説明

トリアリールメタン系染料

【課題】電気化学的、熱的に安定で、光に対する耐久性に優れ、良好な溶解性を示すトリアリールメタン系染料の提供。
【解決手段】式Iで表されるトリアリールメタン系染料。


(R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、H、置換基を有していてもよいアルキル基又はアリール基;R1とR2、R3とR4、及びR5とR6は、結合して環構造あるいは複素環構造の一部を形成していてもよい。Xは置換基を有していてもよいアリール基を示し、YはHの少なくとも一部がフッ素原子に置換されていてもよいアルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なトリアリールメタン系染料に関し、詳細には光耐久性、溶解性に優れたトリアリールメタン系染料に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、多数の染料が知られており、大きくは天然染料及び合成染料として区別がなされている。該合成染料としては、例えば、アニリンブルー、フクシンまたはメチルオレンジなどが挙げられるが、ほとんどの合成染料は、芳香族または複素環式であり、イオン性(例えば、すべての水溶性染料)または非イオン性化合物(例えば、分散染料)のいずれかである。また、イオン性染料の場合において、アニオン(陰イオン)性染料とカチオン(陽イオン)性染料との間で区別がされる。
【0003】
上記カチオン性染料は、共役結合にわたり非局在化する正の電荷を有する有機カチオン及び通常無機のアニオンからなる。またこれらは通常、置換されていてもよいアミノ基が共鳴に関与する染料である。よってカチオン性染料の選択は、対イオンであるアニオンの数や種類によることが多く、対アニオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、アルキルまたはアリール硫酸イオン、トシル酸イオン、酢酸またはシュウ酸イオン等が挙げられる。
【0004】
カチオン性染料であるローダミン、サフラニンまたはビクトリアブルーは、通常、対イオンとして塩化物イオンまたはトシル酸を有する。しかし、これらの化合物は、あまり電気化学的に安定ではない。このため、これらの染料を一層化学的に安定にする新規な対アニオンを導入する技術が検討されている。
【0005】
例えば、トリアリールメタンなどカチオン性染料の耐久性を向上する手段として、対アニオンとしてシアノホウ酸イオン、フルオロアルキルリン酸イオン、フルオロアルキルホウ酸塩イオン、イミド酸イオンを用いることが開示されているが(例えば、特許文献1参照)、溶解性の向上と耐久性向上が課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−503477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のカチオン性染料は、電気化学的、熱的にはある程度の安定性を有するが、前記フルオロアルキルリン酸イオン、フルオロアルキルホウ酸塩イオンは耐光性が十分でなく、また耐光性を改良しようとすると、各種溶媒への溶解性が低下するといった問題があった。さらに、前記シアノホウ酸イオン、イミド酸イオンは、例えば重合性モノマーと併用する場合にラジカル開始剤との共存で失活要因となるという問題もあった。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、電気化学的、熱的に安定なだけでなく、光に対する耐久性に優れ、有機溶媒や樹脂への良好な溶解性をも両立できるトリアリールメタン系染料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、トリアリールメタン系染料における対アニオンを芳香族スルホニルイミド酸イオンとすることにより、耐熱性を維持しつつ、有機溶媒や樹脂に対する溶解性と耐光性と両立させることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1)下記一般式(I)で表されるトリアリールメタン系染料、
【0010】
【化1】

