチオ、t−ブチルチオ、ペンチルチオ、シクロペンチルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、シクロヘプチルチオ、オクチルチオ、シクロオクチルチオなどがあげられる。
【0043】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいアリールチオ」の「アリールチオ」としては、炭素数6〜30のアリールチオがあげられる。好ましい「アリールチオ」は、炭素数6〜25のアリールチオである。さらに好ましい「アリールチオ」は、炭素数6〜20のアリールチオである。ここで「アリール」とは上述するアリールと同様のものを適用することができる。具体的な「アリールチオ」としては、フェニルチオ、ナフチルチオ、アントラセニルチオ、フェナントリルチオなどがあげられる。
【0044】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいアミノ」としては、具体的には、アミノ;メチルアミノ、エチルアミノ、シクロヘキシルアミノ、アセチルアミノなどのアルキルアミノ;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノなどのジアルキルアミノ;ジフェニルアミノなどのジアリールアミノなどがあげられる。
【0045】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいボリル」としては、具体的には、ジフェニルボリル、ジトリルボリル、ジメシチルボリル、ジアントリルボリル、アントリルメシチルボリルなどのジアリールボリルなどがあげられる。置換ボリルの「置換基」としては、例えば、オルトジ置換フェニルがあげられる。具体的な「置換基」としては、キシリル、メシチル、ジイソプロピルフェニル、トリイソプロピルフェニル、ターフェニルなどがあげられる。
【0046】
一般式(1)のRにおける「置換されていてもよいシリル」としては、具体的には、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリフェニルシリルなどのトリアルキルシリルや、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリブトキシシリル基などのアルコキシシシリル基があげられる。
【0047】
一般式(1)のRにおける「ハロゲン」としては、F、Cl、Br、Iなどがあげられる。
【0048】
一般式(1)のRにおける「置換基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、シクロヘプチル、オクチル、シクロオクチル、トリフルオロメチルなどのアルキル;フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリルなどのアリール;メチルフェニル、エチルフェニル、s−ブチルフェニル、t−ブチルフェニル、1−メチルナフチル、2−メチルナフチル、4−メチルナフチル、1,6−ジメチルナフチル、4−t−ブチルナフチルなどのアルキルアリール;ピリジル、キナゾリニル、キノリル、ピリミジニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、テトラゾリル、フェナントロリニルなどのヘテロ環;シアノなどがあげられる。置換基の数は、例えば、最大置換可能な数であり、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個である。
【0049】
一般式(1)のMとしては、全ての金属イオン、金属種として例えばMg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,ランタノイド系,アクチノイド系,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Tc,Re,Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,Hg,Al,Ga,In,Tl,Ge,Sn,Pbなどがあげられ、好ましくは遷移金属であり、より好ましくはFe,Co,Cu,Ni又はRuであり、更に好ましくはFe又はCoである。
【0050】
一般式(1)のXとしては、アニオンがあげられ、例えば、F,Cl,Br,I又はAtのハロゲン系やBF,NO,ClO,CHCOO,HCOO,HPO,HSO,HSO,OH,CN,SCN,CO2−,SO2−,SO2−,S2−,C2−,CrO2−又はHPO2−などがあげられる。好ましいアニオンはF,Cl,Br,I,BF,NO又はClOであり、より好ましくはCl又はBrであり、更に好ましくはClである。
【0051】
1−2.一般式(1)で表されるトリアゾール金属錯体の製造方法
本発明で用いられるトリアゾール金属錯体は、公知の化合物を用いて公知の製造方法により製造することができる。例えば、上記非特許文献4(J.Am.Chem.Soc., 126,2016-2021(2004))の中であげられている文献(8)(文献(8):Kimizuka, N. et al. Polymer Preprints Jpn. 2000, 49, 3774、Shibata, T. et al. The 76th CSJ National Meeting; 4F137, Yokohama, 1999)及び文献(9)(文献(9):Armand, F. et al. Langmuir 1995, 11, 3467)に記載されている製造方法及びこの製造方法を元に当業者の技術常識の範囲内で変更した製造方法により製造することができる。