【0011】
(上記式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを示し、R1とR2、R3とR4、及びR5とR6のいずれかは、結合して環構造あるいは複素環構造の一部を形成していてもよい。式中のXは置換基を有していてもよいアリール基を示し、Yは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されていてもよいアルキル基である。)
【0012】
(2)前記一般式(I)におけるXがアルキルベンゼンである上記(1)に記載のトリアリールメタン系染料、
(3)前記アルキルベンゼンのアルキル基の炭素鎖が炭素数8以上である上記(2)に記載のトリアリールメタン系染料、
(4)前記一般式(I)におけるXがアルコキシフェニル基である上記(1)に記載のトリアリールメタン系染料、
(5)前記アルコキシフェニル基におけるアルコキシ基の数が1〜3であり、かつそのアルコキシ基の炭素数が6以上である上記(4)に記載のトリアリールメタン系染料、
(6)前記一般式(I)におけるYがパーフルオロアルキル基である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のトリアリールメタン系染料、
(7)前記一般式(I)におけるR5が水素原子であり、R1、R2、R3、R4、及びR6が各々独立に炭素数1〜20のアルキル基である上記(1)〜(6)のいずれかに記載のトリアリールメタン系染料、及び
(8)R1、R2、R3、R4、及びR6がすべて同一である上記(7)に記載のトリアリールメタン系染料である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電気化学的、熱的に安定なだけでなく、光に対する耐久性に優れ、有機溶媒や樹脂への良好な溶解性をも両立できる染料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態のトリアリールメタン系染料は、下記一般式(I)で表されることを特徴とする。
【0015】
【化2】

【0016】
上記式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを示し、R1とR2、R3とR4、及びR5とR6のいずれかは、結合して環構造あるいは複素環構造の一部を形成していてもよい。式中のXは置換基を有していてもよいアリール基を示し、Yは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されていてもよいアルキル基である。
【0017】
前記R1〜R6におけるアルキル基としては、飽和アルキル基、不飽和アルキル基、及びシクロアルキル基が挙げられ、これらは、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、アシルアミノ基、アルキルオキシカルボニル基、アミノカルボニル基、ヒドロキシ基及びシアノ基等の置換基を有していてもよい。
より具体的には、前記アルキル基は直鎖または分岐若しくは環状のアルキル基でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコサニル基、i−プロピル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基、i−アミル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、t−アミル基、1,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、2−エチル−2−メチルプロピル基、直鎖または分岐のヘプチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、t−オクチル基、分岐したノニル基、分岐したデシル基、分岐したウンデシル基、分岐したドデシル基、分岐したトリデシル基、分岐したテトラデシル基、分岐したペンタデシル基、分岐したヘキサデシル基、分岐したヘプタデシル基、分岐したオクタデシル基、直鎖または分岐のノナデシル基、直鎖または分岐のエイコサニル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、ボルニル基、シス−ミルタニル基、イソピノカンフェニル基、ノルアダマンチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、1−(1−アダマンチル)エチル基、3,5−ジメチルアダマンチル基、キヌクリジニル基、シクロペンチルエチル基、ビシクロオクチル基が好ましく挙げられる。
【0018】
前記R1〜R6におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、アントラセニル基、アンスラキノニル基、ピレニル基、及び複素環基が挙げられ、これらはアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、置換カルバモイル基、置換スルファモイル基、置換アミノ基、置換オキシカルボニル基、置換オキシスルホニル基、アルキルチオ基、アリールスルホニル基、及びフェニル基等の置換基を有していてもよい。
【0019】
より具体的に、例えば置換基を有するフェニル基としては、o−、m−もしくはp−メチルフェニル基、o−、m−もしくはp−エチルフェニル基、o−、m−もしくはp−プロピルフェニル基、o−、m−もしくはp−イソプロピルフェニル基、o−、m−もしくはp−tert−ブチルフェニル基、o−、m−もしくはp−アミノフェニル基、o−、m−もしくはp−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、o−、m−もしくはp−ニトロフェニル基、o−、m−もしくはp−ヒドロキシフェニル基、o−、m−もしくはp−メトキシフェニル基、o−、m−もしくはp−エトキシフェニル基、o−、m−、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、o−、m−、p−(トリフルオロメトキシ)フェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメチルスルファニル)フェニル、o−、m−もしくはp−フルオロフェニル基、o−、m−もしくはp−クロロフェニル基、o−、m−もしくはp−ブロモフェニル基、o−、m−もしくはp−ヨードフェニル基、3,4−もしくは3,5−ジメトキシフェニル、5−フルオロ−2−メチルフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニルまたは2,4,5−トリメチルフェニルなどが挙げられる。
また、例えば置換基としてアルキル基を有するアリール基としては、ベンジル基、4−メトキシフェニルエチル基、3−メトキシフェニルエチル基、2−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、2−エトキシベンジル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、2−(トリフルオロメチル)ベンジル基、3−(トリフルオロメチル)ベンジル基、4−フルオロベンジル基、3−ヨードベンジル基、4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル基、3−(トリフルオロメトキシ)ベンジル基及び4−(トリフルオロメチルスルファニル)ベンジル基などが挙げられる。
【0020】
さらに、前記一般式(I)中、R1とR2、R3とR4、及びR5とR6のいずれかは、結合して環構造あるいは複素環構造の一部を形成していてもよく、環としては、例えば、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、ピペラジン、ヘキサメチレンイミン等が挙げられる。このようなR12N−、R34N−、及びR56N−で表される置換基として、例えば、ピロリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、N−エチルピペラジンノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、N−エチル−N−イソブチルアミノ基、N−エチル−ベンジルアミノ基、ジアミルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−エチル−N−テトラフルフリルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。これらの中でも、5員環及び6員環が好ましい。
【0021】
これらの中でも、R5が水素原子であり、R1、R2、R3、R4及びR6が各々独立にアルキル基であることが色素製造のし易さの点で好ましく、該アルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、エチル基及びメチル基であることが特に好ましい。
また、前記のようにR1、R2、R3、R4及びR6は各々異なっていても同一であってもよいが、色素構造の観点からはすべて同一であることが好ましい。
【0022】
一方、対アニオンである芳香族スルホニルイミド酸イオンにおいて、上述のように、Xは置換基を有していてもよいアリール基であり、Yは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されていてもよいアルキル基である。
Xにおけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、アントラセニル基、アンスラキノニル基、ピレニル基、及び複素環基が挙げられ、これらはアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、置換カルバモイル基、置換スルファモイル基、置換アミノ基、置換オキシカルボニル基、置換オキシスルホニル基、アルキルチオ基、アリールスルホニル基、及びフェニル基等の置換基を有していてもよい。
これらのうち、Xがアルキルベンゼンであることが好ましく、特に、置換基として炭素数8以上のアルキル基を有するフェニル基が現像溶解性の観点から好ましい。また該アルキル基の炭素数の上限としては、本発明の効果を奏する範囲で特に制限はないが、ガラス転移点が下がりすぎず、十分な耐熱性を有するとの観点から、また、取り扱いが容易との観点から、炭素数20以下が好ましく、さらには炭素数15以下が好ましい。
なお、ここで現像溶解性とは、例えば、本発明の染料をカラーフィルタ用着色組成物として用いる場合に、露光・現像プロセスにおける未露光部分の現像溶解性をいう。
【0023】
また、Xがアルコキシフェニル基であることが好ましく、特にフェニル基に置換するアルコキシ基の数が1〜3であり、かつそのアルコキシ基の炭素数が6以上であることが現像溶解性の観点から好ましい。一方、ガラス転移点が下がりすぎず、十分な耐熱性を有するとの観点及び取り扱いが容易との観点から、該アルコキシ基の炭素数は20以下が好ましく、さらには炭素数15以下が好ましい。
上記範囲のうち、特に、フェニル基に置換するアルコキシ基の数が1の場合には、該アルコキシ基の炭素数は10以上であることが、またフェニル基に置換するアルコキシ基の数が2の場合には、該アルコキシ基の炭素数はいずれも10以上であることが、現像溶解性の観点から好ましい。さらに、フェニル基に置換するアルコキシ基の数が3の場合には、該アルコキシ基の炭素数は、いずれも6〜12であることが、溶解性と、樹脂組成物とした場合の相分離抑制の観点から好ましい。
【0024】
次に、Yを構成するアルキル基としては、前記R1〜R6におけるアルキル基と同様のものが挙げられ、水素原子の一部がフッ素原子に置換されていてもよい。特に炭素数が1〜3であり、水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されたフッ化アルキル基が好ましい。具体的には、例えば、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、フルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−フルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−フルオロプロピル基等を挙げることができる。
【0025】
前記一般式(I)で表されるトリアリールメタン系染料としては、例えば、下記例示化合物(1)〜(3)で示される化合物が挙げられる。
【0026】
【化3】