【0052】
1−3.上記トリアゾール金属錯体と複合する液晶性化合物
本発明で用いられる「液晶性化合物」とは、液晶性を有する化合物のことである。本発明で用いられる液晶性化合物は、この液晶性を有する化合物であれば特に限定されず、サーモトロピック液晶であってもよいし、リオトロピック液晶であってもよい。
【0053】
本発明で用いられる液晶性化合物は、前記一般式(2)で表される。
【0054】
一般式(2)のRにおける「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」又は「アルコキシ」としては、一般式(1)で説明したものと同様のものがあげられる。好ましい「アルキル」としては、炭素数1〜9のアルキルであり、より好ましくは炭素数1〜7のアルキルである。好ましい「アルケニル」としては、炭素数1〜9のアルケニルであり、より好ましくは炭素数1〜7のアルケニルである。好ましい「アルキニル」としては、炭素数1〜9のアルキニルであり、より好ましくは炭素数1〜7のアルキニルである。好ましい「アルコキシ」としては、炭素数1〜9のアルコキシがあげられる。
【0055】
一般式(2)のRにおける「置換されていてもよいアルキル」、「置換されていてもよいアルケニル」「置換されていてもよいアルコキシ」又は「置換されていてもよいアルコキシアルキル」としては、一般式(1)で説明したものと同様のものがあげられる。
【0056】
好ましい「アルキル」としては、炭素数1〜9のアルキル又は炭素数1〜9のハロゲン化アルキルであり、より好ましくは炭素数1〜7のアルキル又は炭素数1〜7のハロゲン化アルキルである。好ましい「アルコキシ」としては、炭素数1〜9のアルコキシ又は炭素数1〜9のハロゲン化アルコキシであり、より好ましくは炭素数1〜7のアルコキシ又は炭素数1〜7のハロゲン化アルコキシである。好ましい「アルコキシアルキル」としては、炭素数1〜9のアルコキシアルキル又は炭素数1〜9のハロゲン化アルコキシアルキルであり、より好ましくは炭素数1〜7のアルコキシアルキル又は炭素数1〜7のハロゲン化アルコキシアルキルである。
【0057】
一般式(2)の環構造A又はAとしては、それぞれ独立して、置換されていてもよい5員環又は置換されていてもよい6員環があげられるが、好ましくはシクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環又はピリダジン環であり、より好ましくはシクロヘキサン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環又はピリダジン環である。また、環構造A又はAは、それぞれ独立して、一個又は複数個のハロゲンで置換されていてもよい。
【0058】
一般式(2)のpは1又は2であり、好ましくは2である。pが2の場合には、一般式(2)で表される液晶性化合物は全部で3つの環構造が結合したものになるが、この場合には3つの環構造がメソゲンとして機能すべく、全体として直線状となるように結合することが好ましい。一般式(2)のqは1,2,3,4又は5であり、好ましくは1,2又は3である。
【0059】
一般式(2)で表される液晶性化合物のうち、特に好ましい化合物は、上記式(2−1)、(2−2)又は(2−3)で表される化合物であり、これらの混合物であってもよい。混合物である場合の混合比としては、上記式(2−1)で表される化合物が20〜30重量%、上記(2−2)で表される化合物が20〜30重量%及び上記(2−3)で表される化合物が40〜60重量%である(全体で100重量%)。
【0060】
特に好ましい混合比は、上記式(2−1)で表される化合物が25重量%、上記(2−2)で表される化合物が25重量%及び上記(2−3)で表される化合物が50重量%である。この液晶性の混合物は、結晶−液晶転移温度が15.9℃、液晶−等方相転移温度が92.5℃であり、非常に広い液晶温度領域を有するネマチック液晶性化合物である。なお、この混合比の混合物を以下「液晶性混合物A」という。
【0061】
本発明で用いられる液晶性化合物としては、上述する液晶性化合物の他に、例えば、従来より液晶ディスプレイに用いられている液晶分子が挙げられる。例えば、「液晶デバイスハンドブック」日本学術振興会142委員会編(1989):p154〜192,p715〜722に記載のネマチック相あるいはスメクチック相を示すビフェニル系化合物、フェニルシクロヘキサン系化合物、フェニルピリミジン系化合物、シクロヘキシルシクロヘキサン系化合物等の各種の液晶性化合物、カイラルネマチック相、コレステリック相、ディスコチックネマチック相またはカイラルスメクチック相を示す液晶性化合物、またはこれらの液晶性化合物の混合物が挙げられる。また、液晶性化合物は、強誘電性、反強誘電性、フェリ強誘電性などの液晶性化合物であってもよく、誘電率異方性が正のものであっても、負のものであってもよい。
【0062】
具体的な液晶性化合物としては、例えば4−ペンチル−4’−シアノビフェニル、4−オクチル−4’−シアノビフェニル、4−ヘプチルオキシ−4’−シアノビフェニル、および、4−デシルオキシ−4’−シアノビフェニル等のシアノビフェニル系化合物、4’−オクチルフェニル−4−ヘプチルオキシベンゾエート、4’−プロピルオキシフェニル−4−ウンデシルオキシベンゾエート、および、4’−ブチルオキシフェニル−4−ウンデシルオキシベンゾエート等のフェニルベンゾエート系化合物、4−(トランス−4’−ペンチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル等のフェニルシクロヘキサン系化合物、5’−オクチル−2’−(4−オクチルオキシフェニル)ピリミジン等のフェニルピリジミン系化合物、4−メトキシベンジリデン−4’−ブチルアニリン等のベンジリデンアニリン系化合物を挙げることができる。
【0063】
具体的な液晶性化合物としては、更に、特開2000-239663に記載された下記の液晶性化合物が挙げられる。
【0064】
【化7】

【0065】
【化8】

【0066】
【化9】

【0067】
【化10】

【0068】
【化11】

【0069】
2.液晶性ゲル
次に、本発明の液晶性ゲルについて説明する。
本発明に係る液晶性ゲルは、上述する組成物がゲル状となった液晶性ゲルである。トリアゾール金属錯体は、トリアゾール環の1位と2位が金属を架橋するように配位し、金属錯体自体が一次元性を有する化合物である。以下、トリアゾール金属錯体の特徴について、例として、下記一般式(3)で表される(C1225OCTrz)MClを用いて説明する。なお、「Trz」はトリアゾール、「M」はFe又はCoを表す。
【0070】
【化12】

【0071】
図1は、(C1225OCTrz)Fe(II)Cl金属錯体(式(3)中、M=Fe(II))の化学構造式、該金属錯体が溶媒中で架橋してできた構造の予想概念図である。また、図2は、スピンクロスオーバー現象に伴うFe(II)イオンのd電子のスピン状態(電子構造)の変化、及び金属錯体のキャストフィルム(溶媒除去フィルム)の色変化を示す図(20℃及び50℃)である。本発明は、この理論に拘束されるものではないが、これらの図から分かるように、(C1225OCTrz)Fe(II)Cl金属錯体は、架橋したFe−N間の距離を制御することによって、HS(High Spin)状態(高温側)とLS(Low Spin)状態(低温側)をとりうるので、例えば、磁性スイッチング錯体、サーモクロミズム錯体などとして作用しうる。
【0072】
図3は、(C1225OCTrz)Co(II)Cl金属錯体(式(3)中、M=Co(II))が溶媒中で架橋してできた構造の予想概念図及び該構造の温度による変化を示す図である。また、図4は、金属錯体のクロロホルム溶液の温度による状態変化を示す図であり、(a)が0℃の状態、(b)が25℃の状態である。本発明は、この理論に拘束されるものではないが、これらの図から分かるように、(C1225OCTrz)Co(II)Cl金属錯体は、低温側の六配位(Octahedral構造)と高温側の四配位(Tetrahedral構造)とからなる配位構造変化を示すと考えられ、クロロホルム溶液中でゲル(0℃)−溶液(25℃)転移を示す。
【0073】
上述するトリアゾール金属錯体と液晶性化合物とを例えばクロロホルムなどの溶媒中で混合すると、金属錯体の架橋に由来するゲル構造を維持した、液晶性ゲルを作製することができる。また、この溶媒を含有する液晶性ゲルから溶媒を除去しても、ゲル構造は維持され、液晶性ゲルを得られる。これはキャストフィルムとしても成形可能である。
【0074】
このような性質は、種々の組成物を構成する際に、好適な性質である。また、このようにトリアゾール金属錯体と液晶性化合物と複合化することにより、例えば、液晶の相転移や電場配向特性を利用して、トリアゾール金属錯体の構造ならびに電子状態及びスピン状態の変化を誘起することができ、様々な用途展開の可能性がある。
【0075】
ここで、液晶性ゲルに含まれうる溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、ミスチルアルコールなどがあげられる。好ましい溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなどである。
【0076】
3.光学素子、表示デバイス
次に、本発明の光学素子、表示デバイスについて説明する。
また、本発明に係る光学素子は、上述する組成物又は液晶性ゲルを含有する層を有する光学素子である。更に、本発明は、該光学素子を複数個有する表示デバイスである。
【0077】
本発明の実施形態に係る光学素子は、上述する組成物又は液晶性ゲル(以下、「液晶性ゲルなど」という)と、該液晶性ゲルなどを挟持する、一対の電極を有する基板とを有する。ここで、2枚の基板間には、例えば周知の液晶デバイスと同じく、間隔保持用のスペーサーを介在させてもよい。
【0078】
基板としては、ガラス板かプラスチックフィルムなどからなる、透明又は着色した基板があげられ、少なくとも一方は透明な基板である。ここで「透明性」は完全な透明性を意味しておらず、光学素子の使用目的に応じた透明性を有していればよい。本実施形態にかかる光学素子が、素子の一方の側から他方の側へ通過する光に対して作用させるためのものである場合は、2枚の基板とも、相当に透明性である必要がある。基板の厚さは約10μm〜1mm、好ましくは25〜200μmである。
【0079】
電極は、金属、ITO、SnO、ZnO:Alなどの導電体薄膜からなる、透明又は着色した電極があげられ、少なくとも透明基板側には透明電極を用い、スッパタリング法、真空蒸着法、CVD法、塗布法などにより形成する。液晶の駆動方法に対応して電極をスリット状などにパターン化することも可能である。
【0080】
また、場合によっては、液晶配向性の向上と制御のために、物理吸着法、化学吸着法、プラズマ重合法、又は変形配向処理法などにより電極上に液晶配向膜を設け、ラビング処理することも可能である。
【0081】
本実施形態に係る光学素子は、液晶性ゲルなどを一方の基板上にバーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、又はスピンコーターなどの塗布機を用いて塗布した後、対向基板を張り合わせる方法、あるいはギャップ材を介して一対の基板を張り合わせた後、液晶性ゲルなどを基板間に注入する方法などにより、形成することができる。