【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
前記例示化合物(1)〜(3)のように、一般式(I)におけるR5が水素原子であり、R1、R2、R3、R4及びR6がアルキル基である例示化合物が好ましく、さらにR1、R2、R3、R4及びR6がすべて同一である例示化合物(1)が特に好ましい。
【0030】
また、前記例示化合物(1)〜(3)に示されるそれぞれのカチオンに対して、以下の対アニオン(4)〜(7)を有する化合物が現像溶解性の点から好ましい態様である。
【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
より具体的には、下記例示化合物(8)〜(11)が特に好ましい。
【0036】
【化10】

【0037】
【化11】

【0038】
【化12】

【0039】
【化13】

【0040】
一般式(I)で示されるトリアリールメタン系染料は、既知の方法で合成することができる。合成法としては、例えば「総説合成染料」(堀口博著、三共出版、1968年)に記載の方法が参考になる。
対アニオンが、下記式で示される色素は、例えば対アニオンがCl-で示される色素に、対応するスルホニルイミド酸を加え、塩交換を行うことにより合成することができる。
【0041】
【化14】

【0042】
具体的には、対アニオンがCl-で示される色素を反応溶媒に溶解し、対応するスルホニルイミド酸を加え、攪拌した後、沈殿を濾過により取り出すことにより合成できる。スルホニルイミド酸の添加量としては、例えば1〜3等量程度である。反応溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒;あるいはそれらの混合溶媒が挙げられ、反応温度としては例えば0℃から40℃が好適である。
【0043】
本実施形態のトリアリールメタン系染料は、有機溶剤等に良好な溶解性を有する。当該溶解性は、特定の溶剤あるいは該溶剤を含む樹脂溶液などに、染料を一定の濃度となるように加え、そのときの溶解の程度を目視で観察することにより確認することができる。
上記良好な溶解性の対象となる有機溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等の酢酸エステル類;エチレングリコールジアルキルエーテル類;メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、オクタン、デカン等の炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの溶剤の中で、特にアセトン、酢酸エチル、メタノールなどへの溶解性に優れることが望ましい。
【0044】
また、本実施形態のトリアリールメタン系染料は、500〜700nmの波長域の光に対する吸収性を有する材料であるが、樹脂等に分散させて塗膜とした場合に、上記波長域以外において高い透過率を有することが望ましい。具体的には、例えば430〜450nmの波長域においては、透過率が90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0046】
実施例1
(トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩の合成)
東京化成工業(株)製トリフルオロメタンスルホンアミド3.00g(20.1mmol)を塩化メチレン30mL中に溶解し、内温を5℃以下に冷却した。内温が10℃を越えないように和光純薬工業(株)製トリエチルアミン5.10g(50.4mmol)を滴下し、滴下終了後10℃以下で和光純薬工業(株)製p−トルエンスルホニルクロライド3.84g(20.1mmol)を添加した。5℃以下で1時間攪拌した後、室温下で5時間さらに攪拌し、該反応液に水100mLを加え抽出した。分液した有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで脱水し、有機層をエバポレーターで減圧濃縮して、下記構造式(13)で示される(トシル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩を8.07g(収率99%)得た。
上記(トシル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩(構造式13)について、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):102(+)、302(−)
・元素分析値:CHN実測値(41.28%、5.92%、7.14%);理論値(41.57%、5.73%、6.93%)
【0047】
(染料の合成)
下記構造式(12)で示される東京化成工業(株)製Basic Blue 7(CI−42595)5g(9.73mmol)をメタノール30mLに溶解し、上記のように製造した下記構造式(13)で示される(トシル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩を攪拌しながら、3.93g(9.73mmol)を加え、さらに室温で1時間攪拌した。エバポレーターで溶液中のメタノールを濃縮し、水100mLを加え沈殿物を濾取し、水で洗浄した。該ケーキを減圧乾燥して、前記例示化合物(1)で表される染料A、6.30g(収率83%)を得た。
【0048】
【化15】