【0082】
本実施形態にかかる表示デバイスは、上記光学素子を複数個備え、画像信号に応じて光学素子に電界を印加することのできるスイッチング素子などを有する。
【0083】
スイッチング素子は液晶を駆動する素子であり、ダイオード型、MIM(Metal−Insulator−Metal)型又はZnOバリスター型などの二極端子型駆動素子、あるいはCdSe TFT(薄膜トランジスタ)、a−SiTFT(非晶性シリコンTFT)又はp−Si TFT(多結晶シリコンTFT)などを用いた三極型駆動素子を使用する。好ましくは、大面積の薄膜素子の作製が容易なTFTである。
【0084】
また、本実施形態にかかる表示デバイスは、上記光学素子とスイッチング素子、及び該スイッチング素子により形成された液晶性ゲルの状態を保持する保持手段からなる。保持手段は強誘電体の分極状態のメモリ性を利用した手段であり、スイッチング素子により形成された液晶分子の配向状態を保持する。保持手段として、強誘電性絶縁膜からなるコンデンサ、又は該コンデンサと常誘電体絶縁膜からなるコンデンサとを組み合わせたコンデンサなどを使用することができる。
【0085】
本実施形態にかかる光学素子及び表示デバイスでは、表示基板面の物理的及び化学的な損傷から保護し、視認性を保持するために保護層を設けてもよい。保護層の厚さは、基板を保護する機能を有する範囲内で可能な限り薄いほうが望ましく、約0.1〜100μm、より好ましくは0.3〜30μmである。
【0086】
保護層は、保護層材料と場合によってはその材料を溶解、分散、懸濁又は乳化する媒体、硬化剤、触媒及び/又は助触媒を加えた保護層材料組成物を表示基板上に成膜することにより、形成することができる。成膜方法としては、ワイヤーバーコート、ロールコート、ブレードコート、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、又はグラビアコートなどの塗布方法、又はスパッタリング及び化学的気相法などの気相方法などがあげられる。
【0087】
保護層材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニルデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、アクリル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ジエン樹脂、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアリレート、アラミド、ポリイミド、ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−キシレン、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリヒダントイン、ポリパラバン酸、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサジアゾール、ポリキノキサリン、熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線硬化樹脂、あるいはそれらの混合物などがあげられる。
【0088】
また、本実施形態において、上記の表示基板面の少なくとも一部分及び/又は保護層上の少なくとも一部分に印刷層を設けること、上記の印刷層上に印刷保護層を設けること、液晶性ゲルなどからなる表示層以外に情報記録部を設けること、上記の情報記録部が磁気の作用により情報記録の書き込みと読み出しが可能な記録部であること、上記の情報記録部が集積回路メモリ、非接触集積回路メモリ又は光メモリーであること、上記の情報記録部が光の作用により情報記録の読み出しが可能な透明な記録部であること、上記の情報記録部の情報が光学素子の表裏を示す情報及び/又は光学素子の位置を示す情報であることが好ましい。
【0089】
印刷層は、光学素子及び表示デバイスの使用目的に応じて、保護層上の少なくとも一部分に公知のオフセット印刷、グラビア印刷及びスクリーン印刷により形成することができる。また、印刷保護層は、保護層と同様な材料からなり、印刷層と同様に、公知の方法により形成することができ、また、印刷保護層は、保護層上に設けることも可能である。
【0090】
磁気の作用により情報記録の書き込みと読み出しが可能な記録部、集積回路メモリ、非接触集積回路メモリ又は光メモリー情報記録部は、従来の記録技術を用いて作製することができる。また、光の作用により情報記録の読み出しが可能な透明な記録部は、上記の記録部と異なり書き込みが不可能な読み取り専用の記録部であり、近赤外蛍光体や紫外蛍光体から形成する。この記録部は、液晶の駆動電界に影響されないため、液晶性ゲルなどにより表示された画像の表示内容とその透明な記録部の情報とを組み合わせて、可逆非可逆の情報記録媒体として利用することができる。
【0091】
以上説明した本実施形態にかかる光学素子及び表示デバイスは、従来の表示デバイスなどと同様な用途、例えば建物の窓やショーウインドウ等の視野遮断スクリーン;広告板等の装飾表示板;時計、電卓の表示装置;コンピュータ端末の表示装置;プロジェクションの表示装置等に用いることができる。
【0092】
また、本実施形態にかかる光学素子及び表示デバイスは、その光学素子又は表示デバイスが一部分又は全てを占める表示体として各種の形態で用いることができる。それらの一例を挙げると、本実施形態にかかる光学素子又は表示デバイスが名刺やクレジットカードのような小型のカードの一部、又は全ての部分を構成することで、情報の書き換が可能なカードが作製され、各種ポイントカードや会員カードとして使用できる。