【0049】
【化16】

【0050】
上記染料Aについて、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):478(+)、302(−)
・元素分析値:CHN実測値(62.82%、5.93%、7.31%);理論値(63.06%、6.07%、7.17%)
【0051】
(評価)
以下の方法により、染料の溶解性、耐熱性及び耐光性の評価を行なった。評価した結果を第1表に示す。
−溶解性−
上記で得られた染料Aを、アセトン、酢酸エチル及びメタノールに各々3質量%となるように加えて溶解(室温)させたときの溶解の程度から、下記判断基準にしたがって目視により評価した。
〔評価基準〕
○:完全に溶解した。
△:少しの溶け残りが認められた。
×:不溶分が多く認められた。
【0052】
−耐熱性−
〔塗液の調製及び塗膜の作製〕
・ポリビニルピロリドン(重量平均分子量55000、アルドリッチ社製):8質量部
・2−メトキシエタノール:32質量部
・染料A:1質量部
以上を混合、攪拌して不揮発分22質量%の透明樹脂組成物(塗液)とした。この塗液をスピンコート法によりガラス基板上に塗布し、80℃で乾燥させ評価用の塗膜を作製した。
【0053】
上記塗膜を作製したガラス基板を、該基板面が接するようにホットプレート上に載置し、150℃で30分間放置(放置+露光)した後、放置する前後での塗膜における色度変化(色差)、すなわちΔEab値をオリンパス(株)製顕微分光装置OSP−SP200を用いて測定した。なお、ΔEab値は小さい方が耐熱性に優れることを示す。
【0054】
−耐光性−
前記耐熱性評価と同様にして作製したガラス基板上の塗膜に対して、キセノンランプ(アトラス社製Ci4000ウェザメータ、内側フィルターとしてCIRA、外側フィルターとしてソーダライムを用いた条件:波長300nm以下をカット)を用い、420nmの波長での照度を1.2mW/m2で5時間照射(21kJ/m2相当)した後、前記耐熱性評価と同様にしてΔEab値を測定した。
【0055】
実施例2
実施例1において、(トシル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩に代えて、下記構造式(14)で示される(p−ドデシルベンゼンスルホニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩2.50g(4.47mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前記例示化合物(8)で表される染料B、2.93g(収率70%)を得た。
【0056】
上記染料Bについて、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):478(+)、456(−)
・元素分析値:CHN実測値(66.98%、7.63%、6.21%);理論値(66.78%、 7.44%、5.99%)
【0057】
【化17】

【0058】
実施例3
実施例1において、(トシル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩に代えて、下記構造式(15)で示される(3,4−(ビス(ドデシルオキシ)ベンゼンスルホニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩2.00g(2.63mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前記例示化合物(9)で表される染料C、2.06g(収率69%)を得た。
【0059】
上記染料Cについて、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):478(+)、656(−)
・元素分析値:CHN実測値(67.78%、8.41%、4.74%);理論値(67.69%、8.25%、4.93%)
【0060】
【化18】

【0061】
実施例4
実施例1において、(トシル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩に代えて、下記構造式(16)で示される2,3,4−(トリス(ドデシルオキシ)ベンゼンスルホニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩2.19g(2.32mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前記例示化合物(10)で表される染料D、1.89g(収率62%)を得た。
【0062】
上記染料Dについて、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):478(+)、840(−)
・元素分析値:CHN実測値(69.27%、9.13%、4.02%);理論値(69.16%、8.93%、4.24%)
【0063】
【化19】

【0064】
実施例5
実施例1において、(トシル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩に代えて、下記構造式(17)で示される2,3,4―(トリス(オクチルオキシ)ベンゼンスルホニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩3.25g(4.19mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前記例示化合物(11)で表される染料E、3.22g(収率67%)を得た。
【0065】
上記染料Eについて、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):478(+)、672(−)
・元素分析値:CHN実測値(66.91%、8.29 %、4.57%);理論値( 66.75%、8.14%、4.87%)
【0066】
【化20】