【0093】
このような携帯性に優れる小型のカードのサイズを大きくすることで、一般のオフィス等で使用されるディスプレイや記録紙(複写機、プリンター等の出力紙)の代用表示体として、可逆表示シートを作製することもできる。このような可逆表示シートは、繰り返し使用することができるので、省資源、省エネルギーの観点からも優れた表示デバイスである。
【0094】
また、家電製品をはじめとする各種物品に本実施形態にかかる光学素子又は表示デバイスを組み込むことにより、従来の液晶モニターの代わりに情報を提供することが可能となる。さらに、本実施形態にかかる光学素子又は表示デバイスを各種の広告や看板などの用途で用いることも可能である。この場合にも全面を光学素子又は表示デバイスで構成することもできるが、ポスターなどの一部分に組み込むことで効果的な表示を実現することも可能である。
【0095】
また、本実施形態にかかる光学素子又は表示デバイスは、基板をはじめとする構成により媒体に可撓性を付与させるが可能であることから、前記のカード、シート、ディスプレイ、看板、広告をはじめとする各種用途において形状による制約を受けることがなく、非常に幅広い用途に対応することができる。
【実施例】
【0096】
(C1225OCTrz)Co(II)Cl金属錯体の製造例
窒素雰囲気下、オルトギ酸トリエチル(6.85g;45mmol)とホルムヒドラジン(1.8g;30mmol)を乾燥メタノール30mLに溶解し、3時間加熱しながら攪拌還流した。その後、ラウリルオキシプロピルアミン(7.43g;30mmol)を乾燥メタノール30mLに溶解した溶液を加え、原料のラウリルオキシプロピルアミン由来のピークが消失したことを確認して10時間で攪拌還流を終了した。この反応溶液から溶媒を減圧留去して得られたピンク色の固体をクロロホルム200mLに溶解して、5%炭酸水素ナトリウム水溶液200mL及びイオン交換水200mLで洗浄した。洗浄後のクロロホルム溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム:メタノール=10:1)にて精製した。以上の方法により、「C1225OCTrz」を製造した。収量は5.7gであり、収率は52%であった。
【0097】
製造した「C1225OCTrz」の元素分析の結果は、C:69.11(69.07)、H:11.26(11.23)、N:14.22(14.34)であった(かっこ内は理論値)。また、H−NMR(250MHz、CDCl)の結果は、δ=0.85−0.90(t,3H),1.3(m,20H),2.0−2.1(m,2H),3.3−3.5(t,4H),4.2(t,2H),8.2(s,1.9H)であった。また、IRの結果は、ν=2926,2855,1535,1466cm−1であった。
【0098】
次に、上述するようにして製造した「C1225OCTrz」配位子のメタノール溶液(20mM、10mL)とCoClのメタノール溶液(60mM、10mL)とを窒素雰囲気下で一気に混合した。調製後、すぐに淡い青色の固体が析出した。この固体を3回のデカンテーション及び遠心分離を行い、真空下で乾燥した。以上の方法により、「(C1225OCTrz)Co(II)Cl金属錯体」を製造した。
【0099】
製造した「(C1225OCTrz)Co(II)Cl金属錯体」を元素分析及びESCA測定することにより、3つの「C1225OCTrz」と1つのCoのユニットからなることを確認した。元素分析の結果は、C:59.15(59.23)、H:9.57(9.84)、N:12.04(12.19)であった(かっこ内は理論値)。
【0100】
他のアニオンが配位する(C1225OCTrz)Co(II)X金属錯体の製造例
上述するようにして製造した「C1225OCTrz」配位子のメタノール溶液(20mM、10mL)とCoX(X:Br、NO、ClO)のメタノール溶液(60mM、10mL)とを窒素雰囲気下で一気に混合した。調製後、すぐに淡いピンク色の固体が析出した。この固体を3回のデカンテーション及び遠心分離を行い、真空下で乾燥した。以上の方法により、「(C1225OCTrz)Co(II)X金属錯体」を製造した。
【0101】
製造した各「(C1225OCTrz)Co(II)X金属錯体」を元素分析及びESCA測定することにより、それぞれ3つの「C1225OCTrz」と1つのCoのユニットからなることを確認した。製造した「(C1225OCTrz)Co(II)Br金属錯体」の元素分析の結果は、C:54.13(54.54)、H:9.00(9.06)、N:11.25(11.22)であった(かっこ内は理論値)。製造した「(C1225OCTrz)Co(II)(NO)金属錯体」の元素分析の結果は、C:56.33(56.33)、H:9.35(9.36)、N:14.13(14.17)であった(かっこ内は理論値)。製造した「(C1225OCTrz)Co(II)(ClO)金属錯体」の元素分析の結果は、C:54.09(53.53)、H:8.91(8.72)、N:11.32(11.02)であった(かっこ内は理論値)。
【0102】
(C1225OCTrz)Fe(II)X金属錯体の製造例(X=Cl,Br,NO3,ClO4
Fe(II)錯体については、Fe(II)イオンの酸化を防ぐために、アスコルビン酸を含むメタノール溶液(メタノール100mLに対しアスコルビン酸1mgを溶解した溶液)を用いる以外は、上述するコバルト錯体と同様な方法により合成した。
【0103】
<実施例1>
(C1225OCTrz)Fe(II)Cl金属錯体を含有する液晶性ゲル
下記式(4)で表される(C1225OCTrz)Fe(II)Cl金属錯体0.1gと、上記液晶性混合物A0.9gとを、0℃の状態で、溶媒としてのクロロホルム1mlに混合して、混合溶液を作製した。次に、バス型超音波照射装置を用いて、0℃の状態の混合溶液に30分間、超音波照射を行い、トリアゾール金属錯体をクロロホルム溶液に溶解させた。
更に、凍結乾燥法(Freeze-dry)により、このクロロホルム溶液を乾燥させてクロロホルムを除去することにより、金属錯体/液晶性混合物A−組成物を得た。
【0104】
【化13】

【0105】
<実施例2>
(C1225OCTrz)Co(II)Cl金属錯体を含有する液晶性ゲル
下記式(5)で表される(C1225OCTrz)Co(II)Cl金属錯体0.1gと、上記液晶性混合物A0.9gとを、0℃の状態で、溶媒としてのクロロホルム1mlに混合して、混合溶液を作製した。次に、バス型超音波照射装置を用いて、0℃の状態の混合溶液に30分間、超音波照射を行い、トリアゾール金属錯体をクロロホルム溶液に溶解させた。
更に、凍結乾燥法(Freeze-dry)により、このクロロホルム溶液を乾燥させてクロロホルムを除去することにより、金属錯体/液晶性混合物A−組成物を得た。
【0106】
【化14】

【0107】
ゲル状態及びサーモクロミズムの観察
以上のようにして得られたクロロホルム溶液(金属錯体+液晶性混合物A+クロロホルム)及び組成物(金属錯体+液晶性混合物A)について、状態の変化を観察した結果を下記表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
Fe系金属錯体((C1225OCTrz)Fe(II)Cl金属錯体)の場合は、クロロホルム溶液において、スピン転移(低スピン状態と高スピン状態との間の転移)による可逆的なサーモクロミズム(紫色と黄色との間の色変化)が発現され、また、凍結乾燥により得られた組成物においても、同様のサーモクロミズムが発現されることが分かった。このような性質は、例えば、温度可変の表示デバイスとして使用できる可能性を示している。なお、凍結乾燥後の組成物の可逆的な色調の変化温度に関しては、金属錯体の固体粉末とほぼ同様の温度であった。
【0110】
一方、Co系金属錯体((C1225OCTrz)Co(II)Cl金属錯体)の場合は、クロロホルム溶液において、配位構造転移(6配位と4配位との間の構造転移)による可逆的なサーモクロミズム(ピンク色と青色との間の色変化)が発現されたが、凍結乾燥により得られた組成物においては、温度変化に依存せずに青色を呈し、サーモクロミズムは発現されなかった。
【0111】
金属錯体のみのクロロホルム溶液では、Fe(II)系金属錯体及びCo(II)系金属錯体ともに、低温(例えば0℃)で溶液になるが、高温(例えば25℃)でゲルとなる。液晶性混合物Aを添加したクロロホルム溶液では低温(例えば0℃)でも溶液とはならずに、ゲル状態となった。これは、金属錯体と液晶性化合物との相互作用が働き、ゲル化を促進しているものと考えられる。
【0112】
偏光顕微鏡による観察
スライドガラス(Matsunami Micro Slide Glass;厚さ1.2〜1.5mm、大きさ76×26mm)に、実施例1及び2で作製したクロロホルム溶液([金属錯体]=100mM,[液晶性化合物]=0.9g/mL)を50μL滴下し、室温で風乾した。その後、カバーガラス(Matsunami Micro Cover Glass;厚さ0.12〜0.17mm、大きさ18×18mm)を載せ、偏光顕微鏡観察を行った。観察に使用した偏光顕微鏡は、ニコン社製、ECLIPSE E600 POLである。
【0113】
図5は、Fe系金属錯体/液晶性混合物Aの偏光顕微鏡観察の結果であり、(a)が30℃、(b)が88℃、(c)が92℃における観察である。図6は、Co系金属錯体/液晶性混合物Aの偏光顕微鏡観察の結果であり、(a)が30℃、(b)が88℃、(c)が92℃における観察である。これらの観察写真から分かるように、Fe系金属錯体及びCo系金属錯体ともに、室温(図5(a)、図6(a))ではネマチック液晶を示すシュリーレン模様を観察することができ、89℃で液晶相から等方相への転移が始まり(図5(b)、図6(b)を参照)、91℃で完全に等方相になった(図5(c)、図6(c)を参照)。なお、液晶性混合物Aは液晶−等方相転移温度が92.5℃であるが、金属錯体との複合化によって、相転移温度が91℃に若干低下している。
【0114】
透過型電子顕微鏡による観察
実施例1及び2で作製したクロロホルム溶液([金属錯体]=100mM,[液晶性混合物A]=0.9g/mL)カーボン蒸着銅グリッド(応研商事)を載せ、カーボン表面に組成物を吸着させた(Chem. Lett.967(1998)を参照)。この薄膜を室温で風乾し、その後減圧乾燥させてTEM試料とした。透過型電子顕微鏡は、日本電子株式会社製のJEM−2010(200KV)を用い、クライオホルダを用いて−180℃で観察した。
【0115】
図7は、Fe系金属錯体/液晶性混合物Aの透過型電子顕微鏡観察の結果であり、(a)が1μmスケールの観察、(b)が(a)を拡大した200nmスケールの観察である。図8は、Co系金属錯体/液晶性混合物Aの透過型電子顕微鏡観察の結果であり、(a)が1μmスケールの観察、(b)が(a)を拡大した200nmスケールの観察である。これらの観察写真から分かるように、Fe系金属錯体及びCo系金属錯体ともに、幅約50nmからなるナノファイバーを観察することができた。このナノファイバーは、長さ約200nm程度のものが分岐を伴って三次元ネットワークを形成し、液晶中に分散していることを確認した。
【0116】