【0067】
比較例1
実施例1において、染料Aの代わりに、東京化成工業(株)製Basic Blue 7(CI−42595、前記構造式(12))を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0068】
比較例2
実施例1において、染料Aの代わりに下記構造式(18)で示される化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。なお、下記構造式(18)で示される化合物は実施例1における染料の合成において、(トシル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩の代わりに、和光純薬工業(株)製p−トルエンスルホン酸を等モル用いた以外は、実施例1と同様にして合成し5.81g、収率92%で得た。
【0069】
なお、上記染料については、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):478(+)、171(−)
・元素分析値:CHN実測値(73.71%、7.45%、6.23%);理論値(73.93%、7.29%、6.47%)評価結果を第1表に示す。
【0070】
【化21】

【0071】
比較例3
実施例1において、染料Aの代わりに下記構造式(19)で示される化合物)を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。なお、下記構造式(19)で示される化合物は実施例1における染料の合成において、(トシル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩の代わりに、アルドリッチ製ビストリフルオロメタンスルホニルイミドを等モル用いた以外は、実施例1と同様にして合成し7.31g、収率99%で得た。
【0072】
なお、上記染料については、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):478(+)、280(−)
・元素分析値:CHN実測値(55.61%、5.42%、7.16%);理論値(55.40%、5.31%、7.38%)評価結果を第1表に示す。
【0073】
【化22】

【0074】
比較例4
実施例1において、染料Aの代わりに下記構造式(20)で示される化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。なお、下記構造式(20)で示される化合物は実施例1における染料の合成において、(トシル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩の代わりに東京化成工業(株)製1−ナフタレンスルホン酸ナトリウムを等モル用いた以外は、実施例1と同様にして合成し6.00g、収率90%で得た。
【0075】
なお、上記染料については、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):478(+)、207(−)
・元素分析値:CHN実測値(76.07%、6.67%、6.35%);理論値(75.29%、6.91%、6.13%)評価結果を第1表に示す。
【0076】
【化23】

【0077】
【表1】

【0078】
第1表の結果に示すように、実施例の対アニオンとして芳香族スルホニルイミド酸イオンを用いたトリアリールメタン系染料は、有機溶媒に対する溶解性に優れるだけでなく、耐熱性、耐光性も良好であった。一方、本発明とは異なるトリアリールメタン系染料を用いた比較例では、耐熱性はある程度満足できるものの、溶解性と耐光性とのバランスを両立することができないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のトリアリールメタン系染料は、有機溶剤に対する溶解性に優れ、良好な耐熱性、耐光性を有するため、各種パターンの形成、配線パターン等の永久パターンの形成や、柱材、リブ材、スペーサー、隔壁等の構造部材の製造などに好適に用いることができ、特に高精細な配線パターンの形成に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるトリアリールメタン系染料。
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを示し、R1とR2、R3とR4、及びR5とR6のいずれかは結合して環構造あるいは複素環構造の一部を形成していてもよい。式中のXは置換基を有していてもよいアリール基を示し、Yは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されていてもよいアルキル基である。)
【請求項2】
前記一般式(I)におけるXがアルキルベンゼンである請求項1に記載のトリアリールメタン系染料。
【請求項3】
前記アルキルベンゼンのアルキル基の炭素鎖が炭素数8以上である請求項2に記載のトリアリールメタン系染料。
【請求項4】
前記一般式(I)におけるXがアルコキシフェニル基である請求項1に記載のトリアリールメタン系染料。
【請求項5】
前記アルコキシフェニル基におけるアルコキシ基の数が1〜3であり、かつそのアルコキシ基の炭素数が6以上である請求項4に記載のトリアリールメタン系染料。
【請求項6】
前記一般式(I)におけるYがパーフルオロアルキル基である請求項1〜5のいずれかに記載のトリアリールメタン系染料。
【請求項7】
前記一般式(I)におけるR5が水素原子であり、R1、R2、R3、R4、及びR6が各々独立に炭素数1〜20のアルキル基である請求項1〜6のいずれかに記載のトリアリールメタン系染料。
【請求項8】
1、R2、R3、R4、及びR6がすべて同一である請求項7に記載のトリアリールメタン系染料。

【公開番号】特開2011−132492(P2011−132492A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152523(P2010−152523)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000179904)山本化成株式会社 (70)
【Fターム(参考)】