以上の結果より、液晶性混合物Aと複合化させたトリアゾール金属錯体は、一次元性を失わずに液晶性混合物A中に溶解しゲルを形成することが分かった。さらにFe系金属錯体に関してはスピン転移を、Co系金属錯体に関しては配位構造変化を示すことが明らかとなった。
本発明にかかる組成物は、特に液晶性化合物として液晶性混合物Aを選択した場合、該液晶性混合物Aの高い電場配向性を利用して、電場応答による金属錯体の物性制御を行うことができると考えられる。この結果、高速スピン転移などのスピンメモリシステムへの応用が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の好ましい態様によれば、例えば、表示デバイスの液晶層として最適な液晶性ゲルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、(C1225OCTrz)Fe(II)Cl金属錯体(式(2)中、M=Fe(II))の化学構造式、該金属錯体が溶媒中で架橋してできた構造の予想概念図である。
【図2】図2は、スピンクロスオーバー現象に伴うFe金属のd軌道の変化、及び金属錯体のキャストフィルム(溶媒除去フィルム)の色変化を示す図(20℃及び50℃)である。
【図3】図3は、(C1225OCTrz)Co(II)Cl金属錯体(式(2)中、M=Co(II))が溶媒中で架橋してできた構造の予想概念図及び該構造の温度による変化を示す図である。
【図4】図4は、金属錯体のクロロホルム溶液の温度による状態変化を示す図であり、(a)が0℃の状態、(b)が25℃の状態である。
【図5】図5は、Fe系金属錯体/液晶性混合物Aの偏光顕微鏡観察の結果であり、(a)が30℃、(b)が88℃、(c)が92℃における観察である。
【図6】図6は、Co系金属錯体/液晶性混合物Aの偏光顕微鏡観察の結果であり、(a)が30℃、(b)が88℃、(c)が92℃における観察である。
【図7】図7は、Fe系金属錯体/液晶性混合物Aの透過型電子顕微鏡観察の結果であり、(a)が1μmスケールの観察、(b)が(a)を拡大した200nmスケールの観察である。
【図8】図8は、Co系金属錯体/液晶性混合物Aの透過型電子顕微鏡観察の結果であり、(a)が1μmスケールの観察、(b)が(a)を拡大した200nmスケールの観察である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるトリアゾール金属錯体と、一又は複数の液晶性化合物とを含有する組成物。
【化1】

(式中、
Rは、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいアルコキシアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいアリールアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアルキルチオ、置換されていてもよいアリールチオ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいボリル、置換されていてもよいシリル、ハロゲン、シアノ、ニトロまたはヒドロキシルであり、
Mは金属であり、Xはアニオンであり、そして、nはXが2価のアニオンの場合には1であり、1価のアニオンの場合には2である。)
【請求項2】
Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキル、炭素数2〜20の置換されていてもよいアルケニル、炭素数2〜20の置換されていてもよいアルキニル、炭素数2〜30の置換されていてもよいアルコキシアルキル、炭素数1〜30の置換されていてもよいアルコキシ、炭素数5〜30の置換されていてもよいアリール、炭素数7〜20の置換されていてもよいアラルキル、炭素数6〜30の置換されていてもよいアリールアルキル、炭素数2〜30の置換されていてもよいヘテロアリール、炭素数3〜10の置換されていてもよいシクロアルキル、炭素数6〜20の置換されていてもよいアリールオキシ、炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキルチオ、炭素数6〜30の置換されていてもよいアリールチオ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいボリル、置換されていてもよいシリル、ハロゲン、シアノ、ニトロまたはヒドロキシルであり、
Mは金属であり、そして、XはF,Cl,Br,I,At,BF,NO,ClO,CHCOO,HCOO,HPO,HSO,HSO,OH,CN,SCN,CO2−,SO2−,SO2−,S2−,C2−,CrO2−又はHPO2−である、
請求項1に記載する組成物。
【請求項3】
Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数2〜20のアルキニル、炭素数2〜30のアルコキシアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、炭素数5〜30のアリール、炭素数7〜20のアラルキル、炭素数6〜30のアリールアルキル、炭素数2〜30のヘテロアリール、炭素数3〜10のシクロアルキル、炭素数6〜20のアリールオキシ、炭素数1〜20のアルキルチオ、炭素数6〜30のアリールチオ、アミノ、ボリル、シリル、ハロゲン、シアノ、ニトロまたはヒドロキシルであり、
Mは金属であり、そして、XはF,Cl,Br,I,BF,NO,ClO,CN,SCN又はSO2−である、
請求項1に記載する組成物。
【請求項4】
Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数2〜20のアルキニル、炭素数2〜30のアルコキシアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、または、炭素数1〜20のアルキルチオであり、
Mは遷移金属であり、そして、XはF,Cl,Br,I,BF,NO又はClOである、
請求項1に記載する組成物。
【請求項5】
Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数2〜12のアルキニル、炭素数5〜25のアルコキシアルキル、炭素数5〜25のアルコキシ、炭素数7〜15のアラルキル、または、炭素数1〜15のアルキルチオであり、
Mは遷移金属であり、そして、XはF,Cl,Br,I,BF,NO又はClOである、
請求項1に記載する組成物。
【請求項6】
Rは、炭素数5〜25のアルコキシアルキルであり、
MはFe,Co,Cu,Ni又はRuであり、そして、XはCl又はBrである、
請求項1に記載する組成物。
【請求項7】
Rは、エーテル結合を1個有する炭素数5〜25のアルコキシアルキルであり、
MはFe,Co,Cu,Ni又はRuであり、そして、XはCl又はBrである、
請求項1に記載する組成物。
【請求項8】
Rは、−C−O−C1225であり、
MはFe又はCoであり、そして、XはClである、
請求項1に記載する組成物。
【請求項9】
前記液晶性化合物は、下記一般式(2)で表される化合物である、請求項1ないし8のいずれかに記載する組成物。
【化2】

(式中、
は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシであり、
は、それぞれ独立して、ハロゲン、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルコキシ又は置換されていてもよいアルコキシアルキルであり、
環構造A又はAは、それぞれ独立して、置換されてもよい5員環又は置換されてもよい6員環であり、
pは1又は2であり、そして、qは1,2,3,4又は5である。)
【請求項10】
は、水素、炭素数1〜9のアルキル、炭素数1〜9のアルケニル、炭素数1〜9のアルキニル又は炭素数1〜9のアルコキシであり、
は、それぞれ独立して、F,Cl,Br,I、炭素数1〜9のアルキル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数1〜9のアルコキシアルキル、ハロゲン化された炭素数1〜9のアルキル、ハロゲン化された炭素数1〜9のアルコキシ又はハロゲン化された炭素数1〜9のアルコキシアルキルであり、
環構造A又はAは、それぞれ独立して、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環又はピリダジン環であり、それらは一個または複数個のハロゲンで置換されていてもよく、
pは1又は2であり、そして、qは1,2又は3である、
請求項9に記載する組成物。
【請求項11】
は、水素、炭素数1〜7のアルキル、炭素数1〜7のアルケニル又は炭素数1〜7のアルキニルであり、
は、それぞれ独立して、F,Cl、炭素数1〜9のアルキル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数1〜9のアルコキシアルキル、ハロゲン化された炭素数1〜9のアルキル、ハロゲン化された炭素数1〜9のアルコキシ又はハロゲン化された炭素数1〜9のアルコキシアルキルであり、
環構造A又はAは、それぞれ独立して、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環又はピリダジン環であり、それらは一個または複数個のハロゲンで置換されていてもよく、
pは2であり、そして、qは1,2又は3である、
請求項9に記載する組成物。
【請求項12】
前記液晶性化合物は、下記式(2−1)、(2−2)又は(2−3)で表される化合物のうち少なくとも1種である、請求項9に記載する組成物。
【化3】

【請求項13】
前記液晶性化合物は、上記式(2−1)で表される化合物を25重量%、上記(2−2)で表される化合物を25重量%及び上記(2−3)で表される化合物を50重量%混合してなる混合物である、請求項12に記載する組成物。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載する組成物がゲル状となった液晶性ゲル。
【請求項15】
更に、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、ミスチルアルコールから選ばれる溶媒の少なくとも一種を含有する、請求項1ないし14のいずれかに記載する組成物又は液晶性ゲル。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかに記載する組成物又は液晶性ゲルを含有する層を有する、光学素子。
【請求項17】
請求項16に記載する光学素子を複数個有する、表示デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−131673(P2007−131673A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323642(P2005−323642)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年5月10日 社団法人高分子学会発行の「高分子学会予稿集 54巻1号」に発表
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】